情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.2. 平成19年2月 February,2007. 情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践 藤井 廣美・中川 宏生*・加藤 進** 北海道教育大学函館枚家族関係学教室 *北海道教育大学函館枚非常勤講師・㈱ニューメディア企画開発室長 **北海道教育大学函館枚非常勤講師・㈲みのり代表取締役. The Education Practicein TheInformation Network andDatabase FUJIIHiromi,NAKAGAWAHiroki*andKATOSusumu** DepartmentofEducation,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *NewMediaCorporation 3B*. MinoriCorporation. 概 要 本稿では,学外実習における教育効果を高めることを目的として,情報ネットワークとデータベースを活 用した教育効果の可能性について分析・考察した.情報ネットワークを活用した教育実践では,実習状況の 動画と音声をリアルタイムに送信・受信することにより,実習に参加していない学生が実習状況を大学内で 観察することが可能となった.レポート共有システムの活用では,学内LANまたはインターネット経由で 何時でも何処からでも実習に関する学生のレポート(意見・感想等)と教員・実習先施設数職員のコメント の書き込み・閲覧を可能にした.また,データベースの活用では,平成16年度の蓄積データと平成17年度の データ双方を活用した,より効果的な教育を実践した.本研究では,情報ネットワークとデータベースを活 用した教育支援システムを学外実習に活用することにより,情報技術を教育実践に生かすことの教育効果の 可能性が示された.. 1 はじめに 今日の高度情報社会では,LANの整備・浸透はあらゆる状況で急激に展開されている.大学教育におい ても学内LANを活用した教育は実践化されているが,地域情報インフラを活用した情報ネットワークとデー タベースに基づく教育実践は,いまだ充分な教育効果をもたらすまでにいたっていない.. 大学教育における教育効果は,大学内での講義・演習・実験等のみでなく,学外実習等を通しての実習先 との連携を密にとることにより大きな効果をあげうる.学外実習では,実習先で一度に受け入れる学生数に 制限があり,実習先と連携した実習後の学生への事後指導にも限界がある.学外実習において,より大きな. 83.
(3) 藤井 廣美・中川 宏生・加藤 進. 教育効果をあげるためには,情報ネットワークとデータベースを活用した教育支援システムを構築し,教育 実践する必要がある.. 本稿では,学外実習における教育効果を高めることを主要な目的として,平成16・17年度(以下「16年度」 「17年度」という)実施した地域情報インフラを活用した教育支援システムをさらに展開・発展させ,情報 ネットワークとデータベースを活用した教育支援システムを構築し,教育実践をおこなうことにより,大学 教育における情報技術を活用した教育効果の可能性について考察・分析する.. 2 研究の目的と方法 大学教育は,学内教育だけではなく,学外実習等,学外との連携・協力をとおしてのかかわりの中でより 大きな教育効果をあげうる.特に,学内LANの活用にとどまることなく,多くの情報技術を活用した教育 実践をすることにより,より大きな教育効果をあげることが可能である.. 本稿では,学外実習においてより大きな教育効果をあげることを目的として,情報ネットワークとデータ ベースを構築し,それらを活用した教育実践内容を中心に,そのための準備・調整および成果・課題につい て分析・考察する.. 情報ネットワークとデータベースを活用した教育支援システムを活用した教育実践は,北海道教育大学函 館校の対外回線の1つであるケーブルテレビの情報回線(NCV回線)を活用して実施した.教育支援シス テムの構築では,16・17年皮の実習における学生のレポート(意見・感想等)と教員・実習先施設数職員の コメントの書き込みを参考にしながら,16・17年度同様にデーターを蓄積し,学内LANまたはインターネッ ト経由で何時でも何処からでも書き込み・閲覧を可能にする教育支援システムを構築するとともに,実習状 況の音声付動画(以下「動画」という)を学内のNCV回線を活用して,リアルタイムで配信し,大学内で 実習に参加していない学生が実習状況を観察することを可能にした.16年度の動画の配信では,テレビ電話 (TV電話・TVfone)を活用して実習先施設と大学間で双方向遠隔授業(一部)も実施したが,平成17・18 年度(以下「18年度」という)はインターネット上での動画の配受信で双方向遠隔授業をリアルタイムに実 施した.. 実習先施設としては,16年度は函館市内の上湯川保育園・函館市立はこだて幼稚園(以下「はこだて幼稚 園」という)・函館めぐみ幼稚園(以下「めぐみ幼稚園」という)の3園で実施した.その内,上湯川保育 園・はこだて幼稚園の2園では,リアルタイム動画の配信とレポート共有システム双方の教育実践およびビ デオ撮影をし,めぐみ幼稚園ではレポート共有システムと写真撮影のみを実施した.18年度は,上湯川保育 園とはこだて幼稚園で16・17年度同様にリアルタイムでの双方向遠隔授業とレポート共有システムを活用し た教育実践をした.18年度の教育実践では16・17年度実施した「地域情報インフラを活用した教育支援シス テムの構築と実践」に関する研究をさらに発展・展開しながら実施した.. 3 教育内容 3.1 教育支援システムの構築 3.1.1 NCV回線を活用した実習先と大学間での動画および音声の配信・受信(双方向遠隔授業) 17・18年度のNCV回線を活用した実習先と大学間での動画および音声の配信・受信による双方向遠隔授 業では,16年度に実施したシステムをさらに改善・構築し,実施した.システムづくりでは,限られた研究 予算の中で,①安価な機材や方法でシステムを構築する,②誰にでも簡単に設定できるようなシステムとす. 84.
(4) 情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践. 写真1.双方向遠隔システム機器1. る,という方針を土台にすすめた.実習先施設と大学との間の双方向リアルタイム動画の送受信にはフリー ソフトであるYahooMessenger(http://messenger.yahoo.co.jp/)を使った. このソフトは接続相手の動画画面の大きさは3段階に,自身の画面の大きさは2段階に調整(写真1)で きるなど,利便性があり,WindowsMessengerなどの他のフリーソフトに比べて安定度が高いと検証され た.カメラは3CCDのWEBカメラを利用したが,より安価なものであってもさほどの違いはなかった. 太陽光がどれほど入るかにより,画像の質が左右されたが,カメラの角度を変えるなど,手動で調節するこ とで大部分の問題は解決できた.. 双方向遠隔授業の実践にあたっては,遠隔地より上下左右,ズームイン・アウトなどの操作が可能なネッ トワークカメラの使用についても検討した.ネットワークカメラの画質は非常に美しく,無線LANでの利 用も可能という利便性がある.しかし,今回の実習では運動場や教室,園庭など,30mを超えるカメラの 移動が求められ,そのような環境では電波が届きにくく,電源の確保が難しいため,ネットワークカメラは 適切でないと判断した.また,ネットワークカメラにはカメラ自体にIPアドレスを設定する必要がある. プロバイダによっては,IPアドレスを碇供しておらず,設定も少々高度なため,今回のシステム構築の方 針に合致しないと判断した.音声については高品質と定評のあるIP電話のフリーソフトであるSkype (http://www.skype.com/intl/ja/)を利用した.. 実習施設ではタイヤのついた台にYahooMessengerとSkypeをインストールおよび設定したノートパソ コン,スピーカー,マイクをおいたものを40m以上のLANケーブルと電源ケーブルを引き回しながら移動 した(写真2).. 大学ではパソコンの画面をプロジュクタに投影するようにし,複数名の学生や教員が,実習の様子を見る ことができるようにした.また,記録のために実習施設と大学双方でビデオカメラによる撮影も行った.ビ デオ撮影した内容は,実習の事後指導の教材および平成19年度以降の事前指導用教材として活用するために 編集作業も実施した.. 85.
(5) 藤井 廣美・中川 宏生・加藤 進. 写真2.双方向遠隔システム機器2. 3.1.2 施設実習情報の書き込み・閲覧システムの構築 16年度に施設実習情報をオンラインで共有することを目的としてレポート共有システムを構築した.17・. 18年度はこれに大きな変更を加えることなく継続利用とし,16年度のデータをそのまま蓄積して参照可能な 状態とした.. レポート共有システムは学生・教員・施設数職員間で実習レポートおよびそれに対するコメントを共有す るものである.実習レポートはネットワーク上のサーバにて管理・蓄積され,ネットワーク経由でアクセス が可能となる.システムは以下のレポート共有サーバとクライアント端末(管理者/一般ユーザ)の二つの 要素で構成されている.レポート共有サーバは,オープンソースソフトウェアを利用して構築されたweb データベースシステムである.クライアント端末(管理者/一般ユーザ)は,パソコン(webブラウザが 動作する端末であればOSは問わない)および携帯電話双方からの利用も可能である. ローカル環境(MacOSX)でシステム開発を行い,完成したものを公開サーバ(株式会社ニューメディ ア内に設置)で稼働させた.公開サーバの構成は,OS:RedHatLinux8.0,Webサーバ:Apachel.3.27, ミドルウェア:PHP4.3.2,データベース:PostgreSQL7.3.3である.この組み合わせは低コストで安定 性の高いシステムを構築できることから幅広く普及している.. 本システムで利用している上記アプリケーションはUNIX系だけでなくWindows版も用意されているた めWindowsでも同等の構成が可能である.また,システム中で使用しているデータベース間い合わせ言語. 86.
(6) 情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践. (SQL)に関してはPostgreSQL固有のコマンドがほとんどないため他のデータベースへの移植は容易であ る.. レポート共有システムの学生および教員/施設担当者利用イメージは,次のとおりである.学生は,実習 後,学内LANまたはインターネット経由でシステムにアクセスする.アクセスに必要なアプリケーション はウェブブラウザのみであり,別途プラグイン等は必要としない.携帯電話のブラウザからもアクセス可能 である.ユーザ名とパスワード入力で認証を受け,システムにログインする.レポート提出先が実習施設/ 実習日毎に表示されるので,ここから該当するものを選択し,レポートー覧画面にアクセスする.既に他の 学生が提出していればそれを参照することもできる.レポートの登録は,ボタンをクリックし入力フォーム に文章を入力するだけの単純な操作で行う.. 登録情報のアクセス権(登録/削除/変更)についてはユーザ単位で管理され,他のユーザが登録した情 報については参照のみとなる.これは登録データにユーザIDを付与することと,ユーザの属性を判断する ことで実現している.担当教員および施設担当者は,登録されたレポートに対して随時コメントを付与する ことができる.該当するレポートの「編集」ボタンをクリックすることでコメント入力欄が表示される.コ メントの追記が可能であるため,碇出されたレポートをベースとし,対話的なやりとりもできる.. システム管理は,実習施設およびユーザの登録は管理者が専用画面(ウェブブラウザ)にて行う.新規登 録ユーザの数が多い場合は,ユーザー覧のファイル(CSV形式)からデータベースに読み込むことができる. ユーザはシステム上,IDによって管理され,パスワードによってなりすまし等を防ぐことができる.また, 利用権限の管理のためにグループ属性を持たせている.実習先に関しては場所,日時が決まった時点であら かじめ入力しておくことにより,実習終了後,すぐにレポート提出が可能となる.. ユーザ管理画面の入力項目は,①ユーザID(固有の値),②グループ(学生/教員/実習先施設),③氏 名(全角入力),④パスワード(ログイン時に必要),⑤備考(任意)であり,実習先管理画面の入力項目は,. ①実習ID(固有の値/日付+枝番号),②施設名(全角入力),③実施日(日付),④備考(任意)である.. 3.2 教育実践 3.2.1 実習先施設との調整・整備 情報ネットワークとデータベースを活用した教育支援システムによる教育実践は,「生活と保育」の授業 の一環としておこなっている保育実習で実施した.保育実習の実習先は,函館市内の上湯川保育園・はこだ て幼稚園・めぐみ幼稚園の3園である.. 保育実習は,教員免許法の改正に伴って,家庭科の教員免許取得のために必修となったため,平成13年度 から実施している.保育実習は,はこだて幼稚園(平成14∼18年度)では5度,北海道教育大学函館校付属 幼稚園(平成13・14・16年度)では3度実施しており,上湯川保育園(16・17・18年度)は3度目の実習で ある.17年度の教育実践にともなう実習先施設との調整と回線接続等のハード面での整備は,はこだて幼稚 園と上湯川保育園の2園では以前からの実習先であったため,スムーズな対応が可能であった.また,17年 度初めて実施した「めぐみ幼稚園」においても問題なく保育実習の調整・整備ができたが,双方向遠隔授業 とビデオ撮影の実施はできず,写真撮影とレポート共有システムの教育実践のみを実施した.. 上湯川保育園・はこだて幼稚園の2園での保育実習では,16・17年度に引き続き,18年度もリアルタイム に動画と音声の配受信による双方向遠隔授業を実施した.また,いずれの施設でも学生のレポート(意見・ 感想等)と教員・施設数職員のコメントの書き込みを蓄積し,学内LANまたはインターネット経由で何時 でも何処からでも書き込み・閲覧を可能にする教育支援システムを活用した教育実践をした.レポート共有 システムの活用では,16・17年度の実習での書き込みデータの閲覧を可能にして,16・17年度の実習生のレ. 87.
(7) 藤井 廣美・中川 宏生・加藤 進. ポートを活用しながら教育実践を行った.. 保育実習は,実習生が比較的多いため,2グループに分けて各施設ごとに2回実施している.各施設実習 状況の動画をリアルタイムで配受信し,大学内で実習に参加してしない学生が実習状況を観察できるように するため,ケーブルテレビ回線(NCV回線)を活用しておこなった.双方向遠隔授業の実施に当たっては, 初日の実習時に双方向遠隔授業のテストを実施した上で,2日目の実習時に大学内で実習に参加していない 学生を参加させて教育実践した.実習先施設へのレポート共有システムを活用した教育実践についての説明 とコメントの書き込み依頼は,実習時と実習後に確認・調整をして実施した.. 3.2.2 情報システムを活用した教育実践 本研究では,16・17年度に実施した2つの情報システムの構築をさらに展開・発展しながら教育実践をし た.一つは実習先と大学間での実習状況の動画(音声付)をリアルタイムで配信・受信するシステムの構築 であり,もう一つは施設実習の情報の書き込み・閲覧システムの構築である.実習状況の動画(音声付)を リアルタイムで配信・受信するシステムでは,16年度の課題であった施設と大学間の遠隔授業の接続不良と テレビ電話での双方向遠隔授業についての施設との事前打ち合わせ不備の問題を解決するための調整をした 上で実施したため,17・18年度は問題なく双方向遠隔授業の教育実践が可能となった.また,施設実習の情 報の書き込み・閲覧システムの構築では,16・17年度のレポート共有システムのデータの蓄積を閲覧・活用 しながら,18年度の教育実践に生かすように学生指導を実施した.. 実習先と大学間での実習状況の動画をリアルタイムで配信・受信するシステムを活用した教育実践では, 動画の配信・受信は上湯川保育園・はこだて幼稚園の2園と北海道教育大学函館校の実践棟2階のセミナー 室Ⅲの双方で実施した.セミナー室Ⅲで実施したのは,函館校のNCV(ケーブルテレビ)回線がセミナー 室Ⅲの隣室に接続されているためと,「福祉情報処理論」(16・17・18年度夏季集中講義)の授業および16・. 17年度の保育実習で双方向遠隔授業をNCV回線を活用してセミナー室Ⅲで実施した実績1)があるためであ る.動画の配信・受信では,補助員として学生と共同研究者を双方に配置して実施した. 保育実習を実施した「生活と保育」の授業は,家庭科の教員免許取得のための必修科目であるとともに,. 情報教育課程の専門科目でもあり,2∼4年生が受講可能科目であるため,受講生が比較的多く,グループ 分けをして実習をしている.18年度の実習は10月∼11月の後期授業開講時の午前中に実施したため,16・17 年度同様に大学内で実習状況をリアルタイムに観察できる教育環境は,実習に参加していない学生や午前中 に1コマのみ空いている学生も,大学内で実習状況の観察が可能となった.今回の動画の送受信では,双方 向遠隔授業を実施したため,画像と音声を一方的に受信するとは違う教育効果が16・17年度同様に得られた.. 双方向遠隔授業では,実習先施設に直接行かなくてもリアルタイムに双方の情報交換ができるため教育効果 は大きい.また,16・17年度に引き続いての双方向遠隔授業を活用した教育実践であるため,16・17年度の 経験と課題を生かして実施でき,16・17年度以上の教育効果が学生の評価等からもみられた.. 本研究では,16年度から実習についての感想・意見等を学内LANまたはインターネット経由で何時でも 何処からでも書き込み可能なレポート共有システムを構築し,そのシステムを活用した教育実践をしている.. 18年度は,16・17年度の学生と教員・施設数職員のレポートも閲覧叶能なシステムを構築して,データの蓄 積を閲覧・活用しながらレポート入力を可能にした.レポート共有システムへの書き込みは,各自にパスワー. ドを設定して,本人のみが加筆・修正できるようにした.学生が書き込んだ内容については,教員と施設数 職員がコメントを書き込む欄を設定し,レポート共有システムに登録している学生・教員・施設数職員は全 員,書き込み内容全体を閲覧できる状況で,教育実践をした.教員・実習先教職員は,レポート共有システ ムを活用して,参加学生の個々人の実習効果を把握し,その後の指導もコメントを通して行うことができる. 88.
(8) 情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践. とともに,18年度だけでなく16・17年度のデータも同時に活用することにより,レポート共有システムを活 用した教育効果は大きい.また,実習を受け入れた施設側でも学生がどのように実習を受けたかの状況を把 握することができ,その後の実習生の受け入れや施設運営その他に反映することが可能である.. 3.2.3 学生指導 情報ネットワークとデータベースを活用した教育支援システムを教育実践に生かすにあたり,16・17年度 同様に学生指導としては,学外実習に行くための事前指導と,実習後のレポート共有システムへの書き込み 等のための事後指導を実施した.学外実習は,受講生を2グループに分け,全員が実習に参加できるように 調整し,実習に行かない日に大学内で双方向遠隔授業を通して観察実習に参加可能な学生の希望をとる等の 調整をしたうえで,教育実践をした.双方向遠隔授業は各施設2回実施した保育実習の内,最終日に実施し た.. 学外実習後の感想・意見等を学内LANまたはインターネット経由で書き込みをするための学生指導で は,実習後の授業内で,学内の情報マルチメディア室(16年度),情報処理センター(17年度),第8情報共 有室(18年度)において実施した.レポート共有システムの学生への指導では,受講学生の他に共同研究者 3人と保育実習担当教員2人,実習補助の院生1人と学部学生1人の計7人も参加して実施した.学生指導 では,事前に設定していた学生ごとにパスワードを割りあて,操作手順の資料を配布しながら,説明・指導 を実施した.18年度のレポート共有システムへの参加は,受講学生15人,実習補助員4人(院生1人,学生 3人),教員3人(共同研究者含む),実習先施設数職員2人の計24人である.レポート共有システムへの書 き込みに当たっては,16年度のレポート共有システムへ参加した学生53人(院生2人含む),と教員3人(共 同研究者含む),実習先施設数職員6人の計68人の内容および17年度のレポート共有システムへの参加学生24 人(院生1人含),教員3人(共同研究者含),実習先施設職員3人の計30人の内容を参考にしながら実施し ている.. 4.研究の成果と課題 4.1 教育支援システムの構築 4.1.1 NCV回線を活用した実習先と大学間での動画および音声の配信・受信(双方向遠隔授業) 研究の主な成果は,①動画および音声のリアルタイム双方向通信が大学と実習先施設間の教員・学生・実 習先教員との関係で可能となった,②双方向通信の可能性が広がった,の2点である.また,実習地におい ては学生も園児たちもシステムに驚き,双方向通信に驚き,また楽しんでおり,教育的効果がみられた. 動画および音声のリアルタイム双方向通信では,次の関係で可能となった. 1.教員(大学). ⇔学生(実習地). 2.教員(大学). ⇔教員(実習地). 3.教員(大学). ⇔実習地の保育士・教諭(実習地). 4.教員(大学). ⇔園児(実習地). 5.学生(大学). ⇔学生(実習地). 6.学生(大学). ⇔園児(実習地). 18年度に実施した双方向遠隔授業では,16・17年度以上に双方向通信の可能性が広がった.今回構築した システムはブロードバンドのインターネット環境・パソコン・WEBカメラとマイクがあれば誰にでもでき. 89.
(9) 藤井 廣美・中川 宏生・加藤 進. るシステムである.これまでのテレビ電話との違いは,通信料が無料(プロバイダ料金を除く)であり,国 内に限らず海外でも同様に利用可能なことである.. 双方向遠隔授業における今後の課題としては,①ネットワークカメラの活用,②ネットの速度,PCの処 理速度に依存の問題,③無線化,の3点である.. ① ネットワークカメラの活用では,今回の実習園のカメラワークは実習先で台を移動する人間に依存し ていた.今後,大学から,ネットワークカメラ自体を自由に移動させられるとより利用の幅が広がると 考えられる.. ② ネットの速度,PCの処理速度に依存の問題は,17年度の遠隔授業での音声は一般の固定電話に劣ら ないほど鮮明であったが,動画の美しさには多くの問題があった.今後,通信速度の向上とパソコンの 性能の向上により,動画の画質の問題は解決されていくものと思われる.18年度は動画の鮮明さにおい て課題がみられた.. ③ 無線化では,今回の双方遠隔授業は,高度な技術(ハイテク)を伴う内容であったが,40mの電源ケー ブルとLANケーブルを引き回すという単純な作業(ローテク)があった.このシステムの無線化がで きるとより実習園でのフットワークが軽くなるものと思われる.ただ,無線により回線状態が不安定に なり,音声や動画が途切れる可能性もあり,実証実験が必要である.また,無線のアクセスポイントを いくつも設置するため,機材と設定に費用もかさむことが課題でもある.. 4.1.2 施設実習情報の書き込み・閲覧システムの構築 施設実習情報の書き込み・閲覧システムは,16・17年度に稼動実績のあるシステムであるため,ユーザ登 録や実習基本情報登録など,利用前に行うべき作業についてはスムーズに行うことができた.16∼18年度の 3年間に渡って本システムを利用したため,過去のレポートも含めて参照することができた.他の学生のレ ポートだけでなく他年度の情報も参照できることから従来とは異なる情報の活用法が考えられる. 本システムの利用は特定の演習に限ったものであるため,利用法を習得するのにかかる負担が多くなるこ とは好ましくない.そのため,機能を限定し,インターフェイスを単純なものにしている.利用に際して必 要な説明を15分程度で実施したが,普段,インターネットを利用する程度の知識があれば配布したマニュア ルのみで利用が可能であり,特別,操作の説明は必要ないと思われる. 今後,機能の高度化を図る場合には,開発・運用コスト 利用技術習得コストの増加を考慮する必要があ る.ひとつの講座単独でシステムを導入し,運用していくことには限界があるため,学内で共有していくこ とで2つのコストの問題は解決に繋がると思われる.また,サーバは学外に設置しているが,データ保護の ためには学内にあることが望ましく,外部からのアクセスにはVPN等を利用することがセキュリティ上好 ましい.機能の拡充と複数講座での利用,サーバの学内設置が今後の課題である2).. 4.2 情報システムを活用した教育実践 本研究では,学外実習における教育効果を高めることを目的として,16・17年度に構築した地域情報イン フラを活用した教育支援システムをさらに展開・発展させ,情報ネットワークとデータベースを活用した教 育支援システムを活用した教育実践を行った.教育支援システムの構築では,実習先と大学間での実習状況 の動画(音声付)をリアルタイムで配信・受信するシステムの構築と実習終了後に施設実習についての意見・. 感想等の情報の書き込み・閲覧可能なシステムを構築し,それらのシステム(レポート共有システム)を活 用して教育実践をした.. レポート共有システムを活用した教育実践におけるシステムへの入力は,16・17年度に実施した学生のレ. 90.
(10) 情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践. ポートも閲覧可能な状況で設定した.レポート入力では,18年度の学生間の情報を共有するだけでなく,16・. 17年度のデータを蓄積・活用しながら教育実践をした.16・17年度と18年度のレポート共有システムを活用 した教育実践では,参加学生の個々人の実習効果を把握し,その後の指導もコメントを通しておこなうこと ができ,教育効果は大きいものがあった.. 情報ネットワークとデーターベースを活用した教育実践の成果の一つは,実習状況をリアルタイムで配信 することにより,実習先に行かなくても実習状況を観察可能なことである.さらに,16・17年度に実施した 教育実践の成果と課題をふまえて,より効果的な教育実践が可能となった.18年度は17年度同様,16年度の 遠隔授業における問題点であった①施設と大学間の遠隔授業の接続不良,②テレビ電話での双方向遠隔授業 についての施設との事前打ち合わせ不備,においては改善され,より大きな教育効果を上げている.. レポート共有システムの構築と活用による教育実践では,昨年度のネットワークへの書き込み情報を蓄 積・参考にすることにより,多年度の情報を学生・教員・施設数職員間で共有でき,教育効果は大であった.. また,18年度も実習園でのレポートを,ネットワーク上で情報を書き込み・蓄積することにより,学生・教 員・施設数職員の間で情報を共有できた.レポート共有システムは,学生・教官・実習先施設数職員の感想・. 意見・コメントの書き込みを実習中・実習外の何時でも何処からでも可能にするとともに,学生のレポート (意見・感想等),教員側のコメントの閲覧は何時でも何処からでも可能になり,教育効果が大きい.. 本研究では,情報システムを構築するとともに,システムを利用して,データを蓄積・活用しながら教育 実践を行ったが教育効果は大きいものがあった.さらに,18年度は,実習状況をビデオ・写真で記録した内 容に基づいて,事後指導の教材として活用しながら教育実践を行うことにより,さらに大きな教育効果を上 げることができた.教育効果は学生の自己評価・授業評価の高さにみられるとともに,実習後の報告内容お よび最終レポートにおいても実習後の反復学習効果が洞察力を高めていることからもうかがえる.. 教育支援プログラムを活用した教育実践における課題の一つとしては,受け入れ施設との事前・事後の連 携をさらに密にして,構築したプログラムを施設側でも活用できる体制づくりが必要である.学生指導にお いても自分の意見・感想のみを書き込むのではなく,他の参加学生の意見を参考にしながら,他の学生の意 見にコメントできる欄を設定したり,レポート共有システムのコメントの書き込み箇所(行)の指定を可能 にするなどの課題も残されている.また,全体の意見を踏まえたレポートの課題の提出等,実習内容を深め,. 更なる教育効果をもたらす指導を検討する必要がある.さらに,今後は年度を重ねてレポート共有システム に書き込まれたデータを集積・蓄積・活用することにより,より大きな教育効果をあげることが期待される.. そのためには,蓄積データのキーワード検索システムを構築していく必要がある.また,16・17年度および 18年度の双方向遠隔授業は,実習先施設と大学間のみで動画の配信・受信のみを実施したが,今後は施設利 用者の一般家庭と施設間の動画配信をとおして,施設のあり方を学生と施設のみでなく利用者を含めた3者 関係および複数の施設と大学間の3機関以上で連携しながら双方向遠隔授業を同時にリアルタイムで実施す. ることによって,より大きな教育効果を上げていくことが期待される3)4). 謝 辞 本研究の実施にあたっては,実習先施設として受け入れてくださった上湯川保育園・函館市立はこだて幼 稚園・函館めぐみ幼稚園の教職員の方々に多くのご協力とご理解をいただいた.特に,山本三洋子氏(上湯 川保育園園長),毛利悦子氏(はこだて幼稚園園長)には,実習前・実習中・実習後の全般にわたって多く の助言と協力をいただいた.レポート共有システムへのコメントの書き込みでは,守田由美子氏(北海道教 育大学非常勤講師)に全般的協力をいただき,施設数職員のコメントでは,上湯川保育園・はこだて幼稚園. 91.
(11) 藤井 廣美・中川 宏生・加藤 進. の方々に実習後もコメントを通して指導をいただいた.また,本研究の実施にあたっては,原田茂芳氏(ニュー メディア函館センター長)にも多くのご協力とご理解をいただいた. 心よりお礼と感謝を申し上げたい.. 注 1)福祉情報処理論における双方向遠隔授業の実践内容については,参考文献の竹中康之他(2005)および藤井廣芙(2006) に記載されている.. 2)本研究では,データベースの蓄積に基づく教育実践を,独自のサーバを学内に設置して実施する予定であったが,予算の 関係で今回の研究では実施できなかった.今後は,独自のサーバーを学内に設置し,双方向遠隔授業設備を常設することに より,いつでも誰もが学外回線による情報ネットワークとデータベースを活用した教育実践を可能にすることが課題の一つ でもある. 3)共同研究の分担は,教育実践にあたっての実習先施設の選定・依頼・調整・学生指導等全般を藤井廣美が担当し,教育支 援システムの構築の双方向遠隔授業を加藤進(北海道教育大学函館校非常勤講師),施設実習情報の書き込み・閲覧システ ムの構築を中川宏生(北海道教育大学函館校非常勤講師)が担当した.ただし,教育システムの構築内容等については,教 育実践の事前・実践中・事後にわたって共に打ち合わせ・協議をした上で設定した.また,レポート共有システムヘの書き 込みのための準備・指導等は中川が主として担当・実施したが,その後の学生指導は藤井が担当し,研究全般にわたって3 人で協議・調整しながら実施した. 4)本稿は,平成16年度と平成17年度に北海道教育大学情報処理センターの研究プロジェクトとして実施した内容をさらに展 開・発展させたものである.. 参考文献 竹中康之・藤井廣芙・上林憲行・小山明夫・柴田孝・高橋義昭・原俊之・横山紫実・成田徳雄・中川宏生,情報ネットワーク を活用した産学連携双方向遠隔授業の実践,北海道教育大学紀要541,2005. 藤井廣美,幼児教育における男女共同参画教育に関する研究一保育園の事例を中心として−,北海道教育大学付属教育実践セ ンター紀要6,2005. 藤井廣美,双方向遠隔授業を活用した教育実践,北海道教育大学付属教育実践センター紀要7,2006. 藤井廣美・中川宏牛,地域情報インフラを活用した教育支援システムの構築と実践,北海道教育大学付属女手法処理センター. 紀要10,39−49,2005.. (藤井 廣美 北海道教育大学函館枚助教授). (中川 宏生 北海道教育大学函館校非常勤講師,㈱ニューメディア・企画開発室長) (加藤 進 北海道教育大学函館校非常勤講師,㈲みのり・代表取締役).
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