申
世
の
謎
に
つ
い
て
1
國
語
學
的
考
察
の
も
と
に
1
鈴
木
博
一
は
丶
に
は
二
た
び
あ
ひ
た
れ
ど
も
秋
田
縣
南
秋
田
郡
昭
和
町
で
探
集
さ
れ
た
謎
に
く
じ
び
ら
ふ
わ
ふ
わ
に
だ
ぼ
、
二
度
逢
う
ど
も
、
で
で
に
だ
ぼ
一
度
も
逢
わ
ね
あ
脣
。
と
い
う
の
が
あ
る
。
(﹃
言
語
生
活
﹄
38
年
1
月
42
頁
)
。
こ
れ
は
新
村
出
博
士
が
解
明
さ
れ
た
(﹃
東
亜
語
源
志
﹄
三
〇
六
頁
)
、
﹃
後
奈
良
院
御
撰
何
曾
﹄
(
群
書
類
從
第
28
輯
卷
五
〇
四
)
中
の
母
に
は
二
た
び
あ
ひ
た
れ
ど
も
父
に
は
一
度
も
あ
は
ず
く
ち
び
る
︹
注
1
︺
と
い
う
國
語
史
上
、
有
名
に
し
て
興
味
深
い
謎
の
方
言
に
遺
存
す
る
も
の
で
あ
る
。
こ
の
﹃
後
奈
良
院
御
撰
何
曾
﹄
が
U
つ
は
永
正
十
三
年
く
一
五
=
ハ
)
正
月
廿
日
の
後
柏
原
帝
染
筆
に
か
か
る
﹃
な
ぞ
だ
て
﹄
(
天
理
圖
書
館
藏
。
以
下
、
宸
筆
本
と
略
稱
)
で
あ
る
こ
と
を
、
﹃
宸
翰
英
華
﹄
(
昭
和
19
年
刊
)
の
解
題
に
基
づ
い
て
石
川
廣
氏
が
確
言
さ
れ
た
(﹁
後
奈
良
院
御
撰
何
曾
溯
源
考
﹂
i
﹃
言
語
と
文
藝
﹄
36
年
11
月
)
。
こ
れ
に
よ
つ
て
、
永
正
十
三
年
が
後
奈
良
帝
の
踐
祚
前
で
あ
る
こ
と
と
書
名
の
﹁
後
奈
良
院
﹂
と
の
關
係
に
つ
い
て
の
疑
問
(
湯
澤
幸
吉
郎
博
士
﹃
國
語
學
論
考
﹄
二
四
五
頁
)
は
氷
解
す
る
。
中
世
の
謎
に
っ
い
て
二
四
一
二
四
二
ど
こ
ろ
で
先
の
謎
が
﹃
國
語
學
辭
典
﹄
一
〇
七
〇
頁
に
、
豊
原
統
秋
の
﹃
體
源
抄
﹄
(永
正
九
年
林
鐘
中
旬
撰
)
に
す
で
に
見
え
る
旨
を
述
べ
て
お
り
、
こ
の
こ
と
は
石
川
氏
も
言
及
さ
れ
て
い
る
。
京
都
府
立
總
合
資
料
館
藏
の
寫
本
(
+
四
冊
)
か
ら
引
用
す
る
と
、
ナ
ソ
タ
テ
ニ
日
○
母
ニ
ハ
ニ
度
ア
フ
テ
○
父
ニ
ハ
一
度
モ
ア
ワ
ス
ク
チ
ヒ
ル
ト
ト
ク
(卷
十
一
下
19
オ
、
相
通
事
)
し
か
る
に
こ
の
謎
が
さ
ら
に
六
十
年
近
く
溯
る
文
獻
に
出
て
い
る
こ
と
が
高
橋
貞
一
博
士
に
よ
つ
て
見
い
だ
さ
れ
た
。
す
な
わ
ち
、
奥
に
﹁
享
徳
三
年
︿
一
四
五
四
﹀
餌
十
一
月
十
五
日
書
寫
了
右
筆
舜
榮
﹂
と
あ
る
叡
山
文
庫
(天
海
藏
)
の
十
三
卷
五
冊
﹃
聖
徳
太
子
傳
﹄
第
四
の
十
一
歳
の
個
所
に
見
え
る
の
で
あ
る
が
、
高
橋
博
士
の
御
教
示
に
よ
り
つ
つ
、
も
う
一
つ
の
謎
と
と
も
に
次
に
引
く
。
和
州
高
市
郡
釖
池
小
林
薗
で
三
十
六
人
の
童
子
逹
(皇
子
達
や
大
臣
ら
の
子
息
逹
)
が
太
子
の
知
惠
の
深
さ
を
種
々
試
み
る
場
面
で
あ
る
(私
に
句
讃
點
を
施
す
)
。
⋮
⋮
其
時
童
子
逹
、
サ
レ
ト
モ
思
ツ
ル
勝
負
ニ
ハ
又
負
ヌ
、
不
思
議
ノ
太
子
ノ
御
智
惠
ヤ
、
何
二
思
ト
モ
我
等
力
智
分
ニ
テ
ハ
不
可
奉
叶
一。
日
モ
晩
ヌ
レ
ハ
童
子
逹
ハ
宿
所
々
々
二
立
歸
リ
玉
ヘ
ハ
太
子
ハ
橘
ノ
宮
ヘ
ソ
御
歸
有
ケ
ル
。
童
子
逹
、
無
ヤ
本
意
一思
ハ
レ
ケ
ン
、
親
々
二
語
ラ
レ
ケ
ル
ハ
、
此
程
太
子
御
一
門
ノ
皇
子
逹
卿
相
ノ
息
面
々
二
寄
合
テ
卅
六
人
ハ
一
方
、
太
子
ハ
御
獨
ニ
メ ツ ラテ
樣
々
ノ
勝
負
ノ
有
ツ
ル
ニ
、
多
カ
ル
童
子
絡
二
負
テ
一
度
モ
勝
進
ス
ル
事
無
シ
、
哀
レ
、
奇
シ
キ
事
ヲ
父
母
我
等
二
教
へ
玉
カ
シ
、
ト
申
ケ
ル
ニ
、
人
ノ
親
ノ
子
ヲ
思
習
ナ
レ
ハ
、
何
事
ヲ
墓
々
シ
ク
作
出
シ
ツ
ト
ハ
覺
ネ
ト
モ
各
々
種
々
二
思
案
セ
リ
。
或
仁
、
子
二
教
ヘ
ケ
ル
樣
ハ
、
所
見
有
ン
事
ハ
御
智
惠
ノ
深
サ
、
御
思
慮
ノ
廣
サ
ニ
ハ
都
テ
不
可
有
隱
一、
田
夫
野
人
ノ
柴
ノ
庵
ノ
内
、
シ
竹
ノ
編
戸
ノ
栖
ニ
ツ
カ
ビ
習
ハ
セ
ル
具
足
、
詞
、
振
舞
ナ
ト
ハ
夢
ニ
モ
不
被
知
食
一、
淺
猿
ケ
ナ
ル
下
臈
ノ
申
シ
習
ハ
セ
ル
詞
、
振
舞
用
ル
事
共
ヲ
童
子
二
親
々
謂
教
ヘ
ケ
リ
。
サ
テ
各
々
親
ノ
難
勢
ヲ
受
テ
使
ヲ
橘
ノ
宮
ヘ
ソ
進
ケ
ル
。
爰
二
太
子
ハ
昨
日
ノ
事
思
食
出
シ
、
何
二
諸
ノ
童
子
土
ハ本
意
ヲ
失
ヒ
我
ヲ
恨
ラ
ン
、
一
度
モ
勝
負
二
勝
タ
セ
ネ
ハ
親
々
ニ
モ
語
ラ
ン
ト
思
食
ス
處
二
、
彼
ヤ ラ 使 者 來 テ 、 此 問 ノ 御 遊 二 參 相 ヒ 候 ツ ル 其 御 名 殘 忘 レ 遣 レ 候 ハ ネ ハ 、 又 ロ ト 勝 負 一 ロ ト 存 候 、 釖 ノ 小 林 へ 參 合 度 候 、 ト 申 ケ ル ニ 、 太 子 ノ 御 返 事 ニ ハ 、 自 是 一 勸 申 度 候 ツ ル ニ 遮 テ 承 候 上 ハ 急 キ 御 出 候 へ 、 則 罷 出 ヘ シ 、 ト 仰 ケ レ ハ 、 童 子 逹 モ 面 々 二 出 ラ レ ケ リ 。 サ テ 太 子 ノ 云 ハ ク 、 珍 キ 勝 負 一 結 ヒ 設 タ ル 由 、 以 使 者 一承 候 ツ ル ハ 何 ナ ル 事 ソ ヤ 、 イ ツ疾
々
、
ト
仰
ケ
レ
ハ
、
童
子
逹
各
々
何
ヨ
リ
モ
面
白
氣
ニ
テ
、
指
タ
ル
風
惰
何
事
力
候
ヘ
キ
、
連
日
ノ
御
遊
名
殘
惜
サ
ニ
參
合
マ
テ
カ タ リ ニ テ 候 、 ト 申 サ ル ル 時 、 太 子 険 ヲ 含 坐 テ 、 意 得 タ リ 、 譬 ハ 此 間 ノ 勝 負 二 度 々 負 玉 テ 失 本 意 一面 々 二 宿 所 々 々 ニ テ 語 玉 二 父 母 ノ 哀 ミ ノ 深 サ ハ 何 ニ モ シ テ 勝 セ ハ ヤ ト 思 テ 種 々 ノ 難 事 ヲ 謂 教 玉 ヲ 學 ヒ 覺 テ 坐 ス ナ 、 兒 ハ 決 定 負 ヌ ヘ ケ レ 、 推 量 ハ ヨ モ 不 違 一、 早 ノ \ 、 ト 仰 ケ ル ニ 、 卅 六 人 皆 面 ヲ 赤 メ 舌 振 テ 、 サ レ ハ 何 ト テ 知 食 シ ケ ル ソ ヤ 、 誰 申 ツト モ 覺 ヘ ス 、 サ ス カ 御 一 門 ノ 君 逹 ハ 皆 此 方 二 御 同 心 ア ル 事 也 、 況 ヤ 卿 相 ノ 子 息 逹 ハ (皆 此 方 ) サ リ ト モ 心 替 ハ ヨ
ナ ト モ ア ラ シ 物 ヲ 、 ト テ 先 或 童 子 、 太 子 ノ 御 前 二 參 テ 本 ヨ リ 習 澄 セ ル 事 ナ レ ハ 、 何 々 ト 云 事 ヲ 一 結 ヒ 仕 候 ハ ン 、 ト ナ ト 申 サ レ ケ ル ニ 、 太 子 ハ ヱ ミ く ト 打 険 ヒ 、 阿 子 ハ 名 字 ヲ タ ニ 未 知 一 、 其 趣 ハ 何 様 ナ ル 事 ソ 、 ト 御 尋 有 シ ニ 、 何 ヒ ヒ ヒ テ フ ナ ト 々 ト 申 ハ 敵 方 力 難 ノ 詞 ヲ 作 成 テ 問 時 、 作 成 問 、 其 意 二 不 替 一 答 へ 候 、 遲 ク 答 ル 時 何 々 ト 申 ヲ 軈 テ 名 字 二 置 口 口 、 サ レ ハ コ ソ 兒 ハ 惣 シ テ 意 得 ヌ 事 ナ レ ト モ 面 々 本 ト ス ロ ロ 上 者 疾 々 、 ト 仰 ケ レ ハ 、 此 童 子 、 母 ニ ハ 再 ヒ 合 ヘ ト 毛 、 ル サ ノ ス ル 何 ト ヤ 父 ニ ハ 一 度 モ 不 合 一 、 所 具 一五 躰 六 根 ノ 中 ニ ハ 何 ク ソ ヤ 、 ト 立 タ リ 。 太 子 軈 テ ノ 御 詞 二 、 不 思 議 ヤ ナ 、 大 ニ 段 不 審 也 、 親 ハ 一 世 ノ 契 ニ テ 只 今 生 計 ナ レ ハ 再 ヒ 難 會 期 一、 而 二 父 一二 度 モ 會 ヌ ハ 常 二 云 習 セ ル 事 也 、 付 其 一 母 中 世 の 謎 に つ い て こ 四 三
二 四 四 二 再 ヒ 會 ラ ン 事 コ ソ 意 得 難 ケ レ 、 母 二 合 ハ ハ 父 ニ モ 可 合 一、 難 心 得 一 事 哉 、 ト 打 案 シ 坐 テ 、 人 ノ 身 ノ 五 躰 六 根 ノ 中 ナ ラ バ 何 處 ソ ト 立 ル ナ 、 ト 仰 ケ レ ハ 、 彼 童 子 逹 、 サ レ ハ コ ソ 知 食 レ ネ 、 勝 ヌ ル ヨ 噛 ト 悗 テ 有 シ ニ 、 太 子 ノ 御
智
惠
ノ
深
サ
ハ
、
ヤ
御
前
逹
、
父
母
ハ
定
惠
ノ
ニ
法
、
陰
陽
ノ
ニ
門
也
、
世
間
出
世
此
ヲ
離
レ
テ
諸
法
ノ
當
躰
不
可
立
一、
委
ク
云
ヘ
ハ
長
短
高
下
天
地
畫
夜
寒
熱
春
秋
廣
狹
方
圓
、
何
レ
カ
父
母
ヲ
離
レ
陰
陽
ヲ
ハ
ナ
レ
タ
ル
、
サ
レ
ハ
眞
言
ニ
ハ
阿
吽
二
字
、
カ タ ト ル 金 剛 力 士 ノ ニ 王 、 是 モ 父 母 ノ ニ 也 、 金 剛 ハ ロ ヲ 開 ク 、 阿 一 字 ヲ 顯 ス 、 力 士 ハ ロ ヲ 塞 ク 、 吽 ノ 一 字 ヲ 顯 也 、 象 父 一 シ ト 阿 字 ハ ロ ヲ 塞 テ 謂 ン ト ス レ ハ 不 被 云 一、 吽 ノ 字 ハ 何 カ ニ ロ ヲ 不 合 一 ス レ ト モ 合 、 是 母 ノ 形 也 、 爰 二 知 ヌ 、 母 ト 云 時 ハ ニ 度 ヒ 合 レ 唇 励 父 ト 云 時 ハ 一 度 モ 不 合 一、 一 定 唇 ヲ 云 ナ 、 童 子 逹 、 ト 仰 ケ リ 。 此 時 童 子 逹 興 覺 テ ア キ レ テ 、 不 思 ノ 御 知 惠 ヤ 、 今 ハ 何 ナ ル 事 ヲ 申 ト モ 御 答 可 有 一 ソ 、 ト 思 テ 心 弱 ク 思 ケ ル 處 二 、 或 人 父 母 子 ヲ 勝 ト 思 テ 淺猿
キ
田
夫
ノ
態
ヲ
教
ヘ
シ
ヲ
申
ケ
ル
ハ
、
白
色
不
動
白
日
ノ
上
二
座
シ
テ
上
下
隨
折
一
利
生
、
打
返
シ
テ
人
躰
ニ
ハ
何
ソ
ヤ
、
ニ テ ヲ ス ヲ繰
焔
軈
謹
楚
顧
ノ蝶
陛
犁
一
意
ハ
褶
臼
ト
云
事
也
、
鬻
ハ
監
動
ト
モ
、
下
ハ
不
動
、
上
ハ
動
ク
、
打
返
一ア
身
ニ ナ ト く フ ノ 中 ノ 五 躰 六 根 何 ク ソ ヤ ト ハ 、 有 身 一時 ハ 上 ハ 不 動 一、 下 ノ ミ 動 ク ト 立 タ ル 何 々 也 、 人 力 非 所 及 一見 ハ 更 二 不 知名
字
マ
何
況
ヤ
・
正
躰
ヲ
ヤ
・
但
了
簡
ヲ
加
を
一
・
上
ハ
動
キ
下
ハ
不
勲
、
隨
垂
私
生
ト
ハ
、
世
聞
ヲ
養
ナ
イ
命
ヲ
扶
ケ
利
ス ル ハ 米 コ ソ ア レ 、 サ レ ハ 米 二 成 ス ニ ハ 慴 臼 ト 云 物 力 下 ハ 定 ヲ 象 ト テ 不 動 一 、 上 ハ 惠 ヲ 象 テ 種 々 二 廻 リ 動 ク 、 キ ヲ ル ヲ ッ メ ッ 是 世 間 出 世 ノ 根 本 續 生 一 求 道 一源 也 、 サ レ ハ 賤 ノ 女 賤 ノ 男 ノ 態 ナ リ 、 推 ス ル ニ 褶 臼 ナ 、 又 打 返 テ 人 體 ノ 申 ニ ア ラ ハ 是 ハ 上 ハ 不 動 一、 下 ハ 動 ナ ラ バ 、 頤 ナ 、 上 ノ 歯 莖 ハ 動 カ ヌ ニ 下 ノ 歯 莖 ハ 動 ク 、 見 力 思 案 ハ ヨ モ 不 替 一物 ヲ 、 ト ニ仰
ケ
レ
ハ
、
卅
六
人
ノ
童
子
、
所
見
ア
ル
事
ハ
不
及
申
一
、
無
所
見
一事
ノ
無
窮
ナ
ル
ヲ
モ
皆
答
玉
ソ
ヤ
、
人
ハ
見
タ
ル
物
ヲ
コ
ソ
知
レ
、
不
見
一
物
ヲ
知
ル
事
ヤ
有
、
此
レ
程
ノ
御
事
ナ
レ
ハ
中
く
勝
負
ヲ
諍
コ
ソ
愚
ナ
レ
、
ト
テ
皆
思
停
リ
給
ケ
リ
。
此
童
子
逹
モ
ナ
ヘ
テ
ノ
人
二
非
ス
、
智
惠
モ
深
ク
才
藝
モ
勝
レ
玉
ヘ
ル
御
一
門
ノ
皇
子
、
大
臣
逹
ノ
息
男
ナ
ル
ニ
、
實
二
太
子
十
一
歳
目
︹
注
2
︺
出
カ
リ
ケ
ル
應
間
ノ
利
生
哉
⋮
⋮
(
58
オ
∼
62
オ
)
右
の
第
二
の
謎
は
さ
て
お
い
て
、
第
一
の
謎
に
つ
い
て
永
正
の
頃
の
な
ぞ
だ
て
と
比
べ
る
と
、
﹁
具
す
る
所
の
五
躰
六
根
の
中
に
は
い
つ
く
そ
や
﹂
と
い
う
ヒ
ン
ト
が
示
さ
れ
て
い
る
點
が
異
な
る
。
さ
ら
に
解
答
へ
の
過
程
で
は
佛
教
色
が
濃
厚
で
あ
る
の
が
特
微
的
で
あ
る
が
、
﹁
母
と
云
ふ
時
は
こ
た
び
唇
が
合
ひ
、
父
と
云
ふ
時
は
一
度
も
合
は
ず
﹂
と
解
い
て
、
新
村
博
士
と
等
し
く
ハ
行
音
が
唇
音
で
あ
る
こ
と
か
ら
﹁
唇
﹂
と
い
う
正
答
を
導
き
出
し
て
い
る
點
は
、
本
居
内
遠
の
﹁
後
奈
良
院
御
撰
何
曾
之
解
﹂
(﹃
増
補
本
居
宣
長
全
集
第
+
二
卷
﹄
所
牧
)
の
後
世
的
誤
答
と
は
異
な
つ
て
、
さ
す
が
に
謎
製
作
時
の
も
の
と
言
え
よ
う
。
そ
し
て
﹃
太
子
傳
﹄
の
記
事
か
ら
察
す
れ
ぼ
、
當
時
こ
れ
ら
の
謎
が
高
貴
の
世
界
に
の
み
行
な
わ
れ
て
い
た
と
限
定
す
る
こ
と
が
で
き
な
い
よ
う
で
あ
つ
て
、
ひ
い
て
は
宸
筆
本
所
載
の
は
丶
に
は
二
た
ひ
あ
ひ
た
れ
と
も
ち
㌧
に
は
一
と
も
あ
は
す
く
ち
ひ
る
等
、
總
數
一
九
四
(
重
出
一
を
含
む
)
の
謎
も
堂
上
世
界
に
も
て
あ
そ
ぼ
れ
た
も
の
の
み
で
あ
る
と
は
、
必
ず
し
も
限
定
で
き
な
い
こ
と
︹
注
3
︺
に
な
り
そ
う
で
あ
る
。
〆
二
ゆ
る
、り
の
風
石
川
氏
の
説
か
れ
て
い
る
よ
う
に
、
宸
筆
本
は
類
從
本
の
誤
り
を
多
く
訂
し
得
る
が
謎
の
配
列
順
は
か
な
り
異
な
つ
て
い
る
。
そ
の
樣
子
は
左
に
檢
索
の
便
を
も
象
ね
て
樹
比
す
る
が
ご
と
く
で
あ
つ
て
、
類
從
本
の
祀
本
は
お
そ
ら
く
宸
筆
本
の
よ
う
に
數
葉
ず
つ
綴
じ
た
も
の
三
部
を
合
綴
し
て
一
書
と
成
し
て
い
て
、
あ
る
時
期
に
そ
れ
ぞ
れ
の
部
内
ご
と
に
綴
じ
違
い
が
生
じ
た
の
で
は
な
い
か
と
思
わ
中
世
の
謎
に
つ
い
て
二
四
五
二 四 六 れ る ( 左 表 の 数 字 は 謎 の 竭 出 順 を 示 す 番 號 ) 。
宸
筆
本
と
類
從
本
と
の
本
文
の
相
違
か
ら
、
異
な
る
解
き
よ
う
も
考
え
ら
れ
る
場
合
が
あ
る
。
宸
03
ゆ
る
り
の
つ
し
か
せ
は
い
た
て
1
類
72
ゆ
る
り
の
追
風
は
い
た
て
答
の
脛
楯
は
易
林
本
篩
用
集
(
日
本
古
典
全
集
。
以
下
、
易
林
本
と
略
稱
)
も
日
葡
辭
書
も
ハ
イ
ダ
テ
と
濁
る
。
さ
て
問
題
か
ら
答
へ
の
道
筋 を 本 居 内 遠 の 解 は 、 ゆ る り は 圍 爐 な り 。 風 ふ け ば 灰 の た つ よ り 、 は ひ だ て と 解 た る な り (傍 線 稿 者 、 以 下 す べ て 同 じ 。 な お 私 に 句 讀 點 を 施 し 濁 點 を 補 う ) と し 、 鈴 木 彙 三 氏 編 ﹃ こ と ぼ 遊 び 辭 典 ﹄ ( 以 下 、 辭 典 と 略 稱 ) も こ れ を 受 け つ ぎ 、 ゆ る り は 圍 爐 裏 の 訛 。 こ れ に 風 が 吹 き つ け れ ぼ 、 灰 洲 立 つ と す る 。 圍 爐 裏 は 兩 足 院 本 節 用 集 や 元 和 本 下 學 集 ( 岩 波 文 庫 。 以 下 、 下 學 集 と 略 稱 ) で は イ ロ リ で あ る が 、 永 祿 六 年 ( 一 五 六 三 ) の 抄 で あ る 玉 塵 抄 (國 立 國 會 圖 書 館 藏 ) に ユ ル リ ノ 灰 ヲ カ キ ダ イ テ 火 ヲ サ カ イ テ ア タ ル ポ ト ニ ( 一 19 オ 。 叡 山 文 庫 藏 本 も 同 文 ) な ど と 見 え 、 天 正 十 八 年 本 節 用 集 や 日 葡 辭 書 に も ユ ル リ が 見 え る か ら 、 問 題 文 中 の ﹁ ゆ る り ﹂ を 圍 爐 裏 の 意 に 取 る こ と が で き 、 さ ら に ﹁ 追 風 ﹂ の 意 を ﹁ 吹 き 入 る 風 ﹂ (大 目 本 國 語 辭 典 の 第 三 義 ) と 見 れ ば 、 内 遠 や 辭 典 の 自 動 詞 ﹁ た つ ﹂ ( し た が つ て ﹁ た て ﹂ は 命 令 形 ) を 、 他 動 詞 に 改 め ﹁ 圍 爐 裏 に 風 が 吹 き 入 つ て 灰 劃 立 て ﹂ (連 用 止 め ) と 解 い て 何 ら 支 障 は な い 。 が 、 類 從 本 の 本 文 の 場 合 に は 次 の よ う な 解 き 方 も ま た 可 能 な の で は な い か と 考 え ら れ る 。 そ れ は ﹁ 追 風 ﹂ を ﹁ 追 ひ ざ ま に う し ろ よ り 吹 き 來 る 風 ﹂ ( 大 日 本 國 語 辭 典 の 第 一 義 ) の 意 に 取 り 、 ﹁ ゆ る や か に 吹 く 風 が 蠅 を 追 い 立 て る ← 蠅 立 て ﹂ (命 令 形 。 も つ と も 連 用 止 め に も 見 得 る ) と 解 く の で あ る 。 ﹁ だ ら り 刎 帶 ﹂ の ご と く に ﹁ ゆ る り の 風 ﹂ と い う 表 現 法 も あ り 得 た の で は あ る ま い か と 考 え 、 そ の 風 は 蠅 を 吹 き 飛 ぼ す ほ ど の 烈 し い 毛 の で は な く 止 ま つ て い る の を 追 い 立 て る 程 度 の ゆ る や か な も の で あ つ た と 見 る な ら ば 、 當 時 の 蝿 の 發 音 が ハ イ で あ つ た 證 に 支 え ら れ て こ の 私 解 も 成 立 し 得 る か と 思 わ れ る の で あ る 。 中 世 の 謎 に つ い て 二 四 七
: 二 四 八 蝿 の 發 音 に つ い て は 現 在 、 腿 東 で ば 八 イ 、 關 西 で は ハ エ の よ う で あ る が (昭 和 35 年 5 月 14 日 朝 日 新 聞 夕 刊 ) 、 古 く ば ハ へ で あ つ た こ と は 古 辭 書 類 に 明 ら か で あ る (大 言 海 參 照 ) 。 こ れ が 室 町 期 に は ハ エ ( た だ し エ の 音 は 全 般 に 當 時 ヤ 行 の イ ェ の 音 で あ つ た と 見 る の が 通 説 。 つ い で に ハ 行 音 が フ ァ 行 音 で あ つ た こ と は こ こ で は 關 係 し な い ) と 音 變 化 し て 來 て い た は ず で あ る け れ ど も 、 天 草 版 伊 曾 保 物 語 (以 下 、 伊 曾 保 と 略 稱 ) で は 全 例 h 巴 で あ つ て f a y e で は な く 、 易 林 本 や 下 學 集 も す べ て ハ イ で あ る 。 こ れ は 例 え ば 、 宸 34 や ふ れ か ち や う か い る ︹ 注 4 ︺ の 蛙 ( か い ヵ チ ヤ ウ → 蚊 入 る 。 易 林 本 ﹁ 蚊 帳 ﹂ ) な ど と 同 じ く 、 ア 段 音 に 後 接 す る エ (団 Φ ) 音 は イ 音 に 轉 ず る 傾 向 が あ つ た か ら で あ る 。 つ じ か ぜ
し
か
し
、
宸
03
﹁
ゆ
る
り
の
つ
し
か
せ
﹂
と
い
う
本
文
で
は
、
﹁
ゆ
る
や
か
な
旋
風
﹂
が
自
家
撞
着
的
な
趣
を
呈
す
る
が
ゆ
え
に
、
ユ
﹁
ゆ
る
り
﹂
を
圍
爐
裏
と
解
す
る
方
向
で
し
か
解
き
得
な
い
の
で
は
な
い
か
と
思
わ
れ
る
。
そ
し
て
、
﹁
つ
し
←
辻
←
追
﹂
と
い
う
轉
寫
徑
路
に
よ
つ
て
類
從
本
の
本
文
の
出
現
が
考
え
ら
れ
る
と
す
れ
ば
、
類
從
本
に
あ
つ
て
も
圍
爐
裏
の
方
向
で
解
く
の
が
こ
の
謎
創
作
者
の
意
に
叶
う
こ
と
に
は
な
る
で
あ
ろ
う
。
し
か
し
ま
た
出
題
者
の
豫
期
し
な
い
解
答
で
も
、
當
時
の
言
語
調
度
風
俗
習
慣
な
ど
に
違
︹
注
5
︺
背
し
な
け
れ
ば
正
答
と
認
め
ら
れ
る
場
合
も
あ
り
、
ま
し
て
出
題
文
に
變
化
が
生
じ
て
來
て
い
る
場
合
は
、
か
か
る
可
能
性
を
む
げ
に
否
定
し
去
る
こ
と
は
難
し
い
の
で
は
あ
る
ま
い
か
と
考
え
ら
れ
る
の
で
あ
る
。
三
オ
段
開
合
の
別
︹
注
6
︺
室
町
時
代
に
は
一
般
に
オ
段
長
音
に
カ
け
る
開
音
と
合
音
と
の
區
別
が
守
ら
れ
て
い
た
。
そ
し
て
工
段
拗
長
音
は
オ
段
合
長
音
と
同
音
で
あ
つ
た
。
し
た
が
つ
て
宸 89 御 ま へ に さ ふ ら ふ ご よ う ま っ に お い て ﹁ 御 用 待 つ ← 五 葉 松 ﹂ の 用 ( よ う ) と 葉 ( え ふ ) ど が 同 音 と し て 解 け る の で あ る 。 こ の 開 合 の 別 と い う 覗 點 か ら 辭 典 の 犯 し て い る 解 法 の 誤 り を 擧 げ る と 、 宸 52 兒 の か み な き は ほ う し に は お と り ゐ 中 に を け こ い し ー に お い て ( 辭 典 は 類 燭 に 掾 つ て い る が 、 今 の 場 合 本 文 に 重 要 な 違 い は な い )、 辭 典 は む つ む ゆ ね む む む む ロ ほ う し に は お と り は 、 は う し か ら は う ( お ) を 取 る こ と で 、 し が 殘 つ て 、 こ し と す る け れ ど も 、 内 遠 が 解 い た よ う に ﹁ 劣 り ﹂ を ﹁ 尾 綵 り ﹂ と 見 て 、 ﹁ ほ う し ﹂ の ﹁ し ﹂ を 採 る と す べ き で あ る 。 辭 典 の ご と き 解 法 の う べ な い 難 い 理 由 は 、 當 時 に お け る ﹁ 法 師 ﹂ の 發 音 が 、 辭 典 に 考 え て い る 開 音 ﹁ は う し ﹂ で は な く て 合 音 ﹁ ほ う し ﹂ で あ つ た と 思 わ れ る か ら で あ る 。 天 理 圖 書 館 藏 ﹃ 謎 の 本 ﹄ ( 以 下 、 謎 本 と 略 稱 。 石 川 氏 か ら 借 覽 の 原 本 寫 眞 に よ る 。 辭 典 に 付 載 さ れ て い る が 些 少 の ミ ス が あ る 。 原 本 は 答 を 問 題 か ら 離 し て 別 に ま と め て あ る が 本 稿 で は 續 け る ) に お い て は 、、 rJ S ,;,, は 口 頭 語 的 色 彩 を 濃 く し て 謎 17 ち こ に か み は な い そ ほ う し か み に を く な い な か に を け 碁 石 ホ フ シ ヒ ヤ ウ ホ ウ ホ ウ と 記 さ れ て い る が 、 や は り ﹁ ほ う し ﹂ と あ る 。 法 の 字 音 は 漢 音 は 開 音 で あ る が 、 ﹁ 法 師 ﹂ (易 林 本 ) 、 ﹁ 兵 法 ﹂ ・ ﹁ 法 リ ヤ ウ 令 ﹂ (陽 明 文 庫 藏 の 下 學 集 。 以 下 、 陽 明 本 と 略 稱 ) な ど 呉 音 で は ム 呈 日 で あ る 。 こ の よ う に し て 、 宸 m ほ う つ き ま さ か り ホ ウ ッ キ を ﹁ 法 盡 き ← 魔 盛 り ﹂ と 解 き 得 る の も 、 ﹁ (佛 ) 法 ﹂ の 音 が ﹁ 山 茨 菰 ﹂ (下 學 集 ) と 同 じ く 合 音 だ か ら で あ る 。 同 樣 に ﹃ 宣 胤 卿 記 ﹄ 文 明 十 三 年 の 謎 ( 史 料 大 成 42 。 以 下 、 宣 胤 と 略 稱 ) の 申 世 の 謎 に つ い て 二 四 九
二 五 〇 風 絡 成 雨 聲 香 、 又 セ ウ 、 鷹 名 ( 一 八 八 頁 ) を 辭 曲 ハ が 誤 答 し て ﹁ 香 ま た は 笙 ﹂ と し て い る ( 一 八 六 頁 ) の も 訂 し 得 よ う 。 實 際 に こ の 謎 を 解 く と ﹁ カ + ウ H カ ウ 、 ま た は 、 セ + ウ ほ セ ウ ﹂ が 得 ら れ る が 、 ロ ド リ ゲ ス 日 本 大 文 典 ( 以 下 、 大 文 典 と 略 稱 ) に P e r a T a c a s t e m p r o p r i o ° D a i ° F e m e a °
{
× O ° M a c h o ° ﹁ ・ v t , C o n o t a c a u a D a i s " 図 O s 噌 ( 80 オ ) せ う と 見 え 、 セ ウ ( 小 ) は 雄 鷹 の 謂 な の で あ る ︹ 土 井 忠 生 先 生 譯 書 三 一 三 頁 參 照 。 な お 和 字 正 濫 鈔 に 語 源 を ﹁ 兄 鷹 ﹂ と し て い る (﹃ 契 沖 全 集 7 ﹄ 一 七 〇 頁 ) の は 、 ダ イ ( 大 ) と い う 雌 鷹 の 稱 呼 と 關 連 性 が な い 點 か ら も 誤 り で あ る ︺ 。 さ ら に ま た 、 辭 孟 ハ に 收 載 洩 れ の 宸 93 し ゆ く の け い せ い 一 こ つ て う に 對 す る 内 遠 の 次 の よ う な 解 法 も 、 同 じ 見 地 か ら 誤 り で あ る と 見 做 さ れ る (類 囎 は ﹁ し ゅ く ﹂ を ﹁ や ど ﹂ ) 。 け い せ い は 遊 女 な り 。 功 を つ み て 手 だ れ の 業 あ る を こ つ ち や う と い へ り 。 こ は 、 よ く 人 の 心 を ま ど は す 意 を 古 狐 の 人 を 魅 す に た と へ 、 古 狐 は 頂 の 毛 兀 た る よ り し て 兀 頂 と い ふ 戯 語 に て 、 そ の 中 に も 第 一 の 功 者 の 意 に て 一 兀 頂 一 越 調 と 解 た る な れ ど (以 下 省 略 ) 當 時 の 謎 が 二 段 謎 で あ る 點 か ら 、 二 こ つ て う ﹂ に 意 味 を ダ ブ ラ せ て 解 こ う と す る 方 針 に は 賛 成 で あ る け れ ど も 、 ︹ 注 7 ︺ 頂 ( ち ゃ う ) と 調 ( て う ) と は 開 合 が 異 な る の で 、 到 底 從 い 難 い の で あ る 。 開 合 の 別 は 謎 本 に お い て も 守 ら れ て い る 。 例 え ば ︹ 注 8 ︺ 謎 2 ね う は う の む か ひ か み も い は ψ で ま りニ ョ ウ バ ウ に お い て 、 ﹁ ね う は う ﹂ に は ﹁ 女 房 ﹂ (易 林 本 ) ー 1 天 草 版 李 家 物 語 ( 以 下 、 天 草 夲 家 と 略 稱 ) や 伊 曾 保 で も 同 樣 に ね う は う
ロ
げ
ひ
び
α
1
と
﹁
子
卯
方
﹂
と
が
懸
か
つ
て
い
て
、
十
二
支
を
方
角
に
配
し
た
場
合
の
ネ
︿
北
V
と
ウ
︿
東
V
と
の
向
か
い
の
ウ
マ
か み︿
南
﹀
と
ト
リ
︿
西
V
と
の
上
の
音
を
言
わ
な
け
れ
ぼ
マ
リ
が
得
ら
れ
る
。
方
の
字
音
は
、
夲
方
の
意
や
藥
方
の
ご
と
き
意
の
時
に
は
ば う合
音
ホ
ウ
で
あ
つ
た
が
、
方
向
の
意
の
時
に
は
開
音
ハ
ウ
で
あ
つ
て
(
土
井
先
生
﹃
近
古
の
國
語
﹄
三
〇
頁
)
、
女
房
の
房
の
開
音
た
る
と
同
様
で
あ
つ
た
の
で
あ
る
。
宮
内
廳
書
陵
部
藏
の
﹃
寒
川
入
道
筆
記
、
譴
誥
之
事
﹂
(以
下
、
寒
川
と
略
稱
。
石
川
氏
藏
の
原
本
寫
眞
に
ょ
る
)
で
も
開
合
の
別
は
一
應
守
ら
れ
て
い
る
よ
う
で
あ
る
が
、
石
川
氏
が
續
群
書
類
從
本
(33
輯
上
)
に
お
け
る
誤
り
を
書
陵
部
本
に
よ
つ
て
訂
さ
れ
た
(﹁
寒
川
入
道
筆 記 の 謎 小 考 ﹂ 1 ﹃ 國 語 國 文 ﹄ 35 年 4 月 ) 中 の [ つ に 、 あ る い は 後 世 の 誤 寫 に 基 づ く 混 同 か と 臆 測 さ れ る も の が あ る 。 そ れ は 寒 63 し 丶 と ら の の と を き つ て か ん や う の 用 に た 丶 す 何 ソ 十 六 ら か ん カ ソ ヨ ウの
傍
線
部
で
あ
つ
て
、
こ
れ
は
﹁
肝
要
﹂
の
語
の
か
な
が
き
と
思
わ
れ
る
け
れ
ど
も
、
易
林
本
に
は
﹁
肝
要
﹂
と
あ
り
、
﹁
要
﹂
は
合
音
。
そ
し
て
次
出
の
﹁
用
﹂
も
ま
た
合
音
で
兩
者
合
致
し
て
謎
が
解
け
る
。
し
た
が
つ
て
傍
線
部
は
も
と
﹁
か
ん
よ
う
﹂
も
し
く
は
﹁
か
ん
え
う
﹂
と
あ
つ
た
の
で
は
な
か
ろ
う
か
と
推
測
さ
れ
る
。
四
四
つ
が
な
ジ
ヂ
ズ
ヅ
の
い
わ
ゆ
る
四
つ
が
な
の
混
同
は
、
東
國
で
は
早
く
鎌
倉
中
期
の
日
蓮
の
滄
息
に
見
え
(
土
井
先
生
・
森
田
武
博
士
﹃
國
語
史
要
説
﹄
九
四
頁
)
、
天
正
本
狂
言
(
日
本
古
典
全
書
﹃
狂
言
集
的
﹄
所
收
)
に
お
け
る
多
數
の
混
亂
例
も
東
國
語
系
に
お
い
て
の
も
の
申
世
の
謎
に
つ
い
て
二
五
一
二
五
二
と
思
わ
れ
る
。
他
方
、
京
畿
語
に
據
る
と
思
わ
れ
る
文
獻
に
お
い
て
は
、
清
原
宣
賢
自
筆
の
春
秋
左
傳
抄
(京
大
圖
書
館
藏
)
で
は
﹁
踞
射
妨
誇
漕
ア
﹂
と
あ
つ
て
(
有
坂
秀
世
鑾
﹃
音
韻
論
﹄
二
一
九
募
照
)
、
確
か
な
例
と
し
て
は
天
草
豢
の
﹁
灸
治
﹂
を
憙
u帥
(
三
七
六
頁
)
府
立
總
合
資
料
館
藏
の
百
ご
十
句
本
夲
家
物
語
(以
下
、
百
二
+
句
本
と
略
稱
)
は
﹁
き
う
ち
﹂
1
と
す
る
混
同
な
ど
が
、
比
率
上
微
小
な
が
ら
若
午
拾
え
る
。
さ
て
湯
澤
博
士
は
﹃
室
町
時
代
の
言
語
研
究
﹄
三
四
頁
に
、
寛
永
十
五
年
版
蒙
求
抄
(
+
冊
)
の
四
つ
が
な
混
同
例
を
六
例
示
さ
れ
た
(
次
の
①
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
)
。
そ
れ
以
外
に
も
な
お
幾
つ
か
の
混
同
例
が
み
い
だ
さ
れ
る
の
で
、
併
せ
て
示
す
と
次
の
と
お
り
で
あ
る
。
O
ジ
を
ヂ
と
す
る
も
の
。
カ ク ワ ホ ① 嘉 禾 ト 云 フ ハ ⋮ ⋮ 尚 書 二 畝 ヲ ニ ツ ニ シ テ 末 ノ 穗 ガ マ ヂ ツ テ イ ネ ノ デ キ タ ヲ 云 フ ソ ( 五 3ー ウ ) キ チ ② 雉 ガ ツ レ テ ア ル ク ソ ( 一 4 ウ ) ツ チ ウ フ ③ 迂 占 ヲ シ タ ソ ( 二 57 オ ) ハ ウ チ ヤ ク ブ シ ソ ④ 傍 若 無 人 ( 三 26 ウ ) ユ ウ チ ユ ツ ⑤ 憂 恤 ( 三 32 オ ) チ ヤ ツ ク ワ ソ ⑥ 弱 冠 ハ ニ 十 ノ 年 ソ (五 3 ウ ) チ ヤ ツ ク ワ ン ⑦ 弱 冠 ノ 年 ( 五 14 オ ) ロ ズ を ヅ と す る も の 。 見 あ た ら な い 。 日 ヂ を ジ と す る も の 。 ホ ウ ⑧ 天 子 ノ ヲ ウ ヂ ジ ヤ 程 二 後 二 侯 二 封 ゼ ラ レ タ ゾ (四 2 オ )ワ ス ヘ メ
⑨
世
話
二
勸
學
院
ノ
雀
ハ
蒙
求
ヲ
囃
ル
ト
云
ハ
李
澣
カ
ツ
カ
ウ
小
女
ノ
名
ヲ
雀
ト
云
者
ソ
其
レ
マ
デ
此
ノ
蒙
求
ヲ
囀
ル
ソ
ジ
キ
ノ
雀
デ
ハ
﹂無
ソ
(
一
序
2
ウ
)
ジ キ ⑩ 上 書 ハ 書 ヲ 直 二 天 子 二 奉 ツ ル ソ ( 五 19 ウ ) ウ シ ⑪ 鹿 ガ 氏 ヂ ヤ ホ ト ニ ヨ ソ ヘ テ 云 フ タ ソ ( 七 2 ウ ) カ ジ ⑫ 鍛 治 ( 七 13 ウ ) シ エ ク ⑬ 軸 ( 七 14 オ ) ジ ヨ ⑭ 除 ( 七 40 ウ ) ソ ウ シ ヨ ⑲ 大 丈 夫 ハ 天 下 ヲ コ ソ 掃 除 セ ウ ズ レ (+ 14 ウ ) 四 ヅ を ズ と す る も の 。 ユ セ ツ⑯
或
作
レ
鯖
々
ハ
魚
ノ
名
ソ
赤
作
レ
駈
ナ
マ
ズ
ト
云
フ
説
モ
ア
リ
(四
62
ウ
)
こ
れ
ら
の
諸
例
の
中
、
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑩
⑬
⑫
⑱
⑭
⑮
は
漢
字
に
付
せ
ら
れ
た
ふ
り
が
な
の
中
で
の
混
同
で
あ
つ
て
、
こ
れ
ら
の
ふ
り
が
な
の
ほ
と
ん
ど
す
べ
て
が
兩
足
院
そ
の
他
に
所
藏
さ
れ
て
い
る
古
寫
本
や
古
活
字
本
に
存
し
な
い
と
こ
ろ
か
ら
し
て
、
寛
永
十
五
年
版
の
梓
行
者
に
よ
つ
て
施
さ
れ
た
も
の
で
あ
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、
し
た
が
つ
て
も
し
も
こ
れ
ら
を
も
つ
て
四
つ
が
な
混
同
の
徴
證
と
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る
な
ら
ぼ
、
寛
永
十
五
年
頃
に
お
い
て
で
あ
る
と
し
な
け
れ
ぼ
な
ら
な
い
で
あ
ろ
う
。
次
に
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⑧
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足
院
藏
の
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三
冊
寫
本
に
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ノ
ヲ
ウ
チ
チ
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二
後
二
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二
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(上
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下
24
オ
)
と
あ
つ
て
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自
身
は
混
同
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て
い
な
か
つ
た
と
認
め
ら
れ
よ
う
。
さ
ら
に
、
①
は
陽
明
文
庫
藏
本
(寫
本
五
冊
)
を
見
る
と
嘉
禾
ト
云
ハ
⋮
⋮
尚
書
二
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一
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ツ
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ネ
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ソ
(三
29
ウ
)
中
世
の
謎
に
っ
い
て
二
五
三
二 五 四 と あ つ て 、 も と ﹁ 一 ニ ナ ﹂ と 書 か れ て い た の を ﹁ マ チ ﹂ と 誤 讃 (誤 寫 ) し た こ と に 基 づ く も の と 考 え ら れ る 。 も ち ろ ん 、 か よ う な 四 つ が な の 混 同 例 が 寛 永 十 五 年 版 十 冊 本 に 生 じ る こ と に つ い て は 、 當 時 の 一 般 口 頭 語 の 世 界 に す で に あ る 程 度 の 混 同 が お こ な わ れ て い た か ら と 思 わ れ る 。 さ い ご に 、 ⑨ の ﹁ ジ キ ﹂ と ⑯ の ﹁ ナ マ ズ ﹂ に つ い て は 、 本 來 は ﹁ 直 ﹂ や ﹁ 鯰 ﹂ の 意 で な く 、 清 音 の ﹁ シ キ ﹂ 八 式 V ・ ナ マ ス 八 膾 V で は な い か と 思 わ れ る 。 す な わ ち 先 竭 の 兩 足 院 本 に は 、 そ れ ぞ れ 世 話 二 勸 學 院 ノ 雀 ハ 蒙 求 ヲ 囀 ト 云 ハ 李 澣 カ ツ カ ウ 小 女 ノ 名 ヲ 雀 ト 云 者 ソ 其 マ テ 此 蒙 求 ヲ 囀 タ ソ シ キ ノ ス ス メ テ ハ ナ イ ソ (上 ノ 上 3 オ ) ニ 或 作 レ 鯖 々 ハ 魚 名 ソ 亦 作 レ 肛 ナ マ ス ト 云 説 モ ア リ (上 ノ 下 64 ウ ) と あ つ て 、 ﹁ シ キ ﹂ は 、 本 式 と か 本 當 な ど の 意 味 で 、 中 世 の 抄 物 な ど で 左 の よ う に 用 い ら れ て い る 語 で あ る 。 シ キ 此 ノ 女 く た け 二 三 寸 ぼ か り の 小 女 V ガ ノ チ ニ 式 ノ ヲ ウ キ ナ 人 ホ ド ニ ナ ツ テ ( 玉 塵 抄 、 八 38 オ ) 文 章 ハ シ キ ノ 文 章 ニ ア ラ ス 、 文 ノ ウ ツ ク シ イ 、 ア ヤ 、 レ ウ ラ ン ソ (古 活 字 版 莊 子 抄 一 23 ウ ) ︹ 注 9 ︺ 以 上 の 檢 討 に よ つ て 蒙 求 が 室 町 期 に 講 抄 せ ら れ た 際 に は 、 四 つ が な の 混 同 は な か っ た も の と 考 え ら れ る 。 さ て 謎 集 に つ い て 見 れ ば 、 混 同 例 が 宸 筆 本 に な く 、 謎 本 と 寒 川 に あ る 。 ま ず 謎 本 の 謎 搦 座 頭 の れ い か へ し み つ -い れ は ﹁ 見 引 + れ い ( 禮 ) の 逆 ﹂ ← ﹁ み つ (水 ) 入 れ ﹂ と 解 か れ る が 、 と す る と 、 謎 25 み な と く の 筆 ・の あ と つ つ ち . ツ ヘ ジ