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2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

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労働力率のМ字カーブは解消傾向

働き方改革による女性の正社員増加が課題

○ 女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、結婚・出産期にあたる年代に一 旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇する「М字カーブ」を描くことが知られている ○ 近年、30歳代の女性の労働力率が上昇していることから、М字の谷の部分が浅くなりつつあるが、 これは非正規雇用の増加によるところが大きい ○ 現在、安倍政権は働き方改革を推進中であるが、正社員での就業継続が容易になるよう、長時間 労働の是正や多様な働き方の推進とともに、非正規雇用の処遇改善が必要である

1.女性の労働力率の特徴

女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、結婚・出 産期にあたる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇する傾向がある。年齢階級別の女 性労働力率を図で示すと、Мの字に似ていることから「М字カーブ」と言われる。 2018年1月30日に発表された総務省「労働力調査」の2017年調査結果と2002年調査の年齢階級別の女 性の労働力率を比較すると、この15年の間に15~19歳を除き、全ての年齢階級で女性の労働力率が上 昇した(図表1)。2002年調査でМ字の谷となっていた30~34歳、35~39歳の労働力率については、2017 年調査ではそれぞれ15%ポイント、12%ポイント上昇しており女性労働力率のМ字カーブはほぼ解消 しつつある。なお、30年前の1987年の女性の労働力率をみると、25~29歳、30~34歳が低い。これは 当時の平均初婚年齢が低かったことからМ字の谷がより低年齢となっていたためである(図表1)。 図表 1 女性の年齢階級別の労働力率 (資料)総務省「労働力調査」(2017年、2002年、1987年)より、みずほ総合研究所作成 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~ (%) (歳) 2017年 2002年 1987年 正社員 政策調査部上席主任研究員 堀江奈保子 03-3591-1308 naoko.horie@mizuho-ri.co.jp

政 策

2018 年 3 月 13 日

みずほインサイト

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2.女性の労働力率の上昇要因

М字カーブがほぼ解消しつつあるものの、30歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇 用の増加である。2017年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると、正社員の労働力率(年齢階 級別の人口に占める正社員の割合)は25~29歳をピークに低下しており、40歳代以降は正社員より非 正規雇用の割合の方が高い(図表2)。15年前の2002年と比較すると、正社員の労働力率の水準は25 ~29歳以降については2002年より2017年の方が高いものの、25~29歳をピークに年齢の上昇とともに 労働力率が「へ」の字を描くように低下する傾向は変わっていない。また、2002年時点で労働力率が 大きく低下している30~34歳、35~39歳について2017年の状況をみると、主に非正規雇用の増加で労 働力率の落ち込みが緩和されている(図表2)。 なお、2017年の女性の非正規雇用について配偶関係別の内訳をみると、20歳代までは未婚者が多い が、30歳代以降は有配偶者が多い(図表3)。 図表 2 女性の年齢階級別の労働力率の内訳 (注)非正規雇用は、役員を除く雇用者のうち正社員以外。自営業主等は自営業主、家族従業者。その他就業者は役員、不詳等。 (資料)総務省「労働力調査」(2017年)より、みずほ総合研究所作成 図表 3 女性の年齢階級別非正規雇用の労働力率の配偶関係別内訳(2017 年) (注)配偶関係別の非正規雇用者数がそれぞれの年齢階級別の人口に占める割合。 (資料)総務省「労働力調査」(2017年)より、みずほ総合研究所作成 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) (歳) 失業者 その他就業者 自営業主等 正社員 非正規雇用 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) (歳) 失業者 その他就業者 自営業主等 正社員 非正規雇用 未婚 有配偶 死別・離別 0 10 20 30 40 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~ (%) (歳) 【2002 年】 【2017 年】

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3 また、同じく「労働力調査」(2017年)により、非正規雇用の女性が現在の雇用形態についている 主な理由をみると、30~34歳、35~39歳、40~44歳については、「家事・育児・介護等と両立しやす いから」との回答が約3割を占めている(図表4)。逆にいえば、仕事と家庭の両立が可能であれば、 女性が正社員としてより就業を継続しやすくなると考えられる。 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年)によると、2010~14年に第1 子が生まれた妻のうち、出産前に就業しており出産後も就業を継続している者の割合(以下、就業継 続率)は53.1%となっており、半数弱が第1子出産を契機として離職している。第1子出産後の妻の就 業継続率は80年代後半以降4割前後で推移してきたことを考えると、就業継続率はやや高まったものの、 依然として出産を契機として離職する傾向は根強く残っているといえよう。 なお、正社員としての就業を希望しながら、正社員の仕事がないためにやむを得ず非正規雇用とし て就業している人の割合は、25~29歳が21%、30~34歳が14%と高いが、その他の年齢階級でも概ね1 割程度存在する(図表4)。これには育児が落ち着いた時期に正社員として就業することを希望しても 正社員の仕事がないために非正規雇用として就業しているケースも含まれると考えられる。

3.正社員と非正規雇用の所得格差

30歳代の女性の労働力率の上昇が非正規雇用の拡大によるものであっても、非正規雇用を選択した ことにより仕事と家庭を両立させることが容易となり、かつ処遇面で公平であればそれほど大きな問 題はない。しかし、非正規雇用の賃金水準は正社員と比較して著しく低いという特徴があり、公平な 処遇が確保されているとは言い難い。 女性の年齢階級別の賃金を正社員(一般労働者)と非正規雇用(パートタイム労働者)について時 給ベースで比較すると、若い頃は両者の差がそれほど大きくないが、年齢が上がるとともにその差が 拡大する傾向がある(図表5)。これは、正社員は年齢が上がるとともに賃金水準も上昇するのに対し、 非正規雇用は年齢が上がってもほとんど賃金水準が変わらないことによる。 図表 4 非正規雇用の女性が現在の雇用形態についている理由(主な理由) (資料)総務省「労働力調査」(2017年)より、みずほ総合研究所作成 54 43 26 25 23 23 25 26 30 28 19 11 16 20 27 32 30 27 18 29 31 27 19 16 14 11 21 14 10 10 11 12 11 0 20 40 60 80 100 15~ 19 20~ 24 25~ 29 30~ 34 35~ 39 40~ 44 45~ 49 50~ 54 55~ 59 (%) (歳) その他 正規の職員・従業員の仕事がないから 専門的な技能等をいかせるから 通勤時間が短いから 家事・育児・介護等と両立しやすいから 家計の補助・学費等を得たいから 自分の都合のよい時間に働きたいから

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4 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)により、女性の正社員の賃金水準を100%とした 場合の女性の非正規雇用の賃金水準をみると、19歳まではほとんど変わらないが20歳代で80%前後、 30歳代で70%弱、40歳代以降は60%前後に低下する(図表5)。

4.人口減少社会で求められる女性の労働力率の引き上げに向けて

日本は、人口減少社会に突入している。こうしたなかで、今後の日本経済の活力を維持するために は、「働き方改革」の実施等により就業意欲のある全ての人が希望に即した働き方を選択できるよう にすることで、労働力率を上昇させる必要がある。特に、女性の労働力率引き上げの効果は大きく、 男性の労働力率並みの引き上げが実現すれば、2065年時点においても全体で現状と遜色ない水準の労 働力率を維持することが可能である1 ただし、賃金水準が低いパートタイム労働者が増えることによる労働力率の上昇では、日本経済の 成長力の底上げには力不足である。この点についても、今後の「働き方改革」の進め方が重要な鍵を 握っている。 安倍政権が進めている「働き方改革」の柱は、①長時間労働の是正と、②非正規雇用の処遇改善で あるが、いずれも女性労働に対する影響が大きい政策である。 まず、長時間労働の是正に関しては、健康を害するような異常な長時間労働の排除が注目されてい るが、正社員として就業しても仕事と家庭の両立を可能とするためには、時間外勤務を前提とした正 社員の働き方の見直しが不可欠である。また、就業時間や就業場所に関して柔軟な働き方が拡大して いけば、仕事と家庭の両立がより容易になると考えられる。例えば、フレックタイム制のような労働 者が各自の定められた枠内で始業及び終業時刻を自主的に決定できる働き方の普及や、在宅勤務、モ バイルワーク、サテライトオフィス勤務といった時間や場所を有効に活用できるテレワークの普及が 進めば、個人の事情に応じたより柔軟な働き方が可能となるため、女性を中心に就業促進効果も期待 できる。 図表 5 女性の雇用形態別の賃金カーブ(時給ベース) (注)正社員は一般労働者(短時間労働者以外)。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)より、みずほ総合研究所作成 93.8 81.8 75.8 69.7 65.4 61.7 59.2 58.7 60.1 0 50 100 150 200 0 500 1,000 1,500 2,000 ~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 (歳) 正社員 非正規雇用(パートタイム) (%) (時間あたり所定内賃金、円) 非正規雇用の賃金/正社員の賃金(右目盛)

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5 また、仕事と家庭の両立のために非正規雇用で就業する女性が多いなか、非正規雇用の処遇改善も 早急に進めていくべき課題である。前述の通り、正社員より非正規雇用の方が多くなる40歳代以降の 女性の非正規雇用の賃金水準は正社員の6割程度にとどまっているが、雇用形態の違いによる正社員と の不合理な待遇差は解消していく必要がある。 さらに、賃金や福利厚生面だけではなく、非正規雇用に対しても職務内容に応じた教育訓練の実施 を行い、非正規雇用の能力開発を進めていくことも重要である。厚生労働省「平成28年度能力開発基 本調査」(調査対象年は2015年度)によると、計画的なOJTを実施している事業所の割合は正社員 が59.6%に対して非正規雇用は30.3%、OFF-JTを実施している事業所の割合は正社員が74.0% に対して非正規雇用は37.0%にとどまっている2。職業能力開発機会が少ない非正規雇用が増大すれば、 労働者全体の職業能力の低下を招き、ひいては労働生産性の伸びを抑制しかねない。非正規雇用の処 遇改善にはキャリア形成や能力開発の視点も必要であろう。 1 詳細は、堀江奈保子「少子高齢化で労働力人口は 4 割減~労働力率引き上げの鍵を握る働き方改革」『みずほインサ イト』2017 年 5 月 31 日、みずほ総合研究所)を参照。

2 同調査による計画的なOJT(On-the-Job Training)、OFF-JT(OFF-the-Job Training)は次の通りである。

まず、計画的なOJTは、日常の業務に就きながら行われる教育訓練(OJT)のうち、教育訓練に関する計画書を作 成するなどして教育担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に実施する教育訓練をいう。 例えば、教育訓練計画に基づき、ライン長などが教育訓練担当者として作業方法等について部下に指導することなどを 含む。OFF-JTは、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)のことをいう。例えば、 社内で実施する教育訓練(労働者を 1 カ所に集合させて実施する集合訓練など)や、社外で実施する教育訓練(業界団 体や民間の教育訓練機関など社外の教育訓練機関が実施する教育訓練に労働者を派遣することなど)を含む。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基 づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。なお、当社は本情報を無償でのみ提供しております。当社からの無償の情報提供をお望みにな らない場合には、配信停止を希望する旨をお知らせ願います。

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