日本産Ilex属の種子繁殖
ⅠⅠウメモドキ(I.se7・rata Thunb.)五井 正憲,西原 裕,長谷川 帽
SEED PROPAGATION OFILEXSPECIES NATIVE TOJAPAN
II.L seYYata Thunb.
MasanoriGoI,Yutaka NISHIHARA and AtsushiHASEGAWA
ThepropagationofDex・SeYYatabysecdswasinvestigatedwiththecvu‘Dainagon’.Theresultswercas fbllows: 1.Intactfiuitsandseedsweresowninfinesand andcovered with peat mossin30cmclaypot.They were placedoutdoorsonNov.22,1974小
Fortypercentoftheseedsgerminatedbutonly4%seedscontainedinthefruitsgeIminatedthroughApriltoMay,
1975.
2.WhenseedswerestratifiedatOOCfbIaboutllO days and then germinated at50,100,150,20◇,25OC,the optimumtemperaturefbrgerminationwasfbundtobe200C‖ At200Cthegerminationpercentagewasabout80%
Withorwithoutsupplemantallight
3.Seedsstoredat150Cfbr12weeksafterharvestingandthosestoredat25OCfbranadditiona14weeks,didnot germinatedatal1duringtheincubationat200Cれ Seedsstoredat15OCfbr12weeksandthenstrati丘edatOOCfor4 wecksgave57%germinationat20OC。SeedsstoredatOOCfbr12weeksafterharvestingandlatergeIminatedat200Cshowedcompletegermination.But
seedsstoredatOOCfbr4weeksonlyandlatergeIminatedat20OCshowed21%ge工mination ウメモドキについて,より確実で効率的な種子繁殖法を調べるため,19L74年11月から翌年の$月にかけ,品種‘大 納言,の果実と種子を用いて実験した。 1..戸外で11月に鉢に播種した時,発芽率は低く,とくに,果実のまま播種した種子の発芽率は4%に過ぎなかった。 2..実験した範囲では,50∼250Cのどの温度でも発芽が観察された。しかし,50cでは発芽の遅れが著しく,発芽 率も低かった。発芽適温は200Cで,これより高温でも低温でも発芽開始が遅れた。 3.採種直後においても,150C12週間の貯蔵後でも,低温を受けない種子は全く発芽しなかった。これに対し,00c で12週間貯蔵された種子は,急速にしかもほとんどすべて発芽した。採種直後あるいは150c12週間後,00C4週 間処理された種子はかなり発芽したが,その場合,発芽に時間を要し,発芽率はあまり高くなかった。 緒 日本産肋xの中では数少ない落葉樹のウメモドキは,秋に紅熟する枝一面の小さな果実が好まれて,庭木,鉢物, 切り枝などに利用されている(5・7)。本種は雌雄異株で,観賞の対象となる実は雌株に着く。繁殖は,実生,さし木, 接木,株分けなどによって行われるが,実生では雄株が多く出現する(3,4・8)と言われており,さし木や株分けでは効 率が低いので,雌株あるいは特定の品種を目的とする場合には接木繁殖される。接木用台木は共台で,一般には実生 苗が用いられている。ウメモドキの種子繁殖は,イヌツゲ(1)と同様,肋x属の中では比較的容易であるとされている(8〉。しかし,生産 者の苗床での発芽状態は必ずしも良いとは言えない。この報告は,実生苗を苗木または台木として養成する場合の基 礎として,安全で確実なウメモドキの種子繁殖法を明らかにするために行った実験結果をまとめたものである。 材料および方法 1974年11月16日に,高松市内に植栽されている約10年生のウメモドキ‘大納言’の果実を収穫した。採種方法,貯 蔵,温度処理および発芽試験の基本的方法などは前報(1)に準じた。具体的方法については結果の項で述べる。 結果および考察 1.戸外における取り播き ウメモドキの種子は,一般に取り播きされる(8)。そこで,先ずこの方法による種子繁殖を検討した。1974年11月17 日に,選別した種子と果実各100粒を,それぞれ30cm浅鉢に砂播きし,その上にピー・ト・モスを敷いて適時に港水 しながら,実験終了まで戸外に置いた。1975年4月1日より毎週一個発芽調査を行った結果は,第1図の通りであっ た。 p払︼0∈ひSぎコpOuSJ〇.〇N ApIil 15 29 May 12 20 Date 1une Sept 3 2
Fig.1.Germinationoflおxserrataseedsunder naturalconditionsimmediate)y after harvestinantumn..100seedsandthesamenumberofintact丘uits were sown OnNov,17,1974.
選別種子は,4月19日に発芽し始め,5月17日までに41%発芽したが,それ以後全く発芽しなかった。一方,果実 のまま播種した区では,5月3日から同25日までに11本の幼植物が観察されたのみであった。採種時の調査では, 10)果あたりの健全種子数は約謂0であったから,この区における発芽率は約4%と推定される。
選別種子でさえも発芽率が低かった原因は不明である。しかし,秋に取り播きしたウメモドキの種子は,春には一 斉に発芽するく8)とされているので,本実験では,播種後に生じた何らかの原因で不発芽が多くなった可能性がある○ 実用的には苗床に直播きされるのに対し,本実験では鉢播きした点が異なっているだけで,基本的にはどちらも取り 播きであるから,発芽率の低下は鉢播きしたことに起因すると考えられる。おそらく,鉢中の水分の過不足が最大の 原因であろう。 果実のまま播種した時の不発芽は,イヌツゲ(1)よりもはるかに著しかった。発芽率は,選別種子にくらぺても 1/10にしかならなかったから,ウメ竜ドキの果肉の発芽抑制作用は,イヌツゲの果肉よりもはるかに強いと推定され る。 2.発芽温度 ウメモドキの種子は,戸外では4月下旬∼6月に集中的に発芽することが知られているが,湿度が高ければ50C でも発芽する(8)とも言われている。このことは,本種の種子の発芽可能な温度範囲のひろさと同時に,発芽適温が 自然の4∼5月頃の温度に近いことを示している。そこで,発芽時の温度条件を調べた0
1974年11月21日から1975年3月1日まで,湿ったバ・−ミキ.ユライト中で00C貯蔵した種子を,前報(1)に準じてベ
トリ皿に厚床し,50粒を1区として,50,100,150,200および250Cの暗黒,または200および250Cの人工照明 下(白色けい光灯,100∼200lux,終夜)で発芽状態を調べた。 発芽開始は,200C区7日後,25OC区と15Oc区12日後,100C区24日後,50C42日後となり,200および25OC区 の光の有鮒こよる差は認められなかった。発芽率の増加速度は,50C区を除いて,ほとんど差がなく,100∼250Cの 各区の50日彼の発芽率は,ほぼ70∼80%の範囲であった(第2図)。この結果は,ウメモドキの種子は50C以上であ れば発芽し得ること,および発芽適温はほぼ200Cであることを示している。このことは,また自然条件下では,低 温時に発芽し始めた種子は徐々に,昇温後に発芽し始めた種子は急速に発芽するので,実際には5月頃に集中して発 芽することを示している。木本の種子には,ひろい温度範囲で発芽し得るもの(6)があるが,ウメモドキ種子もそれ らと同様の特性をもつと考えられる。 喜一︶昌一∈一誌JO訳 5 10 15 20 25 LTemperature(℃) Fig.2.E飴ctsoftemperatureongerminationofIh,XSeYYataSeeds・25seedswere usedfbreachtreament.Treatmentswerereplicated2times.なお,この実験で発芽床の光の有無の影響は明りょうでなかった。しかし,発芽開始後約2週間の発芽率の増加速 度は,光の存在下でやや大きかった。これは,光で発芽が促進される木本種子の反応に似たところがあるので,さら に検討する必要はあろう。 3.採種後の温度条件 ウメモドキの種子は発芽しやすいが,そのためには秋に播種しなければならない。これは発芽のために冬の低温が 必要であることによると考えられる。そこ.で,−・般に温帯の木本の種子の発芽促進に有効な湿屑処理(8)と,その前 後における温度処理に対するウメモドキ種子の反応を調べた。 1974年11月21日に,先ず,500粒の種子を100粒ずつに分け,湿ったバーキュライト中で,無処理(A),0◇C4週間 (B),25Oc4週間(C),00C4週間+250C4週間(D),250C4週間+00C4週間(E)の各処理を開始した。処理後 は,イヌツゲ(1)と同様にしてベトリ皿に昏床し,200C暗黒で発芽させた。さらに,湿ったパ・−・ミキ.ユ.ライト中で 15OC12週間の貯蔵後に,直ちに播種(F),00c4週間(G),25OC4週間(H),250C4週間+00C4週間(I)の各処 理を行って播種した場合と,同様に00C12週間貯蔵後に,直ちに播種(J),250c4週間(K),および250C4週間+ 00C4週間処理(L)して播種した場合の発芽状態を調べた。 先ず,採種直後の温度処理では,(A),(C)両区の種子は全く発芽せず,他の3区の種子は多少発芽したがその割合 は低かった(第1表)。明らかに,ウメ・モドキの種子は,発芽のために低温遭遇を必要とすることがわかる。ただし, この実験から低温効果発現のメカニズムを考察することば不可能である。つぎに貯蔵後に温度処理を行った場合, (F),(H)両区の種子は全く発芽しなかったが,他の区の極子は約60%ないしそれ以上発芽した(第2表)。とくに, 00C貯蔵を行った種子は,急速にしかも高率で発芽した。(L)区では磨蔵後の250C処理中に,ほとんどの種子が発 芽したので表から省いた。この結果は,採種後16週間以上経った種子でも,少くとも150C以下の温度に遭遇してい なければ発芽しないことを証明した。採種直後においても,貯蔵後においても,基本的には同じ温度反応を示したこ とから,ウメモドキの種子は休眠打破のために低温要求をもつと考えられた。 Tablel.E触tsoftemperatureongerminationof蝕eshlyharveStedseedsof Jお方ぶビrrαJ〃.
Temperaturea PeICentage No.ofdaysrequired
treatment germination fbr50%geImination
ContI01 00C4wks. 250C4wks. 00C4wks.+250C4wks. 250C4wks.+00C4wksu
021053封
12 &Seedsweretreatedinwetvermiculite.25seedswereusedfbreachtreatment and germinatedin petridishes with wet−filterpaper at20OCindaIkness. TIeatmentSWerereplicated4times.Table2.E飴ctsoftemperatureOngeIminationofstoIedseedsofDexserraEa. TempeIature PeICentage No.ofdaysrequired
germination fbr50%germination Stor・age(12wks..) PI・e−SOWlr噂 C C C C C C 0 0 0 ◇ 0 0 5 5 5 5 0 0 1 1 1 1