香 川 大 学 経 済 論 叢 第 72巻 第 2号 1999年9月 137-182
l
米国企業と英国企業の多国籍化と
コントロールの比較考察
•
マネジメント
信
上
井
は じ め に 一 一 研 究 の 意 図 と 限 定 日本企業のグローパル展開は,比較的新しく,1
9
8
5
年のプラザ合意以降に急 速に進展したことは周知の事実である。それと比較すると,英国企業と米国企 1 日本企業の経営実践及び とローカル化(海外子会 業の多国籍化は,非常に長い歴史を持っている。 筆者は,これまでわが国企業のグローパル展開を, 管理会計実践のグローパル化(親企業サイドの視座) 社の視座) の面から幾つかの考察を行ってきた。それらの考察を通じて,本社 わが国企業のグローパル化の特徴と共に,進出先閣の文化, サイドからみた, 社会,経済,マネジメントなどの諸要因が, 践,管理会計実践にも多様な影響を及ぼしている(ローカノレ化)ことについて, 幾つかの発見と指摘を行ってきた。 本稿では,企業の多国籍化,すなわち企業のグローパノレ化に先進的な米国企 業と英国企業の経営実践と管理会計実践における海外展開の特徴を,親企業サ わが国企業の海外子会社の経営実 イドへのアンケート調査をベースにして比較考察する。そのことにより,米国 企業と英国企業の経営実践と管理会計実践における現地適用と現地適応の特徴 さらにそのことは,米国企業と英国企業 を明らかにすることを意図している。 *)本稿は,平成10年度文部省教育改善経費『香川県を中心にした四園地域社会の特徴に関 する実証的分析.J (代表者:大薮和雄)の一部として設かれたものであるが,その配布対象 が一部に限定されていたので加筆修正の上転載したものである。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-138 香川大学経済論叢 446 の経営実践と管理会計実践の特徴と課題を直接的に解明すると共に,わが国企 業のグローパノレ展開及び米国社会(経済)と英国社会(経済)へのローカノレ化 にとっても,貴重な示唆を得ることを副次的に意図している。 本稿の構成は,第2節で米英多国籍企業の概要をスケッチし,第3節では米 英多国籍企業の経営環境と経営活動の実態と特徴を,経営人事,海外子会社, 経営職能などの面から解明する。そして第
4
節では,米英多国籍企業における 月次報告制度,国際振替価格,海外子会担の業績評価,意思決定権限の分散度 などの面から,親会社と海外子会社聞の管理会計実践の実態と特徴を究明する。 そして最後に第5節で,米国企業と英国企業それぞれの経営実践と管理会計実 践の特徴を要約し,まとめとする。2
.
米国企業と英国企業の概要 米国企業及び英国企業の経営実践と管理会計実践を考察する前提として,ま ず最初に回答のあった米国企業と英国企業の概要を比較し,その特徴を明らか にする。具体的には,回答者の所属部署,職位,回答企業の組織形態,経営規 模などについて,その実態を明らかにする。 1 )回答者の所属 今回の郵送調査への回答者?の所属部署は,表2-1
のとおりである。表から もわかることは,米国企業では経理部・財務部からの回答が74“45%を占め,全 体の3/4
近くに達している。このことは,経理部・財務部という調査内容を直 接担当する部門からの回答が圧倒的に多いことを示してる。英国企業の場合に は,その傾向が更に著しく,経理部・財務部からの回答が89..44%と,全体の9 割近くを占めている。上記以外には,米国企業では,予算管理部(課)から6,67%, 経営企画部(課)から 556%というのが,回答者の所属部署の内訳である。ま た英国企業では,比率は少ないが,予算部(課)からの3,,11%という数字が, 経理部・財務部以外の目立つた回答部署である。 以上のように,米英企業いずれの場合にも,回答者は経理部・財務部という,447 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -13.少ー 本調査の内容を主たる業務にしている専門部署に特化
L
ている。このことは, 日本企業の場合には,回答部署は,ある程度多様性に富んでいたのとは対称的 である。 表2ー 1 回答者の所属部署 所属部門 米国企業 英国企業 1)経理部・財務部 77 ( 74.45%) 144 ( 8944%) 2 )原価管理部(課) 6 ( 6.67)o
(
0 3 )予算部(課)o
(
0 5 ( 311) 4 )経営企画部(課) 5 ( 556) 3 ( 186) 5 )管理部(課) 1 ( 111) 1 ( 0 62) 6 )総務部(課) 1 ( L11)o
(
0 7)その他 10 ( 1L11) 7 ( 4 35) 合計 100 (10000) 161 (100 00) 2 )回答者の職位 回答者の職位は,表2 - 2に示すとおりである。ここでの特徴は,米国企業 の場合には,部長からの回答が64..38%と,最も多くなっている。それに対して, 英国企業の場合には,回答者の職位は取締役以上からが68..54%と, 7割近い数 字になっている。米国,英国いず、れの企業の場合にも,回答者の職位は,上述 のように米国企業では部長,英国企業では取締役以上というのが大多数の回答 者の職位である。 上記以外には,米国企業では,課長レベルから 13..70%,取締役以上から 10“96%というのが,相対的に多い回答者の職位である。それに対して,英国企 表2-2回答者の職位 職 位 米国企業 英国企業 1)取締役以上 8 ( 1096%) 122 ( 6854%) 2 )部長 47 ( 6438) 18 ( 1011) 3)課長 10 ( 13 70) 18 ( 10 11) 4 )係長 2 ( 2 74) 13 ( 730) 5 )その他 6 ( 8.22) 7 ( 3.93) 合計 73 (100 00) 178 (100 00)-140- 香川大学経済論叢 448 業のケースは,部長,課長からの回答がそれぞれ 10,11%を占めている。 3 )生産方式 製造企業を分類する場合,生産方式を基準にすると,組立生産,機械的進行 生産,化学的進行生産という分類ができる。タイプ別の回答企業は,表 2-3 に示すとおりである。 米国企業の海外子会社のタイプは,組立生産方式が 31,,76%を占め,機械的進 行生産方式と化学的進行生産方式は,それぞれ印刷 59%という比率である。上記 の 3つのタイプの生産方式に分類できない企業が 47,06%と,半数近い数字に 達している。 それに対して,英国企業の場合には,組立生産が最も多く 36,29%を占め,次 に化学的進行生産が 22,,58%,機械的進行生産とその他の生産方式が,それぞれ 20 97%, 20,,16%となっている。米国企業,英国企業のいずれも,生産方式は 傾向的にはよく似ているといえる。ただ「その他」の生産方式は,大きな比率 を占めており,その詳細についてはさらに分析する必要がある。 産 業 別 1 )組立生産 2 )機械的進行生産 3 )化学的進行生産 4 )その他 合計 4 )組織形態 表2- 3 生産方式 米国企業 27 ( 31,76%) 9 ( 1059) 9 ( 1059) 40 ( 4706) 85 (100 00) 英国企業 45 ( 36 29%) 25 ( 2016) 28 ( 2258) 26 ( 20 97) 124 (10000) 米国企業と英国企業の組織形態は,表 2-4に示すとおりである。米英企業 の組織形態は,これまでの調査でも事業部制組織が多いといわれてきているが, 今回の調査結果もそのことを実証している。米国企業では,事業部制組織が 85,37%を占め,英国企業ではその比率が 89,,74%と,いずれの場合にも全体の
9
割近い企業は事業部制組織になっている。449 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -141ー 組織形態 1)事業部制組織 2)職能別組織 合計 5 )事業部制組織のタイプ 表2-4 組織形態 米国企業 70 ( 8537%) 12 ( 14 63) 82 (10000) 英国企業 105 ( 8974%) 12 ( 10..26) 117 (100 00) 事業部制組織は,製品別事業部と職能別事業部に分けられる。英米企業の事 業部制組織の内訳は,表
2-5
に示すとおりである。米国企業の場合は,製品 別事業部制の企業が7
3
.
,33%
を占め,職能別事業部制は2
6
“67%
と,7
割以上の 企業が製品別事業部制組織をとっている。 それに対して,英国企業では,製品別事業部制組織の企業は6
7
,,03%
と,米国 企業に比べて6%
余り低くなっている。逆に,英国企業の職能別事業部制は,3
2
.
.
9
7
%
と,米国企業より6%
余り高くなっている。 以上のように,米国,英国企業いずれの場合にも,事業部制組織の中心は製 品別の事業部制組織であり 7割前後は製品別組織形態になっている。 表2- 5 事業部制組織のタイプ タ イ プ 1)職能別事業部制 2)製品別事業部制 合計 6 )経営規模 米国企業 16 ( 2667%) 44 ( 7333) 60 (10000) 英国企業 30 ( 3297%) 61 ( 6703) 91 (10000) 米国企業と英国企業それぞれの経営規模は,表2-6
のとおりである。まず 資本金の平均値は,米国企業では3
,2
7
8
百万ドルであり,英国企業のそれは3
8
7
百万ドルと,米国企業が英国企業の8.,5倍近くの規模になっている。売上高規 模になると,米国企業は4
,4
7
7
百万ドルに対して,英国企業では2
,5
7
9
百万ド ルと,米国企業の売上高規模は英国企業の約L74
倍である。142- 香川大学経済論叢 450 従業員規模は,米国企業では23,429人であり,英国企業は13,282人と,米 国企業の従業員規模は英国企業の1,76倍である。 以上のように,資本金,売上高,従業員のいず、れの経営規模をとっても,米 国企業が英国企業よりも大きいことが理解できる。その内訳は,米国企業の経 営規模は,英国企業と比べて,資本金では約
8
,,5
倍,売上高,従業員数では2
倍弱になっていることが窺える。 経営規模以外の指標として,米国企業と英国企業がどの程度グローパノレ展開 しているかを示す指標である輸出比率(親会社の売上高のうち輸出額の占める 割合)及び海外生産比率(連結ベースでの生産額に対する海外子会社の生産額 の占める割合)により,両国企業のグローパノレ化の一端を考察する。まず輸出 比率は,米国企業の場合には17,,78%であるが,英国企業では29,,70%と,英国 企業の輸出比率が米国企業の場合よりも 12%近く高くなっている。このこと は,米国の人口規模,すなわち国内市場が英国に比べて遥かに大きく,逆に英 国企業は,圏内人口,英連邦との歴史的な関係やヨーロツパ大陸諸国との地理 的近接性などが,輸出比率が高い大きな要因であると思われる。また海外生産 比率も,米国企業では18..44%を占め,英国企業では27,,24%と,輸出比率と同 様に英国企業が10%近く高くなっている。この点でも,英国企業が米国企業よ りも海外展開を積極的に進めていることが窺える。 以上,米国企業と英国企業の経営規模とそれに関連する幾つかの指標につい 表2-6 経営規模 規 模 米国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)資本金(百万ドル 3,278 8,404 91 2)売上高(百万ドル 4,477 10,582 92 3 )従業員数(人 23,429 46,388 92 4 )輸出比率(%) 17,,78 19,,89 82 5)海外生産比率(%) 18..44 22,,63 85 *)為替相場は,米国企業の調査時点での為替レートである, た。 表中の数字は 1社あたりの平均値である。 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 387 1,049 121 2,579 12,714 123 13,282 35,901 121 29,,70 26 58 107 27,,24 3LOO 98 1ポンド=L60ドルで換算し451 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -143-て検討してきた。経営規模の指標では,いずれの指標をとっても,米国企業が 英国企業の
2
倍以上になっていることが明らかになった。しかし企業のグロー パル展開を示す輸出比率や海外生産比率では,逆に,英国企業が米国企業より も10%
前後高いことも明らかになった。 3.米国企業と英国企業の経営環境と経営活動 この節では,米国企業と英国企業の経営環境と経営活動の幾っかについて考 察する。具体的には,人事(取締役会の構成,ローカJレのトップ経営者),海外 子会社の分布,海外統括部門のあり方,海外子会社の研究開発,製造機能及び 経営職能のローカル化の実態と課題について検討する。 3-1 米英企業の人事 まず最初に,米国企業(親会社)と英国企業(親会社)の取締役会の構成, 及びローカノレのトップ経営者が海外子会社のどのようなポジション(社長,経 理部長,人事部長)をどの程度占めているのか,人事職能の担い手の面よりロー カル化のレベJレを検討する。 1 )取締役会の構成 米国企業と英国企業の取締役会(親会社)の構成は,表3-1
のとおりであ る。まず親会社1
社あたりの取締役会の構成は,米国企業では1
0
,,3
4
人,英国 企業では7
,,7
0
人と,米国企業の場合が1
社平均で2
,,6
4
人多くなっている。こ れは,前節の経営規模のところでもすでに考察したように,米国企業の経営規 模が英国企業の場合よりも大きいことが取締役会の構成にも反映している。 次に,米国企業(本社)と英国企業(本社)の取締役の国籍(
n
a
t
i
o
n
a
l
i
t
y
)
の 内訳を検討する。米国企業の取締役会は,アメリカ人の占める割合が1
0
,,1
6
人 と,ほとんどの取締役は母国籍の経営者で占められている。アメリカ人以外で は,ヨーロッパ人が0
,2
6
人と少しいるが,ごく一部にすぎない。また英国企業 の場合には,取締役会に占める英国人は5
,,9
8
人と,全体の3/4
以上を占めて-144ー 香川大学経済論叢 452 いる。英国人以外では,北アメリカ人の取締役がOゎ72人と,ある程度を占めて いる。同時に,その他の国籍の取締役も 0..97人と, 10%以上の数字になってい これ以外にも,上述の米国企業と比べると,母国人以外の経営者が取締役 る。 会を占める比率が遥かに高くなっており,英国企業(本社) の取締役会の人事 の多国籍化は,米国企業に比べてより進展していることが理解できる。 構 成 1)取締役の人数(人) 2 )内訳:国籍別 a)アメリカ(人) b) 英国(人) 表 3ー 1 取締役会の構成 平均値 10 34 10 16 米国企業 標準偏差 3..15 2.78 企業数 94 92 b)ヨ}ロッパ(人 .26 L01 92 c)北アメリカ(人 05 23 92 d)日本(人 05 ..34 92 平均値 7.70 5..98 721 英国企業 標準偏差 2..62 2..68 33 企業数 123 123 123 e)その他(人) 一 一 .97 1.51 123 *)米国企業の場合は,北アメリカはカナダを意味する。なお,1)と2)の合計 (a+ b十 c+d+e)が,必ずしも一致してない。これは,1)に回答のあった企業のうち, 2社は 2 )に回答がなかったためである。平均値は,回答企業の合計人数を回答企業数で割って計 算した。 ローカルのトップ経営者 次に,米国企業と英国企業の海外子会社におけるトップの人事(社長,経理 部長,人事部長) のポストをどの程度ローカノレの経営者が占めているのかの検 討を通じて,米国企業と英国企業の人事面でのローカル化を検討する。 その結 果は,表3-2のとおりである。 次の項(第
3
節 -2
)
で考察するように,米国企業と英国企業の1
社平均の 海外子会社数は,米国企業で 28..19社,英国企業では 17..68社と,1
社平均の 海外子会社数は,米国企業の場合が平均値で 10社以上も多くなっている。この ことは, すでに明らかにした米国の多国籍企業の経営規模が英国の多国籍企業 よりも遥かに大きかったことが,大いに影響しているためと思われる。 以上のことを考慮に入れながら,表3-2により,社長,経理部長,人事部-145ー 長というローカJレのトップ経営者の構成をみてみる。 まず社長の場合は,米国企業では8..47社(海外子会社総数に占める比率は 30..05%。以下同様。)であり,英国企業では 10..15社 (57..41%)を占めており, ローカルの経営者が社長ポストを占めている企 英国企業の場合が 27.36%も,
l
f
米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 453 業が多くなっている。 ローカル経営者が占めているのは,米国企業では 7..32 であるが,英国企業では 10ぃ19社 (57..64%)である。経理部長 ローカルの経営者の比率は低 在 (26..00%) は,米国企業の場合には,社長の場合に比べて, くなっているが,英国企業では社、長の場合とよく似た数字になっている。従つ 次に経理部長の場合, て,経理部長の場合も,米国企業と比べて,英国企業のケースがローカノレの経 営者が占めている海外子会社はより多くなっている。 ローカルの経営者が海外子会担の人 最後に,人事部長のケースを検討する。 である と,社長,経理部長に比べて,郵送調査 の結果による限り,意外にもローカノレの経営者が占めている比率が日本企業と 比べて低くなっている。ただ米国企業と英国企業を比較すると,人事ポストの ローカル化は,米国企業よりも英国企業においてより進展していることは, 事部長のポストを占めている割合は,米国企業では 6..15社 (2L82%) が,英国企業では 7..33社 (41..46%) ヲp '- -れまでの場合と同様である。 ローカルのトップ経営者 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)社長(会社数 8.47 13.51 59 10 15 17.96 73 2 )経理部長(会社数 7..32 11ι6 59 10.19 18.85 73 3)人事部長(会社数 615 10.31 59 7.33 19.11 73 *)表中の数字は,親会社 1社あたりの平均値である。なお米国企業における海外子会社総数 は28..19社(平均値)である。英国企業の場合には17..68社(平均値)である。 表3-2 経営職能 そして 以上のように,社長ポストのローカノレ化が最も高く,次に経理部長, 人事部長(このことは,主として米国企業についていえることで,英国企業は 上述のように社長と経理部長のローカル化はほぼよく似ている。)のローカル化146 香川大学経済論叢 454 が最も進展していない。このような事実は,これまでに考察してきた日本企業 の海外子会社の場合とは逆の傾向にあり,注目に値する特徴である。米国企業 の海外子会社では,人事部長に大きな権限を残しているのか,あるいは本国の 親会社の海外子会社への指揮・命令権限(意思決定プロセス)が異なるのかも しれない。いずれにしろこの点は,今後個々の企業への聞き取り調査などで, 米国企業を中心に,外国企業の本柾と海外子会社の指揮・命令関係を解明する 必要性を示唆する重要な課題である。 3 - 2 米英企業の海外子会社 ここでは,米国企業及び英国企業の海外子会社の分布状況について,地域別 と産業別に,海外子会社i分布の特徴を検討する。 1)海外子会社の分布 まず最初に,海外子会社の分布状況を,表
3-3
により検討する。海外子会 社のある米国企業は79“76%であり,英国企業では6080%になっている。米国 企業の場合,海外子会社のある企業が英国企業と比べて 18,94%高くなってお り,それだけ多国籍化した企業が多くなっている。このことは,米英企業のそ れぞれの特徴を表していると同時に,サンプリングの結果も幾分か影響してい るかもしれない。(なおその詳細については,付録に掲載した井上(1998),井上・ 安藤・金津(1998)の論文を参照のこと。) 表3- 3 海外子会社の分布 海外子会社 米国企業 英国企業 1 )海外子会社はある 67 ( 79 , 76~) 76 ( 6080~) 2)海外子会社はない 17 ( 20,24) 49 ( 39,20) 合計 84 (100 00) 125 (100 00)455 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -147-2 )地域別の海外子会社 米英企業における海外子会社は,ヨーロッパ,北アメリカ及びアジア地域の うち,どの地域にどのように分布しているのか,表3-4により検討する。ま ず海外子会社数は,米国企業l社平均で,海外子会社数は28..19社であり,英 国企業では1社平均17..68社と,米国企業が1社平均で10社程度多く,経営規 模の大きい米国企業の海外子会社数は英国企業の場合よりも遥かに多くなって いる。 それでは,米英企業の海外子会担はどのような地域に多く分布しているので あろうか。米国企業の場合には,ヨーロッパ地域に37..60%(10 60社)の海外 子会社があり,北アメリカ(カナダ)地域に 9..54% (269社),アジア(日本 を除く)地域に 10“75% (303社),そして日本には2,,52% (0.71社)という 比率である。調査票では,上記以外は「その他」と一括りにしていたが,中, 南米,アフリカなどの地域を含めた上述以外の地域にも, 3959% (11.16社) の海外子会社が分布している。以上が,米国企業の海外子会社のグローパノレな 分布状況である。上記の分布から判断すると,米国企業はヨーロッパを中心に, カナダ,中米,南米の地域への進出が
NAFTA
やアメリカ州機構などとの関係 で高くなっていることが推測できる。同時に,日本を含めたアジアへの進出に は,地理的遠隔性など様々な理由が考えられるが,海外子会社の分布はヨーロツ 表3-4 海外子会社と地域 地 域 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)海外子会社(会社数 28..19 6L06 72 17川68 21..26 74 (内訳:地域別) a)ヨーロツパ(会社数) 10.60 15.01 72 8..81 13..04 74 b)北アメリカ(会社数 2,,69 4,,21 72 3ド78 5..61 74 c) アジア(除日本:会社数 3..03 5.11 72 2.51 3.34 74 d)日本(会社数 .71 L24 72 ι1 .86 74 *)海外子会社の定義:米英企業により外国に設立された会社であり,親会社の投下資本額 が20%あるいはそれ以上である企業のことをいう。なお,米国企業の場合には,北アメリカ はカナダのみを意味している。本文中の「その他」は,表中の海外子会社数から地域別の内 訳(a+b+c+d)を引いた数を使っている。-148ー 香川大学経済論叢 456 パに比べると限定的である。 それに対して,英国企業の海外子会社の分布は,ヨーロッパ地域に 49,83% (8,81社.),北アメリカ地域に2L38% (3,78社),アジア地域(日本を除く) に1420% (2,,51社),そして日本には2,,32% (041社)となっている。上記 以外の地域には, 12,27% (2“17社)という比率になっている。英国企業のケー スは,欧州を中心に,北アメリカ,アジアにもある程度進出しており,また英 連邦諸国への進出もある程度推測される。 3 )産業別の海外子会社 次に産業タイプ別に海外子会社の分布を,表3-5により検討する。産業タ イプ別の分類は,製造会社,販売会社,金融会社とアフターサービス会社とそ の他に区分した。 米国企業の場合,最も多い海外子会社は販売会社であり,親会社
1
社平均で 11,,35社 (39リ18%)を占めている。次に多いのは,製造企業であり, 9,,21社 (3L82%)である。両者を合わせると,全体の7割を越えている。第3番目に 多い業種は,アフターサービス会社であり, 3,,61社(1274%)を占め,金融会 社は1“65社 (5“70%)である。上記以外には iその他」が3,,11社(10,,75%) になっている。米国企業の場合,海外子会社の業種は,販売会社と製造会社が 中心であるが,同時に業種にある程度の多様性がみられる。 表3-5 海外子会社と業種 産 業 別 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 企 業 数 1)製造会社 9,,21 15,42 71 7 55 73 2)販売会社 11 35 17,,85 71 5,43 73 3 )金融会社 165 7,,03 71 51 73 4 )アフターサービス会社 3 61 8,,73 71 09 73 5 )その他 3,11 12,,92 71 1.76 73 合計 28,,93 71 15“34 73 それに対して,英国企業の場合には,海外子会社の構成は製造会社の割合が457 米関企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 149 最も多く, 7..55社(49ゎ22%)を占めている。また米国企業で最も高かった販売 会社も 5..43社 (35..40%)と2番目に高い比率になっている。両者を合せると, 英国企業では製造,販売機能を担う企業は海外子会社の84..62%と,米国企業以 上に高い数字になっている。それ以外には,金融会社やアフターサービス会社 は,米国企業に比べると余り設立されていないことが窺える。 3-3 海外統括部門 ここでは,米国企業及び英国企業の親企業サイドよりのグローパノレ展開とそ の意思決定を指揮する親会社における海外統括部門の分布,及び進出先地域に おける地域統括会社(regionalheadquarters)の分布について検討する。 1 )親会社における海外統括部門 米国企業と英国企業の親会社における海外統括部門(国際部門)の分布及び その組織形態について,表3-6により検討する。 最初に,本国の親会社に海外統括部門があるかどうかを検討する。親会社に 海外統括部門があるのは,米国企業では57..33%と過半数を超えているが,英国 企業では,その比率は33.78%と1/3に過ぎない。このように,親会社の経営 組織のなかに海外統括部門のある米国企業が英国企業の場合よりも遥かに高い という特徴は,以下の米国企業と英国企業のグローパル化/ローカル化の分析 の際にも留意する必要がある。 次に,両国企業本社におげる海外統括部門の組織形態は,どのようになって いるのであろうか。まず米国企業の場合には,地域別に海外子会社を統括して いる企業が48..84%と,半数近い数字を占めている。それ以外には,地域別+製 品別というマトリックス組織になっている企業が32.56%を占め,製品別組織 の企業は13.95%と,意外に少ない。 それに対して,英国企業においては,地域別に海外子会社を統括している企 業が68..18%と7割近い数字になっており,米国企業よりも 20%近く高くなっ ている。それ以外には,マトリックス組織形態で海外子会社をマネジメントし
-150- 香川大学経済論叢 458 ている企業は18..18%,製品別組織は13..64%である。英国企業では,海外子会 社の管理は,地域別組織により行っている企業が中心である。 表3-6 親会社における海外統括部門 統 括 部 門 米国企業 1)有り 43 (5733%) 2 )無し 32 (42 67) (海外統括部門の内訳:) a)地域別 21 (4884%) b)製 品 別 6 (1395) c) a)十b)のマトリックス 14 (3256) d)そのf也 2 ( 4 65) 2 )海外子会社の地域統括会社 英国企業 25 (3378%) 49 (6622) 15 (6818%) 3 (1364) 4 (18 18)
o
(0 ) 企業の多国籍化に伴い,また海外子会社数が増加するにつれて,多国籍企業 は,地域全体を統括する機能を持った会社をローカノレに設立する必要が生じて くる。そのような企業は,本社の権限をある程度委譲され,地域ごとに本社機 能を果たす地域統括会社(
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:地域本社)を設けることを 意味している。米国企業と英国企業において,グローパノレに展開している海外 子会社を地域別にマネジメントする地域統括会社の分布状況を,表3-7によ り検討する。 まず地域統括会社がある多国籍企業は,米国企業で65..75%を占め,英国企業 では60..53%と,いずれも 60%台の数字であるが,米国企業が幾分多くなって いる。 地域統括会社分布の地域別の特徴は,次のとおりである。米国企業では,ヨー ロッパ地域に地域統括会社があるケースが最も多く 53“42%と,過半数を超え ている。北アメリカ(カナグ)では3699%という数字になっており,アジア地 域は最も少なく 32“88%である。 それに対して,英国企業の場合には,北アメリカに地域統括会社がある企業 は67.39%と,70%に近い多国籍企業が北アメリカに地域本社を持っている。そ れ以外には,アジア地域にある企業は54..35%を占め,ヨーロッパ地域にも151-米国企業と英国企業の多悶籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 459 47..83%の企業が地域本社を設けている。 以上のように,米国企業の場合には,地域統括会社はヨーロツパ中心に設け られているが,英国企業では,北アメリカ中心に分布していると共に, 及びヨーロッパのいず、れの地域にも,比較的多く地域本柾があるのが特徴であ アジア る。 地域統括会社 地域統括会社 米国企業 1)有り 48 (65 75%) 2 )無し 25 (3425) (r有り」の地域別の比率:) a)ヨ}ロッパ 39 (5342%) 22 (4783%) b)北アメリカ 27 (36 99) 31 (67 39) C )アジア 24 (32 88) 25 (54 35) *) r有り」の地域別の括弧のなかの数字は,地域統括会社のある企 業の合計で,地域毎に地域本社のある企業数を割った比率である。 英国企業 46 (60..53%) 30 (3947) 表3-7 j l i I f F I l l t h f l t u f f -z i t B E i, e i t B 海外子会社の研究開発 海外子会社への研究開発職能(部門) 度の企業で行われているのであろうか,表3-8により検討する。なおここで いう「研究開発(広義)Jには,製品開発,研究開発(狭義)及び設計機能の3 つの職能を含んでいる。 の国際移転は,米英企業のうちどの程 3 - 4 まず最初に,米国企業では,研究開発(広義)部門のある企業は68..97%と, 7割近い海外子会社に研究開発(広義)部門の少なくとも一部門を国際移転し それに対して,英国企業の場合には,海外子会社に研究開発部門があ このように研究開発部門が海外子会社にあるの ている。 るのは55..56%となっている。 は,米国企業が英国企業よりも 13%余り高くなっている。 それでは,研究開発部門がある企業には,どのような研究開発部門があるの その内訳を検討してみる。米国企業で最も多いのは研究開発(狭義)部門 であり, 63..79%の企業で海外子会社に研究開発(狭義)があることが窺える。 次に多いのは,製品企画部門であり, 41“37%の企業で海外子会社に製品企画部 か,
-152ー 香川大学経済論叢 460 門がある。設計部門は31.03%と,全体の1/3以下と 3つの研究開発(広義) 職能の中では最も少なくなっている。 それに対して,英国企業では,海外子会社に研究開発(狭義)がある企業は 44..44%と, 3つの研究開発部門の中では最も高くなっている。それ以外の部門 では,製品企画部門は41..27%を占め,設計部門も 39..68%と, 3つの部門の海 外子会社にある企業の比率はかなり似通った数字になっている。このことは, 米国企業と比べて,大きな相違点である。 表3- 8 海外子会社の研究開発部門 有 無 米国企業 1 )有り 40 (68凶97%) 2 )無し 18 (31 03) (内訳有り」の比率) a)製品企画 24 (4137%) b)研究開発(狭義 37(63 79) c)設計 18 (3L03) 3 - 5 海外子会社の製造職能 英国企業 35 (5556%) 28 (44 44) 26 (41..27%) 32 (44 44) 25 (3968) ここでは,米国企業及び英国企業は,製造職能(広義) (ここでの「製造職能 (広義)Jには,製品企画,基本設計,詳細設計,製造準備及び製造(狭義)職 能のすべてを含んでいる。)のうち,どの程度の職能を海外子会社に国際移転し ているのであろうか。ここでは,海外子会社のある地域を,ヨーロツパ,北ア メリカ,アジアの3つに分けて,地域毎にローカル化のレベルを検討する。 1)ヨーロッパ地域 まず最初に,ヨーロッパにおける製造職能(広義)のローカル展開の特徴を, 表3-9により検討する。まず欧州地域における製造職能(広義)のローカlレ 化の全体的な特徴は,製品企画,基本設計,詳細設計,製造準備,製造段階の いずれのステージをとっても,英国企業のそれぞれのステージのスコアは,米 国企業の数値よりも高くなっている。このギャップは,製品企画,基本設計,
461 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 153 詳細設計という製造の計画段階(}l1上あるいは源流)でのギャップが大きく, 逆に製造準備,製造段階(狭義)という,製造の統制段階(J
I
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下)に近づくに つれて小さくなっている。 米国企業における製造職能(広義)のローカル化で最も高いのは,製造段階 (狭義)であり 3..91点になっている。また製造準備も 3..54点と,相対的にロー カノレ化されているレベルが高くなっている。それに対して,製品企画(300点), 詳細設計 (2..98点)や基本設計 (291点)という製品構想や設計というより源 流段階は,上述のレベルと比較すると,ローカル化のレベルは低くなっている。 英国企業の場合,製造のいずれの段階も全体的にスコアが高いことは,最初 に指摘したとおりである。各段階でのスコアは,いずれのステージともほぼ3..5 点から 4点近い数字になっている。いずれの製造段階(広義)もローカJレ化が 高いことが窺える。とりわけ,製品企画,基本設計,詳細設計のレベルが,米 国企業と比べて,相対的に高いことが特徴である。これは,英国多国籍企業は, 分権化のレベルが高くなっていることの一端を示唆しているとも受けとれる。 表3- 9 製造職能のローカル化(欧州1) 製造段階 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)製品企画 3 00 12芯 56 3.49 1 52 47 2 )基本設計 2 91 1 43 56 3..48 1 58 44 3 )詳細設計 2..98 1 37 55 3..63 162 46 4)製造準備 3 54 1 40 56 3. 79 1 65 47 5)製造段階 3.91 1. 38 56 3.98 164 47 *)表中の数字は, 1社あたりの平均値と標準偏差である。表中の数字は,以下のように計算 された。「本国親会社で全面的に行われている」→1点 本 国 親 会 社 と 海 外 子 会 社 と の 聞で半分半分に分担されている」→3点 , r海外子会社で全面的に行われている」→5 点として,回答企業の合計点をだし,それを回答企業数で割って, 1社あたりの平均値を計 算した。 2 )北アメリカ地域 それでは次に,北アメリカ地域ではどのようになっているのであろうか,表 3-10により検討する。米国企業と英国企業の海外子会社への製造機能(広義)-154ー 香川大学経済論叢 462 のローカノレ化は,ヨーロッパのケースと同様に,英国企業が米国企業よりも, 製品企画から製造段階のすべての段階で,よりローカyレ化が進展している。 米国企業の製造職能(広義)のうち,製品企画,基本設計,詳細設計段階と いう源流段階は,いずれも 2..5点前後であり,大部分の川上部門は米国内で集 中的に行われている。また製造準備,製造段階という比較的製造の下流(コン トロール)段階も,それぞれ3..23点, 3..56点というレベルにあり,欧州地域へ の進出のケースほどにはローカル化されておらず,より米国本社集権的である。 こ れ は , 米 国 と カ ナ ダ と い う 地 理 的 な 近 接 性 と 共 に , メ キ シ コ を 含 め た NAFTA経済圏のなかで,米国の多国籍企業は,研究開発から製造段階の地理 的な最適立地を目指しているためと思われる。 それに対して,英国企業の場合には,ヨーロッパ地域への進出に比べて,北 アメリカ地域への進出は,より一層ローカル化が進展してることが窺える。と りわけ詳細設計,製造準備,製造段階というステージは
4
点台にあり,かなり のレベルまで海外子会社へローカノレ化が進展している。また同時に,製品企画, 基本設計という計画段階の製造機能(広義)も,それぞれ3..76点, 3..92点、と, かなりローカノレ化されている。 表3ー10 製造職能のローカル化(北米) 製造段階 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)製品企画 2 64 L26 56 3..76 L39 41 2)基本設計 2..47 L30 55 3.92 1.33 40 3 )詳細設計 2..43 1..29 56 4..13 1.40 40 4 )製造準備 3..23 1.40 56 4..13 1 47 39 5)製造段階 3..56 L45 57 4..15 1 55 39 *)なお表中の得点の計算は,表3-9と同様である。 3 )アジア地域 アジア地域における製造職能(広義)のローカノレ化を,表3-11
により検討 する。全体的には,製造職能(広義)のローカル化のトレンドは,米国企業と 英国企業でも同様に,製造の上流段階ほど本国の親会社に集権化される傾向に463 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 155 表3ー 11 製造職能のローカル化(アジア) 製造段階 米国企業 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 1)製品企画 2.69 1.34 39 3..32 L57 34 2 )基本設計 2 70 1 45 37 3..47 1 44 32 3 )詳細設計 2.76 1 42 37 3..63 1 45 32 4 )製造準備 3..39 144 36 3..94 1.46 34 5 )製造段階 3 76 1 40 37 4..00 1.48 34 *)なお表中の得点の計算は,表3-9と同様である。 あれ製造の下流段階になるにつれて,ローカル化のレベノレが高くなっている ことは,これまでの地域と同様である。また英国企業のケースが米国企業より もスコアが全体的に高く,製造機能(広義)のローカノレ化は,英国企業の場合 がいず、れの段階でもより進展していることも同様である。 ただアジア地域の場合は,米国企業のローカノレ化のレベルは,欧州地域と北 アメリカ地域の中間にあれ英国企業の場合は,製品企画,基本設計,詳細設 計という源流段階は
3
つの地域の中では,最もローカル化のレベルが低い。 しかし,製造準備と製造(狭義)段階という下流段階は,欧州地域よりもスコ アが高く,逆に北アメリカ地域よりも低くなっている。 3-6 経営職能のローカル化 ここでは前項よりも少し広く,米国企業と英国企業の親会社で,所謂「日本 的経営」と呼ばれている日本企業及び在外日系子企業で広く実践されている 種々の経営活動が,どの程度実践されているかを検討する。次に,米国企業及 び英国企業が海外子会社に人事,製造,販売,購買,財務,研究開発などの経 営職能を,どの程度ローカルに権限を委譲しているか,地域別(欧州,北アメ リカ,アジア)に,その実態と課題を検討する。 1 )日本的経営実践 本国にある米国企業及び英国企業に,所謂「日本的経営」がどの程度受け入-156'ー 香川大学経済論議 464 れられているかを明らかにすることも,日本企業の経営実践の海外移転を考察 する上で非常に興味ある課題である。ここでは,表
3-12
により,その概要と 特徴を明らかにしたい。 まず最初に,日本的経営」と呼ばれる経営実践が,どの程度米国企業及び英 国企業に国際移転,すなわち受け入れられているかを検討する。米国企業及び 英国企業において,所謂「日本的経営」と呼ばれる経営実践の導入レベルは, これまでに海外進出した日系企業の調査結果と比べると,全般的に低くなって いる。米国企業及び英国企業では,日本的経営」と呼ばれる経営活動を積極的 に実践している企業は比較的少なし 4点以上(広く実践されているレベル) の経営実践は,米国と英国のいずれの国の企業にもみられない。 このような状況の中で,多能工の養成j,'5 S
運動j,'現場主義経営j,'平 等主義j,'QC
サークノレと提案制度」は,3
.
.
5
0
点前後のレベルにあり,比較的 実践されている。最初の3つの経営実践については,英国企業において比較的 広く実践されており,逆に最後の2つは米国企業のスコアが相対的に高く,米 国企業でより広く実践されている。 それに対して,原価企画j,'大部屋主義j,'集団的意思決定j ,デザイン・ インj,'ジョブ・ローテーション」という経営実践は,ある程度」実践されて いるレベル,すなわち3
,0
0
点前後のスコアである。またいずれの経営実践も, 米国企業が英国企業の場合よりも実践レベルが高くなっている。 米国企業,英国企業のいずれの場合にも,ほとんど導入されていない日本的 経営実践は,日本的経営の'3種の神器」と呼ばれてきた「年功賃金制度j,'年 功昇進制度j,'ノー・レイオフ政策(終身雇用制度) j と「標準服(制服)の着 用」という経営実践である。米国企業,英国企業のいずれでも実践水準は低く, 欧米系の企業では殆ど実践されているとはいえず,日本企業に「個別的な(固 有の)政策」であることが窺える。ただそれでも,スコア(,日本的経営」の実 践レベル)の上では,どちらかといえば米国企業のスコアが幾分(020
点"
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0
,4
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点位)高くなっている。465 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -157二一 度 の 味 ナ 業 目 3 1 8 6 5 0 1 -程 業 意 イ 企 差 一 u m n 日 2 4 3 2 4 3 5 3 3 一 る 企 を マ 料 の 一 + + 一 一 一 + + + + + + + + 一 ぁ 答 差 に 一 一 ﹁ 固 た 逆 一 一 f ' い た J ‘ -q L ' i q L T i A V d 佳 ハ リ ハ U O O A V O O 一 ト 一 7 7 7 7 7 6 7 7 5 6 6 6 7 6 一 一 て
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M 一 ) 実 合 し ス ψ m T 2 )経営職能のローカル化(欧州o
ここでは,欧州に進出している米国企業及び英国企業において,種々の経営 職能が,どの程度海外子会社で独立して意思決定及び実践されているか,表3 -13により検討する。 まず米国企業の経営職能のローカノレ化を検討すると,現地化が比較的高い経 営職能は,購買職能(382点),人事職能(375点),アフターサービス職能(372 点),販売職能(
3
“5
9
点)という経営職能であり,いずれも3
.
.
5
点以上のスコア になっている。上述の経営職能に比べると,製造職能のスコアは3
.
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0
9
点と,ロー カノレ化のレベlレは幾分低くなっている。 逆に,ローカル化が進展していない経営職能は,設計職能,研究開発職能と いうR&D関係と資金調達(設備投資資金と運転資金)であり,いずれも 2点 台である。また親会社(本国)から派遣されている社員の経営人事も,ことの-158- 香川大学経済論叢 466 性格上,親会社の意思決定権限の高い職能で,本国の親会社がク、ロパーノレな視 座から経営人事を行っており,本国の親会社に権限が集中する傾向にある。 表3-13 経営職能のローカル化(欧州) 経営職能 米国企業 英国企業 米英企業 平 均 値 標 準 偏 差 N 平 均 値 標 準 偏 差 N の差 1)購買職能 382 120 57 3..64 L33 47 +..18 2 )人事(ローカルズ)職能 3.75 1 18 61 3.98 1 23 48 - 18 3 )アフターサービス職能 3 72 1.24 61 3.82 1 28 51 - 10 4 )販売職能 3..59 1 12 61 373 1.30 47 - 14 5 )製造職能 3..09 L 32 55 3..34 L 31 44 -. 25 6)設計職能 2. 89 1 34 56 3. 26 1 36 43 -..37 7)研究開発職能 2. 82 1 22 55 2. 93 L 42 42 - 11 8 )運転資金 2.75 1. 28 60 2..88 L36 50 - 13 9 )人事職能(派遣社員 2. 6.0 1 32 53 2.. 77 L 36 43 一 昨17 10)設備投資資金 2 42 L25 60 2..20 1. 34 50 +22 *)表中の数字は, 1社あたりの平均値と標準偏差である。表中の数字は,以下のように計算 された。「本国親会社で全面的に行われている」→l点 本 国 親 会 社 と 海 外 子 会 社 と の 問で半分半分に分担されている」→3点,. 引 r海外子会社で全面的に行われている」→5 J点として,回答企業の合計点をだし,それを回答企業数で割って, 1社あたりの平均値を出 した。 なお「米英企業の差」は,米国企業の平均値から英国企業の平均値を差し号│いた差を意味 している。従って,プラスの場合は,米国企業での実践レベルが高いこと,また逆にマイナ スの場合には,英国企業の実践レベJレがそれだけ高いことを意味している。 英国企業では,最も海外子会社にローカlレ化されている経営職能は,人事職 能(ローカル人)であり
4
点近い数字になっている。それに続く経営職能は, アフターサービス職能,販売職能,購買職能である。製造職能,設計職能は, 米国企業よりは,幾分ローカル化されているが,いずれも 3点台の前半である。 研究開発,運転資金,人事(派遣社員)職能も米国企業よりは幾分ローカル化 の数字が高くなっている。設備投資資金のスコアは, 2..20点と最も低く,英国 本社で集権的に決定・運用がなされているようである。もちろんこれは,英国 企業のヨーロッパ大陸への地理的な近接性などが大きく影響しているためと思 われる。 ヨーロッパ地域における米国企業と英国企業の経営職能の特徴を全体的に比467 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -159 較すると,購買職能と設備投資職能は,米国企業のケースが英国企業の場合よ りもローカル化が少しだけ進展していることが理解できる。しかし,上記二つ の経営職能以外は,いずれも米国企業の場合が,経営職能を海外子会社にロー カル化している傾向が幾分高い。英国企業の場合には,ヨーロッパ大陸との地 理的な近接性などのため,経営職能を英国の親企業に集権化している傾向が高 いようである。 3 )経営職能のローカル化(北米) ここでは,カナダに進出した米国企業,及び北アメリカ(米国,カナダ)に 進出した英国企業における経営職能のローカノレ化を,表
3-14
により検討す る。 まず,米国企業の経営職能のローカル化は,全体的には3点台半ばから 2点 台前半と,欧州地域への進出よりは,海外子会社への経営職能のローカル化の レベルは幾分低くなっている。そのことは,米国企業の北アメリカでの海外子 会社の経営職能は, NAFTA全体を一つの地域として,米国本社で統一的にマ ネジメントしており,それだ、け米国本社への集権化のレベlレが高いことを示唆 している。逆に英国企業の場合は,人事職能(ローカルズ)の4
.
.
2
1
点を始めと して,アフターサービス職能,購買職能,製造職能,設計職能の5
つの経営職 能は4点台にある。そのことは,英国企業では,北アメリカ地域の海外子会社 への経営職能のローカル化のレベルは,ヨーロッパ地域の場合に比べて,高い ことを示している。このことは,米国企業と英国企業の北アメリカ地域におけ る経営職能のスコアを比較すると,いずれの経営職能も英国企業のローカル化 が米国企業の場合よりも遥かに高くなっている(設備投資資金の場合を除いて) ことからも明白である。 次に,米国企業及び英国企業それぞれの経営職能のローカノレ化のレベルを, 詳細に検討してみる。米国企業の経営職能のうち,ローカル化が相対的に高い のは人事職能(ローカルズ),アフターサービス職能,購買職能,販売職能など の経営職能であり,いずれも 3点台にある。製造職能は2..78点と,予想外にロー160ー 香川大学経済論叢 468 カル化のスコアは低いレベルにある。またR&D(研究開発(狭義),設計職能), 資金調達(運転資金,設備投資資金調達のいずれも)や派遣社員の人事職能は 2点台の前半にあり,親会社がとりわけ集権的に行っている傾向が強く,それ ら経営職能は,海外子会社にローカル化されているとはいえない。 逆に英国企業の場合には,北アメリカ地域の海外子会社への経営職能のロー カル化は,遥かに進んでいることが,下記の表の「米英企業の差」のスコアか ら窺える。英国企業では,米国企業の場合にはなかった 4点以上のスコアの経 営職能が,人事職能(ローカルズ),アフターサービス職能,購買職能,製造職 能,設計職能の5つの経営職能を数え,販売職能も 4点に近い数字になってい る。それ以外には,研究開発(狭義)と人事職能(派遣社員)及び運転資金調 達が3点台にあり,設備投資資金の調達が2..18点と,親企業で最も集権的に行 われている。しかし,これまでにも指摘したとおり,北アメリカ地域では,英 国企業の経営職能のローカル化が米国企業よりも遥かに進んでいることが明ら かになった。 表3ー14 経営職能のローカlレ化(北米) 経営職能 米国企業 英国企業 米英企業 平均値標準偏差 N 平均値標準偏差 N の差 1)人事(ローカルズ)職能 3..62 1 27 58 4.21 1 04 38 59 2 )アフターサービス職能 3..41 130 59 4..02 1.11 41 - 61 3 )購買職能 3..35 1.22 57 4..09 1..15 35 -.74 4 )販売職能 3.24 1.21 59 3..85 1..13 41 -..61 5 )製造職能 2.78 124 54 4..03 1..15 32 -123 6 )研究開発(狭義)職能 2..40 1 20 55 3..55 1.18 29 -115 7)運転資金調達 2..36 1 24 58 3..02 1 19 40 -..86 8 )設計職能 2..35 117 55 4 00 1 09 33 -1 65 9 )人事(派遣社長)職能 2 15 123 52 3.16 124 31 -1 01 10)設備投資資金調達 2.14 122 57 2 18 1..18 38 -..04 *)米国企業の場合には,北アメリカはカナダのみである。
*
*)表中のスコアは,表3-13と同様である。 4 )経営職能のローカル化(アジア) 米国企業と英国企業は,アジア地域の海外子会社において,経営職能をどの161 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 469 程度ローカノレ化しているのか,表
3-15
により検討する。 へのロー (カナダ) 全体的には,米国企業の場合は,欧州地域と北アメリカ カル化の中間にあり,英国企業の場合には,北アメリカ地域と欧州地域の中間 また米国企業と英国企業の経 これまでと同様に,英国企業の経営職能の これまでの数字から理解できる。 にあることカむ 営職能のローカル化を比較すると, これまで検討した欧州,北 ローカノレ化のレペyレが全体的に高いという特徴は, アメリカ地域と同様である。 まず米国企業のアジア地域の海外子会社への経営職能のローカル 化の特徴を検討する。アジア地域の海外子会社への経営職能のローカノレ化は, 人事職能(ローカルズ),購買職能,アフターサービス職能,販売職能は,ほぽ3
,,5
点以上のスコアであり,海外子会社に経営職能をある程度まで国際移転し それ以外の経営職能,例えば製造,運転資金調達,研究 それでは, ていることが窺える。2
点台後半であり,幾分ローカノレ化されているレベルに などは, 開発(狭義) いず しかし,設計職能,設備投資資金調達や人事職能(派遣社員) マネジメントの権限が本国の親会社に集中している は, ある。 れも 2点台の前半にあり, これまでにも指摘したように,米国企業に比べるとロー ことが窺える。 英国企業の場合は, 経営職能のローカル化(アジア) 表3ー 15 米英企業 の差 -..46 -..22 -.23 一β2 -..46 -..04 -..33 -..99+
05 -..46 N 1 7 9 2 2 3 4 4 2 6 d 佐 quqυ4AqJd 宮 内 J ﹃ υdTnJ 英国企業 平 均 値 標 準 偏 差 4..24 .86 3..84 1. 07 3..85 1. 23 3..81 1.13 3..28 1 30 2 79 1. 21 3..00 L39 3..44 L31 2.31 L09 2..81 L28 米国企業 平 均 値 標 準 偏 差 N 1 )人事(ローカノレズ)職能 3 78 1,,24 41 2 )購買職能 3..62 L28 37 3 )アフターサービス職能 3..62 1 23 37 4 )販売職能 3..49 1 15 37 5 )製造職能 2..82 1 36 34 6 )運転資金調達 2.75 1 37 40 7)研究開発(狭義)職能 2..67 L33 36 8 )設計職能 2.45 L39 38 9 )設備投資資金調達 2..36 L29 39 10)人事(派遣社員)職能 2..35 1 27 37 *)表中のスコアについては,表3-13と同様である。 経営職能-162- 香川大学経済論叢 470 カル化のレベルはより高くなっているが,北アメリカ地域に比べると低いこと は,すでに指摘したとおりである。具体的に,スコアが
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点台にあるのは,人 事職能(ローカルズ)のみである。それ以外に,比較的スコアが高いのは,ア フターサービス,購買,販売職能であり,ローカル化がある程度進展している。 上記に続いて,設計職能は3.44点 で あ れ 製 造 職 能 は 3..28点,研究開発(狭 義)は3,,00点と, 3..00点以上のスコアになっている。 2点台にある経営職能は, 人事職能(派遣社員),運転資金調達,設備投資資金調達などであり,欧州、1,北 アメリカに比べると,本国の親会社で集権的に行われている傾向が高い。4
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米国企業と英国企業の管理会計実践 この節では,米国企業と英国企業の海外子会社の管理会計実践の実態と課題 を中心に検討を進めたい。具体的には,海外子会社から本国の親会社への月次 報告制度,親会社と海外子会社間での国際振替価格,海外子会社の業績評価, 海外子会社の資金調達,海外子会社の予算管理権限,意思決定権限の分散度に ついて考察する。そのことにより,米国企業と英国企業は,どの程度海外子会 社に管理会計上の意思決定権限をローカル化しているか明らかにする。4-1
月次報告制度 月次報告制度は,親会社が国内外の子会社をマネジメントする上で,最も重 要な報告制度である。ここでは,米国企業と英国企業において,海外子会社か ら本国の親会社へどのような報告書が月次に報告されているかを明らかにした い。そのことは,多国籍企業の親会社は,海外子会社にどのような月次報告書 を要求し,それに基づいて海外子会社をマネジメントしているかを明らかにす ることになる。 1)月次報告制度の有無 まず最初に,米国企業と英国企業において,海外子会社から本国の親会社へ の月次報告制度のあり方を,表4-1により検討する。表から明らかなことは,471 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 163 郵送調査に回答のあった殆どすべての米国企業,英国企業で月次報告制度が導 入されていることである。すなわち,米国企業では97..30%の企業で,また英国 企業でも 97..37%と,ごく一部の企業を除いて,ほとんどすべての企業で月次報 告制度があることが理解できる。月次報告制度が,親会社による海外子会社の マネジメントの上で,最も重要な役割を果たしていることを示唆している。 表4-1 親会社への月次報告制度 月次報告制度 1 )有り 2 )無し 合計 2 )親会社への月次報告制度 米 国 企 業 72 ( 97.30%) 2 ( 2 70) 74 (100 00) 英 国 企 業 74 ( 9737%) 2 ( 2 63) 76 (100 00) それでは次に,ほとんどすべての企業で導入されている月次報告制度の内容 は, どのようなものであるのかを検討する。米国企業と英国企業の海外子会社 から本国の親会社への月次報告制度の内容は,表4-2のとおりである。 最も重要な月次報告書は,米国企業,英国企業のいずれでも,企業の月次の 経営成績を示す月次損益計算書であり,
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社を除いてすべての企業で導入され ている。それに次いで多いのは,海外子会社の財政状態を示す月次貸借対照表 と売上高と利益の目標と実績の比較である。 まず月次貸借対照表は,米国企業 では94..44%,英国企業でも 89..94%となっている。損益計算書を月次報告書に 含めていない企業も,米国企業で4社,英国企業で8社と,一部の企業でみら れる。また売上高と利益の目標と実績の比較は,英国企業では94..52%,米国企 業でも 88..98%の企業で月次報告書に含められている。以上3つの報告書は,米 国企業と英国企業のいずれにおいても,最も重要な月次報告指標である。 それ以外には,英国企業では,予算と実績の差異 (93..15%),従業員数のト レンド(80.82%),海外子会社間の取引(8082%)は,月次報告指標として80% 以上の英国企業で導入されている。 それに対して,米国企業では,予算と実績 の差異(66..67%),在庫(原材料,仕掛品,製品)(66.67%),海外子会社聞の;
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-164ー 香川大学経済論叢 472 表4-2 親会社への月次報告制度 月次報告書の内容 米国企業 1 )月次損益計算書 71 (9861%) 2 )月次貸借対照表 68 (94 44) 3 )目標と実績の比較 64 (8898) (売上高と利益) 4 )予算と実績の差異 57 (7917) 5 )従業員数のトレンド 48 (6667) 6 )在庫 48 (6667) (原材料,仕掛品,製品) 7)製品の不良率の変化 8 (11 11) 14 (19.18) 8 )海外子会社聞の取引 43 (59 72) 59 (80 82) 9 )資金計算書 37 (5L39) 一 10)その{也 9 (12 50) 55 (7534) 合計 72 73 *)複数回答可である。なお表中の(-)は,調査項目がないことを 示している。 英国企業 72 (9863%) 65 (89 94) 69 (9452) 68 (93..15) 59 (8082) 取引 (59..72%)は,英国企業の場合と比べると月次報告書に含めている企業は 少ないが,ある程度の企業で導入されている様子である。なお,資金計算書を 月次報告書に含めている企業は,米国企業で51..39%と,約半数の企業で行われ ている。(英国企業には,この調査項目はない。) 全般的にいえることは,月次損益計算書,月次貸借対照表,売上高と利益の 目標と実績の比較は,米国企業,英国企業ともに非常に重要な月次報告指標と して重要視されており,大部分の企業で月次報告が行われている。しかしそれ 以外の大部分の月次報告指標(予算と実績の差異,従業員数のトレンド,海外 子会社聞の取引など)は,米国企業よりも英国企業で実践している企業が多い のが特徴である。 4-2 国際振替価格 多国籍企業は,当然のこととして,企業内国際分業を広く行っており,製品 (商品を含む),原材料(部品を含む)を,本国の親会社と海外子会社聞で,国 際的に売買(企業内国際振替)している。ここでは,企業内国際振替を行う際 に,使われている販売価格決定の方法(国際振替価格)について,1)本国の473 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 165 親会社から海外子会社に原材料,製品の売買を行う場合と,
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海外子会社か ら本国の親会社(同企業グループの別法人の海外子会社)に原材料,製品の販 売を行う場合に分けて,その実態と課題を検討する。また同時に,国際振替価 格の方法を決める場合の,親会社と海外子会社間で価格を取り決める際の価格 交渉力(pricingpower)の実態とその在り方についても検討する。 1 )親会社から海外子会社への国際振替価格(1) まず最初に,本国の親会社から海外子会社に,原材料,製品を企業内国際移 転(売買)する場合の国際振替価格の方法について,表4-3により検討する。 国際振替価格の方法としては,市場で売買されている価格をベースにした市場 価格基準(広義) (これには, 1)市場価格(狭義)基準と 2)市場価格マイナ ス販売会社の諸経費,の二つが含まれる。),製造企業の原価をベースにした原 価基準(これには, 3)実際原価基準, 4)標準原価基準が含まれる。),及び 上記2)の原価に何程かのマークアップをプラスした原価プラス利益基準(こ れには, 5)原価プラス利益(実際原価), 6)原価プラス利益(標準原価)が 含まれる。)に大きくは分類できる。 最初に,米国企業の親会社から海外子会社に,原材料を国際振替をする場合 を検討する。米国企業では,国際振替価格の方法として原価プラス利益基準を 利用している企業が46..97%と,半数近くの企業は原価プラス利益基準を国際 振替価格に利用している。その内訳としては,標準原価を利用している企業が 25..76%と,実際原価を利用している企業の2L21%よりも,幾分多くなってい る。 次に多い国際振替価格の方法は,市場価格基準(1)と 2)を合わせたもの) であり, 28..79%を占めている。その内訳は,市場価格基準(狭義)が2L21% を占め,市価マイナス経費基準は7..58%と,その利用は一部の企業に限られて いる。原価基準(5 )十 6))は最も少なし 24..24%である。原価基準の内訳は, 大部分が標準原価による国際振替価格である。 今度は製品の国際振替の場合を検討する。米国の親会社から海外子i会社への166 香川大学経済論叢 474 製品の国際振替において,最も広く利用されている国際振替価格は原価プラス 利益基準であり, 49.25%を占めている。この方法の利用は,原材料の国際振替 の場合よりも幾分多く,製品の国際振替の場合にはほぼ半数の企業がこの方式 を利用している。次に多いのは市場価格基準であり, 43“29%を占めている。原 材料の国際振替の場合と比べると,市場価格基準は15%近く多くなっており, 製品の国際振替の場合には原価基準から市場価格基準へ国際振替価格の方法が 移行している米国企業が多いことが理解出来る。その結果,米国企業では原価 基準は7..46%の企業で利用されているに過ぎず,ほとんどの企業で国際振替価 格の方法としては用いられていないといえる。 表4-3 国際振替価格の方法(1):親会社から海外子会社へ 国際振替価格 米国企業 英国企業 原材料 製 品 原材料 製 品 1 )市場価格基準 21. 21% 28.36% 40 35% 40..98% 2 )市場価格マイナス販売会社の経費 7..58 14 93 12..28 14 75 市場価格基準 28..79 43..29 52.63 55..73 3 )原価基準(実際原価) 3..03 5 97 8 77 3.28 4 )原価基準(標準原価) 21.21 L49 702 6..56 原価基準 24..24 7.46 15.79 9..84 5 )原価+利益基準(実際原価) 21. 21 17..91 14 04 14.75 6 )原価+利益基準(標準原価) 25..76 3L34 15 79 16.39 原価プラス利益基準 46..97 49.25 2983 31 14 7lその他
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1..75 3..28 合計 66 67 57 61 次に,英国企業のケースを検討してみる。まず最初に,海外子会社が原材料 を本国の親会社から調達する際の国際振替価格を検討する。この場合に最も多 いのは,市場価格基準であり, 52..63%と過半数を占めている。その内訳は,市 場価格(狭義)が40.35%,市価マイナス経費基準が12..38%という比率である。 上記以外には,原価プラス利益基準が29..83%を占めているが,原価基準は 15“79%と,最も少なくなっている。 製品の国際振替の場合には,市場価格基準へのシフトは55..73%と,一層高く475 米国企業と英国企業の多国籍化とマネジメント・コントロールの比較考察 -167-ー なっている。また原価プラス利益基準も 31..14%と幾分多くなっており,逆に原 価基準は9,,84%へと, 5,95%減少している。 以上,米国企業と英国企業において,親会社から海外子会社への国際振替価 格の方法を詳細に検討してきた。その結果,原材料の国際振替の際には,米国 企業では原価プラス利益基準が中心であり,英国では市場価格基準中心の国際 振替価格の方法になっていることが理解できた。また製品の国際振替価格の場 合には,米国企業では原価プラス利益基準と市場価格基準が中心であり,英国 企業では市価基準中心の国際振替価格によっていることが理解できた。 2)海外子会社から親会社への国際振替価格