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中国のハり麻酔(翻訳・紹介)
小 林
立 ここにご紹介する「中国のハリ麻酔」は,以下にかかげる諸論文を読んでま とめた文章である。 ≪関干針刺麻酔理論原理的討論・編者接語≫(「紅旗」1971年第9期) ≪在針刺麻酔下為什磨能開刀?≫ 上海市針刺麻酔協作組(「紅旗」1971年第9期) ≪関干針刺麻酔原理的一点認識≫ 中国人民解放軍総医院(「紅旗」1971年第9期) ≪対針刺麻酔鎮痛原理的探討≫ 中国人民解放軍広州部隊総医院(「紅旗」1971年第9期) ≪穴位,経絡和針刺麻酔原理≫ 北京針麻協作組(「紅旗」1971年第12期) 日 次 まえがき 一・薬物麻酔の壁を破る こ 痛み止めの作用を扁桃手術に応用 三 岳代中国の医学書を追体験 四 ツポの数を減らす 五 ツボの特異性と相対性 六 ツポと神経系 セ ハリの刺激と手術の刺激 八 経絡説と神経生理学 九 ハリのもつ調節作用小 林 立 34 十 医師と患者の協力 毛主席語録 〔附託〕 参考文献 まえがき 毛主席は“中国の医学と薬学は偉大な宝庫であるから,発掘し向上させるよ う努力すべきである〝 と指摘している。ハリ麻酔は正に毛主席のこの指示を実 践して得た新しい成果であり,医学と自然科学の分野に新しい研究課題を提起 した。ハリ麻酔の医療活動において,医療関係者ほ貴重な経験を少なからず積 んでおり,それらの感覚的認識を理論的認識に.まで高めて,新たな飛躍を実現 させる必要がある。現在,ハリ麻酔はまだ発展途上にあり,ハリ麻酔の作用の 理論についても異なった認識が存在している。これは正常な現象である。引き 続き毛主席の背学思想を活かして学び,活かして用い,実践的な経験に.対し て,事実にもとづいて真理を探求する姿勢でまじめに総括を行ない,得られた 結論を実践に持ち帰って験証し,繰り返し実践・冶括・比較を経て,認識を一 歩一・歩深めさえすれば,次第に客観的事物の本質を認識できるのである。(註1) ハリ麻酔の発展は,二つの路線の闘争で満ちている。ハリ麻酔が誕生した最 初の日から,民族的虚無主義によるさまざまな批難と攻撃に断えず直面して, ハリ麻酔ほ天逝の憂き目に一度瀕した。しかし,毛主席の革命路線の指導の下 に.,プロレタリア文化大革命以来,ハリ麻酔ほすばらしい速さで発展し向上し た。ハリ麻酔の方法は−・歩一・歩簡略化され,効果は断えず高まり,広範な労働 者・農民・兵士の熱烈な歓迎を受けたのである。(荘2) ハリ麻酔の本質について理論的に研究を行うことは重要である。理論的にハ リ麻酔についての認識を高めることによってしか,ハリ麻酔の実践をもっと立 派に.指導し,断えずハリ麻酔の効果を高めることはできないからである。(註3) 本誌(紅旗)は毛主席の“百花斉放,百家争鳴〝の方針を専守して,これらの (註1)紅旗’71.958貫 (註2)紅顔≡’719.61貫 (註3)紅旗,71,9け 64貫
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 35 論文を発表する。これらの論文はハリ麻酔の原理に関する討論のための最初の 論文であり,人々の注意を喚起するよう頑望している。こういう討論は医療関 係者が唯物弁証法を把握し運用して,観念論と形而上学を−・掃し,中国医学と 西洋医学を更によく結びつけることを促がし,中国の新しい医学を創造・発展 させ,中国の科学事業の進歩と繁栄を推し進める上で,意義のあることであ る。(註1) ー 薬物麻酔の壁を破る 紀元2世辞己,中国では漠代の名医,聾佗が“麻沸散〝 を使用して,患者を “酔わせて感覚を無くして〝から,開腹手術を行っている。19世帝己中葉,欧米 諸国は笑気,ユ・・−・テル等を使用して,全身麻酔が行えることを発見している。 その後,次第に.発展してきた局所麻酔と半身麻酔などの方法は,すべて各種の 麻酔薬から切り離せないのである。従って長い間,人々は手術をするには麻由 英を使わねばならないと考えて来た。(註2) しかし中国の医療関係者は,薬物麻酔の壁を打ち破った。金の針を何本か息 実のツボに打つことによって,完全に意識がはっきりした状態のまま患者に手 術を受けさせることができるのである。これがハリ麻酔である。(註$) ハリ麻酔は中国の広範な医療関係者が,偉大な指導者・毛主席の“中国の医 学と薬学は偉大な宝庫であるから,発掘し向上させるよう努力すべきである〝 という教えを専守して,臨床実践を通じて獲籍した新たな成果である。(註4) 産まれて二日の赤ん坊から80歳を越えた老人まで,軽い愚老から仮死,人事 不省の重症患者まで,頭蓋骨をはじめ胸部,腹部,四肢など身体の各部位の疾 病まで,すべてハリ麻酔で手術することに成功している。(註5) 上海地区においてハリ麻酔を運用しており,手術が行える病院の9割は,す でに5万人に近い患者に対して,100余種の手術を行ない,成功率は90%前後 首〓貝首只百八首 00 9 9 ハィU 9 5 5 5 6 5 9 9 9 2 9 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 凝戯旗旗戯 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 0U 4 5 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
小 林 立 36 に達している。ハリ麻酔によ、つて,我々は患者の頭蓋骨を開いて茶碗の大きさ く“らいの脳膜肉腫を取り去り,胸部を開いて病んだ肺を切除し,手の指を心臓 に突っ込んで狭窄なこ尖揮を開き,腹部を切り開いて重さ40斤余りの卵巣悪性 腫膚を摘出し,胸部と腹部を同時に開いて,食管内の癌腫を切除している。(謎1) 数多くの実践が証明しているように.,ハリ麻酔は安全で効めがあり.簡便で 経済的であり,患者の健康の回復が速く,部隊と農村に普及し応用するのに便 利であり,さらには戦時の緊急事態のもとでの需要に.適している。(註2) ハリ麻酔の下では患者は意識が完全に.は、つきりLている。これは患者の積極 性を発揮させ,医療関係者と協力して,共に手術と治療が行え.るよう保証す る。例えば脳外科で聴神経癌の切除手術を行う時,薬物麻酔の場合は,他の脳 神経組織を誤って傷つけやすく,重大な・事故を起こしたりすることさえある。 しかし,ハリ麻酔の時は, ができ,他の脳組織を誤って傷つける危険を避けることができる。これはその 他のいかなる麻酔方法も行いえないことである。(註る) それではハリ麻酔によって何故,手術がやれるのか。小さな金の針がどうし てそんなに大きな威力をもつのか。(証4) ニ 痛み止めの作用を届桃手術に応用 1958年,広範な医療関係者ほ毛主席の偉大な呼びかけと英明な指示に応えて, 中国医学を西洋医学が学び,中国医学と西洋医学を結びつける大衆運動がまき 起された。こうして針灸療法は菅及され,許多の新しい発展をとげた。(註5) その頃,我々は.針灸療法を学んだのだが,ハリの痛み止めの効果がすばらし いことを見て,傷口の薬を貼り替える時,患者がいつも激しい痛みを感ずるの で,ハリで痛みを止められないものかということに思いついた。かくて,我々 は薬を貼り替える時,まず患者のツボにハリを打った。果して,ハリを打って qV q︶ 2 9 乳 1 1 1 1 1 1 7 17 , 1 放旗腰旗旗 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3 4 5 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 37 から,薬を貼り替えると患者は何ら痛みを感じなかったのである。この事がヒ ントになって,患者が痛みを覚える時,ハリを打てば痛みを止めることができる が,あらかじめハリを打てば痛みを防く1ハことができることが分かったのである。 これは針灸療法に.おける認識の飛躍であり,ハリ麻酔の新芽であった。(註1) 従来,我々は扁桃の手術を局所麻酔の方法でもって行って釆たが,患者は手 術後,咽喉が何日もの間痛み,水を一・ロ飲むにも困難を感じる上に・,物をよく 食べられないために,手術後における健康の回復にも影響していた。その後, 我々は急性扁桃炎に対してハリはたいへん治療効果があり,ハリをゎつと愚老 の咽喉の痛みはすみやかに軽減し,炎症も次第に.消えてしまうことを知った。 そこで我々は扁桃手術した後の傷の痛みをハリで解決できないものかどうかと
考え.た。患者に試みたところ予期した効果が得られた。患者はハリを打った
後,咽喉が痛くなくなったので,よろこんで食事をとるようになった。続いて ある同志が大胆な考え方を掟起した。それは薬物麻酔の代りに,ハリで痛みを 鎮めて屈桃の手術を行ってみてはというものだった。(鼓2) こうして我々のハリ麻酔の最初の試みは,耳鼻咽喉科において扁桃の切除手 術として行われた。 中国医学と西洋医学の共同の努力のもとに,ハリ麻酔による初めての扁桃の 切除手術に成功した。この成功は我々に大きな鼓舞を与え,毛主席の指導する 中国医学と西洋医学を結びつける道を進む決意を一層固めたのである。(注さ) ハリ麻酔によって届桃切除という小ぎな手術に.は成功した。それではハリ麻 酔をもっと大きな手術に使うことはできないものか。 1960年,我々は広西省柳州の医療関係者の進んだ経験を学んで,ハリ麻酔に よる肺切除の手術の研究を開始した。漢方医と西洋医の緊密な協力のもとに, 5年間堅持して,200余回の手術を行って,、ついに,肺切除に対してハリ麻酔 を適用する方法を総括し,ハリ麻酔を他の各科の手術に適用するための初歩的 な経験を提供したのである。(註4〉 貴官〓只亘 0 0 0 0 AV 6 6 6 9 9 9 9 1 1 1 1 7 7 7 7 旗旗旗放 紅紅紅紅 ヽ,ノ ヽノ \′ ヽ′. 1 2 3 4 註註註註 ・l\ ′■\ −\ ′.\小 林 立 38 三 吉代中国の医学書を追体験 ハリ麻酔に.よる手術を行うにあたって,我々がまず解決せねばならなかった 問題は,どのツボにハリを打つかということだった。(註1) 中国医学の理論によれば,身体の中には河の流れや満と似たような組戯があ って,“内は臓腑に属し,外は肢節に絡がって〝,身体の各部分を互いに・流通 させている。これが≠経絡〝 といわれるものである。その中で,縦に走ってい る主幹を“経脈〝と呼び,横に葬る分枝を“絡脈”と呼んでいる0身体のツボ の多くはいずれも≠経脈〝 の上に分布しているといわれる。(註2) 初め,我々は中国医学の理論とハリ療法の臨床経験に.もとづいて,“経に循 ってツボを取る〝 という原則を採った。扁桃切除とか抜歯など小さな手術をハ リ麻酔で行う時には,“経に.循ってツボを取る〝原則によってツボを決定し, 手術に成功しているのである。(註3) しかしながらハリ麻酔で大手術を行った時,問題に.出くわした。肺切除の手 術を初めてハリ麻酔によって行った晩 従来の小さな手術の経験に・もとづい て,20数箇のツボを定めて,ハリを打ち,何回か指でまわすと,ハリをツボに 留めたまま,すくヰ術を始めた。しかし,このハリ麻酔による手術は失敗だっ た。(註4) 我々は失敗の原因を分析した。漢方医からハリ療法においては“気を得る〝 ことが,たいへん強調されているという意見が出された。“気を得る〝 という のは,“経絡〝の磯能の表現のことで,つまりハリをツボに打ったら,必ず患 者にだるい,はれぼったい,重たい,しびれる等の感覚をもたせねばならない と同時に,医師の手もとでは,ハリが軽く“吸いこまれる〝 ような感じがうま れて,はじめて効果があがるとされている。二千年余り昔の中国の医学書≪内 径≫には,“刺の要は気至りて効あり〝 という記載がある。これはハリの“気 を得る〝 ことの重要性を述べているのである。(註5) 貫首只苫定員首 l l l l 1 6 6 6 6 6 9 9 9 9 9 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 旗旗族旗旗 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ l ウ︼ ︵∂ .4 5 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国のハリ麻酔(和訳・紹介) 39 しかし,医師がハリを打って後,ただハリをツポに留めておくだけで,持続 してハリを指でまわすことをしなければ,しばらくすると,だるい,はれぼっ たい,藍たい,しびれる等の“気を得る〝 という感覚が,患者から次第に弱く なり,消えてしまうことさえ.ある。こうして,その後の肺切除の手術では,操 作の方法を改めて,手術中,ハリを指でまわすことを持続し,終始患者に“気 を得る〝 という感覚を保持させるようにしたところ,果して手術は成功したの である。これによって我々はハリ麻酔に」は“気を得る〝 という感覚を保持する ことが非常に重要であり,ハリを持続して指でまわすことが,その感覚を保持 するための有効な方法であることを認識したのである。(註1) 数多くの臨床経験が証明するように,どのようなツボの処方であれ,いずれ も十分な誘導時間が必要である。誘導というのは,ハリを打つことに.よって, 患者にだるい,しびれる,はれぼったい,重たいという針感をうみ出させるこ と,つまり“気を得る〝 ことであるが,この種の刺激が−・定の畳に達すると, 麻酔の作用がうまれるのである。もし誘導時間が短かすぎると,ハリ麻酔の効 果はよくないし,誘導時間をある程度まで延ばせば,よい無痛効果が得られ る。これ故に,我々は誘導によって創られた十分な刺激畳がハリ麻酔を成功さ せるための鍵であると考える。(註2) このような認識にもとづいて,我々は刺激の方法をエ夫して,刺激の質を高 めて,ハリ麻酔の効果を強化した。ハリ麻酔の手法において一二番重要なこと は,患者に“気を得る〝 ようにさせることである。もしも針感がなければもっ と多くハリを打っても,ハリを指でひねる時間がもっと長ぐても,役に立たな い。ハリ麻酔において当面まだ徹底的には解決されていない鎮痛不全,筋肉緊 張,内臓がひきつる反応などの問題も運針の手法と関係がある。我々の理解に よれば同じツポの処方を用いても,運針の手法が未熟である場合は,筋肉の緊 張はもっとはっきり現われる。手法が向上すれば,腹部縫合の困難もなくな り,内臓がひきつる反応も現われなくなる。これらのことも手法が刺激盈を得 るための重要な条件であることを説明している。(註8) 貢貢貫 2 1 1 6 7 7 9 9 9 1 1 1 7 7 7 旗旗旗 紅紅紅 ヽ′′ ヽ′一︶ 1 2 3 註註註 ︵ ′■\.し
小 林 立 40 刺激の時間について,我々は手術前の誘導時間を強調するだけでなく,時間 のかかる大きな手術は,中途でハリを停めることが長すぎると腹部,胸部の縫合 の前にもあらかじめ誘導しておく必要がある。どれだけ刺激畳があれば,“十 分〝であるかについては,手術が人体に及ぼす影響の程度と患者各人の生体の 状況の差に.よって異なっている。−・般的には手術の大小,時間の長短,患者のハ リに対する反応の程度などによって決めるのがよい。大多数の情況の下では, 針感の反応と受ける刺激盈とは正比例する。患者がまだ十分な刺激畳を得てい ない場合には,刺激畳を増せばハリの麻酔効果は高くなるが,−・概に刺激急が 大きければ大きいぼど,ハリ麻酔の効果がよいと考えることはできない。(証1) もしもハリの手法がききすぎて,“気を得る〝感覚が強すぎると患者はハリ の刺激そのものに.耐えることができず,ハリ麻酔を続けることはできなくな る。(荘2) またハリ麻酔に.よる手術では,患者は意識がはっきりした状態に・おかれる。 ハリ麻酔の効果は愚老の主観によって決定されるものではないが,患者の思想 情況,精神的要素が生理的機能と手術の創傷に対する抵抗力に明らかに影響す る。例えば患者の気持が緊張しているため筋肉が緊張状態にある場合には,ハ リを打って“気を得る〝 ことにすぐさま影響が及んで,十分な刺激最は得られ ないのである。(瀧3) 患者がハリ麻酔に対↓て正しい認識と十分な信頼をもっていることが,ハリ の抑制作用を形成するよう促進するので,ハリ麻酔の効果はよりよいものとな る。(註4) 四 ツボの数を減らす 当初,ハリ麻酔に用いるツボはたいへん多かった。最も多い場合には,ある 手術を行うのに80余りのツボを選ばねばならなかった。そのため操作が面倒 で,患者の負担も大きかった。そこで我々はツボの数を減らして操作を簡略化 (註1)紅旗’719り 71∼2真 (註2)紅旗’71.9.64貫 (註3)紅旗’71.9.74貴 (註4)紅旗’719.77貫
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 41 することはできないものかと考えた。(註1) しかし当時はツポを多く取るはど効果はよくなると考える者もいた。いった いツボの数を減らせば,ハリ麻酔の効果に影響するものかどうか。我々は毛主 席の教えに従って,実践の中で繰り返し研究を行った。(誅2) 我々は自分の身体と健康な人の身体に,測痛機器な用いて,ハリを打つ前と 打った後の身体の各部位に.おける痛覚の変化を測定して,異なったツボにノ、り を打った後,鎮痛効果に.差があるかどうかを比較しナ・。延べ660余人の実験を 通じて,ハリ麻酔で常用される29箇のツボの鎮痛作用を分析して,4万余りの 数値を得ることができ釆1・。ハリのツボに.は確かに鎮痛作用があるけれども,ツ ボが異なれば鎮痛作用に強弱の差があることが証明された。−・般的に言って, ハリで“気を得る〝感覚が強いツポの鎮痛効果ははっきりしてこいるが,“気を 得る〝感覚の弱いツボの鎮痛効果は劣っている。 この実験結果に.もとづいて,我々は胸部と背部に.鎮痛効果のすぐれた7薗の ツボを選んで,肺切除の手術を行なった。その結果,選んだツボはこれまでよ り減ったけれども,ハリ麻酔の効果は変りなか、つた。(註3) “気を得る〝感覚のより強いツボを選択して,全身の各部位の手術を行うこ とはできないものかどうかと考え,我々はツポを三つ選んで,頭,胸,腹,四 肢など10種瑛の手術を合計300余例行って,よい効果をあげた。は4) ある場合は,自分の身体でハリの練習をして,限に.関係のある数十億のツポ の中から2簡ツボを選び出して,白内障の手術を行なったが,麻酔効果は満足 すべきものだった。 ある場合は,症例の分析により,輸卵管結先手術を行うための10組の処方の 中から,1組選んで用いたが,やはり手術は成功した。(註5) このような認識にもとづいて,我々は“ツボは多いほど効果がある〝 という 見方を否定し,不断の実践を経て,数箇のツボを打つだけの新しい方法を総括 (註1) (註2) (註3) (註4) (註5) 百三貝首只首二貢 2 5 2 4 0 6 7 6 6 7 9 9 9 9 9 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 凝戯旗旗傲 紅紅紅紅紅
小 林 立 42 したのである。(註1) その後,我々は多くの手術において,いずれも刺激に対してより敏感なツポ を選ぶようにした。こうして−ッボの数ほ数十箇から3∼4箇,あるいは1∼2 飽にまで減ったのである。(註2) 例えば,我々は1本のハリを用いて,肺葉切除,異状密肉切除,盲腸切除な どの手術を成功させているし,・山・対のツボを用いて胃の大部分を切除し,腸の 切除,卵巣褒腫の切除など腹部の大きな手術を行なっている。(註3) 簡略化した方法を用いて,心臓の手術,食道癌の切除手術,それに12時間に わたる長い脊髄吻合手術を行うことに,我々はすべて成功している。 (註4) 五 ツポの特異性と相対性 ハリ治療の主要な理論的根拠は,経絡説であり,ツボはハリを打つ部位のこ とである。経緯説によれば,ツポは人体における“経絡〝 と≠臓腑〝の“気〝 が身体の表面に.“輸注緊縮〝 している場所であって,どの経絡にもすべて−・定 のツボがある。(註6) 二千余年前の中国の医学書≪内経≫には,頭痛,歯痛,耳痛,喉痛,腰痛, 関節痛,胃痛,腸の寄生虫による腹痛をハリで治療した記載がみられる。(註6) 中国の労働人民は長期の臨床経験を通じて,ツポにハリを打つことが疾病の 治療に対して特に有効であることを認識していた。例えば“谷合〝 のツポにハ リを打つと歯の痛みを治療する上で特に効めがあるし,胃腸の病気には“足三 屋〝 のツポを用いるのがよい。もしもツポを逆にして治療をしても効果は理想 的ではない。それで針灸歌謡にも“腹は三里に.留まり〝,“顔と口は合谷に収 まる〝 という文句があるわけで,これは長期にわたる疾病との斗いの経験を総 括したものである。は7) 貫首〓只克首〓員頁 −h︶ ︵Z 1 5 ■雀 0 4 7 6 7 7 6 βU 6 9 9 9 9 2 9 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 7 7 放旗激励旗族旗 紅紅紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 ウリ 4 5 AV 7 註註註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国の′、り麻酔(翻訳・紹介) 43 臨床経験と動物実験に.よっても,あるツボと内臓の機能とは特殊な関連があ ることを我々は見れる。例えば放射線の透視の下で,人また.は動物の“足三 里〝 あるいほ ≠虫垂〝 のツボにハリを打つと,腸の蛾動を強めることができ る。(註1) 近年来,広範な医療関係者は針灸療法の基礎の上に,新しい医療法を創造し て,数多くの新しいツポを発見して,数多くの“不治の病気〝 を治癒して,針 灸療法をして大いに異彩を放たしめた。それらの事例においては,ツポの特異 性もまた特に突出したものとなっている。 通普羽同志は“畦門〝のツボに深くハリを打つことによって成功し,“立入 り禁止地区.〝を突破した。このことは“喧門〝のツボがオ・シの治療という課題 に対しては,はっきりした特異性をもっていることを説明するものである。(荘2) 同様の事例はまた小児麻痺と半身不随の患者などの治療においても現われて おり,特定のツポに理想的な刺激を与えて,−・定の時間,治療を経ると長期間 磯能を失っていた息肢をもう一度回復させることができるのである。(註さ) ハリ麻酔の実践の中で我々はツボの相対的な特異性についても理解を深め た。 ハリ麻酔により肺切除の手術を行、つている間に,繰り返し実践することによ って,最高40本のハリから,わずか1本のハリにまで次第に減少させて−,成 功裡に.手術を行えるようになった。しかし,どのツボでもこのような効果があ るというのではない。現在,我々が常用している二種棋のツボにしても,やはり 効果は同じではない。−・方のツボは開胸手術後の呼吸困難などの防止に効果が あることがはっきりしており,他のツボは鎮痛効果がよりすくヾれている。(註4) ハリ麻酔による虫垂切除手術を行う研究において,300例の手術において, 20種はどのツボの処方の手術効果を詳しく分析した結果,その中のあるツポの 処方効果が最もすく小れていることを発見した。この処方を用いて,麻酔担当者 と手術担当者を固定せずに,無作為的に急性,慢性の虫垂炎の手術を100余例 薫育〓月膏 4 4 4 4 6 6 6 6 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 旗旗旗旗 紅紅紅紅 \,ノ ヽ−∵ \ノ \√ 1 2 曳︶ .4 註註註註 し ■し ′l\ ′l\
小 林 立 44 行ったところ,ほとんどの手術において理想的な効果をあげた。(註1) 例えばまた婦人科でハリ麻酔により子官手術を行っている際,時たま腸がガ スで張り,旗艦がふくらんで,手術の操作に影響することがある。そういう 時,“足三里〝にハリを打って,強い刺激を与えてやるとすく小回復(緩解)さ せることができた。(註2) 一・ ,ニの単位における先進的な経験が証明しているように,ハリ麻酔の下 で,脾臓切除の手術を行うと,患者が横隔膜筋のけいれんをおこすのに出くわ すことがあるが,すく一に“部門〝のツポにノ、りを打つと回復させることができ た。ハリ麻酔の実践において,この種の疑似した例は,ほかに.多く挙げること ができる。(証3二) 以上の事実は,ツボには一・定の特異性があること,す−なわちツボはある臓器 とある部位の政経に.対して特殊な作用をもっているということを説明してい る。(註4) 我々はまた実践の中で,−・つの手術に対しては多くのツボの採り方があり, しかもまた一つのツボの採り方でもって部位の異なった多くの手術を行えるこ とを発見している。また時にはツボの採り方が正確でなかったために,ハリが 経絡と本来のツボの部位.に打ってないに.もかかわらず,麻酔効果は.同じように よいということを発見している。(証5)同じツポを用いて異なった手術が行えた り,同じ手術でも異なったツポを用いることができるこれらの実践から我々は ツボの変異性はたいへん大きいことを知った。(註6) これらの現象にもとづいて,我々は経絡に.よ、つてツボをとらずに.,身体にい くつかの刺激点を探して麻酔の作用を起せるかどうかについて考えた。我々は 繰り返し試みてから,一つの新しい方法に用いた。経脈に循らずにツポをと り,肢体の神経分布の豊かな部位にハリを使わずに電気刺激による麻酔の方法 を用いて手術を行った。そして,ツボをとって,ハリを打つ場合と同様の効果 文官二員首〓貝首 4 4.4 4 5 1 ︵hU 6 6 AV 7 7 2 2 2 2 9 9 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 7 旗旗旗旗凝旗 紅 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 ウリ 4 5 6 註註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 45 を収めることができたのである。(鉦1) 我々は神経解剖学の知識に.よって,ツポを採り,意図的にハリを神経の上に 直接打って,しかもハリに電流を通して神経を刺激することに.よって鋲痛効果 をあげられないものかどうかと考えた。まず自分の身体で実験し,ハリを頸部 の神経に打った。それからハリに微弱な電流を通して神経を刺激したところ, “皮膚が厚くなったような〝感覚がうまれることを発見した。この時,頸部の 感覚は次第に麻痺した。このような方法で甲状腺手術を行、つて,順調に手術を 完了させただけでなく,皮膚を切り開く際の鎮痛効果をも著しく高めることが できたのである。我々はまた電気ハリで頭部,四肢に関連する神経を直接刺激 して,頭部,四肢等に.手術を行ったが,やはり類似のよい結果を得た。そこで 我々は身体のある部位の神経を刺激して,より遠く離れている他の部位の手術 がやれるかどうかを考えた。我々は電気ハリで顔面のある神経を直接刺激して 腹部等の手術を行ったが,やはり良い効果をあげたのである。(註2) 経絡説によれば直行するのは経であり,支えて横に出るのは絡である。経と 終の問は相互に関連し,相互に交流し合い,相互■.につながってこいて,ちょうど 連絡網のように全身の五臓六腑,頭面躯幹,四肢百骸などを連繋させて,まと まりのある統一り体を形成している。それ故,ハリをある一つのツポに打つと相 互に連絡しているこれら経絡を通して,身体の他の部位に影響するものであ る。経絡にはこのような特性があるので,ハリ麻酔のツポのとり方とその応用 の仕方も多種多様となる。一・組のツポが異なった部位の手術に用いられるし, 逆にまたある部位の手術に数組の異なったツボが用いられるのである。(荘3) ハリ麻酔の種類と方法は,多種多様である。体針を用いて手術を行なえる し,耳針を用いても手術を行える。手で針をまわして手術を行えるし,電気ハ リ(電針)あるいはツポの封印(封閉)によっても手術を行える。その麻酔効 果にあまり大きな差はないのである。(註4)実践が証明するように,体針,耳針, 顔面針,鼻針のいずれを用いようとも,ツポとハリの手法が十分な刺激盈を患 貫首〓員貢 6 5 9 1 7 6 ︼7 7 9 9 9 9 1 1 1 1 7 7 7 7 旗旗旗胱 紅紅紅紅 ︶ ヽ−ノ ヽ′一ヽ■. 1 2 ウ︶ 4 註註註註 ..1\ ′lヽ ′\ ′l\
小 林 立 46 者が得られるように保証すれば,ハリ麻酔を成功させることができる。(註1) ハリ麻酔ほ,“多くのハリを用いて多くのツポを打つ〝段階から“少ないハ リを用いて少ないツポに打つ〝段階に発展した。すなわちツポの数を減らすこ とに成功し釆・。いまや神経幹の近くに電気刺激を用いるまでにな、つている。こ れは“少ないハリで少ないツボに打つ〝段階から“ハリ■を使わずツボもとらな い〝段階に発展している。このことは,ハリ麻酔の法則に対する我々の認識の 二度にわたる飛躍である。(註2) “ハリを使わずツポもとらない〝 この種の方法を応用サーる申で,選んだ刺激 点が,手術部位を通過している神経幹に近いほど,麻酔の効果はよくなり,成 功率は97.7′く1−・セントに達している。我々はこの方法を用いて肺葉切除,頭蓋 骨鉄損の補修,腰椎間盤ヘルニア切除などの手術を行なって,いずれも満足す べき効果を得ている。(註3) ハリ麻酔の発展につれて,新しい問題が我々に提起されている。 “経脈に循 ってツボをよる〝方法と“経脈に循らずツボもとらない〝方法とがいずれも同 じ麻酔効果をあげうるのは何故か。刺激点が神経幹に近いほど麻酔効果がよい のは何故か。刺激点と手術の場所(区域)との間は,何に.よって関連作用が起 るのか,等々。ハリ麻酔の効果を高め,ハリ麻酔の技術を完壁なものに・し,中 国の統一骨で新しい医学と新しい薬学を創造し貢献するために,それらの問題 に対して理論的に回答する必要に我々は迫られている。(註4) 六 ツボと神経系 “気を得る〝 という問題を研究している時,我々は一つの事実に.気がつい た。(在5) 下半身の知覚を失った麻痺患者に,下肢の足三里のツボにハリを打っても患 者は針感がないし,脳波に変化がなく,落痛闘値は高くならない。ところが上 貫貫貫貫貢 1 6 ハ0 6 3 7 7 7 7 6 9 9 9 9 9 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 旗旗旗凝戯 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3.4 5 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 47 肢の合谷のツボにノ、りを打つと‥患者の針感ははっきりしており,開催は著し く高くなる。左半身不随の患者に,知覚を失った方の合谷のツボにノ、りを打っ ても,患者は針感がなく,脳波にも変化がなく,開催はこ高くならない。しかし 健康な方の合谷のツポにハリを打つと,患者の針感ははっきりL・ており,癖閥 は著しく高くなるる(註1) 何故,下半身が麻痺した患者の足のツボは“気を得る〝 ことがないのであろ うか。麻痺の原因ほ下半身を支配している神経系が正常な機能を失っているか らである。従って患者の足のツポが“気を得る〝 ということが神経系と密接な 関係があるのかもしれないということを物語っている。(註2) こ.の推理が正しいかどうか試験するために,我々は半身が麻痺した患者忙つ いて観察したところ,足のツポにノ、リを打っても,やはり同様に“気を得る〝 ことができないことを発.見した。その後,自分の身体で実験を行って,局所麻 酔薬をツポの深部に注射して,ツボの深部の神経をしばらくの間麻痺させてか ら,そのツボにハリを打ったところ,そのツボは“気を得る〝 ことはできない ことを発見した。(註S) 腰部を麻酔した患者に・麻酔作用がある間に,三豊にハリを打つと患者は針感 がなく,開催にも変化がないが,麻酔作用が消えてから足三豊にハリを打つと 針感はもうー度現われ,開催はあきらかに高くなるふまた健康な人および麻痺, 半身不随の患者の麻痺している方のツボに同じ刺激畳でハリを打つと,ハリの 前と後とでは,運動神経の伝導速度常変化のあることが観察された。実験結果 が示すところによれば,健康な人はハリの後では速さが増す現象がみとめられ るが,麻痺,半身不随の患者においてほハリの後でも変化はみられない。ハリ を打ってこ時間後,それぞれ採血して検査した結見 健康な人の赤血球,白血 球,血糖にはいずれもあきらかな増加がみられるが,半身不随,麻痺の患者に おいては,健康な方にハリを打った時には,血液の変化が健康な人と一・致する が,麻痺した方にノ、りを打、つても,ハリの前後で血液に変化はみ.られない。 (註4) 貫首〓貝首 7 3 3 7 け− 6 6 7 9 9 9 9 1 1 1 1 7 7 7 7 旗旗旗旗 紅紅紅紅 ︶ ヽノ.︶ ヽ−ノ 1 2 9¢ 4 註註註註 ∴l,〝/\ ノ′一\′.\
小 林 立 48 これらの実験の結果は.,ハリによる“気を得る〝 という状態が,神経系の横 能が完全であるか否かということに.密接な関係があることと,神経の伝導磯能 が正常な状態にある時にだけ,ハリは鎮痛作用を包含した作用を生ずることが できることを説明している。(註1) ハリの刺激はすべて末梢神経を通じて中枢神経に伝えられ,さらに伝導′と反 射を経て,手術部位と関連せねばならない。もし,この伝導径路に障害が発生 すると,ハリ麻酔の効果に.も影響するのである。(註2) ツボに対する解剖学的研究によっても,人体の300余りのツボのうち,半数 のツポの下には神経が通っており,他の半数のツポもその周囲0い5emの範囲内 に.ほ神経が通っていることが証明されている。このことほツポと神経の間に は,形態の構造においても密接な関係があることを説明している。これらの事 実が説明するように,神経系がハリのツボが“気を得る〝 という感覚を引き起 す物質的な基礎である。(註3)そして神経の伝導機能が正常であることが,ハリ の鋲痛作用をうむ上での重要な条件となっている。(註4) 同時に刺激点が手術部位.を通過する神経幹に近いはど,イ、りの鎮痛効果はよ いということを我々は見ている。例えば,頸部の甲状腺の手術は,これまで, 手部にツボをとったが,現在は頸叢神経に接近した部位に.ツボを、とるように改 めたので,鎮痛効果ほさらによくなった。これは神経幹を刺激することによわ て,衝動を大脳に.速く伝達できると共に.,手術部位の神経幹を刺激して引き起 された興懲が神経の伝導枚能をかき乱すことにより,手術部位から来る痛みの 衝動を抑制し,鎮痛作用を強化するのである。(註5) セ ハリの刺激と手術の刺激 現代科学の知識に.よれば,客観的外界のあらゆる現象ほ,人の感覚器管を通 して感受され,神経を通過して,脳に伝達され脳に反映される。神経系の高級 百ご貝首只首︵苫 3 ︵‖0 3 7 7 6 7 ︵0 7 ■7 9 9 9 9 9 1 1 ■・⊥ l 1 7 7 7 7 7 放放旗旗旗 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3 4−hV 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 49 な部位である脳は,感覚の最も根本に.なる物質的基礎である。,(註1) ハリのツボがうみだす“気を得る〝 という感覚と手術の刺激が引き起す痛み の感覚とはどのように.して脳に反映されるのだろうか。我々は動物実験を行っ た。ある神経および脳髄の異なった部位.に電極を挿し入れ,電極を専門の機器 に接続、して,ツボにハリまたは電気の刺激を与えた時の神経と脳髄の反応を観 察した。この時,機器の螢光屏幕に.,ツボの深部の神経組織に連続的に.電波が 生じて,この電波がすみやかに.神経を伝わって脳の一・定の部位に伝達されるの を見た。(註2)同様の方法で身体の一・定の部位に痛みの刺激を与えた時,脳の中 に.すみやかに.もう一つの形の電波が現われることを観察することができた ○ (註3) 動物実験で証明されるように,手術に.よる傷口の刺激とハリ麻酔に.よる刺激 とは,脳の異なった平面と部位において,生物電気の活動として記録できる。 (註4) ハリ麻酔による手術に.おいて,ハリのツボへの刺激と手術による刺激とが, いずれも脳に反映されて,“気を得る〝 という感覚と痛みの感覚とを形成し, 両者は一・組の矛盾を構成する。この二種類の異なった感覚が相互に作用を生ず る結果,ハリの“気を腐る〝 という感覚が一・定の条件の下において矛盾の主要 な側面を成すと,手術による痛みの感覚を軽減もしくは消去するのである。 (註5) 痛みがうまれる過程には,畳から貿へ変化する過程がある。どれ位の刺激を 与えれば痛みという反映がうまれるかを医学的には掛値と呼ぶが,開催を表示 する刺激の畳は,単位時間内にどれだけの強さの刺激を受けるかを指して言う ことであり,いいかえると刺激盈は時間と刺激の強さを乗じ釆:・ものに等しい。 これがハリ麻酔による手術の時,よくきれるメスですばやく切る方が,ゆっく り切るよりも何故鎮痛効果がよいのかという普遍的な現象について説明を与え てくれる。(註6) ハリ麻酔は開催を高めることができるが,皮膚を切り割くというこの刺激は たいへん大きいのである。もし切り割くという刺激の時間が長く,また切り割 貫首二月首〓貝首 3 3 4 2 4 3 6 6 6 7 6−7 9 9 9 9 9 9 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 7 旗凝旗旗旗旗 紅紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3.4 5 βV 註註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ′lヽ
小 林 立 50 く刺激の畳が開催より大きければやはり痛みの反応がうまれうる。これと逆 に,よくきれるメスですばやく切れば,切り割く刺激の時間を短縮し,刺激畳 ほ開催より小さくなるはずであるから,痛みを感じないのである。しかしまた ハリ麻酔も患者に大きな刺激を与えるのに,どうして痛くないのか。これはツ ポの運針あるいは電気ハリの刺激の屋が小さく;単位時間の刺激畳が園値より 小さいので痛くないのである。これが療病開催と刺激畳め関係を説明している のである。(註1) ハリの刺激と手術の痛みというこの二種類の痛みは,どのようにして脳の中 で互いに斗争しているのか。我々は髪の毛より細い“倣電極〝 を動物の脳細胞 に挿し入れ,精密機器でもって細胞の反応を観察した。動物に痛みの刺激を与 えた時,螢光屏幕の上に.電波の反応が現われ 拡声器から“タ,タ,タ,…〝 (喀)という音が発せられて,脳細胞が痛み.の刺激に対して反応を生じているこ とを表示した。続いて今度は動物にノ\りの刺激を与えると,螢光屏幕の上の電 波反応はすぐ消失して,拡声器も音がしなぐなった。この脳細胞は痛みの刺激 に対して反応を生じなくなったことを表示した。この実験が説明している通 り,ハリによる“気を得る〝 という感覚と痛みの感覚とは,同じ脳細胞に.おい て相互作用を生.じて,痛みの感覚を抑圧しつづけることにより,、痛みが痛くな い状態に転化することができる。更特進んだ研究によると,このこ種額の感覚 の相互イ乍用は主として脳のいわゆる“非特異性投射系統〝 において行なわれる ものである。我々はハリ麻酔の下で手術に.よる痛みを消去できる理由はそのよ うなものであると考える。(註2) ハリ麻酔が閥値を高めることは誰もが認める事実である。では何故,固値は 高まるのか。これがハリ麻酔の原理となる問題である。(註3) 我々は大脳皮質のはた.らきが完全に健康な人と大脳皮質の機能を失った患者 の身体について次のような情況を観察している。前者においてはハリの後で脳 電慢波(抑制を表わしている)の活動が増す現象がみられる。後者においては ハリの前も後も共に脳電には変化がない。同時に健康な人はハリの後で蹄値が 貫首只貰 3 4 3 7 6 7 9 9 9 1 1 1 7 7 7 旗腰戯 紅紅紅 \■ノ ヽ−ノ \■ノ 1 2 ウd 註註註 .一\ ′l\ 一.\
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 51
著しく高くなる。これらの現象は,大脳皮質の興奮と抑制の矛盾の斗争におい
て,ハリは抑制を矛盾の主要な側面にすることができることを説明している。これはハリの後,神経衝動がうまれて伝達系統を通って大脳皮質に達し,これ
らの微弱な刺激が断えず屈筋するにつれて,塞の変化が質的飛躍をうんで,大
脳皮質の抑制を引き起し,手術による痛みに対する大脳皮質の感覚を低下さ
せ,こうして開催を高めて鎮痛の目的を達するのである。(証1)
またある人ほ興奮が抑制されるという見方でもって説明し,開催より小さい
ハリ麻酔の刺激が大脳皮質に興啓点をうみ出し,刺激の寄掛こつれ,皮質の興
奮点の周囲に抑制がうまれる。そして抑制された脳の皮質がさらに興奮するに
は,それまでより更に大きな刺激を必要としている。いいかえると開催が高ま
ったわけである。このような説明がやはり比較的原理的なものであり,刺激の
畳という概念を用いれば†、り麻酔の鎮痛の原理についてもっと深くつっこんだ
研究が行えるものと我々は考えている。(註2)
痛みと鎮痛という矛盾は,体表においては手術の創傷の刺激と†、り麻酔によ
る刺激との斗争である。この三鷹塀の刺激はともに生体に生物電気を生じて,
神経を通って脳に伝えられ脳細胞において手術による創傷の誘発電位とハリ麻酔による誘発電位.との斗争を形成するのである。このような現象はすでに動
物実験によって実証されている。しかし,生物電気がどのように相互に作用し
ているかは,まだあまりはっきりしていない。(註3) 我々に・よれば次の三つの情況がありうると考える。第一・は,“強弱関係〝である。生物電気の大きい方が生物電気の小さい方を
抑制もしくは干渉する。ハリの刺激は脳細胞の組戯に変化を生じさせ,電位孝をうみ出す。脳細胞が変化を生じて,電位.差を形成しておれば,手術による創
傷の刺激はもっと大きな刺激の量を必要とすることになり,開催は高くなるの
である。(註4)第二は,“先に入った刺激が主となる〝ということである。ハリ麻酔はあら
貫首〓只貢 6 3 3 ウリ 7 7 7 7 9 9 9 9 1 1 1 1 7 7 7 7 戯遊戯旗 紅紅紅紅 ヽ﹀∵ ヽ︼′ ヽ−′ ︶ 1 2 ウ︶ 4 註註註註 ′.\ ′し ′\ ′l\小 林 立 52 かじめハリを打って誘導しておくことがどうしても必要である。そうしてか ら,はじめて痛みを鎮めて手術ができるのである。このことは.生物電気の相互 作用は,強い方が弱い方に勝るという関係があるだけでなく,先に釆ている方 が後から釆た方を排斥するという特徴のあることを説明している。脳細胞がも しもあらかじめハリ麻酔の刺激を感受しておれば,後から到着した手術による 創傷の刺激がもっと大きぐても脳細胞はもはや感受しないのである。こ.れもハ リ麻酔がどうして創傷の大きな刺激に打ち勝つことができるかを説明できるの である。(註1) 第三に,“優勢を占位する〝 ということである。ハリ麻酔による誘発電位と 手術に.よる創傷の誘発電位の争奪と,痛覚に関係する脳細胞の多少とは,やは り鎮痛効果に盾按影響している。ハリ麻癖の誘導時間の作用は,“先に入った 方が主となる〝 ということと,痛覚に関連のある脳細胞をより多く占領するこ とに.ある。 ハリ麻酔には首た鎮痛不全という情況があることから見て,生物電気が“強 い方が弱い方に勝ち〝,“先に.入った方が主となり〝,そして“優勢を占位す る〝 ということが,同時に作用するのであろうと我々は考える。(註2) 八 経絡説と神経生理学 ハリ麻酔は中国医学の針灸学に.おける飛躍的発展である。これ故,ハリ麻酔 の原理を探求するに.はどうしても経絡説の問題に立ち入る必要がある。(註3) 経絡説は中国医学が長期にわたる医療実践の中で形成した概念であり,それ は疾病の診断と治療に対する関係にもとづいて,全身のツボを分類し組み合わ せている。それはある程度匿おいて生体の各部分の相互関係の法則を表わして おり,病理と生理の過程を説明している。(蝕4) 経絡説は.主として臨床実践の中から総括して来たものであるので,古代の歴 史的条件に制約され,解剖学的な深い研究を行えなかったが,現代の解剖学と (註1)紅旗’71い 9.73貢 (註2)紅旗’71.9.73∼74頁 (註3)紅旗’71.972頁 (註4)紅旗’71.9.72貫
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 58 組織学によっても単独で存在する経絡系というものは発見されていない。しか し経絡のツボと神経分布を対照すると,ツボの半数は神経幹の上に分布Lてお り,その他も神経幹の附近に存在している。これ故,我々は神経系でハリ麻酔 の鎮痛の原理を説明すればよりはっきりすると考えている。(註1) 人体の各部位の間(体表と体表,内臓と内臓,体表と内臓)には,ある相対 的な特殊な関係があることを,ツボの相対性と特殊性は反映している。とすれ ば人体各部位の間のこり関係はどのようにして実現されるものなのか。この問 題については二つの見方があって,中国医学の経絡説は経絡を通じて実現され ると考えるが,現代生理学はその関係は主として神経を通して実現されると考 えている。(謎2) そこで経絡と神経はどういう関係にあるのかという問題がうまれる。(註3) 我々埠ハリ麻酔の実践結果と神経支配の関係について対比し分析した。(蕗4) 例え.ばある内臓に分布している神経とある部分の体表と筋肉を支配している 神経は,同じ水準で脊髄に遜入している。そ・こでこの内臓に疾病が発生する と,これと相応した体表の部位に反映されるのである。(註5) 虫垂摘出,痛気修補など腹部手術を行う時,背部の2∼3の“命穴〝 に,ハ リを打ったり,あるいは当帰液を注射して内臓がひきつる反応を回復するのに よい効果をあげている。我々は各内臓神経の導入の水準と経絡説に.おける各臓 腑の“愈穴〝の位置を対比して,多くの“愈穴〝 とそれと同じ名称の内臓神経 の導入水準は近いことを発見した。これは,経絡説が体表と内臓の間の関係に ついて,すくなくとも一・部分は神経節段の支配の法則を反映しているのであ る。中国医学の文献において関連するものに“諸脈皆脳に通ず〝 という記載が ある。これも経絡と神経に.はかなりの部分が−・致していることを我々に示して いる。(註6) しかしながら,経絡説が概括する人体各部位の間の関係法則には我々が知っ 貫首二月首〓只首 2 5 6 6 6 6 7 6 6 6 亡U 6 9 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 7 放放旗放旗旗 虹 虹紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 ウ¢ 一4 5 6 註註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
54 小 林 立 ている神経解剖生理学の知識でもなお説明しに.くいものが少しある。例えば, 経絡説によれば足の下端の“光明〝のツポは,限病を治療するための主なツボ である。我々はこのツボを応用して眼科の麻酔手術を行う上ですばらしい効果 をあげている。結局のところ,“光明グのツボにノ、りを打つとどのように限部 に作用するのか,この二つの部位の間はどのように関連しているのか。神経解 剖と神経生理学の知識で説明するととは難しい。この他に,我々は耳針麻酔の 原理を研究する中で,耳針のツボに.も相対的な特異性があることを発見してい る。光熱を四肢の−・定の部位に刺激して痛みを引き起すと,耳介の相応した区 域に痛覚に.対して敏感な現象がすくヾ∵現われる。耳たぶのツポと人体の他の部位 にも相対的に特殊な関係があることを説明するものである。これらの関係は. 神経解剖と生J理学の知識を用いても説明することは難しい。(註1)しかし,経絡 説ならば説明でき・るのである。(註2) ハリ麻酵において我々がいつも発見することほ,ハリたよって生まれるだる い,しびれる,はれぼったい,重たいという感じは,しばしば神経幹の走向妃 沿って伝導されず,むしろ経絡の路線面こ沿って伝導されるということである。 例えば,内閲のツボにハリを打った時,針感は内閲のツボが属している経絡に 沿って上に向って腋下と胸の前に伝わるが,内閲のツボが存在する神経に循っ て下へ向って手指に伝えられることはないのである。(甚3)
何故,針感にはとのような伝導の方向があるのか。経絡説によれば,経絡に
は“溝が表裏に.通じて,気血を運行させる〝機能がある。これ故に,経絡は針 感をツポが所属している経絡に沿って,上へ向っで身体の中心や端近くまで伝 えることができるのである。(註4) 胸部の手術を行った時,初め,我々はツポの一・般的原則によって,病気に慮 っている側の上肢にツボをとった。しかし,そのようにすると手術め操作に影 響する。我々は針灸文献から“病気占ミ左にあれば,これを右に採り,病気が右 にあれば,これを左にとる〝 という文章を見い出した。そこで反対の側の上肢 頁首〓只苫 6 00 8 00 6 7 7 7 2 9 9 9 1 1 1 1 1 7 7 7 7 旗旗旗旗 紅紅紅紅 ヽノ \︼ノ ︶−−′ 1 2 3 4 註註註註 ∴l\ ′l\ ′.\ /.1\中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 55 にツポをとってハリ麻酔を行うように改めた、ところ,果して満足すべき効果を あげることができた。(註1) 何故,そのように交叉したツボの採り方が,同じ側にツポを採る場合と同じ 効果をあげるのだろうか。もし神経生理解剖学によれば,神経幹の分布には特 定の区域があり,ある神経幹を刺激すると,それが支配する部位に変化を生じ させるだけなのである。轡叢神経に麻酔薬を注射すれば,それが支配している 同じ側の上肢に麻酔を引き起せるだけで,反対側の上肢には影響しない。従っ て,神経生理学では,交叉してツポを採る問題を説明できない。(荘2) ところが経絡説によれば,ある−〟つの経絡は臓腑に循行路線を−・本もつだけ で,左右に分かれておらないが,体表と四肢を通過した時に左1右に分かれる。 例えば手太陰肺経は,“肺系に.属する〝すなわち肺部を通過しているが,肺を 通過した後,腋下に至って左右に分かれる。これ故に,肺部の手術を行う時 に,左側あるいは右側のいずれの“経に循ってツボを採ろう〝 とも刺激の作用 は,共に肺部に通じるのである。(荘草) 我々ほ.また手部の合谷のツポにハリを打った後,′上肢,領,頸?胸などの部 位の疹痛開催がいずれも高くな、つていることを観察している。以上のことから わかることほ,各経絡の問および経絡と身体各部位の間の関連は,すべて神経 系統とは異なっているということである。(註4) まさに経絡にはこういう特殊な伝導性があるので,頭と顔,躯幹部位の手術 の多くは,肢体にツボを採、?てハリ麻酔を施行できるのである。(荘5) 経絡が神経と密接な関係にあり,しかも神経生理学の知識でもって経絡説が 概括しているすべての現象を完全には説明し難いとすれば,結局のところ経絡 とは何なのか。(許6) 現在までのところ,経絡の物質的基礎が何か,まだ発見されていない○ しか し,数多くの針灸臨床経験によれば,経絡現象は客観的に存在しており,神経 貫首二月首〓只苫 9 9 9 9 8 6 7 7 7 7 7 6 9 9 9 9 9 2 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 7 旗旗旗戯旗族 紅紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3 4 5 AV 註註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
小 林 立 56 と密接な関係をもっているが,神経とは別のものであることがわかっている。 これ故に,ハリ麻酔の原理を研究する時にはやほり経絡の作用をよく考える必 要がある。(謎1) ≪内径≫の記載によれほ,経絡は人体の生命活動の気血の運行道路を維持 し,人体に栄養を供給して一正常な活動を保証し,人体の各部位を一つの統一・的 な整体に連係させ,各種の生理的磯能の平衡を調節し,外界の環境の変化に適 応させる機能をもつ。また古人は初歩的な解剖経験に.もとづいて経絡を経脈と 絡脈に分けて,経脈は筋肉の間に位置しているので“深くて見れない〝が,絡 脈ほ体琴に僚置しているので見ることができる,という。(註2) 中国医学の経絡の機能と形態に関する記載から見れば,経絡は神経,血管, 内分泌などの組織およびその2∼3の機能を包括することができる。しかし, 神経,血管などを用いても経絡説の人体各部位の間の連係法則について完全に 説明することはできない。それ故に.,我々は経絡は物質的基礎があり,神経, 血管などを内に包括しており,またこれらに限るものではないと考える。また 我々は現在なお人体内部のある連係の経路と活動法則を認識していない。しか し,経絡は一つの独自の系統でほ必ずしもない。というのは人体の各系統の梯 能はすべて極助て復雑であるから,神経系だけについて言えば,その組織なり 椀能に.ついて我々の認識には現在なお限界があり,完全なものではない。(註3) 経絡説と現代神経生理学は人体の組織,機能およびその相互関係の法則を対 象にしている。しかも実践の中で人体の客観的法則を正しく反映していること が証明されている。それ故に,経絡説と神経生理学の知識は.対立しないばかり か,異なった途で同じに帰すという可能性がある。しかし時代的制約によって 経絡説はおおまかに過ぎるところがあり,客観的実際と完全に.は符合しない点 も2∼3存在している。そして現代生理学にも形而上学的なところが若干あ る。(註4) 我々の現在の認識に.よると,ハリによる鎮痛の原理は,神経説と経絡説のい (註1)紅旗’71.978箕 (註2)紅旗’71‖ほ66∼67箕 (註3)紅旗’7112.67黄 (註4)紅旗’71.12.67貰
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 57 ずれを用いても説明できる点があるし,また説明しきれない点もある。従っ て,神経系と経絡系は,ハリ麻酔の原理を構成する二つの要素であり,両者は 代替させることはできないし,安易に−・方を肯定し,他方を否定することもで きない。もちろん我々ほ両名の作用は決して同じではなく,神経系が主導的作 用を果すと考えている。(註1) 古人は臨床経験とおおまかな解剖から,“経絡〝 という概念と“経に循って ツボをとる〝 という治療の原則を打ち建てたのだが,歴史的条件の制約によ り,主観的憶測が混ざることは避けられなか、つた。我々は今日はるかにすばら しい条件に意まれており,人体の組織と枚能に.ついて,より深い科学的研究を 進めて,古人よりもっと深い認識を得ることが可能である。(姓2) 我々は.現代科学の知識と技術方法を用いて,経絡説における精華を整理し発 掘して,針灸治療とハリ麻酔の豊かな臨床経験から,経絡の本質を研究し,現 代生理学の発展を推し進めねばならない。(鉦$) 九 ハリのもつ鍋節作用 外科手術の際,皮膚と筋肉を切り開いて病気に患っている内臓組織を切除し た後,今度はそれを縫い合わせると切口の長さは数十センチに達することがあ り,時間も数時間から十数時間の長さに達することがある。これは身体にとっ ては一つの巨大な創傷であり,刺激の強さもたいへん大きい。(註4) ハリ麻酔によって手術できるのは,単にハリが鎮痛できるからだけなのだろ うか。(註5) 我々は症例を分析した時,ハリ麻酔の二つの症例から極めて重要な現象を発 見した。−・つは,76才の老人が急性化膿性胆管炎になり,ひどい中毒性のショ ックを引き起して,血圧は測定できないほど低くなった。これまでは薬物麻酔 により,このような患老の手術を行ったが,患者の心臓が突然停止して,生命 官∵員首只管八百 9 5 ︼7 7 5 7 6 6 6 6 9 9 2 2 9 1 1 1 1 1 1 1 7 7 7 7 7 旗旗凝旗旗 紅紅紅紅紅 ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3 4 5 註註註註註 ︵ ︵ ︵ ︵ ︵
小 林 立 58 の危険を引き起すことがしばしばあった。今回,我々はハリ麻酔を用いたが, ハリを打ってはどなく患者の血圧が上昇して,手術の間もずっと正常な水準を 維持していたので,比較的順調に手術を完了することができた。もう一つの例 は,急性虫垂炎になった唇者であるが,長期にわたって∵高血圧を思い,手術室 に、入った時,血圧が高かった。我々が患者にハリを打ったところ,血圧が降っ て手術の間も正常な水準を維持していた。手術がすんで以後は,患者はもとも と高血圧のた捌こ目まいや頭痛などの症状があったのだが,それもよくなっ た。(証1) ニ人の患者のうち,一人は血圧が降ってショック状態にまでなったが,ハリ 麻酔の時に.は血圧も上って来た。他の一・人は血圧が高ぐて頭痛や目まいを引き 起したが,ハリ麻酔の時には血圧が降った。これはどうしてか。(荘2) このため我々はもう一・度,中国医学の理論を研究した。(註3) ≪内経≫には“その経脈を通して気血を調す〝 とか“虚実を調す〝 などの記 載がある。(註4)中国医学では,ハリは身体の機能を調節すること,いいかえる と“気を調す〝作用を通じて,全身の“営衝〝 を動員して,身体の病気に抵抗 する能力を強めるので,手術の創傷による人体の各種の器管や組織の機能の乱 れを最少限に抑えることができるのである。(証5) 事実,調整作用はハリ治療における最も主要な作舟である。それは人体の機 能を不正常なものから正常なものにすることができる。臨床的にいって経験し ていることだが,同じ一つのツボにノ、りを打ってニ,下痢を止めることも,便通 をよくすることもできる。心臓の動きが速い場合,それをゆっくりさせること ができるし、心臓の動きが遅い場合は,それをもとの水準に回復させることか できる。ハリを打つと,高血圧を治療できるし,また低血圧を治療することも できる。また,ツポにハリを打つと,ある炎症の治療に対しても良好な作用が ある。実験が証明しているように.,正常な人と動物のあるツボにハリを打った 後,白血球の数が増えて細菌を食う作用が強まる。我々の考えでは,ハリの防 (註1)紅旗’71。965∼66貴 (註2)紅旗’71。9,66頁 (註3)紅旗’71.966頁 (註4)紅旗’711268貫 (註5)紅旗’719,66貫
中国のハリ麻酔(翻訳・紹介) 59 痛作用と調節作用は相互に.関連している。この作用の‘■下に,患者の身体の生理 機能は新しい水準に到達できるのであり,手術の操作に対す卑抵抗力は増加 し,痛覚の敏感さが低下するのである。(証1) ハリをツポに打つと,“気を調する〝作用を通して,全身の“営衛〝 をどの ように動員するかを明らかにするため,我々は各種の方法を用いてハリ麻酔に よる手術の際の患者の大脳,心臓,肺臓,血管,筋肉,皮膚などの各種器管, 組織の生理機能を測定した。そして薬物麻酔による手術の患者と比醗して,詳 しくこの二種額の患者の手術における健康の回復情況に.ついて観察した。これ らの科学的な実験の結果,いわゆる“気を調する〝作用というのは,実際は脳 髄の神経を通じて,各内臓器官,組織を包含した人体各部への調節作用のこと を指していることが分かった。脳髄は人体における“指令部〝 にたとえられ る。それは人体各部に対して調節作用をもち,しかも旺盛にする機能を保持さ せる。ところが薬物麻酔ほ脳髄および他の神経の正常な機能を抑制して,この “指令部〝 を一h時的に麻痺状態にするので,身体の各器官の活動をよく指揮で きなくなる。しかし,ハリ麻酔は逆にハリの作用によ、つて脳髄というこの“指 令部〝 を積極的な活動状態において,随時,身体内部の各種器官の活動を調整 し,手術の創傷濫よる人体各種の枚能に.対する乱れを克服して,手術をより安 全に順調に進めるよう援けることができるのである。(註2) ハリ麻酔によって手術がやれるのは,単にハリによって鋲痛できるというだ けでなく,他の多くの要田,その中の重要な要因が,すなわちハリが体内の各 器官の機能の活動を調整し,身体の病気への抵抗力を動員できることによって 決定されているのである。これ故に,薬物麻酔に適しない患者でも,ハリ麻酔 で手術し治療できるのである。上海市で行われた5万例に近いハリ麻酔の手術 からみると,麻酔にぅよる事故は−・例も起っていない。この事実は,ハリ麻酔の 安全性という顕著な特徴をはっきり示している。このことも何故にハリ麻酔で 手術できるのかに対する重要な要田となってこいるのである。(註3) (註1)紅旗’7112,68頁 (註2)紅旗’71.9,66貢 (註3)紅旗’719.66黄
小 林 立 60 十 医師と患者の協力 ハリ麻酔の実践において,いつも次のような情況が見られる。同じようにハ リ麻酔を行うのだが,ある同志は上手で患者も満足するが,ある同志はいつも うまくやれず患者も不満に思う。これほ何故か。ツボの選び方がよくないの