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インターネットと英語の未来についての一考察 : クリスタル『地球語としての英語』とグラッドル『英語の未来』を中心に

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(1)

イ ン ター ネ ッ トと英 語 の

一 クリスタル『地球語としての英語』と

未 来 につ い ての一考 察

グラッドル『英語の未来』を中心に一

成 津 筏

Intemet and lts lmpact on the Future of English

Witt Special Reference to Crystal'sf麗

=′ サぎ力α∫,Gチοbα′Lαη =冴 αgι and Graddol's T79ι F"チ

げβ

ttgJ'∫

カー

Se chi IKADATSU 序 21世紀 を目前に控え,世 界はますます「ボーダーレス化」,「グローバル化」の傾向を強めている。 それに伴 って

,英

語によるコミュニケーションも拡大の一途を辿っている。今や英語は国際語(1)と しての地位 を不動のものにしたといってよい。かつてロバー ト・マクラム

(Robtt McCmm)ら

が, 自国語である英語の未曾有の繁栄ぶ りについて, 統計はどうあれ

,20世

紀末の今 日

,英

語は他のいかなる言語にもその比をみないほど広範囲に広 が り

,話

されかつ書かれている。英語は地球を代表する言語

,は

じめて真の意味での世界語にな りお うせたのである。(『英語物語』,p.21)鬱) と

,い

ささかの自負の念 を持 って述べ た事が今や現実の もの となっている。。

)加

えて

,近

年の 「インターネットJ(hterllet)の 急速な発展 に伴 って英語 にたいする需要は以前 にも増 して高 まっ ている。こうした時代背景にあって

,英

語を第一言語 としない国々

,あ

るいは発展途上の国々にお いては

,人

々の英語学習熱は極めて高 く,「英語

Jと

「コンピュータ」の習得 こそが国の発展

,あ

るいは個人の社会的成功の必須条件であると賑々しく喧伝 されている。たとえば

,中

国の大学生の 間に1ま「学好英語

,計

算機

,迎

接21世紀」(英語 とコンピュータをマスター して21世紀 を迎えよう) というスローガンがあるという。 “

)皮

肉にも

,経

済大国

,科

学技術先進国の我が国において も事 情はさして変わらない

c近

,多

くの大学において

,専

攻分野の如何 にかかわらず「英語」 と「コ ンピュータ」が必修科 目として義務づけられているのは

,こ

うした時代的要求を反映 したものであ ろう。 ひるがえって,「世界語 としての英語」の発展は

,デ

イヴイッド・クリスタル (David CりStЛ

)も

指摘するように

,わ

れわれの予測 をはるかに越える速 さで起こった。

(2)

筏津成一:イ ンターネットと英語の未来についての一考察 すべてはほんの短い間におきた。1950年においては

,英

語が真の世界語などという見方は

,何

と も不確かな

,い

かがわしい

,単

に理屈の上での可能性 にす ぎず

,冷

戦による政治的な不安定にと りこまれた

,定

義 も曖味なら方向も定かでない しろもの

,で

しかなかった。(『地球語 としての英 語』

,p.1)③

たしかに

,過

去10数年における英語 を取 り巻 く環境の変化には急激なものがあった。その最大の原 因は

,21世

紀におけるコミュニケーション革命の主役 ともなるべ きインターネットの登場である。 ちなみに『英語物語』には,「世界のコンピュータに収められている情報の

8割

は英語 を媒体 とし ている」(P.21)と いう記述はあるが

,イ

ンターネッ トとい う言葉はまだ登場 していない。 また, 1988年出 版 の ク リス タ ル の 『 英 語 』(T7Jι Z/T=力∫力Lαη ="鋸?:PeIIguin Books)に お い て も

,ま

だ イ ン ターネ ッ トヘの言及はみ られない。 この ことは

,イ

ンターネ ッ トが90年代 に入 って爆発的に広 まっ た新 しい現象であることを象徴 的に物語 る ものである。 こうした中

,1997年 ,80年

代末か ら90年代 にかけて起 こった英語 を取 り巻 く環境 の変化 に後押 し されるかたちで英語の未来 をテーマに した

2冊

の書物がオロ次いで刊行 された。前述のクリス タルの 『地球語 としての英語』 と デイヴイッ ド・グラッ ドル (David Gl・錮dol)の 『英語 の未来』(T/Tθ ′′― r′′ιげどηダ '∫

力:The Bttish Council)が それである。

6)両

書 は

,豊

富 な統計的データや最新の未来予 測理論 などを援用 しなが ら

,近

年の社会環境の変化 と科学技術 の発展が英語 に与 えた影響 と21世紀 における英語の行方について論 じた ものである。両書の「序章」が

,そ

れぞれ, 本書で問題 に したいのは,(1)世界言語たるための条件 とは,(2)英語 はなぜその主 たる候補者 にな りうるのか,(3)英語 ははた してその立場 を保 ち残 しつづけるのか

,の

三点に限 られる。(『地球語 としての英語』,p.6) 英語 は広 く世界 に通用する言語 とみなされているが

,21世

紀 に入 って もその抜 きんでた地位 を保 持 しているのだろうか。今英語が使 われているこの世界 は

,社

,経

,人

口統計の面で

,大

き な過渡期の初期段階にある。英語が今後世界の最重要言語 としての地位 を外 される可能性 は考 え に くいが

,そ

の未来は

,一

部の人が考 えるよ りも

,複

雑 で不確定 なものである。(『英語の未来』, p.8) と述べているように,そ の最大の関心は「21世紀においても央語が現在の地位 を保持で きるか否か」 という点にある。クリスタルは英語の歴史的・文化的コンテクス トの分析 を中心に据え

,他

,グ

ラッドルは科学技術

,世

界経済

,人

口統計の動向が英語の未来に与える影響の分析に重点を置いて いる。 しか し,「英語 を取 り巻 く環境は複雑であ り

,そ

の未来は

,条

件次第で行方が大 きく左右 さ れる極めて不安定なものである

Jと

いう認識において両書は一致 している。さらに

,い

み じくもグ ラッ ドルが「イ ンターネ ッ トは国際語 としての英語 に とつて

,コ

ンピュー タ分野の「旗艦J (ユagShip)と称すべ きものだろうか

J(p.13)と

問いかけているように

,両

者 ともインターネ ット・ コミュニケーションを次世紀における英語のあ り方を左右する重要なファクターの一つ と位置づけ ている。以下

,本

稿では

,両

書における論考およびインターネットからダウンロー ドした最新デー タを踏まえなが ら

,今

後のインターネットの発展 と英語の未来との関係 について考察 してみたい。

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

1巻

1号

(1999)

世界 にお ける英語使用 人 口の実態 と今後 の予測

最初 に

,現

在の世界 における英語使用人口について概観 してみる。アメリカの言語学者ブラジ・

カチュルーは図 1の ような

3つ

の同心円

,す

なわち,「中心円」(he inncr circlc),「外円」(hc ou樹

ciJ・cle),「拡大円」(he expanding circlc)を 用いて英語使用人国のタイプと推定数を表 している。「中

心円」国 とは

,イ

ギ リス

,ア

メ リカ合衆国等のように英語 を主要言語 として用いる国々を指 し, 「外円」国とは多言語環境にあって英語が「第二言語」 として重要な役割を果たしている

,シ

ンガ ポールやイン ドなどの国々を指す。さらに,「拡大円」国は中国

,

日本のような英語 に対 して国際 語 としての重要性 を認めつつ も公的な立場 を与えていない国々を指す。 図

1

英語 の3つの円

(ク

リス タルの引用 によるlp.76) また

,イ

ンターネット上の「ENGLISH 2000J 9)の サイ トは世界の英語使用人口について次のよう な推定値 をあげている。

(1)英

語 は少 な くとも世界75カ国 (総人口は20億人以上

)に

おいて公的あるいは

,特

別 な地位 を 占めている。

(2)英

語 を第一言語 とする人口は

3億

2,000万人か ら

3億

7,200万人

,第

二言語 とする人口は

2億

3,500万人か ら

3億

7,000万人である。 (3)世 界の総人口の

4人

1人

,す

なわち12億か ら15億の人々が

,何

らかの レベルの英語能力 を 有 している。 さらに残 りの

4分

の3の人々 も英語 を学 びたい とい う希望 を持 っている。 拡 大 円 中国、 ロ シア等 外 円 イン ド、シンガポール等

(4)

筏津成一:イ ンターネ ッ トと英語の未来 についての一考察 これ らの推定値 か ら判断する限 り

,英

語の未来 は一見安泰 に見 える。 しか し

,現

在世界で起 こ りつ つある様々な変化 を考慮すれば

,グ

ラッ ドルが, 英語の世界 的人気が今す ぐ危機 に陥る恐れはない。ただ し

,英

語が使 われる世界の どの地域であ れ

,あ

るいは英語 を用いるどの分野であれ

,英

語が国際語 として保持 している現在の優位 な立場 が

,他

の言語 によって脅か されるはずがない とす るのは

,世

界の経済 。人口統計・政治の形態が 変化する点 を考 え合 わせ ると

,愚

かな発想で しかない (p.10)。 と指摘 しているように

,未

来 における英語の地位 は必ず しも楽観視することはで きない。描 きうる シナリオとしては

, 1)今

以上 に英語の独 占状態が進行す る

, 2)中

国語

,ア

ラビア語 といつた他 の有力言語が英語の立場 に取 って代 わる

, 3)英

語が多様化 して

,か

ってラテン語が フランス語, スペイ ン語

,ラ

テ ン語お よび他 の ロマ ンス語 に分流 した ように数種類 の言語 に分かれる,ω

)4)

英語 と他の複数有力言語の併存競合状態 になる

,な

どがあるが

,こ

れ らはいずれ もラデイカルなシ ナ リオであ り

,実

際 にはこれ らの変化が複雑 に入 り交 じった多元的な状況が出現す ると考 えるのが 現実的である。例 えば

,グ

ラッ ドルは今後

,英

語 は次の

3つ

の変化 を経験するであろうと予測 して ヤヽる(pp.45-6)。 (1)英 語それ 自体 に変化がお こ り

,発

音 ・語彙 ・文法が変化す る。同時 に

,文

章の種類やジ ャン ル も変化 を被 る。 (2)英 語の「地位」が変化 し

,英

語 を母語 としない人々の間で

,こ

れ まで とは異なった言葉 の意 味 ・形態 を獲得 し

,よ

り広い社会的な機能のために使 われることになる。 (3)英 語が「量 的な

J変

化 を経験 し

,英

語人口の変化

,英

文科学雑誌や コンピュータ通信 におけ る英語使用 の割合 に変化が生 じる。O) 今

,わ

れわれが問題 としている英語人口については(3)において言及 されているが

,こ

れは二つの要 素

,す

なわち

,英

語の第一言語使用者 と第二言語 ・外 国語使用者 に分 けて検討する必要がある。第 一言語 としての英語使用者数 は,「イ ング リッシュ・カ ンパ ニー社J(The βに′ 's力 じο陥ヮα/2y Ltd,, httwttww,cnglish.co.uk)が 世界 の言語状況 に射す る都市化 と経済発展の港在的影響力 を調査す るた めに開発 した「イングコ・モデル」(The engCO modcl)を参照することがで きる(グラッ ドル,p.72)。 これによると

,英

語の第一言語使用者 は2030年頃までは緩やかに増加 してい くが

,そ

こか ら横 ばい 状態 に入 り

,2050年

の時点では約

5億

800万人 に達す る と推定 されている。 この ように

,第

一言語 使用者 の推定 は比較的容易であるが

,英

語使用者 の トータル人口を決定す るのは

,む

しろ第二言語 使用者お よび外 国語使用者の動向である。 しか し

,こ

れ らは政治形態の変化

,景

気変動

,技

術革新 などに影響 される部分が多 く

,そ

の推定作業 は必ず しも容易ではない。同様 に

,特

定の使用領域 に おける英語の占有率 も

,政

治 ・経済 ・科学技術 などの不確定要素 によって大 きく左右 される可能性 がある。そ うした不確定要素の中で,イ ンターネ ッ トは最 も影響力の強い ものの一つであ り

,英

語 人口の予測 においては

,特

にその普及率 に注 目す る必要がある。

(5)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ・人文科学 第

1巻

1号

(1999) l 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 中国語 ヒンディー語

/

ウル ドゥー語 英語 スペ イン語 アラビア語 ポル トガル語 ベ ンガル語 ロシア語 日本語 ドイツ言吾 マ レー語 フランス語 13.84 5,56 5 08 4 86 4 82 2 48 2.29 1.32 1 08 0 91 0 80 0 76 (億人) 10

鶏イ

イ ング コ 。モデル が予測 す る12050 年 にお ける世界の主要言語 を母語 と する人口 (単位 :億 人) 1970年 1990r4 20104F 2030年 2050年 図・表

2イ

ングコ 。モデルに基づ く主要言語における第一言語使用者の人口推定値

2イ

ン タ ー ネ ッ トの 媒 体 言 語 と して の 英 語 最初 に

,世

界のインターネ ッ ト利用者人口について概観 してみる。 グラッ ドルによれば

,1997年

の初め には

,世

界のイ ンターネ ッ トの利用者 は約5,000万人

,そ

の うち約

2割

が ヨーロッパ在住で あった (p.138)。 ところが

,イ

ンターネ ッ ト上の「ヌア・インターネ ッ ト・サーベイズ」(NUA h―

temet SuⅣeys,httpηh〃wWinua.ic/survcys/illdex.cgi)の 最新データでみる と

,1999年

の 4月 段階での利

用者数は1億6,300万人余 りで

,わ

ずか

2年

間で約

3倍

へ と急増 している。次 に

,英

語がイ ンター ネ ッ トの媒体言語 として採用 された歴史的経緯

,お

よびその優位性 についてみ ると,(1の クリス タ ルは英語がインターネ ッ ト上で優位 に立 った主な理 由 として

,次

2点

を挙 げている (『地球語 と しての英語』,pp.1457)。

1)元

来,イ ンターネッ トは1960年代末にアメリカ国防省によって開発 された全米規模のコンピュー タ・ネ ッ トワーク「ARPAllET」 をベース として作 られ

,そ

の中継点の半数以上が アメ リカ にあるためにその使用言語 は英語 となった。

2)技

術上の理由 として

,ネ

ッ トにデー タを乗せ るために最初 に考案 されたプロ トコル(通信規 約

)は ,英

語のアルファベ ッ ト向けに開発 された ものであった。 他方

,グ

ラッ ドル も次の

2点

を挙 げて

,イ

ンターネ ッ トにおける英語の優位性 はその発達史か らみ て必然的結果であると述べ ている (pp.137-8)。

1)イ

ンターネ ッ トに関わ りが一番深いのは科学界であ り

,そ

の リンガ・フランカである英語が インターネ ッ トの初期段階か ら使用 されていた。

(6)

筏津成一:インターネットと英語の未来についての一考察

2)現

,ウ

ェブ・サイ トの

9割

は英語使用 国を拠点 としてお り

,そ

の通信や ウェブ・サイ トの 大多数は英語 によるものである。

こうした英語の優位性について

,「ENGLISH 2000J Iま

「推定約

4,000万

人の世界のインターネット

利用者のうち

,約 80%が

英語でコミュニケーションをしている」と報告 している。。。 この英語の

使用率

80%と

いう数値に関して

,

クリスタルは次のようにコメントする。

この ような調子で英語 と非英語の各語のキーワーズについて

,思

いつ くままに探索 を続 けてい く と

,ほ

80%と

いう数字が きまって顔 を出す。だが この

80%と

い うのは1996年に当てはまる数字 で

,将

来は下降 してい くことになる。 ラインに乗 る個人の国の数が増 え

,イ

ンターネ ッ トの利用 もす さまじく増大 してい くことを思 えば

,こ

の比率の変化 もす こぶる急激であろ うと想像 される (p.151)。 (1か インターネッ トにおける

,現

在のこのような英語の寡占状態について

,マ

イケル・スペクターは 「ワール ド・ワイ ド・ウェブの三つの英単語J(『ニューヨーク・タイムズ (1996年4月)』 掲載論 文

)の

中で,「英語力

Jが

ネット有識者 とそうでない人々の二つに峻別する可能性 を示唆 している。 これこそは知的帝国主義の究極の形である。この商品はアメリカ渡来なので

,わ

れわれとしては 英語に適応 してい くか

,使

うのを止めるかの何れで しかない。それは個々の企業体の権利である。 だが

,世

界 を何億 という人々に開 くための技術 などといおうものなら

,そ

れは悪い冗談にす ぎな い。この技術は世界を新 しい活動の「持てるもの」 と「持たざるもの」の二つに分けるだけのこ とだ (ク リスタルの引用から,pp.1489)。 これについてクリスタルは,「持たざるもの」

,す

なわち

,イ

ンターネッ トの提供する知的パワーを 享受で きない知的択立集団「知的ゲ ットー 」が現実に生 まれる可能性があるとするならば

,そ

れ は英語力 というよりも

,む

しろ経済的

,教

育的要因によるところが大 きい との見解 を示 している。 ただ知的ゲットーが国際 レベルで出現する危険性を減 らすことはできる。いずれにせよ

,こ

の危 険は経済学や教育にかかわる点の方が多い。すなわち

,人

々は果たしてコンピュータを手に入れ ることが経済的に可能だろうか

,人

々は果たしてそれを使いこなせるだろうか

,国

には必要な下 部構造が備えられているのだろう

,デ

ータベースの整備充実のための金繰 りは入手可能だろうか, 等々がこれである (p.149)。 他方

,外

国語 としての英語力の恩恵にあずかっている人々 (すなわち

,英

語 をマスター した外国人 達)は,IFAして, リンガ・フランカとしての英語の拡大に肯定的であ り

,イ

ンターネットによって, さらに多 くの人々が英語学習意欲 をそそられ

,結

果 として

,英

語使用人口は今後 よリー層増 えるで あろうと予測するむきもある。(1の このように

,イ

ンターネットの普及によって媒体言語 としての 英語の地位が今後 どのように変化 してい くか

,

という点に関 しての意見は一様ではない。ただ

,少

数言語にとって有利な展望 も開けている。

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ・人文科学 第

1巻

1号

(1999) ウェブの利用者 は90カ国近 くに上 り,Eメ イル用 の器材 はあ と70カ国にも拡がっている。インター ネ ッ ト上の非英語話者 の利用者 はか くして絶 えず増 え続 けてい る。(中略

)こ

れは言語 の消失 を 憂 えている向 きにとつて よき訪れであるばか りか

,地

球 レベルでの相互理解の可能性が

,地

域の アイデ ンテイテ イの主張 に降参すべ きではない としている向 きに とつて もよき訪れである (『地 球語 としての英語』,p.152)。 そ して

,イ

ンターネ ッ ト上 においてすべての言語が平等 な立場 を主張するようになれば

,英

語 は現 在の圧倒的 に優位 な立場 を譲 って選択肢の一つになる可能性 も出て くる。 英語以外 の言語 によるインターネ ッ トの素材が

,今

後10年間に劇 的に増 えることは間違いない。 英語 は当面その卓越 した地位 を保 ち続 けるが

,結

局 は数多 くの言語の中の一つ となるであろ う。 したが って

,イ

ンターネ ッ トにとっての母 なる言語 は ともか くも英語であるとの考 えは誤解 を招 きかねない (グラッ ドル,p.165)。 英語圏 を除いて

,今

後イ ンターネッ トの急速 な普及が見込 まれるのは

,中

国を中心 とするアジア地 域である。 これについて

,経

済発展 との関わ りで考 えてみたい。次の図は

,1990年

と2050年 におけ る世界 の富の分布状況である。 これによれば

,今

後半世紀の間に世界各国・地域間の経済関係 は劇 的に変化す ると予想 されている。具体的には

,現

,世

界 の富の

55%は

ビッグ・ス リー諸 国 (アメ リカ

,EU,日

)に

よって占め られている。 ところが

,21世

紀半ばまでには

,ア

ジアの新興諸国 がその

60%を

占めるまでに経済成長 して

,現

在 と立場が逆転する と予想 されている。 他の地域28% ビッグ・ス リー12% ビツグ・ス リー ア ジア21% 他の地域 24% 1990年における世界の富の 分布状況(合計25兆 ドル)。 図

31990年

および2050年における世界の富の分布状況 (グラッドルlp.77) グラッ ドルは

,こ

の21世紀 におけるアジア諸国の急速 な経済成長 を根拠 として

,ア

ジアにおいて インターネ ッ トが驚異的に普及すると予測す る。 アジアで使 われるホス ト・コンピュータの数は

,い

つかはビッグ・ス リー諸国のそれを追い越す であろう。 さらに

,当

初は研究職 という世界的なエ リー ト同士が国際コミュニケーションの道具 として使い始めたインターネットは

,将

来は局所的,文化的,商業的な目的で使われることが多 2050年における世界の富の分布予測(合計250兆 ド ル、世界の平均成長率4%) 55%(アメリカ、 EU、

遊章認

アジア60%

(8)

212 筏津成一:イ ンターネ ッ トと英語 の未来 についての一考察

同時に,イ ンターネットがさらに広 く利用されるようになるにつれて

,当

然これ

ざまな言語が使われることになろう

(p.138)。 た しかに

,北

京語 をは じめ として他種類 の言語 によって運営 されるネ ッ トの数は

,今

後 さらに増 大 してい くのは必至である。 しか し

,複

数の言語の相互互換が可能 なウェブ・サイ トの開発 はまだ 緒 に着 いたばか りである。 クリス タル も,「現状では真 に複数言語 による ― の完成 はまだ まだ 遠い先の話である。つ ま り

,エ

ン ドユーザーが 自分で選ぶ言語で普通 にデータを入力 し

,

どんな相 手先 も何の問題 もな しにデータを受け取 リデ イスプ レーで きるようなウェブは

,ま

だ長期 の 目標 に 留 まってい る」(p.147)と 述べて

,当

分の間タイ ンターネ ッ トにおける英語の地位が揺 らぐこ とは ない と考えている。ただ

,イ

ンターネ ッ トの国際化 を促進する一要素 として考 えられている自動翻 訳 システムの開発が これまで以上 に急速 に進展すれば

,そ

の時期 も当然早 まって くることになる。 このウェブ・ トランス レーシ ョンの可能性 についてインターネ ット上のイングリッシュ・カンパニー 社 の「グローバル・イングリッシュ・ニューズ レターJ(G′οうα′β乃8′,∫力FVt147d′θttι

r,以

GENと

略 記)の第

2号

には次の ような レポー トが掲載 されている。 そういった未来はすでに始 まっている。最 も有力なインターネ ットのサーチ・エンジンである 「アルタ 。ビスタ」(Alta Vista)は 現在

,利

用者 に翻訳でサイ トを見るサービスを提供 している。 目下のところ翻訳は英語 と他の 5つ のヨーロッパ言語

,す

なわち

,フ

ランス語

,

ドイツ語タイタ リア語

,ポ

ル トガル語

,そ

してスペ イ ン語 の間で利用可能であ る。翻訳 は「シス トラ ン」 (SySrala)に よつて行われている。このシス トランの機械翻訳装置は欧州連合 (EU)に おいて内部 資料翻訳のために使用 されている。(中略

)こ

のシス トランは中国語 。ロシア語 と英語の翻訳用, および日本語 との双方向翻訳用 もあるが

,こ

れらの言語はまだ

,無

料のアルタ・ビスタ・ウェブ の翻訳サービスでは利用で きない。(1つ このように科学技術の急速な進歩には目を見張るものがあ り

,ウ

ェブ・サイ トにおいて英語を「 リ レー言語」 とした複数言語間の自動翻訳が利用可能になる日もそう遠 くはないであろう。そうなれ ば

,結

果的にインターネットにおける英語の相対的地位は低下せ ざるを得ない。ここでは

,そ

うし た傾向を加速 させている要素の一つとして,「インターネット上でのあらゆる言語によるコミュニ

ケーションに向けてJぐ Towards communicalillg on hc htemet in alay languagc。中‖)というスローガン のもとにインターネットの国際化を目指したアリス・テクノロジーとインターネット・ソサイエテイー の共同プロジェク ト「バベル・サイ ト」(htp://babcl,alis.com:8080)があることを指摘 してお きたい。

3中

国 の 動 向 とイ ン タ ー ネ ッ トに お よ ば す 影 響

世界最大の人口を誇る中国の動向は

,21世

紀における世界の政治・経済・文化など

,あ

らゆる分

野に大 きな影響 をおよばす可能性をもっている。英語の未来についてもまた然 りである。たとえば,

α却 第

2号

には「6。 中国一次代 を担 う一大言語勢力か」(6 HChina?Tlle Next Linguistic Power?山 )

という中国に関するレポー トが掲載されている。少 し長 くなるが要点を引用 してみる。 仮に

,合

衆国が20世紀における英語拡大の最大の牽引車であったとするならば

,21世

紀 における O 。 キ い ゝ つ と ご ろ 。 に だ 。 上 る 。 以 な 。 で く ・

(9)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ・人文科学 第

1巻

1号

(1999) 超大 国(supclpowcr)で ある中国は

,世

界規模 での言語配置 とコミュニケーシ ヨンに対 して同様の インパ ク トを与 えることがで きるであろうか。(中略) 英語 は現在 アセアン諸 国

(ASEAN)に

おいて使用 されている言語である。そ して海外在留の中 国人 (華僑

)が

アセアン諸国の経済流通の大部分 を支配 しているとい う事実 にもかかわ らず

,こ

のアセアン地域 における中国の急速 な成長 に対 して周辺諸国が (警戒心 を込めて

)注

ぐ真剣 な眼 差 しは

,英

語の役割 を弱める どころか

,む

しろ

,そ

れを一層強めてい きそ うに思われる。 しか しなが ら

,中

国経済が発展 し都市が成長するにつれて

,注

目を浴 びるようになるのは中国 の こうした地域への影響力 だけではない。中国の経済活動のほ とん どは北京語 を話 さない特別経 済特 区に集中 している。 これ らの地域 における北京語

,英

,あ

るいは広東語

,呉

語 といつた地 域語の相対的地位 とその使用 は

,言

語学者お よび海外投資家 にとつて

,間

違いな く

,興

味 を引か れる問題 となろう。 この ように

,ア

ジア地域 において英語が これまでの地位 を保持 し続 けるか

,あ

るいは北京語 または 他の地域言語がそれにとって代 わるのか,とい う問題 はアジアの経済発展 と密接 に結 びついている。 同時 に

,経

済発展 とイ ンターネ ッ トの普及 も密接 な関係 にあ り

,こ

2つ

の要素の検討抜 きにはア ジアにおける英語の未来 を予測することは不可能である。 この中で

,ア

ジア諸国の経済発展 につい てはすでに上で言及 した。ここでは,中 国におけるインターネ ッ トの普及率 について考 えてみたい。 中国においても近年

,イ

ンターネ ッ トの接続は急速 に増 えているが

,グ

ラッ ドルは「中国では1996 年の利用者 は推定10万人だが

,こ

の数字 は個人力日入の増加 によ り

,さ

らに増 えているのではないだ ろうか」 (p.139)と 述べている。 これを「ヌア・インターネ ッ ト・サーベ イズ

Jの

情報 と比較 して みると

,そ

の驚異的な普及率 に驚かざるを得 ない。 コンピュータ・ェ コノ ミックス社の最近の報告 によれば

,中

国は2005年 までに

,日

本 を抜いて, アメリカに次いで世界で

2番

目のインターネ ッ ト人口を抱 えることになるとい う。これによると, 2005年までにアメリカが1億2,660万人の推定インターネ ッ ト使用人口を持 ち

,以

,中

国3,730 万人

,日

本3,470万人

,そ

して ドイツ

,カ

ナダがそれぞれ

,1,720万

,1,700万

人 と続いている。 (中略

)し

か し

,中

国がインターネッ トの潜在力 を理解す るようになる前 に

,主

要 な経済問題 を 克服 し,イ ンターネ ッ トに対す る政治姿勢 を見直す必要があろう(Feb 9,1999)。 また

,同

サイ トの続報

(Apr 7,1999)で

は,「中国では

,現

在 インターネ ッ トを利用 していない人 の

71%以

上の人が利用 したい と思 っている

Jと

の調査報告があ り

,21世

糸己のインターネ ッ ト・ビジ ネスの巨大マーケ ッ トとしての中国の動向に世界が注 目していることを示 している。下 に示 した最 新の統計

(May.13,1999)に

よると

,1998年

の中国の利用者数は150万人 に達 してお り

, 3年

前の 約15倍へ と激増 している。 また

,

日本 との比較でみると

,過

2年

間の増加率 は中国が

7倍

以上で あるのに対 して 日本 は

2倍

以下であ り

,中

国 と日本の普及率の差 は歴然 としている。そ してこの普 及率の差 は今後 さらに拡大 してい くもの と予想 される。

(10)

214

COUNTRY

Japala Japall Japall Japall Japall Japall China China China China China

DATE

Octobcr 1998 March 1998 Janutty 1998 0ctobcr 1997 Septcmbcr 1997 Septcmbcr 1997 Dcccmbcr 1998 July 1998 January 1998 August 1997 Junc 1997

llUMBER

14 1411liOn 12.l rnillion 8.84 rnll■on 10 1nttlion 8.6ィnil■on 8 rnllhon l.5■1111lon l,175,000 500,000 150,000 200,000

%TOT POP,

11.1

96

6.40 8 6.80 6.32

01

008

0004

0.001 筏津成一:インターネ ッ トと英語の未来 についての一考察

SOURCE

NIkkci Mal・ket Access SuⅣcy

Nildccibp

Acccss MCdia lnteHlation江

IDC Japan

Nikkci Market Access Dataqucst Xinhua Nc、vs Agency Nalado Times Utusala Online Rcutcrs FrostもとSullivall 中国のこうしたインターネッ ト利用者の急増 を支える原動力は

,言

うまで もな く

,そ

の巨大な人 口にある。2050年の段階における第一言語の人口推定値は

, 1位

が中国語で13億 8,400万人

,他

方, 英語は5億800万人で

,中

国語は英語の約2.75倍の母語話者 を持つと予想 されている。。の仮に

,こ

うした巨大人口を背景 として

,中

国を中心 とした世界最大のネットワークが出現 した場合

,そ

の使 用言語はどのようになるのであろうか。すでにみたように

,コ

ンピュータとそれを動かすプログラ ムは

,主

として英語を母語 とする国の発明であ り

,こ

れまでのところは

,コ

ンピュータ関連の言語 に関 しては英語の独断場であった。 しかし, 英語が今後

,ソ

フ トウェア製品とデジタル化 された知的財産を通 じて広 まり続けることは間違い ない。 しか し

,言

語が制約 される時代は過 ぎ去ったように思われる。例 えば

,主

たるアメリカ製 プログラムには中国語版が用意 されている。むろん

,OS(オ

ペ レーティング・システム

)の

「ウインドウズ

J,ワ

ープロソフ トの「マイクロソフト・ヮー ド」にも中国語版がある。(中略) かつてのコンピュータと英語の密な結びつきは途切れてきたのである (グラッドル,p.84)。 という指摘からもわかるように

,21世

紀における「中国語によるインターネット」は

,巨

大な新ア ジア経済圏を背景にして

,我

々の想像を超えた躍進ぶ りをみせるかもしれない。それに伴って

,現

,中

国人の間で異常な高まりを見せている「英語学習熱J(お)イよ

,将

来的には徐々に低下 してい くことが予想 される。そ してこの傾向は

,自

動翻訳システムの進歩 と相 まって

,中

国のみならず同 じ言語圏・経済圏を構成する他の国々へ も波及 してい くものと予想 される。(り

4イ

ン タ ー ネ ッ トの 英 語 に与 え る影 響 インターネットの発達が使用言語の多様化を促進する要因の一つとなることを

,中

国を例にみて きたが

,予

想 されるもう一つの変化は

,英

語内部における言語的変化である。すなわち

,イ

ンター ネットは

,単

に英語の使用地域・使用領域 を拡大するばか りでなく

,英

語それ自体 とテクス ト構成 法をも変容させる力 を持っているのである。

(11)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

1号

(1999) 英語の用途 もまた以前 よ りも広が りを見せている。英語 はどこにあって も

,技

術 や科学の発達, 経済学や経営の新 しい考 え方

,新

しい文学や娯楽のジャンルにおける最前線 に位置 してお り

,そ

うした状況は必然的 に

,新

たな語彙

,文

法形式

,話

法や書法 を生み出 した。新 たな分野へ の英語 の拡大 を最 もはっきりと示 しているのが

,イ

ンターネ ッ ト通信や「 ネッ ト英語」の発達である (グラッ ドル,p.10)。 た とえば

,個

人間

,あ

るいはグループ内における電子 メールの交換が活発化すると

,公

の場 におけ るイ ンフォーマルで

,土

地特有 の言葉

(vemaCub),あ

るいは内集 団的 (in_grOllp)な言葉 の使用が 促進 され

,そ

れ らの地位 は標準的な,ものへ と引 き上げ られることになる。●働 こうした英語の質的変化 を促す もう一つの要因 として

,す

でに言及 した自動翻訳 システムの開発 がある。イ ンターネ ッ トの発達によって多言語 間コミュニケーシ ョンの必要性が高 まれば

,当

然の ことなが ら

,そ

れに伴 って 自動翻訳の問題がクローズア ップされて くる。事実

,機

械翻訳 は商業的 場面ですでに実用化 されつつあ り

,今

後の技術革新 によっては もっとも飛躍が期待 される領域 で も ある。使用領域 によっては

,自

動翻訳が極めて容易 な場合 もある。た とえば

,ボ

ーイ ング社 の よう な国際的な企業では

,海

外 の技術者 にも理解 しやすい英語 をもちいて整備マニュアルを作成 してい るとい っ。 「統制 された英語」 の使用 には

,自

動翻訳 をよ り容易 にす る意 図 もある。つ ま り

,限

られた英 語形式で文章 を書 けば

,

日標 とする言語の限 られた形式 に翻訳で きるか らだ。英語 を「 リレー言 語」

,す

なわち

,あ

る言語 を別の言語 に翻訳す る場合 に英語 をその中継点 とす るケースが増 えて くれば

,新

しいかたちの言語接触が生 まれて くるだろう。その時

,言

語は少 な くて も限定 された 形式 において

,互

いに似通った もの とな り

,英

語の意味論的 ・統語論的な構造 をそなえることに なるか もしれない(グラッ ドル,p.85)。 この英語 を仲介 とした,「

A言

J⇔

「リレー言語

J(英

)⇔

B言

語」 という多言語 間 コミュニ ケーシ ョンは

,従

来 は特殊 な地域方言 とのコミュニケーシ ョンの ような非常 に限 られたケース にお いてみ られた言語接触のスタイルであった。仮 に

,こ

れが 自動翻訳機 を通 して 日常化すれば,「リ レー言語」 としての英語は

A,B両

言語から何 らかの言語的影響 を被 ることになろう。すなわち, 翻訳作業 をより効率化するために

,英

語および他の当該言語は

,語

,文

法形式等において相互に 影響 し合い

,そ

の結果

,従

来の英語にはなかった独特の「自動翻訳文体」 とでも呼ぶべ きスタイル が生 まれる可能性がある。そして

,さ

らにインターネット英語 との複合作用によって

,英

語はこれ まで持ち合わせなかった

,ま

った く新 しいタイプの表現形式を獲得するかもしれない。こうした事 態が進行すれば

,将

来的には

,ホ

ームページを様々な言語で開設する必要がなくなって くる。イン ターネットが

,あ

るいは利用者 自身のコンピュータがィンターネットと運動 した自動翻訳装置を備 えるようになるからである。そして最終的には

,世

界における英語学習の必要性を下げる結果 とな ろう。(19) 英語 自体の変化 とともに注 目すべ きもう一つの点は

,英

語話者の立場

,す

なわちネイテイヴ・ス ピーカーと第二言語話者 との相対的地位の関係である。仮に

,今

の勢いで第二言語話者が増大すれ ば

,今

後10年ほどの間にその人口はネイティヴ・スピーカーを上回ることになり

,英

語における権 威の中心が第二言語話者へ とシフ トすることになる。これによって

,母

語話者は

,現

在享受 してい

(12)

筏津成一:イ ンターネ ッ トと英語 の未来 についての一考察 る数々の特権 を失 うことになる。例 えば

,そ

の一つ に「英語教育産業」がある。●① 現在

,英

語 を 母語 とする国の英語教育市場の占有率は

,英

語 を第二言語 とする地域の英語教育提供者 の動 きが活 発 になるにつれて必然的に低下 してい くことになろう (グラッ ドル,p.163)。 こうした動 きは

,将

来的に英語 を母語 とする国の英語教育提供者が世界市場で苦戦 を強い られることを意味 し

,イ

ギ リ スの ような「英語教育産業立国」 は少 なか らぬ打撃 を被 ることになろう。 結 び 以上見てきたように

,イ

ンターネットは「地球語 としての英語」の未来に対 して

,量

的にも質的 にも

,極

めて大 きな影響 を及ぼす可能性 を秘めている。そ して

,こ

のインターネットの普及は発展 途上国の政治的安定

,経

済的発展および人口動態 と深 く関係 してお り

,英

語の未来を予測するには これらの国々についての情勢分析が必要不可欠 となる。インターネット上における英語の地位に関 していえば

,大

きな人口を抱える国々

,特

に英語 を外国語 としている国々の動向がその行方 を大 き く左右することになろう。その意味で

,21世

紀の超大国と目される中国に世界中の注 目が集 まるの も極めて当然である。ただ

,そ

うした新 しい世界情勢の中で

,仮

に「英語の地位」が低下 したとし ても

,そ

れはあ くまで も他言語 との相対的関係 においてであ り

,そ

れが世界における英語使用者の 絶対数の減少を意味するものでないことを心に銘記 してお く必要があろう。 注

(1)多

くの場合,「国際語 としての英語」(English as all htcmttiond Languagc),「 世界語 としての英語」

(Ellglish as a Wodd Latlguagc),そ して「地球語 としての英語」(English as a Global Lallguagの という3

つの表現は

,ほ

ぼ同義的にもちいられている。 しか し

,[地

球語 としての英語』の訳者である国広正 雄氏は

,最

初の表現のバリエーションである「国際英語J(Illtemttiontt English)と いう用語には狭量 な国家意識が反映されているとして

,次

のように述べている。 実はこの「国際英語」 という命名は

,い

までは小生全 く気に入ってはいない。(中略

)今

やわれわれ の最大の忠誠の対象は,この地球 というホシとそれをつつみこむいわゆる地球環境であるべ きなの に

,国

家主権を所与の前提とする「国際英語」 という造語にはためらいと悔悟を感 じる。それに反 し,本書の著者は少なくとも訳語 としては地球英語 という。国際英語にまさること数等である (「あ とがきに代えて一英語私見」,p.213)。 ただし本稿では,これら3つ の用語を同義語 とみなして特に区別せず,コ ンテクス トに応 じて適宜 も ちいるものとする。

R,McCmm et.Л,助¢肋 っ げβη8′Jシ :Penguin BOOks,1986。 以下

,本

書か らの引用 は邦訳 『英語物語』

(岩崎春雄他訳

,文

芸春秋社

,1986)に

よる。

クリスタルの「政治的な問題 について一方的に肩入れ した り

,英

語 について書 くものが不幸 にも陥 り がちな勝ち誇ったような姿勢 (`he klnd Of umphalist tone')を とることもな く

,世

界英語 についての 客観的な記述 を提示 しようと企てたのである」(『地球語 としての英語』

,p.2)と

い う言葉 は,こ うし

た論調 を念頭においてのものと思われる。

沼野治郎「中国における大学英語教育近況」(JACET中 国・四国支部 :ア ジア地区大学英語教育研究 会

,研

究報告『アジアの英語 と英語教育』),1997,p.28

(13)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

1巻

1号

(1999)

(5)Z/P=力 ∫力α∫αG′οうαr Lαη

=′

,8θ :Catnb dge Univttsity Pゃss,1997

(6)今

年初 め,両書 はそれぞれ,『地球語 としての英語』(国広正雄訳

,み

すず書房,1999),F英語 の未来』 (山岸勝栄訳

,研

究社,1999)と して翻訳 出版 された。以下

,引

用 はすべ て これ らに よる。 (7)httpサ,vww,bitcoun org/english/eng2000mm(た だ し,1999年 5月 の段 階 において このサ イ トは ア クセ ス不 能 となっている)「ENGLISH 2000」 は,ブリテ イ ッシュ・カウ ンシルによって推 進 された プロジェ ク トで

, 1)英

語 の世界 的 な使用状 況 について予測 し

,英

語 の新 しい教授法 と学習法 の開発 を手 助 け す る こと

, 2)イ

ギ リス英語 の教授用 商品 とサ ー ビス を,イ ギ リス な らびにイギ リスの協力 国双 方 の ため になる よう位置づ けることをその 目的 としている。 (8)1985年発刊 の 国際英 語雑 誌 『英 語 の今 日』σ軽′,s力 乃 ′り

)の

編 集 主幹 で あ る トム ・マ ッカ ーサ ー

σom McAltlluつ は第11号 (1987年

)に

おいて "The English LaIIguages?‖ とい う特集 を組 み

,彼

自身

, 同名 の論文 を寄稿 してい る。 その中で彼 は,ラ テ ン語 との アナ ロジーか ら英語 の将来 について論 じ, いわゆる「古典ラテン語」が現在の世界語としての英語とは異なった位置づけにあったことを論拠と して,英語の未来をラテン語の辿った運命から類推することは誤 りである,と主張 している。 (pp. 9-11)。

(9)グ

ラ ッ ドルは

,現

在 の英語 の支配 的状 況が

,複

数 の言語が よ り広 範 に混在 す る状況 に取 つて代 わ られ る こ とが予想 され る領域 として

,次

の4つを挙 げてい る(p.15)。

1)世

界 的 なオーデ ィオ ビジュアル市場

,特

に衛星 テ レビ市場。

2)イ

ンターネ ッ トお よび コンピュー タをベース に した コ ミュニケーシ ョンの領域 (言語 関連 ソ フ トと 文書処理 ソフ トを含 む)。

3)経

済 の グローバ ル化 に伴 う科学技術 の移転 とその プロセスの領域。

4)外

国語学 習 の領域

,特

,発

展 途上 国で は

,地

域 的 な貿易 の発展 に よ り

,英

語 以外 の言語 の経 済 的 重要性が高 まる可 能性 が ある

(10)イ

ンターネ ッ ト発展 の歴 史 をは じめ とす る全般 的 な情報 については,「イ ンターネ ッ ト・ ソサ イエ テ イーJ(Intemct sOciety,htp〃 、vww,isoc orgれsoの のサ イ トで見 ることがで きる。

(■)「ENGHSH 2000」 の「Ellglish Fl・cquent Asked QuCStions」 に よる。

(12)グ

ラ ッ ドル も

,将

来的 には英語 の シェアが減少 してい くこ とを次 の よ うに指摘す る。 コンピュータの使用が一般的になるにつれて,イ ンターネ ッ ト上での英語の量は情幸R全 体の4割 にまで減少すると予想 されている。(中略)1996年,「 イ ンターネ ッ ト・ソサイエテ ィー」 は

,英

語以外 の言語で書かれたサイ トの利用 を容易 にする

,ブ

ラウザー用の新 しいプロ トコルを発表 し た。将来的には

,遠

方のサイ トとの交信の際

,ブ

ラウザーが

,こ

ち ら側が どの言語 を「好みの言 語」 としているかの情報 を伝 えて くれるだろう。 こちらの希望する言語のページが用意 されてい る場合

,そ

のページは英語でなく希望 した言語で自動的に検索 されることになる(p.141)。 ポーラン ドの批評家パベル・ラ ドコフスキーは「インターネ ッ トの リンガ・フランカたる英語」 と い う一文の中で次のように述べている。 イ ンターネッ トの拡大は最大の主要言語 としての英語の立場 を強めている。(中略

)言

葉 を変 えて い うなら,ネ ッ トヮークが拡がれば拡がるほど

,英

語 を習 うように仕向けられる人々の数は増 し, それだけに英語の立場は強化 される,とい うわけである (クリスタルの引用による,p.150)。

(14)

筏津成一:イ ンターネットと英語の未来についての一考察

(15)イ

ングリシュ・カンパニー社の「イングコ・モデル」による。

(16)中

国における外国語学習に関して言えば,1960年 代はロシア語が中心であった。その後,1970年代 末から1980年代 にかけては

,西

側からの投資を奨励するために

,英

語教育に力点が置かれるように なった。この間の事情について『英語物語』は次のように述べている。 最 も人気 のあったのは

BBC制

作の Fο′′οψν

?

とい うシリーズで視聴者は5000万 人 を越 え

,出

演 者のキ ャシー・フラワーは一躍有名人 となった。キャシー・フラワーは当節の中国における英語 熱 を次の ように描いている一「店へはいると,60代のお年寄 りが二人

,前

の晩に聞いたばか りの Fο′′οψνθ のせ りふを実地に練習 しているんです」。英語熱は人々に多大な犠牲 を強いることとも なっている。月収36元 の若者が

,そ

の3分の 1を 英語の授業や辞書,カセ ッ ト

,小

説 な どにあて ているのである (p.58)。 この時か ら

,す

でに15年 以上が経過 した今 日,この傾向はさらに進行 しているもの と推測 される。 しか し

,香

港では北京官話 (標準 中国語

)を

優先す る空気が生 まれ

,英

語学習熱 にかげ りが見 えて きたとい う報告 もある (グラッ ドル,p120)。 (17) 「言語の流動 を予測するひとつの方法は

,海

外旅行 の 目的地 と出発地 を予想 し検討することである。 2010年には世界の主要地域 を飛行機で移動する人々の数 を試算すると,アジアで大 きな変化が生 ま れ,2010年までには世界の航空輸送の半数以上 をアジアが占めることになる。(中略

)こ

れ らの状況 が言語 に及ぼす影響 を予測するのは容易ではないが

,北

東 アジア と東南 アジア間の旅客機が他 の区 域 に勝 つて (この区域での移動が

,特

にビジネス活動 に関係することか ら

),地

域の共通言語 として 北京官話 (探準 中国語

)が

勢力 を伸 ばすであろう」(グラッ ドル,p.102)

(18)

『英語の未来』p.140

(19)同

書,pp■41-42

(20)そ

もそ も

,本

書『英語の未来』 もブリテイッシュ・カウンシルの委託 を受けて

,英

語教育や英語学 習の新興 にたず さわる機関が将来の方向付 けを行 う際の情報源 として書かれた ものである。最終章 においては,イ ギ リスの世界的な「ブラン ド・イメージ」促進に向けて,イギ リス人が これ まで世 界の英語教育 に果た して きた役割の再検討が行 われている。 (1999年 6月10日受理)

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