運動部活動及び学校生活場面における心理的スキルと
生徒の競技能力及び精神的回復力との関係
Relationship of Psychological Skills in Athletic Club and School Lifeto Athletic Abilities and Resilience
上 野 耕 平:Kohei UENO
鳥取大学教育センター: Education Center, Tottori University
4-101 Koyama-minami, Tottori, Tottori 680-8550
Abstract
The purpose of this study was to clarify the relationship of psychological skills in athletic club and school life to athletic abilities and resilience of high school athletic club students.
In study 1, 131 male athletic club students were asked to answer an athletic situational skills scale and a life skills scale (Ueno and Nakagomi, 1998) to evaluate their psychological skills in both their athletic club and school life. Athletic club coaches were asked to evaluate the athletic abilities of the students by using “TIPS” (technique, intelligence and insight, personality, and speed) which is the criteria of Amsterdam Football Club Ajax. From the results of study 1, the students who scored high points for interpersonal skills in school life scored higher for personality than those who scored low points for those skills. The students who scored low points for intrapersonal skills in both athletic club and school life had a tendency to score lower for technique and speed than any other students. But there was no relationship between intelligence and insight and psychological skills in both athletic club and school life.
In study 2, 110 athletic club students were asked to answer the athletic situational skills scale, the life skills scale, and an adolescent resilience scale developed by Oshio et al. (2002). The adolescent resilience scale has three subscales such as novelty seeking, emotional regulation, and positive future orientation. From the results of study 2, the students who scored high points for both interpersonal skills and intrapersonal skills in school life scored higher for all subscales than those who scored low points for those skills. On the other hand, there was little relationship between interpersonal skills in athletic club and emotional regulation, and between intrapersonal skills in athletic club and positive future orientation.
Support was found for a relationship between psychological skills in school life and athletic abilities as well as a relationship between psychological skills in athletic club and resilience. However, both relationships were only found in some of the athletic abilities and subscales of resilience.
1 .緒言 運動部活動は生徒の人間的成長を導く活動であ るとして、社会から積極的な期待を受けてきた (文部省, 1999)。勝利至上主義的な取り組み (文 部省体育局体育課, 1998) や弱者切り捨て (佐伯, 1990) などの問題が指摘されつつも、運動部活動 が学校における教育活動として続けられてきたの は、運動部活動において困難な問題を克服した経 験、仲間と助け合った経験が、学校生活や将来困 難に遭遇した際に役立つと期待されているからで ある。 体育・スポーツ心理学領域では、運動部活動場 面における行動と学校生活場面における行動との 関係について、ライフスキル (life skills) を変数 とした研究が行われてきた (島本・石井, 2010; 上 野・中込, 1998)。そこでは、スポーツ場面にお いてよく利用される目標設定やコミュニケーショ ンなどのスキルは、日常生活場面でも必要とされ るライフスキルとして般化可能な心理的スキルで あるとされている。そしてスポーツ場面における 心理的スキルをライフスキルとして般化させるこ とにより、現在の生活及び将来遭遇する困難な状 況にもうまく対処できると考えられている (Dan-ish et al., 1995)。先行研究では、運動部活動経験 を通じて目標設定スキルを獲得することにより、 運動部員の将来に対する時間的展望が肯定的に変 容することが明らかになっている (上野, 2006)。 しかし、運動部員が運動部活動や学校生活場面で 利用している心理的スキルが、将来困難に遭遇し た際に果たす役割について明らかにされていると は言い難く、更なる検討が求められている。 一方で、近年スポーツ選手や指導者の間で、ス ポーツ場面における行動だけではなく、それ以外 の日常生活場面における行動が競技成績や競技能 力を左右すると指摘されている (長谷部, 2011; 能 勢, 2007)。Gould et al. (2007)、Collins et al. (2009)は、 10 名の高校アメリカンフットボール優秀指導者を 対象としてインタビュー調査を行い、指導者の大 半がライフスキルや個人の性格について指導する ことが勝利を導くと信じていることを明らかにし ている。確かに、スポーツに関わる時間を確保す るためにはスポーツ以外の時間を適切に管理する 必要があるなど、スポーツ場面と日常生活場面は 分かちがたい関係にある。しかし、運動部員やス ポーツ選手の日常生活場面における行動を扱った 先行研究は、ライフスキルの獲得ほか職業決定行 動 (奥田・中込, 1993) や競技引退への対応 (豊田, 1999) を扱った研究にとどまり、日常生活におけ る行動が競技能力に及ぼす影響については不明確 な部分が少なくない。運動部活動場面における経 験が日常生活場面における困難な状況への対処に どのように関係するのか、他方、学校生活場面に おける経験が競技能力とどのように関係するのか について、それぞれ明らかにする必要がある。 そこで本研究では、運動部員の運動部活動及び 学校生活場面における行動として表れる心理的ス キルに注目し、彼らの競技能力、さらには不可避 で困難な事態からの回復を導く精神的回復力 (小 塩ほか, 2002) との関係について検討する。 研究 1 では上野・中込 (1998) が作成した尺度 を利用し、高校運動部員の運動部活動場面及び学 校生活場面における心理的スキルを測定した上 で、彼らの指導者から得られた競技能力に関する 評価との関係について分析する。それにより、運 動部員の競技能力の高さと運動部活動及び学校生 活場面における心理的スキルとの関係が明らかに なる。 例えば、運動部活動場面では計画的に練習に取 り組む一方、学校の勉強に関しては無計画に取 り組む生徒も見かけられる。こうした運動部員 は、学校生活全体のなかでも運動部活動という限 られた場面におけるスキルを獲得しているにとど まる。学校生活場面における計画の甘さによって 失われる時間のしわ寄せは運動部活動場面にも及 び、ひいては競技能力に影響することも考えられ る。また競技能力については、これまで国体等の 出場経験や過去の競技成績をもとに便宜的に評 価されることがほとんどであった (徳永・橋本, 1988; 徳永ほか, 2000)。しかし、競技成績と競技 能力は異なることから、心理的スキルと競技能力 との関係を明らかにするためには、各競技におい て重視される競技能力の構成要素を特定した上で 心理的スキルとの関係を確認する必要がある。後 述するとおり、本研究では調査対象者となる高校 サッカー部員及びバスケットボール部員の競技能 力に対する客観的評価を用い、彼らの競技能力と
心理的スキルとの関係について検討する。 研究 2 では、高校運動部員の心理的スキルと精 神的回復力との関係について検討する。近年心理 学領域では、「困難で脅威的な状況であるにも関 わらず、うまく適応する過程、能力、結果」をレ ジリエンス (resilience:以下、本稿では精神的回 復力とする)と定義し (Masten et al., 1990)、研 究が進められている。精神的回復力は困難な状況 に適応する能力に注目しており、レジリエンシー とも呼ばれる (石毛・無藤, 2005)。我が国におけ るスポーツ参加者を対象とした精神的回復力に関 する研究は緒に就いたばかりであり (小林・西田, 2009)、様々な側面から精神的回復力との関係を 扱ったデータの蓄積が必要な段階にある。運動部 活動への参加を通じて獲得した心理的スキルが精 神的回復力を支えるスキルであることが示される ならば、生徒の人生において運動部活動経験が果 たす役割の一端を明らかにできると考えられる。 上述したとおり、本研究では高校運動部員の運 動部活動及び学校生活場面における行動と競技能 力及び精神的回復力の関係を併せて検討する。研 究対象が同じであっても、着眼点や用いる尺度が 異なる複数の研究が一つの研究として提示される ことは少ない。それは複数の研究を併せて提示す る煩雑さと比較して、その意義が小さいからであ ろう。本研究を構成する二つの研究では、高校運 動部員の運動部活動及び学校生活場面における行 動を同じ尺度で測定し、それぞれ競技能力及び精 神的回復力との関係について検討する。従って、 研究結果を併せて提示することが比較的容易であ る上、高校運動部員の運動部活動及び学校生活場 面における行動と、両場面において重視されてい る競技能力及び精神的回復力との関係について考 察できる。競技能力や精神的回復力との関係のみ に基づいた考察よりも、高校運動部員の運動部活 動及び学校生活場面における行動に対する読者の 理解を深めると考えられた。 2. 高校運動部員の心理的スキルと競技能力の関 係(研究 1 ) 2.1.方法 2.1.1. 高校運動部員の心理的スキルに関する調査 (調査 1 ) (1)調査対象者 5 つの県立高校のサッカー部もしくはバスケッ トボール部に所属している、一年生及び二年生の 男子 131 名 (年齢:M=16.45, SD=.53) を調査対 象者とした。 (2)手続き 調査対象者の基本属性 (年齢、当該種目の経験 年数) と共に、上野・中込 (1998) が作成した競 技状況スキル尺度及びライフスキル尺度を用い て、両スキルの獲得程度を測定した。両尺度はそ れぞれ運動部活動もしくは学校生活場面と状況は 異なるものの、対人スキル及び個人的スキルとい う同じ下位尺度から構成されている。従って、調 査対象者が獲得している運動部活動場面における 心理的スキル (競技状況スキル) と、日常生活場 面における心理的スキル (ライフスキル) の関係 性を把握することができる。調査への回答は、1 (まったくあてはまらない) から 7 (大変あてはま る)までの 7 件法により実施した。分析には各質 問項目に対する回答を下位尺度ごとに合計した得 点を用いた。従って、各下位尺度 (対人スキル: 10 項目、個人的スキル:10 項目) における得点 範囲は 10 点から 70 点である。調査は各運動部の 顧問教諭に依頼し、予め設けた約 2 週間の実施期 間中にそれぞれの部活動において集合調査法によ り実施された。 2.1.2. 顧問教諭による部員の競技能力に関する評 価(調査 2 ) (1)評価者 調査 1 の調査対象者となった高校運動部員の所 属する部の男性顧問教諭 6 名 (年齢:M=34.00, SD=6.10、 高 校 運 動 部 の 指 導 年 数:M=9.33, SD=4.41) に対して、自らが指導する運動部に所 属する部員の競技能力について評価を依頼した。 (2)手続き 運動部員の競技能力の評価については、オラ ンダのサッカークラブであるアヤックス・アム ステルダム (以下、アヤックスと略す) の下部組 織において、ユース選手の選抜・育成に際して 用いられている評価の観点 (TIPS) を用いた。オ ランダにおけるユース選手の指導方法について は我が国におけるサッカー指導においても見習
うべき点が多いとされている (オランダサッカー 協会, 2003)。とりわけアヤックスはユース育成 に定評のあるクラブであることから、その指導 方法については VTR や書籍を通じて我が国にも 紹介されている (糀, 2000)。TIPS は、それぞれ 選手を評価する際の観点として用いられる、技 術 (technique)、 知 性 と 洞 察 力 (intelligence and insight)、人間性 (personality) 及び機動性 (speed) の頭文字をそれぞれ組み合わせたものである。 TIPS における技術はボールコントロールの能力 を指し、知性と洞察力は相手選手が予測できない プレーを発想する上で必要とされる、プレーの先 を読み、考える能力を指している。また人間性は 他者とコミュニケーションを取り、リーダーシッ プを発揮し、仲間を受け入れ、規律を守れる能力 を、機動性は、相手選手を瞬時に引き離すスピー ド、もしくは長い距離を走れる能力を指している (Kormelink and Seeverens, 1997)。
ところで、本研究の対象者はサッカー部員とバ スケットボール部員である。バスケットボールに 関しては、ルールを考案する際にサッカーを参考 としており (水谷, 2011)、互いにゴール型の球技 種目であるなど競技としての関係性は決して低く ない (デーブラー , 1985)。また、ボールコントロー ル、試合の流れを読む、コミュニケーション、瞬 間的な速さや持久性のいずれの能力も、バスケッ トボールにおいて重視される能力であると言える。 従って本研究では、TIPS を両運動部員の競技能力 の評価に用いることとした。ただし、厳密には異 なる二つの種目に求められる競技能力を同一の基 準・尺度で測定することには問題も残る。TIPS を バスケットボールの競技能力の評価に用いること の妥当性に関しては今後検証が必要である。 顧問教諭による競技能力の評価に先立ち、技術、 知性と洞察力、人間性及び機動性の各側面に区分 した評価表を作成すると共に、それぞれの側面が 指す内容を上述の通り説明した。そして、これま での顧問教諭の指導経験をもとに、高校生年代の 平均的なサッカー及びバスケットボール部員を基 準として想起してもらい、平均的な部員を 3 とし た上で、各顧問教諭の指導する部員の各側面につ いて 1 (劣っている) から 5 (優れている) までの 範囲で評価するよう依頼した。分析には各側面に 対する評価点をそのまま用いた。 なお本研究を実施するにあたっては、調査 1 と 調査 2 の結果を対応させる必要があった。そこで 両調査の実施に際しては、個人情報に配慮し無記 名で行うものの、任意の番号をそれぞれの部員に 割り当てた上で両調査を実施するよう各顧問教諭 に依頼した。また調査に際しては、部員本人から 調査への協力に対する同意を得ると共に、調査依 頼を各学校長宛に送付し、学校長による応諾を得 た上で実施した。 2.2.結果と考察 2.2.1. 運動部活動及び学校生活場面における対人 スキルと競技能力の関係 運動部活動及び学校生活場面における対人スキ ルの獲得程度を独立変数、顧問教諭による競技能 力の評価点を従属変数として、二要因の分散分析 を行った。なお両場面における対人スキルの獲得 程度については、下位尺度の平均値 (運動部活動 場面における対人スキル:M=51.12、学校生活場 面における対人スキル:M=50.14) をもとに上下 位に区分した。また各条件の記述統計量及び、運 動部活動及び学校生活場面における対人スキルと 競技能力との単相関係数は表 1 の通りである注 1)。 分析の結果、技術においては運動部活動場面にお ける対人スキル (F(1,127)=.08, n.s., η2=.00、以 下、自由度は全て同じ) 及び学校生活場面におけ る対人スキル (F=1.95, n.s., η2=.02) のどちらの 要因も主効果は認められなかったほか、両場面 におけるスキルの交互作用 (F=1.83, n.s., η2=.01) も認められなかった。知性・洞察力においても、 運動部活動場面における対人スキル (F=1.68, n.s., η2=.01) 及び学校生活場面における対人スキ ル (F=2.61, n.s., η2=.02) のどちらの要因も主効 果は認められなかったほか、両場面におけるスキ ルの交互作用 (F=1.11, n.s., η2=.01) も認められ なかった。人間性においては、学校生活場面にお けるスキルの主効果 (F=4.48, p<.05, η2=.03) が 認められ、対人スキルを獲得している部員の方が あまり獲得していない部員よりも人間性の評価 点が高かったが、運動部活動場面におけるスキ ル (F=.85, n.s., η2=.01) の主効果及び、両場面に おけるスキルの交互作用 (F=.78, n.s., η2=.00) は
認められなかった。最後に機動性においては、運 動部活動場面におけるスキルの主効果 (F=4.30, p<.05, η2=.03) が認められ、対人スキルを獲得し ている部員の方があまり獲得していない部員よ りも機動性の評価点が高かったが、学校生活場 面におけるスキルの主効果 (F=1.70, n.s., η2=.01) 及び、両場面におけるスキルの交互作用 (F=.17, n.s., η2=.00) は認められなかった (図 1)。 上述したとおり、学校生活場面における対人ス キルは人間性と、運動部活動場面における対人ス キルは機動性との間でのみ関係が認められた。 人間性については、運動部活動場面における対 人スキルよりも学校生活場面における対人スキル の方が関係することが明らかになった。人間性は 他者とコミュニケーションを取り、リーダーシッ プを発揮し、仲間を受け入れ、規律を守れる能力 に対する評価である。運動部活動場面ではチーム の雰囲気や指導者の方針に基づき、礼儀や挨拶な どの行動が求められる。本結果は、運動部活動場 面においてそうした行動を実践しているかどうか よりも、学校生活場面において同種の行動を実践 しているかどうかが、リーダーシップや規律を 守ったプレーや態度と関係することを示している と考えられた。 n 48 27 48 27 48 27 48 27 M 3.06 3.37 3.00 3.37 3.46 3.56 3.17 3.44 SD .95 .93 .74 .88 .85 .64 .86 .85 n 19 37 19 37 19 37 19 37 M 3.58 3.38 3.42 3.46 3.74 3.92 3.32 3.73 SD 1.12 .90 .84 .96 .87 .86 1.00 .93 運動部活動場面 における対人スキル r .11 .19 * .19 * .24 ** 学校生活場面 における対人スキル r .23 * .22 * .22 * .25 ** ** p<.01, * p<.05 下位群 上位群 上位群 各競技能力 との単相関係数 技術 知性・洞察力 人間性 機動性 運動部活動場面における対人スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 下位群 上位群 学校生活場面 における対人スキル # !& (') # !& (') * 4 3.5 3 0 表 1 各条件の記述統計量と各場面における対人スキルと競技能力との相関 図 1 運動部活動及び学校生活場面における対人スキルと競技能力の関係 # !& (') # !& (') * 4 3.5 3 0 # !& (') # !& (') * 4 3.5 3 0
もとより両場面における対人スキルは同種の 側面から構成されており、本研究に参加した運動 部員の両スキルの獲得程度は中程度の相関関係 (r=.63, p<.001) にある。もともと学校生活場面に おける対人スキルを獲得している生徒が運動部活 動に参加している可能性は排除できない。しかし、 学校生活場面における対人スキルが運動部活動場 面における対人スキルから般化したものとするな らば、学校生活場面に般化するほど対人スキルを 内面化していることが、人間性に関する評価点の 高さとして表れたのではないかと推察された。 他方、機動性については運動部活動場面におけ る対人スキルとの関係が認められた。相手より先 にボールに追いつくためには、瞬発力を高める計 画的なトレーニングもさることながら、相手との 間合いやプレーの状況を読み、早く反応すること も求められる。相手選手のどのような行動に注意 を払う必要があるのかについては、指導者やチー ムメイトからのアドバイスに含まれている場合が 少なくない。そして、機動性と学校生活場面にお ける対人スキルとの間に関係が認められなかった のは、クラスメイトとの会話には機動性の向上に 関する情報があまり含まれていないからであろ う。このように機動性の向上には、指導者やチー ムメイトと意思疎通を図るスキルを獲得している ことが関係すると推察された。 2.2.2. 運動部活動及び学校生活場面における個人 的スキルと競技能力の関係 運動部活動及び学校生活場面における個人的ス キルの獲得程度を独立変数、顧問教諭による競技 能力の評価点を従属変数として、二要因の分散分 析を行った。なお両場面における個人的スキルの 獲得程度については、下位尺度の平均値 (運動部 活動場面における個人的スキル:M=47.67、学校 生活場面における個人的スキル:M=46.20) をも とに上下位に区分した。また各条件の記述統計量 及び、運動部活動及び学校生活場面における個人 的スキルと競技能力との単相関係数は表 2 の通り である。分析の結果、技術においては運動部活動 場面におけるスキル (F(1,127)=.42, n.s., η2=.00、 以下、自由度は全て同じ) 及び学校生活場面にお けるスキル (F=2.01, n.s., η2=.02) のどちらの要 因も主効果は認められなかったものの、両場面に おけるスキルの交互作用 (F=2.84, p=.09, η2=.02) が有意傾向であった。そこで単純主効果について 検討したところ、両場面における個人的スキルが 共に下位群である部員は、運動部活動場面にお ける個人的スキルのみ上位群である部員 (p=.09, d=.50) 及び、学校生活場面における個人的スキ ルのみ上位群である部員 (p<.05, d=.66) よりも 技術の評価点が低かった。知性・洞察力におい ては、運動部活動場面におけるスキル (F=.27, n.s., η2=.00) 及び学校生活場面におけるスキル (F=.41, n.s., η2=.01) のどちらの要因も主効果は 認められなかったほか、両場面におけるスキルの 交互作用 (F=1.07, n.s., η2=.01) も認められなかっ た。人間性においても、運動部活動場面における スキル (F=1.84, n.s., η2=.02) 及び学校生活場面 におけるスキル (F=.37, n.s., η2=.01) のどちらの 要因も主効果は認められなかったほか、両場面に おけるスキルの交互作用 (F=.85, n.s., η2=.01) も 認められなかった。最後に機動性においては、学 校生活場面におけるスキル (F=.81, n.s., η2=.01) の主効果は認められなかったものの、運動部活 動場面におけるスキルの主効果 (F=3.62, p<.05, η2=.03) が有意、両場面におけるスキルの交互作 用 (F=2.88, p=.06, η2=.03) が有意傾向であった。 交互作用が認められたことから単純主効果につい て検討したところ、両場面における個人的スキル が共に下位群である部員は、運動部活動場面にお ける個人的スキルのみ上位群である部員 (p<.01, d=.89) 及び、学校生活場面における個人的スキ ルのみ上位群である部員 (p<.05, d=.64) よりも 機動性の評価点が低かった (図 2)。 上述したとおり、個人的スキルは技術及び機動 性との間で関係が認められた。技術に関しては交 互作用は有意傾向であり偶然性を否定できないほ か、交互作用の効果量も高い値ではなかった。個 人的スキルは練習への計画的な取り組みにつなが ることから、当初は技術との関係がより明確に認 められると予想していた。予想とは若干異なる結 果になった理由として、研究対象者の身体的な発 達段階の影響が推察された。本研究の対象者は高 校生であり、サッカーやバスケットボールにおけ る基本的技術の効率的な習得が可能となる時期
(ゴールデンエイジ) とされる小学校高学年を中 心とする年代を既に過ぎている (日本サッカー協 会技術委員会, 2000)。従って個人的スキルを獲 得していたとしても、技術向上の程度自体が限ら れることから、技術の向上と個人的スキルとの関 係についても限定的な関係性しか認められなかっ たのではないかと推察された。 他方、機動性に関しては両場面における個人的 スキルの交互作用が認められており、どちらの場 面における個人的スキルも獲得できていないこと により、機動性が他の条件よりも低くなることも 考えられた。しかし、交互作用は有意傾向の域に とどまっており偶然性を否定できない。一方で、 運動部活動場面におけるスキルの主効果が認めら れており、運動部活動において個人的スキルをあ まり利用できていない部員において、機動性が低 いことが明らかになった。瞬間的なスピードと持 久的な走能力のどちらも、筋力トレーニングやイ ンターバル走などを継続的・計画的に実施するこ とにより強化される。運動部活動場面における個 人的スキルを持ち合わせていないことは、機動性 の向上に関して消極的に働くと考えられた。 また本研究の結果、学校生活場面における心理 的スキルの獲得程度との関係が技術、人間性、機 n 50 17 50 17 50 17 50 17 M 3.00 3.47 3.10 3.41 3.50 3.59 3.04 3.76 SD .90 1.07 .74 .94 .81 .71 .72 1.03 n 16 48 16 48 16 48 16 48 M 3.63 3.42 3.44 3.33 3.44 3.90 3.56 3.60 SD 1.09 1.05 1.15 .86 .89 .83 1.03 .92 運動部活動場面 における個人的スキル r .10 .10 .18 * .22 * 学校生活場面 における個人的スキル r .20 * .16 † .14 .25 ** ** p<.01, * p<.05, † p<.10 知性・洞察力 人間性 機動性 運動部活動場面における個人的スキル 各競技能力 との単相関係数 上位群 下位群 上位群 学校生活場面 における個人的スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 技術 $ !"')(* ** p<.01, * p<.05, † p<.10 0 $!"')(* + 4 3.5 3 * † ** * 表 2 各条件の記述統計量と各場面における個人的スキルと競技能力との相関 図 2 運動部活動及び学校生活場面における個人的スキルと競技能力の関係 $ !"')(* ** p<.01, * p<.05, † p<.10 0 $!"')(* + 4 3.5 3 * † ** * n 50 17 50 17 50 17 50 17 M 3.00 3.47 3.10 3.41 3.50 3.59 3.04 3.76 SD .90 1.07 .74 .94 .81 .71 .72 1.03 n 16 48 16 48 16 48 16 48 M 3.63 3.42 3.44 3.33 3.44 3.90 3.56 3.60 SD 1.09 1.05 1.15 .86 .89 .83 1.03 .92 運動部活動場面 における個人的スキル r .10 .10 .18 * .22 * 学校生活場面 における個人的スキル r .20 * .16 † .14 .25 ** ** p<.01, * p<.05, † p<.10 知性・洞察力 人間性 機動性 運動部活動場面における個人的スキル 各競技能力 との単相関係数 上位群 下位群 上位群 学校生活場面 における個人的スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 技術
動性との間に認められた。本結果は、高い競技成 績を収める上で日常生活において心理的な準備を 整えることの重要性を語るスポーツ選手(長谷 部, 2011)や、運動部員の日常生活に関する指導 が競技能力の向上につながると説く指導者(小嶺, 2004)にとっての経験的な事実と矛盾するもので はなかった。技術と機動性に関しては偶然性が否 めないものの、本結果は学校生活場面における運 動部員の行動を眺めることにより、彼らの競技能 力の一部を推測できる可能性があることを示して いた。 以上のように、学校生活場面における心理的ス キルの獲得程度は、技術、人間性、機動性の評価 点の高さと関係していた。ただし、学校生活場面 における心理的スキルとの関係が統計的に有意で あったのは人間性だけであり、技術及び機動性に おいては関係は認められるものの偶然性が高く、 知性・洞察力においては関係が認められないこと が明らかになった。 3. 高校運動部員の心理的スキルと精神的回復力 の関係(研究 2) 3.1.方法 3.1.1. 高校運動部員の心理的スキル及び精神的回 復力に関する調査 (1)調査対象者 私立高校 1 校の運動部に所属している、一年 生 58 名 (男子 36 名・女子 22 名) 及び二年生 52 名 (男子 30 名・女子 22 名)、合計 110 名 (年齢: M=16.47, SD=.50) を調査対象者とした。調査対 象者はソフトボール、硬式野球、バスケットボー ル、陸上競技、バレーボール、剣道、ソフトテニ スのいずれかの運動部に所属していた。 (2)手続き 調査対象者の基本属性 (年齢、当該種目の経験 年数) に加え、上野・中込 (1998) が作成した、 競技状況スキル尺度及びライフスキル尺度、さら に小塩ほか (2002) が作成している精神的回復力 尺度への回答を求めた。 精神的回復力尺度は、新奇性追求 (7 項目)、感 情調整 (9 項目)、肯定的な未来志向 (5 項目) の 3 つの下位尺度から構成されており、不可避で困難 な事態からの回復を導く心理的特性を測定可能で あるとされている。精神的回復力尺度への回答は、 1 (いいえ) から 5 (はい) までの 5 件法により実 施した。分析には、下位尺度ごとに各質問項目に 対する回答の合計得点を質問項目数で割った平均 点を用いた。競技状況スキル尺度及びライフスキ ル尺度に関しては、調査への回答方法、分析方法 共に、研究 1 と同様の方法により実施した。調査 は各運動部の顧問教諭に依頼し、約 2 週間の間に それぞれの部活動において集合調査法により実施 した。 3.2.結果と考察 3.2.1. 運動部活動及び学校生活場面における対人 スキルと精神的回復力の関係 運動部活動及び学校生活場面における対人スキ ルの獲得程度を独立変数、精神的回復力尺度の各 下位尺度得点を従属変数として、二要因の分散 分析を行った。なお両場面における対人スキル の獲得程度については、下位尺度の平均値 (運動 部活動場面における対人スキル:M=55.52、学校 生活場面における対人スキル:M=51.15) をもと に上下位に区分した。また各条件の記述統計量及 び、運動部活動及び学校生活場面における対人ス キルと精神的回復力との単相関係数は表 3 の通り である。分析の結果、新奇性追求においては運動 部活動場面における対人スキル (F(1,106)=6.50, p<.05, η2 =.05、以下、自由度は全て同じ) 及び学 校生活場面における対人スキル (F=6.00, p<.05, η2=.05) の両要因の主効果が認められ、場面にか かわらず、対人スキルを獲得している運動部員の 方があまり獲得していない部員よりも、新奇性追 求の得点が高かった。他方、両場面におけるスキ ルの交互作用 (F=.24, n.s., η2=.00) は認められな かった。感情調整においては、運動部活動場面に おける対人スキルの主効果 (F=.43, n.s., η2=.00) は認められなかったものの、学校生活場面におけ る対人スキル (F=7.38, p<.01, η2=.06) の主効果 が有意、両場面における対人スキルの交互作用 (F=2.90, p=.09, η2=.03) が有意傾向であった。交 互作用が認められたことから単純主効果について 検討したところ、両場面における対人スキルが共 に下位群である部員は、運動部活動場面における 対人スキルのみ上位群である部員 (p=.06, d=.56)
及び、学校生活場面における対人スキルのみ上 位群である部員 (p<.01, d=1.03) よりも感情調整 の得点が低かった。肯定的な未来志向において は、運動部活動場面における対人スキル (F=9.86, p<.01, η2 =.07) 及び学校生活場面における対人ス キル (F=4.72, p<.05, η2=.04) の両要因の主効果 が有意であったほか、両場面におけるスキルの 交互作用 (F=3.08, p=.08, η2=.02) が有意傾向で あった。交互作用が認められたことから単純主効 果について検討したところ、交互作用が認められ たことから単純主効果について検討したところ、 両場面における対人スキルが共に下位群である部 員は、運動部活動場面における対人スキルのみ上 位群である部員 (p<.001, d=.97) 及び、学校生活 場面における対人スキルのみ上位群である部員 (p<.05, d=.79) よりも肯定的な未来志向の得点が 低かった (図 3)。 新奇性追求及び肯定的な未来志向においては、 両場面における対人スキルの主効果がそれぞれ認 められた他、感情調整と肯定的な未来志向におい ては、有意傾向ではあるものの両場面における対 人スキルの交互作用が認められた。また全体とし n 42 19 42 19 42 19 M 3.30 3.69 2.81 3.12 3.33 4.07 SD .66 .56 .57 .53 .80 .65 n 11 38 11 38 11 38 M 3.68 3.94 3.40 3.26 3.93 4.14 SD .71 .45 .56 .68 .48 .61 運動部活動場面 における対人スキル r .42 ** .29 ** .44 ** 学校生活場面 における対人スキル r .39 ** .33 ** .39 ** ** p<.01 学校生活場面 における対人スキル 下位群 上位群 各精神的回復力 との単相関係数 新奇性追求 感情調整 肯定的な未来志向 運動部活動場面における対人スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 上位群 ! ! ! ! ! ! $ # "- 4 3.5 %&(. *+1324 3 0 (.*+1324 ! ! *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, † p<.10 ** † * *** 表 3 各条件の記述統計量と各場面における対人スキルと精神的回復力との相関 図 3 運動部活動及び学校生活場面における対人スキルと精神的回復力の関係 n 50 17 50 17 50 17 50 17 M 3.00 3.47 3.10 3.41 3.50 3.59 3.04 3.76 SD .90 1.07 .74 .94 .81 .71 .72 1.03 n 16 48 16 48 16 48 16 48 M 3.63 3.42 3.44 3.33 3.44 3.90 3.56 3.60 SD 1.09 1.05 1.15 .86 .89 .83 1.03 .92 運動部活動場面 における個人的スキル r .10 .10 .18 * .22 * 学校生活場面 における個人的スキル r .20 * .16 † .14 .25 ** ** p<.01, * p<.05, † p<.10 知性・洞察力 人間性 機動性 運動部活動場面における個人的スキル 各競技能力 との単相関係数 上位群 下位群 上位群 学校生活場面 における個人的スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 技術 ! ! ! ! ! ! $ # "- 4 3.5 %&(. *+1324 3 0 (.*+1324 ! ! *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, † p<.10 ** † * *** ! ! ! ! ! ! $ # "- 4 3.5 %&(. *+1324 3 0 (.*+1324 ! ! *** p<.001, ** p<.01, * p<.05, † p<.10 ** † * ***
て、いずれかの場面における対人スキルを獲得し ている運動部員は両場面における対人スキルを獲 得していない部員と比較して、精神的回復力が高 い状態にあることが図 3 から読み取れた。多くの 場合、新しいことにチャレンジする際には何らか の形で他者に助けを求めたり、相談する必要があ る。対人スキルは新奇性を追求する際に役立つと 考えられた。さらに他者との関係のなかで日常生 活が成り立っていることを考えるならば、自らの 感情を調整する事態は、他者とのトラブルから生 じることが少なくない他、同じ時代を生きる他者 との関係をうまく築く能力がなければ、現在とつ ながる自らの未来を肯定的に捉えることは簡単で はないと考えられる。石毛・無藤 (2005) は因子 分析を通じて、中学生のレジリエンシーを構成す る要因として相談性を抽出しており、対人スキル は精神的回復力を支えるスキルであることが窺わ れた。 なお感情調整においては、運動部活動場面にお ける対人スキルの主効果は認められず、両場面に おける対人スキルの交互作用についても、危険率 の値は有意傾向の基準 (10%) をわずかに下回っ た程度であった。学校生活場面における対人スキ ルとは異なり、運動部活動場面において他者と意 思疎通を図るスキルを獲得していたとしても、普 段の生活における感情調整がスムーズに行われる とは限らないようである。運動部には同じ運動に 興味や関心を持ち、勝利や能力の向上など共通 の目標に向かって練習する生徒が集まっている。 従って、そうした部員から構成される運動部活動 場面と、必ずしも興味や目標を共有しない生徒も 含まれる学校生活場面とでは、そこで求められ、 また獲得される対人スキルは質的に異なる可能性 (例えば,挨拶の声の大きさなど) がある。運動 部活動場面における対人スキルと感情調整との間 に関係性が認められなかった背景には、両場面に おける対人スキルの差異が関係しているのではな いかと推察された。 3.2.2. 運動部活動及び学校生活場面における個人 的スキルと精神的回復力の関係 運動部活動及び学校生活場面における個人的ス キルの獲得程度を独立変数、精神的回復力尺度の 各下位尺度得点を従属変数として、二要因の分散 分析を行った。なお両場面における個人的スキル の獲得程度については、下位尺度の平均値 (運動 部活動場面における個人的スキル:M=52.21、学 校生活場面における個人的スキル:M=47.39) を もとに上下位に区分した。また各条件の記述統 計量及び、運動部活動及び学校生活場面におけ る個人的スキルと精神的回復力との単相関係数 は表 4 の通りである。分析の結果、新奇性追求 においては運動部活動場面における個人的スキ ル (F(1,106)=12.70, p<.01, η2=.09、 以 下、 自 由 度は全て同じ) 及び学校生活場面における個人的 スキル (F=9.89, p<.01, η2=.07) の両要因の主効 果が認められ、場面にかかわらず、個人的スキル を獲得している運動部員の方があまり獲得してい ない部員よりも、新奇性追求の得点が高かった。 他方、両場面におけるスキルの交互作用 (F=.27, n.s., η2=.00) は認められなかった。感情調整にお いても、運動部活動場面における個人的スキル (F=5.71, p<.05, η2=.04) 及び学校生活場面にお ける個人的スキル (F=9.87, p<.01, η2=.08) の両 要因の主効果が認められ、場面にかかわらず、個 人的スキルを獲得している運動部員の方があまり 獲得していない部員よりも、感情調整の得点が 高かった。他方、両場面におけるスキルの交互 作用 (F=.27, n.s., η2=.02) は認められなかった。 肯定的な未来志向においては、学校生活場面に おける個人的スキルの主効果 (F=27.02, p<.001, η2=.18) が認められ、個人的スキルを獲得してい る運動部員の方があまり獲得していない部員より も、肯定的な未来志向の得点が高かった。一方で、 運動部活動場面における個人的スキルの主効果 (F=2.41, n.s., η2=.02) 及び、両場面におけるスキ ルの交互作用 (F=1.87, n.s., η2=.01) は認められ なかった (図 4)。 肯定的な未来志向では学校生活場面における個 人的スキルの主効果しか認められなかったが、そ れ以外の下位尺度では、両場面における個人的ス キルの主効果がそれぞれ認められた。従って肯定 的な未来志向を除けば、いずれかの場面における 個人的スキルを獲得している運動部員はあまり獲 得していない部員と比較して、精神的回復力が高 い状態にあることが明らかになった。個人的スキ
ルは目標設定や自己管理に関するスキルから構成 されている。自らの将来に目標を設定するスキル は、新奇性追求や肯定的な未来志向を支えるスキ ルとして、自己を管理するスキルは感情を調整す るスキルとして効果を発揮すると推察された。 他方、学校生活場面における個人的スキルとは 異なり、運動部活動場面において明確な目標を設 定できたとしても、そのことが生徒の肯定的な未 来志向を強めるわけではなかった。しかし例えば、 n 38 20 38 20 38 20 M 3.27 3.57 2.81 3.01 3.40 3.92 SD .58 .74 .56 .60 .78 .64 n 16 36 16 36 16 36 M 3.62 4.04 2.92 3.47 3.43 4.32 SD .60 .38 .54 .59 .74 .49 運動部活動場面 における個人的スキル r .46 ** .36 ** .42 ** 学校生活場面 における個人的スキル r .40 ** .30 ** .47 ** ** p<.01 各精神的回復力 との単相関係数 上位群 学校生活場面 における個人的スキル 下位群 上位群 新奇性追求 感情調整 肯定的な未来志向 運動部活動場面における個人的スキル 下位群 上位群 下位群 上位群 下位群 ! ! ! ! ! ! 0 (.*+1324 $ # "- 4 3.5 3 %& (. *+1324 ! ! 表 4 各条件の記述統計量と各場面における個人的スキルと精神的回復力との相関 図 4 運動部活動及び学校生活場面における個人的スキルと精神的回復力の関係 レギュラー選手として試合に出場するために改善 すべき目標を立てて計画的に練習する際に、また テストで目標点を取るために苦手分野について計 画的に練習する際に必要とされる目標設定スキル は、場面こそ異なるものの基本的に共通している。 上野・中込 (1998) は、運動部活動を通じて身に つけた個人的スキルを学校生活場面でも利用する よう指導者が働きかけることにより、学校生活場 面における個人的スキルとして般化可能であると ! ! ! ! ! ! 0 (.*+1324 $ # "- 4 3.5 3 %& (. *+1324 ! !
している。例えば指導者の働きかけを通じて、運 動部活動場面における個人的スキルを学校生活場 面へと般化させることができるならば、将来目標 の設定を通じて、生徒の肯定的な未来志向を強め ることができるのではないかと考えられた。 4.まとめ 本研究では運動部活動及び学校生活場面におけ る心理的スキルと、それぞれの場面において重視 される競技能力及び精神的回復力との関係につい て検討した。競技能力に関しては、知性・洞察力 のように対人スキル、個人的スキルのどちらの心 理的スキルとも関係が認められない側面も認めら れた一方で、技術、人間性、機動性のように学校 生活場面における対人スキルもしくは個人的スキ ルが関係している側面も認められた。ただし、学 校生活場面における心理的スキルとの関係が統計 的に有意であったのは人間性だけであった。また 精神的回復力に関しては、いずれの側面において も心理的スキルとの関係性が認められた一方で、 運動部活動場面における対人スキルと感情調整、 個人的スキルと肯定的な未来志向との間に明確な 関係は認められなかった。 本研究は運動部員の運動部活動場面及び学校生 活場面における心理的スキルについて、競技能力 及び精神的回復力という二つの側面から併せて検 討することを一つの意義としていた。 まず運動部活動場面における心理的スキルとの 関係に注目したところ、競技能力に関しては、機 動性と運動部活動場面における対人スキル及び個 人的スキルとの間に統計的に有意な関係が認めら れたにとどまる一方で、精神的回復力に関しては、 全ての側面において運動部活動場面における対人 スキルもしくは個人的スキルとの関係が認められ た。競技能力に関して機動性との関係しか認めら れないことからすれば、運動部活動場面における 心理的スキルの獲得が選手としての成功に果たす 役割はそれほど大きくはないであろう。運動部活 動場面における心理的スキルを獲得している運動 部員が試合で活躍しているとは限らない。しかし、 運動部活動場面における心理的スキルを獲得して いる運動部員は、困難で脅威的な状況であっても うまく適応できると考えられる。大会に向けて目 標を設定し、また体調管理を続けることが生徒の 競技場面における成功には結びつかなかったとし ても、そこでの経験は将来困難で脅威的な状況に 遭遇した際の対処に活かされると推察された。 次に学校生活場面における心理的スキルとの関 係に注目したところ、競技能力に関しては、人間 性と学校生活場面における対人スキルとの間にお いて統計的に有意な関係が認められただけであっ た。しかし、学校生活場面における対人スキルは 精神的回復力の全ての側面との間に関係性が認め られた。学校生活場面において他者と意思疎通が 図れると共に集団行動が行える運動部員は、リー ダーシップや規律を守ったプレーや態度を示すと 共に、困難で脅威的な状況であってもうまく適応 できると考えられる。本結果は、運動部活動場面 だけではなく学校生活場面において他者と意思疎 通が図れると共に集団行動が行える運動部員を育 成することが、精神的回復力だけでなく競技能力 にも肯定的に働くことを示している。運動部活動 の指導者には学校生活場面における対人スキルの 獲得を促進する指導と共に、運動部活動場面で獲 得した対人スキルの学校生活場面への般化を視野 に入れた指導が期待される。 注 1 ) 本研究では、独立変数として用いる運動部活 動場面における心理的スキルと学校生活場 面における心理的スキルに中程度の相関関 係 (研究 1:対人スキル r=.63, p<.001、個人 的スキル r=.66, p<.001、研究 2:対人スキル r=.48, p<.001、個人的スキル r=.63, p<.001) が認められることから、重回帰分析等の手 法ではなく平均値を用いて上下位に群分けし た上で分散分析を行った。しかし、平均値に よる群分けにより各独立変数と従属変数間の 関係の強さが不明瞭になることから、参考と して両者間の単相関係数を併せて各表に示し た。 文献
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