自閉症に対する療育的介入
現在から未来へ
Rabbit Developmental Research 平岩 幹男
1994年転職
• 臨床医から公衆衛生+外来診療に →それまでの脳科学のツールは使えない • 行政職と一般外来のかたわらで →思春期相談を始めた →発達の相談も始めた • 最初は不登校と性の問題絡みが多かった • 気がついたら相談のほとんどが発達障害 →言葉の遅れを主訴とする自閉症が一杯自分の外来が自閉症で埋まり
始めた時に
なんとかしたいと思ったが手がなかった 佐々木正美先生にいろいろ教えてもらった しかし社会適応能力の改善は十分ではない
自閉症のブラックイメージに
医療も保健も教育も社会も
そして保護者も
染まっているかもしれない
昔の自分もそうだった
言葉が遅れるASDと知的障害
• 自閉症は知的障害を伴うものと考えられた →自閉症は言葉の遅れを伴う →言葉の遅れは知的障害 →知的障害は治らないから自閉症は治らない • 多くの人は改善する可能性を知らない →もちろん自分も知らなかった • しかし個別療育によって変化が出てきた →発達が大きく改善する子どもたちがいる • 様子をみているだけでは何も変わらないASDが疑われると・・
• 発達検査をしてみる:その数値が低ければ →早期診断=早期絶望のはじまり • 発達などの通所支援サービス: →発達支援サービスは増加している →個別に療育ができるところは少ない →自閉症に特化した公的施設はほとんどない • 困り事(言語発達の遅れや行動上の課題など)が あるのにたとえば3歳までただ様子を見ている?子どもの療育施設は
• 肢体不自由と知的障害 • 肢体不自由は脳性麻痺などのリハビリテー ションの進歩に伴って大きく変化している • 知的障害は、そのものが改善しないと認識さ れているので、小集団での日常生活習慣の 獲得が中心:これも今後の課題 • 個別の評価は発達検査・・ →一人ひとりへのプログラムは?ASDへのこれまでの多くの対応
• 診察をして病歴を聴取する →しばしば子どもの観察は不十分 • 脳波、MRI、血液検査など →器質的疾患を考えて検査する・・多くは異常なし • 器質的疾患が見つからなければ・・ →診断しても対応がないと考えれば様子見も・・ • どうすればよいかが知りたい保護者には →しばしばno idea手探りだけれども
出来ることからしてみよう
@2007・・独立
手探りが続く日々 学会に出ても臨床には役立たない You Tubeが始まった暇だったので成人の
知的障害者通所施設を手伝ってみた
• そこには文字も読めるのに会話ができない、 認知能力は低くないと思われるのに社会生 活習慣ができていない、パニック発作を起こ しても放置されている・・そんな人々が • 子どもの時にすべき対応をしないとその状況 は成人になって何十年も続くかもしれない • 成人期を見据えた対応は重要である子どもの時間は
たった20年
そこでできることをしないと
50年それを背負って生きる
10年前
初診予約は電話で簡単に取れた
現在
予約はネットで約2秒で埋まる
保護者の申し込みのみ
紹介受診はない
紹介患者さんを受けることを
やめた
行けと言われてきた人を納得して いただきながらレールに乗せるのは しばしば困難で時間がかかる その時間があれば、診てほしいと希望される方を 何人も診察できる。自分にできることは・・と考えたいつの間にかこうなってしまった
• いろいろなところからリ クエストがあり、なるべく 拝見しようとはしている • しかし毎回数十人以上 をお断りしている • 何とかしなければと思 いつつ月日が過ぎる現在の外来では
• 週に2~3回朝から晩まで外来 • 定期的に通っている方が600人余り →発達障害が500人余り (親子例、兄弟例もあり) • 初診での再診希望ほぼ100% • HOMEの外来(なかじまクリニック)のほかに 講演などの際にAWAYの外来をすることもある →ある程度定期的:大阪、名古屋、広島などCHECK POINT(background)
• 妊娠・出産・家族歴 • 発達経過:途中に退行があるかどうか • 運動発達:粗大、微細、発達性協調運動障害 • けいれんやてんかんの有無 • こだわり行動・感覚過敏 →並べる、横目、偏食 • 生活リズム →睡眠、食事CHECK POINT(evaluation)
• 自発語がない →そもそも声をほとんど出さない →単語レベルの理解がない(名前があること) →簡単な単語や状況は理解できている →簡単な指示が通る →デザインや文字興味がある(理解している?) • 指さしをしない →クレーンが多い?それもない? • 共同注視・見立ては?小学校への就学
• 個別療育(介入)群 2013~2017 n=144 • 3歳時点で無発語・単語 • 後に通常→支援3名 • S療育園 2010~2015 n=59 • 属性は不明 • 予後経過も不明ASDにこう対応してみたら・・
• まずは診断をするより何が困難かを考える →必要があれば検査もする • 診断名ではなく実際の生活上の問題を把握 →将来的な目標も聴取する →無発語=知的障害とは限らない • 実際の問題点に合わせて対応方法を伝える →改善状況を見ながら課題設定を変える →場合によっては他職種との連携を集団療育と個別療育
• 同じ診断でも症状は一人一人違う →個々に合わせたプログラムと対応が必要 →発達検査は評価に過ぎない →プログラムは結果の評価が重要 • 集団療育は →多くは最初から行われるが・・・ →それは個別のプログラム作成と対応が できないから行われていることがしばしば • 資源がないから「集団」とは限らない →家庭でも個別にできることはある自閉症に対する個別療育
ABA:現在の国際標準の一つ TEACCH:構造化も役に立つ PECS:絵カードでコミュニケーションを図る その他のサイン言語も(マカトンなど) SST(LST):生活動作やコミュニケーション 運動療法(感覚統合療法を含む)RDI(Relationship Developmental Intervention DIR(Developmental Individual-difference Relation based)
個別療育には時期に限界?
• いつ開始してもよいわけではない →効果は年齢によっても状況によっても変わる • 個別療育を4歳までに開始した場合と 7歳以降に開始した場合では差がある • 診断の遅れは介入の遅れにつながる →乳幼児健診のありかたの問題も • 言語発達の遅れを伴うASDへの介入 →ハワイ:2歳までが約70% →東京:3歳からが約70%介入のゴール
• そのときだけではなく「成人したとき」を考える • 子どもの時期は20年しかない →そのときにできることをしておかないと →不十分なまま残りの50年の人生が待つ • 見守ることではなく →できることをする・・・必ずある • 現在の問題点だけにとらわれないこと • 今見えているのはゲート、ゴールはまだ先診断よりも介入
• 診断や評価の重要性は理解しているが →保護者の求めているものは「対応」 →成人の当事者は診断と「切り分け} • 保護者にできることをどうやって伝えるか →子どもの行動を観察して手がかりを →実際に対応をしてみせ保護者にも • 何ができるかをメモしてもらい実行する • メールサポートもする • 親子心中だけは防ぎたい介入は医者の仕事か
• システムが整備されれば介入は任せる →現状は整備されているのか? • 今から40年近く前、脳性麻痺の療育が →Vojta, Bobathそれはとても新鮮だった →医師もPTもOTも試行錯誤を繰り返した →現在は「辛さ」の軽減も課題になっている • 40年前の脳性麻痺と現在の自閉症は似ている →介入の方法論が確立されているとは言えない →医療と介入が分離できるだけの状態ではない幼児期に自閉症を疑う
• 声を自発的にほとんど出さない • 視線が合わない、横目でものを見る • 物体には興味を持つが他人には興味がない • 棒をたたき続けるなどの反復行動がある • 指差しをしない • クレーン現象がある • 自発言語がない • 表情の変化が少ない • 感覚過敏がある • まねをしない(動作や音声など)スモールステップ
• 急いでも焦っても うまくいかない • 少しずつできることを 増やす • 一度に歩けるのは 一歩だけ 百歩は歩けない介入の原則
• 好ましい行動、望まれる反応を強化する →ほめる、報酬 • 好ましくない行動、反応を消去する →ほめない、無視する →切り替え、タイムアウト • 一度に何とかしようとしない →スモールステップ • 介入はたとえばABAであってもデスクだけで はなく日常生活の中で可能触ってみる~目合わせを試みる
• おむつ替え、入浴前後 とにかく触ってみよう • 表情の和らぐSWEET SPOTをみつけよう • 見つけたらしつこくでは なく、ちょこちょこ触ろう • その時に目合わせが できたら最高!!しつこくしない、出来たらまたやる
目合わせの練習
• 子どもの手を自分の頬 につける(小さければ 耳でも・・目が合うかな • 自分の手を子どもの頬 に当ててみる • 目が合ってほっとする 瞬間を目指そう • 黙ってしないで言葉か けを忘れないことタッチ&ゴー
手あそびうた
• 簡単なのは「糸巻き」や 「ひげじいさん」 • 動作と音声の模倣 • まずは動作模倣を狙う • 反応したらそこを繰り返 してみる • はっきりでなくても声が 出たら喜ぶ • 進化形が「絵描きうた」 →幼児期タッチ
• 「タッチ」の声掛けでタッ チができたら・・・まずは 最初のゴール • できるようになったら 何度も連続しないで 少し間をあけてしてみる • できなければもう一方の 手を添えて誘導しても • 必ず「タッチ」の声を出すここまで来れば一段落
指差しから共同注視、見立てへ
• 共同注視は指差しの最終段階 →ここまでくればクレーンは減る • 遠くのものを指差すとそれを見る →子どもが見て欲しいものを指差す • 積み木を電車に見立てて走らせる →そのうちに声も出る • 見立てからごっこ遊びへ(対人関係性) →おままごと、たたかいごっこつながりはじめたら更に強化
• 要求を実行する前には指 示を出す • うまくできたらボディタッチ • 指示がわかるようになった ら「お手伝い」を指示 • それを1日に何度も繰り返 す・・目標50回ここまで来たら言葉は近い
ハーイで手を上げる
• 最初は名前を呼んで手を挙げる • ・・できる子 手を挙げて ・・する子 手を挙げて • ハーイと言いながら手を挙げる • そこでまずほめる • それから指示を出す • できたらほめる • 注目させてから指示を出すハイタッチ
• 2歳前から可能 • 視線を合わせ るには両手で • 指示する、手挙 げ、ハイタッチ • ごほうびにも • 切り替えにもハーイからハイタッチに
自己決定+達成感
外来ではこんなトレーニングを話している
• 第1段階 →目合わせ、指差し、タッチ • 第2段階 →共同注視、見立て • 第3段階 →トイレ、食事、着替え、お手伝い • 第4段階 →手や顔を洗う、鼻をかむ、靴を履く • 文章で話しかける言語の発達
• 声を出す、喃語 • 音をまねする • 単語が出る • 要求語が出る • オノマトペが使える • 文章の構成(助詞が使える) • 接頭語、接尾語、もし・・構文が使える • 字が読めるなら文字を使うまずは受容言語を増やす
• 言葉の池に水がたまるように わかる言葉が増えて、あふれ てくるのが自発語 • 単語を言わせようとして何度も 失敗していると言わなくなる • 受容言語が増えだしたら文章 で指示する文字を使う
• 話せなくても文字を理解していることもある • 単文字で「ひらがな」からはじめよう →50音表だと場所で覚えることもある • まずは清音、続いて濁音、半濁音 →促音、拗音は単語や文章の中で教える →「へ」「は」は文字だけだとなかなか難しい • いぬと ねこが あるく →逐字読みから文節読みの練習ひらがなを選んでみよう
• うまく選べたら思い 切りほめよう! • こうなれば「かえる」 は理解している • できたら「かえる」の 声出しも • 絵と文字を一致させ • 「発音」を目指そう • ひらがなカードhttp://rabbit.ciao.jp/hiragana.pdf
言語においても模倣は重要
• 模倣は多くは動作から始まり音声へと広がる →動作をしながらの喃語は言葉の「卵」 • 単音の模倣から2~3文字の模倣へ →意味のある単語の習得へ • 言語においても最初は模倣、明瞭度も低い →ジュース(ジュ)、ちょーだい(ダイ) →か行、さ行の明瞭な発音は遅れる • 模倣言語からコミュニケーション機能としての 言語への転換が必要になるよくわからないけど単語らしい
• そうした音声が出てきた時にすぐにちゃんと 発音させようと言い直しをさせない • 「じょー」と言われたら「ゾウさんだね」と返す • 喃語から様々な音に変化してくるが →自分の世界に入っての音はつながりにくい • 「ちょうだい」が「ちょ」、「ジュース」が「ス」 →これも言葉のはじまり • 言葉はコミュニケーションツールであるASDで考えること
• 幼児のASDへの個別療育 • ADHD合併や高機能自閉症などの幼児期~学童 期の具体的な対応 • 思春期から成人期に向けた自立課題 • 成人移行と就労支援 • 学習障害の合併、特にディスレクシアへの対応 • 選択性緘黙への対応 • 発達性協調運動障害への対応応用行動分析(ABA)は?
• 介入の有効性は証明されている →しかしやり方はさまざま →ABAでありさえすればよいわけではない • ASDひとりひとりが違うのだから →人数分のプログラムは簡単ではない • そもそも地域によって社会資源が異なる →需要と供給のバランス、費用 • ABAはABAとしてより多角的アプローチは? • 介入をしていると時間が過ぎ去るのは早い介入の方向性
• ある程度のASDへの介入の方向性は ABAを始めとしてできつつあるかもしれない • 個別療育はおそらくもっと進歩するだろう →コミュニケーション →生活動作、習慣 →言語、運動 • しかし認知や運動などもっと大きな枠で 考えていく必要がたぶんあるa new toolbox of options for
neurorehabilitation of
disabling brain disorders
脳卒中、脊髄損傷、脳性麻痺から 発達障害へ
Neurorehabilitation: Five new things
• Barret AM, Mooyeon OP et al. Neurol Clin Pract 2013
• 非麻痺側上肢抑制療法(脳卒中)
• 重力負荷トレッドミル(有酸素負荷運動) • 抑制型認知ー言語療法(脳卒中)
• 空間失認へのプリズム眼鏡使用(脳卒中) • 経頭蓋磁気刺激(さまざまな疾患応用)
ASDでの社会性・知能と運動能力
• Craig F, Lorenzo A et al/
Motor competency and social
communication skills in preschool children with autism spectrum disorder.
DCDでの visuo-motor temporal
integrationはASDにも通じる
• Nobusako S, Sakai A, Nakai A et al.
Deficits in Visuo-Motor Temporal Integration Impacts Manual Dexterity in Probable
Developmental Coordination Disorder.
fMRIでASDのRBと視床ー皮質
• Traynor JM, Doyle-Thomas KAR et.al
Indices of repetitive behaviour are correlated with patterns of intrinsic functional
connectivity in youth
with autism spectrum disorder.
自分が第一人者だとは思っていないし
そうなりたいわけではない
訪れてくる方々に今できることや 将来の方向性など、どうやって おみやげを持って帰ってもらうか