1.現状と技術的課題 1.1.現状 ○ 2013 年度東京都が実施した「都民生活に関する世論調査」における治安対策への要望は、2010 年まで7年連続で 1位であり、東日本大震災以降も「防災対策」に次いで、「治安対策」は第 2 位と、依然として強い要望があることが 報告されている。(参考1) ○ 2013年度に警視庁が行ったアンケート結果によると、10年前と比較して、東京都の治安が「良くなった」32.3%、「悪 くなった」30.5%と回答しており、74.3%の人が自分や家族が何らかの犯罪に巻き込まれるかもしれないという不安 を感じている。(参考2) 1.2.テーマ共通の課題 ○ 防犯対策として、防犯カメラシステムや侵入検知センサシステムが用いられるが、課題として以下の点が挙げられ る。 ・犯罪抑止という観点から、防犯設備や機器の存在を効果的に知らしめる。 ・障害となる条件(暗闇、逆光、雪、物陰等)によらず、対象となるエリアの情報を確実に得る。 ・カメラやセンサが取得した情報から、犯罪が起こったり起こりそうな状況であることを自動で判断する。 ・カメラの高画素化や台数の増加に伴い増大する情報量に対し、効率よくデータを処理する。 ・犯罪が起こった場合に、迅速に情報を伝達し人物や行動を検索・抽出する。 ・機器自体の異常や故障を確実に検出し、メンテナンスできる。 ・個人情報保護の観点から、データの取り扱いには適切な配慮が必要である。 ○ 防犯の対象エリアが公共インフラ施設、事務所ビル、都市部繁華街主体であったが、小規模商業施設、集合住宅・ 個人住宅、さらには個人(特に子ども)へと拡大しており、それに伴い新たに以下の点が課題となる。 ・システムのコンパクト化かつ機器設置の簡易化 ・操作方法や維持・管理の簡易化 2.代表的な技術・製品の例示 防犯カメラシステム、画像処理・解析技術、侵入検知システム、出入管理システム等 3.技術・製品開発の動向と課題 3.1.防犯カメラシステム (参考3) 1)概要 防犯対象エリアの画像をカメラで撮影・記録するシステム。アナログカメラシステム、HD-SDIカメラシステム、ネット ワークカメラシステムがあり、犯罪企図者の犯行を抑止し、人々の体感治安を改善する。 防犯カメラシステムの技術開発の特徴として、以下が挙げられる。 ・詳細な画像認識が可能なメガピクセルレベル以上の高画素化が進んでおり、アナログカメラからネットワークカメラ やHD-SDIカメラへの移行が進みつつある。 ・カメラ機能として、夜間でも撮影できるデイナイト機能、逆光でも明部と暗部を再現できるワイドダイナミックレンジ化、 カメラPZT(パンチルトズーム)機能、180 度/360 度の範囲を撮影できる全方位カメラの技術開発が進みつつある。 ・高画素化などに伴うデータ容量の増加と相まって、デジタルレコーダの大容量化が進みつつある。 ・ケーブル配線を必要としない記録一体型や、無線通信機能を内蔵したシステムが製品化されつつある。 機能面での技術開発が進む一方、課題としては以下のようなものが挙げられる。 ・画質と画像サイズ、記録時間、記録コマ数はトレードオフの関係にあり、いかにバランスさせるかが課題である。 ・屋外設置の場合、カメラとレコーダ間のケーブル接続に、給電と併せて配線工事が必要となる。 ・機器の信頼性向上と相まって、異常・故障時の確実な検出とメンテナンスの容易さが必要とされる。 ・個人情報の流出防止のため収集情報(画像)の管理システムや利用者認証基準などが必要になる。
分 野:危機管理分野
テーマ④:防犯対策に関する技術・製品の開発
※ネットワークカメラ:ネットワークを通じて、カメラで撮影した映像を見ることができるビデオカメラの総称。2)代表的な構成図 3)中小企業の技術的参入可能性 様々な環境で防犯カメラシステムの導入が要望されており、多様なニーズにこたえる技術・製品の開発により参入 の可能性が広がる。また、カメラ心臓部では市販されているモジュールの利用も選択肢の一つである。 具体的には、以下のような取組が期待される。 ・コンピュータやWebとの親和性が高まっており、既存のコンピュータ技術を応用した製品開発。例えば、データの解 析や自動バックアップ、スマートフォンの活用等 ・小規模商業施設、集合住宅・個人住宅等、様々な環境への導入ニーズがあり、記録部が一体となった製品のオール インワンタイプ化やコンパクト化、無線による配線不要のデータ伝送等 ・LED照明や警告機能などをカメラと一体化して組込む製品の多機能化 ・データの伝送や処理の負荷低減のため、カメラに演算処理回路を組み込んだ一体型の開発 ・1本のケーブルでデータ伝送と給電を行う低電力化や、太陽光発電・蓄電池を備えた電力供給不要型の開発 3.2.画像処理・解析技術 (参考3) 1)概要 防犯カメラにて撮影された画像を処理・解析し、不鮮明画像の鮮明化、顔認証、侵入検知、不審物検知などを行う技 術。レコーダのソフトウェア機能として提供される場合が一般的であるが、別ユニットとしたり、カメラと一体化してハード 的に処理する場合もある。具体的な処理・解析内容として、以下のものが挙げられる。 ・低画素、低照度、逆光、霧などによる不鮮明な画像を鮮明化する。 ・顔認証など画像から個人を特定する。歩行の様子から個人を特定する歩容認証なども研究されている。 ・画面内に設定したエリアやライン上に人が立ち入ったり通過した場合に検知あるいはカウントする。 ・画像の変化から前後の差分を検出して、不審物の置き引きや置き去りを検知する。 ・画像の中から人を認識して、その行動を解析し、混雑やたむろ、転倒、徘徊などの異常行動を抽出する。 防犯カメラの高性能化に伴って情報量が増大しており、データ処理の効率化および高速化や、動物や車などの外乱 による誤検出や誤警報への対策が課題となっている。 2)代表的な構成図 <モニタ> デジタルレコーダ <カメラユニット部> <記録部> データ伝送/給電 ルータ インターネット <モニタ> スマートフォン等 ① カ メ ラ 撮 影 ② 顔 を 検 出 に よ る 照 合 ③ デ ー タ ベ ー ス ④ 個 人 を 特 定 ③ デー タ ベー ス に よ る 照 合 図表1 代表的な防犯カメラシステムの構成例 図表2 顔認証による個人特定のデータ解析フロー
・処理や解析結果を、PC上やWebを活用してスマートフォン等に表示させる。 3.3.侵入検知システム (参考3) 1)概要 画像センサ、赤外線センサ、レーザーセンサ、マイクロ波センサ、光ファイバセンサ等により対象エリアやラインへの 侵入を検知するシステム。センサシステムは検知範囲が広くコストパフォーマンスに優れており、防犯カメラ・種々のセ ンサを状況に応じて選択して利用する。特徴としては、以下のものが挙げられる。 ・監視カメラによるものを除いて、一般的に照明が不要である。 ・レーザーセンサやマイクロ波センサでは、広範囲や長距離の検知が可能で、検知エリアも柔軟に設定できる。 ・センサから検出対象までの距離を計測したり、センサによっては三次元的な認識や物陰の検知も可能である。 ・フェンスや柵に張り巡らすワイヤータイプのセンサもあり、電流検知や光ファイバ等が用いられる。 鳥や動物による誤検知対策、検知した人物や車の車種の特定などが今後の課題となっている。 2)代表的な構成図 3)中小企業の技術的参入可能性 防犯分野では活用されていないセンシング技術を活用した製品開発が期待できる。振動センサ、圧力センサ、変位 センサ、光ファイバセンサ、傾斜センサ等、工業用として利用されているセンシング技術を応用した中小企業の取組が 可能である。 3.4.出入管理システム (参考3) 1)概要 IC・磁気カード、非接触型 IC カード・タグ、バイオメトリクス(生体認証)により、対象エリアや建物・部屋への出入を管 理するシステム。特徴としては、以下のものがあげられる。 ・ドア/ゲートの解錠システムとの組合せによるセキュリティの確保や、出退勤システムとの連動を図ることができる。 ・挿入式⇒タッチ式⇒近接式⇒携帯式など、認証動作の簡便化が進みつつある。 ・生体認証では、紛失、複製の心配が少なく、“なりすまし”の防止に効果が高い。 ・商品にICタグ等を取り付けることにより、万引き防止や工程管理システムへの技術転用が可能である。 認証カード等の場合、紛失・複製・なりすまし・一回の認証動作で複数が出入する共連れへの対応、地震や火災等に よる停電時の対応が今後の課題として挙げられる。 2)代表的な構成図 図表3 マイクロ波による侵入検知システムの例 図表4 ワイヤータイプ侵入検知システムの例 図表5 ICカードによる出入管理システムの例
3)中小企業の技術的参入可能性 様々な認証方式が既に実用化されているが、より多様なニーズ(門扉ゲート、携帯電話、情報システムへの展開)に 応じたシステムの開発が期待される。具体的には、以下のようなものが挙げられる。 ・視覚・聴覚障害者でも、容易に生体認証を活用した認証動作が行える/認証結果を伝えるシステムなどの開発 ・出入管理のデータと、出退勤管理やアクセス認証、防犯カメラ顔認証などと組み合わせた製品開発 ・既存住宅のホームセキュリティ対策への展開 4.市場動向 公益社団法人日本防災設備協会が実施した「「防犯設備機器」に関する統計調査」によると、製造業(国内)では 2012 年度の国内推定市場規模は約 4,588 億円(前年比 107.2%)と推定されている。 図表6 防犯設備推定市場の推移(出典1) 5.関係する主な法令 ○ 防犯カメラ設置基準 日本弁護士連合会の「監視カメラに対する法規制に関する意見書」によると、不特定多数の人の肖像を、個人識別が 可能な精度で連続して撮影し、録画ないし配信を行う監視カメラに関して、監視カメラの設置・運用のあり方を定めた法 律は存在しない。しかし、警視庁が公表した「警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会 最終とりまとめ (案)」では、防犯カメラの設置基準について以下のように述べられている。 図表7 警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会 最終とりまとめ(案)(抜粋) (出典2) 街頭防犯カメラの設置及び運用に関する基準を作成し、それに従った運用を確保する必要がある。 設置運用基準の内容に関しては、まず、設置運用の許容要件のうち①目的の正当性、②客観的具体的な必要
○ 個人情報保護法 ○ 個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン など 6.参考文献・引用 ○ 参考文献 参考1) 都民生活に関する世論調査(東京都、2013 年 11 月 28 日) http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2013/11/60nbs100.htm 参考2) 平成 25 年度けいしちょう安全安心モニター制度インターネットアンケート(警視庁、2013 年) http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/monita/image/251_result.pdf 参考3) セキュリティナビ 2013(日本実務出版株式会社 2013 年 1 月 10 日) ◯ 引用 出典1) 防犯設備推定市場の推移(公益社団法人日本防犯設備協会、2012 年) http://www.ssaj.or.jp/hanzai_t/gr03.html 出典2) 警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会 最終とりまとめ(案) (警察庁、2011 年3月) http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki8/7th_siryou_2.pdf