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人口減少都市の現状と課題,展望について

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Academic year: 2021

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(1)60. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 山内貴博 Yamauchi Takahiro 京都美術工芸大学. Kyoto Arts and Crafts University. 第二部:活動報告. 人口減少都市の現状と課題,展望について 秋田のデザイン・サーヴェイから京都へ Situation and Issues, Prospects in a Declining Population City: From Design Survey in Akita to Kyoto. 1.はじめに 1.1. 背景と目的. 2006年に「街の雰囲気のちがいとは何か?」という疑問から,場の固有性. の論理を解明することを目的に研究を始めた。当初は,生まれ育った四つの 街及び当時生活していた街を比較調査した。そして,2013年度から研究者と して赴任した秋田を中心に活動し,2019年度から京都に移動して研究を続け ている。 研究の契機となった実務経験について述べる。筆者は大学で建築を志し 1995年に社会へ出て,㈱鴻池組に現場監督として就職した。阪神・淡路大震 災が発生した年で,復興するなか神戸市北区藤原台の集合住宅の現場に常駐 して建物が出来るプロセスを学んだ。その経験の後,設計サイドに移り,建 築の設計は意匠と構造,設備に分かれて設計するが,その全体を理解する目 的で,住宅をロジカルに設計する建築家,難波和彦の下で設計思想を学ん だ。ここで設計した「箱の家」という「一室空間住居」は社会に認知されシ リーズ化する。そして㈱良品計画でそのシステムを商品化することになり開 発を担当した。この経験から,場の固有性に関する研究を始め,ランドス ケープデザインに興味が広がった。2008年から㈱ランドスケープデザインに 勤めながら研究を継続した。当時は,中国の好景気から瀋陽と青島などのプ ロジェクトを担当した。広大な敷地において,単なる外構設計ではなく「都 市や自然の分析」を通して設計する内容である。その頃から「人と都市と自 然のバランス」を考えるようになった。 研究は東京芸術大学大学院で5年間行った。地形と景観の関係にみる場の 固有性や,風景における人間の印象に残る要素の構成から,場の固有性の生 まれる理由を考察した。成果は学位論文『比較風景論』にまとめた。2013年 から研究者として秋田公立美術大学に赴任した。はじめに,秋田駅周辺市街 地を対象地域に設定して「都市緑化の可能性」を探る目的で調査を行った。 この結果,都市の格子状街路に着目して「東西軸を目抜き,南北軸を緑,に 設定する織物を織る様な景観まちづくり(メヌキとミドリ)」のコンセプト を立案した[注1]。また,東北地方の生活は初めてだったので,各地域を 視察した。特に,景観街並みづくり100年運動を掲げ,まちづくりを行って きた山形県北東部にある 「金山町の景観まちづくり」 の取り組みが,30年程 1)山内貴博:街の風景調査および景観デザインスタ. ディー ,秋田公立美術大学研究紀要第2号,87-94, 2015. 経過しており,現状について詳細な現地調査を行った。次に,2015年から岩 手大学で非常勤講師を担当する機会に伴い,盛岡地域の調査と,2016年と.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 2017年は,文化庁受託事業「ローカルメディアと協働するアートマネジメン ト人材育成事業 AKIBI Plus」の担当教員として一般受講生らと男鹿地域の調 査を行った。調査の結果,川の水上・水下の場の固有性に着目した「エネル ギー供給の水系ネットワーク」のコンセプトを立案した[注2] 。そして, 2018年から2020年まで科研の研究分担者として,フィンランドの生態系・地 勢と景観デザインとの関係性,影響について研究している。ところで,景観 学者の樋口忠彦は,日本の景観について棲息地を七つに類型化しており,そ の中に「蔵風得水」という型がある[注3]。この景観の型と,上記実務経 験の中で述べた「一室空間住居」の建築の型が,内部空間と外部空間,又は スケールの大小を超えて同じ空間構成である「同型性」について,これまで の研究から解明した[注4]。 以上の流れの中から,本稿は,人口減少都市における現状と課題につい て,秋田で行ったデザイン・サーヴェイとして「AKIBI Plus」の活動と2014. 年から2019年まで所属した「秋田市エイジフレンドリーシティー行動計画推 進委員会」の二つの活動から論じる。次に展望として「エネルギー供給の水 系ネットワーク」と「メヌキとミドリ」の二つのコンセプトについて述べ る。おわりに,秋田から京都へ移動して行う研究について記す。. 1.2. 研究の方法. 本研究の調査手法は,デザイン・サーヴェイによる。稲次敏郎はデザイ. ン・サーヴェイを以下のように定義している。「デザイン・サーヴェイとは, 直接フィールドに出ることによってデザインの新しい価値と方法を模索する ことであり,コンセプトを構築するために行う。人間の限られた経験による 思考を,フィールドに出ることによってその範囲を拡大し,思考を客体化す ることによってデザイン概念を構築する手法である。また,デザイン・サー ヴェイはデザインワークとしての創作活動の基調となる認識活動としてとら えられる。認識とは,体験,観察,考察であり,創作の原点である。優れた 計画・設計は認識活動による概念形成に結びついていると考えられる。」と 述べている[注5]。一方で,デザイン・サーヴェイの源流には,銀座の路 上を歩く人々の服装,髪型,動作などを調べて,統計と図で記録するといっ た街頭観察を行った,今和次郎,吉田謙吉の「考現学」が挙げられる[注 6]。1965年にはアメリカのオレゴン大学が金沢の幸町を調査しており,伊 藤ていじが調整役を行い,調査報告が『国際建築』1966年11月号に掲載さ れ,デザイン・サーヴェイという用語が初めて使われた。この流れは1970年 代から1980年代にかけて,当時の建築界で,法政大学や東京芸術大学など多 くの大学を巻き込んだ動向となる。調査の目的は,①客観的な記録を目的と するものと,②対象地域の空間や生活の相互関係や構造の分析を目的とす る,二つに分けられる。1972年には,住まいの中やコミュニティを研究する 「生活学会」が川添登を理事長として発足した。1986年には藤森照信,赤瀬 2)山内貴博:景観物語∼東北の景観調査およびエネル. ギー供給の水系ネットワークに関する考察∼ ,秋田公 立美術大学研究紀要第5号,27-38,2018. 3)樋口忠彦:景観の構造 ,技報堂出版,114-127,1975. 4)山内貴博:景観デザインのありやうの展開に向けて , 秋田公立美術大学研究紀要第6号,3-12,2019. 5)稲次敏郎:庭園と住居の<ありやう>と<見せかた・. 見えかた> ,山海堂,170-171,1990. 6)今和次郎,吉田謙吉:モデルノロヂオ(考現学),春 陽堂,1930. 川源平らが,体系だった調査法ではなく観察者の主観を前面に出した「路上 観察学会」を発足している。以上のように,デザイン・サーヴェイは,調査 主体の立場,目的などにより多様であるのが特徴である。本研究は、上記の ②に重点を置きながら,稲次が述べているコンセプトを構築するために行 う。. 61.

(3) 62. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 2.人口減少における現状と課題 2.1. 秋田のデザイン・サーヴェイ 2.1.1. AKIBI plus. 文化庁受託の大学を活用した文化芸術推進事業「ローカルメディアと協働. する,アートマネジメント人材育成事業 AKIBI plus」の担当教員として, 2016と2017年,男鹿地域の調査を行った。このプロジェクトは,地域に芸術. を理解するアートマネジメント人材を育成することを目的に,男鹿や横手な 図1 男鹿地域のフィールドワーク. ど秋田県内にある幾つかの地域を芸術価値創造拠点として設定し,各拠点 個々に進行しつつ連携しながら進められた。どの地域にも共通する課題とし て 「空き家」 が挙げられ,人口流出による過疎化,伝統文化の衰退など,現 代文明のマイナス面が 「空き家」 に象徴されているように思われた。筆者の 担当した男鹿では,芸術の力で果たして何ができるのか,原点に返って地域 そのものを「知る」ことに焦点が絞られた。豊かな自然に抱かれ,人々が手 を携えて紡ぎ出した伝統文化,かつての男鹿には「日本の原風景」が確かに あったはずで,自然に根ざした生活文化は今でも決して滅びていないはずで ある。そのような仮説を基に「ショートレジデンスプログラム」を企画する プロジェクトが立ち上がった。土地の風土は複雑で,外からはなかなか見え てこないものがたくさんある。ならば移住できないにしても一定期間住み込 んで,自然や文化を実地に学びながら,地域に溶け込んだ生活を体験してみ る,そんな活動ができるプログラムを考案しようという内容である。つまり, 地域社会の理解者を一人でも多く増やすこと,まずはここからスタートして みようという試みである。自然,民族,歴史,信仰。男鹿のフィールドワー クを通して,実際に見えてくるものとは何か。現地コーディネーターと相談 してテーマを決め,計七回のフィールドワークを行った。各フィールドワー (2016/ クが一つのレジデンスプログラムになることを想定している。STEP ①. 7/7実施)は,寒風山∼瀧の頭水源地∼岩清水∼宗泉寺∼宝光院∼青竜様∼. 足手荒神∼東湖八坂神社 「統人行事」、STEP ②(2016/7/16実施)は,里山. のカフェににぎ∼塞ノ神/耳どっこ∼真山集落∼万体仏∼真山神社,STEP. ③(2016/8/4実施)は,星辻神社∼男鹿温泉郷/鬼の隠れ道∼入道崎∼元湯. 雄山閣,STEP ④(2016/9/11実 施 )は,嶺 徳院,STEP ⑤(2016/11/3実 施 ). は,男鹿温泉旅館ゆもと,STEP ⑥(2017/7/22、23実施)は,一日目が赤上 神社(長楽寺)∼不動滝・白糸の滝・舞台島∼里山のカフェににぎ宿泊,二. 日目が加茂青砂地区∼戸賀湾∼八望台,STEP ⑦(2017/10/21実施)は,前. 年度と受講生が入れ替わったこともあり,STEP ②と同じ内容である(図1) 。 この中で特に,STEP ④は,嶺徳院(男鹿市船川港船川鳥屋場86大龍寺の. 隣のお寺)で「空き家活用方法<空き家と神様・仏様>」と題したシンポジ ウムを行い,様々な立場の方に「空き家」について,話を伺うことができ た。そこで見えた現状と課題は二つある。ひとつは,空き家対策には,行政 が行うトップダウン的な方法と,地域住民が活動するボトムアップ的な方法 の,二つに分けられ,現状は接点がない為,連携することが課題となってい る。地域住民が自主的に行う地域おこしにも,行政が投入する空き家対策や 移住促進の事業費が届く必要があり,地域おこし協力隊の仕組みが試されて. いる。二つ目は,シンポジウムの登壇者で男鹿市船川 大龍寺 住職の三浦賢 翁氏が「お寺は,檀家制度によって地域の人達が,今何処で何をしているの か良く知っている<情報面>と,お堂が人々の集まりやすい場所であるとい う<空間面>から,お寺が,トップダウンとボトムアップの中間を担うのに.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 有効である。」と話されていた点である。例えば,空き家に仏壇が残ってい る場合に,持ち主の連絡先が分からず仏様が動かせないケースがあるが,お 寺では行方が分かるので,話がスムーズに進むというのである。<空間面> では,大龍寺では演奏会等のイベントが実際に開催され,お寺に地域住民を 集める取組みが行われている。. 2.1.1. 秋田市エイジフレンドリーシティ行動計画. エイジフレンドリーシティ(以下 AFC と略す)とは「高齢者にやさしい. 都市」という意味で,世界的な高齢化・都市化・都市の高齢化に対応するた めに,2007年、世界保健機関(以下 WHO と略す)のプロジェクトにおいて. 提唱された[注7]。WHO では,8つのトピックを設定して,その中に84. のチェックリストを作成し,都市の検証ツールとして活用することを推奨し. ている。8つのトピックとは,1.屋外スペースと建物,2.交通機関, 図2 展覧会のカタログ表紙. 3.住居,4.社会参加,5.尊敬と社会的包摂,6.市民参加と雇用, 7.コミュニケーションと情報,8.地域社会の支援と保健サービスであ る。また,WHO は,各都市との連携を図ることを目的に,2010年に AFC. グローバルネットワークを設立した。参加都市は,1.計画段階,2.実施 段階,3.評価段階を5年サイクルで進め,AFC の継続的な改善を図って. いく必要がある。秋田市は2011年に AFC グローバルネットワークに参加し. た,日本国内で初めての自治体である。. 筆者は,秋田市 AFC 行動計画推進委員会に,2014年から2019年まで所属. したが,そこで見えた現状と課題は二つある。ひとつは,現役を引退した後 も,仮に介護が必要になるまで,社会参加の仕組みが必要であるという点 で,つまり,その期間も働くことは可能か,という課題である。現状は,町 内会や生涯学習への参加を勧めており,一方で,商店や地元企業の AFC パー トナー登録制度や展覧会等によって,AFC の取り組みを市民へ周知する活 動が行われている(図2)。徐々に社会は,生涯現役社会に移行していくの. だろうが、慣れ親しんだ会社を退職して,いきなり別の場所で社会参加する (働く)のは難しいように思う。そこで考えられる二つ目の課題は,例えば, 退職してからも同じ職場に通えて集まれる居場所,拠点は作れないか,とい う課題である。通い慣れた職場であれば,体もスムーズに動くはずなので, その場所を移行期間として担保できる。そこから新たな社会参加へ移行して いく仕組みは考えられないだろうか。. 2.2. 展望について 2.2.1. エネルギー供給の水系ネットワーク. 秋田で生活していると,かつて土崎港には北前船が寄港しており,その海. 運ネットワークの歴史を,現代に顕在化したいと考えている人達がいること が分かった[注8]。そのとき,当時の海運ネットワークを歴史的遺産とし て捉えるだけではなく,未来に活きるネットワークとして,新たな強いコン 7)秋田市:秋田市エイジフレンドリーシティ行動計画,. https://www.city.akita.lg.jp/shisei/hoshin-keikaku/. セプトが必要ではないか,と感じた。一方で,土木工学の竹村公太郎は,未 来を乗り切るために必要な社会基盤インフラと,ソフトな社会制度につい. 1011481/1004689/1011643/1005205.html. て,ソフトとハードを提言している[注9]。未来を乗り切るために必要な. が紡いだ異空間∼北前船寄港地・船主集落∼,https://. 社会基盤に関しては「1.狂暴な気象変動の中での<安全>インフラ,2.. 8)北前船日本遺産推進協議会:荒波を超えた男たちの夢. www.kitamae-bune.co. 世界的食料不足の中での<食糧自給>インフラ,3.各地が連携し,日本列. 民族篇】,PHP 文庫,406-413,2014. 島が有機体として生きて行く<交流ネットワーク>インフラ,4.究極のク. 9)竹村公太郎:日本史の謎は「地形」で解ける【環境・. 63.

(5) 64. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. リーンエネルギー<水素燃料>インフラと,それを支える<水力>インフ ラ,5.物質資源の枯渇に対する<循環社会>インフラと<新素材>の開 発。」そして,人口減少に備えたソフトな社会制度も必要になると述べ「6. <エイジフリー(高齢者参加)>と<ジェンダーフリー(女性参加)>の社 会制度,7.ロボットが社会の基盤分野を受け持ち,人が人へのサービス分 野を受け持つ社会。」が,人口減少を支えるソフトな社会制度であると結論 づけている。この竹村の提言の中で特に,3.各地が連携し,日本列島が有 図3 江戸期の海運航路のネットワーク. 機体として生きて行く<交流ネットワーク>インフラ,そして4.究極のク リーンエネルギー<水素燃料>インフラと,それを支える<水力>インフ ラ,に着目した。竹村は既存のダムを嵩上げするだけで,新規に作らなくて も水力はまかなえると述べている。日本は背骨のように脊梁山脈が通ってお り,そこを分水界として、国土全体を川が流れている。そして川下には,上 述の海運寄港地が位置しているのである。この川上に,竹村の述べるクリー ンエネルギー製造の,水力インフラを整備すると仮定すれば「エネルギー供 給の水系ネットワーク」が,川下の海運航路のネットワークを強化するかた ちで,新しいコンセプトをつくることが出来る(図3∼5)。竹村の提言は 「電気を貯める,そして使う」という仕組みの提言であり,各都市で現在行. 図4 分水嶺と水系. われているスマート化の流れを加速する内容である。「エネルギー供給の水 系ネットワーク」を仮に実装した場合,交通や建物,都市のインフラの仕組 みが変わる為,それに伴い街の景観も変わるはずである。特にその根幹を担 う川の存在は,これまでの街と川の関係よりも,もっと親密になると考えら れる。そこで「エネルギー供給の水系ネットワーク」を実装した場合の街の 姿を創造し,新しいウォーターフロントの有り様を探ることが,今後の展望 である。. 図5 エネルギー供給の水系ネットワーク. 2.2.2. メヌキとミドリ. 秋田駅周辺市街地を対象地域に設定して「都市緑化の可能性」を探る目的. で調査を行った。この結果,都市の格子状街路に着目して「東西軸を目抜 き,南北軸を緑,に設定する織物を織る様な景観まちづくり(メヌキとミド リ)」のコンセプトを立案した(図6)。例えば,秋田駅前から中心市街地へ のびる3本のメヌキは,歩行者に比重を置く軸,車両交通に比重を置く軸, 歩行者と車両の両方に配慮する軸,という様に景観軸を明確化する。また, メヌキの先には日本海に沈む夕日がきれいに見える。特に,駅を降りて改札 を抜けると,モールが東西に通っている。このモールをメヌキと位置付ける ことによって,駅から離れた場所にある竿灯大通で,夏に行われる竿灯祭の 灯が,駅前からも見通せる「特別な視点場」の整備が可能になる。すなわ ち,一般的なモール景観が,固有な目抜き通りに変わるのである。一方,南 北軸はミドリと位置付けることによって,市街地の南側を流れる太平川沿い の緑地と,市街地の北側にある千秋公園や八橋運動公園の緑地を源に,南北 を並木等で繋ぐグリーンネットワークが可能になる。市街地周辺に昔からあ る緑地にポテンシャルを見出し,その力を借りて,緑地の乏しい中心市街地 に緑を引き込めないかと考えた。以上「メヌキとミドリ」とは,市街地を横 にはしる目抜きの軸「メヌキ」と、縦にのびる緑の軸「ミドリ」を横糸と縦 糸に見立て,織物のように交錯させることによって,人々の記憶に残る美し い街の風景を創出するためのコンセプトである。次に「メヌキとミドリ」の 図6 メヌキ(横線)とミドリ(縦線). システムを秋田駅西口の駅前空間に展開した場合の設計案を作成した(図.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 7)。ここでは,駅前の屋外駐車場が広場に変わるケーススタディとして, 学生と設計演習に取り組んだ。設計演習では,技術アドバイスを㈱ランドス ケープデザインに依頼することで,設計案を実現可能なレベルに集約した。 この設計案が契機となり,JR 東日本秋田支社と秋田市によって,広場の整. 備が実現することになった。そして2018年は,JR 東日本秋田支社から「秋. 田駅西口広場整備に伴う調査研究事業」を受託して,研究と設計を進めた。 広場は2020年8月に完成した。ここで見えた課題は,検討委員会を通して, 送迎車や竿灯まつりの練習スペースの確保が優先され,その結果,コンセプ トは消え去り普通の広場になってしまう点である。「メヌキとミドリ」とい う街全体に関するコンセプトの共有と,そのコンセプトに基づいた部分,つ まり駅前広場への展開という仕組みが重要であり,このシステムによって, 街に有機的な関係性が生まれ,美しい街並みが形成されると思われる。この 課題に基づいて「メヌキとミドリ」のアイディアを深化させることが,今後 の展望である。. 3.京都で行うデザイン・サーヴェイ 2019年から研究機関を京都美術工芸大学に移動した。京都市では,都市再 生,環境モデル都市など未来に向けた取組みが行われ,また,平安建都1200 年を契機に「京の川づくり」の一環として鴨川東岸三条∼七条間に「花の回 廊」などが整備されている。しかし,実際に日常を過ごし自転車通勤しなが ら感じることは,街並みが多少オーバースケールな印象である。鴨川沿いな ど気持ち良いのだが,自転車をこいでいて息切れすることも多く,ヒューマ ンスケールな街並みをデザインする余地があると感じる。また,特に大通 は,排気ガスの匂いが強く,その点からも,都市をもっと緑化する必要があ るように思う。一方,祇園祭りでは,巡行ルートを辿りながら,大通りや商 店街,路地を視察した。そして改めて,街を巡りながら「格子状街路」に意 識が向かった。南北に流れる鴨川の土手や東西方向の街路から,西側の夕焼 けや,夕日を浴びる東山が,きれいに見える。「メヌキとミドリ」は,秋田 では東西軸と南北軸それぞれ一様に想定していた。しかし,京都ではエリア によって変化,織り交ぜる方が自然であるように思われてきた。東西軸でも 図7 設計案(上:平面図,下:アイソメ図). ミドリの方を優先する街路,南北軸でもメヌキの方が相応しい街路という様 に,その混ざり具合によって,場の固有性が顕在化されると予想される。す なわち,同じ街路でも立つ位置によって「メヌキとミドリ」が見え隠れし て,多様性が生まれる。上記背景のもと,京都市中心市街地を対象に,格子 状街路を一本一本紐解いたデザイン・サーヴェイを行う。調査結果の分析か ら各街路の「メヌキとミドリ」を位置づけながら,実装した場合のイメージ プランを作成する。京都におけるケーススタディを通して,格子割の都市に おける「メヌキとミドリ」のコンセプトを実証する予定である。. 65.

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