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運動療法の2型糖尿病に対する効果とそのメカニズム

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 769 ~ 770運動療法の 頁(2015 年) 2 型糖尿病に対する効果とそのメカニズム. 769. 分科学会シンポジウム 2(日本糖尿病理学療法学会). 運動療法の 2 型糖尿病に対する効果とそのメカニズム* 小 川 渉**. 究も多く報告されている。DaQing IGT・糖尿病研究は,2 型. はじめに. 糖尿病の発症抑制のパイオニア的介入研究であり,577 名の. 身体運動の低下は 2 型糖尿病の発症要因のひとつであり,運. IGT(impaired glucose tolerance)を非介入群,食事療法群,. 動療法は 2 型糖尿病のもっとも基本的かつ重要な治療法であ. 運動療法群に割り付け 6 年間の糖尿病発症率を検討した 4)。そ. る。身体活動や運動により,2 型糖尿病の発症予防,血糖コン. の結果,非介入群では観察期間中に 67.7%が糖尿病に進展し. トロールの改善,合併症の抑制など,様々な好ましい効果が得. たが,食事療法群では糖尿病の発症が 31%,運動療法群では. 1). 。また,身体. 46%抑制された 3)。米国で行われた糖尿病予防研究(Diabetes. 活動や運動がどのようなメカニズムで代謝改善効果をもたらす. Prevention Program:DPP)では,IGT または IFG(impaired. かについても知見が集積しつつある。本稿では,運動療法の 2. fasting glycemia)3,234 人を,非介入群,経口糖尿病薬である. 型糖尿病に対する効果とそのメカニズムについて概説する。. メトホルミンを投与する群,および生活習慣強化介入群に割り. られることについては多くのエビデンスがある. 付け,糖尿病発症率を比較した. 身体運動の低下と 2 型糖尿病の発症. 5). 。メトホルミン投与群には一. 般的な運動・食事に対する知識が与えられただけであったが,. 2 型糖尿病は先天的・体質的要因と二次的・環境的要因が相. 生活習慣強化介入群では食事指導を行うとともに,週あたり. まって発症する。近年のゲノム解析の進歩により,2 型糖尿病. 150 分の速足の歩行程度の軽い運動を指示し,7%の減量を目. の先天的・体質的要因にかかわる遺伝子が数多く同定され,現. 標とした。平均 2.8 年間の観察期間の糖尿病発症率は非介入群. 在,50 を超える遺伝子が 2 型糖尿病の発症にかかわることが. で 100 人・年あたり 11.1 人であったものが,メトホルミン群. 明らかとなっている。. では 7.8 人,生活習慣強化改善群では 4.8 人に低下し,メトホ. 一方,身体活動の低下は,肥満や加齢,食事組成などととも. ルミン群,生活習慣強化改善群の糖尿病発症抑制率は,それぞ. に,2 型糖尿病の発症にかかわる重要な二次的・環境的要因で. れ 31%,58%であった。. ある。ペンシルバニア大学の卒業生を対象とした疫学研究では. このような運動療法のもつ糖尿病発症抑制効果の一部は体重. 運動の習慣がない対象に比べ,軽度の運動,強度の運動,軽度. 減少によるものと考えられるが,定期的な軽度の運動の習慣. および強度の両方の運動習慣をもつ対象の糖尿病発症の相対危. が,BMI の変化を調整した後も糖尿病発症率を低下させるこ. 2). 6). 険度は,それぞれ,0.90,0.69,0.65 に低下していたという 。. とも報告されており. また,階段を日に 5 階分未満しか昇らない習慣の対象に比べ,. 症抑制効果をもつと考えられている。. 5 ~ 14 階分,15 階分上る習慣をもつ対象の糖尿病発症の相対 危険度は,それぞれ,0.78,0.75 に低下していた 2)。この研究. ,運動は体重減少とは独立して糖尿病発. 運動による血糖コントロールの改善. ではエネルギー消費が 500  kcal 増加する毎に糖尿病率が 6%低. 運動による血糖コントロールの改善効果についても多くの. 下すると報告されている 2)。また,看護師を対象とした糖尿病. 研究が行われている。8 週間以上運動介入を行った 14 の研究. 発症要因に関する疫学調査でも,運動強度にかかわらず,余暇. のメタ解析の結果では,HbA1c は非介入群の 8.31%に対して,. 運動時間が多い程,2 型糖尿病の発症が低下することが示され. 運動介入群では 7.65%であり,運動介入により HbA1c は 0.66%. ている. 3). 。. 運動による 2 型糖尿病の発症予防. 低下すると報告されている 7)。運動の種類や質についても検討 がなされており,26 の無作為割り付け対照試験(解析対象者 2,253 名)のメタ解析では,運動頻度および運動強度と HbA1c. このような観察研究のみならず,運動療法や運動療法を含. 低下率を検討した結果,週あたりの運動頻度が増加するにした. んだ生活介入による 2 型糖尿病の発症抑制を検討した介入研. がって HbA1c は有意に低下するが,運動強度は HbA1c の低. *. Beneficial Effects of Exercise Therapy on Type 2 Diabetes Mellitus and the Underlying Mechanism ** 神戸大学大学院医学研究科内科学講座糖尿病・内分泌内科学部門 (〒 657–0011 兵庫県神戸市中央区楠町 7–5–1) Wataru Ogawa, MD: Division of Diabetes and Endocrinology, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine キーワード:運動療法,2 型糖尿病,インスリン抵抗性. 下率に有意な影響を与えないと報告されている 8)。運動介入と しては有酸素運動の効果を検討したものが多いが,レジスタン ス運動にも一定の血糖コントロール改善作用があること,また 有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせも有効であること が示されている 9)10)。.

(2) 770. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 間質の血管が増加することも知られており,血管増加もインス. 運動の多面的効果と合併症予防効果. リンによる糖取りこみ効果の増強に関与する可能性がある。. 2 型糖尿病患者に対する運動療法は血糖コントロールの改善. トレーニングによる骨格筋の形質転換は遺伝子発現変化. のみならず,様々な多面的な効果ももたらす。様々なタイプ・. に よ っ て 生 じ る と 考 え ら れ て い る。PPARγ coactivator-1α. 強度の運動が 2 型糖尿病患者で血清 LDL コレステロールの低. (PGC-1α )は様々な代謝関連遺伝子の発現制御にかかわる転写. 下,血清 HDL コレステロールの上昇,血清トリグリセリドの. コアクチベーターであるが,運動によって骨格筋で発現が増加. 低下など脂質プロファイルを改善すること. 1)11)12). ,また 2 型. 糖尿病患者に対する有酸素運動,あるいはレジスタンス運動に より血圧低下が生じることなどが報告されている 1)12)。 運動や身体活動の増加は,動脈硬化性疾患の発症率も低下さ せる。我が国の 2 型糖尿病患者の合併症に関する疫学調査であ る Japan Diabetes Complication Study(JDCS)では,2 型糖 尿病患者を余暇時間の運動量によって 3 分割した群別の検討 で,もっとも運動量の多い群はもっとも運動量の少ない群に比 べ,平均 8.5 年の観察期間中の脳卒中の発症率が 45%低く,総 死亡率も 51%低かったという 13)。17 の研究のメタ解析では, 1 日あたり METS・時活動が増加すると心血管疾患の発症率が 7.9%,総死亡率が 9.5%減少するとされる 14)。 2 型糖尿病患者の療養においては自己療養意欲の向上が重要 であり,生活の質や心理面の改善は,療養意欲の向上に寄与す る。2 型糖尿病患者に対する運動療法は,生活の質や心理面に もよい効果をもたらすことが報告されている 15)。. 運動による血糖コントロール改善のメカニズム 運動による血糖コントロール改善効果は,短期的作用とし て運動による血糖低下作用と,長期的作用としてのインスリ ン抵抗性改善作用によってもたらされる。短期的作用として の血糖低下作用は骨格筋の糖取りこみの増強による。骨格 筋 細 胞 に は 4 型 糖 輸 送 担 体(glucose transporter 4: 以 下, GLUT4)が発現しており,運動による骨格筋の糖取りこみの 増強は,インスリンによる糖取りこみと同様に,GLUT4 が細 胞内から細胞膜に移行することによって生じる 16)。運動によ る糖取りこみの活性化には筋収縮によって惹起されるシグナル が寄与すると考えられており,そのメカニズムの少なくとも 一部に(5’-adenosine monophosphate:アデノシン 1 リン酸) -activated protein kinase(AMPK)が関与する 16)。 長期的作用としてのインスリン抵抗性の改善は,部分的には 肥満の解消によって生じるが,運動は肥満の解消とは独立した 機構によりインスリン抵抗性改善効果を発揮する。この効果に はトレーニングに伴う骨格筋の形質転換が関与すると考えられ ている。骨格筋はミオシン重鎖(myosin heavy chain:以下, MHC)の発現比率によって速筋と遅筋に大別される速筋には Ⅱ型 MHC が優勢に発現し,代謝はより大きく解糖に依存し, 遅筋はⅠ型 MHC の発現が多く,GLUT4 の発現量やミトコン ドリア量も豊富であり,エネルギー代謝は酸化的リン酸化によ り強く依存する. 17). 。トレーニングは一般的にⅠ型 MHC/ Ⅱ型. MHC 比率を増加させ,好気的な酸化的リン酸化を司る遅筋を 増加させる。速筋に比べて遅筋の方が単位重量あたりのインス リンによる糖取りこみ能が高いことが知られており 17),この ような骨格筋の形質変換が運動によるインスリン感受性の増強 に関与すると考えられる。また,トレーニングによって骨格筋. することが知られており,トレーニングによる骨格筋の形質転 換を制御する因子のひとつと考えられている 16)17)。. 文 献 1) Colberg SR, Sigal RJ, et al.: Exercise and type 2 diabetes: the American College of Sports Medicine and the American Diabetes Association: joint position statement. Diabetes Care. 2010; 33: e147–e167. 2) Helmrich SP, Ragland DR, et al.: Physical activity and reduced occurrence of non-insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med. 1991; 325: 147–152. 3) Hu FB, Sigal RJ, et al.: Walking compared with vigorous physical activity and risk of type 2 diabetes in women: a prospective study. JAMA. 1999; 282: 1433–1439. 4) Pan XR, Li GW, et al.: Effects of diet and exercise in preventing NIDDM in people with impaired glucose tolerance. The Da Qing IGT and Diabetes Study. Diabetes Care. 1997; 20: 537–544. 5) Knowler WC, Barrett-Connor E, et al.: Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002; 346: 393–403. 6) Jeon CY, Lokken RP, et al.: Physical activity of moderate intensity and risk of type 2 diabetes: a systematic review. Diabetes Care. 2007; 30: 744–752. 7) Boulé NG, Haddad E, et al.: Effects of exercise on glycemic control and body mass in type 2 diabetes mellitus: a meta-analysis of controlled clinical trials. JAMA. 2001; 286: 1218–1227. 8) Umpierre D, Ribeiro PA, et al.: Volume of supervised exercise training impacts glycaemic control in patients with type 2 diabetes: a systematic review with meta-regression analysis. Diabetologia. 2013; 56: 242–521. 9) Church TS, Blair SN, et al.: Effects of aerobic and resistance training on hemoglobin A1c levels in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA. 2010; 304: 2253– 2262. 10) Umpierre D, Ribeiro PA, et al.: Physical activity advice only or structured exercise training and association with HbA1c levels in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2011; 305: 1790–1709. 11) Kelley GA, Kelley KS: Effects of aerobic exercise on lipids and lipoproteins in adults with type 2 diabetes: a meta-analysis of randomized-controlled trials. Public Health. 2007; 121: 643–655. 12) Balducci S, Zanuso S, et al.: Effect of an intensive exercise intervention strategy on modifiable cardiovascular risk factors in subjects with type 2 diabetes mellitus: a randomized controlled trial: the Italian Diabetes and Exercise Study (IDES). Arch Intern Med. 2010; 170: 1794–1803. 13) Sone H, Tanaka S, et al.: Leisure-time physical activity is a significant predictor of stroke and total mortality in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis from the Japan Diabetes Complications Study (JDCS). Diabetologia. 2013; 56: 1021–1030. 14) Kodama S, Tanaka S, et al.: Association between physical activity and risk of all-cause mortality and cardiovascular disease in patients with diabetes: a meta-analysis. Diabetes Care. 2013; 36: 471–479. 15) Nicolucci A, Balducci S, et al.: Improvement of quality of life with supervised exercise training in subjects with type 2 diabetes mellitus. Arch Intern Med. 2011; 171: 1951–1953. 16) 小川 渉:運動療法の分子基盤,糖尿病学イラストレイテッド. 春日雅人(編),羊土社,東京,2012,pp. 141–149. 17) Bassel-Duby R, Olson EN: Signaling pathways in skeletal muscle remodeling. Annu Rev Biochem. 2006; 75: 19–37..

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