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自他尊重の心を育むアサーション・プログラムの開発(2)―中学生への群間比較におけるプログラム効果―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-58 236

-自他尊重の心を育むアサーション・プログラムの開発( 2 )

―中学生への群間比較におけるプログラム効果―

○松尾 理沙1)、竹田 伸也2)、大塚 美菜子3) 1 )沖縄大学人文学部こども文化学科、 2 )鳥取大学大学院医学系研究科、 3 )兵庫県こころのケアセンター 【問題と目的】 これまでの研究により、適切に自己主張ができるこ とで、ストレス反応を低減させることが報告されてい る(内山,1988;扇子ら,2001)。中学生などにおいて は、特に女子は評価懸念も高く、主張ができないこと によって怒り感情をため込むことも報告されている (奥野・小林,2007)。評価懸念には、個人の認知の歪 みによる非機能的思考も多く、さらにネガティブな気 分を強めてしまい、適切な自己主張ができなくなって しまうことがある。本研究では,自他尊重の心を育 み,非機能的思考にも対応したアサーション・プログ ラムを開発し,中学校担任教師がクラスで実践するこ とによる効果を介入群と統制群の 2 群に分けて実施前 と実施後において検討した。 【方法】 1 . 対象者 対象は,鳥取県の公立中学校 1 学年 3 クラス80名 (男子41名、女子37名、未記入 2 名、年齢12.85±0.36 歳)であった。統制群:プログラム実施 1 カ月前に実 施前の評価を行い、その後通常の授業を50分行った後 に実施後の評価を行った。介入群:プログラム実施前 と50分の本プログラムを実施後に評価を行った。統制 群と介入群それぞれ 1 カ月後にフォローアップとして 評価を行った。本プログラムを用いた授業は,担任教 師が実施した。プログラムおよび評価は,2018年 1 月 から 3 月に実施した。 2 . プログラムの内容と手続き プログラムは,50分 1 セッションの授業によって完 結し,担任が指導できるようにパワーポイントを用い て構造化し、研究( 1 )と同様であった。 3 . 評価指標 プログラムの効果を,「影響評価」と「結果評価」 の 2 側面から評価した。いずれの評価も研究( 1 )と 同様であった。 4 .倫理的配慮 本研究は,沖縄大学研究倫理審査委員会の承認を得 て実施した(承認番号:2017-01)。 【結果】 評価時点を独立変数,評価指標を従属変数として, 2 (群:介入群、統制群)× 2 (時期:授業前、授業 後)の二要因の分散分析を実施した(表 1 )。 その結果,子どものストレス反応CSRの合計点数(F [1,156]=26.0,p <0.01)、CSR易怒(F [1,156]= 7.89,p <0.01)、CSR無気力(F [1,156]=18.03,p <0.01))、CSR抑うつ・身体反応(F [1,156]=9.23, p <0.01)が評価時点の主効果が有意であった。質問 1 (F [1,156]=8.01,p <0.01)、質問 2 (F [1,156] =11.22,p <0.01)、質問 3 (F [1,156]=6.19,p < 0.05)、質問 4 (F [1,156]=5.26,p <0.05)、質問 5 (F [1,156]=5.56,p <0.05)が評価指標の主効 果が有意であり、質問 1 (F [1,156]=9.41,p < 0.01)、質問 2 (F [1,156]=3.35,p <0.10)、質問 3 (F [1,156]=8.46,p <0.01)、質問 5 (F [1,156] =11.18,p <0.01)で交互作用がみられた。 次に、性差による変化の違いを検討するために、 2 (群:介入群男子、介入群女子、統制群男子、統制群 女子)× 2 (時期:授業前、授業後)の二要因の分散 分析を実施した。 そ の 結 果、 子 ど も の ス ト レ ス 反 応CSR無 気 力(F [1,139]=2.90,p <0.10)が評価時点での主効果が 有 意 で あ っ た。 子 ど も の ス ト レ ス 反 応CSR易 怒(F [3,139]=2.63,p <0.10)、CSR抑うつ・身体反応(F [3,139]=3.37,p <0.05)、質問 1 (F [3,139]= 3.97,p <0.01)、 質 問 2 (F [3,139] =7.22,p < 0.01)、質問 3 (F [3,139]=7.40,p <0.01)、質問 4(F [3,139]=12.92,p <0.01)、質問 5(F [3,139] =9.80,p <0.01)が評価指標の主効果が有意であっ た。多重比較を行ったところ,CSRの抑うつ・身体反 応では、介入群の女子が統制群の男子と比べ得点が有 意に高かった。質問 1 では介入群の女子が、統制群の 女子と比べ得点が有意に高く、質問 2 では、介入群の 女子が、統制群の男子と介入群の男子と比べて得点が 有意に高かった。質問 3 では、介入群の女子が統制群 の男子に比べて有位に高かった。質問 4 と 5 では、介 入群の女子が他に比べて有意に高かった。 【考察】 プログラムによって,介入群のストレス反応の顕著 な変化は認められなかった。一方、影響評価であるア サーティブな表現を用いる効力感(質問 1 )や自他尊 重をしながら言いたいことを相手に伝える効力感(質 問 2 )相手が何か嫌なことをしたら相手の気持ちを聞

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-58 237 -く効力感(質問 3 )と相手が何か嫌なことをしたらそ うする理由があるかもと思う効力感(質問 4 )攻撃的 表現や非主張的表現を用いた際にそうなる理由を心の 中でふり返る効力感(質問 5 )において、プログラム の実施後に高まっており、本プログラムの自分や他者 を尊重しながらアサーティブな表現スキルを高める効 果はあると考えられる。また、性差の違いについて は、介入群の男子において、質問 4 と質問 5 で実施前 より実施後に顕著に高くなっていた。このことから、 相手から何か嫌なことをされたりしたときに、一度、 相手の立場を推測したりするために立ち止まることの 意識付けができてきていることが窺えた。相手から嫌 なことを言われたときに、感じるネガティブな気分を そのまま相手にぶつけるのではなく、一旦相手の状況 を理解しようと捉えようと変化している。自由記述に よる質問で「傷つくようなことを他者から言われたと き何と言うか」という質問に対しても介入群の授業前 の男子では、何も言わない、「そんなこと言わんで」 など非主張的、攻撃的な回答が多くみられたが、授業 後では、「何かあった?」「ぼく何かした?」など相手 の状況や自分の行動を振り返る発言が多くみられてい ることからも分かる。自己主張をすることは怒りの低 減につながることを平木(1993)や奥野・小林(2007) が述べていること。他者とのコミュニケーションの中 で、感じる怒りなどのネガティブな感情を自分の中で 気づき、対処する方法を身に付けることで、怒りなど のストレス反応を和らげることもできるのではないだ ろうか。そのため、本研究におけるストレス反応の変 化は実施前後での変化はみられなかったのではないか と推測される。本研究は、実施後、しばらく経った時 にプログラムの効果測定のためのフォローアップを 行っていないため、実際の生活場面におけるアサー ティブな表現の実践の結果やアサーティブな表現を意 識が維持していたかまたはプログラムの効果は維持し ていたかなどは検討ができていない。内山(1988)は、 主張反応はストレス反応を低減することを指摘してい ることからも、アサーティブな表現をスキルとして会 得することによって、ストレス反応への影響が現れる のではないだろうか。今後、実施後しばらく経った後 の評価を測定し再度、プログラムの効果と維持につい て検討を行う必要がある。

参照

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