■昭和南海地震について
今年は、1946年(昭和21年)12月21日04時19分に昭和南海地震が発生
してから70年が経過する年にあたります。
昭和南海地震(M8.0)は、和歌山県潮岬沖を震源として発生し、近畿
地方や四国地方を中心に、日本全国で地震が観測されました。
特に高知県や徳島県では、震度5が観測され、津波の高さも4~6mに
達しました。 (出典:地震調査研究推進本部)
震源:和歌山県潮岬南南西沖78km
(北緯32度56.1分、東経135度50.9分)
【各地の震度】
(資料:地震調査研究推進本部)
【各地の津波の高さ】
×
凡例:津波高さ
■津波とは何か
■津波発生のメカニズム
■津波の伝播
津波は、海底地震に伴う地殻変動によるものが一般的です。地球表面上の
プレートが地球内部に沈降するとき、反対側に接触しているプレートを引き込
みます。引き込まれたプレートが元に戻る際、海水を変位させ津波が発生しま
す。
津波は水深が深いところでは波の進行速度は速いながら、波高はあまり
大きくなりません。波が水深の浅い近海まで達すると、速度は遅くなりますが、
波高は高くなります。沿岸へ打ち寄せた波は、湾部などその地形によっては
陸上を駆け上がることがあります。
外洋での波高は
大きくて数
m 程度
水深が浅くなると
急に波高を増す
水深
500m
→時速 250
km 程度(新幹線)
水深
4,000m
→ 時速 700
km 程度(ジェット機)
数十
m の高さまで
陸上を駆け上がる
ことがある.
(資料:(国研)海上・港湾・航空技術研究所)
津波発生
(資料:(国研)海上・港湾・航空技術研究所)
プレート
プレート
水面
海溝
■津波の威力
■津波と高潮の違い
津波は波長が非常に長いため、高潮と波高が同じでも、波のエネルギーが
衰えず、沿岸での津波の高さ以上の標高まで駆け上がるため被害が大きくな
ります。また、津波が引く際も強い力で長時間にわたり引き続けるため、破壊
した家屋などの漂流物を一気に海中に引き込みます。
津波
波長数
km~数百km
通常潮位
高潮
吹き寄せによる
潮位上昇 波長数
m~数百m
低気圧による
潮位上昇
通常潮位
南海トラフ付近のプレートが
跳ね上がり、急激に潮位上昇
■切迫する南海トラフ地震
-その時は必ず来る-
東海沖から北九州にかけて広範囲に伸びる南海トラフを震源とする巨大
地震は、歴史上繰り返し発生しています。政府の地震調査委員会(地震調
査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率を、70%程度と予測して
います。
○
南
海
ト
ラ
フ
地
震
の
発
生
1605年 慶長地震
1707年 宝永地震
M7.9
M8.6
1854年 安政東海地震 M8.4
1498年 明応地震 M8.4
1854年 安政南海地震 M8.4
1946年 南海地震 M8.0 1946年東南海地震 M8.0
南海地震の震源域 東南海地震の震源域 東海地震の震源域
1600年
1500年
1700年
1800年
1900年
2015年
????年
■昭和南海地震の被害状況
○地震による被害は、中部地方から九州地方にまでおよび、死者1,330人、
家屋の全壊11,591戸、半壊23,487戸、流出1,451戸、焼失2,598戸でした。
○高知県内においても、死者(不明者含む)679人、家屋の全壊4,800戸以
上、家屋の流出500戸以上の被害が出ました。
(注意)被災位置はおおよその範囲を示しております。
(写真:高知市、須崎市、高知大学)
高知市
津波により流された木材や家屋
須崎市
土佐市
中土佐町
四万十町
南国市
香南市
安芸市
安田町
芸西村
田野町
桟橋へ押し上げられた船
市街地及び田園の浸水状況
(出展:地震調査研究推進本部、南海大地震誌(昭和24年高知県発行))
■高知港海岸における地震・津波対策の重要性
背後地域における施設の分布
高知市
浦戸湾周辺
高知港海岸が位置する高知市は、県全体の約45%の人口が集中しており、
特に浦戸湾周辺には、行政機関や学校、病院などの公共施設が多数立地して
います。
また、県内唯一の石油備蓄基地や製造・造船等の民間企業が多数立地し、
県内の経済の中心です。このため道路、港湾、さらにはJRや路面電車等の交
通網も発達しており、当該地域は高知県における行政・産業・交通の要所と
なっています。
高知県 高知市
人 口※1
728,461人 337,360人
(46.3%)
世帯数※1
318,972世帯 153,676世帯
(48.2%)
製造品出荷額※2
5,260億円 1,483億円
(28.2%)
卸売販売額※3
7,608億円 5,806億円
(77.0%)
小売販売額※3
6,738億円 3,587億円
(53.2%)
※1 平成27年国勢調査による。
※2 平成26年工業統計調査による。
※3 平成26年商業統計調査による。
※4 ( )は、高知県に占める高知市の割合。
高知港湾合同庁舎
(高知海上保安部、高知税
関支署、高知運輸支局)
376
32
32
366
34
44
384
56
+
+
+ +
+
+
+ +
+
+
+
+
県庁
市役所
35
+
+
+
高知港湾・空港整備事務所
高知県
警察本部
高知第2地方合同庁舎
(財務事務所、自衛隊
高知地方協力本部等)
JR高知駅
高知市消防団本部
県高知土木事務所
[防災ステーション]
■高知港海岸における地震・津波対策の必要性
高知市街の標高の分布(出典:国土地理院)
広
域
地
盤
沈
下
に
伴
い
満
潮
時
に
浸
水
す
る
区
域
L1津波※1
による浸水範囲(未対策時)
被害想定 浸水面積 被害人口 被害戸数 被害資産
L1津波 1,600ha 7.7万人 3.7万戸 1.9兆円
L2津波 3,300ha 11.9万人 5.5万戸 3.0兆円
L1津波※1
及びL2津波※2
における被害想定※3
防護ライン
20.0m ~
10.0m ~ 20.0m
5.0m ~ 10.0m
2.0m ~ 5.0m
1.0m ~ 2.0m
0.3m ~ 1.0m
~ 0.3m
南海トラフを震源とする地震が発生した場合、高知市内は2m程度の広域地
盤沈下が発生するとともに、液状化により防潮堤等の倒壊・沈下が想定され
ます。そのため、その後来襲する津波により、広範囲且つ長期的な浸水被害
が予測されています。昭和21年に発生した昭和南海地震に伴う津波では、市
街地の多くが浸水し、約2万人が被災しました。
※地盤高さは、H24.3高知県測量データを使用
※1 発生頻度の高い津波
※2 最大クラスの津波
※3 シミュレーションによる結果
■高知港海岸における地震・津波対策の緊急性
南海トラフ巨大地震は、今後30年以内に70%程度の高い確率で発生が予測
されています。
また、広域地盤沈下と液状化による海岸保全施設の倒壊に加え、浦戸湾の
湾奥部では大規模かつ長期的な浸水被害が発生することが懸念されています。
南海トラフを震源とする巨大地震は、約90~約150年毎に発生しており、
高知市においても過去に甚大な被害を受けてきました。
〔出典〕
地震調査研究推進本部
「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」
(算定基準日:2015年1月1日)に基づき、国土交通省
港湾局作成
: 昭和58年以降に発生した大規模地震
(気象庁が命名した地震)の震央等
(平成8年以降は震度6弱以上の地震も図示)
南海トラフ
(M8~M9クラス)
70%程度
与那国島周辺
(M7.8程度)
30%程度
三陸沖 北部
(M7.1~7.6)
90%程度
三陸沖 南部海溝寄り
(M7.2~7.6)
50%程度
茨城県沖
(M6.9~7.6)
70%程度
プレートの沈み込みに伴う
M7程度の地震
(M6.7~7.3)
70%程度
日向灘の
ひとまわり小さい
プレート間
(M7.1前後)
70~80%
「日本海地震・津波調査プロジェクト」
(H25-32)において検討中
安芸灘~豊後水道
(M6.7~7.4)
40%程度
根室沖(M7.9程度)
50%程度
宮城県沖
(M7.0~7.3)
60%程度
我が国で発生した主な大規模地震と今後30年以内の発生確率
南海トラフ巨大地震による津波高(L2津波※
)
〔出典〕内閣府「南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等
(第二次報告)及び被害想定(第一次報告)について」
※ 最大クラスの津波
■高知港海岸における地震・津波対策の取り組み
2.事業概要
○事業期間:平成28年度~平成43年度
○総事業費:600億円(うち、直轄事業は350億円)
※第1ラインは含まず
○整備内容
第1ライン:港湾施設
第2ライン及び第3ライン:海岸保全施設
津波防波堤 230m、水門 3基、陸閘 1基、
堤防(改良) 5,498m、
護岸(改良) 15,401m、
胸壁(改良) 8,105m、
陸閘(改良) 99基
第1ライン
(港湾施設)
第3ライン
第2ライン
高知港海岸における三重防護のイメージ
凡 例
:第1ライン(港湾施設)
:第2ライン
:第3ライン
:直轄施工箇所
【位置図】
高知港海岸
1.事業の目的
南海トラフ巨大地震・津波に備えるため、高知港海岸においては、三重防
護の方針により海岸保全施設を整備することで、地域の安全・安心を守る。
第3ライン
浦戸湾地区 内部護岸等
【効果】
・護岸の倒壊や背後地浸水の防止等
第2ライン
湾口地区 津波防波堤、外縁
部堤防等
【効果】
・津波の侵入や北上の防止・低減
第1ライン
第一線防波堤(港湾施設)
【効果】
・津波エネルギーの減衰
・高知新港の港湾機能の確保