高尿酸血症と腎
大野 岩男 総説 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 Iwao Ohno key words:高尿酸血症,慢性腎臓病,高血圧,メタボリックシンドローム, レニン・アンジオテンシン系 はじめに プリン塩基の最終代謝産物である尿酸はその 約70%が腎より尿中に排泄されることから,腎 機能が低下すると尿酸排泄低下による高尿酸血 症が認められるようになる.このような腎疾患 時に認められる高尿酸血症が腎疾患の進展に何 らかの役割を担うかについてはこれまで明らか ではなかった.しかし最近になり臨床において, 高尿酸血症が高血圧や腎障害の進展と密接に関 係すること,および高尿酸血症が慢性糸球体腎 炎の腎機能予後不良予測因子であることなどが 明らかになってきており,また動物実験におい ても高尿酸血症が尿酸塩沈着を介さずに腎疾患 の発症・進展に病因的な役割を演じていること がわかってきている.本総説では高尿酸血症に よる直接的機序が想定されている高尿酸血症と 高血圧・腎障害の関連について述べる. 1.高尿酸血症と高血圧 1)高尿酸血症と高血圧との関連 ヒトの研究において高尿酸血症は高血圧と密 接に関連することが明らかとなってきている. 高 尿 酸 血 症 と 高 血 圧 に 関 す る 疫 学 研 究 で は , PerlsteinらはThe Normative Aging Study(1,277人 中508人(39.8%)が10.3±5.5年の経過で高血圧 になった縦断研究)において,各種因子で補正 しても,血清尿酸値は高血圧の発症と有意に関 連 し て い た と 報 告 し て い る ( 図 1 )1 ). ま た , Zhangらは中国人の前向きコホート研究におい て,エントリー時に高血圧のない7,220人を4年間 追跡し(男性の19.0%,女性の11.0%が高血圧を 発症),血清尿酸値は高血圧の発症に関連するこ とを報告している2).この中で高血圧発症の相対 危険度は,血清尿酸値が高いほど,またメタボ リックシンドロームの構成要素数が増えるほど 図1.血清尿酸素値は高血圧の発症と関連する (The Normative Aging Study、各種因子補正後)増加することを示しており(図2),血清尿酸値 と高血圧の発症にはメタボリックシンドローム および腹部肥満が重要である事を示唆している. さらに血清尿酸値と高血圧の関連に関する8つの 論文のメタアナリシスでは,その相対危険度は 1.55(1.32-1.82)であるとしている. 最近,高尿酸血症を治療すると血圧が下がる という成績が報告されている.Feigらは高尿酸血 症をもち,新規に診断された若年性高血圧患者 (11-17歳)において,アロプリノールを用いて高 尿酸血症を治療すると血圧が低下するという成 績を報告しており3),対象が若年発症の本態性高 血圧で,かつ肥満者(BMI=33(28-36)Kg/m2) であるという特殊性はあるが,高尿酸血症が高 血圧の病因としての役割をもつという興味深い 成績である(図3). 図2.血清尿酸素値は高血圧の発症と関連する (cp:metabolic syndromeの構成要素数) (文献2より引用) 図3.高尿酸血症をもつ若年高血圧患者に対するアロプリノールの効果 (文献3より引用、改変) ●収縮期血圧 (24時間平均) ●拡張期血圧 (24時間平均)
推測している7). 子宮内発育遅延と低出生体重には強い相関関 係があり,この両者ではしばしば腎臓の発達が 障害され,ネフロン数が減少することが知られ ている.Manalichらは,出生時体重が新生児の糸 球体数(正相関)と糸球体サイズ(逆相関)と 密接に相関していることを報告しており(図5), ネフロン数減少の資質をもっていることは,高 血圧や腎疾患進行の危険因子である可能性があ ると考察している8).妊娠高血圧症候群では子宮 内発育遅延,低出生体重,高尿酸血症がみられ るが,高尿酸血症は胎児の内皮細胞増殖障害を 介してネフロン数減少に関連していることが示 唆されている9).さらに高血圧はネフロン数の減 図4.低出生体重と高尿酸血症、高血圧、内皮細胞 障害との関連(8-13歳児での検討)(文献7より引用) 図5.出生時体重と糸球体数、糸球体サイズ (文献8より引用) 2)低出生体重,ネフロン数減少と高尿酸血症, 高血圧 20年程前から,低出生体重は高血圧,虚血性 心疾患,肥満,糖尿病などの発症に重要な役割 を演じていることが報告され4-6),胎児発育に影響 を与える出生前環境因子と成人疾患の発症には 何らかの関連があることが示唆されてきている. また低出生体重に関連する疾患の発症には血管 内皮細胞障害が重要であることもわかってきて いる.Francoらは,低出生体重の既往をもつ小児 は,血管内皮細胞障害,高血圧,高尿酸血症を 呈していると報告しており(図4),このような 小児は早期の血管障害をもっており,その後の 成人疾患の発症に関連してくるのではないかと 少の結果生じるとの報告もなされており,本態 性高血圧ではコントロールに比しネフロン数が 50%近く減少しているとの報告もある10).ネフロ ン数の減少は代償的な糸球体の過剰濾過をきた し,これが長期間持続すると更なるネフロン数 減少につながり,これが限外濾過面積の減少, ナトリウムの排泄障害などを介して高血圧,腎 機能障害に結びついてくる.Feigらは尿酸が仲介 する高血圧の発症機序として図6のような仮説を 示している11). 以上のように,ネフロン数減少,高尿酸血症, 高血圧,腎疾患が相互に密接な関連を示してい ることは,高尿酸血症が内皮細胞障害を介して 高血圧・慢性腎臓病(CKD)を引き起こす主因 の1つである可能性を示唆しているかもしれない. Uric Acid (mg/dl) Systolic Blood Pressure
(mmHg)
%Flow Mediated Dilation
Birth Weight (kg) Birth Weight (kg) Birth Weight (kg)
Number of giomeruli per 0.6 mm 2 Glomerular volume μ 3× 10 6 Weight at birth , g Weight at birth , g
図6.尿酸が仲介する高血圧の発症機序 (文献11より引用) 2.高尿酸血症と腎障害 高尿酸血症と腎疾患に関する疫学研究におい て,井関らは日本人のコホート研究において, 血清尿酸値は血清クレアチニン値の上昇と有意 に関連しており12),また女性において高尿酸血症 (6.0mg/dl以上)は末期腎不全進展の危険因子で あること13)を報告している.またBellomoらは, 900人の健常な正常血圧供血者の5年における研 究から,血清尿酸値は腎機能低下の独立した危 険因子であると報告している14).図7に示すよう に,男女ともに血清尿酸値が高い程,5年後の推
e-GFR reduction (mean and 95% C.I.) 0 5 10 15 20
e-GFR reduction (mean and 95% C.I.)
6 8 10 women P trend = 0.005 men P trend = 0.001 12 図7.血清尿酸値は腎機能低下と関連する (正常血圧、健常供血者) (文献14より引用、改変) 定GFRの減少が大きくなることを示している. さらにObermayrらは,21,475人の健康成人を前向 きに7.4±3.9年観察し,血清尿酸値は独立して CKD(推定GFR<60ml/min)の新規発症のリス クを上昇させると報告している(図8)15).以上 のように,最近の疫学研究からは,高尿酸血症 は腎障害やCKDの発症と密接な関連を示してい ることがわかってきている. 図8.尿酸は腎疾患(推定GFR<60ml/min)の新規 発症リスクを上昇させる (文献15より引用) 3.高尿酸血症とIgA腎症における腎機能予後不良 一般に慢性糸球体腎炎においては,クレアチ ニンクリアランス(Ccr)が低下すると血清尿酸 値は上昇するという,Ccrと血清尿酸値の間には 負の相関関係がある.著者らの成績では,腎生 検時の高尿酸血症はIgA腎症患者の長期腎機能予 後に対する危険因子であることが明らかとなっ ている.すなわち腎生検時に高尿酸血症を持つ IgA腎症症例は高尿酸血症を持たない例に比し, 8年以上の最終観察時のCcrが有意に低下してお り(図9),多変量解析においても腎生検時の高 尿酸血症はIgA腎症の長期腎機能予後不良に独立 して関連していることが明らかとなっている16). この研究からは腎生検時の高尿酸血症が長期腎 機能予後不良に関連する機序は明らかではない が,最近,高尿酸血症が炎症,酸化ストレス, 内皮機能障害,動脈硬化などと密接に関連する
という成績が集積してきており,高尿酸血症は これらを介してIgA腎症の腎機能予後不良に関連 している可能性がある. 4.CKDにおける高尿酸血症治療と高血圧・腎障害 CKDにおける高尿酸血症の役割を明らかにす る方法の一つに高尿酸血症に対する治療の介入 研究がある.CKDでの治療介入と治療中断の研 究成績を以下に示す. 1)高尿酸血症治療と高血圧,腎障害 CKDにおいて高尿酸血症を治療することが腎 障害の進展にどのような影響を示すかについて, Siuらは興味深い報告を行っている17).図10に示 すように,彼らは血清クレアチニンが1.35mg/dl を超えているCKD患者におけるRCT研究におい て,アロプリノールによる高尿酸血症治療群と コントロール群での1年後の血清クレアチニン値 の上昇を比較すると,血清クレアチニン値はア ロプリノール群では有意な上昇を示さなかった が,コントロール群では有意な上昇を示し,ア ロプリノールによる高尿酸血症治療はCKD患者 の血清クレアチニン値の上昇を抑制したと報告 している.またKanbayらは正常腎機能をもつ高 尿酸血症患者においてアロプリノール治療の効 果を前向きに検討し,アロプリノールにより高 尿酸血症を是正すると,3ヶ月後には対照群に比 し て 各 々 有 意 な 血 清 ク レ ア チ ニ ン 値 の 低 下 , GFRの上昇,血圧の低下がみられたと報告して おり(図11),CKDの管理においてアロプリノー ルによる高尿酸血症の早期治療が重要であるこ とを示唆している18).以上のように,高尿酸血症 治療はCKDにおける腎障害の進展抑制に有効で あると考えられてきている. 2)高尿酸血症治療中断と高血圧,腎障害 逆に,CKDにおいて高尿酸血症治療を中断す ると血圧,腎機能にどのような影響を及ぼすか について検討したTalaatらの研究を示す19).図12 に示すように,CKDにおいてアロプリノールに よる高尿酸血症治療を中断すると,中断2週間後 の血圧は,レニン・アンジオテンシン(RA)系 図9.腎生検時高尿酸血症の長期腎機能に及ぼす効果 (腎生検時に正常腎機能を示すIgA腎症患者における検討) (文献16より引用、改変) 図10.高尿酸血症治療による血清クレアチニンの 上昇抑制(CKD患者) (文献17より引用)
図11.アロプリノール(300mg/day)による高尿酸 血症治療の効果(正常腎機能患者:GFR>60ml/min) (文献18より引用、改変) 図12.アロプリノール治療中止による効果 (CKD患者,non DM)(文献19より引用、改変) 抑制薬の服用群では上昇を示さなかったが,RA 系抑制薬の非服用群だけにおいて有意な上昇を 示していた.しかし中断12ヶ月後の血圧にはプ ロトコールに従った降圧薬の増量により各群に おいて差異はみられていない.一方,血清クレ アチニン値は治療中断12ヶ月後においてRA系抑 制薬の非服用群のみにおいて有意な上昇を示し ていた.このことは,高尿酸血症はCKDにおけ る高血圧・腎障害の進展に重要であり,さらに その機序としてRA系亢進が重要な役割を演じて いることを示唆している. 5.高尿酸血症とメタボリックシンドローム 高尿酸血症は生活習慣病やその集簇であるメ タボリックシンドロームと密接に関連している ことが知られている.教室の疋田らは血清尿酸 値が,内臓脂肪面積と正相関を示し,メタボリ ックシンドロームの構成要素数が増加するほど 上昇することを報告している20).また痛風・高尿 酸血症患者でしばしば認められる酸性尿はイン スリン抵抗性と関連していることがわかってお り,Abateらは24時間尿pHの低下(酸性尿)はイ ンスリン抵抗性と有意に相関していることを示 している21).さらに辻らは人間ドック受診者の長 期成績から,初診時の高尿酸血症と酸性尿は 各々有意にメタボリックシンドロームの発症と 関連する(ハザード比は各々2.13,1.49)と報告 している22). 以上のヒトでの臨床成績をまとめると図13の ようになる.すなわち高尿酸血症,インスリン 抵抗性(高インスリン血症),高血圧は3者間で 密接に関連している.高尿酸血症・高尿酸尿症 と腎でのインスリン抵抗性を表している酸性尿 は尿路結石,痛風腎に結びついてくる.また高 尿酸血症はRA系の亢進を介して高血圧,CKDの 発症・進展に関わってくると考えられ,さらに CKDの発症・進展には高尿酸血症と酸性尿の両 者の合併も関連してくる可能性がある. 図13.高尿酸血症と高血圧・腎疾患 との関連(ヒト)
図14.高尿酸血症による腎障害発症メカニズム (文献23より引用、改変) 6.高尿酸血症による腎障害発症機序(動物実験) 尿酸をアラントインに分解する酵素であるウ リカーゼ(uricase)の阻害剤であるオキソニン酸 はラットにおいて高尿酸血症を惹起することが 知られており,ラットに高尿酸血症を惹起する ことにより尿酸塩沈着を介さずに高血圧,腎障 害が引き起こされるという興味深い研究成績が 相次いで報告されている. この高尿酸血症モデルラットでは,高血圧と 腎細動脈症(renal arteriolopathy)が発症し,尿酸 降下薬であるアロプリノールやベンジオダロン 投与によりこれらの発症が防げたとされ,また 高尿酸血症によって引き起こされる腎細動脈症 は,同程度に高血圧を是正したヒドロクロロチ アジド群では抑制されず,エナラプリル群では 抑制されたので,高血圧とは関連がなくRA系と 関連していたとしている.さらに,高尿酸血症 モデルラットのマイクロパンクチャ−法による 検討では,糸球体毛細血管圧が血清尿酸値と正 の相関をしていたとされており,これは高尿酸 血症により惹起された輸入細動脈症に由来する 輸入細動脈の収縮不全により全身血圧が直接的 に糸球体毛細血管圧に影響しているためである と推論されている.以上の一連の実験成績から, 高尿酸血症が腎障害の発症・進展に病因的に関 係するメカニズムとしては図1423)のようになると 考えられている.すなわち尿酸は有機陰イオン トランスポーター(OAT)を介して血管平滑筋 に取り込まれ,MAP Kinase・NF-κBの活性化, COX-2産生,局所トロンボキサン合成を介して PDGFやMCP-1の産生を促進する.これらが血管 内皮における炎症や血管平滑筋の増殖を介して 腎内血管病変をきたしてくる.さらに高尿酸血 症によってもたらされるRA系の亢進やNO産生系 の抑制が腎内血管病変を修飾し,これらがあい まって全身および糸球体高血圧をきたし腎障害 の発症や腎疾患の進展に関係してくるものと考 えられる.以上の成績は動物実験の結果ではあ るが,高尿酸血症が腎障害に直接的に関わって いることを示唆している成績といえる. おわりに 高尿酸血症と高血圧・CKDは相互に密接に関 連することが臨床的・実験的研究から明らかと なっており,さらにCKDにおける高尿酸血症治 療は腎機能保持の観点から重要であるとの報告 が出てきている.しかし腎障害時の高尿酸血症 治療の必要性を保証するためには,高尿酸血症 のコントロールがCKDの腎障害の進展を抑制す るかについての大規模な臨床研究による裏付け を待たなくてはならない. 文 献
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23)Johnson RJ, Kang DH, Feig D et al:Is there a pathogenetic role for uric acid in hypertension and cardiovascular and renal disease? Hypertension 41:1183-1190, 2003.
緒 言 アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバ スタチンなどの第二世代スタチン系薬物はスト ロングスタチンと呼ばれ,プラバスタチンやシ ンバスタチンなどの第一世代スタチン系薬物に 比べてLDLコレステロール(LDL-C)の低下作 用がより強力で,脂質低下作用に加えてプラー ク安定化作用,抗酸化作用,抗炎症作用,血管 内皮機能改善作用など,それぞれに種々の多面 的効果も発揮する1).アトルバスタチンは血管内 皮機能の改善に伴う腎血流量増加によって血清 尿酸値低下作用を示すといわれており2),我々も アトルバスタチン使用患者では薬物投与後に血 清尿酸値が有意に低下することを認めた3).一方, 同じストロングスタチンであるロスバスタチン については,海外の一施設の検討では血清尿酸 値の低下は認められないと報告されているが4), 我々が薬物投与前後で血清尿酸値を比較したと ころ,アトルバスタチンに比べるとその作用は 弱いものの,ロスバスタチン投与患者も薬物投 与後に血清尿酸値は低下していた5).しかし,ピ タバスタチンに関しては血清尿酸値の変化を検 討した報告はない.今回,我々はピタバスタチ ンの血清尿酸値への影響についてアトルバスタ チンとロスバスタチンを対照に検討した.
ピタバスタチンの血清尿酸値に対する影響−
アトルバスタチンおよびロスバスタチンとの比較
小片 展之 岡 陽子 河崎 孝弘 藤森 新 要 約 ピタバスタチンの血清尿酸値に及ぼす影響を, アトルバスタチンとロスバスタチンを対照にし てレトロスペクテイブに検討した.各薬物投与 前後で血清尿酸値が測定されている外来患者104 例を対象に,薬物投与直前の血清尿酸値と薬物 投与2∼3ヶ月後の血清尿酸値を比較検討した. 検討患者の薬物別の内訳はアトルバスタチン投 与群42例(平均投与量5.24mg/日),ピタバスタ チン投与群32例(平均投与量1.13mg/日),ロス バスタチン投与群30例(平均投与量2.5mg/日) であった.アトルバスタチン投与群では,投薬 前の血清尿酸値が6.1±1.5mg/dlから投薬後に 5.8±1.4mg/dlに有意に低下した(p=0.008).ロ スバスタチン投与群では5.7±1.2mg/dlが5.5± 1.2mg/dlに低下する傾向にあったが有意な変化 ではなかった(p=0.054).一方,ピタバスタチ ン投与群では5.5±1.4mg/dlが5.6±1.2mg/dl (p=0.65)と有意な変化はみられず,ピタバスタ チンはアトルバスタチンのような血清尿酸値を 降下させる多面的作用は期待できないと考えら れた.いずれの投与群においても投薬前後で血 清HbA1c値は有意な変動を示さなかった.尿酸 は心血管障害の危険因子と推定されていること から,スタチン系薬物を必要とする心血管リス クの高い脂質異常症患者には,尿酸値も低下す るアトルバスタチンが望ましいと考えられた. 原著1 受付:2009年5月25日,受理:2010年1月12日帝京大学医学部内科 Nobuyuki Ogata,Yoko Oka,Takahiro Kawasaki,Shin Fujimori key words:スタチン, 血清尿酸値, 脂質異常症
対象と方法 2003年から2009年にかけて帝京大学病院の内 科外来を定期的に通院し,3種類のいずれかのス トロングスタチンが投与されている患者のうち で,薬物投与前後で血清尿酸値が測定されてい る104例を検討対象とした.薬物別ではアトルバ スタチン投与患者42例,ピタバスタチン投与患 者32例,ロスバスタチン投与患者30例であり, 各群とも脂質異常症の他に糖尿病や高血圧,痛 風などの慢性疾患を合併している患者が多かっ た(表1).6例の甲状腺疾患患者においては,検 討期間中の甲状腺機能は治療により正常に維持 されていた.尿酸値に影響を与える薬物として はアロプリノール,ベンズブロマロン,ロサル タン,フロセミド,トリクロルメチアジド,少 量アスピリンなどが投与されていたが,検討期 間中にこれらの薬物の中止例や新規投与例は存 在しなかった.患者は当該スタチン開始前12ケ 月間に他の脂質代謝改善薬を服用していなかっ た. 各症例について,LDL-C,トリグリセリド (TG),HDLコレステロール(HDL-C),尿酸, クレアチニンについて薬物投与直前の測定値と 投与2∼3ヶ月後の測定値を比較検討した.LDL-Cを測定していない場合はFriedewaldの計算式 (総コレステロール−TG/5−HDL-C)を用いて LDL-C値を算出し,TGが400mg/dl以上の患者は あらかじめ対象から除外した.血清クレアチニ ン値から日本人のGFR推算式によってeGFRを求 め腎機能の評価として用いた.糖尿病を合併し ている症例でHbA1cを測定している症例では, H b A 1 cで 血 糖 コ ン ト ロ ー ル 状 況 を 評 価 し た .
Student paired t 検定により薬物投与前後での各測 定値の有意差の有無を検定した.また,薬物投 与3群間での各測定値の比較はFisherの分散分析 法で行った. 結 果 患者背景ではピタバスタチン投与群が最も年 齢が高く,男性患者の比率も高率であった.糖 尿病の合併はアトルバスタチン投与群が最多で 高血圧と痛風はロスバスタチン投与群に多かっ た.尿酸値に影響する薬物投与はいずれの群に もみられたが,尿酸降下薬は痛風患者の多いロ スバスタチン群が最多であった.ストロングス タ チ ン の 平 均 投 与 量 は ア ト ル バ ス タ チ ン 5.24mg/日,ピタバスタチン1.13mg/日,ロス バスタチン2.5mg/日であり,いずれも低容量の 薬物投与件数が多かった(表1). LDL-C値は投薬後に3群とも著明に低下し(表 2),低下率はアトルバスタチン群40.5%,ピタバ スタチン群32.0%,ロスバスタチン群46.2%であ った.TG値は3群とも投薬後に低下し,ピタバス タチン群とロスバスタチン群では有意差を認め た.HDL-C値はいずれも増加傾向を示したが, 有意な変化ではなかった.当該スタチン投与前 の血清尿酸値には3群間で有意な差は認められな かった(データ示さず).血清尿酸値はアトルバ スタチン投与群では,6.1±1.5mg/dlが投薬後に 5.8±1.4mg/dlと有意に低下した(p=0.008).ロ スバスタチン投与群では5.7±1.2mg/dlが5.5± 1.2mg/dlに低下する傾向にあったが有意な変化 ではなかった(p=0.054).一方,ピタバスタチ ン投与群では5.5±1.4mg/dlが5.6±1.2mg/dlと 有意な変化を認めなかった.(p=0.65)(表3). 糖尿病を合併している症例のHbA1c値は,ア トルバスタチン群では投与前7.0±1.4%から投与 後6.9±1.2%(p=0.57),ピタバスタチン群では 7.0±1.1%から6.9±0.9%(p=0.21),ロスバスタ チン群では7.0±1.2%から7.0±1.1%(p=0.70)
といずれの群においても有意な変化を示さなか った.それぞれの群で腎機能の変化を血清クレ アチニン値とeGFRで検討してみると,アトルバ ス タ チ ン 群 で は 血 清 ク レ ア チ ニ ン が 0 . 8 0 ± 0.20mg/dlから0.78±0.18mg/dlに有意に低下し て い た ( p= 0.047). し か し , eGFRは 76.1± 20.4ml/minから77.8±20.3ml/minとわずかに増 加していたが有意な変化ではなかった(p=0.10). ピタバスタチン群とロスバスタチン群ではいず れも投薬前後で腎機能に有意な変化はみられな かった(表3). 考 案 脂質代謝改善薬の前投与例を除外した今回の 検討でも,血清尿酸値はアトルバスタチン投与 後に有意に低下した.アトルバスタチンの血清 尿酸値低下作用について報告しているギリシャ の研究グループは,アトルバスタチンによる血 清尿酸値の低下は,脂質低下作用に加えて種々 の多面的効果を発揮するアトルバスタチンによ る血管内皮機能の改善6)に伴う腎血流量増加によ ってもたらされるのではないかと推察している2). 同じギリシャの研究グループは脂質異常症患 者180例を対象としたアトルバスタチン40mg/日 とシンバスタチン40mg/日の比較試験や7),脂質 異常症患者120例を対象としたアトルバスタチン 20-40mg/日とロスバスタチン10-20mg/日の比 較試験においても4),アトルバスタチンの血清尿 酸値低下作用を報告しており,投薬によりFEua の増加を伴って血清尿酸値が低下していること から,その機序としてアトルバスタチンによる 尿酸排泄促進作用を推測している.今回の我々 の検討でもアトルバスタチン投与によって弱い ながらも血清クレアチニン値の有意な低下が観 察された.しかし,eGFRは変化しておらず,ア トルバスタチンの多面的効果としての腎機能改 善作用は証明できなかった. 高血糖では尿酸排泄が亢進して血清尿酸値が
低下することが知られ8),アトルバスタチンは血 糖コントロールを悪化させることが報告されて いることから9),アトルバスタチン投与による血 清尿酸値の低下は血糖コントロール不良を反映 しての副次効果であることが懸念されるが,今 回 の 検 討 で は ア ト ル バ ス タ チ ン 投 与 前 後 で HbA1c値は変化しておらず,血糖コントロール 状態が血清尿酸値の変化に影響したとは考えら れなかった. われわれはレトロスペクティブな検討でロス バスタチンによる血清尿酸値低下作用を報告し たが5),今回脂質代謝改善薬を前投与されている 患者を除外して再検討したところ,ロスバスタ チンによる血清尿酸値低下作用は観察されなか った.先の報告でも述べたように,アトルバス タチンをロスバスタチンに変更した症例では血 清尿酸値は増加する傾向にあり,ギリシャのグ ループが報告しているようにロスバスタチンに は血清尿酸値低下作用は認められないとするの が妥当と考えられた. 今回,ピタバスタチンと尿酸について初めて 検討したが,ピタバスタチン投与では血清尿酸 値は有意な変化を認めなかった.なお本論文で の対象外であるが,我々はアトルバスタチンと ピタバスタチンの相互変更例を各々1例経験し た.症例ごとに血清尿酸値の変化をみてみると, アトルバスタチン10mg/日をピタバスタチン 2mg/日に変更した57歳の糖尿病患者では,血清 尿酸値は変更前の3.6mg/dlからピタバスタチン 変更後は6.3mg/dlに増加していた.一方,ピタ バスタチンがアトルバスタチンに変更されてい た77歳の糖尿病患者では,血清尿酸値は変更前 の8.0mg/dlがアトルバスタチン変更後は7.2mg/ dlに低下しており,ピタバスタチンはアトルバス タチンのような血清尿酸値を降下させる多面的 作用を期待できないと考えられた. 虚血性心疾患や脳卒中などの心血管障害の発 症ないしはこれらの疾患による死亡をエンドポ イントに設定して,尿酸降下薬を使用して計画 された大規模な無作為化対照比較試験は実施さ れていないが,多くの疫学研究による観察試験 で,尿酸は心血管障害の独立した危険因子であ ることが示されている10-15).ことに,高血圧や虚 血性心疾患,糖尿病などの血管障害リスクの高 い疾患では原疾患の治療に加えて,血清尿酸値 への配慮も必要と高尿酸血症・痛風の治療ガイ ドラインにも示されており16),降圧薬を使用する 場合は血清尿酸値低下作用を有するロサルタン を,フィブラート系薬物を使用する場合はフェ ノフィブラートを使用することが望ましい.こ のような観点から血管障害リスクの高い疾患に スタチン系薬物を使用する場合は尿酸値も下が るアトルバスタチンが望ましいと考えられた. 文 献 1)三浦伸一郎,朔 啓二郎:ストロングスタ チンの有用性.Modern Physician 28:379-382,2008.
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Influence of pitavastatin on serum uric acid levels
−
Comparison with atorvastatin and rosuvastatin
Nobuyuki Ogata Yoko Oka Takahiro Kawasaki
Shin Fujimori
Department of Internal Medicine, Teikyo University School of Medicine key words : statins, serum uric acid, dyslipidemia
Abstract
We have retrospectively investigated the influence of pitavastatin on serum uric acid(SUA)levels, com-paring with atorvastatin and rosuvastatin. The SUA levels after a few months of statin treatment were compared with those befor treatment in 104 outpa-tients in whom SUA was measured and not treated with other lipid lowering agents.The agent adminis-tered was atorvastatin in 42 patients(average dose: 5.24mg/day),pitavastatin in 32 patients(average dose:1.13mg/day), and rosuvastatin in 30 patients (average dose:2.5mg/day).For the atorvastatin
group, the SUA levels significantly decreased from 6.1±1.5 to 5.8±1.4(p=0.008).Rosuvastatin showed a tendency to decrease SUA from 5.7± 1.2mg/dl to 5.5±1.2mg/dl(p=0.054). In con-trast, pitavastatin did not significantly change SUA levels from 5.5±1.4 to 5.6±1.2 mg/dl(p=0.65). Because uric acid is considered a risk factor for car-diovascular disorders, clinicians should consider ator-vastatin for their SUA lowering effects in patients with hyperlipidemia who are at elevated cardiovascu-lar risk and require statins.
著明な高尿酸血症、腫瘍融解症候群を併発した
Burkitt
型急性リンパ性白血病
松田 安史1) 山内 高弘1) 根来 英樹1) 中山 俊2) 上田 孝典1) 原著2 緒 言 白血病や悪性リンパ腫など造血器悪性腫瘍に おいて,腫瘍細胞は増殖とともに一部は死滅・ 崩壊し,細胞からの逸脱物質の過負荷は患者に さまざまな影響を及ぼす.特に,疾患の急性期 や化学療法開始直後に生じる高尿酸血症から進 展する急性尿酸性腎症,急性腎不全,さらには 高リン血症,高カリウム血症などの電解質異常 を来たし多臓器不全を併発する腫瘍融解症候群 (Tumor lysis syndrome,TLS)は重大な合併症である1) .今回,我々は当院では今まで遭遇したこ とのない著明な高尿酸血症,急性腎不全,TLSを 合併して発症した急性白血病を経験したので報 告する. 症例提示 症 例:62歳,男性 主 訴:発熱 既往歴:左脛骨遠位端骨折 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:生来健康であった.2009年11月初めよ り発熱が出現して近医を受診した.感冒の診断 の下,投薬加療を受けるも改善しなかった.全 身倦怠感も加わり,経口摂取も低下したため11 月20日総合病院を受診した.血液検査にて末梢 血に芽球の出現と腎機能低下が認められ,即日, 当院へ紹介,入院となった. 入院時現症:身長 155 cm,体重 53 kg,意識清明, 体温38.3℃,血圧186/80 mmHg,脈拍107/分 (整)、心音正常,肺音正常.肝脾腫なし,リン パ節腫大なし,皮膚に紫斑,点状出血を認めな かった. 入院時検査所見:末梢血では芽球の出現が認め られた.腫瘍性と思われる可溶性インターロイ キン2受容体と乳酸脱水素酵素の上昇がみられ た(Table 1).血清リン値,クレアチニン値,尿 受付:2010年4月12日,受理:2010年6月23日
1)福井大学 血液・腫瘍内科 Yasufumi Matsuda,Takahiro Yamauchi,Eiju Negoro,Takanori Ueda
素窒素値は上昇し(Table 1),乏尿状態であった. また特筆すべきは尿酸値43.3 mg/dlという著し い上昇であった.骨髄(Fig 1,Table 2)は過形 成でペルオキシダーゼ染色陰性の芽球が多数を 占めていた.芽球は核/胞体比が大きく,核網は 繊細で核小体を有していた.細胞質には空胞が 認められた.芽球の表面マーカーはCD10陽性, CD19陽性,CD20陽性,CD79a陽性,CD13陰性, CD33陰性,HLA-DR陽性,CD4陰性,CD7陰性, CD8陰性,Terminal deoxytransferase陰性であるこ とから成熟B細胞由来の腫瘍細胞と考えられた. 加えて,染色体分析にてt(8;14)(q24;q32) が20腫瘍細胞中すべてに認められたこと,免疫 組織化学的に腫瘍細胞は95%以上がMIB-1抗体で 陽性であることから,FAB分類で急性リンパ性 白血病L3,WHO分類でBurkitt型リンパ腫と診断 した2).また,高尿酸血症,急性腎不全,TLSの 併発と診断した. 入 院 後 経 過 : 入 院 当 日 か ら 持 続 透 析 ろ 過 (Continuous hemodiafiltration,CHDF)を開始し た.徐々に血清のクレアチニン値,尿素窒素値, 尿酸値は低下し,開始5日目にはクレアチニン値 1.78 mg/dl,尿素窒素値36 mg/dl,尿酸値10.6 mg/dlまで低下した.同時に白血病に対して寛 解導入療法をHyper-CVAD(cyclophosphamide 300 mg/m2 1日2回 第5−7病日,doxorubicin 16 mg/m2 1日1回 第8−10病日,vincristine 2 mg/body 1日1回 第8,15病日,dexametha-zone 8 mg/body 1日1回 第5−8病日,第15− 18病日)により開始した.腫瘍細胞の減少とと もに骨髄抑制が招来し発熱性好中球減少症を併 発したが抗生剤の多剤併用(CFPM 4 g/日, PIPC/TAZ 13.5g/日,ABK 200 mg/日,ITCZ 200 mg/日),顆粒球コロニー刺激因子(フィル グラスチム 75μg/日)により軽快した.以後, 腎障害の再燃や血清尿酸値の再上昇はみられず, 治療開始から28日目(第32病日)に末梢血白血 球6900/μl,ヘモグロビン9.1 g/dl,血小板 210,000/μlと回復し,骨髄では芽球5%未満と完 全寛解に到達した.寛解時点(第32病日)でク レアチニン値0.59 mg/dl,尿素窒素値9 mg/dl, 尿酸値2.6 mg/dlであった. 尿酸関連パラメーターの推移:入院時の血中, A B
Fig 1.Bone marrow pictures on admission
尿中のクレアチニン値,尿酸値から各種尿酸関 連パラメーターを算出した.尿中尿酸排泄量は 0.08 mg/kg/時(正常値0.496[0.483 - 0.509] mg/kg/時),尿酸クリアランスは0.186 ml/分 (正常値11.0[7.3 - 14.7]ml/分),クレアチニン クリアランス(Ccr)は5.4 ml/分(正常値134 [97 - 170]ml/分)であった.R(尿酸クリアラ ンス/Ccr比)は3.4%(正常値8.3[5.5 - 11.1]%) であった.尿酸クリアランス低下例における補 正式(尿中尿酸排泄量>0.03 x尿酸クリアランス + 0.325(mg/kg/時))を用いても尿酸産生過剰 の判定には至らなかった.更に簡便法(尿中尿 酸/尿中クレアチニン)でも0.20と排泄低下型と なった.以上から本症例における高尿酸血症は 排泄低下型と判定された3,4) .入院後CHDFの導 入とともに腎機能は改善し血清クレアチニン値,尿 酸値ともに順調に低下し,Ccrも改善した(Fig 2). 考 察 高尿酸血症から進展する急性尿酸性腎症は悪 性腫瘍,特に急性白血病や悪性リンパ種など造 血器腫瘍の急性期や化学療法開始直後におこる 急性腎不全である1) .腫瘍細胞が急速に崩壊し細 胞からの逸脱物質より生じた過剰の血中・尿中 尿酸が腎尿細管や集合管を閉塞することにより 生じる.TLSはその劇症型として,一度に大量の 腫瘍細胞が崩壊して起こる.本病態に際しては 急性尿酸性腎症に加え,高カリウム血症,高リ ン血症,低カルシウム血症などの代謝異常を生 じ,腎不全さらには死に至る場合もあるため Oncology emergencyとして重要な病態であり緊急 の対応を必要とする.重要な点として,最終的 な予後は基礎疾患への治療の効果によるが,本 症自体は迅速かつ適切な治療により大部分が回 復可能である5) .本症例における通常遭遇しない 著 明 な 高 尿 酸 血 症 と TLSに お い て も 積 極 的 に CHDFを早期から導入することで腎機能障害を代 償し代謝異常を改善し化学療法を開始すること ができた.また本例のような急性尿酸性腎症に よる急性腎不全はCHDFにより尿酸値を低下させ ることと一時的に腎への負担を軽減させること で回復が可能であったと考えられる. 造血器悪性腫瘍と高尿酸血症・TLSとの関連に ついては様々に報告されている.海外において は,急性白血病と非ホジキンリンパ腫における 高尿酸血症・TLS合併頻度についての後方視的解 析では,788人の対象患者において高尿酸血症が 18.9%に認められ,その中の27.8%はTLSと診断 された6) .また,化学療法を受けた102人の中∼ 高悪性度非ホジキンリンパ腫の解析では検査値 レベルのTLSは42%に認められ臨床的に問題とな るものは6%であった.乳酸脱水素酵素高値,腎 機能障害がTLS発症の危険因子であった7) .当院 において1983年から1999年の間に発症した195例 における疾患別の高尿酸血症頻度は,既報のよ うに,急性リンパ性白血病53%,慢性骨髄性白血 病44%,骨髄増殖症候群38%,骨髄異形成症候群 33%,慢性リンパ性白血病25%,急性骨髄性白血 病20%であった8).このうち,尿酸関連パラメー Fig 2.
Parameters associated with uric acid.S-UA,serum urate level;S-Cr,serum creatinine level;CUA, uric acid clearance;Ccr,creatinine clearance; CHDF,continuous hemodiafiltration;Chemo, chemotherapy.
ターの検討が可能であった高尿酸血症合併例14 症例では,産生過剰型57%,排泄低下型43%で, 腎機能障害を有する例で排泄低下型高尿酸血症 を生じることが示された.このように急性リン パ性白血病で高尿酸血症・TLS合併頻度が高いこ とが示唆された. Burkitt型急性リンパ性白血病では特に高尿酸血 症やTLSを合併しやすく時に化学療法の遂行が困 難になる9) .ChoiらはTLSを併発したBurkitt型急 性リンパ性白血病/リンパ腫患者11名において 持続ろ過併用の化学療法の効果と安全性を検討 し た10). 初 診 時 の 血 清 尿 酸 値 の 中 央 値 は 16.2 (6.4-30.3)mg/dlであった.全例で抗腫瘍薬を 減量することなく規定量が投与可能で9人が完全 寛解に到達した.一方,持続ろ過を行ったこと による合併症は見られなかった.山本らはTLSを 併発した小児血液悪性疾患5例(うちBurkitt型リ ンパ腫を含む)にCHDFを含む血液浄化療法が奏 功したことを報告した11).この報告でのBurkitt症 例2例の尿酸値は15.9mg/dl,22.0 mg/dlであっ た.これらの報告から早期からの血液浄化療法 の導入が全身状態を改善し化学療法を成功に導 くことができること,また本症例の尿酸値が Burkitt型急性リンパ性白血病/リンパ腫のなかで も通常遭遇しないような突出した高値であった ことが示唆された. 本症例における高尿酸血症は,尿酸関連パラ メーターから排泄低下型と診断された.急性腎 不全状態であったことから尿酸排泄は著しく低 下していたと考えられる.しかしながら,理論 的には悪性腫瘍における高尿酸血症は腫瘍細胞 崩壊に起因する尿酸前駆体の高負荷による産生 過剰型である.本患者では急性腎不全による排 泄低下,尿酸が高値のため結晶化していた可能 性から排泄低下も関与していたと推測され,混 合型であったと思われる.にもかかわらず排泄 低下型と判定された.この理由として,尿酸産 生量は通常直接の測定が困難なため尿中尿酸排 泄量から概算されるものであり3,4),本症例のよ うな急性腎不全例では尿中尿酸排泄量はむしろ 低下したため尿酸産生量が低く計算されたこと が考えられる.さらに本症例における血清尿酸 値はその値の高さから完全な過飽和状態であり, 末梢血塗抹標本で確認されなかったものの,一 部は結晶化していると思われた.このように結 晶化している状態では上述のような尿酸クリア ランスの正確な測定は困難であったと思われる. なお,腫瘍崩壊が落ち着いた時期の尿酸クリア ランスは13.4 ml/分と正常範囲内であったがこ の時点では腎機能も回復していたため入院時急 性期の状態を反映していない.以上のように, 本症例から,高尿酸血症の病型分類の判定が当 てはまらない状況が実臨床の場ではあることが 示唆された.これは上述の当院での検討8)でも 造血器悪性腫瘍において半数近くが排泄低下型 と判定されていることと関連しているかもしれ ない. 米国臨床腫瘍学会では2008年に世界で初めて のTLSに関してエビデンスに基づくガイドライン が作成された12).TLSは検査的TLSと臨床的TLS に分類される.臨床的TLSは,高尿酸血症,高カ リウム血症,高リン血症,低カルシウム血症の うちから2つ以上を満たす検査的TLSに加え,腎 障害(クレアチニン値の上昇),不整脈,痙攣の 臨床症状のうち1つ以上の発現から定義される. さらに,リスク別治療方針が示されている.す べての症例において十分な補液負荷と尿量の確 保が最重要で,状況に応じてアロプリノール, ラスブリカーゼを使用する.ラスブリカーゼは 難溶性の尿酸を水溶性のアラントインに変換さ せる酵素ユリカーゼでありその尿酸低下作用は 極めて迅速かつ強力である.本邦でもラスブリ カーゼの使用が可能となり,本症例のような重 症例にはその効果が期待される.本例では高尿 酸血症だけでなく,急性尿酸性腎症から進展し た急性腎不全,さらに高カルシウム血症,高リ ン血症もあり尿酸を低下させるだけでは急性期 の病態の解決にはならなかったかもしれない. しかしながらラスブリカーゼの強力な尿酸降下 作用は腎障害の回復を促進した可能性が十分あ ることから適応があったと思われる.よって, 本患者ではCHDFとラスブリカーゼの併用がもっ
とも効果的であると推測される.なお,アロプ リノールは効果発現が遅いこと,すでに血中に 存在する多量の尿酸には無力であること,腎機 能障害・乏尿状態であったこと,から適応はな かったと判断される. 今回,寛解導入療法前から著明な高尿酸血症, 急性腎不全,TLSを呈したBurkitt型急性リンパ性 白血病を報告した.高尿酸血症やTLS発症のリス クが高い症例では化学療法前から十分な予防と 同時に血液浄化療法など緊急の対応を準備する ことが全身状態の改善,抗腫瘍薬の早期投与開 始につながると考えられた. なお本論文の要旨は第4回 福井痛風・高尿酸 血症フォーラム(福井,2010年3月)で発表し た. 文 献 1)二次性高尿酸血症:高尿酸血症・痛風の治 療ガイドライン第2版,日本痛風核酸代謝学 会,ガイドライン改訂委員会(編),pp69-72, 2010. 2)バーキットリンパ腫:WHO血液腫瘍分類, 直江知樹,中村栄男ら(編),pp420-423, 2010. 3)中村 徹,内田三千彦,内野治人 他:痛風 の高尿酸血症の尿酸クリアランス法による 検討.尿酸 2:125-130,1978. 4)高尿酸血症の病型分類:高尿酸血症・痛風 の治療ガイドライン第2版,日本痛風核酸代 謝 学 会 , ガ イ ド ラ イ ン 改 訂 委 員 会 ( 編 ), pp63-65,2010. 5)二次性高尿酸血症・痛風:高尿酸血症・痛 風の治療ガイドライン第2版,日本痛風核酸 代謝学会,ガイドライン改訂委員会(編), pp106-108,2010.
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Abstract
We describe unusually marked hyperuricemia and tumor lysis syndrome in a patient with Burkitt type leukemia. A 62-year-old Japanese man was intro-duced to our hospital because of an emergence of blastic cells in peripheral blood and acute renal fail-ure. On admission, his vital signs were almost normal, but with oliguria. The levels of serum uric acid, creati-nine, and urea nitrogen were 43.3 mg/dl, 7.4 mg/dl, and 83 mg/dl, respectively, indicating marked hyper-uricemia that we had never seen before and acute renal failure. An increased phosphorous level indicat-ed tumor lysis syndrome. The bone marrow examina-tion confirmed his diagnosis as acute lymphoblastic leukemia (L3 by FAB classification, Burkitt type). The patient was initially treated using continuous hemodiafiltration (CHDF) to support renal dysfunc-tion and to decrease a serum uric acid level.
Acute lymphoblastic leukemia of the Burkit type presenting
marked hyperuricemia and tumor lysis syndrome
Yasufumi Matsuda1) Takahiro Yamauchi1)
Eiju Negoro1) Takanori Ueda1)
Takashi Nakayama2)
Chemotherapy was initiated using the combination of cyclophosphamide, doxorubixin, vincristine, and dex-amehtazone (Hyper-CVAD) on the 5th day from the start of CHDF when his serum uric acid and creati-nine were 10.7 mg/dl and 1.78 mg/dl, respectively. On the 28th day from the start of the chemotherapy, the disease achieved complete remission with a nor-malized uric acid level (2.6 mg/dl) and recovered renal function. Hyperuricemia of this patient was due to decreased renal excretion of uric acid, although cancer-associated hyperuricemia is usually attributed to the overproduction of uric acid. Burkitt type leukemia/lymphoma causes hyperuricemia and TLS frequently. This patient’s uric acid level was unusu-ally high according to the literature search. Nevertheless, he was successfully treated using CHDF and safely underwent the chemotherapy.
1)Department of Hematology and Oncology,University of Fukui 2)Department of Clinical Oncology,Fukui Saiseikai Hospital