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Keysight Technologies レーダー/EW/ELINTテスト:一般的なテスト上の問題の特定

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Keysight Technologies

レーダー

/EW/ELINT

テスト:

一般的なテスト上の問題の特定

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現在のレーダーシステムの起源は1940年に遡ります。米国海軍が開発したものが、その後、レーダー(RADAR:

RAdio Detection And Ranging)と呼ばれるようになりました。今日、このテクノロジーは、スーパーマーケッ トの自動ドア(簡単な移動目標識別装置(MTI))から、非常に複雑な艦載射撃管制レーダー(フェーズド・アレイ・ レーダー)まで、さまざまなアプリケーションに応用されています。 軍事用アプリケーションでは、レーダーに続いて2つの新しい分野が台頭しています。電子諜報(ELINT)と電子戦 (EW)です。ELINTは、敵のレーダーシステムから情報を抽出し、レーダー信号に関連付けられる潜在的な脅威(例 えば、軍艦、航空機、ミサイルなど)への対処を判断するために使用されます。これに伴うEWテクノロジーの開 発では、それらの潜在的な脅威に対するアクティブ/パッシブな対応を実現します。 最も単純なものから複雑なものまで、あらゆるレーダー/EW/ELINTシステムのコンポーネント、アセンブリー、 システムのテストには、さまざまな問題があります。すべてのレーダーは混雑したスペクトラム環境で動作する ため、問題が複雑になります。例えば、都市の電波環境には、無線通信インフラ、無線ネットワークシステム、 民間レーダーなど、多数のRF/マイクロ波エミッターが含まれ、干渉の原因となります。 このアプリケーションノートは、システム開発中に直面する可能性が高い問題に対応するために役立つテスト機 器に焦点を当てています。背景を理解するために、最初に、レーダー/EW/ELINTの基本事項を説明します。次 に主要なテスト上の問題の概要を説明してから、本書の残りのページで、テスト信号の作成、合成したテストレ ンジの例、レーダー信号の検証/解析という3つのトピックスを取り上げます。

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1次レーダーでは、送信パルスと受信エ コーの間に大きな信号損失が生じます。 送信信号は、ターゲットで反射した後、 レシーバーまで戻ってこなければなりま せんが増幅はされません。大きな信号損 失を解決する1つの方法は、長いパルスを 送信し、受信エコーの全エネルギーを高 くして積分する方法です。パルス幅を長 くすると、アンテナや送信パワーアンプ が同じでも有効レンジが長くなります。 レーダー「分解能」もパルス幅に関連す る重要な特性です。小さな物体を解析す る能力があれば、レーダーはより詳細な ターゲット像を表示することができます。 最小1 mまで細部を解析できるレーダー では、接近中のターゲットに関して非常 に多くの情報が得られます。分解能が 100 mの場合は、1つの大きなターゲット と、密集している複数の小さなターゲッ トの区別ができない場合あります。 レーダーのパルス幅が長いと、隣接した 複数のターゲットでエコーが同時に反射 し、時間的にオーバーラップしてしまう 可能性があります。レーダーには、これ は隣接した複数の小さなターゲットでは なく1つの大きなターゲットとして表示さ れます。したがって、最高のレーダー分 解能を実現するには、パルス幅を短くす る必要があります。 以上から、最適なレンジと分解能を実現 するには、相反する条件が必要なことが わかります。最高のレンジには長いパル スが、最高の分解能には短いパルスが必 要になります。 レンジと分解能の最適化における相反す る問題を解決するために、多くのレー ダーシステムはパルス圧縮/変調を利用 しています。リニア周波数チャープは、 概念的には、圧縮/伸長を行う簡単な変 調です。リニアなランプ電圧によりレー ダーパルスを周波数変調(FM)して、周 波数チャープパルスを生成します。その 後、通常の非圧縮パルスの送信と同様に チャープパルスが送信されます。 レーダーレシーバーは、チャープパルス と逆特性の非常にリニアな群遅延を備え た特殊なフィルターを使用しています。 フィルターの群遅延によりチャープの低 周波部分が遅れるので、高周波部分が先 にフィルターから出力されます。この方 法には、高いパワーを実現するために容 易に積分できる長いパルスを使用しなが ら、それを他のパルスと区別しやすい短 いパルスに圧縮する効果があります。 図1. レーダーパルスの用語とトレードオフ パルス繰 り返し間隔 (PRI) PRI = 1 パルス 繰り返し 周波数(PRF) 短いパル ス 分解能 エコー 長いパルス オーバーラップ エコー パルス 幅 パルス平均パワー ビーム走査 パターン

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図2. 周波数チャープパルス圧縮

チャープパルス

遅延 周波数 時間 時間

圧縮パルス

高周波の遅延は最小 低周波成分 は遅 れる レシーバーのパルスフィルター パルス圧縮/変調には、アンビギュイティ のないレンジという別の利点があります。 このような利点を理解するために、パル ス繰り返し周波数について考察します。 パルス繰り返し周波数(PRF)は、レーダー のレンジ性能に依存します。新しいパル スを送出した後に、それより前の送出パ ルスのエコーが戻ってくると、エコー応 答にアンビギュイティが生じます。一 般的には、パルスを送出した後、可能性 のあるすべてのエコー応答が受信される まで待ち、受信完了後に次のパルスを送 出する方法が最も簡単です。アンビギュ イティのないレンジの応答がわかれば、 連続パルス間のパルス繰り返し周波数 (PRF)/パルス繰り返し間隔(PRI)が決まり ます。 しかし、PRFが遅くなるとレーダーの全 体的な性能が低下する場合も多くありま す。例えば、レーダーで高速に移動する 航空機を追跡する場合は、レーダー画面 の更新速度を上げるために高いPRFが適 しているように思われます。しかし、こ の場合、高いPRFによって高速な更新速 度を優先すると、アンビギュイティな反 射が生じます。 目的のレンジ以外から生じるエコー反射 のクラッターを除去する1つの手法とし て、タイムゲーティングまたはレンジゲー ティングを使用できます。この手法では、 レーダーレシーバーをオン/オフ制御し て、目的のレンジより近すぎたり遠すぎ たりする物体からのエコーを無視します。 例えば、レーダーを搭載した軍艦の艦首 からのエコーを無視するのにタイムゲー ティングを使用することがあります。同 様に、ミサイルはタイムゲーティングを 用いてミサイルの最大レンジを超えたエ コー反射を無視します。 前述のように、パルス圧縮によって、連 続パルス間のアンビギュイティをなくす ことができます。各パルスにデジタル変 調を追加すれば、複数の隣接パルスを一 意にエンコードできます。BPSKなどの デジタル変調手法によりパルスをエン コードし、各パルスに一意のコード化を 分離ツールとして使用すれば、往復遅延 をアンビギュイティなしに容易に測定で きます。 多くのレーダーで重要なもう1つの機能 は、移動中のターゲットから生じるドッ プラーシフトを測定する機能です。レー ダーの中には、RFキャリア周波数または 位相シフトの時間変化を測定して正確に ターゲットの速度を特定できるものがあ ります。MTIは反射エコーのドップラーシ フトによって移動を探知しています。

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さまざまなデザイン要件は、レーダー・ パルス・パターンの選択に影響を与える だけでなく、レーダーのプラットフォー ムの性質に関する多くの情報が含まれて います。PRFが低速でパルスが長いもの は、数百マイルを走査する気象レーダー の可能性があり、PRFが高速でパルスが 短いものは、1∼2マイルを走査するミサ イルのターミナル・ホーミング・レーダー の可能性があります。これらの信号から 得られるELINTによって、さまざまな情 報がわかります。 エコー 早いエコーの 無視 0 遅いエコーの 無視 時間またはレンジ ゲ ート 開 始 ゲ ート 終 了 エコー セクター走査 ラスター走査 同様に、レーダーの走査パターンからも ローカル環境の脅威に関する重要な情報 がわかります。例えば、信号振幅の時間 変化をモニターすると、レーダーが走査 に使用しているアンテナの種類と、その アンテナの走査出力パターンが明らかに なります。このようなインテリジェンス を利用すれば、レーダーが何を照射して いるのか、何に使用されているのかを理 解することができます。 レーダーに関する知識によって、単にレー ダーとそのプラットフォームに関する ELINT情報を収集できるだけでなく、電 子戦手法を拡張して進化させることがで きます。例えば、エコーパターンを合成 して早期警戒レーダーレシーバーに送信 し、物理的にそこに存在しないアセット を表示させることができます。虚偽のレー ダー反射をミサイルが追尾するように、 目的のターゲットを無視するようなレン ジゲートに変更できます。ドップラー情 報を使用して照準装置を混乱させること もできます。 図3. タイムゲーティングおよびレンジゲーティング 図4. アンテナ走査パターン

ELINT/EW

の基本

̶

何が可能なのか?

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前述のレーダー/ELINT/EW装置に伴うデ ザイン上の問題により、必要な回路の複 雑さが明らかになります。このような最 新のレーダーシステムをテストする際に は、電子計測器に対して独自の要求が生 じます。テスト中に遭遇する一般的な問 題について簡単に検討します。 多くのレーダー信号は広い帯域幅が不可 欠です。チャープ/変調パルスではGHz 単位の帯域幅が必要な場合があり、広帯 域のテスト機器が必要になります。 位相雑音が非常に低いことも、レーダー テスト機器に必要な共通の要件です。ドッ プラーシフト情報を利用するレーダーで は、周波数差を何周期も積分できるほど レーダーパルスが長くないので、多くの 場合、位相シフトの速度の時間変化を測 定します。このような精密な位相変化測 定を実行する場合は非常に低い位相雑音 を維持しなければならないため、テスト システムの位相雑音性能には厳密な要件 が必要になります。 同様に、ダイナミックレンジ要件がレー ダーテストシステムの問題になることが あります。一般的に、これが問題になる のは、トランスミッターから反射エコー までの経路損失が大きな場合です。 前述のように、高い分解能とアンビギュ イティのないレンジを実現するために圧 縮パルスを使用する場合が多いため、複 雑なテスト波形を合成するニーズも頻繁 に生じます。速度を特定するレーダーの 場合は、さらにドップラーシフトを追加 するニーズも加わります。 レーダーシステムのデザイナーが直面す るもう1つの問題は、ソフトウェア定義 レーダーシステムの普及です。多くの最 新型レーダーでは、従来のアナログRFの テスト信号/測定だけでなく、デジタル の信号/測定も必要です。このマルチ・ フォーマット・テストにより、デジタル 信号測定とアナログ測定で高い相関を得 ようとする際に現実的な問題が生じます。 多くの場合、フルスケールのシステムテ ストがレーダー/ELINT/EW装置の主要 な課題になります。通常、特に問題にな るのがテストコストです。例えば、ドッ プラーシフト、クラッター、その他の信 号成分をシミュレートして艦載射撃管制 レーダーをテストするには、1隻の軍艦 と複数のテスト航空機が必要になります。 このようなテストプラットフォームで正 確に照準性能をテストすれば、1時間当た り数万ドルのコストに膨らむ可能性があ ります。 最後の問題は、多くのレーダーがフェー ズド・アレイ・アンテナ・システムを使 用していることです。このシステムは、 多数のアンテナポート間の波面到着時間 差を用いてアンテナビームの方向を制御 しています。これには、位相コヒーレン トな複数のチャネルを備えた位相調整可 能な信号源/アナライザを用いた信号/ 測定が必要です。いわゆるマルチチャネ ル・アレイ・テスト・システムでは、レー ダー・テスト・エンジニアは非常に現実 的な問題に直面します。 ここまでレーダーシステムの基本とシス テムで生じるテスト上の問題を検証しま した。次に紹介するのは、レーダーエン ジニアにとって困難なテスト上の問題を 簡単に解決できる独自機能を備えたキー サイト・テクノロジーのテスト機器です。 最初に、レーダーテスト信号の生成につ いて紹介します。

最新レーダー

/EW

のテスト上の問題

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テスト信号の生成

レーダーシステムのデザイン/製造では、 多くの状況で広帯域のマイクロ波信号発 生器が必要になります。テスト信号源は、 一般的に、安定化局部発振器(STALO)の 代用、コヒーレント発振器(COHO)のテス ト、脅威エミッターのシミュレーション などのアプリケーションに使用されます。 受信信号の正確なシミュレーションは非 常に困難ですが、今日のDSPベースの信 号発生器/任意波形発生器(AWG)には、 エミッター信号のシミュレート機能と現 実的な障害/経路歪みを含む電磁界環境 を生成する機能があり、遠方のターゲッ トを正確に模擬できます。1つの重要な注 意事項があります。市販の信号発生器や 任意波形発生器でシミュレートされた信 号は、通常、レーダーレシーバーとコヒー レントではありません。しかし、非コヒー レント信号は、パッシブレーダー、マル チ・スタティック・レーダー、電波妨害 装置(ECM)をテストするには効果的な方 法です。

キーサイトの信号源/任意波形

発生器

任意波形発生器の真価は、メモリにダウ ンロードされたほとんどすべての波形を 発生できる能力にあります。例えば、高 分解能と広帯域を同時に実現できる任意 波形発生器を使用すれば、合成したテス トレンジに散在するレーダーエミッター とターゲットを容易に作成して、数百立 方マイルの空域をシミュレートできます。 従来は、多くの任意波形発生器で帯域幅 が決定的な制限でした。今日の最新モデ ルではこの問題がほとんど解決され、多 くのアプリケーションに使用することが できます。例えば、M8190A任意波形発 生 器 は 最 大8 GSa/sで14ビ ッ ト の 分 解 能、最大12 GSa/sで12ビットの分解能を 実現しています。この性能により、最大 5 GHzまでエリアジングのない帯域幅で 信号を出力できます。合成テクノロジー と変換テクノロジーを使用すれば、エリ アジングのない帯域幅をさらに拡張でき ます。 任意波形発生器を選択するときに、最も 重要な検討事項は、おそらく、信号源の スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ (SFDR)です。これは、任意波形発生器に 内蔵されているD/Aコンバーター(DAC) の分解能(ビット数)の影響を受けます。 SFDRは、任意波形信号をマイクロ波領域 に変換する周波数変換回路の品質にも依 存します。 理論的には、1ビット当たり最大6.02 dB のSFDRを実現できるはずです。実際に は、DACの性能は、有効ビット数(ENOB) または等価ビット数という用語によって 表現されています。リニアリティーの問 題を考慮すると、実際の1ビット当たりの SFDRは理論的な6.02 dBよりも狭くなり ます。 広帯域DACは、通過帯域の傾斜と呼ばれ る現象の影響も受けます。これにより、 周波数帯域の上端でさらにダイナミック レンジが縮小します。また、サンプリン グ関数の(sin x)/xロールオフにより、周波 数が上昇するに従って任意波形発生器か らの通過帯域がロールオフします。しか し、この傾斜はサンプリング関数に固有 のものなので、SFDRを仕様化する際には 考慮されていません。したがって、75 dB のSFDRは、一般的に、帯域の最低周波数 に適用されます。ダイナミックレンジは、 通常、帯域の上端では5∼7 dB低下します。 図5. キーサイトの任意波形測定器

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実用的な信号を作成する際には、ビット 数やサンプリング関数に関連するSFDR の損失とは別の問題が、マイクロ波周波 数へのアップコンバートにより生じます。 アップコンバートは、信号源内部で行わ れるか、外部で別の機器によって行われ ます。ミキサー、2個のフィルター、固定 LOのみを使用して行うのが簡単に思われ ますが、実際には、LOの高調波とスプリ アスが必要な信号とミックスされて、帯 域内スプリアス信号が発生し、SFDRが大 幅に制限される可能性があります。 多くのレーダーは、ドップラーシフトま たはターゲット速度の値を導出する手段 として、パルス間の位相シフトを測定し ます。アップコンバート処理に不要な位 相雑音が追加されるのを防ぐには、信号 発生器の位相雑音も低くなければいけま せん。 キーサイトは、優れたSFDRと位相雑音 性能を備えたさまざまな信号源/任意 波形発生器を提供しています。例えば、 E8257D PSGア ナ ロ グ 信 号 発 生 器( オ プションUNY搭載)は、1 GHzの信号で −143 dBc/Hz(10 kHzオフセット、代表 値)という業界最高の位相雑音性能を備え ています。アップコンバートのために、 内蔵ミキサーまたは内蔵ミキサーと周波 数逓倍器を用いてアナログPSGを構成す ることもできます。 E8267D PSGマ イ ク ロ 波 ベ ク ト ル 信 号 発 生 器 は、I/Q変 調 入 力 を 備 え、 最 大 44 GHzの周波数をカバーしています(外 部ミキサーを追加すれば、さらに高い周 波数にも対応できます)。また、変調入力 にM8190A任意波形発生器を使用できま す。この2種類の高性能測定器を組み合わ せて使用すれば、最大44 GHzで2 GHzの 信号帯域幅を使用でき、さらに、優れた SFDRと位相雑音も実現できます。 これらの多くの問題を軽減する別の方法 にデジタルアップコンバートがありま す。これは今日の最高の任意波形発生器 によって得られます。広帯域任意波形発 生器でデジタルアップコンバートを実行 で き る 場 合 は、 こ の 手 法 に よ っ て、 直 接IF信号を作成できます。2チャネルの M8190Aでは、各チャネルに個別のデジ タル・アップコンバート・エンジンを備 えています。これらのチャネルを「結合 モード」で使用して完全な位相コヒーレ ント出力を実現できます。搬送周波数、 振幅、波形などのパラメータは個別に設 定可能で、最大80 dBcのSFDRと72 dBc 未満の高調波歪み(値はすべて代表値)に より優れた信号品質を提供しながら、複 素数値のI/Qデータを目的の周波数レンジ にデジタルアップコンバートします。 メモリ構成も任意波形発生器または任意 波形発生機能を備えたベクトル信号発生 器を選択する際に重要な検討事項です。 どちらの種類の測定器もメモリからデジ タル情報を再生して波形を作成します。 さらにシーケンス作成/再生を行うため の標準機能またはオプション機能を使用 すれば、信号発生器の有用性が向上します。 再生メモリを構成する最も簡単な方法は、 高速RAMの大容量シングルブロックを 使用して波形をメモリから直接再生する 方法です。これは単発パルスまたは非常 に短いRFイベントに対して有効ですが、 12 GSa/s(12ビット分解能)のデータレー トをサポートするためには、信号の時間 が非常に短くなります。この手法を拡張 して大容量のRAIDアレイを追加して、よ り長い再生時間を可能にしているメー カーもあります。 1 多くのRF信号は繰り返し信号なので、シ ングルブロック手法の利用価値は多少制 限されます。テラバイト(TB)単位の容量 を備えたメモリやRAIDでも、連続再生時 間は数秒の信号に制限されてしまうから です。

1. RAID:redundant array of inexpensive disks(レイド)

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これに対する解決策は、レーダー・パル ス・シーケンスなどの繰り返し信号用の より効率的なメモリアクセス機能です。 繰り返し信号に対応するために、高速再 生メモリを構成して、信号セグメントを ループまたは無限のシーケンスとして再 生することができます。条件付き分岐な どの高度なシーケンス機能により、非常 に複雑なセグメントやシナリオを作成す ることができるようになります。さらに、 キーサイトの信号源の中には、波形セグ メントをリアルタイムに修正できるダイ ナミックシーケンス機能を備えているも のがあります。任意波形発生器出力1チャ ネル当たり2 Gサンプルを保存できる大容 量の波形メモリ(M8190A)と組み合わせれ ば、非常に複雑で現実的な長時間の信号 シナリオを作成できます。 図6. 波形のセグメント/シーケンス/シナリオの作成 必要なパルスパターン デジタル・パルス・パターン セグメント #1 セグメント #2 セグメント #3 セグメント #2 セグメント #1 サンプル メモリシーケンス 時間 十分な帯域幅、SFDR、位相雑音、シー ケンス機能を備えた信号源を選択した後、 次 の 問 題 は、Keysight Signal Studio、

SystemVue、MathWorks社のMATLAB

などのソフトウェアツールを使用して、 必要な波形をデジタル合成することです。

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簡単なパルスビルディング

アプリケーションによって、パルスドレー ダー信号は、パルス幅、PRI(または、そ の逆数であるPRF)、変調など、さまざま な特性を使用しています。適切なテスト 信号の作成は困難で、パルスドテスト信 号の合成は、必要なシステム診断によっ てさらに複雑になります。例えば、速度 測定機能をテストするためにドップラー シフトまたはパルス間の位相シフトが必 要になる場合があります。また、ELINT システムをテストするにはアンテナ走査 パターンのシミュレーションが必要です。 このようなニーズに対応するために、ソ フトウェアツールは信号作成用の多くの パルスパターンをサポートし、合成され た信号に適用できるさまざまなアンテナ 特性を実現する必要があります。 このようなニーズに対応するために、キー サイトはパルスビルディング用Signal Studio(N7620B)を開発しました。このソ フトウェアは、簡単な方法で、さまざま なパルス特性を入力して、単純なオン/ オフパルスから複雑なカスタム圧縮パル スまで作成できます。 レーダーコンポーネント、トランスミッ ター、レシーバーをテストするために、 パルスビルディング用Signal Studioで は、PRI、パルス繰り返し回数、繰り返し 間隔ジッタ、PRIウォブレーションなどを 指定できます。使用可能なPRIパターン には、バースト、リニアランプ、スタガ、 ステップなどがあります。PRIジッタは、 ガウシアン、ユニフォーム、U字型として 定義できます。PRIウォブレーションには、 のこぎり波、正弦波、三角波を選択でき ます。これらの機能により、以下のさま ざまなレシーバーテストが可能です。 – ジッタを伴うパルス幅パターンを作 成して、信号劣化に対するシステム 応答をテスト – 複雑なPRIパターンを用いて、レンジ ゲーティングおよびレンジ/ドップ ラーアンビギュイティの分解能をテ スト – 周波数オフセットおよび位相オフ セットを追加して、MTIモードおよび ドップラー処理をテスト – クラッターを伴うカスタムパルスを 作成して、クラッター除去性能をテ スト ライブラリに保存された各パルス定義は、 パルスパターンに結合してからレーダー エミッションの複合セットとして合成し ます。パルスパラメータを入力した後、 次のステップで、波形を任意波形発生器 または信号発生器にダウンロードします。 これで、テスト信号を再生する準備が完 了します。 図7. Keysightパルスビルディング用Signal Studio

パルスビルディング用

Signal Studio

このSignal Studio(N7620B)は、さまざ まなパルス形状とアンテナパターンのイ ンポート/ソフトウェア定義をサポート しています。 パルスパラメータ – 立ち上がり/立ち下がり時間 – エッジ形状 – ジッタ – パルス幅パターン – 変調オンパルス パターンパラメータ – パルス繰り返し回数 – パルス繰り返し間隔(PRI)/パルス繰 り返し周波数(PRF) – PRIパターン:バースト、リニア ランプ、スタグ、ステップ – PRIジ ッ タ: ガ ウ シ ア ン、 ユ ニ フォーム、U字型 – PRIウォブレーション:のこぎり 波、正弦波、三角波 – 振幅スケーリング – 周波数オフセット – 位相オフセット – 追加オフタイム 変調オンパルス – AMステップ – Barkerコード(7種類) – BPSK/カスタムBPSK – FMチャープ(リニア/ノンリニア) – QPSK/カスタムQPSK – Polyphaseコード アンテナ走査パターン – 円形 – 円錐 – カスタム – 双方向ラスター – 単方向ラスター – 双方向セクター – 単方向セクター アンテナ放射パターン – 方形 – コサイン(5種類) – ブラックマン(Blackman)/エグザク トブラックマン(Exact Blackman) – ハミング – 3項 – ユーザー定義

主な特長

テスト信号の生成

(続き)

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パルスビルディング用Signal Studioは、 さまざまなアンテナ・パターン・シミュ レーション機能を備えています。この機 能は、特に信号が多い環境の中で実際 の脅威を再現する必要があるELINT/EW アプリケーションに有用です。このよう なELINT/EWシステムの多くは、受信し た特定の脅威をアンテナパターン情報に よって識別しています。 レーダーは、通常、その役割によって指 定された走査アンテナまたは可動アンテ ナのビームを使用するので、多かれ少な かれ特徴的なレーダー・アンテナ・パター ンを備えています(図8)。例えば、船舶は、 海面上のあらゆる方向の物体を視覚化す るために回転走査パターンを使用してい ます。戦闘機は、気象レーダー用に前方 セクター走査を採用しています。ミサイ ル巡洋艦は、管制レーダー用にフェーズ ド・アレイ・アンテナを使用している場 合があり、巡洋艦から発射されたミサイ ルは、通常、円錐走査ターミナルレーダー を使用しています。 このような種類の脅威に応答するELINT/ EWシステムをテストするには、走査レー ダーを再現する適切なパルスパターンを 作成する機能が必要です。 Keysightパ ル ス ビ ル デ ィ ン グ 用Signal Studioは、船舶に共通して見られる円形 パターン、航空機に見られるセクターパ ターン、ミサイルで多く使用される円錐 パターン、管制用のフェーズドアレイで 代表的なラスター走査など、さまざまな アンテナ走査パターンをサポートしてい ます。

アンテナパターンのシミュレーション

テスト信号の生成

(続き)

図8. アンテナ走査パターン 回転走査 ラスター走査 双方向走査 単方向走査 回転走査 双方向走査 単方向走査 円錐走査

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走査アンテナを正確にシミュレートする には、アンテナのサイドローブの影響も 考慮する必要があります。すべての指向 性レーダー・ビーム・アンテナは大きさ が有限なので、必ず中心軸の外に複数の サイドローブを形成します。したがって、 レーダーが走査するときには、アンテナ パターンのメインローブより先にサイド ローブを捕捉し、次に、メインビーム、 最後に、その他のサイドローブを捕捉し ます。 走査アンテナとそのサイドローブによっ て生じる振幅変調とパルスエンベロープ 変調、さらに、パルス内部の圧縮変調を 結合する作業は、非常に複雑になる可能 性があります。 キーサイトはこの処理をパルスビルディ ング用Signal Studioによって簡素化し、 ユーザーがアンテナのサイドローブ、指 向角度、ターゲット位置、走査速度、ビー ム幅、ロール・オフ・レートを定義でき るようにしました。 パルスビルディング用Signal Studioを使 用して、ユーザーは一般的な空間変換ウィ ンドウを使用してアンテナの放射パター ンを定義することもできます。エネルギー の空間分布を表すために、ブラックマン、 ハミング、ハニング、方形、3項、コサイ ンの他、ユーザー定義のウィンドウも使 用できます。 図9. パルスビルディング用Signal Studioのアンテナ走査シミュレーション

パルス・パターン・ライブラリ

さまざまなパルスパターンを作成して複 雑なEW環境をシミュレートするニーズ は、複数の脅威に自動的に応答するよう にデザインされた高度な機器とともに進 化し続けています。多くの組織は、さま ざまなレーダー信号源からの放射を分類 し、EW装置や照準装置をあらかじめプロ グラミングして各脅威に適切に応答でき るようにしています。 パルスビルディング用Signal Studioは、 MicrosoftExcelのスプレッドシートなど の一般的なデータベースと接続できるよ うにデザインされているので、パルス特 性を容易にインポートできます。このイ ンポート機能により、容易に現実的なEW 専用シナリオを作成してレーダーや妨害 装置をテストできます。

テスト信号の生成

(続き)

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ダイナミックレンジに関して、軍事シナ リオの再生と、アナログ音楽の再生は非 常に似ています。記録のダイナミックレ ンジが狭い場合は、その記録をテスト信 号として利用してレーダー/EW装置の応 答を測定する価値はほとんどありません。 キーサイトの任意波形発生器/信号源は 可能な限り最高のSFDRを実現していま す。SFDRは多くのアプリケーションで 重要な選択基準です。これらの測定器の 利用価値をさらに高めるために、キーサ イトは、デジタル・ベースバンド・レー ダー・パルスのプリディストーションを 追加して性能を拡張できるようにしてい ます。 DACとその後段のコンポーネントの非線 形効果により、パルスを構成する周波数 成分の相互変調が生じてパルスパターン が歪むことがあります。相互変調成分に より、テスト信号のダイナミックレンジ が大幅に低下します。 パルスビルディングで合成された波形に デジタルプリディストーションを使用す れば、このような相互変調成分を抑圧し て非常に優れたダイナミックレンジを実 現でき、また、逆に、増幅してマージン テストに使用できます。 外部にN9030A PXAなどのシグナル・ア ナライザを追加すれば、合成されたテス ト・パルス・パターンを解析して、プリ ディストーション成分を信号源に追加し、 テストシステムの非線形性を補正できま す。この高度なテストシステムは使用す るのも簡単で、自動的に補正し、相互変 調歪み(IMD)成分を最小化することができ ます。 ここまで、キーサイト信号源でパルスビル ディング機能を用いて詳細なレーダー・パ ルス・パターンを作成する方法を説明して きましたが、レーダー/EWエンジニアが ミッションクリティカルな装置を構築する 際に、これらの測定器によってどのように 競争上の差別化を実現するのでしょうか? 次に、合成したテストレンジの例を用いて 利点を検証します。 図10. Keysight PSGによるデジタルプリディストーション

ベースバンドプリディストーション

テスト信号の生成

(続き)

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走査アンテナのシミュレーション

EWシステムをテストする信号発生器のア プリケーションを説明するために、艦載 早期警戒システムをテストする場合の問 題を検討します。この場合、EWシステム は軍艦に照射されたレーダーパルスを受 信し、それを解析して信号源の性質と信 号源に対する方位角を特定します。パル スパターンだけでなく、アンテナ走査パ ターンによって変化する振幅も検証して、 EW妨害装置システムに不可欠な情報を取 得できます。

合成レンジによるテスト

前述のように、レーダーのテストは困難 な場合があります。歴史的に、レーダー エンジニアは、フィールドのテストレン ジに依存しています。テストレンジは、 通常、複数の船舶や航空機を操縦して動 き回れるような広い領域で、これは、レー ダーが適切に対象の位置や速度を表示で きるかどうかを検証するために必要です。 フィールドテストは、ほとんどの場合、 現実的な環境を実現できますが、一般的 に、開発エンジニアにとっては可能性の 低い選択肢です。 フィールドテストは難しいという理由で、 レーダー・テスト・エンジニアの多くが合 成したテストレンジを作成する方法を選 択します。合成したテストレンジとは、レー ダー性能をテストするのに必要なさまざ まなレーダー反射エコーをシミュレート できるテスト機器を用いた構成です。 フィールドテストは、海岸、山脈、雲な どの環境条件をシミュレートするのに役 立ちますが、現実的な軍事シナリオをシ ミュレートするには実用的ではない場合 が珍しくありません。例えば、数十もの 航空機や軍艦で沿岸の早期警戒レーダー 基地に接近してフルスケールのアタック を編成するには莫大な費用がかかります。 同様に、フィールドテストには重大な安 全性の問題(衝突の可能性など)が伴いま す。これは、ラボテストにはない要素です。 最後に、大規模なフィールドテストでも、 多様なシナリオを調査できない場合がよ くあります。レーダーとターゲットを数 百マイルのレンジに何回も配備するコス トがかかりすぎるため、レーダー/EW/ ELINTレシーバーの機能を完全に明らか にすることはできません。同様に、宇宙 船レーダーシステムをテストする場合は、 フィールドテストのコストは非常に膨大 になります。 キーサイトの信号発生器、任意波形発生 器、パルスビルディング用Signal Studio を組み合わせて使用すれば、ラボ環境で 合成したテストレンジを作成して、この ような問題を解決できます。これは、多 くのレーダー/EWエンジニアに望まれて いる環境です。 テスト戦略を成功させる鍵は、現実的な レーダー・パルス・パターン・セットを 準備することと、EW妨害装置システムが、 ジャミング、距離欺瞞(Range Gate Pull Off)、チャフ散布などの適切な対策を行う かどうかを確認することです。次の例で、 EWシステムが、レジャー用船舶のレー ダーや超低空飛行ミサイルからの信号に どのように応答するのかを紹介します。 このテストを実装するために必要なのは、 Keysightパ ル ス ビ ル デ ィ ン グ 用Signal StudioとPSGのみです。適切なレーダー パルス定義とアンテナパターンを使用し て、さまざまな脅威をKeysight PSGから EWシステムに対して再生出力し、適切な 対策を行うかどうかを確認できます。レ ジャー用船舶の場合は何も発動されない はずですが、ミサイルの場合は、EWシス テムが適切な妨害装置を起動しなければ なりません。 キーサイトの測定器によって合成したテ ストレンジを使用すれば、「実弾」訓練の コストの数分の1で現実的な艦載装置を テストでき、さらに、優れたトレーニン グシミュレータも実現できます。例えば、 メンテナンスまたは補給のために港に停 泊する軍艦を使用する場合です。キーサ イトの信号源を中心に、合成したテスト レンジを構築して使用すれば、隊員が現 実に近いさまざまな軍事シナリオに対処 するためのトレーニングに艦載レーダー とEWレシーバーを使用できます。よく知 られている海上訓練の欠点は敵の軍隊に 警戒されることですが、この方法を用いれ ば警戒されずに行うことができます。

(15)

コヒーレントなマルチチャネル・

レシーバー・テスト

キーサイトの信号源とパルスビルディン グ用Signal Studioを構成して、フェーズ ド・アレイ・レーダーをシミュレートで きます。このようなシステムは多数のレ シーバー入力を備え、入力エコーが到達 するときの位相に基づいて動作します。 この場合、受信信号で、遠方から到達す る複数のレーダーエコーを含む波面を再 現しなければならないので、テストが複 雑になる可能性があります。 キーサイトは、PSG(E8257D、E8267D)、 MXG(N5181B、N5182B)などの信号源 によって、このニーズに対応しています。 各信号源はコヒーレントにフェーズロッ ク可能で、信号源間が一定の位相関係に なるように調整する機能を備えています。 この機能により、キーサイトの信号源 は、マルチチャネル・フェーズド・アレ イ・システムのパルス波面の到達を再現 できます。考えられるさまざまな手法が、

Signal Source Solutions for Coherent and Phase-Stable Multi-Channel Systems(カタログ番号5990-5442EN)に 記載されています。 図11. フェーズド・アレイ・レーダー用の合成したテストレンジの作成 波面 遅延 レーダーパルス フェーズドアレイ レシーバー レシーバー 位相調整可能な 信号源による コヒーレントな 複数チャネル 反射 エコ ーパ ルス 1 2 3 4 1 2 3 4

PSG

PSG

PSG

PSG

合成レンジによるテスト

(続き)

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システムシミュレーション/

信号作成用の環境の選択

高度なレーダーシステム、特に高性能マ ルチモードシステムでは、信号処理アル ゴリズムが重要な役割を果たします。ア ルゴリズムの作成は複雑なプロセスで、 開発者が、レーダーのさまざまな構成要 素/機能の豊富なモデルセット(信号発 生、マルチエミッター、伝送、アンテナ、 トランスミッター/レシーバー、スイッ チング、クラッター、ノイズ、ジャミン グ、受信、信号処理、測定)を利用できる 場合に効率が向上します。 Keysight W1905レーダー・モデル・ラ イブラリは、Keysight SystemVueのシス テムレベルのデザイン環境内で動作しま す。SystemVueは、ベースバンド/RFで の物理層アーキテクチャーに焦点を当て たオープンなモデリング環境です。汎用 的なデジタル環境、アナログ環境、演算 環境の代わりに使用できるので、さまざ まなFPGAや内蔵ハードウェアのデザイン フローに接続できます。 W1905ライブラリには、50種類を超え る高度にパラメータ化されたシミュレー ションブロックがあり(23ページの付録を 参照)、さらに、40種類を超える上位レ ベルのリファレンスデザインがあります。 これを使用して動作中のレーダーシステ ムのシナリオを作成できます。このシナ リオには、レーダー処理ブロック、クラッ ターなどの環境効果、ターゲットの他、 ハードウェア測定まで含めることができ ます。ライブラリは、パルスドドップラー (PD)レーダーのアーキテクチャーだけで なく、超広帯域(UWB)レーダー、デジタ ルアレイ、ビームフォーミング、周波数 変調連続波(FMCW)レーダーにも適用で きます。開発者はこれらのツールを使用 図12. SystemVue/W1905ライブラリで作成したクラッター/ジャミングを伴う反射信号。 してさまざまな種類のレーダーシステム をモデリングでき、レーダー信号処理ア ルゴリズムを作成して、システム性能を 検証し、デザインを実証できます。 W1905ライブラリは、アルゴリズムや ハードウェアの検証用に厳密な信号を作 成する必要がある場合や、さまざまな条 件でレーダーシステムの性能を調査した い場合にも最適です。例えば、レシーバー テストの特徴は、クラッター、マルチパ ス、アンビギュイティなエコー、ジャミ ング干渉、チャネル障害が存在する環境 で性能を調査することです。SystemVue は、これらのニーズに対応できるモデリ ング機能を提供しています(図12)。

合成レンジによるテスト

(続き)

(17)

開発中にデバイスをテストするために、 SystemVueを使用して非常に現実的な マルチエミッターのテスト信号を作成で きます。これを可能にしている主なテ ク ノ ロ ジ ー の1つ に、SignalCombiner と呼ばれるSystemVueの機能がありま す。この機能によって、シミュレーショ ン環境内でマルチエミッター信号を作 成/合成できます。リサンプリングに よってマルチエミッターを1つの波形に 合成し、M8190Aなどの高精度任意波形 発生器にダウンロードして再生できま す。詳細については、アプリケーション ノ ー トCreating Multi-Emitter Signal Scenarios with COTS Software and Instrumentation( カ タ ロ グ 番 号 5991-1288EN)を参照してください。 1 図13. レーダーテスト信号を作成するソフトウェアと測定システムの構成例 1. アプリケーションノート5991-1288ENの6ページの「結果、パート2」のセクションに、16個のレーダー信号、8個のBarkerコード、8個のLFM チャープを含むマルチエミッター環境の作成方法が紹介されています。

SystemVue

信号発生器

DUT

シグナル・アナライザ

レーダー信号の作成の概要については、 図13を参照してください。この構成で は、SystemVueのインタフェースモデル ( “Sink”)がPSG/MXGなどのベクトル信号 発生器に接続されています。SystemVue シミュレーションで作成したあらゆる レーダー波形は、実行時に自動的に信号 発生器にダウンロードされます。この信 号発生器でRF/IFテスト信号を出力できま す。さらに、シグナル・アナライザで捕 捉した波形をSystemVueに転送して処理 し、シミュレーションに使用することも できます。

合成レンジによるテスト

(続き)

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この種類のシミュレーションプラット フォームを適切な入力/応答測定システ ムに接続すれば、欠けているハードウェ アブロックを手動で模擬して、動作中の レーダーシステムをシミュレートするこ とができます。この方法によって、開発 プロセスの早い段階で、ハードウェアを 部分的に実装して動作させている場合で も、システムレベルの検証が可能になり ます。実際のハードウェアを使用できる ようになれば、シミュレーションプラッ トフォームの用途を簡単に元に戻すこと ができ、テストに使用する測定システム 用に目的のレーダー信号を作成できます。 高度な解析向けに、SystemVueおよび W1905ラ イ ブ ラ リ を89600 VSAソ フ ト ウェアと組み合わせることができます。 89600 VSAの汎用性の高い規格に準拠し たツールによって、タイムドメイン、周 波数ドメイン、変調ドメインで信号特性 を測定できます。ソフトウェアは、PC上 でもキーサイトのシグナル・アナライザ、 ロジック・アナライザ、オシロスコープ 上でも動作します。 さらに、SystemVueと89600の組み合わ せは、実装されたハードウェア性能の検 証に使用できるさまざまなテスト機器に 接続することができます。具体的には、 N9030 PXAな ど の シ グ ナ ル・ ア ナ ラ イ ザ、16800などのロジック・アナライザ、 Keysight Infiniium 90000 Xシリーズなど のオシロスコープなどに接続できます。 図14. クラッターモデルを用いたパルスド・ドップラー・レーダーのターゲット反射のMATLABの3次元表示 SystemVueをMATLABと統合することも でき、複雑なレーダー信号を解析/表示 できます(図14)。機能には、MATLABの 数学/演算関数を使用するSystemVue内 のすべての演算モデリングが含まれてい ます。

合成レンジによるテスト

(続き)

(19)

図15. 非常に発生頻度の低い信号を確認/捕捉/理解できるリアルタイムPXA アンビギュイティの低減と分解能/レン ジの向上のために開発者が圧縮テクノロ ジーを採用するようになって、レーダー パルス解析はますます困難になりました。 この手法では、広い帯域幅、変調解析、 マルチドメイン表示などの機能を使用で きる解析機器が必要になります。 開発者は、ソフトウェア定義レーダーアー キテクチャーも組み込んで、従来のアナ ログIF/ベースバンド信号処理を、安定し た柔軟なデジタル実装に急速に置き換え ています。これによってもテスト上の問 題が生じます。アクセスする信号および 信号フォーマットがベースバンドからRF へと根本的に変わるからです。 ペクトラム・アナライザ、ベクトル・ネッ トワーク・アナライザ、コンビネーショ ン・アナライザ と し て 構 成 で き、 最 大 26.5 GHz.の周波数をカバーしています。 Xシリーズには4種類のモデルがあり、そ のうちの2つはレーダーアプリケーション に最適です。高性能PXAは160 MHzの解 析帯域幅を備え、汎用MXAは速度、性能、 コストパフォーマンスが非常に優れてい ます。最新の拡張機能は、PXAのリアル タイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA) 機能です。リアルタイム・スペクトラム・ ア ナ ラ イ ザ は 最 大160 MHzの リ ア ル タ イム解析帯域幅を備え、新しいPXAにも 既存のPXAにもアップグレードオプショ ンとして追加できます。リアルタイム・ スペクトラム・アナライザによって、リ アルタイム解析と従来のスペクトラム測 定を1台の測定器で実行できるコストパ フォーマンスの高いソリューションを構 築できます(図15)。リアルタイムPXAは、 以下の機能を備えています。 – 3.57 μsという短い持続時間の信号に 対して100 %の捕捉確率(POI)を実現 – −157 dBmのノイズフロア(10 GHz、 プリアンプなし) – 75 dBのスプリアス・フリー・ダイナ ミック・レンジ – さまざまな条件を設定できる周波数 マスクトリガ(FMT) このような問題に対応するために、キー サイトは、さまざまなフォーマットのレー ダー信号を表示するのに必要な性能と柔 軟性を備えた解析用測定器を開発しま した。

キーサイトの解析ツール

あらゆるコストパフォーマンスでさまざ まなニーズに対応するために、ベンチ トップ型のXシリーズシグナル・アナラ イザと2種類のポータブル・アナライザを 提供しています。ポータブルモデルには、 ハンドヘルド・スペクトラム・アナライ ザ(HSA)とFieldFoxファミリーがありま す。HSAモデルは、フィールドで基本的 なスペクトラム・アナライザ測定を最大 20 GHzまで実行でき、測定システムやメ ンテナンスのアプリケーションに最適で す。FieldFoxハンドヘルド・アナライザ は、ケーブル/アンテナ・アナライザ、ス 図16. キーサイトの信号解析ツールのラインナップ

レーダー信号の検証/解析

(20)

複雑な信号を解析するときには、89600 VSAソフトウェアをXシリーズシグナル・ アナライザの外部でも内部でも使用でき ます。89600 VSAでは、タイムドメイン 機能や周波数ドメイン機能の他に、圧縮 レーダーパルスの変調ドメイン測定も可 能です。さらに、VSAソフトウェアで周 波数マスクトリガなどのリアルタイム・ スペクトラム・アナライザ機能も使用で き、問題の原因になる信号の捕捉/再生 もサポートしています。 超広帯域アプリケーション向けに、キー サイトは高性能デジタイザおよびオシ ロ ス コ ー プ も 提 供 し て い ま す。 例 え ば、M9703Aは、DCか ら2 GHzま で の 信号を捕捉できる8チャネルの12ビット AXIeデジタイザです。4チャネルで最大 3.2 GSa/s、8チャネルで最大1.6 GSa/s のサンプリングが可能です。M9703Aは 最大4 GBのメモリを内蔵しているので、 長時間の収集に対応できます。別の選択 肢としてInfiniium 90000 Xシリーズ/Qシ リーズオシロスコープもあり、これらは、 最大63 GHzの帯域幅、最大160 GSa/sの サンプリング、最大2 Gポイントのメモ リを備えています。高度な解析を行う場 合 は、M9703A、90000 Xシ リ ー ズ/Qシ リーズオシロスコープで89600 VSAソフ トウェアを使用することができます。 解析ツールの機能を説明するために、以 降では有用な測定例を紹介します。この 概要では、最初にパルス解析などの不可 図17. 89600 VSAソフトウェアによるチャープパルスの表示 欠な測定を紹介し、次に困難な信号品質 測定、最後にソフトウェア定義レーダー の測定機能について説明します。

オシロスコープを使用するのか、シグナル・アナライザを

使用するのか

解析の要件によって、オシロスコープを使用するのか、あるいは、シグナル・ア ナライザを使用するのかを決定できます。キーになる要素は、解析帯域幅と必要 な測定チャネル数です。その他の要素として、ダイナミックレンジ、スプリアス 性能、エラーベクトル振幅(EVM)測定があります。 現在、最も高性能のシグナル・アナライザの最大解析帯域幅は160 MHzです。 したがって、必要な解析帯域幅が160 MHz以下の場合は、シグナル・アナライ ザもオシロスコープも使用できます。より広い帯域幅が必要な場合は、高性能オ シロスコープが最適です。 複数の位相コヒーレントなチャネルが必要な場合も、オシロスコープが最適な場 合がほとんどです。1チャネルで十分な場合は、通常、PXAなどのスタンドアロ ンのシグナル・アナライザの方が、別の要素(ダイナミックレンジ、スプリアス 性能、EVM性能、測定速度)で優れています。

レーダー信号の検証/解析

(続き)

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図18. N9051A測定ソフトウェアによるパルス解析 図19. W2650A オシロスコープ・シグナル・アナライザによ る高度なパルス解析には、ヒストグラム表示による統計機能も 含まれています

パルス解析

レーダー/EW/ELINTシステムには、さ まざまなルーチン測定が必要です。前述 のように、パルス幅とPRI(PRF)の測定 によって、レーダーシステムの分解能、 レンジなどの重要な情報が得られ、潜在 的に重要なインテリジェンス情報が明ら かになります。パルスパラメータの自動 測定によって、レーダーの診断が高速に なり、豊富なEW情報を取得できます。 2つのソフトウェアアプリケーションを 使用して、これらの測定を自動化でき ます。PXA/MXAシグナル・アナライザ はN9051Aパルス測定アプリケーショ ンと組み合わせて構成でき、Infiniium 90000な ど の オ シ ロ ス コ ー プ に は W2650Aオシロスコープ・シグナル・ア ナライザ(OSA)ソフトウェアを搭載でき ます。XシリーズアナライザにN9051A を追加するのが適しているのは、高いダ イナミックレンジが必要で、帯域幅が 160 MHz未満、スペクトラム/スプリ アス測定が必要な場合です。マルチ表示 によって、パワー対時間、周波数対時 間、位相対時間、パワー対周波数を同時 に解析できます。基本機能として、PRI、 PRF、パルスパラメータ(幅、デューティ サイクル、立ち上がり/立ち下がり時 間、ドループ、オーバーシュート、リッ プル)などがあります。拡張解析オプショ ンにより、最大200,000個のパルスをト レンド解析またはヒストグラムツールに よって統計解析できます。

レーダー信号の検証/解析

(続き)

オシロスコープにW2650Aを搭載すれ ば160 MHzを 超 え る 帯 域 幅 に 対 応 で き、ダイナミックレンジよりも帯域幅が 重要な場合に適しています。このオシ ロスコープはセグメントメモリも備え ていて、長時間の連続パルスの解析を 簡単に行えるようになります。パルス 解析向けに、主要な機能として、PRF、 PRI、パルス周波数(平均値、最大値、最 小値、偏差、変位)、パルス変調(チャー プ、Barker)などがあります。W2650A は、CW測定と、周波数ホッピング信号 パターンや持続時間などの変調測定もサ ポートしています。

(22)

ソフトウェア定義レーダーアーキテク チャーでは、信号フォーマットが使い慣 れた同軸アナログマイクロ波伝送ライン からFPGAのデジタルバスに変わるので、 テストに独自の問題が生じます。このよ うなアナログ/デジタルミックスド信号 を用いた実装では、まったく異なる信号 フォーマットで一貫した結果を取得して 高度な変調パルス解析を実行しなければ なりません。 89600 VSAソ フ ト ウ ェ ア は さ ま ざ ま な キーサイトの測定器と接続できます。例 えば、シグナル・アナライザ、オシロス コ ー プ、ロ ジ ック・ア ナ ラ イ ザ な ど で す。 こ れ ら の 測 定 器 は、 信 号 収 集 向 け のアナログ/デジタルフロントエンド と し て 使 用 で き ま す。 さ ら に、89600 VSAは、Keysight Advanced Design System(ADS)回路モデリングソフトウェ アで使用できます。同じVSAアルゴリズ ムを使用してアナログ信号とデジタル信 号を処理できるので、測定器で測定を実 行する手順を習得するプロセスが簡単に なるだけでなく、複数の測定の一貫性も 実現できます。 16800 ロ ジ ッ ク・ ア ナ ラ イ ザ を89600 VSAのフロントエンドとして使用すれば、

Keysight ATC2 FPGAデザインコアを使 用できます。ATC2デザインコアを使用 すれば、サポートされているXilinx社や Altera社のFPGA内部データバスにシーム レスにアクセスすることができ、FPGAの リアルタイムデザイン実装時に高度な信 号解析が直接行えます。

パルス

圧縮

レーダー

波形 エキサイター DAC PA LNA IF COHO STALO アンテナ 同期

I/Q

ディテクター パルス圧縮フィルター (相関フィルター) I Q VSA ロジック・アナライザVSA オシロスコープVSA シグナル・アナライザVSA ADSシミュレーションVSA 図20. 89600 VSAソフトウェアによるマルチフォーマット解析

89600 VSA

によるマルチフォーマット解析

レーダー信号の検証/解析

(続き)

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(24)

まとめ

最新世代のレーダー/EWシステムは、さ まざまな周波数バンドで動作し、広帯域 または超広帯域信号を使用して、非常に 複雑な変調方式で伝送を行います。これ らのシステムは高度なDSPも使用して、 それらの動作を不可視化したり偽装した りしてジャミングを防止しています。 これらのシステムの進化に伴い、テスト 信号の作成、複数エミッターによる合成 したテストレンジの作成、レーダー信 号/システムの検証/解析に必要なソ リューションの性能と機能の実現はます ます困難になります。このアプリケーショ ンノートで説明したように、相互接続/ 通信できる電子計測器/ソフトウェアに よって柔軟な構成でさまざまな有用なソ リューションを実現できます。 – 信号作成には、高分解能、広帯域幅 のM8190A任意波形発生器と高度な パルスビルディング用Signal Studio などのツールを使用して、非常に現実 的な信号シナリオを作成できます。 – 信号解析には、PXAの優れた解析帯 域幅とダイナミックレンジを使用で き、さらに、オプションでリアルタ イム・スペクトラム・アナライザ機 能も利用できます。 – 高度な信号解析が必要な場合は、マ イクロ波周波数用のXシリーズシグ ナル・アナライザ、UWB解析用の Infiniiumオシロスコープ、デジタル 信号用の16800ロジック・アナライ ザに、89600 VSAソフトウェアを使 用して、タイムドメイン、周波数ド メイン、変調ドメイン機能を追加す ることができます。 このようなすべてのソリューションによ り、今日直面している問題に対応できる だけでなく、現在は想定していない突発的 な要件に対応する備えも可能になります。

(25)

myKeysight

www.keysight.co.jp/find/mykeysight

ご使用製品の管理に必要な情報を即座に手に入れることができます。

www.axiestandard.org

AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、

AdvancedTCA®を汎用テストおよび半導体テスト向けに拡張したオープン規格 です。Keysightは、AXIeコンソーシアムの設立メンバーです。 www.lxistandard.org LXIは、ウェブへのアクセスを可能にするイーサネットベースのテストシステム 用インタフェースです。Keysightは、LXIコンソーシアムの設立メンバーです。 www.pxisa.org

PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラー測定システムは、PCベー スの堅牢な高性能測定/自動化システムを実現します。

www.keysight.com/go/quality

Keysight Electronic Measurement Group DEKRA Certified ISO 9001:2008 Quality Management System

契約販売店 www.keysight.co.jp/find/channelpartners キーサイト契約販売店からもご購入頂けます。 お気軽にお問い合わせください。 www.keysight.co.jp/find/ad 受付時間 9:00-18:00 (土・日・祭日を除く) contact_japan

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