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巻頭言

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

研究科長 山 田 聡 子

「今の発表内容は研究といえるのか」。これは、私が大学院生だった 20 余年前、修士課程の研究 計画発表会や論文発表会でたびたび飛び交った言葉です。全国の看護系大学がようやく 20 校を超 え、大学院修士課程・博士課程の設置数も増えつつあった時期でした。冒頭の発言を発端に、医学 や保健学を背景とする教授陣と看護学の教授陣との白熱した議論が展開されたことを覚えていま す。当時は看護学という学問の独自性を説明することに多くの研究者がエネルギーを傾けていたよ うに思います。 医学とは異なる学問分野として日本でもようやく認められた看護学は、他分野の研究法を参考に しながら看護に関わる概念分析や現況分析、看護介入の効果測定など、多くの研究成果が発表され 現在に至っており、「研究と言えるのか」という批判を耳にすることは無くなりました。果たして 看護学という学問は確立したと言えるのでしょうか。 あくまで私見ですが、「道半ば」だと思います。看護学では先行研究に基づくレビュー論文が多 くはありません。系統的な研究成果の構築が不十分であるということです。レビューに取り組む研 究者が少ないこともあるかもしれませんが、先行研究を丁寧に検討し自己の研究課題の基盤を確認 するステップが重視されていない風潮を感じることがあります。 エビデンスとなる看護介入方法の効果測定に関する研究成果も十分ではないと感じます。「暗黙 知」と表現される「感覚的にわかっていること」が看護には多く存在します。伝統や慣習を尊重す る文化的土壌も持ち合わせているのが看護です。暗黙知を形式知に変換する事や、伝統や慣習を見 直して継承すべきことと改新すべきことを整理する研究が大切になると考えます。 先行研究を丁寧に検討した結果や、暗黙知を形式知に変換する取り組み、伝統や慣習の見直し は、華々しい研究成果に直結しないかもしれません。しかし、地味だとしても、小さいことからコ ツコツと成果を積み重ねることは看護学研究において欠かせない大きな成果につながると思いま す。そのような小さな成果発表の場として、本学紀要は最適なのではないかと思います。「日本赤 十字豊田看護大学紀要には、研究課題の基盤として有益な論文がたくさん掲載されている」という 評判が立つ日が近いような、そんな予感がします。 ― 1 ―

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