総合観光学会誌『総合観光研究』第 19 号 2021 年 3 月 Japanese Journal of Tourism Studies,No.19 March 2021
毛受敏浩(2017)『限界国家―人口減少で日本が迫られる最 終選択』朝日新聞出版. 森田美佐子・川原 晋(2013)「観光地におけるバリアフリ ーの考え方と進め方に関する研究―高山市の行政主催 モニターツアーと市民まちづくり活動に着目して」『観 光科学研究』第6 号 95-101. 諸富 徹(2018)『人口減少時代の都市―成熟型のまちづく りへ』中央公論新社.
国際線航空券の様式の変遷に伴う発券制度の変化について
―航空券様式の発展による発券実務への影響―Changes in the Ticketing Procedures due to the Transition of International Airline Ticket Forms
―Effects Caused by the Development of Airline Ticket Forms on Ticketing Practices―
伊藤洋三* Yozo ITO
キーワード(Keywords):航空券発券(Airline Ticket Issuance),発券制度(Ticketing Procedures), 集中精算制度(Billing and Settlement Plan)
1.はじめに 1) 国際線での航空券発券制度について 観光において人の移動を担う航空輸送については, 従来から主に航空会社の事業運営について研究が行 われてきている.航空会社と航空輸送の受益者であ る旅客との接点となる旅客サービスについては,航 空機の客室内等における人的サービスについての文 献が大半を占める.旅客サービスに関するルール面 からの規定である座席予約,航空券発券などの旅客 取扱制度については,航空会社の業務紹介の域を超 える記述はほとんど見出せない.旅客取扱制度の変 遷が旅客サービスへ与える変化を考察することによ り,旅行代理店などの関連産業ならびに消費者の商 習慣等にどのような影響を与えるのかについての研 究が深まることが期待される. 航空輸送では予約と発券の概念が分離している (IATA RSM,2016).予約と発券についての規則を 定める予約制度,発券制度については,各国の国内 線では独自の発展形態が見られるものの,国際線に おいては共通の制度を使用して各国の航空会社が乗 り継ぎ等の連帯運送を行う必要性から,政治体制等 に関わらず世界共通の制度が用いられてきた. 予約と発券の関係については,座席使用権の確保 を行う予約に引き続き,その証憑として航空券の発 券が行われる.本研究ノートでは様式の変遷を形と して捉えやすい航空券について,変遷の歴史を振り 返り,実務者へのインタビューを通して,その発展 による発券実務への影響を考察することを目的とす る.航空会社間で共通に用いられる国際線発券制度 の変遷を考察することにより,旅客取扱制度の変化 に留まらず,旅客サービス全般の進展について個別 航空会社の施策の影響を排除した上で傾向を明らか にすることが期待できる. 2) 研究方法 発券制度の変遷については IATA(International Air Transport Association―国際航空運送協会)が 毎年刊行する各会議体でのResolutions(決議)によ り確認が可能である.一方で発券実務に与えた影響 を考察するに当たっては当事者でなければ知り得な い事実もあることから,航空券様式の変遷の時代ご とにIATA,航空会社,旅行代理店において,旅行代 理店制度,発券制度,発券実務に関わった経験者へ のインタビューを行い,様式の推移とその影響につ いて調査した.(表―1) A 氏は 1970~80 年代に国際線旅客の営業制度を 担当し,1990~2000 年代に日本 BSP(Billing and Settlement Plan―集中精算制度)の運営に携わった こ と か ら ,1980 年 代 の TAT ( Transitional Automated Ticket―移行期自動航空券)による自動 /機械式発券の導入,1990 年代の ATB(Automated Ticket and Boarding Pass―搭乗券一体型自動航空 券)の導入,ならびに2000 年代の ET(Electronic Ticketing―電子航空券)導入,BSP 運営について, 筆者が1990~2000 年代に国際線発券システムの企 画に携わった際に聞き取りを行った. B 氏は 1970 年代に IATA としての BSP 立ち上げ に携わったことから,BSP 制度とその背景について 2020 年 6 月に e メールによる聞き取りを行った. *立教大学観光研究所リサーチアシスタント 研究ノート
表―1 インフォーマント A 氏 1960 年代に日系航空会社に入社 B 氏 英国出身で 1960 年代に IATA 本部に入社 C 氏 米国出身で 1990 年代に米国航空会社収入 管理部のマネージャー D 氏 1980 年代に日本の大手旅行代理店に入社 C 氏 は 1990 年 代 に IATA の DISG ( Data Interchange Sub-Group)の議長であったことから, 米国内での1970~80 年代の自動発券データの取り 扱いについて 1990 年代に筆者が航空会社メンバー としてDISG 会議に出席していた際に聞き取りを行 った.DISG は CRS(Computer Reservation System) /GDS(Global Distribution System)から BSP へ 旅行代理店別の発売データを報告する Reporting Tape と,BSP がそのデータを航空会社別に仕分け した後に航空会社へ発売データを報告する Hand-Off Tape についての取り扱い方式,データフォーマ ットについて専門的に協議を行い,DISH(Data Interchange Specifications Handbook)として制度 化 し て 上 部 組 織 で あ る IATA Passenger Agency Conference(旅客代理店会議)に上程していた. D 氏は旅行代理店において仕入企画及び発券とい う航空座席手配を担当していたことから,1980 年代 から現在に至るまでの発券制度の変遷が発券実務へ 与えた影響について 2019 年 8 月 20 日に聞き取り を行った. 他に,インフォーマントとして明記していないが, 1980 年 代 後 半 ~ 1990 年 代 の IATA Passenger Agency Conference , IATA Passenger Services Conference(旅客サービス会議)において筆者が航 空会社メンバーとして出席していた折に,他航空会 社の出席者より聞き取りを行った内容についても記 述の参考とした. 2.国際線航空券の発券に関わる環境 国際線航空券の発券は発券制度に準拠して行われ るが,発券制度自体も関係する制度の制約を受ける ため,それらの周辺制度について考察する. 1) IATA と ATA
IATA と ATA ( Air Transport Association of America―現 Airlines for America)は,歴史的に ATA が米国の航空会社を統括し,IATA がそれ以外 の地域の航空会社を統括している.両組織が個別の 決議を有するConference(会議体)で共通の制度を
定める場合,合同会議を行い,同一議題について, それぞれの議長により別個に決議を採択する.一例 としてIATA Passenger Services Conference は,実 際 に は IATA/ATA Joint Passenger Services Conference の一部として開催される. 2) 旅行代理店 一般的に旅行会社と呼称される業種は,当初は航 空券を含む船車券類の代理販売から興ったため,以 前は旅行代理店と呼ばれていた.その後にパッケー ジツアーに代表される旅行全般を販売するようにな ったため旅行会社という呼び方が定着した.本論で は旅行会社の業務のうち,航空券の発券という代理 販売行為に着目しているため,旅行代理店の名称を 用いる.
旅行代理店がIATA Accredited Agent(IATA 公認 店舗)であっても,特定航空会社の航空券の発券に 使用するためのCIP(Carrier Identification Plate ―航空会社発券プレート)を当該航空会社から貸与 されていない場合には,その航空会社の発券は行え ない.このため旅行代理店の担当者が当該航空会社 の発券カウンターを訪れて発券を依頼する持ち込み 発券と呼ばれる代理販売も行われた.その場合にも 旅行代理店への発券手数料の支払いは行われた. 3) BSP BSP は,旅行代理店と航空会社間の集中精算制度 である.個々の代理店が,取り引きする全航空会社 と精算を行う煩雑さを避けるために,通常は1 カ国 に 1 つ設置される BSP が,関係する全代理店,全 航空会社間の精算を一括処理する.B 氏によれば, 1960 年代後半に IATA は米国における ASP(Area Settlement Plan―集中発券制度)の導入に倣い,複 数の国において BSP の導入を検討していた.1971 年3 月 1 日には世界で最初の BSP が日本に導入さ れた(IATA Japan,2001).当初は Bank Settlement Plan の略であったが,後に Billing and Settlement Plan に改称された.B 氏によれば IATA が中東地域 への BSP 導入を図るに際して, Bank という用語 をイスラム文化圏で用いるのを避けるためであった. ET が登場する以前の紙の航空券では,旅行代理 店が使用する BSP 航空券は航空券番号 13 桁のう ち,上位 3 桁により示される Airline Accounting Codes(発券航空会社番号)が空欄となっており,航 空券番号の残り 10 桁であるシリアル番号のみが予 め印刷されていた.また航空会社のロゴ欄が空欄と なっていた.固有の航空会社に帰属しない航空券で あることからNeutral(中立)航空券と称される. BSP において精算処理を行う部門は DPC(Data Processing Centre)と呼ばれる.多くの BSP にお いて,Clearing Bank(決済口座受託銀行)が,DPC についてもBSP より受託して運営を行う.日本 BSP 設立時は当時の勧業銀行(現在のみずほ銀行)が Clearing Bank と DPC を受託した. B 氏によれば集中精算方式は米国において, ASP として ATA が IATA に先行して 1964 年に開始し た.ASP では,DPC に相当する ARC(Airlines Reporting Corporation)という民間会社が ASP 参 加航空会社の出資により設立された.ARC は BSP と同様に中立航空券 である ARC 航空券を配布して いた. 4) 収入管理部門 航空会社における航空券の事務処理では売り上げ 金の入金のみならず,自社の発券事業所や旅行代理 店に配布した航空券が適正に使用されているかを管 理 す る 必 要 性 が あ る た め , 当 初 か ら Revenue Accounting(収入管理)部門を経理部門とは別個に 設けて航空券売り上げに関わる会計処理を専門的に 行っていた.最終的な売り上げ金額は収入管理部門 から経理部門へと報告された. 航空会社の支店あるいは旅行代理店からの航空券 の発売報告後に収入管理部門において行われる発売 審査では,収入金は預り金として科目計上される. その後,旅客の空港でのチェックイン後に収入管理 部門で行われる搭乗審査により売り上げとして収入 に計上される.発売審査では,航空会社の支店や旅 行代理店での発券が運賃ルールに基づき適正に行わ れたかについて審査を行うが,収入管理業務の当初 は発売審査時にManual Ticket(手書き航空券)の 審査用片から航空券番号と発売額を手入力で登録し, 搭乗審査では搭乗用片の航空券番号を手入力するこ とにより,発売データと搭乗データのマッチングが 行われた.時代が下ると,自動発券のための印字内 容である発券データに収入管理のための補足情報を 追加して,発券システムが発売データを生成するよ うになった.航空券が発券されてから収入計上され るまでの一連の流れでは発売データは後続システム である収入管理システムに連動される.搭乗審査に おいても,後には航空券のバーコードや磁気ストラ イプから航空券番号を自動読み取りして,搭乗デー タとして収入管理システムに連動し,最終的には発 売データとのマッチングが行われた. 紙の航空券の時代には,旅客の空港でのチェック イン後に,引き上げた搭乗用片について,収入金額 確定のために本社の収入管理部門への送付を早急に 行う必要があるため,航空会社の空港部門は搭乗用 片を次の便にPurser Care(客室乗務員扱い)の手 荷物として積み込んで送付していた.国際線で運航 頻度が週1 便である場合には搭乗用片の送付が 1 週 間後となることもあり,また物理的に用片を送付す るために輸送途中での紛失等が発生するリスクも存 在した. 3.国際線航空券の変遷について 国際線航空券は,当初の Manual Ticket から, TAT,ATB,ET へと変遷してきた. 日本における自動発券航空券の導入年代としては, 1981 年 1 月に複写式の TAT へ Dot Impact(ドット インパクト)プリンターを用いる発券が開始され, 1997 年 4 月には航空券とボーディングパスが一体 化し,各用片が独立して印字される ATB が導入さ れた後, 2001 年 2 月に紙の航空券を用いない ET が導入された(IATA Japan,2001). 1) Manual Ticket IATA の発足当時より使用されていた航空券であ る.複写式であり,当初は各用片の間にカーボン紙 を挿入して記入していたが,後には複写式の用片が 使用された.A 氏によれば,用片の構成としては, Audit Coupon(発売審査用片),Agent Coupon(発 行所用片),2 片もしくは 4 片の Flight Coupon(搭 乗用片),Passenger Coupon(旅客用片)という順 序で綴じられていた.発券担当者は,発券後に審査 用片と発行所用片をミシン目により切り離して引き 上げ,搭乗用片と旅客用片を旅客に手交した.審査 用片は収入管理部門へ送付して発売審査に用いられ た.発行所用片は発券した事業所で保管した.旅客 に手交された搭乗用片は便への搭乗の都度,空港の チェックインカウンターで引き上げられ収入管理部 門で搭乗審査に用いられた.このため,旅客の手元 に最終的に残るのは,全旅程と収受金額が記載され た旅客用片のみであった. 旅行代理店は発券に際して代理発券を行おうとす る発券航空会社の航空会社番号3 桁を記入し,航空 会社から貸与されたCIP により,発券航空会社の名 称とロゴを,インプリンターを用いて航空券に印字 した.インプリンターには発券代理店のIATA 公認 店舗番号が刻印された代理店プレートもセットされ
表―1 インフォーマント A 氏 1960 年代に日系航空会社に入社 B 氏 英国出身で 1960 年代に IATA 本部に入社 C 氏 米国出身で 1990 年代に米国航空会社収入 管理部のマネージャー D 氏 1980 年代に日本の大手旅行代理店に入社 C 氏 は 1990 年 代 に IATA の DISG ( Data Interchange Sub-Group)の議長であったことから, 米国内での1970~80 年代の自動発券データの取り 扱いについて 1990 年代に筆者が航空会社メンバー としてDISG 会議に出席していた際に聞き取りを行 った.DISG は CRS(Computer Reservation System) /GDS(Global Distribution System)から BSP へ 旅行代理店別の発売データを報告する Reporting Tape と,BSP がそのデータを航空会社別に仕分け した後に航空会社へ発売データを報告する Hand-Off Tape についての取り扱い方式,データフォーマ ットについて専門的に協議を行い,DISH(Data Interchange Specifications Handbook)として制度 化 し て 上 部 組 織 で あ る IATA Passenger Agency Conference(旅客代理店会議)に上程していた. D 氏は旅行代理店において仕入企画及び発券とい う航空座席手配を担当していたことから,1980 年代 から現在に至るまでの発券制度の変遷が発券実務へ 与えた影響について 2019 年 8 月 20 日に聞き取り を行った. 他に,インフォーマントとして明記していないが, 1980 年 代 後 半 ~ 1990 年 代 の IATA Passenger Agency Conference , IATA Passenger Services Conference(旅客サービス会議)において筆者が航 空会社メンバーとして出席していた折に,他航空会 社の出席者より聞き取りを行った内容についても記 述の参考とした. 2.国際線航空券の発券に関わる環境 国際線航空券の発券は発券制度に準拠して行われ るが,発券制度自体も関係する制度の制約を受ける ため,それらの周辺制度について考察する. 1) IATA と ATA
IATA と ATA ( Air Transport Association of America―現 Airlines for America)は,歴史的に ATA が米国の航空会社を統括し,IATA がそれ以外 の地域の航空会社を統括している.両組織が個別の 決議を有するConference(会議体)で共通の制度を
定める場合,合同会議を行い,同一議題について, それぞれの議長により別個に決議を採択する.一例 としてIATA Passenger Services Conference は,実 際 に は IATA/ATA Joint Passenger Services Conference の一部として開催される. 2) 旅行代理店 一般的に旅行会社と呼称される業種は,当初は航 空券を含む船車券類の代理販売から興ったため,以 前は旅行代理店と呼ばれていた.その後にパッケー ジツアーに代表される旅行全般を販売するようにな ったため旅行会社という呼び方が定着した.本論で は旅行会社の業務のうち,航空券の発券という代理 販売行為に着目しているため,旅行代理店の名称を 用いる.
旅行代理店がIATA Accredited Agent(IATA 公認 店舗)であっても,特定航空会社の航空券の発券に 使用するためのCIP(Carrier Identification Plate ―航空会社発券プレート)を当該航空会社から貸与 されていない場合には,その航空会社の発券は行え ない.このため旅行代理店の担当者が当該航空会社 の発券カウンターを訪れて発券を依頼する持ち込み 発券と呼ばれる代理販売も行われた.その場合にも 旅行代理店への発券手数料の支払いは行われた. 3) BSP BSP は,旅行代理店と航空会社間の集中精算制度 である.個々の代理店が,取り引きする全航空会社 と精算を行う煩雑さを避けるために,通常は1 カ国 に 1 つ設置される BSP が,関係する全代理店,全 航空会社間の精算を一括処理する.B 氏によれば, 1960 年代後半に IATA は米国における ASP(Area Settlement Plan―集中発券制度)の導入に倣い,複 数の国において BSP の導入を検討していた.1971 年3 月 1 日には世界で最初の BSP が日本に導入さ れた(IATA Japan,2001).当初は Bank Settlement Plan の略であったが,後に Billing and Settlement Plan に改称された.B 氏によれば IATA が中東地域 への BSP 導入を図るに際して, Bank という用語 をイスラム文化圏で用いるのを避けるためであった. ET が登場する以前の紙の航空券では,旅行代理 店が使用する BSP 航空券は航空券番号 13 桁のう ち,上位 3 桁により示される Airline Accounting Codes(発券航空会社番号)が空欄となっており,航 空券番号の残り 10 桁であるシリアル番号のみが予 め印刷されていた.また航空会社のロゴ欄が空欄と なっていた.固有の航空会社に帰属しない航空券で あることからNeutral(中立)航空券と称される. BSP において精算処理を行う部門は DPC(Data Processing Centre)と呼ばれる.多くの BSP にお いて,Clearing Bank(決済口座受託銀行)が,DPC についてもBSP より受託して運営を行う.日本 BSP 設立時は当時の勧業銀行(現在のみずほ銀行)が Clearing Bank と DPC を受託した. B 氏によれば集中精算方式は米国において, ASP として ATA が IATA に先行して 1964 年に開始し た.ASP では,DPC に相当する ARC(Airlines Reporting Corporation)という民間会社が ASP 参 加航空会社の出資により設立された.ARC は BSP と同様に中立航空券 である ARC 航空券を配布して いた. 4) 収入管理部門 航空会社における航空券の事務処理では売り上げ 金の入金のみならず,自社の発券事業所や旅行代理 店に配布した航空券が適正に使用されているかを管 理 す る 必 要 性 が あ る た め , 当 初 か ら Revenue Accounting(収入管理)部門を経理部門とは別個に 設けて航空券売り上げに関わる会計処理を専門的に 行っていた.最終的な売り上げ金額は収入管理部門 から経理部門へと報告された. 航空会社の支店あるいは旅行代理店からの航空券 の発売報告後に収入管理部門において行われる発売 審査では,収入金は預り金として科目計上される. その後,旅客の空港でのチェックイン後に収入管理 部門で行われる搭乗審査により売り上げとして収入 に計上される.発売審査では,航空会社の支店や旅 行代理店での発券が運賃ルールに基づき適正に行わ れたかについて審査を行うが,収入管理業務の当初 は発売審査時にManual Ticket(手書き航空券)の 審査用片から航空券番号と発売額を手入力で登録し, 搭乗審査では搭乗用片の航空券番号を手入力するこ とにより,発売データと搭乗データのマッチングが 行われた.時代が下ると,自動発券のための印字内 容である発券データに収入管理のための補足情報を 追加して,発券システムが発売データを生成するよ うになった.航空券が発券されてから収入計上され るまでの一連の流れでは発売データは後続システム である収入管理システムに連動される.搭乗審査に おいても,後には航空券のバーコードや磁気ストラ イプから航空券番号を自動読み取りして,搭乗デー タとして収入管理システムに連動し,最終的には発 売データとのマッチングが行われた. 紙の航空券の時代には,旅客の空港でのチェック イン後に,引き上げた搭乗用片について,収入金額 確定のために本社の収入管理部門への送付を早急に 行う必要があるため,航空会社の空港部門は搭乗用 片を次の便にPurser Care(客室乗務員扱い)の手 荷物として積み込んで送付していた.国際線で運航 頻度が週1 便である場合には搭乗用片の送付が 1 週 間後となることもあり,また物理的に用片を送付す るために輸送途中での紛失等が発生するリスクも存 在した. 3.国際線航空券の変遷について 国際線航空券は,当初の Manual Ticket から, TAT,ATB,ET へと変遷してきた. 日本における自動発券航空券の導入年代としては, 1981 年 1 月に複写式の TAT へ Dot Impact(ドット インパクト)プリンターを用いる発券が開始され, 1997 年 4 月には航空券とボーディングパスが一体 化し,各用片が独立して印字される ATB が導入さ れた後, 2001 年 2 月に紙の航空券を用いない ET が導入された(IATA Japan,2001). 1) Manual Ticket IATA の発足当時より使用されていた航空券であ る.複写式であり,当初は各用片の間にカーボン紙 を挿入して記入していたが,後には複写式の用片が 使用された.A 氏によれば,用片の構成としては, Audit Coupon(発売審査用片),Agent Coupon(発 行所用片),2 片もしくは 4 片の Flight Coupon(搭 乗用片),Passenger Coupon(旅客用片)という順 序で綴じられていた.発券担当者は,発券後に審査 用片と発行所用片をミシン目により切り離して引き 上げ,搭乗用片と旅客用片を旅客に手交した.審査 用片は収入管理部門へ送付して発売審査に用いられ た.発行所用片は発券した事業所で保管した.旅客 に手交された搭乗用片は便への搭乗の都度,空港の チェックインカウンターで引き上げられ収入管理部 門で搭乗審査に用いられた.このため,旅客の手元 に最終的に残るのは,全旅程と収受金額が記載され た旅客用片のみであった. 旅行代理店は発券に際して代理発券を行おうとす る発券航空会社の航空会社番号3 桁を記入し,航空 会社から貸与されたCIP により,発券航空会社の名 称とロゴを,インプリンターを用いて航空券に印字 した.インプリンターには発券代理店のIATA 公認 店舗番号が刻印された代理店プレートもセットされ
ているため,どの旅行代理店の,どの店舗が発券し たのかが印字された. 手書き航空券では,発売審査や,搭乗審査は全て 目視で行われた. 発券しようとする旅程が2 搭乗区間で完結する単 純往復であれば搭乗用片が2P (2 Portion―2 片式) の券種が,また 3 区間以上であれば搭乗用片が 4P の券種が使用された.5 区間以上の旅程であれば 4P の券種を複数冊使用して,Conjunction Ticket(一 連の航空券)として発券する.航空券を発券する際 には一番上に位置する審査用片に赤ボールペンを用 いて記入し,以降の用片へも全て赤色で複写された. 2) TAT (1) 概要 移行期という名称が示すように,形態的には従来 の手書き航空券の様式を残しながらも手書きを機械 式印字に置き換えて自動化する目的で導入された. 旅 行 代 理 店 用 の TAT としては,OPTAT (Off-Premise TAT)が制度化された.Off-(Off-Premise とは, On-Premise(航空会社の事業所)に対する Off-Premise(代理発券を行う旅行代理店の事業所)を 意味する.日本では日本航空のJALCOM システム によるOPTAT の自動発券が開始され,日本 BSP へ の導入が行われた.(IATA Japan,2001) TAT は手書き航空券と同様に複写式であり,その 構成用片は手書き航空券と変わることはなかったが, 日本BSP においては OPTAT の Agent Coupon は 1989 年 4 月に廃止された(IATA Japan, 2001).理 由は,Reporting Tape で報告される発売データを利 用してBSP DPC 側で Audit Coupon の内容を紙に 印刷したTicket Facsimille を出力し,航空会社に提 供 で き る よ う に な っ た た め で あ る . こ れ に よ り Audit Coupon は従来の Agent Coupon に代えて発 券代理店店舗での保管を行うこととなり,Agent Coupon は廃止された.発券代理店と BSP にとって は,物理的な Audit Coupon の BSP への提出と, BSP から各航空会社への送付から解放されること となった. TAT では,発券プリンターが扱う券種を統一する ために4P の券種のみが採用された. (2) 発券システムによる航空券番号の認識について TAT による発売データの後続システムへの連動 に当たっては,発券プリンター自体が現在印字を行 っている航空券の番号を正確に認識しており,これ により発券システムが想定している航空券番号と印 字中の実際の航空券番号において齟齬が発生しない ことが前提となる.このため誤発券の防止策として, 米 国 の ARC で は TCN( Transmission Control Number)が使用され,日本 BSP ではバーコードが 採用された. 発券担当者は発券プリンターに,ミシン目により 繋がった100 冊が 1 バッチを構成する未使用航空券 を装着した後,発券システムに対して装着した航空 券の最初と最後の航空券番号から成る番号枠の登録 を行う.発券時に,発券システムは発券プリンター において現在発券されているとシステムが認識して いる航空券番号と発券データをセットにして,発売 データとして後続システムに連動する.ところが TAT 自体は物理的な印刷媒体であるため,発券プリ ンターの不調により同じ内容について2 つの航空券 に二重に印字を行うことや,逆に特定の航空券につ いて印字しないまま先に送り,航空券番号が飛んで しまうことが発生する.このため発券システムが認 識している航空券番号と,現実に発券プリンターが 印字を行った航空券番号が一致していることの確認 が発売審査時に必要であった.C 氏によれば,この 問題の解決のためには発券プリンター自体が航空券 番号の認識機能を持つIntelligent Printer であるか, もしくは発券プリンターには航空券番号の認識機能 がないDumb Printer であるが航空券側にそれを補 完する仕組みが必要であった.
ARC 方式は Dumb Printer を利用する方法であ り,発券システムはTCN という System Generated (自動生成)された13 桁の番号を航空券の発券デー タと共に発券プリンターに送り,発券プリンターは 航空券の印字に加えてTCN 番号を航空券の TCN 欄 に印字する.更に発券システムは,発券したと認識 している航空券番号が含まれている発券データと TCN をセットにした発売データを作成して後続シ ステムに連動する.収入管理部門では,セットにな った航空券番号と TCN について,発売審査用片に より航空券番号と TCN を目視確認して,航空券番 号とTCN の関係が一致しているかを検証していた. 一旦確認が行われた後は TCN が使われることはな く,発売データは航空券番号により管理された. 日 本 BSP で 採 用 さ れ た バ ー コ ー ド 方 式 は Intelligent Printer を利用する方法であり,航空券 番号はバーコードとして航空券に印刷されていた. このため発券プリンターは発券に際してバーコード を読み取った後に発券システムが認識している航空 券番号と一致しているかの確認を行い,万一異なっ ていた場合には自動的に当該航空券を Void(廃札) 処理し,発売データにも Void 航空券として登録し て連動した.このため収入管理部門による目視確認 は必要なかった. (3) TAT の特徴について 当初の自動発券においては,発券担当者がホスト コンピューター端末によりPNR(Passenger Name Record―予約記録)に発券データを入力して航空券 の印字を行うオンライン発券のみであった.この方 式は個人旅客向けの発券を行う航空会社の社内事業 所や,業務渡航を扱う旅行代理店のように少人数の 発券には適していたが,団体旅行のように同種の旅 程で大量の発券を行う旅行代理店では同一の旅程, 運賃計算内容について一括して入力を行い,大量の 発券を迅速に処理する機能が望まれていた.このた め,1980 年代前半に JALCOM は旅行代理店に対し てオフライン発券機能の提供を開始した.オフライ ン発券機能自体は当時ようやく一般に普及し始めた ワードプロセッサーと同様の機能であり,ホストコ ンピューターとは繋がっていない独立したPC に対 して発券担当者が登録した発券データを用いて,自 動発券を行うものであった. D 氏はオフライン発券機能について,「5 インチの フロッピーディスクを差し込むと(航空券の各項目 欄が記載されたテンプレートである)フォーマット が(画面に)出てくるだけで,要はワープロだった. テンプレートに対して印字するデータを打ち込んで いき,運賃計算も計算した結果を入力していた.自 動運賃計算ではOne Way(片道旅程),Round Trip (単純往復旅程)ができるだけだった.発券機は日立 製で冷蔵庫のように大きいものだった」と述べる. あくまで文字を手書きする代替として機械で印字で きるだけの機能であった. アクセス国際ネットワークの会社沿革(アクセス 国際ネットワーク,2020)によれば,1985 年には JALCOM は,発券に特化したオンライン機能であ るニュートラル発券機能の旅行代理店への提供を開 始した.ニュートラル発券機能では,予約記録が入 っている元の PNR から旅程情報をコピーして,発 券専用のニュートラル PNR をオンライン上に自動 生成することが出来た.ニュートラル PNR の旅程 はコピーされた結果であり,これを操作しても実予 約には影響を与えないため,発券担当者にとっては 極めて使い勝手の良いものであった. D 氏はニュートラル発券について「ニュートラル はオフラインとはまるで違った.オフラインだと都 市名とかも入れていた.ニュートラルは,旅程は何 も入れる必要がない.そこが一番楽だった.もう一 つは名前がそのままコピーされてくること.オフラ インでは名前を全部入れていた」と述べる.発券担 当者にとって都市名や氏名の入力が大きな負担とな っていたことが分かる. 更にD 氏は「旅行代理店のシステムで旅程や名前 が管理されるようになると,それがJALCOM に繋 がって(予約記録に対して)ネームを送信するよう になった.それをそのまま発券できるようになった. 発券する人間は名前を扱わなくて良くなった.人間 が入力すると,ちょっとしたタッチミスで間違える ので,それが作業的には負担だった.当時は入力す る人の隣に人が座って名前を読み上げていた」と述 べる.航空券では氏名の入力間違いが発生すると, パスポートの氏名と異なるとの理由から入国審査時 に問題が生じることがあるため,発券担当者は細心 の注意を払うことが必要であった. 1986 年には,JALCOM からマルチアクセス方式 で日本航空以外の航空会社ホストシステムにログイ ンできるマルチジャパンが開発された(アクセス国 際ネットワーク,2020).マルチアクセス方式とは, 予約端末が他のホストシステムの端末としてシミュ レートする機能であり,あたかも他航空会社の端末 を操作しているように PNR を取り扱える機能であ った. D 氏は「1986 年にマルチジャパンが入ってきて, 外国航空会社の取り扱いが変わってきた.それまで は団体も電話で予約していた.タイ航空が一番最初 だった.旅行代理店側からも当該航空会社のホスト システムに存在する PNR を目で見て状況が分かる ようになった.1985 年のニュートラル,1986 年の マルチジャパンで,旅行代理店のオペレーション的 にはすごく変わった.ニュートラルの意味が2 つあ って,JALCOM オンラインからのニュートラルと, マルチジャパンからのニュートラルがあった.マル チジャパンの団体予約をニュートラルでQK 発券し ても,券番は送信されないし,分断されていた.1980 年代は発券が大きく変わったとき」と述べる.PNR 上でSegment(航空便)についての Segment Status (予約状況)は 2 桁の英字で表示される.例として 「HK」であれば Hold and Confirmed(予約済み) を意味する.「QK」は Segment Status ではあるが,
ているため,どの旅行代理店の,どの店舗が発券し たのかが印字された. 手書き航空券では,発売審査や,搭乗審査は全て 目視で行われた. 発券しようとする旅程が2 搭乗区間で完結する単 純往復であれば搭乗用片が2P (2 Portion―2 片式) の券種が,また 3 区間以上であれば搭乗用片が 4P の券種が使用された.5 区間以上の旅程であれば 4P の券種を複数冊使用して,Conjunction Ticket(一 連の航空券)として発券する.航空券を発券する際 には一番上に位置する審査用片に赤ボールペンを用 いて記入し,以降の用片へも全て赤色で複写された. 2) TAT (1) 概要 移行期という名称が示すように,形態的には従来 の手書き航空券の様式を残しながらも手書きを機械 式印字に置き換えて自動化する目的で導入された. 旅 行 代 理 店 用 の TAT としては,OPTAT (Off-Premise TAT)が制度化された.Off-(Off-Premise とは, On-Premise(航空会社の事業所)に対する Off-Premise(代理発券を行う旅行代理店の事業所)を 意味する.日本では日本航空のJALCOM システム によるOPTAT の自動発券が開始され,日本 BSP へ の導入が行われた.(IATA Japan,2001) TAT は手書き航空券と同様に複写式であり,その 構成用片は手書き航空券と変わることはなかったが, 日本BSP においては OPTAT の Agent Coupon は 1989 年 4 月に廃止された(IATA Japan, 2001).理 由は,Reporting Tape で報告される発売データを利 用してBSP DPC 側で Audit Coupon の内容を紙に 印刷したTicket Facsimille を出力し,航空会社に提 供 で き る よ う に な っ た た め で あ る . こ れ に よ り Audit Coupon は従来の Agent Coupon に代えて発 券代理店店舗での保管を行うこととなり,Agent Coupon は廃止された.発券代理店と BSP にとって は,物理的な Audit Coupon の BSP への提出と, BSP から各航空会社への送付から解放されること となった. TAT では,発券プリンターが扱う券種を統一する ために4P の券種のみが採用された. (2) 発券システムによる航空券番号の認識について TAT による発売データの後続システムへの連動 に当たっては,発券プリンター自体が現在印字を行 っている航空券の番号を正確に認識しており,これ により発券システムが想定している航空券番号と印 字中の実際の航空券番号において齟齬が発生しない ことが前提となる.このため誤発券の防止策として, 米 国 の ARC で は TCN( Transmission Control Number)が使用され,日本 BSP ではバーコードが 採用された. 発券担当者は発券プリンターに,ミシン目により 繋がった100 冊が 1 バッチを構成する未使用航空券 を装着した後,発券システムに対して装着した航空 券の最初と最後の航空券番号から成る番号枠の登録 を行う.発券時に,発券システムは発券プリンター において現在発券されているとシステムが認識して いる航空券番号と発券データをセットにして,発売 データとして後続システムに連動する.ところが TAT 自体は物理的な印刷媒体であるため,発券プリ ンターの不調により同じ内容について2 つの航空券 に二重に印字を行うことや,逆に特定の航空券につ いて印字しないまま先に送り,航空券番号が飛んで しまうことが発生する.このため発券システムが認 識している航空券番号と,現実に発券プリンターが 印字を行った航空券番号が一致していることの確認 が発売審査時に必要であった.C 氏によれば,この 問題の解決のためには発券プリンター自体が航空券 番号の認識機能を持つIntelligent Printer であるか, もしくは発券プリンターには航空券番号の認識機能 がないDumb Printer であるが航空券側にそれを補 完する仕組みが必要であった.
ARC 方式は Dumb Printer を利用する方法であ り,発券システムはTCN という System Generated (自動生成)された13 桁の番号を航空券の発券デー タと共に発券プリンターに送り,発券プリンターは 航空券の印字に加えてTCN 番号を航空券の TCN 欄 に印字する.更に発券システムは,発券したと認識 している航空券番号が含まれている発券データと TCN をセットにした発売データを作成して後続シ ステムに連動する.収入管理部門では,セットにな った航空券番号と TCN について,発売審査用片に より航空券番号と TCN を目視確認して,航空券番 号とTCN の関係が一致しているかを検証していた. 一旦確認が行われた後は TCN が使われることはな く,発売データは航空券番号により管理された. 日 本 BSP で 採 用 さ れ た バ ー コ ー ド 方 式 は Intelligent Printer を利用する方法であり,航空券 番号はバーコードとして航空券に印刷されていた. このため発券プリンターは発券に際してバーコード を読み取った後に発券システムが認識している航空 券番号と一致しているかの確認を行い,万一異なっ ていた場合には自動的に当該航空券を Void(廃札) 処理し,発売データにも Void 航空券として登録し て連動した.このため収入管理部門による目視確認 は必要なかった. (3) TAT の特徴について 当初の自動発券においては,発券担当者がホスト コンピューター端末によりPNR(Passenger Name Record―予約記録)に発券データを入力して航空券 の印字を行うオンライン発券のみであった.この方 式は個人旅客向けの発券を行う航空会社の社内事業 所や,業務渡航を扱う旅行代理店のように少人数の 発券には適していたが,団体旅行のように同種の旅 程で大量の発券を行う旅行代理店では同一の旅程, 運賃計算内容について一括して入力を行い,大量の 発券を迅速に処理する機能が望まれていた.このた め,1980 年代前半に JALCOM は旅行代理店に対し てオフライン発券機能の提供を開始した.オフライ ン発券機能自体は当時ようやく一般に普及し始めた ワードプロセッサーと同様の機能であり,ホストコ ンピューターとは繋がっていない独立したPC に対 して発券担当者が登録した発券データを用いて,自 動発券を行うものであった. D 氏はオフライン発券機能について,「5 インチの フロッピーディスクを差し込むと(航空券の各項目 欄が記載されたテンプレートである)フォーマット が(画面に)出てくるだけで,要はワープロだった. テンプレートに対して印字するデータを打ち込んで いき,運賃計算も計算した結果を入力していた.自 動運賃計算ではOne Way(片道旅程),Round Trip (単純往復旅程)ができるだけだった.発券機は日立 製で冷蔵庫のように大きいものだった」と述べる. あくまで文字を手書きする代替として機械で印字で きるだけの機能であった. アクセス国際ネットワークの会社沿革(アクセス 国際ネットワーク,2020)によれば,1985 年には JALCOM は,発券に特化したオンライン機能であ るニュートラル発券機能の旅行代理店への提供を開 始した.ニュートラル発券機能では,予約記録が入 っている元の PNR から旅程情報をコピーして,発 券専用のニュートラル PNR をオンライン上に自動 生成することが出来た.ニュートラル PNR の旅程 はコピーされた結果であり,これを操作しても実予 約には影響を与えないため,発券担当者にとっては 極めて使い勝手の良いものであった. D 氏はニュートラル発券について「ニュートラル はオフラインとはまるで違った.オフラインだと都 市名とかも入れていた.ニュートラルは,旅程は何 も入れる必要がない.そこが一番楽だった.もう一 つは名前がそのままコピーされてくること.オフラ インでは名前を全部入れていた」と述べる.発券担 当者にとって都市名や氏名の入力が大きな負担とな っていたことが分かる. 更にD 氏は「旅行代理店のシステムで旅程や名前 が管理されるようになると,それがJALCOM に繋 がって(予約記録に対して)ネームを送信するよう になった.それをそのまま発券できるようになった. 発券する人間は名前を扱わなくて良くなった.人間 が入力すると,ちょっとしたタッチミスで間違える ので,それが作業的には負担だった.当時は入力す る人の隣に人が座って名前を読み上げていた」と述 べる.航空券では氏名の入力間違いが発生すると, パスポートの氏名と異なるとの理由から入国審査時 に問題が生じることがあるため,発券担当者は細心 の注意を払うことが必要であった. 1986 年には,JALCOM からマルチアクセス方式 で日本航空以外の航空会社ホストシステムにログイ ンできるマルチジャパンが開発された(アクセス国 際ネットワーク,2020).マルチアクセス方式とは, 予約端末が他のホストシステムの端末としてシミュ レートする機能であり,あたかも他航空会社の端末 を操作しているように PNR を取り扱える機能であ った. D 氏は「1986 年にマルチジャパンが入ってきて, 外国航空会社の取り扱いが変わってきた.それまで は団体も電話で予約していた.タイ航空が一番最初 だった.旅行代理店側からも当該航空会社のホスト システムに存在する PNR を目で見て状況が分かる ようになった.1985 年のニュートラル,1986 年の マルチジャパンで,旅行代理店のオペレーション的 にはすごく変わった.ニュートラルの意味が2 つあ って,JALCOM オンラインからのニュートラルと, マルチジャパンからのニュートラルがあった.マル チジャパンの団体予約をニュートラルでQK 発券し ても,券番は送信されないし,分断されていた.1980 年代は発券が大きく変わったとき」と述べる.PNR 上でSegment(航空便)についての Segment Status (予約状況)は 2 桁の英字で表示される.例として 「HK」であれば Hold and Confirmed(予約済み) を意味する.「QK」は Segment Status ではあるが,
Information Segment と呼ばれ,当該システムを使 用して予約された実予約とは関わりない予約状況を 表示する.本来の意味は,航空会社の予約デスクに 電話して直接,予約を確保する等の他の手段で予約 した便情報を参考のために PNR に入れておくため のものであった.「QK」は他の手段で予約した Hold and Confirmed の状況を意味する.Information Segment が予約 PNR に入力されても,他の航空会 社 へ の 予 約 メ ッ セ ー ジ は 発 信 さ れ ず , 従 っ て Inventory(座席在庫)から座席が取られることはな い.D 氏の述べる「分断」とは予約と発券が繋がっ ていなかったことを指す. 紙の航空券による不都合について,D 氏は「保管 用の金庫のために床を補強したり大変だった」と述 べる.ET により紙の航空券が廃止されるまで,未使 用航空券の盗難防止のための金庫保管や,発券済み 航空券の発行所用片の保管はオフィススペースに制 約のある旅行代理店にとって大きな負担となってい た.旅行代理店の店舗は来店者の集客のために駅前 に近い繁華街に地上店舗として置かれることが多い ため,接客カウンターのバックオフィスは極めて狭 隘なものであった.日本 BSP の運用規則により発 券店舗には 200kg 弱の耐火金庫の設置が義務付け られていた(IATA Japan, 2005).このため,狭いオ フィススペースに加えて床の補強を行うことは大き な負担となっていた. OPTAT の運用について D 氏は「当時の 4P 券で は,旅程の途中のポーションの Void クーポンの抜 き忘れがあった.それが大問題になった.Void クー ポンを BSP に提出しないといけないので,現地の お客様に国際電話して回収していた」とも述べる. Void とは廃札を意味し,発券済みの航空券を何らか の理由により使用しない場合に,発券者の側で無価 値にすることである.航空券はUsage Control(使 途管理)上は Void 扱いとなり,不正使用防止のた め,その番号が再使用されることはない.Void には 航空券Void とクーポン Void がある.前者は航空券 そのものを無価値にするもので,誤発券したような 場合に用いられる.後者はD 氏が述べているように 特定の用片のみを廃札するものである.1 都市内に 複数の空港が所在するニューヨークを例に取れば, 日本から国際線でJohn F. Kennedy―JFK 空港に到 着した後にLa Guardia―LGA 空港まで地上移動し て国内線に乗り継ぐ旅程を発券すると,航空便とし ては区間の連続性を欠いているが,TAT の旅程欄の 構造上,出発地がJFK で到着地が LGA である搭乗 用片を発券せざるを得ない.このため同区間につい て,発券システムは自動的に Void 用片として印字 を行うので,発券担当者は Void 用片を引き上げる 必要がある.その他にも例えば旅程が 6 区間で 4P 航空券が Conjunction Ticket として 2 冊発券され たときには,2 冊目の 3 枚目と 4 枚目の搭乗用片は Void 用片として引き上げる必要がある.航空券の不 正使用を防止する目的から,航空券だけでなく各搭 乗用片についても使途管理が行われるため,不正運 用によりIATA 公認代理店としての資格喪失を問わ れないよう発券担当者は旅客に国際電話を行ってま で用片管理を行う必要があった. 3) ATB ATB では航空券の各用片がそれぞれ独立した厚 めの用紙に印字されるようになった.未発券の用紙 は全て同一であり,発券時の印字により各用片の用 途が決定された.用紙の製造時には ATB の右側約 1/3 には Boarding Pass(搭乗券)を印字するスペー スが設けられ,用紙の裏面に Magnetic Stripe(磁 気ストライプ)が貼付された.これにより発券時に 発券データのEncoding(磁気書き込み)と空港での チェックイン時の読み取りが行われるようになった. 発券プリンターもドットインパクトプリンターか ら,Thermal Transfer(熱転写)プリンター,もし くは Direct Thermal プリンターに変更された. Thermal Transfer では,インクに熱を加えて印字を 行う.現在,家庭用のプリンター等で用いられるイ ンクジェットプリンティングと類似した機能である. Direct Thermal では,Fax 用紙に代表される熱を加 えることにより黒く変色する紙を用いる.TAT では 複写式の航空券に対してドットインパクトプリンタ ーを用いるためインクの使用量は少ない.一方で ATB では各用片を印字するため,Thermal Transfer を採用した場合には大量のインクのランニングコス トが発生することとなる.このため,インク費用が 不要であるDirect Thermal が主に用いられた. TAT では旅客用の控えとして,旅程控えと収受金 額控えの2 つの意味を持つ旅客用片が航空券の一番 下に位置する最終用片として存在したが,ATB では 航空券に旅程情報は印字されなかった.一連の用片 の印字の最終用片としてPassenger Receipt と呼ば れる収受金額の情報のみを記載した用片が印字され た. ATB は,当初は米国内線から使用が開始された. 空港でのチェックイン時に搭乗用片を搭乗券と差し 替えるのではなく,ATB の左側 2/3 相当を搭乗用片 として引き上げ,右側1/3 相当には座席番号に加え てチェックイン・バゲージの個数と重量という引き 受け手荷物情報を印字して,搭乗券として旅客に交 付することにより,搭乗用片と搭乗券の差し替えに よる搭乗券発行の無駄を省いた. 米国で始まった当初のATB の仕様は ATB1(ATB-Version1)と呼ばれた.IATA が 1989 年の Passenger Services Conference で ATB 導入を決議し航空券と して制度化するに際して,後継バージョンである ATB2(ATB-Version2)が採用され,併せて磁気ス ト ラ イ プ の 貼 付 に つ い て も 義 務 化 さ れ た . ま た OPTAT と 同 様 に 旅 行 代 理 店 で の 発 券 用 と し て OPATB2 ( Off-Premise Automated Ticket and Boarding Pass-Version 2)が定められた. D 氏は「1997 年の ATB 導入でも,予約と発券は 繋がっていなかった.旅行代理店の運用では予約の PNR にダミーの航空券番を入力して発券報告する ようなことを行っていた.OPTAT から OPATB に 様式が変更しても,QK を作って発券するというこ とでは何も変わらなかった.発券は(ルールから外 れることを敢えてやろうとしたら)何でも出来た」 と述べる.航空券の様式がTAT から ATB へと移行 しても,予約と発券の関係性においては旅行代理店 での運用は自由度を保ったまま変わらなかったこと を意味する. D 氏は「2008 年 6 月に ET が入る前は,一旦発券 して券番を入れた後に Void してしまうこともあっ た.発券リミットが段々ときつくなってきた頃だっ たので.インディビ(個人旅客)だとビザ申請のた めの発券を行うこともしていた.ブラジルなど」と 述べる.入国ビザ申請を行うために渡航先国大使館 の領事部に対して発券した航空券を提示する必要が あり,一旦提示用として発券した後に Void してし まうことを意味していた.理由は,業務渡航では出 発までの間に往々にして旅程が変更となってしまう ためである.D 氏のいう発券リミットとは,予約後 に一定期間内に発券を行わないと航空会社が予約を キャンセルしてしまうTicketing Time Limit(発券 タイムリミット)のことである. TAT から ATB に変わったことにより,手書き航 空券以来の Re-Validation Sticker(スティッカー) 処理は行えなくなった.手書き航空券からTAT の時 代まで行われたスティッカー処理とは,航空券の発 券後に便名や日付が変更になった場合に,再発券の 手間を省くために新便名や新日付を記入した短冊状 の用紙である Re-Validation Sticker を航空券の搭 乗用片に貼付することを認める制度である. Re-Validation Sticker の下部には,当該変更の貼付を 許可した航空会社の発券事業所番号や許可番号を記 載するようになっていた. 「ATB で出来なくなったのはスティッカー処理. Re-Validation になった」と D 氏は述べる.ATB で は磁気ストライプの自動読み取りが行われるために 搭乗用片に別の紙を貼って変更後の情報を示すとい う制度が機能しなくなったためである.ATB での Re-Validation では,搭乗用片を発券プリンターに 挿入して変更前の便名や日付等を横線で消し込み, その下の行に新たな情報を印字すると同時に,裏面 の磁気ストライプも書き換えを行う.発券システム は PNR に存在する変更後の航空便情報を印字して Re-Validation を行うので,手書きのスティッカー のように作為的に任意の情報を書き込むことは行え なくなった. TAT が ATB に変わったことによる旅行代理店の メリットとして,航空券 Void 時に航空券番号を間 違いのないように発券システムに手入力するという 手間から解放され,搭乗用片そのものを発券プリン ターに読み込ませて,磁気ストライプによってVoid 処理が行えるようになった. 4) ET ET はユナイテッド航空が先鞭を付けた.同社は 米国内線で独自に ET の運用を開始した.同社が IATA Passenger Services Conference の下部組織で あるTicketing Committee(発券コミッティー)の Special Working Group の場で ET を紹介し,国際 線における発券制度としてIATA Resolution 化の提 案を行ったのは1995 年である. ET の特徴は航空券自体をデータ化して航空会社 のホストコンピューター内に収納し,紙の航空券を 廃止したことである.旅客に対して便に搭乗する権 利 を 表 す 航 空 券 を 手 交 す る こ と な く , Itinerary/Receipt(旅程/収受金額控え)を発行す るだけとなった.Itinerary/Receipt は,それ自体が 証憑となる航空券とは異なるため,旅客が紛失した 場合等でも必要に応じて何度でも発行することが可 能であり,その点が画期的であった. IATA において ET への完全移行が決議されたの は2008 年 6 月である.それ以前から ATB との併存
Information Segment と呼ばれ,当該システムを使 用して予約された実予約とは関わりない予約状況を 表示する.本来の意味は,航空会社の予約デスクに 電話して直接,予約を確保する等の他の手段で予約 した便情報を参考のために PNR に入れておくため のものであった.「QK」は他の手段で予約した Hold and Confirmed の状況を意味する.Information Segment が予約 PNR に入力されても,他の航空会 社 へ の 予 約 メ ッ セ ー ジ は 発 信 さ れ ず , 従 っ て Inventory(座席在庫)から座席が取られることはな い.D 氏の述べる「分断」とは予約と発券が繋がっ ていなかったことを指す. 紙の航空券による不都合について,D 氏は「保管 用の金庫のために床を補強したり大変だった」と述 べる.ET により紙の航空券が廃止されるまで,未使 用航空券の盗難防止のための金庫保管や,発券済み 航空券の発行所用片の保管はオフィススペースに制 約のある旅行代理店にとって大きな負担となってい た.旅行代理店の店舗は来店者の集客のために駅前 に近い繁華街に地上店舗として置かれることが多い ため,接客カウンターのバックオフィスは極めて狭 隘なものであった.日本 BSP の運用規則により発 券店舗には 200kg 弱の耐火金庫の設置が義務付け られていた(IATA Japan, 2005).このため,狭いオ フィススペースに加えて床の補強を行うことは大き な負担となっていた. OPTAT の運用について D 氏は「当時の 4P 券で は,旅程の途中のポーションの Void クーポンの抜 き忘れがあった.それが大問題になった.Void クー ポンを BSP に提出しないといけないので,現地の お客様に国際電話して回収していた」とも述べる. Void とは廃札を意味し,発券済みの航空券を何らか の理由により使用しない場合に,発券者の側で無価 値にすることである.航空券はUsage Control(使 途管理)上は Void 扱いとなり,不正使用防止のた め,その番号が再使用されることはない.Void には 航空券Void とクーポン Void がある.前者は航空券 そのものを無価値にするもので,誤発券したような 場合に用いられる.後者はD 氏が述べているように 特定の用片のみを廃札するものである.1 都市内に 複数の空港が所在するニューヨークを例に取れば, 日本から国際線でJohn F. Kennedy―JFK 空港に到 着した後にLa Guardia―LGA 空港まで地上移動し て国内線に乗り継ぐ旅程を発券すると,航空便とし ては区間の連続性を欠いているが,TAT の旅程欄の 構造上,出発地がJFK で到着地が LGA である搭乗 用片を発券せざるを得ない.このため同区間につい て,発券システムは自動的に Void 用片として印字 を行うので,発券担当者は Void 用片を引き上げる 必要がある.その他にも例えば旅程が 6 区間で 4P 航空券が Conjunction Ticket として 2 冊発券され たときには,2 冊目の 3 枚目と 4 枚目の搭乗用片は Void 用片として引き上げる必要がある.航空券の不 正使用を防止する目的から,航空券だけでなく各搭 乗用片についても使途管理が行われるため,不正運 用によりIATA 公認代理店としての資格喪失を問わ れないよう発券担当者は旅客に国際電話を行ってま で用片管理を行う必要があった. 3) ATB ATB では航空券の各用片がそれぞれ独立した厚 めの用紙に印字されるようになった.未発券の用紙 は全て同一であり,発券時の印字により各用片の用 途が決定された.用紙の製造時には ATB の右側約 1/3 には Boarding Pass(搭乗券)を印字するスペー スが設けられ,用紙の裏面に Magnetic Stripe(磁 気ストライプ)が貼付された.これにより発券時に 発券データのEncoding(磁気書き込み)と空港での チェックイン時の読み取りが行われるようになった. 発券プリンターもドットインパクトプリンターか ら,Thermal Transfer(熱転写)プリンター,もし くは Direct Thermal プリンターに変更された. Thermal Transfer では,インクに熱を加えて印字を 行う.現在,家庭用のプリンター等で用いられるイ ンクジェットプリンティングと類似した機能である. Direct Thermal では,Fax 用紙に代表される熱を加 えることにより黒く変色する紙を用いる.TAT では 複写式の航空券に対してドットインパクトプリンタ ーを用いるためインクの使用量は少ない.一方で ATB では各用片を印字するため,Thermal Transfer を採用した場合には大量のインクのランニングコス トが発生することとなる.このため,インク費用が 不要であるDirect Thermal が主に用いられた. TAT では旅客用の控えとして,旅程控えと収受金 額控えの2 つの意味を持つ旅客用片が航空券の一番 下に位置する最終用片として存在したが,ATB では 航空券に旅程情報は印字されなかった.一連の用片 の印字の最終用片としてPassenger Receipt と呼ば れる収受金額の情報のみを記載した用片が印字され た. ATB は,当初は米国内線から使用が開始された. 空港でのチェックイン時に搭乗用片を搭乗券と差し 替えるのではなく,ATB の左側 2/3 相当を搭乗用片 として引き上げ,右側1/3 相当には座席番号に加え てチェックイン・バゲージの個数と重量という引き 受け手荷物情報を印字して,搭乗券として旅客に交 付することにより,搭乗用片と搭乗券の差し替えに よる搭乗券発行の無駄を省いた. 米国で始まった当初のATB の仕様は ATB1(ATB-Version1)と呼ばれた.IATA が 1989 年の Passenger Services Conference で ATB 導入を決議し航空券と して制度化するに際して,後継バージョンである ATB2(ATB-Version2)が採用され,併せて磁気ス ト ラ イ プ の 貼 付 に つ い て も 義 務 化 さ れ た . ま た OPTAT と 同 様 に 旅 行 代 理 店 で の 発 券 用 と し て OPATB2 ( Off-Premise Automated Ticket and Boarding Pass-Version 2)が定められた. D 氏は「1997 年の ATB 導入でも,予約と発券は 繋がっていなかった.旅行代理店の運用では予約の PNR にダミーの航空券番を入力して発券報告する ようなことを行っていた.OPTAT から OPATB に 様式が変更しても,QK を作って発券するというこ とでは何も変わらなかった.発券は(ルールから外 れることを敢えてやろうとしたら)何でも出来た」 と述べる.航空券の様式がTAT から ATB へと移行 しても,予約と発券の関係性においては旅行代理店 での運用は自由度を保ったまま変わらなかったこと を意味する. D 氏は「2008 年 6 月に ET が入る前は,一旦発券 して券番を入れた後に Void してしまうこともあっ た.発券リミットが段々ときつくなってきた頃だっ たので.インディビ(個人旅客)だとビザ申請のた めの発券を行うこともしていた.ブラジルなど」と 述べる.入国ビザ申請を行うために渡航先国大使館 の領事部に対して発券した航空券を提示する必要が あり,一旦提示用として発券した後に Void してし まうことを意味していた.理由は,業務渡航では出 発までの間に往々にして旅程が変更となってしまう ためである.D 氏のいう発券リミットとは,予約後 に一定期間内に発券を行わないと航空会社が予約を キャンセルしてしまうTicketing Time Limit(発券 タイムリミット)のことである. TAT から ATB に変わったことにより,手書き航 空券以来の Re-Validation Sticker(スティッカー) 処理は行えなくなった.手書き航空券からTAT の時 代まで行われたスティッカー処理とは,航空券の発 券後に便名や日付が変更になった場合に,再発券の 手間を省くために新便名や新日付を記入した短冊状 の用紙である Re-Validation Sticker を航空券の搭 乗用片に貼付することを認める制度である. Re-Validation Sticker の下部には,当該変更の貼付を 許可した航空会社の発券事業所番号や許可番号を記 載するようになっていた. 「ATB で出来なくなったのはスティッカー処理. Re-Validation になった」と D 氏は述べる.ATB で は磁気ストライプの自動読み取りが行われるために 搭乗用片に別の紙を貼って変更後の情報を示すとい う制度が機能しなくなったためである.ATB での Re-Validation では,搭乗用片を発券プリンターに 挿入して変更前の便名や日付等を横線で消し込み, その下の行に新たな情報を印字すると同時に,裏面 の磁気ストライプも書き換えを行う.発券システム は PNR に存在する変更後の航空便情報を印字して Re-Validation を行うので,手書きのスティッカー のように作為的に任意の情報を書き込むことは行え なくなった. TAT が ATB に変わったことによる旅行代理店の メリットとして,航空券 Void 時に航空券番号を間 違いのないように発券システムに手入力するという 手間から解放され,搭乗用片そのものを発券プリン ターに読み込ませて,磁気ストライプによってVoid 処理が行えるようになった. 4) ET ET はユナイテッド航空が先鞭を付けた.同社は 米国内線で独自に ET の運用を開始した.同社が IATA Passenger Services Conference の下部組織で あるTicketing Committee(発券コミッティー)の Special Working Group の場で ET を紹介し,国際 線における発券制度としてIATA Resolution 化の提 案を行ったのは1995 年である. ET の特徴は航空券自体をデータ化して航空会社 のホストコンピューター内に収納し,紙の航空券を 廃止したことである.旅客に対して便に搭乗する権 利 を 表 す 航 空 券 を 手 交 す る こ と な く , Itinerary/Receipt(旅程/収受金額控え)を発行す るだけとなった.Itinerary/Receipt は,それ自体が 証憑となる航空券とは異なるため,旅客が紛失した 場合等でも必要に応じて何度でも発行することが可 能であり,その点が画期的であった. IATA において ET への完全移行が決議されたの は2008 年 6 月である.それ以前から ATB との併存