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ビスフォスフォネート製剤休薬後に投与再開1年半で両側に非定型大腿骨不完全骨折を認めた一例

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Academic year: 2021

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(1)整形外科と災害外科 70:(2)215~217, 2021.. 215. ビスフォスフォネート製剤休薬後に投与再開 1 年半で 両側に非定型大腿骨不完全骨折を認めた一例 田 中 稔一郎* 吉 光 一 浩* 松 浦 充 洋** 白 濵 正 博** 諌 山 照 刀* 樋 口 富士男* 志 波 直 人** 非定型大腿骨骨折(AFF)はビスフォスフォネート(BP)製剤の長期投与が発生のリスクとされるが, BP 製剤の投与再開後 1 年半で両側の AFF を認めた症例を経験したので報告する.症例は 81 歳女性.主 訴は臀部痛,両大腿部痛.他院で 10 年前に BP 製剤による骨粗鬆症治療を開始.約 1 年間の BP 製剤投 与後に 1 年間休薬,その後 8 年前より再開し約 3 年間投与後に再度休薬となっていた.3 年前に第 12 胸 椎圧迫骨折に対して後方固定術の手術歴があり,術後より 2 年間デイリーテリパラチドを投与,その後 BP 製剤が AFF 発生まで 1 年半投与されていた.腰部脊柱管狭窄症に伴う坐骨神経痛と診断し保存的治 療を行ったが,大腿部痛が増強し歩行困難となった.単純 X 線で両大腿骨の強い外彎と外側骨皮質に限 局性骨膜肥厚を認め,両側 AFF と診断し髄内釘による骨接合術を行った.BP 製剤の長期内服に関連す る AFF の報告が多いが,本症例では BP 製剤の投与再開後1年半で骨折を認めた.大腿骨の彎曲が強い事 が AFF の発生に関与するとの報告もあり,本症例でも骨折の発生に関与したと考えられた. Key words:atypical femoral fracture(非定型大腿骨骨折), bisphosphonate(ビスフォスフォネート), osteoporosis(骨粗鬆症). 腰椎圧迫骨折. は じ め に. 現病歴:臀部痛,両大腿部痛が出現し徐々に増悪し. ビスフォスフォネート(bisphosphonate:BP)製. て当科を受診.他院にて 10 年前に BP 製剤(リセド. 剤の長期内服は,骨吸収の過剰抑制による骨のリモデ. ロネート)による骨粗鬆症治療を開始.約 1 年間の. リング低下を招き,マイクロダメージが蓄積すること. BP 製剤(リセドロネート)投与後に 1 年間休薬,そ. (severely suppressed bone turnover:SSBT)で大. の後 8 年前より再開し約 3 年間投与後に再度休薬され. 腿骨の外彎変形が引き起こされる .大腿骨の外彎. た.3 年前に第 12 胸椎圧迫骨折に対して後方固定術. 変形による大腿骨外側皮質骨への伸張ストレスにて. の手術歴があり,術後 2 年間デイリーテリパラチドを. (atypical femoral fracture:AFF)が発生するとさ. 投与,その後 BP 製剤(リセドロネート)が 1 年半投. 3). 与されていた(図 1).. れている .BP 製剤の 5 年以上の投与で AFF の発生 4). リスクが上昇し5),また BP 製剤の休薬後 1 年間で AFF の発生リスクは 70% 低下すると報告がある6). 今回 BP 製剤投与後に十分な休薬期間を設けたにもか かわらず,BP 製剤の投与再開後 1 年半で両側に AFF を認めた症例を経験したので報告する.. 対象および方法. 図 1 骨粗鬆症治療薬の投与歴 10 年前に BP 製剤による骨粗鬆症治療を開始 された.約 1 年間 BP 製剤投与後に 1 年間休薬, 8 年前より BP 製剤を再開し,約 3 年間投与後 に再度休薬となった.その後 3 年前より 2 年間 デイリーテリパラチドを投与され,終了後は BP 製剤が 1 年半投与されていた.. 症例:81 歳,女性 主訴:臀部痛,両大腿部痛 既往歴:第 12 胸椎圧迫骨折(3 年前に後方固定術 施行),第 10 胸椎圧迫骨折,第 1 腰椎圧迫骨折,第 2. * **. 柳川リハビリテーション病院整形外科 久留米大学整形外科 ― 43 ―.

(2) 216. ビスフォスフォネート製剤休薬後に投与再開 1 年半で両側に非定型大腿骨不完全骨折を認めた一例. 血 液 生 化 学 所 見:TRAP-5b 580 mU/dL,total. の後,約 3 年間投与され再度休薬.3 年前より 2 年間. P1NP 33.4 ng/mL,25-OH ビタミン D 8.5 ng/mL,. デイリーテリパラチドを投与された後 BP 製剤が 1 年. Ca 9.4 mU/dL,ALP 173 U/L.. 半投与されていた(図 1).BP 製剤の長期投与後に 4. 画像検査所見:MRI にて L2/3,L3/4 レベルに神. 年間の休薬期間を設けたが,BP 製剤再開後わずか 1. 経軽度圧迫を認めていた. 治療経過:腰部脊柱管狭窄症に伴う腰痛,坐骨神経 痛と考え,薬物療法及びリハビリテーションによる保 存的治療を開始したが,大腿部痛が増強し歩行困難と なった.単純 X 線で両大腿骨の強い外彎と外側骨皮 質の外骨膜に限局性の骨膜肥厚を認めた(図 2).ま た MRI では両側大腿骨外側に(Short T1 Inversion Recovery:STIR 像)で高信号,T1 強調像で低信号 の骨髄浮腫を認め(図 3),AFF の診断基準を満たし た7).AFF と診断し BP 製剤を中止し,逆行性髄内釘 による骨接合術を行った(図 4).術後 3 か月,単純 X 線にて良好な仮骨形成を認め,大腿部痛は軽快し 独歩可能である.. 考 察 AFF は 2010 年に Odvina らによって,BP 製剤の 長期投与により骨代謝が過剰に抑制され SSBT で骨 脆弱性が引き起こされ発生すると報告された3).また. a. 右大腿骨正面像. 高度な外彎変形を有する症例では,短期間の BP 製剤. b. 左大腿骨正面像. 図 2 AFF 発生時 単純 X 線 両大腿骨の強い外彎と外側の骨皮質に限局性の 肥厚と亀裂(矢印)を認めた.. 投与での AFF の発生が報告されている8).本症例で は BP 製剤が 10 年前に約 1 年間投与され 1 年間休薬. a. 両大腿骨冠状断 T1 強調像. b. 両大腿骨冠状断 STIR 像. 図 3 AFF 発生時 MRI T1 強調像で骨皮質の肥厚と線状の骨折線(矢印)を認め,STIR では同部位の骨 髄に高信号域(矢印)を認めた. ― 44 ―.

(3) 217. 症例では外彎変形が強く順行性髄内釘の挿入が難しい ことが予想されたため,逆行性に髄内釘を 40 度回旋 して大腿骨顆間部より挿入し骨接合術を行った.本症 例では,今回の AFF 発生前に,すでにデイリーテリ パラチドを 2 年間投与されており,AFF の治療とし て PTH 製 剤 の 使 用 が 不 可 能 で あ っ た. こ の た め, romosozumab の使用を検討している.. 結 語 BP 製剤休薬後に投与再開 1 年半で両側に非定型大 腿骨不完全骨折を認めた.大腿骨の高度な外彎変形を 有する症例では,BP 製剤の使用期間にかかわらず, AFF の発生について留意する必要があると考えられ た.. 参 考 文 献 a. 右大腿骨正面像. b. 左大腿骨正面像. 図 4 術後 単純 X 線 大腿骨の外彎変形が強く順行性髄内釘の挿入が 難しいと考え,逆行性髄内釘による骨接合術を 行った.. 年半で AFF が発生している.本症例では両側大腿骨 の高度な外彎変形を認め,AFF の発生に関与したと 考えられた.BP 製剤の休薬後 1 年間で AFF の発生 リスクは 70% 低下するとの報告があり6),休薬期間と しては十分であったと考えられた. SSBT 関連の骨粗鬆症では,骨吸収マーカーの過剰 抑制が報告されている9).国内の AFF の症例報告では, 骨吸収マーカーが基準値内である報告は多いが9),骨 吸収マーカーが亢進している報告は少ない,本症例は TRAP-5b が 580 mU/dL と骨吸収マーカーの過剰抑 制は認めなかった事より,大腿骨の外彎変形による大 腿骨外側皮質骨への伸張ストレスが AFF の発生要因 であったと考えられた. AFF の治療は BP 製剤の中止及び PTH 製剤の投与, 早期の髄内釘固定が推奨されている2).また大腿骨の 高度外彎変形により髄内釘挿入が不能な症例では,矯. 1) 林 豪毅ら:高度外弯変形を伴う両側大腿骨骨幹部 非定型骨折の治療経験.整外と災外,65(2):320-324, 2016. 2) 小牧ゆから:非定型大腿骨骨折の治療経験.整外と災 外,62(2):312-315, 2013. 3) Odvina, C. V., et al.: Unusual midshaft fractures during long term bisphosphonate therapy. Clin. Endocrinol., 72(2):161-168, 2010. 4) 萩野英紀ら:大腿骨外弯変形に伴う短期間ビスホスホ ネート製剤内服中に生じた非定型大腿骨骨折の 1 例.整 形外科,68(3):243-246, 2017. 5) Park-Wyllie, L. Y., et al.: Bisphosphonate use and the risk of subtrochanteric or femoral shaft fractures in older women. JAMA., 305:783-789, 2011. 6) Schilcher, J., Michaelsson, K., Aspenberg, P.: Bisphosphonate use and atypical fractures of the femoral shaft. N. Engl. J. Med., 364:1728-1737, 2011. 7) Shane, E., et al.: Atypical subtrochanteric and diaphyseal femoral fractures: Second report of a task force of the American society for bone and mineral research. J. Bone Miner. Res., 29(1):1-23, 2014. 8) 竹下修平ら:非定型大腿骨骨折に対する当院の治療方 針.整外と災外,66(2):212-218, 2017. 9) 辻 王成ら:ビスフォスフォネート製剤による骨代謝 マーカーの過剰抑制について.整外と災外,62(3):655658, 2013.. 正骨切り術後に髄内釘挿入を行った報告がある .本 1). ― 45 ―.

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