• 検索結果がありません。

糸状菌における細胞融合制御メカニズム

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "糸状菌における細胞融合制御メカニズム"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

597 生物工学 第96巻 第10号(2018) 著者紹介 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻(特任助教) E-mail: [email protected] 細胞融合は文字どおり別個の細胞が融合することに よって単一の細胞を生み出すプロセスである.微生物 でもっとも研究がなされてきた細胞融合は出芽酵母 Saccharomyces cerevisiaeの接合であるだろう.異なる 接合型の細胞が互いのフェロモンを受容すると,その情 報がmitogen-activated protein(MAP)キナーゼFus3を 含むMAPキナーゼカスケードを介して転写因子Ste12 に伝えられ,Ste12によって接合に必要な遺伝子の転写 が活性化される(図1). 糸状菌にも基本的に二つの接合型の株が存在し,それ らの間での有性生殖には細胞融合が必要である.しかし, 糸状菌は菌糸生長を行っている栄養生長時にも融合する ことができ,さらに同一の接合型株の菌糸間でも融合が 起こる点で出芽酵母とは大きく異なっており,その制御 機構の相違が予想される. 糸状菌であるアカパンカビNeurospora crassaでは,細 胞融合頻度が高いことから細胞融合研究がもっとも進め られ,これまでに多くの細胞融合関連遺伝子が同定され ている.さらに,融合しようとしている菌糸では出芽酵 母のFus3のオルソログMAK-2とSOと呼ばれるタンパ ク質が互い違いにそれぞれの菌糸先端に局在することが 示され,融合する菌糸間での情報のやり取りが示唆され ている1).また,MAK-2と出芽酵母のSte12のオルソロ グPP-1が細胞融合に必須であり,mak-2pp-1の変異 株では一部の細胞融合関連遺伝子の発現量が低下するこ とから,出芽酵母と同様にこのMAK-2シグナル伝達経 路を介して細胞融合関連遺伝子が誘導されると考えられ ている(図1).最近,PP-1が糸状菌に特有な転写因子 をコードするadv-1の誘導を介して細胞融合を制御する ことが示され,出芽酵母の接合の制御機構とは異なるこ とが明らかとなった(図1)2).一方,糸状菌は出芽酵母 のDig1/2のホモログを有しておらず,Ste12オルソログ の制御機構も出芽酵母とは異なると考えられるが,現在 までに明らかとなっていない. これまで細胞融合頻度の低い糸状菌における細胞融合 研究は困難であった.しかし最近,栄養要求性を指標と して融合細胞の数を定量的に計数する方法,蛍光タンパ ク質を用いて融合細胞を特異的に観察する方法3)などが 確立され,細胞融合頻度の低い糸状菌でも細胞融合研究 が可能となった.これらの手法により,醸造産業におい て用いられる麹菌Aspergillus oryzaeでは出芽酵母のFus3 のオルソログ(AoFus3)が細胞融合に必須であること, 一方で,N. crassaとは異なり出芽酵母のSte12のオルソ ログ(AoSte12)は必須ではないことがわかってきた4). さらにAoFus3と相互作用するタンパク質の探索により, AoSte12とともに細胞融合に関与する新規タンパク質 FipCが同定された.Aofus3fipCAoste12各単独破壊 株ではアカパンカビのadv-1のオルソログ(AonosA) や細胞融合関連遺伝子の発現レベルが低下することか ら,AoFus3,FipC,AoSte12の三者が細胞融合に関わ る遺伝子の転写制御機構において重要な役割を担うこと が示唆された(図1)4).また,麹菌は菌核と呼ばれる菌 糸が凝集した構造体を形成するが,菌核の形成に必要な 因子として同定された二つの転写因子TrsA,TrsBも AonosAおよび細胞融合関連遺伝子の転写制御に関わる ことが明らかとなった(図1)5). このように,アカパンカビを用いた研究によって細胞 融合制御メカニズムが分子レベルで徐々に明らかになる とともに,細胞融合頻度の低い糸状菌の研究が進展し, 新規因子が複数同定された.今後糸状菌の細胞融合制御 メカニズムが解明されれば,産業上有用な糸状菌での効 率的な融合体の取得,ひいてはより有用な株の育種につ ながると期待される.

1) Fleißner, A. and Herzog, S.: Semin. Cell Dev. Biol., 57, 76 (2016).

2) Fischer, M. S. et al.: Genetics, 209, 489 (2018). 3) Okabe, T. et al.: Sci. Rep., 8, 2922 (2018).

4) Mo Taoningら: 日 本 農 芸 化 学 会 大 会 講 演 要 旨 集, 2A05a01 (2018). 5) 藤井陽平ら:日本農芸化学会大会講演要旨集,2A05a02 (2018).

糸状菌における細胞融合制御メカニズム

片山 琢也

図1.酵母,糸状菌における細胞融合を制御するシグナル伝達 経路

参照

関連したドキュメント

情報理工学研究科 情報・通信工学専攻. 2012/7/12

鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

学識経験者 小玉 祐一郎 神戸芸術工科大学 教授 学識経験者 小玉 祐 郎   神戸芸術工科大学  教授. 東京都

講師:首都大学東京 システムデザイン学部 知能機械システムコース 准教授 三好 洋美先生 芝浦工業大学 システム理工学部 生命科学科 助教 中村

【対応者】 :David M Ingram 教授(エディンバラ大学工学部 エネルギーシステム研究所). Alistair G。L。 Borthwick

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 教授 赤司泰義 委員 早稲田大学 政治経済学術院 教授 有村俊秀 委員.. 公益財団法人

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :