1.は じ め に
第五世代コンピュータ(以下 FGCS:the Fifth Generation Computer Systemsと略記)プロジェクトは,1980 年代 に新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT:Institute for New Generation Computer Technology)によって推 進された.著者は,ICOT 主催のさまざまな委員会への 参加を通して,FGCS の進展を見るととともに,自分自 身の研究テーマも発掘でき,良い機会を与えてもらった と感謝している.プロジェクト開始時は,FGCS に参画 しているという高揚感があったが,終了時には寂しさと ともに,FGCS の社会的貢献は何だったのか? と振り 返ることもあった. FGCSプロジェクト終了後すでに 20 年余りが経過し, 一般的には「学術的には成功し,人材も育成したが,産 業への影響はほとんどなかった」という評価がなされ, 産業化失敗の側面が強調されるケースも多い.本稿では, そのような評価を受け止めながらも,知識情報処理シス テム,AI チャレンジにつながった AI プロジェクトと比 較して,発足当時,国内外に大きな反響を呼び起こした FGCS を多面的に再評価したい.
2.AI 誕生から FGCS 終了まで
まず,AI 誕生から FGCS 誕生までを振り返ろう. AIの研究は,1956 年のダートマス会議から開始され た.1950 ∼ 60 年代は,いわば第一次 AI ブームで,社 会から盲目的に AI に期待された時代であった.この間, 研究内容的には,数学の定理証明やチェスを対象にして, 一般問題解決器(GPS)や A*アルゴリズムのような探 索の研究,およびコンピュータ上での三段論法を実現す る導出原理(Resolution Principle)のような演繹推論 の研究は進展した.しかしながら,当時としては,定理 証明やゲームのような閉じた小規模問題(Toy Problem) に終始した結果,実世界の複雑な問題解決を AI に支援 してほしいという産業界からの期待には応えられず,AI への期待は,AI は Toy Problem を扱うだけだという批 判に変貌し,1970 年代,AI の研究開発は沈滞した.このような第一次 AI 停滞期の中,1977 年の人工知能 国際会議(IJCAI)で,ファイゲンバウム教授(スタン フォード大学)が“There is power in the knowledge!” という,知識重視の新しい AI を提唱し,1980 年代の AIは,知識工学(外部世界から知識を獲得し,コン ピュータ上で知識を表現し,その知識を利用して推論 し,問題を解決する)の研究開発に大きく舵を切った. FGCSプロジェクト計画は,まさにこの AI 変革期に検 討がなされ,知識情報処理基盤として「述語論理に基づ く推論を高速実行する並列推論マシンとその OS を構築 する」という目標が設定された.それまで,ほとんどの AI研究が欧米発であった状況下で,日本が,大規模国 家プロジェクトとして FGCS という人工知能プロジェ クトを立ち上げたのである.この時期,人工知能学会は まだ発足していなかったが,情報処理学会などで多数の AIセッションが組まれ,多くのマスメディアが取り上げ, 国内では AI ブームを実感できる熱い雰囲気に包まれ た.一方,FGCS は海外にも大きな影響を与え,FGCS に対抗する形で,米国では,DARPA が SCI(Strategic Computing Initiative)を開始し,MCC(Microelectronics and Computer Technology Corp.)コンソーシアムが
CYC(大規模常識ベースと常識推論)の開発に取り組み, 英国では,知識ベースとソフトウェア工学とユーザイン タフェースを含む新しいコンピュータの開発を目標とし た Alvey プロジェクト(1983 ∼ 87)が発足し,欧州全 体でも ESPRIT(欧州情報技術研究開発戦略計画)プロ グラムが開始され,その中でいくつかの AI 関連プロジェ クトが開始された.さらに産業界では,専門家の知識を コンピュータに移行して活用する ES(エキスパートシ
第五世代コンピュータから考える
AI プロジェクト
What Should We Do for Future AI Projects Based on FGCS Reviews?
山口 高平
慶應義塾大学理工学部Takahira Yamaguchi Faculty of Science and Technology, Keio University. [email protected]
Keywords:
knowledge information processing systems, knowledge acquisition, rationalism, ai challenge. 「第五世代コンピュータと人工知能の未来」ステム)の開発が多くの分野で推進されるとともに Lisp マシンや AI ベンチャーが勃興するなど,AI は,基礎研究, 応用研究,産業化ともに大きく進展し,1980 年代はま さに第二次 AI ブームの時代であった. FGCSプロジェクトは,1982 年から 1992 年までの 11年間続き,500 億円を超える研究資金が投入され,最 終的に,1 000 台規模の並列推論マシンと並列論理型言 語 KL1 を核とする FGCS プロトタイプシステムが完成 し,世界最高速の推論マシンが完成した. [産業 12] では,未来開拓研究の視点から FGCS を評 価しているが,最初のコメントは以下のとおりである. 『過去に FGCS プロジェクトを対象に行われてきた評 価では,「学術的・技術的価値や,AI 分野の研究におけ る国際交流,研究者育成という社会的な貢献はあったが, 産業技術の分野に寄与する成果が著しく少なかった」と いうおおよそ共通する指摘.成功か失敗かについて,プ ロジェクトの目的・性格を基礎研究と見るか応用研究と 見るかで評価が分かれている.』 学術的および技術的には価値はあり,人材育成にも貢 献したが,産業貢献はほとんど成し得なかったという結 論である.故 渕 一博 ICOT 所長は,FGCS の目標は世 界最高速並列推論マシンの実現と主張され続け,その発 言はぶれなかったと思う.ただ当初の FGCS 計画書に は,自然言語理解,音声理解,コンピュータビジョン, インテリジェントシステムの開発,などの目標も盛り込 まれたために,そのわかりやすい言葉が先行して,社会 的にはその実現に注目が集まったが,それらの目標はプ ロジェクト推進中に外されたため,FGCS プロジェクト は途中で挫折したという印象を与えてしまい,批判され ているといえる.
3.知識情報処理としての FGCS
図 1 は,1980 年代によく掲載された,推論エンジン と知識ベースを核とする知識情報処理システムの概観, 図 2 が FGCS の概観である.図 2 で,楕円の大きさは 取組み規模を示唆しており,FGCS では,大規模並列処 理による推論エンジンの高速化には精力的に取り組み成 功を収めたが,大規模知識ベースの開発にはそれほど取 り組まれなかったことを意味している.確かに,FGCS プロジェクト中期以降に,知識システムに関連する WS が発足し,また,法律知識ベースと非単調推論のように, 個別的な知識情報処理システムの開発には取り組まれた が,MCC の CYC プロジェクトのように,知識情報処 理基盤となるような大規模知識ベースの開発には至らな かった(電子化辞書プロジェクト EDR が 1986 ∼ 94 に 実施されたが,知識処理とはギャップがあり,FGCS と の連携は薄かったように思える). 知識が大量に表現されれば,推論により,組合せ的に さまざまな知識の連携がなされ,推論エンジンの効用も 目に見えて大きくなるが,知識が少量しか表現されなけ れば,その効用が小さいのは道理である.また,大規模 知識ベースが開発されても,推論機構がぜい弱であれば, 結果もまた然りである. 知識情報処理システムという巨大な車を前進させる には,知識ベースと推論エンジンの両輪のバランスが重 要だったのではないか? 片方の車輪が大きくなりすぎ て,両車輪のサイズが合わなくなれば,結局,車は前に 進まない.FGCS プロジェクト後期のある委員会で,世 界最高速の並列推論マシンを利用して解決するにふさわ しい問題について議論したことがあったように記憶して いるが,スーパーエンジン搭載の軽自動車でどこに出か けようか? というような問題,という印象をもったこ とを覚えている.なお,知識と推論のバランスについて は,本特集の溝口理一郎氏の記事で詳細に議論されてい るので,参照していただきたい [溝口 14].4.FGCS と ES:合理主義と知識獲得
FGCSから少し離れて,FGCS 進行中に,産業界に多 くの影響を与えた ES(エキスパートシステム)につい て振り返る.1980 年代,問題領域を OAV トリプル(対象, 属性,値)で記述し,専門家が認識する,トリプル間の 何かしらの関係性を IF-THEN ルール集合で表現した後, ルールを論理的に適用して,専門家のような判断を下す システムが ES である(ICOT のある WG では,因果関係, 相関関係,前後関係など多様な関係性を分離せず,すべ てルールに閉じ込めることが,ルールベースの了解性を 低下させているという,今でも通用する,有用な意見交 換がなされていた).計算機,鉄鋼,電力,ガス,機械, 信用分析,相場分析など,あらゆる分野で ES が開発さ 図 1 知識情報処理システム 図 2 FGCS イメージれ,米国で 3 000,欧州で 1 000,日本で 1 000,世界で 5 000程度の ES が開発されたといわれている. しかしながら,知識分析の専門家(当時は,知識エン ジニアと呼ばれた)が領域専門家にインタビューして, RB(ルールベース)を構成していくことは,大変,骨の 折れる作業であることが判明し,実用化の壁という意味 で,ES 開発には知識獲得ボトルネックがあると批判され るようになった.さらに,領域専門家が別の部署に異動 し,RB の開発背景や文脈は外在化されにくいことから, 新しく異動してきた領域専門家にとっては,RB の意味 を把握できず,RB の維持発展が困難となり,知識獲得 ボトルネックに知識維持ボトルネックも加わり,1990 年代以降,ES はほとんど開発されなくなった.その 後,知識工学の研究分野では,ES や RB の仕様を与え るべきという議論が始まり,モデリングプリミティブの 仕様としてのオントロジーの研究が開始され,セマン ティック Web の技術基盤になることは次章に委ね,以 下,通常は否定的に捉えられる知識獲得ボトルネックに 潜む意義について考察してみる. 著者は,今でも ES 的なシステムを学生と一緒に研究 開発している.専門家へのインタビューだけで総計 100 時間を超えることも珍しくない.いまだに知識獲得ボト ルネックを体験しているのかと思われるかもしれない. 無口な専門家もいれば,雄弁に,ときには過大に経験を 語る専門家もいて,インタビュー当初は戸惑うことが多 いが,経験談が蓄積された後,それらを汎化して,「結局, 言われていることはこういうことですか?」と専門家に 尋ねると,「そうではない.いや,そういう見方もでき るか !?」というような,知識のキャッチボールが開始さ れ,経験知識が汎化知識に変換されていく.現在,高速 道路の諸設備の点検・故障診断のような保守業務知識の 獲得を進めているが(図 3 参照),徐々に各業務の汎化 知識間に連携が生まれ,保守業務全体が見通せる可能性 が出てきた.経験知識を理解するために,問題に浸かる ことは必要だが,問題に浸かった後に,一段上からその 問題を眺めてみると(振返り,リフレクション),業務 ルールの改善に留まらず,業務モデル全体の改革が視野 に入ってくるのである.インタビューには苦労が多いが, このような実りのある収穫が待っている.知識獲得イン タビューを体験した学生は,最初は大変そうであったが, 最後は,結構,頼もしく成長している. このような知識獲得の建設的見方は,実は,ボトルネッ クと批判された同時期に提唱されている.ロボットが積 み木を積むという限定された世界ではあるが,言語知識 と対象知識を統合し,演繹推論を通して,さまざまな質 問に答える SHRDLU を開発し,1970 年代の自然言語理 解をリードした Terry Winograd が,その人である.彼 は,[Winograd 86] において,① 対象と属性により状 況を記述し,② 状況に適用可能なルールを獲得し,③ ルールを論理的に適用して結論を導く,という合理主義 の限界を指摘し,ES も FGCS も基本的には合理主義の 流れにある研究開発であり,表象化できた記号上の操作 の AI として一括りにされてしまう.彼は,合理主義に 代わる理念として,コンピュータ支援によるデザイン論 を展開し,問題領域の「もの」と「こと」をどのように 解釈するかという,内省的な存在論的デザインを提唱し た.例えば,ある道具はどのようなコンテキストで意義 付けられるかを表現することで,人の暮らしと道具が有 機的に結び付き,新しい道具をデザインするときに役立 つ.この存在論的デザインの延長線上に知識獲得過程 があり,それは知識の創造的デザイン活動であり,新た なシステム化領域を見いだす活動であると意義付けてい る.上述した高速道路設備の保守業務領域では,専門家 とのコミュニケーションを大事にしながら,知識獲得過 程のどの場面でどのような AI 技術が使えるかを検討し, ワークフロー,RB,ゴール分析木,オントロジー,写真 や動画のマルチメディアなどの多様な知識メディアの統 合が,内省的な存在論的デザインを推進すると感じる.
5. FGCS 終了後の AI 研究の進展
FGCS終了後,パソコンとインターネットの普及は周 知のとおりであり,AI は再び停滞期に入ったといわれ たが,大規模データ分析法としての ML/DM(機械学習 とデータマイニング),モデリング基礎としての ONT/ SW(オントロジーとセマンティック Web)など,AI の 基礎研究は着実に進展した.簡単に,この 20 年間を振 り返ろう. ML/DMで は,1990 年 代 後 半 に, カ ー ネ ル 関 数 に よる SVM(サポートベクタマシン)が登場し [Cortes 95],高次元特徴ベクトルをさらに高次元空間に非線形 写像して線形識別関数を学習する方法が提案され,次 元圧縮して非線形識別関数を学習する従来の方法と比べ て,学習能力が格段に向上した.さらに 2000 年以降, CRF(Conditional Random Filed, 条件付き確率場)に よる学習 [Lafferty 01],ノンパラメトリックに基づくベ イズモデル,劣モジュラ関数による離散最適化理論,不確実環境におけるロバストネス最適化に基づく機械学習 など,ML/DL の理論が大きく進展した.さらに,マル チラベル学習,半教師あり学習,転移学習など,テスト 分類や推薦システムなど,特定タスクに適した ML/DM が進展し,近年,ML のエポックメイキングとなりそう な Deep Learning が登場し,ML/DM の進展が,現在の ビッグデータブームの技術基盤を与えている. 一方,ONT/SW では,1990 年前半に,知識工学の分 野で,概念化の明示的仕様という意味で「オントロジー」 用語が使用され [Gruber 93],2001 年に,Web 提唱者 である Tim Berners Lee により,Web にメタデータを 付与して,オントロジーを利用して,そのメタデータの 意味をソフトウェアが理解できる次世代 Web「セマン ティック Web」が提唱された [Berners-Lee 01].しか しながら,インセンティブが小さいために,Web ペー ジ作成者が Web ページにメタデータを付与する作業が 普及せず,セマンティック Web の実用化は難しいと思 われたが,2006 年に,再度 Tim Berners Lee により,
Webテキスト情報ではなく,データを基盤にしたセマン
ティック Web(LOD: Linked Open Data)が提唱され た [Berners-Lee 06].その後 LOD は,オープンガバメ ントの基盤として位置付けられ,米国政府と英国政府が 中心となり,2007 年頃より,LOD による行政データの 公開が始まり,2013 年秋までに,行政,地理,メディ ア,生命科学など,領域を越えた形で LOD が連携され, 2011年には 310 億トリプルまで規模が拡大され,我が 国にもその波が押し寄せてきている. これらの ML/DM と ONT/SW の研究開発は,この 20 年間,コンピュータの高速化,記憶装置の大容量化,ネッ トワークの広帯域化というハードウェア基盤の進展と相 まって,大きく進展するとともに,自然言語・画像・音 声理解のような応用 AI 技術の進展も加速させ,AI 要素 技術を統合したグランドチャレンジ的なタスク指向 AI, および,AI 要素技術と情報技術を統合した,生活支援 型 AI サービスが登場する時代を迎えたといえる.
6.二つの AI プロジェクトと AI チャレンジ
米国では,2011 年,IBM のクイズ AI Watson が長寿 クイズ番組ジェパディのグランドチャンピオンに挑戦し 勝利した.Watson では,出題されたクイズに対して, オントロジーを利用してアンサタイプを決め,タグ付け された 2 億 Web ページの情報を利用しながら,数十種 類以上の AI 要素技術が実行され,数百の解候補を生成 し,さらに,別の数十種類の AI 要素技術がそれらの解 候補群を得点付けし,1 位となった候補を解として答え る.当初,正解率は 10%程度であったが,機械学習に より,その正解率は 80%を超えるまでになり,人間の グランドチャンピオンに勝利した.Watson では,新し い AI 要素技術は全く考案されず,100 種類以上の AI 要 素技術の統合に成功の要因があったといえる.この成功 した実践 Deep QA チャレンジ Watson は,成功とはい えなかった PIQUANT(Practical Intelligent Question Answering Technology)という QA チャレンジの反省 から始まっており,PIQANT が CYC を知識基盤にした のに対し,Watson は,CYC に 2 億 Web ページを関連 付けた知識基盤を利用し,もろもろの AI 技術を統合し て成功した.すなわち CYC(1984 ∼ 94, その後 Cycorp 社設立)→ PIQANT(2003 ∼ 06)→ Watson(2006 ∼ 10)のように,四半世紀かけて,AI プロジェクトが世 間から注目される AI チャレンジに結実したといえる. また,アップル社から,スマートフォンアプリの音声 アシスタントコンシェルジュ Siri が AI サービスとして 2011年に提供された.Siri 開発の CTO は Tom Gruber であり,彼は,20 年前に,オントロジーを情報科学の 分野に導入した先駆者である.また,Siri は,DARPA(米 国国防省)の AI プロジェクト CALO(2003 ∼ 08),そ の後 PAL(the Personalized Assistant that Learns)プ ログラムに継承されて発展したものであり,Watson 同 様,自然言語処理,推論,機械学習などの AI 要素技術 とアプリサービスが統合されている.この場合は,数年 という比較的短期間で,AI プロジェクト CALO が,注 目される AI サービス Siri に結実したといえる.7.お わ り に
CYC(1984 ∼ 94)→ PIQANT(2003 ∼ 06)→ Watson (2006 ∼ 10),および CALO(2003 ∼ 08)→ Siri(2011) という連携は,基礎研究主体の国家プロジェクトから, 課題達成型の民間プロジェクトへのうまいバトンリレー であり,第三次 AI ブームの原動力になっている. もし,FGCS の達成目標を推論マシンに限定するの ではなく,知識情報処理チャレンジから多面的にプロ ジェクトを推進していれば,FGCS は社会的にも貢献で きたと思うが,1980 年代の 10 年は短すぎたといえる. Watsonは,CYC から数えれば 25 年も要している.継 続は力なりという.周辺技術の進展とともに,FGCS を 変容させ,さまざまな形でバトンをつないで継続発展さ せていれば,Watson や Siri より前に,我が国で第三次 AIブームを引き起こせたかもしれない. 近年,DARPA チャレンジから自動運転走行システム が誕生するなど,課題達成型プロジェクトの成果が著し い.これは,AI を含めた ICT の成熟度向上が背景にあり, 技術を横串にするトランスディスプリン型研究開発の重 要性がより高まってきたといえる.単一のディスプリン 研究も必要であるが,それ以上に,さまざまなステーク ホルダが一同に会し,議論を戦わせ,近未来社会を展望 しながら,トランスディスプリンを実世界に着地させる 総合的議論の必要性が増している.幸い,2013 年 7 月, JST(科学技術振興機構)の CRDS(研究開発戦略セン
ター)の情報科学技術ユニット(旧電子情報通信ユニッ ト)が,人と機械が共創する社会を目指して,知のコン ピューティングという,日本発のイニシアチブにするた めのサミット Wisdom Computing Summit 2013 を開催 し [JST 13a],当学会も積極的に関与し,多くの学会員 が参加して,新しいコンセプトづくりに関わった.さら に,引き続き,知のメディアというサブテーマを集中的 に議論するために,科学技術未来戦略ワークショップ「知 のコンピューティング:知のメディア」が開催され,こ こでも多くの学会員が貢献した [JST 13b]. 時代が変われば,職業も変わるのは当然なのに,最近, AIをはじめとする先端的コンピュータが人の職業を奪 うという「機械との競争」[ブリニョルフソン 13] とい う言葉をよく耳にするようになってきた.機械との競争 ではなく「機械との共創」を論じたいものである.30 年も前,FGCS で AI のイニシアチブをとりにいった開 拓精神を思い出し,我が国において,新しい未来社会を 築いていくような機械との共創プロジェクト,AI チャ レンジが多様な形で進められていくことを期待したい.
◇ 参 考 文 献 ◇
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[ブリニョルフソン 13] エリク・ブリニョルフソン , アンドリュー・ マカフィー 著 , 村井章子 訳:機械との競争,日経 BP 社(2013) [Cortes 95] Cortes, C. and Vapnik, V. N.: Support-vector networks,
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[Gruber 93]Gruber, T. R.: A translation approach to portable ontology specifications, Knowledge Acquisition, Vol. 5, No. 2, pp. 199-220 (1993) [JST 13a] 科学技術未来戦略ワークショップ「知のコンピュー ティング─人と機械が共創する社会を目指して─」,CRDS, JST(2013) http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2013/WR/ CRDS-FY2013-WR-05.pdf [JST 13b] 科学技術未来戦略ワークショップ「知のコンピュー ティング:知のメディア」,CRDS, JST(2013)http://www. jst.go.jp/crds/pdf/2013/WR/CRDS-FY2013-WR-07.pdf [Lafferty 01]Lafferty, J., McCallum, A. and Pereira, F.:
Conditional random fields: Probabilistic models for segmenting and labeling sequence data, Int. Conf. on Machine
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[Winograd 86] Winograd, T. and Flores, F.: Understanding
Computers and Cognition: A New Foundation for Design, Blex
Publishing Corporation(1986),平賀 譲 訳:コンピュータと 認知を理解する─人工知能の限界と新しい設計理念,産業図書 (1989) 2014年 1 月 28 日 受理 山口 高平(正会員) 1979年大阪大学工学部通信工学科卒業,1984 年同 大学院工学研究科博士後期課程修了.同年,大阪大 学産業科学研究所助手.1989 年静岡大学工学部助教 授.1997 年同大学情報学部教授.2004 年より慶應 義塾大学理工学部教授.工学博士.定理証明の研究 を経て,知識システム,データマイニング,セマン ティック Web,オントロジー,知能ソフトウェア工 学に関する研究に従事.1992 年度本学会全国大会優秀論文賞.2002 年 度本学会研究会優秀賞.2007 年度大川出版賞.本学会会長.電子情報通 信学会,情報処理学会,情報システム学会,AAAI,IEEE-CS などの各 会員.