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政権交代と「新しい政治」の政治的意義--<新しい政治〉の第2局面への対応

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Academic year: 2021

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(1)Mem.. Faculty.. B. O. S. T. Kinki. University. No. 26 : 93 — 116. (2010). 政 権 交代 と 「 新 しい 政 治 」 の 政 治 的 意 義 一 く新 しい政 治 〉の 第2局 面 へ の 対応 一. 新. 要. 田. 和 宏1. 旨 2009年8月30日. の 衆 議 院 議 員 選 挙 の 結 果 、政 権 交 代 が 起 こ り 、 翌9月16日. び 国 民 新 党 の3党. 連 立 か ら な る鳩 山 由 紀 夫 政 権 が 成 立 した 。 そ の 鳩 山 首 相 は. し か し 、 鳩 山 政 権 は 、 普 天 間 基 地 移 設 問 題 で 立 ち 往 生 し 、 わ ず か8ヶ.月 山 が提 唱 した. 、 民 主 党 と社 会 民 主 党 お よ 「 新 しい 政 治 」 を 提 唱 した 。. 余 りの 短 命 に 終 わ っ た 。 但 し、 鳩. 「 新 し い 政 治 」 は 、 そ の 後 継 で あ る 菅 直 人 政 権 に 継 承 され た 。 本 稿 で は 、 政 権 交 代 に よ り民. 主 党 政 権 か ら提 起 さ れ た 「新 しい 政 治 」 の 政 治 的 意 義 に つ い て 、冷 戦 以 降 の20年 〉 お よ び そ の 第2局. 間 に お け る く 新 しい 政 治. 面 と い う文 脈 の 中 で 捉 え 返 し な が ら 、 政 治 学 に よ る 学 理 的 省 察 を 行 う も の で あ る 。. 1.問 題 の 所 在 2009年8.月30日. 、 第45回. 衆 議 院 総 選 挙 に お い て308議. 席(議. 席 占 有 率64.2%)を. 獲 得 し歴 史 的 大 勝 利. を 収 め た 民 主 党 は 、 細 川 護 煕 政 権 と羽 田孜 政 権 の 若 干 の 期 間 を 除 き 、 半 世 紀 余 り も の 長 き に 渡 り政 権 の 座 に あ っ た 自民 党 か ら、 つ い に政 権 を 奪 い 、念 願 の政 権 交代 を 果 た した。 首班 指 名 を 受 け た鳩 山 由紀 夫 首相 は 、 自 民 党 政 権 時 代 の 旧 来 的 な 政 治(「 ア ン シ ャ ン ・レ ジ ー ム 」)に 対 し 、 「 新 しい 政 治 」 の 到 来 を告 げ た。 その. 「 新 し い 政 治 」 と は 、 無 論 、 〈 ポ ス ト 自 民 党 政 治 〉 を 意 味 す る。 し か し、 そ れ だ け で は な い 。 自 民. 党 長 期 政 権 が 戦 後 政 治 を 担 っ て き た わ け で あ る か ら 、「 新 し い 政 治 」は 、〈 ポ ス ト戦 後 政 治 〉 を も意 味 す る。 ま た 、新 政 権 は 、 「官 僚 の 官 僚 に よ る 官 僚 の た め の 政 治 」 を 終 息 さ せ 、官 僚 主 導 か ら政 治 主 導 の 政 治 へ 変 え る こ と を 公 約 し 、 明 治 維 新 以 降 形 成 され 、 戦 後 改 革 に お い て す ら抜 本 的 な 改 革 が 行 わ れ ず 、 百 数 十 年 の 歴 史 を 刻 み な が ら確 立 され た 、極 め て 強 固 な 日本 官 僚 制 を も 変 革 の タ ー ゲ ッ トに 据 え た 。 し た が っ て 、 「新 し い 政 治 」 は 、 〈 ポ ス ト近 代 日本 政 治 〉 も射 程 に 入 れ て い る と も い え る で あ ろ う。 も ち ろ ん 、 「 新 しい 政 治 」 は 、 直 近 に お け る 、5年5ヶ. 月 に 及 ん だ 小 泉 純 一 郎 政 権 に よ る構 造 改 革=新. 自 由主義 改 革 の 弊 害 に 対 す る. 是 正 と い う政 治 的 使 命 を 帯 び て い る が 故 に 、〈 ポ ス ト小 泉 構 造 改 革 〉 を も含 意 し て い る。こ う して み る と 、 鳩 山 政 権 が 提 起 し 菅 政 権 へ 継 承 され た. 「新 し い 政 治 」 は 、 わ が 国 の 近 現 代 政 治 史 上 、 明 治 維 新 と 戦 後 改 革. に 匹 敵 す る と こ ろ の 、 そ れ こ そ 、 〈 民 主 党 革 命 〉 と い うべ き 政 治 変 動 を も 予 期 させ た 次 第 で あ る。. と こ ろ が 、 新 政 権 発 足 後 、 鳩 山 政 権 は 暗 礁 に 乗 り上 げ た 。 ま ず 、 そ れ は 鳩 山 首 相 と小 沢 一 郎 幹 事 長 に 関 係す る 「 政 治 と カ ネ 」 の 問 題 で あ る。 鳩 山 と小 沢 の 二 人 は 、 新 政 権 を 動 か す2つ. の エ ン ジ ン と い うべ き 存. 在 で あ り、 言 うま で も な く 、 そ れ ぞ れ が 内 閣 総 理 大 臣 と 民 主 党 の 幹 事 長 と い う内 閣 と政 権 与 党 の 要 職 に あ る た め 、 「政 治 と カ ネ 」 の 問 題 が 鳩 山 政 権 に 与 え た 政 治 的 打 撃 は 余 り に も 大 き い 。 そ の た め 、 衆 議 院 の 議 席 数 で 多 数 を 占 め る 与 党 民 主 党 を バ ッ ク に 、 期 待 され て い た 鳩 山 に 対 す る 首 相 と し て の 指 導 力 は 、 影 を 潜 め て し ま っ た 。 い や 、 も と も と鳩 山 に は 指 導 力 が 欠 如 と し て い た と指 摘 し た 方 が 正 鵠 を 得 て い る で あ ろ う。 ま た 、 小 沢 の 「辣 腕 」 に し て も 、 結 果 と して 、 不 発 に 終 わ っ た 。 「新 しい 政 治 」 に 向 け 、 政 策 や レ ジ ー ム の 転 換 に 必 要 と され る 、 鳩 山 と小 沢 の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ は 発 揮 され な い ま ま で あ っ た 。. 原 稿 受 付2010年7月20日 1.近 畿 大 学 生 物 理 工学 部. 教 養 ・基礎 教 育 部 門. 〒649-6493和. 歌 山県 紀 の川 市 西 三 谷930.

(2) ア メ リカ 海 兵 隊 の 普 天 間 基 地 移 設 問 題 に 立 ち 往 生 し 、鳩 山 政 権 は つ い に 終 焉 を 迎 え る に 至 っ た 。鳩 山 は 、 「 対 等 な 日米 関 係 」 を 掲 げ 、 普 天 間 基 地 を 「最 低 で も 沖 縄 県 外 へ 移 設 」 す る と主 張 し て き た が 、 「 迷 走 」を 繰 り返 し た あ げ く 立 ち 往 生 し 、 結 局 の と こ ろ 、 旧政 権 が ア メ リカ と合 意 し た. 「現 行 案 」 を 微 修 正 した と こ. ろ で 、 そ の 決 着 を は か っ た 。 し か し 、 到 底 、 沖 縄 県 民 か ら 賛 同 を 得 られ る も の で は な か っ た 。2010年6.月 2日 、 鳩 山 首 相 は 辞 任 を 決 意 し 、 政 権 発 足 か ら8ヶ. 月 余 り、 在 位266日. の 短 命 の うち に 、 鳩 山 政 権 は 退 陣. を 余 儀iな く され た 。 こ う し て 鳩 山 政 権 に 対 す る 大 い な る 「期 待 」 は 外 れ た 。 「期 待 」 が 「 失 望 」 へ 、そ して 「失 望 」 が 「不 信 」 へ 変 わ り、 つ い に は 月29日. と30日. 率 は71%)へ. 「 裏 切 られ た 革 命 」 と い う辛 辣 な 表 現 す ら使 わ れ た 次 第 で あ る 。 朝 日新 聞 が2010年5. の 両 日 に 行 っ た 緊 急 世 論 調 査 に よ る と 、 鳩 山 政 権 の 内 閣 支 持 率 が17%(政. 権 発 足 時 の 支持. 落 ち 込 み 、 自民 党 政 権 時 代 に 政 権 を 維 持 す る こ とが 困 難 とい わ れ た 「危 険 水 域 」 に 入 り、 ま. た 民 主 党 へ の 政 党 支 持 率 も21%(政. 権 交 代 後 の 最 大 支 持 率 は46%)へ. 下 落 し た 。 そ の ま ま7月ll日. に予. 定 され て い る 参 議 院 議 員 選 挙 に 突 入 す る と 、 民 主 党 は 参 院 選 で 大 敗 す る 可 能 性 が 高 ま っ た 。 そ うす る と 、 鳩 山 が提 唱 した. 「 新 し い 政 治 」 は 、 雲 散 霧 消 す る恐 れ も あ っ た 。 と こ ろ が 、 鳩 山 退 陣 後 、 菅 直 人 新 政 権 に. 対 す る内 閣支 持 率 お よび 民 主 党 へ の政 党支 持 率 は 、驚 異 的 な 回復 を示 した。 こ うして 、鳩 山政権 が提 唱 し た. 「 新 し い 政 治 」 は 菅 政 権 へ 継 承 され る こ と と な っ た 。. と ころ で 、鳩 山 が 唱 え た. 「 新 し い 政 治 」 と い う言 葉 は 、 鳩 山 の 思 惑 に か か わ ら ず 、 実 は 極 め て 意 味 深 長. な 政 治 学 的 言 説 な の で あ る。 そ こ で 本 稿 は 、 鳩 山 が 言 う と こ ろ の 冷 戦 後 約20年. 間 に お け る く 新 し い 政 治(newpolitics)〉. 「 新 し い 政 治 」 に 着 目 しつ つ も 、 そ れ を. お よ び そ の 第2局. 面 と い う文 脈 の 中 で 捉 え 返 し、. 「 新 し い 政 治 」に つ い て 政 治 学 に よ る 省 察 を 行 う次 第 で あ る 。 こ こ で 、〈 新 し い 政 治 〉 と鳩 山 が 唱 え た 「新 し い 政 治 」 と の 問 に お け る概 念 整 理 を し て お く必 要 が あ る(図. 表1.)。. 日本 国 内 に お け る. グ ロー バ ル な 〈新 しい政 治 〉. 日本 国 内 にお け る く 新 し い 政 治 〉 の 第2局. 〈新 しい 政 治 〉の 第1局 面 1.経 済 の グ ロ ー バ ル 化 と新 自 由 主 義 1-2.ポ 2.「. 面. 「 新 しい 政 治 」 一. ポ ス ト小 泉 構 造 改革. 小泉構造改革. ス ト新 自 由 主 義. 第3の 道. 新 し い 帝 国 」 ア メ リカ の プ レゼ ン ス. 2-2.ポ. 一 鳩 山 ・菅 の. 対 米依存. 対 等 な 日米 関係. ス ト ・ブ ッ シ ュ. 3.市 民 社 会 の 再 生 とNGO・NPOの. 台頭. 4.持 続 可 能 性 お よび 社 会 的 リス ク に 対 す る ガバ ナ ンス. 図表1.グ. 本 稿 で は 、1989年. 外 部 化 とNPOの. 下 請 け化. 新 しい 公共. 小 さな政府. 国会 内閣制. 官邸主導. 政治 主導/脱 官僚政治. 地方分権/三 位一体改革. 地域 主権. ローバ ル な く新 しい政 治 〉 と 日本 国 内 にお け る く新 しい政 治 〉 の 第1局 面 と第2局. の 東 欧 革 命 に 連 動 す る か た ち で 冷 戦(coldwar)が. 間 に お い て 現 れ た 冷 戦 後(postcoldwar)の. 面. 終 結 した 以 降 、 今 日に 至 る ま で の. 政 治 の 世 界 を く 新 し い 政 治 〉 と 呼 ぶ 。 〈 新 しい 政 治 〉 は 、 冷 戦.

(3) 時 代 に 規 定 され た く 旧 い 政 治(oldpolitics)〉 ら2008年. ま で を く 新 し い 政 治 〉 の 第1局. に た い す る 対 立 概 念 で あ る 。 そ して 、 お お よ そ 、1989年. 面 、2009年. 以 降 今 日 に 至 る ま で を く 新 しい 政 治 〉 の 第2局. か 面と. 捉 え る。 周 知 の 通 り、2008年. の 後 半 、 投 資 銀 行 リー マ ン ・ブ ラ ザ ー ズ の 破 綻 を 契 機 に 世 界 金 融 危 機 ・世 界 同 時 不. 況 へ と連 動 し 、 冷 戦 後 に お け る く 新 し い 政 治 〉 の 基 調 で あ っ た 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 に と も な う新 自 由 主 義 の 正 当 性 は 衰 退 し た 。こ れ に よ り 、い ま や ポ ス ト新 自 由 主 義 が 重 要 な 政 治 課 題 と な っ て い る 。ま た 併 せ て 、 同 時 期 、2008年. の ア メ リ カ 大 統 領 選 に お い て バ ラ ク ・オ バ マ が 勝 利 し、 こ れ ま で ジ ョー ジ ・ブ ッ シ ュ 政 権. の 行 っ て き た 軍 事 力 の 行 使 も辞 さず 、 軍 事 的 プ レゼ ン ス を 誇 示 す る 「 新 し い 帝 国 」 と し て の ア メ リカ が 、 一 応 の 国 際 協 調 路 線 へ 修 正 しつ つ あ る. 。 これ に よ り、少 な く と も 、 「 新 しい 帝 国 」 と して の ア メ リカ は 、 オ. バ マ 政 権 に よ っ て ポ ス ト ・ブ ッ シ ュ を 志 向 し て い る と い え る で あ ろ う。 こ う し た こ と か ら 、 グ ロ ー バ ル な 政 治 く 新 し い 政 治 〉 は 第2局 鳩 山政 権 が 唱 え た. 面 へ と移 行 し つ つ あ る と い え る。. 「 新 し い 政 治 」 は 、 表1.の. よ うに 、 グ ロ ー バ ル な く新 しい 政 治 〉 が 第2局. つ つ あ る 中 に お い て 、 日本 国 内 に お け る く 新 し い 政 治 〉 の 第2局. 面 に 相 当 す る。 グ ロ ー バ ル な く新 しい 政. 治 〉 に 対 応 し た 日本 国 内 に お け る く新 し い 政 治 〉 は 、と りわ け 、小 泉 政 権 に よ っ て そ の 第1局 しか しな が ら、 〈 旧い政 治 〉の 自民 党政 治 を. 面 へ移 行 し. 面 を 画 した 。. 「ぶ っ 壊 す 」 と 宣 言 し 、 小 泉 が 行 っ た 小 泉 構 造 改 革 す な わ ち. 新 自 由 主 義 改 革 は 、 そ の 結 果 と し て 格 差 と貧 困 を 招 き 、 本 稿 の 冒 頭 に 述 べ た よ うに 、 つ い に は 自 民 党 が 下 野 し 、代 わ っ て 民 主 党 が 政 権 の 座 に 就 く こ と に つ な が っ た 。 こ の よ うに 、鳩 山 政 権 が 唱 え た 「新 しい 政 治 」 は 、 グ ロ ー バ ル な く新 し い 政 治 〉 、 し か も そ れ が 第2局 た 日本 国 内 に お け る 第1局 2局. 面 へ移 行 しつ つ あ る こ とに も対応 しつ つ 、 か つ ま. 面 の く 新 し い 政 治 〉 を 乗 り越 え つ つ 、 今 後 の 日本 に お け る く新 し い 政 治 〉 の 第. 面 を 切 り拓 く た め に 設 定 し た 政 治 的 ア ジ ェ ン ダ と い え る。 但 し 、 鳩 山 政 権 が 設 定 し た. 「 新 しい政 治 」. と い う政 治 的 ア ジ ェ ン ダ 自体 は 、 首 肯 で き る も の の 、 そ れ を 実 現 す る に は 普 天 間 基 地 移 設 問 題 に 見 ら れ た よ うに 容 易 な ら ざ る性 格 を 有 し て い る。 そ れ 故 に 、 鳩 山 が 提 唱 し た. 「 新 しい政 治 」 は 、 そ の理 想 や 志 は 高. い が 、半 世 紀 に渡 る 旧 自民 党 政 権 の 政 治 的 な 「 負 の 政 治 遺 産(negativepoliticallegacy)」 依 存 性(dependenceofpath)」. あ る い は 粘 着 性(stickiness)に. と そ の 強 い 「経 路. 対 す る 格 闘 を も 求 め られ る わ け で あ っ て 、 決. し て 簡 単 に 実 現 で き る よ うな 政 治 的 ア ジ ェ ン ダ で は あ りえ な い 。 次 節 以 降 で は 、 鳩 山 が 提 唱 し 菅 政 権 に 継 承 され た ア メ リカ との 「 対 等 な 日米 関 係 」、②.ポ. 「 新 し い 政 治 」 に つ い て 、 そ れ を 、 ①.「 新 し い 帝 国 」. ス ト新 自 由 主 義 と し て の 「第3の. 道 」、③.「 新 しい 公 共 」の 課 題 、. お よ び ④.「 政 治 主 導 」 とい うカ バ ナ ン ス を 確 立 す る た め の 統 治 レ ジ ー ム の 再 構 築 、 と い う順 で 省 察 を試 み た い。. 2.「 対 等 な 日 米 関 係 」と「新 しい 帝 国 」ア メリカの 北 東 ア ジ ア に お け る安 全 保 障 鳩 山 政 権 に お け る 「新 し い 政 治 」の 一 つ は 、「 対 等 な 日米 関 係 」の 構 築 で あ っ た 。ネ オ コ ン 思 想 に 基 づ き 、 ア メ リカ の. 「国 益 」 の 実 現 の た め に は 軍 事 力 の 行 使 を も辞 さ な か っ た ブ ッ シ ュ 政 権 が 退 陣 した あ と 、 国 際. 協 調 を 掲 げ 、 イ ラ ク か ら の 撤 退 、 さ ら に は 核 廃 絶 を も訴 え る オ バ マ 政 権 の 登 場 は 、 な る ほ ど確 か に 鳩 山政 権 に と っ て 、 千 載 一 遇 の チ ャ ン ス で あ っ た 。 そ の 鳩 山 に 、 「対 等 な 日米 関 係 」 の 構 築 へ 向 け 「チ ェ ン ジ 」 で き る か の よ うな 期 待 を 抱 か せ た と して も決 して 不 思 議 で は な か っ た 。 し か も 、冷 戦 終 結 か ら既 に20年. もの. 歳 月 が 経 過 し 、い よ い よ機 は 熟 した と判 断 して 、 自民 党 旧 政 権 の 対 米 依 存 路 線 を 踏 襲 せ ず 、 「対 等 な 日米 関 係 」を 構 築 す べ く ア ク シ ョ ン を 起 こ す べ き タ イ ミ ン グ で あ っ た 。 と こ ろ が 、鳩 山 の 期 待 と 思 惑 が そ の ま ま 、 ア メ リ カ 海 兵 隊 普 天 間 基 地 の 沖 縄 県 外 も し く は 日本 国 外 へ の 移 設 に 直 結 す る ほ ど 、 「 新 し い 帝 国 」の ア メ リ カ は 甘 く な か っ た 。 ケ ン ト ・カ ル ダ ー は 、 ア メ リカ 軍 基 地 の. 「受 入 国 の 政 権 交 代 は 、 基 地 設 置 国 の 軍 の 撤.

(4) 退 につ な が る 」 とい う 「 政 権 交 代 仮 設 」(過 去50年80%の. 確 率)を. 的 撤 退 を 行 な え る機 会 は 限 られ て い る 」 と も指 摘 し て い る(カ 地 は 、 カル ダ ー が い うと ころ の. 紹 介 す る が 、 併 せ て ア メ リカ が. ル ダ ー2008:336-337)。. 「戦 略. その点、普天間基. 「 戦 略 的 撤 退 」 に 該 当 す る よ うな 、 国 外 移 転 へ 進 展 し な か っ た 。. 鳩 山政 権 は 、自民 党 旧政 権 の 党 是 ともい え る対 米 依 存 路 線 を改 め、 「 対 等 な 日米 関 係 」 の 構 築 を 政 治 的 ア ジ ェ ン ダ に 据 え た 。 そ の ア ジ ェ ン ダ を 具 体 的 に 実 現 す る も の の 一 つ と し て 、 旧政 権 が ブ ッ シ ュ 政 権 と約 定 し た 、普 天 間 基 地 に 駐 留 す る ア メ リカ 海 兵 隊 ヘ リ コ プ タ ー 部 隊36機 る 辺 野 古 岬 の 沿 岸 にV字. を 、名 護 市 キ ャ ン プ ・シ ュ ワ ブ 内 に あ. 型 滑 走 路 を 新 設 し た 上 で 、 そ こ へ 移 設 す る と し た 日米 合 意 の 「 現 行 案 」に 対 し再. 検 討 を 迫 っ た 。 こ う し て 、 普 天 間 基 地 の ヘ リ部 隊 を 、 沖 縄 県 外 も し く は 日本 国 外 へ 移 設 す る と い う政 権 公 約 を 掲 げ た の で あ る。 こ う し た 政 権 公 約 を 打 ち 出 す に は 、 鳩 山 政 権 が ブ ッ シ ュ か ら代 わ っ た オ バ マ の ア メ リ カ に 、 「チ ェ ン ジ 」 を 期 待 し て い た の で あ ろ う。 し か し な が ら 、た と え オ バ マ に 代 わ っ た と こ ろ で も 、 「新 し い 帝 国 」 ア メ リカ の 北 東 ア ジ ア 地 域 に お け る安 全 保 障 政 策 は 微 動 だ に せ ず 、 こ の た め 鳩 山 政 権 は 、 普 天 間 基 地 の 新 た な 移 設 先 を 模 索 し 、 迷 走 せ ざ る を え な い 窮 地 に 陥 っ た 。 結 局 の と こ ろ 、 旧政 権 と ブ ッ シ ュ政 権 と の 問 で 結 ば れ た 日米 合 意 を 概 ね 踏 襲 す る こ と で 、2010年5.月28日. 、鳩 山 政 権 は 決 着 を は か っ た 。 「 最. 低 で も 県 外 」 と掲 げ た 鳩 山 政 権 の 公 約 に 期 待 し て い た 沖 縄 県 民 に と っ て 、 今 回 の 決 着 は 全 く許 容 で き る類 の も の で は な か っ た 。 そ の 結 果 、 鳩 山 政 権 は 行 き 詰 ま り、 退 陣 を 余 儀iな く さ れ た 。 し か も 、 鳩 山 は 、 日米 同盟 や 沖縄 の米 軍基 地 の今 後 に つ い て そ の長 期 的 ビジ ョ ンを 示す こ とは な か っ た。. そ れ に し て も 、沖 縄 の 米 軍 基 地 の 長 期 駐 留 は 、鳩 山 由 紀 夫 の ブ レ ー ン で あ る 寺 島 実 郎 が 指 摘 す る よ うに 、 そ もそ も 「 不 自然 」 で あ る。 日本 に は 、約4万 1.6倍 の 面 積 に あ た る 約1,010㎞2の 外 基 地 」 の 上 位5つ. の うち4つ. 人 の 米 軍 の 他 に 軍 属 や 家 族 約5万. 人 が 駐 留 し 、東 京23区. の. 広 大 な 米 軍 基 地 が あ る。 ま た 、 米 軍 が 世 界 に 展 開 し て い る 「大 規 樹 毎. が 、 す な わ ち 横 須 賀 、 嘉 手 納 、 三 沢 、 横 田 基 地 と い う よ うに 日本 に 置 か れ. て い る。 そ の 嘉 手 納 基 地 を 含 め 、 日本 国 内 の 米 軍 基 地 の74.2%が. 沖 縄 に あ り、か っ ま た 、沖 縄 本 島 の18.4%. の 面 積 が 米 軍 基 地 に 占 め られ 、沖 縄 は 正 に 基 地 の 島 と な っ て い る 。 さ ら に 、 「思 い や り予 算 」 を 通 じて 米 軍 駐 留 経 費 の7割. を 日本 が 負 担 す る と い う、 「 世 界 に 例 の な い 状 態 」 が 続 い て い る(寺. 島2010)。. そ れ に 、 沖 縄 に 駐 留 す る米 軍 兵 士 に よ る 、 沖 縄 市 民 に 対 す る殺 人 や 強 姦 ・輪 姦 、 暴 行 と い っ た 凶 悪 犯 罪 が 頻 発 し て い て も 、 日本 の 警 察 に よ る 取 り調 べ に は ア メ リカ 人 容 疑 者 の 人 権 が 保 障 され な い と い う理 由 か ら 、 容 疑 者 の 引 き 渡 し を 拒 否 す る 、 一 種 の 治 外 法 権 的 な 状 況 す ら あ る(我 洋 戦 争 の 終 戦 か ら 実 に65年. 部2010、. 吉 田 敏 浩2010)。. 太平. が 経 過 し て い る に も か か わ らず 、沖 縄 に お け る 米 軍 基 地 の 現 状 を 見 れ ば 、 と て. も 主 権 を 有 す る独 立 国 日本 の 一 部 と は 言 い 難 い 。 そ の 意 味 で 、 鳩 山 が. 「対 等 な 日米 関 係 」 の 構 築 を 訴 え 、. 普 天 間 基 地 の 県 外 も し く は 国 外 へ の 移 設 を 主 張 す る こ と は 、 し ご く 「自 然 」 の こ と で あ る。 そ れ で は 、 何 故 に 、 ア メ リカ は 、 こ の 際 、 日米 と も に 、 政 権 交 代 を 期 に 、 旧政 権 ど う しの 現 行 案 を 見 直 さず 、 した が っ て ま た 鳩 山 政 権 が 主 張 す る普 天 間 基 地 の 沖 縄 県 外 あ る い は 日本 国 外 へ の 移 設 と い うプ ロ ポ ー ザ ル を 全 く受 け 付 け ず 、 現 行 案 の 実 施 を 頑 な に 要 求 し た の で あ ろ うか 。 併 せ て 、 何 故 に 、 ア メ リカ は 、 沖 縄 海 兵 隊 の 完 全 グ ア ム 移 転 の 可 能 性 を 否 定 し 、 か つ ま た 普 天 間 基 地 の ヘ リ部 隊 が 沖 縄 県 内 に 引 き 続 き 駐 留 す る理 由 を 説 明 し て い な い の で あ ろ うか 。 ア メ リカ は 同 盟 国 で あ る 日本 が 政 権 交 代 に よ り、 対 米 依 存 か ら 「 対 等 な 日米 関 係 」 へ 、 日本 の 対 米 政 策 の 基 本 を 変 更 す る 方 向 性 を 鳩 山 政 権 か ら提 起 され た こ と に 不 快 感 を 抱 い た と い え る。 ソ連 な き あ と の 冷 戦 後 の世 界 に お い て 、 唯 一 の. 「 超 大 国 」 で あ る ア メ リカ は 、 ア メ リカ 中 心 の 国 際 政 治 秩 序 、 す な わ ち パ ッ ク. ス ・ア メ ー リ カ ー ナ に 君 臨 す る 「新 しい 帝 国(newempire)」. で あ り、 そ の ア メ リ カ に 対 して 日本 は 同 盟 国.

(5) の 位 置 に あ る も の の 、 同 盟 国 と い う位 置 は 決 し て 対 等 な 立 場 を 意 味 し な い 。 し た が っ て 、 ア メ リカ に と っ て 、 「対 等 な 日米 関 係 」 と い う発 想 そ の も の が 、 自 ら の 身 分 を わ き ま え な い. 「 属 国(vassalstate)」. の不遜. な 態 度 で あ る と認 識 され た と し て も 、 そ れ は 決 し て 過 言 で は な い で あ ろ う。 し か し 、 そ う考 え る よ り も 、 ア メ リ カ の 軍 産 複 合 体 、 と り わ け 海 兵 隊 の 利 益 拡 大 の た め に 、海 兵 隊OBの 防 歳 出 小 委 員 会 委 員 長)に. ジ ョ ン ・マ ー サ ー 下 院 議 員(国. よ る オ バ マ 政 権 へ の プ レ ッ シ ャ ー が 起 因 し、 「 現 行 案 」に 対す る再検 討 が 阻 止 さ. れ て い る と推 測 す べ き で あ ろ うか(ラ. イ ト2010)。. そ うで あ る な ら ば 、 普 天 間 基 地 移 設 問 題 は 、 ア メ リカ. の 北 東 ア ジ ア に お け る安 全 保 障 戦 略 の 問 題 で は な く 、ア メ リカ 国 内 に お け る圧 力 政 治 の 問 題 と な る。ま た 、 そ も そ も 、 普 天 間 基 地 の 海 外 移 転 の 可 能 性 が あ りな が ら 、 外 交 の サ ブ ス タ ン ス は 外 務 省 に あ る と い う不 文 律 を侵 犯 す る. 「 政 治 主 導 」 に 対 し脅 威 を 感 じた 外 務 官 僚 が サ ボ タ ー ジ ュ した こ と も否 定 で き な い(佐. 藤優. 2010)。 日米 安 保 条 約 と そ れ に 付 随 す る 日米 地 位 協 定 か ら な る 日米 安 保 体 制 は 、 ア メ リカ 側 の 日本 防 衛 と 、 日本 側 の ア メ リ カ 軍 へ の 基 地 提 供 を 基 本 と して い る。 し か し、 日米 安 保 体 制 は 、沖 縄 を 「捨 て 石 」 と して き た 。 す な わ ち 、 憲 法9条. の 規 定 に よ り 「専 守 防 衛 」 に 徹 す る 自衛 隊 だ け で は 日本 本 土 の 防 衛 は 十 分 で は な く 、. そ れ 故 、 日本 本 土 を 防 衛 す る た め に は 、 ア メ リカ 軍 に 沖 縄 を 基 地 と し て 提 供 し 、 ア メ リカ の. 「 核 の傘 」 の. 下 に よ っ て 日本 本 土 が 守 られ る 、 と い う構 図 で あ る。 こ う し て 、 日本 本 土 か ら切 り離 さ れ た か た ち の 沖 縄 の 基 地 問 題 は 、 「不 可 視 化 」(「見 え な い 化 」 も し く は. 「見 な い 化 」)さ れ て き た 。 そ れ は 、 日本 本 土 と 沖 縄. と の 認 識 論 的 な 断 絶 を 招 き 、 新 崎 盛 暉 の 表 現 を 借 りれ ば. 「 構 造 的 沖縄 差 別 」 の 基本 とな っ た の で あ る。. 周 知 の よ うに 、ア メ リカ 軍 は 、ハ ワ イ か ら ア フ リカ 大 陸 東 岸 に 至 る 西 半 球 の 安 全 保 障 の 上 で 、沖 縄 を 「要 石(keystone)」. とい う戦 田 各拠 点 に 位 置 付 け 、 「 戦 力 投 射 の 根 拠 地(power-projectionplat飴. ㎜)」 と し て い る。. 「 戦 力 投 射 」 と は 、 数 十 万 人 規 模 の 大 兵 力 に よ り敵 国 の 主 要 部 分 を 占領 す る と い う意 味 で あ り、 沖 縄 は そ の た め の 戦 略 上 の 拠 点 で あ る 。 朝 鮮 半 島 や 台 湾 海 峡 に お け る 有 事 の 際 に 、 ア メ リカ は 、 沖 縄 を. 「戦 力 投 射. の 根 拠 地 」 と し て 、 沖 縄 の 基 地 に 大 規 模 な 兵 力 を 集 中 させ た い の で あ う。 そ の 一 端 を 担 う辺 野 古 に 建 設 さ れ る 新 し い 基 地 は 大 変 魅 力 的 な の で あ ろ うか 。 2010年2.月. に 発 表 さ れ た ア メ リカ 国 防 総 省 の 「QDR2010」. を 読 む と 、 ア メ リカ の 軍 事 構 想 は エ ス カ レ ー. ト し 、 中 国 の 潜 在 的 な 軍 事 的 脅 威 、 と りわ け 公 海 、 空 、 宇 宙 空 間 お よ び サ イ バ ー 空 間 と い う グ ロ ー バ ル ・ コ モ ン ン ズ に お い て 中 国 の 米 軍 に 対 す る 「ア ク セ ス 拒 否 能 力(anti-accesscapability)」 示 し て い る。 ま た 、 カ ル ダ ー に よ れ ば 、9.llテ ロ 以 降 、 「中 間 準 備 地 域 」 と現 地 の の 関 係 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し て い る(カ ル ダ ー2008:63)。 牽 制 と テ ロ対 策 の た め の. の 高 ま りに 警 戒 感 を 「 テ ロ作 戦 支 援 拠 点」 と. そ うす る と 、 沖 縄 の 米 軍 基 地 は 、 中 国 へ の. 「中 間 準 備 地 域 」 と し て の 役 割 を も 担 うの で あ ろ うか 。 こ の 点 に つ い て 附 言 す れ. ば 、 欧 州 と 異 な り、 西 半 球 に は. 「 不 安 定 な(核. の)弧. 」 が あ り、 し か も パ キ ス タ ン 、 イ ラ ン 、 イ ン ド、 中. 国 お よ び 北 朝 鮮 が 核 兵 器 を 保 有 し 、 場 合 に よ っ て は 、 そ の 核 兵 器 が テ ロ リス トの 手 に 渡 る と 、 一 転 し て 、 ア メ リ カ を 標 的 に し た 核 テ ロ攻 撃 に 対 し ア メ リカ 本 土 は ア メ リ カ に と っ て9.11は. 「脆 弱 」 で あ る と い う安 全 保 障 上 の 懸 念 が あ る。. トラ ウ マ で あ り、 ア メ リカ 本 土 を 狙 う核 テ ロ 攻 撃 に 対 して は 、 あ ら ゆ る 予 防 策 を. 講 じ る 必 要 が あ る と構 え る。 し た が っ て 、オ バ マ の プ ラ ハ に お け る 「核 廃 絶 宣 言 」(2009年)と 年)も. そ れ に 続 く米 露 の 「 新 核 軍 縮 条 約 」(2010. 、 核 テ ロ 阻 止 の 文 脈 に お い て 理 解 す る 必 要 が あ る。 オ バ マ の. 捉 え れ ば 大 変 評 価 で き る も の で あ る。 し か し 、 こ の お よ びii)核. 拡 散 防 止 体 制 の 強 化 の3点. 「 核 廃 絶 宣 言 」 を 額 面 通 りに 良 心 的 に. 「 核 廃 絶 宣 言 」 は 、i)核. 軍 縮 、i)核. の安全管理、. セ ッ トに か ら な る ア メ リカ の 核 テ ロ 防 止 ア プ ロ ー チ の 一 環 で あ る. と認 識 す る必 要 が あ る。 核 テ ロ攻 撃 に 対 し て ア メ リカ 本 土 は 脆 弱 で あ り、 そ の 脆 弱 生 を カ バ ー す る に は 、 国 際協 力 が 不 可欠 で あ る。 そ こで 、 「 核 廃 絶 宣 言 」 に よ り国 際 世 論 を 味 方 に つ け な が ら 、 実 際 、 不 必 要 な 核.

(6) 兵 器 の 一部 を米 露 機 に進 ん だ. 「新 核 軍 縮 条 約 」 の 締 結 に よ っ て 廃 棄 し つ つ 、 核 軍 縮 を 進 め る。 ま た 、 旧 ソ連 崩 壊 を 契. 「 杜 撰 な 核(loosenukes)」. 、 す な わ ち 核 兵 器 ・核 物 質 お よ び 核 技 術 者 の 流 出 、 並 び に. 「 核 の闇. 市 場 」 と い う事 態 に 、 「核 の 安 全 サ ミ ッ ト」 を 主 催 し、核 の 安 全 管 理 に 関 す る 国 際 的 な 枠 組 み の 構 築 へ 向 か う。 さ ら に 、 併 せ て 、 核 拡 散 防 止 体 制 の 強 化 を は か り、 核 保 有 国 の 拡 大 を 防 ぐ わ け で あ る。 尚 、 防 衛 大 学 の 岩 田修 一 郎 は 、オ バ マ の 安 全 保 障 政 策 を 、 「 対 話 路 線 と軍 備 管 理 の ア プ ロ ー チ 」 の 重 視 と特 徴 付 け て い る (岩 田2010:178)。 こ の よ うに 勘 案 す る と 、 そ も そ も 普 天 間 基 地 に 駐 留 す る海 兵 隊 ヘ リ部 隊 に 何 が 期 待 さ れ て い る の で あ ろ うか 。 鳩 山 首 相 が 県 外 か ら現 行 案 へ 豹 変 し た 際 に 使 っ た 言 葉 が 「 抑 止 力(deterrent)」. で あ っ た 。 「抑 止 力 」. と は 、 米 ソ冷 戦 時 代 に お い て 、 自 軍 に 大 量 の 報 復 核 兵 器 が 保 有 され て い る こ と を誇 示 す る こ と に よ っ て 、 相 手 の 先 制 核 攻 撃 を 思 い と ど ま せ る効 果 と し て 理 解 され て い た 。 そ の 結 果 、 米 ソ は 核 軍 拡 競 争 に 走 り、 世 界は. 「 恐 怖 の 均 衡 」 の 上 に あ っ た 。 し か し 、 先 に 見 た よ うに 、 核 テ ロ攻 撃 の 驚 異 に 対 し て 、 核 兵 器 は. 「 抑. 止 力 」 に な ら な い ば か りか 、 そ の 安 全 管 理 と核 拡 散 の 防 止 に 細 心 の 注 意 を 払 わ な け れ ば な ら な い 、 大 変 厄 介 な兵 器 とな っ た。 冷 戦 時代 の. 「旧 い 政 治 」 の 用 語 で あ る 「 抑 止 力 」 に鳩 山は. 「学 ん だ 」 と す る が 、 そ れ. は 核 兵 器 に よ る抑 止 で は な く 、通 常 兵 器 に よ る 「抑 止 力 」 を 意 味 す る ら し い 。 「新 しい 政 治 」 を 唱 道 し 、 「 対 等 な 日米 関 係 」 の 構 築 を 目指 し た 鳩 山 は 、 軍 拡 を 導 く 「 抑 止 力 」 の 論 理 に 絡 み 取 ら れ 袋 小 路 に は ま り、 思 考 停 止 に 陥 っ た 。 普 天 間 基 地 の ヘ リ部 隊 を 辺 野 古 へ 移 設 し 、 沖 縄 に 駐 留 す る 米 国 海 兵 隊 が 一 体 と な っ て 行 動 す る こ と が 、 中 国 や 北 朝 鮮 に 対 す る 一 定 の 抑 止 力 に な る と い うの は 、 い さ さ か 無 理 が あ る。 同 様 に 、 ア メ リカ の 首 脳 が 、普 天 間 基 地 に 駐 留 す る海 兵 隊 ヘ リ部 隊 を 、本 気 で そ の よ うに 考 え て い る か も 不 明 で あ る。 尚 、普 天 間基 地 の海 兵 隊 は 、海 外 派兵 や 訓練 の た め 、 しば しば長 期 間不 在 とな る こ とが 多 い。 ア メ リカ 軍 に と っ て 、 「戦 力 投 射 の 根 拠 地 」 に あ た る基 地 を 含 め 、 米 軍 基 地 の 駐 留 経 費 の75%を. 負担 し. て くれ る 日米 同 盟 は 、 軍 事 コ ス ト面 で 大 変 あ りが た い 関 係 で あ る。 こ の よ うな 日米 同 盟 の 特 異 な 性 格 を踏 ま え る な ら ば 、普 天 間 基 地 移 設 問 題 の 本 質 は 、「 抑 止 力 」よ り も 軍 事 コ ス ト面 に よ っ て 理 解 で き る で あ ろ う。 キ ャ ン プ ・シ ュ ワ ブ 内 に あ る 辺 野 古 岬 は 、 対 岸 の 大 浦 湾 か ら 望 む と 、 米 軍 施 設 が 林 立 し て い る。 現 行 案 と り わ けV字. 滑 走 路 の 海 側 の 候 補 地 は 、 こ の 米 軍 施 設 と重 な る 。 そ うす る と 、 ア メ リカ は 、既 設 の 辺 野 古 基. 地 の 建 て 替 え を 日本 側 の 負 担 で 行 わ せ 、 恒 久 的 な 米 軍 基 地 の 新 設 を 求 め て い る の が 本 音 で あ ろ うか 。 軍 事 ア ナ リス トの 小 川 和 久 は 、 焦 点 と な っ て い る 、 普 天 間 基 地 に 所 属 す る海 兵 隊 第3海 兵 航 空 団 第36海. 兵 軍 の ヘ リ コ プ タ ー36機. 兵 遠 征 軍 第1海. を 、 キ ャ ン プ ・シ ュ ワ ブ と つ な が っ て い る キ ャ ン プ ・ハ ン セ ン. の 陸 上 部 に 新 た な 軍 民 共 用 の 空 港 を 建 設 し た 上 で 、そ こへ 移 す と い う よ り現 実 的 な 解 決 策 を提 示 し て い る。 ま た 、 小 川 は 、 新 設 され た 軍 民 共 用 空 港 へ 普 天 間 基 地 に 隣 接 す る嘉 手 納 基 地 も併 せ て 移 設 し、 ア メ リカ の 軍 事 的 プ レ ゼ ン ス も維 持 す る と と も に 、 か つ ま た 沖 縄 の 振 興 の た め に 、 こ の 軍 民 共 用 空 港 を ア ジ ア に お け る 民 間 航 空 機 の 高 段 階 整 備 の 拠 点 に す る と し て い る(小. 川2010)。. 小 川 の 代 替 案 は 鳩 山 に も伝 え ら れ た 由. で あ る。 し か し 、 ア メ リカ は 現 行 案 に 対 す る 真 摯 な 説 明 も な く 、 そ の 現 行 案 の 実 施 に こ だ わ っ た 。 普 天 間 基 地 が あ る 宜 野 湾 市 の 伊 波 洋 一 市 長 は 、 ア メ リカ 議 会 に 提 出 さ れ た 、 普 天 間 基 地 の 海 兵 隊 が グ ア ムへ 移 転 す る報 告 書 の存 在 を指 摘 す る と と もに 、小 泉政 権 の とき 、特 に 安倍 晋 三 官房 長 官 が海 兵 隊 を沖縄 に と ど め て お き た い と い う意 向 を と て も 強 く も っ て い た と指 摘 し て い る(伊. 波2010)。. ま た 、 軍 事批 評 家. の 小 西 誠 は 、 テ ロや サ イ バ ー 攻 撃 、 宇 宙 戦 争 な ど戦 争 の 在 り方 や 軍 事 組 織 の 形 態 を 抜 本 的 に 見 直 す 米 軍 再 編 の 一 里 塚 と し て グ ア ム 基 地 の 再 編 強 化 を 謳 っ た 、ア メ リカ 太 平 洋 軍 の 「グ ア ム 統 合 軍 事 開 発 計 画 」(2006 年7.月)、 お よ び ア メ リカ 海 軍 長 官 か らア メ リカ 下 院 軍 事 委 員 会 議 長 へ 提 出 され た 「グ ア ム に お け る 米 軍 計 画 の 現 状 」(2008年9.月15日)は た と い う(小 西2010)。. 、普天 間 基 地 のヘ リコプ ター 部 隊 も グア ム へ移 転 す る点 が 示 唆 され て い. こ う し た こ と か ら 、 少 な く と も 、 ア メ リカ は 普 天 間 基 地 の 海 兵 隊 を グ ア ム に 移 転.

(7) す る こ と を 検 討 し て い た の で あ る。 そ れ 故 に 、 沖 縄 県 民 に し て も 、 鳩 山 首 相 が い う普 天 間 基 地 の 県 外 ・国 外 移 転 を 、 選 挙 目 当 て の ポ ピ ュ リス ト的 な 言 説 と し て は 理 解 し て い な か っ た 。 む し ろ 、 額 面 通 り こ れ を 受 け取 っ た た め 、 沖縄 県 か ら 自民 党選 出 の 衆議 院議 員 は全 員 落選 した 次第 で あ っ た。. そ れ に し て も 、 日本 の メ デ ィ ア は 、 普 天 間 基 地 問 題 に お い て 鳩 山 政 権 の 判 し た 。 と こ ろ が 、 ア メ リ カ 側 の 説 明 責 任(accountability)を て 、 日本 の メ デ ィ ア が. 「プ レ 」 や. 「 迷 走 」 を厳 し く批. 問 う こ と は ほ と ん ど な か っ た 。 これ に 加 え. 「 知 日派 」・「 親 米 派 」 を 自認 す る 「ジ ャ パ ン ・ハ ン ドラ ー ズ(Japanhandlers:日. 本. 操 り班)」 の 言 う こ と を 真 に 受 け る か の よ う な 報 道 を した た め 、ア メ リカ は ほ と ん ど 労 せ ず し て 日本 の メ デ ィ ア を 通 じイ ン テ リ ジ ェ ン ス(intelligence:謀. 略)に. 成 功 した と言 っ て も決 して 過 言 で は な い 。 イ ン テ リ. ジ ェ ン ス こ そ 、 直 接 的 に 軍 事 力 の 行 使 に よ らず ア メ リカ の 国 益 を 貫 徹 す る。 ハ ー バ ー ド大 学 の ジ ョセ ブ ・ナ イ は 、 軍 事 力 や 経 済 力 と い っ た ハ ー ド ・パ ワ ー と は 区 別 さ れ る 、 他 国 を 味方 に 引 き 寄せ る魅 力 と して の. 「ソ フ ト ・パ ワ ー(s面power)」. の 重 要 性 を称 揚 し、 そ の. ー 」の 源 泉 の 一 つ と して 、正 当 で 敬 意 を 払 わ れ る べ き 外 交 政 策 を 上 げ て い る(ナ イ2004)。. 「ソ フ ト ・パ ワ しか しな が ら、. 普 天 間 基 地 問 題 に 対 す る ア メ リカ の 対 応 か ら 、 引 き 寄 せ られ る よ うな 魅 力 や 、 正 当 で 敬 意 を 払 わ れ る べ き 外 交 政 策 を 見 出 す と こ と は で き な い 。 「ソ フ ト ・パ ワ ー 」 は 権 力 の 正 当 化 の 論 理 で あ る が 、 イ ン テ リ ジ ェ ン ス は 権 力 の 巧 み な 行 使 で あ る 。 ち な み に 、 そ の ジ ョ セ ブ ・ナ イ こ そ. 「ジ ャ パ ン ・ハ ン ドラ ー ズ 」 の 第 一 人. 者 と 目 され て い る 。 ま た 、 ジ ョセ ブ ・ナ イ を 、 「 冷 戦 終 結 後 の 新 た な 日米 安 全 保 障 政 策 の 枠 組 み 作 りの 実 質 的 責 任 者 」 で あ る と指 摘 す る 、 元 防 衛 大 学 教 授 の 孫 崎 亨 は 、 日本 人 に お け る 戦 略 的 思 考 の 弱 さ と と も に 、 「 特 に 、謀 略 、 陰 謀 論 的 な 動 き が 出 る と 、『そ れ は あ り得 な い で し ょ う』 と 思 考 停 止 す る 」 点 に 警 鐘 を 鳴 ら し、 か つ ま た. 「対 日工 作 は 米 国 に と り、 お そ ら く難 し い 作 業 で は な い 。 米 国 は 日本 の 政 治 家 、 ジ ャ ー ナ リ. ス ト、 官 僚 、 そ れ ぞ れ の 分 野 で 自分 た ち と価 値 観 を 共 有 す る者 を 支 援 す る。 彼 ら に 対 し 、 他 の 者 が 入 手 で き な い 米 国 の 情 報 を 与 え る。 米 国 と は 密 接 な 話 し合 い を 行 い 、 交 渉 の 成 立 を容 易 に す る。 す る と 、 そ の 人 間 の 価 値 観 は 飛 躍 的 に 高 く な る 」 と い う大 変 意 味 深 長 な 指 摘 を し て い る が(孫. 崎2009:ll2,69,140)、. 普. 天 間 基 地 問 題 に お い て 、 イ ン テ リジ ェ ン ス の 作 用 は 決 し て 無 視 す る こ と が で き な い 点 と い え る。 民 主 党 パ ッ シ ッ グ と い うべ き政 治 的 言 説 が 流 布 す る状 況 は 、 そ の 基 底 を 鑑 み れ ば 、 長 年 に わ た り 自 民 党 政 権 が と っ て き た 対 米 依 存 路 線 の 所 為 で あ る 。 対 米 依 存 路 線 は 、西 谷 修 が 指 摘 す る よ う に 、 「日本 の 政 治 を 規 定 し て き た 」。 そ し て 、 対 米 依 存 に 符 号 す る 「自 発 的 隷 従 」 は 、 自 民 党 の 政 治 家 の み な らず 官 僚 組 織 に 浸 透 し 「日本 の 統 治 シ ス テ ム 全 般 の 基 本 様 態 」 と な っ た 。 「これ が ア メ リカ の 意 向 だ 」 と 言 え ば 、 そ れ は 動 か し が た く 、為 政 者 が 国 民 に 押 し付 け る こ と を 可 能 と し、「捨 て が た い 重 宝 な 統 治 手 段 」で あ っ た(西 谷2010)。 対 米 依 存 と い う 「旧 い 政 治 」 か ら脱 却 し 、 鳩 山 が. 「対 等 な 日米 関 係 」 と い う 「 新 しい政 治 」 を 目指す な ら. ば 、日本 の 政 治 文 化 に 深 く 浸 透 した 対 米 依 存 を よ し と す る 「自発 的 隷 従 」を 払 拭 す る必 要 が あ っ た 。「対 等 」 と な るべ き は 、 実 は 、 日本 国 民 の 政 治 的 精 神 だ っ た の で あ る。 鳩 山 政 権 は 、容 易 な ら ざ る メ デ ィ ア に よ る イ ン テ リ ジ ェ ン ス 攻 勢 に 一 方 的 に 押 され た と い え る 。 「 新 しい 政 治 」 は 、 政 治 家 の 言 説 が 極 め て 重 視 され 、 メ デ ィ ア と りわ け テ レ ビ を 通 じ 、 そ の 言 説 の 一 部 が 切 り取 ら れ た か た ち で 放 映 さ れ る 。 そ の こ と の 重 要 性 は 小 泉 純 一 郎 が 明 ら か に し た 。 テ レ ビ 局 が 切 り取 る こ と を 見 込 ん で サ ウ ン ド ・バ イ ト(決 ま り文 句)を. 予 め 用 意 し 、 「新 しい 政 治 」 を 「 劇 場 政 治 」 と して 演 出 した の が. 小 泉 で あ っ た 。 鳩 山 に は 、 残 念 な が ら小 泉 の よ うな 政 治 的 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン能 力 と 良 い 意 味 で の 賢 さ」 が な か っ た 。 し か し 、 そ れ に し て も 、 マ キ ャ ベ リが 言 う よ うに 、 キ ツ ネ の よ うな 古 今 東 西 、 政 治 指 導 者 に 求 め られ る標 準 装 備 の. 「ず る. 「 ず る賢 さ」 は 、. 「 必 要 悪 」 で あ ろ うか 。 そ う と は 言 い 切 れ な い が 、 少 な く. と も、 「 新 し い 政 治 」 は 、 政 治 指 導 者 に 対 し、 ビ ジ ョ ン を 実 現 す る た め に 、 与 え られ た 政 治 権 力 を 「し た た.

(8) か に 賢 く」 使 い こ な す ほ ど の 高 度 な 政 治 技 法 、 中 で も政 治 的 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン が 求 め られ る こ と だ け は 確 か で あ る。 と りわ け 、 対 米 依 存 の 湾 市長 の言 説 、 沖縄 の地 方 紙. 「自発 的 隷 従 」 に 乗 る メ デ ィ ア 対 策 は 必 要 不 可 欠 で あ っ た 。 伊 波 宜 野. 『琉 球 新 報 』 や. 『沖 縄 タ イ ム ス 』 の 論 説 を 紹 介 す る だ け で も 、 「自 発 的 隷 従 」. を 前 提 とす る 本 土 の メ デ ィ ア を 禦 肘 し た で あ ろ う。 そ れ は 、 「 新 しい政 治 」 を 「 政 治 主 導 」に よ る実 現 を試 み た 鳩 山 首 相 に 求 め られ た と こ ろ の 、 一 つ の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ で あ っ た 。 し か し 、 残 念 な が ら 、 鳩 山 由 紀 夫 は 、 時 代 の 変 革 期 に 際 し て は 、 余 りに も 実 直 す ぎ た 政 治 家 で あ っ た 。. 3.ポ ス ト新 自 由 主 義 と「第3の. 道 」お よ び 社 会 民 主 主 義. 鳩 山 政 権 は 、目指 す べ き 社 会 の 在 り方(ビ. ジ ョ ン)を 明 確 に 打 ち 出 して い な い と 指 摘 さ れ て 続 け て き た 。. そ れ で も 、 「コ ン ク リー トか ら 人 へ 」、 「 命 を 大 切 に す る 政 治 」 そ して 「友 愛 政 治 」 と い う、 小 泉 純 一 郎 政 権 の 時 代 に 歩 ん だ 新 自 由 主 義 の 道 か ら別 れ を 告 げ る メ ッ セ ー ジ性 の あ る表 現 は 、 鳩 山 政 権 が 向 か うべ き 一 応 の 方 向 性 を 示 し て い た 。 し か し 、 だ か ら と言 っ て 、 鳩 山 政 権 が 目指 す べ き 社 会 の 在 り方 を 、 ポ ス ト新 自 由 主義 と して の社 会 民 主 主義 に 見 い だ して い た の か とい うと、 この 点 に つ い て は 、結 局 の と ころ 、 不 明確 の うち に 政 権 そ れ 自体 が 潰 え て し ま っ た 。 と こ ろ が 、 政 治 を 人 へ 政 権 に代 わ る と、 「 第3の. 道 」 も し くは. 「不 幸 を 最 小 化 す る仕 事 」 と して 認 識 す る 菅 直. 「強 い 経 済 ・強 い 財 政 ・強 い 社 会 保 障 」 と い う表 現 に よ っ て 、. 目指 す べ き 社 会 の 在 り方 が 示 され た 。 そ れ は 、 言 うま で も な く社 会 民 主 主 義 の 発 想 で あ る。 しか も 、 そ れ は 、 北 欧 の 高 負 担 高 福 祉 の 社 会 民 主 主 義 レ ジ ー ム に ま で 射 程 に 収 め て い る言 説 で あ る こ と に 気 付 い て お か な け れ ば な ら な い 。 振 り返 れ ば 、 そ う し た 議 論 は 、 既 に 、 鳩 山 政 権 の. 「 雇 用 戦 略 対話 」 に お い て提 起 され. て い た 。 少 な く と も 、鳩 山 一 菅 と続 い た 民 主 党 政 権 は 、 「新 しい 政 治 」 に 相 応 し い 目指 す べ き 社 会 の 在 り方 と し て 、ポ ス ト新 自 由 主 義 と し て の 社 会 民 主 主 義 レ ジ ー ム を 、そ の 視 野 に 入 れ て い る と 考 え る べ き で あ る。. 大局 的 に 見れ ば 、 日本 政 治 は く新 しい政 治 〉の第2局 面す な わ ち ポ ス ト新 自 由主義/ポ ス ト小 泉構 造 改 革 の 時代 に あ る。 小 泉構 造 改革 は 、 男性 稼 ぎ 主 の安 定 的 な 正 規雇 用 と所 得 に よ り、本 人 とそ の 家族 の 一 生 を保 障す る こ とを基 本 に据 え た 「日本 型 福 祉 国家 」に 、容赦 の な い 労働 規 制 の緩 和 を進 め た。 それ は 、 「日 本 型 福 祉 国 家 」 の 生 命線 に痛 烈 な 打 撃 を 与 え る こ とを意 味 した。 低 負 担 低 福 祉 で あ るが故 に 、 セ ー フ テ ィネ ッ トが 弱 く、 ま た社 会 保 障 の水 準 が 低 い 「日本 型 福 祉 国 家 」 は 、 そ の低 い水 準 の社 会 保 障 を補 完 す るた め に 、 専 業 主婦 が 家 事や 育児 ・介 護 とい う家族 福 祉 を担 い 、 ま た企 業 年 金 に よる 上乗 せ や 社 宅 や 持 ち家 支 援 な どの企 業福 祉 が加 わ っ て成 り立 って い た。 そ の 家族 福 祉 や 企 業 福 祉 に よ る補 完 も、男 性 稼 ぎ 主 の安 定 的 な 正規 雇 用 と所 得 が保 障 され て こそ機 能 しえ た。 安 定 的 な 正 規雇 用 に よっ て得 られ た所 得 は 、本 人 とそ の家 族 の 生活 費 で あ る と と もに 、疾 病 や(一 時 的)失 業 、加 齢 や 障 が い 、 あ るい は 災 害 な ど、 人 の 一 生 に お け る様 々 な リス クに備 え るた め に 、 ま た子 ど もの教 育 費 の た め に 、貯 蓄や 生命 保 険 に 回 され た。 あ くま で も、 「日本 型 福 祉 国 家 」は 、稼 働 に よっ て本 人 と家族 の 生活 を 維 持 す る こ とを 要請 した。 そ の意 味 で は 、 生活 保 障 は 、政 府 の社 会 保 障 制度 に 基 づ い て 達成 され る もの で は な く、 自己 責任 で成 り立 っ て い た の で あ る。 さ らに 、 「日本 型 福 祉 国家 」は 、肥 大化 す る公 共 事 業 を ビル トイ ン し、 た とえ無 駄 を承 知 の 上 で も、 ま た 自然 環 境 の破 壊 を承 知 の 上 で も、公 共 事 業 は 、農 村 地域 や 中 山 間地 域 に お け る雇 用 の創 出 と農 家 所 得 の補 完 とい う役 割 を 担 っ た。 ま た 、 「日本 型 福 祉 国家 」 は 、 「 擬 似 社 会 民 主 主義(飴lsesocialdemocracy)」. と表 現 され る よ うに 、 欧 州. に お け る正 真 正 銘 の社 会 民 主 主義 とは異 な る もの の 、 社 会 民 主 主義 的 な 平 等指 向 と経 済 的 弱者 へ の配 慮 と い う側 面 を併 せ 持 っ て い た。 完全 雇 用 政 策 に よ り、 男性 稼 ぎ 主 の正 規 雇 用 と所 得 が保 障 され る半 面 、 そ の 代 わ りに雇 用 され た企 業 に お い て長 時 間 労働 や 単身 赴 任 も辞 さず 「 一社 懸 命 」 に働 く忠誠 が 求 め られ た。.

(9) そ の よ うな. 「忠 勤 サ ラ リー マ ン 」 の 夫 を も つ 妻 は 、 専 業 主 婦 と し て 、 ま た. 「良 妻 賢 母 」 と し て 夫 を 支 え る. と い う、 ジ ェ ン ダ ー ・バ イ ア ス の か か っ た 性 別 役 割 分 業 が 浸 透 し た 中 で 生 き て き た 。 「忠 勤 サ ラ リー マ ン 」 と 専 業 主 婦 の 「良 妻 賢 母 」、 こ れ こ そ が 男 と女 の 人 生 航 路 す な わ ち 生 き 方 の 典 型 的 な ス タ イ ル で あ っ た 。 こ う し た ス タ イ ル が 普 及 し 、 「1億 総 中 流 」 と い うい わ ば 共 同 幻 想 の 平 等 感 を も 派 生 させ た 。 し か し な が ら 、 「出 る杭 は 打 た れ る 」 か の こ ど く 、 典 型 的 な ス タ イ ル と い う標 準 か ら は み 出 る 、 異 彩 を 放 つ 特 異 な 才 能 や 能 力 、お よ び 途 方 も な い よ うな 想 像 力 、あ る い は ま た 型 破 れ の 破 天 荒 な 個 性 を嫌 っ た 。「 擬似 社会民主主義」 は 、 人 間 の 生 き 方 を 典 型 的 な ス タ イ ル に 囲 い 込 む 機 制 が 働 き 、 一 種 の 息 苦 し さ を伴 っ た 。 自 ら の 才 能 や 能 力 を 発 揮 し た い 者 に と っ て 、努 力 し た 者 が 報 わ れ 、悪 平 等 を 却 け る 新 自 由 主 義 は 、正 に 渡 り に 船 で あ っ た 。 し か し な が ら 、 そ の 新 自 由 主 義 と い う政 治 的 ア イ デ ィ ア に 基 づ く小 泉 構 造 改 革 は 、 格 差 を 広 げ 、 ワ ー キ ン グ ・プ ア な ど の 貧 困 を 増 や し 、 っ い に そ の 正 当 性 を 失 墜 させ る に 至 っ た 。. 男 性 稼 ぎ 主 の 正 規 雇 用 と所 得 を 基 点 に 据 え な が ら成 立 して い た. 「日本 型 福 祉 国 家 」 を 、 以 前 と 同 様 の か. た ち で 、 再 生 す る こ と は 、 最 早 、 不 可 能 で あ る。 そ れ で は 、 ど うす べ き な の か 。 そ こ で 、 鳩 山 政 権 の. 「 雇. 用 戦 略 対 話 」 の 議 論 に 着 目 し て み た い 。 鳩 山 政 権 に 対 し 、 社 会 保 障 政 策 と積 極 的 雇 用 政 策 と を 連 携 さ せ て い く ア ク テ ィベ ー シ ョ ン(activation:活. 性 化)型. に よ る生 活 保 障 を提 唱 した の は 、北 海 道 大 学 の 宮本 太郎. で あ っ た 。 宮 本 は 、 現 金 給 付 に よ るべ 一 シ ッ ク ・イ ン カ ム 型 の 発 想 よ り も 、 雇 用 を 軸 と した 社 会 参 加 を 基 本 に 据 え た ア ク テ ィベ ー シ ョ ン型 の 発 想 を 基 本 とす る(宮 会 議 」 の メ ンバ ー で もあ っ た 、 そ の 宮本 が鳩 山政 権 の. 本2009b)。. 尚 、 麻 生 太 郎 政 権 の 「安 心 社 会 実 現. 「 雇 用 戦 略対 話 」 に お い て もメ ンバ ー の 一員 に加 わ. っ た。 「 雇 用 戦 略 対 話 」 の 第1回. 会 合 で は 次 の 合 意 が 得 られ た 。. 当 面 の 対 策 と と も に 、 成 長 戦 略 と し て 、 成 長 分 野 を 中 心 とす る雇 用 創 造 や 、 職 業 訓 練 ・生 活 保 障 に よ る トラ ン ポ リン 型 の 「第 ニ セ ー フ テ ィ ネ ッ ト」の 確 立 、ワ ー ク ・ラ イ フ ・バ ラ ン ス(仕 事 と 生 活 の 調 和)、 女 性 ・高 齢 者 ・障 が い 者(チ. ャ レ ン ジ ド)等 の 労 働 参 加 促 進 や 多 様 な 働 き 方 の 確 保 な ど を 内 容 と す る 「 雇. 用 戦 略 」 の 本 格 的 な 推 進 に 取 り組 む 。 そ の 際 、 雇 用 に お け る適 切 な 労 働 条 件 の 確 保 に 留 意 す る。. この合 意 の 中 に あ る 「 職 業 訓 練 ・生 活 保 障 に よ る トラ ン ポ リ ン型 の 『「第 ニ セ ー フ テ ィ ネ ッ ト』」 と い う 表 記 こ そ 、 宮 本 が 主 張 し て い る社 会 保 障 政 策 と積 極 的 雇 用 政 策 と を 連 携 させ て い く ア ク テ ィ ベ ー シ ョ ン型 に よ る 生 活 保 障 に 該 当 す る。 こ う した 発 想 は 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 お よ び 新 自 由 主 義 改 革 に よ っ て 生 じた 「 社 会 的 排 除(socialexclusion)」. も し くは 「 新 し い 貧 困(newpoor)」. 、あ る い は ま た雇 用 と所 得 の 構 造 的 ・. 恒 常 的 な不 安 定化 に 対応 す る た め 、 「 福 祉 レ ジ ー ム 」 と 「生 産 レ ジ ー ム 」 と を 連 動 させ な が ら 、社 会 全 体 の レ ジ ー ム を 再 構 築 し よ う とす る社 会 民 主 主 義 に お け る新 し い 国 家 戦 略 で あ る。 こ の 点 に つ い て は 、 敷 延 し な が ら省 察 して み よ う。 2007年 の 「 第1原. にEUの. 欧 州 委 員 会 が 発 表 し た 『フ レ キ シ キ ュ リテ ィ(刊exicurity)の. 則 ・雇 用 と成 長 の た め の 戦 略 」 で は 、①.柔. ヤ ビ リ テ ィ(employability:雇. 用 され うる 力)を. 原 則 』 とい う の が あ る 。 そ. 軟 で 信 頼 で き る 雇 用 契 約 、 ②.労 働 者 の エ ン プ ロ イ. 高 め る 包 括 的 生 涯 学 習 戦 略 、 ③.失. 業 か ら新 しい 職 へ 移 行. す る 積 極 的 雇 用 政 策 、 ④.所 得 支 援 ・就 労 促 進 ・労 働 市 場 の 流 動 性 を 連 携 させ る 現 代 的 社 会 保 障 制 度 を 示 し た 。 尚 、 フ レ キ シ キ ュ リテ ィ(刊exicurity)は. 、nexibility(柔. 軟 性)とsecurity(保. 障)と. の合 成 語 で あ. り 、 解 雇 を 含 め た 雇 用 の 柔 軟 性 と社 会 保 障 と い う、 一 見 す る と合 い 矛 盾 す る か の よ うな 両 者 を 結 合 させ る こ と に よ っ て 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 の 本 質 と い うべ き 厳 し い 国 際 経 済 競 争 に 対 応 し よ う とす る。.

(10) これ は 、 明 ら か に 、 ス ウ ェ ー デ ン に 起 源 を も ち デ ン マ ー ク で 進 め られ て き た グ ル(goldentriangle:黄. 「ゴ ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン. 金 の 三 角 形)」 か ら の 影 響 が 大 き い 。 「ゴ ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グ ル 」 に 即 し な が. ら 、 そ の 根 底 に あ る 発 想 を 敷 衛 し て み る と 奥 深 い も の が あ る。 国 際 競 争 力 が 著 し く低 下 し、 した が っ て ま た 比 較 劣 位 が 明 ら か な 斜 陽 産 業 に 支 援 を 続 け る よ り も 、 政 府 は 思 い 切 っ て こ れ を ス ク ラ ッ プ 化 す る。 し か し 、 そ の よ うな 切 り捨 て は 、 大 量 の 失 業 者 を 伴 う。 と こ ろ が 、 そ の 失 業 に よ っ て 労 働 者 と そ の 家 族 を 路 頭 に 迷 わ せ る こ と な く 、3・4年. 間 と い う比 較 的 長 い 期 間 に わ た る 手 厚 い 失 業 給 付 を 支 給 す る 。 但 し 、 次 の 仕. 事 に就 くた め に 、 大 学や 職 業 訓練 校 な どで 、一 定 の 教 育 お よび職 業 訓練 を 受 講す る こ とが支 給 の 条件 とな る 。 そ し て 、 再 教 育 の 結 果 、 エ ン プ ロ イ ヤ ビ リテ ィ を 高 め 、 か つ ま た 新 し い 仕 事 に 必 要 な 資 格 を 取 得 し た 上 で 、 キ ャ リア ラ ダ ー(careerladders:キ. ャ リア へ つ な が る 梯 子)を. 通 じて 再 就 職 を 果 た し て い く。 再 就. 職 先 は 、 例 え ば 、 国 際 競 争 力 が 高 く成 長 が 期 待 され る グ リー ン ・ニ ュ ー デ ィ ー ル を 担 う環 境 産 業 関 連 の 会 社 、 あ る い は 医 療 や 介 護 関 係 、 さ ら に は 地 域 に お け る公 共 的 な 課 題 を 解 決 す る社 会 的 企 業 が 想 定 さ れ る。 こ の よ うに 「ゴ ー ル デ ン ・ト ラ イ ア ン グル 」は 、人 々 の 生 活 保 障 を 実 現 し よ う と す る社 会 全 体 の 仕 組 み(レ ジ ー ム)な. の で あ る。. 柔軟な労働 市場 一科 学 技 術 ガ バナ ンスー 労 働 権. \. ノ. キ ャリア ラダ ー. リトライ. エ ン プ ロイヤ ビ リテ ィ \. 生活 保 障 ノ.  . 手厚い失業給付. 積極 的雇用政策. 一社会保 障一. 一教育プログラムー. 生存 権. \. ィベー ション. 図 表2.ゴ. ノ. (生 涯)教 育 権 /\アクテ. ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グ ル. 思 うに 、 「ゴール デ ン ・ トライ ア ングル 」 を 、 図 表2の. よ うに 、人 権 面 で捉 え返 して み る と、20世 紀 的. 人 権 と して 日本 国憲 法 に も保 障 され て い る労働 権 と生存 権 お よび教 育権 とい う3つ の社 会権 が お 互 い に深 い 関係 を もち 、 それ こそ 「 生活 保 障権 」 と して 一体 化 して い る こ とに 改 め て気 付 く。 労働 権 を 労働 へ の確 実 な参 加 と して保 障す る た め に は 、教 育権 と りわ け 生涯 教 育権 と して の職 業 教 育権 の 充 実 が 求 め られ る。 そ の職 業教 育権 が 生涯 に わ た り保 障 され るた め に は 、人 生 の どの段 階 で も教 育 を受 け られ る基 本 的 な 条件.

(11) と し て 、 た と え 一 端 労 働 か ら離 れ 所 得 を 失 っ た と し て も 、 生 存 権 に よ り基 本 的 な 生 活 が 保 障 され る。 そ し て 、一 定 の 水 準 の 生 存 権 を 維 持 す る に は 、や は り多 くの 人 々 が 労 働 へ 参 加 し(勤 労 の 義 務)、 一 定 の 税 負 担 が あ っ て こ そ 実 質 的 に 確 保 され る の で あ っ て 、 そ れ 故 に 、 労 働 へ の 確 実 な 参 加 を促 進 す る た め に 、 労 働 権 の 保 障 が 求 め られ る 次 第 で あ る。 さ ら に 、 「ゴー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グ ル 」 の 発 想 は 、 「 持 続 可 能 な 社 会(sustainablesociety)」 な る と ころ が あ る。 「 持 続 可 能 な 社 会 」 と は 、本 来 、図 表3.の 適 切 な 経 済 成 長(経 性)を. 済 の 持 続 可 能 性)と. 環 境 保 全(環. の発 想 と重. よ うに 、平 和 的 生 存 を べ 一 ス に 据 え た 上 で 、. 境 の 持 続 可 能 性)お. よ び 社 会 保 障(人. 間 の持 続 可 能. 連 動 さ せ な が ら、か つ ま た 持 続 可 能 性 を 指 向 す る政 治 に よ っ て リー ドさ れ る 、社 会 全 体 の 仕 組 み(レ. ジ ー ム)を. 意 味 す る。 「ゴ ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グ ル 」 に して も 、 「 持 続 可 能 な 社 会 」 に して も 、 両 者 は と. も に 、 社 会 の 各 構 成 要 素 を お 互 い に 連 動 させ る と い う点 、 お よ び そ の 連 動 を 通 じ て 社 会 全 体 を 一 定 の 方 向 性 へ 導 く仕 組 み 、 す な わ ち ク リエ イ テ ィ ブ な レ ジ ー ム を 構 え る と い う点 は 、 極 め て 類 似 して い る。 そ の 一 定 の 方 向 性 と は 、 「ゴ ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グル 」 の 場 合 が 人 び と の 生 活 保 障 、 「 持 続 可 能 な社 会 」 の 場合 が 当 該 社 会 の 持 続 可 能 性 で あ る が 、そ の 生 活 保 障 と 社 会 の 持 続 可 能 性 は 対 立 す る 関 係 に あ る も の で は な く 、 む し ろ 同 じ方 角 へ 向 か う も の で あ る と い え る 。. 持続可能性を指 向する政治 「. ダ. 経済成 長. \. 社会保障. \. (人間 の 持 続 可 能 性) 、 ノ. (経済の持続可能性) Lノ 持 続 可能 な社 会 (社会の持続可能性). 環境保全 (環境の持続可能性) \ ノ. 平和 的生存. 図表3.持. 続 可能 な社 会. 附言 す れ ば 、 「 持 続 可 能 な 社 会 」 は、必 ず し も、環境 に 配 慮 した 「 資 源 循 環 型 社 会 」 も し くは 「 低 炭素社 会 」 を意 味す るわ け で は な い。 「 持 続 可能 な 社 会 」 を 、 「 資源 循 環 型 社会 」や 「 低 炭 素社 会 」 に 読 み換 え る 言説 は、 差 し当 た り社 会 保 障 を抜 き に 、 環 境 保 全 と経 済成 長 の連 動 に 着 眼 した範 晴 の議 論 で あ る とい え る。 な る ほ ど確 か に 、 「 資源 循環 型 社 会 」や 「 低 炭 素 社 会 」 は 、地 球 環 境 の持 続 可能 性 、お よび 生物 と して の ヒ.

(12) トの 持 続 可 能 性 に 貢 献 す る。 し か し な が ら 、 い ま こ こ で 暮 ら す 人 々 と将 来 の 世 代 の 生 活 を 保 障 す る こ と 、 換 言 す れ ば 、 生 活 保 障 を 将 来 に 渡 り持 続 し え る社 会 を 、 そ の 視 野 に 入 れ て い る わ け で は な い 。 そ の 点 、 グ リ ー ン ・ニ ュ ー デ ィ ー ル と い うア イ デ ィ ア は 、 当 初 よ り雇 用 創 出 を 謳 っ て い る が 故 に 、 社 会 保 障(人 持 続 可 能 性)に. 間の. リ ン ケ ー ジ し、先 に 示 し た 本 来 的 な 「持 続 可 能 な 社 会 」の 発 想 を 共 有 して い る と い え よ う。. 尚 、 「ゴ ー ル デ ン ・ トラ イ ア ン グ ル 」 に お い て 、 そ の 成 果 が 問 わ れ る 際 に お い て ポ イ ン トと な る の は 、 意 外 と も 思 わ れ る が 、 国 際 競 争 力 の 高 い 成 長 産 業 を 見 定 め つ つ 、 これ を 助 長 し つ つ 関 連 す る雇 用 を創 出 す る 「 科 学 技 術 カバ ナ ンス 」 と、 そ の人 材 を 育成 しえ る 「 教 育 プ ロ グ ラ ム 」 の 提 供 で あ る こ と を 付 け加 え て お き た い 。 尚 、 こ の 論 点 に つ い て は 、既 に 拙 稿 の 「ポ ス ト新 自 由 主 義 レ ジ ー ムー レ ジ ー ム の 『柔 軟 性 』 と 『余 裕 度 』 一 」 に お い て 触 れ た の で 、 こ こ で は 再 論 を 避 け る こ と とす る(新 但 し 、国 際 競 争 力 の 高 い 成 長 産 業 に 関 連 し 、『産 業 構 造 ビ ジ ョ ン2010』 直 嶋正 行 経 済産 業 大 臣 の諮 問機 関 と して. 田2009)。 を 取 り上 げ た い 。鳩 山 政 権 時 代 、. 「 産 業 構 造 審 議 会 」 が 設 け られ た 。 鳩 山政 権 が 退 陣 した 直 後 に 、. 当 該 審 議 会 の 産 業 競 争 力 部 会 か ら 『産 業 構… 造 ビ ジ ョ ン2010』(以. 下 『ビ ジ ョ ン2010』. と 略 記)と. い う報 告. 書 が 発 表 され た 。 「 今 後 日本 は 、何 で 稼 ぎ 、何 で 雇 用 し て い く の か 」 と い う問 題 意 識 の 下 に 、経 済 の グ ロ ー バ ル 化 に 対 応 す る た め 、法 人 税 の 実 行 税 率 を 、現 行40%か. ら段 階 的 に25%ま. で 引 き 下 げ る よ うに 求 め つ つ 、. 大 胆 な 産 業 構 造 の 転 換 を 提 言 し て い る。 これ ま で の 日本 の 基 幹 産 業 で あ っ た 自動 車 や 電 機 産 業 な ど の 特 定 業種 に頼 っ た 「 一 本 足 打 法 」 の 産 業 構 造 か ら の 脱 却 を 主 張 し て い る。 今 後 は 、i)「. イ ン フ ラ 関 連/シ. ステ. ム 輸 出 」 と し て 、 水 、 石 炭 火 力 発 電 ・石 炭 ガ ス 化 プ ラ ン ト、 送 配 電 、 原 子 力 発 電 、 鉄 道 、 リサ イ クル 、 宇 宙 、 お よ び 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 、 情 報 通 信 、 都 市 開 発 ・工 業 団 地 、i)「. 環 境 ・エ ネ ル ギ ー 課 題 解 決 産 業 」. と し て 、 ス マ ー トグ リ ッ ト、 ス マ ー トコ ミ ュ ニ テ ィ 、 電 気 自 動 車 な ど の 次 世 代 自 動 車 、 世 界 最 先 端 の 電 池 開 発 、ii)「 文 化 産 業 」 と し て 、 フ ァ ッ シ ョ ン 、 コ ン テ ン ツ 、 食 、 観 光 、 拉)医 医 療 ツ ー リ ズ ム 、v)ロ. 療 、介 護 、健 康 、 子 育 て 、. ボ ッ ト、 航 空 機 、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 、 バ イ オ 医 薬 品 な ど の 先 端 分 野 、 と い う5つ. の 戦 略 分 野 か ら な る 「八 ヶ 岳 構 造 」 を 目指 す と し て い る。 『ビ ジ ョ ン2010』. を基 に しつ つ 、 菅政 権 は政 府 と して の. 「 新 成 長 戦 略 」 を 打 ち 出 す 運 び で あ る。 但 し、. 供 給 サ イ ド よ り も需 要 サ イ ドに 、 ま た 雇 用 創 出 に シ フ トと し た 財 政 支 出 を 行 う こ と を 基 本 と す る 菅 政 権 に と っ て 、仮 に5つ. の 戦 略 分 野 を 支 援 ・助 長 して も 、 そ れ が 多 く の 雇 用 吸 収 力 を 有 して い な け れ ば 、 「 雇 用な. き 成 長 戦 略 」 で し か な い 。 そ う し た 憂 慮 に 対 し 、 『ビ ジ ョ ン2010』 257万9千. は 、5つ. の 戦 略 分 野 か ら2020年. 人 の 雇 用 が 創 出 さ れ る と して い る 。 尚 、総 務 省 統 計 局 に よ る と 、完 全 失 業 者 数 は18ヶ. て 増 え て2010年4.月. 時 点 で356万. る 就 業 年 齢 人 口 を 前 提 に 、5つ. 人 、 完 全 失 業 率 は5.1%で. あ る が 、 『ビ ジ ョ ン2010』. まで に 月連 続 し. に よ る と、減 少 す. の 分 野 に お け る 「雇 用 の 受 け 皿 は 十 分 と言 え る 」 と し て い る 。. そ れ に し て も 、 雇 用 創 出 に は 意 図 的 な 工 夫 が 必 要 で あ る。 先 の5つ. の 戦 略 分 野 が ト リ クル ダ ウ ン 的 に 自. ず と雇 用 を 創 出 す る 見 込 み と い う レベ ル で は 、 雇 用 創 出 面 で の 戦 略 が 無 き に 等 し い 。 こ の 点 、 既 存 の 自 動 車 整 備 士 が 大 変 参 考 に な る。 車 検 制 度 と い う規 制 と 、 そ の 車 検 を 行 う 自 動 車 整 備 士 と い う国 家 資 格 は 、 地 方 に お い て も雇 用 が 創 出 され る こ と を 見 込 ん で 制 度 設 計 され た 。 こ の 論 理 を 応 用 して み よ う。例 え ば 、 「再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー ・マ イ ス タ ー 」 を 養 成 し 、 そ の. 「マ イ ス タ ー 」 に よ る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 設 備 の 定 期 点. 検 と保 守 お よ び 補 修 を 法 的 に 義 務 化 す る。 こ う し て 、 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の エ ネ ル ギ ー 効 率 が 維 持 ・改 善 され る と と も に 、 意 図 的 に 、 全 国 に お い て. 「 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー ・マ イ ス タ ー 」 と い う技 能 職 の 雇 用 が 見. 込 ま れ る 次 第 で あ る。 国 際 競 争 力 の 高 い 成 長 産 業 に 対 す る支 援 ・助 長 は 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 に 対 す る 対 応 で あ る。 サ ッ カ ー に 喩 え れ ば 、 い わ ば オ フ ェ ン ス 面 に お け る エ ー ス ・ス トラ イ カ ー の 育 成 ・強 化 で あ る が 、 そ れ だ け で は 得 点 を 上 げ る こ と が で き ず 、 失 点 を 増 や す こ と に っ な が りか ね な い 。 む し ろ チ ー ム 全 体 と して は 、 オ フ ェ ン.

(13) ス の 強化 と併 せ てデ ィフ ェ ン ス の 強化 、す な わ ち地 域 に お け る雇 用 創 出 と社 会 的包 摂 を兼 ね る社 会 的 企 業 の 育成 も重 要 で あ る。 そ れ は 、鳩 山政 権 にお け る 「 『新 しい公 共 』 円卓 会 議 」 で の議 論 、お よび 菅 首相 の所 信 表 明演 説 に お い て も触 れ られ て い るの で 、次 節 で 取 り上 げ よ う。. 4.「 新 しい 公 共 」と市 民 社 会 の 強 化 お よび 「公 共 性 」(「 公 共 空 間 」)の課 題 設 定 鳩 山 首 相 は 、2009年10.月26日. の 所 信 表 明 演 説 に お い て 、 「私 が 目指 した い の は 、 人 と 人 が 支 え 合 い 、. 役 に 立 ち 合 う 『新 し い 公 共 』 の 概 念 で す 」 と 打 ち 出 し た 。 首 相 の 所 信 表 明 演 説 に お い て 問 用語 を持 ち 出 した鳩 山 は 、 そ の. 「 新 しい公 共 」 が. 「 概 念 」 と い う学. 「 人 を 支 え る役 割 を 、 官 だ け で な く 、 街 づ く りな ど に. 地 域 で か か わ る 人 に 参 加 し て も ら い 、社 会 で 応 援 す る 新 しい 価 値 観 」 を 意 味 す る も の だ と説 明 し た 。 「 新 し い 公 共 」 の 増 進 を 目指 す 鳩 山 は 、2010年1.月25日. 、 「内 閣 総 理 大 臣 決 定 」 に よ り 「『新 しい 公 共 』 円 卓 会. 議 」 の 開 催 を 決 定 し 、 首 相 と し て の リー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 し た 。 そ の 円 卓 会 議 は 、 「『新 しい 公 共 』 と い う 考 え 方 や そ の 展 望 を 市 民 、 企 業 、 行 政 な ど に 広 く浸 透 させ る と と も に 、 これ か ら の 日本 社 会 の 目 指 す べ き 方 向 や そ れ を 実 現 させ る 制 度 ・政 策 の 在 り方 な ど に つ い て 議 論 を 行 う こ と を 目 的 」 とす る と した 。続 い て 、 鳩 山 は 、2010年1.月29日. の施 政 方 針 演 説 にお い て、 「 官 が 独 占 し て き た 領 域 を 公 に 開 き 、新 しい 公 共 の 担. い 手 に 拡 大 す る 」 と宣 言 し た 。 ま た 、 菅 新 首 相 は 、2010年6月ll日 え 、 障 が い 者 や 高 齢 者 な ど の 福 祉 、 人 権 擁護 、 さ ら に 年 間3万. 、所 信 表 明 演 説 にお い て 、 「 雇 用 に加 人 を超 え る 自殺 対 策 の 分 野 で 、 様 々 な 関 係. 機 関 や 社 会 資 源 を 結 び つ け 、 支 え 合 い の ネ ッ トワ ー ク か ら誰 一 人 と し て 排 除 され る こ と の な い 社 会 、 す な わ ち 『一 人 ひ と りを 包 摂 す る 社 会 』 の 実 現 を め ざ し ま す 。 鳩 山 前 総 理 が 、 最 も 力 を 入 れ られ た 『新 し い 公 共 』 の 取 り組 み も 、 こ う し た 活 動 の 可 能 性 を 支 援 す る も の で す 」 と語 っ た 。. 「 『新 し い 公 共 』 円 卓 会 議 」 は 、2010年5. .月14日. 、 「『新 し い 公 共 』 宣 言(案)」(以. 下. 「宣 言 」 と 略 記). を 発 表 し た 。 冒 頭 、 「宣 言 」 は 、 「 人 々 の 支 え 合 い と活 気 の あ る社 会 。 そ れ を つ く る こ と に 向 け た さ ま ざ ま な 当 事 者 の 自 発 的 な 協 働 の 場 が 『新 し い 公 共 』 で あ る 」 と謳 い 、 ま た 当 該 文 中 に 、 「『新 しい 公 共 』 と は 、 『支 え 合 い と活 気 の あ る 社 会 』 を 作 る た め の 当 事 者 た ち の 『協 働 の 場 』 で あ る 」 と 明 示 し た 。 そ し て 、 「新 し い 公 共 」 の 具 体 例 と し て 、 阪 神 淡 路 大 震 災 に お け る救 援 ボ ラ ン テ ィ ア の 活 動 、 京 都 の 町 衆 に よ る 「 番組 小 学 校 」、 徳 島 県 上 勝 町 に お け る 高 齢 者 に よ る コ ミ ュ ニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス る雑 誌. 「い う ど り」、 ホ ー ム レ ス が 販 売 す. 「ビ ッ グ イ シ ュ ー 」 を 例 示 して い る 。 ま た 同 様 に 、 「宣 言 」 の 別 添 に は 「 新 しい公 共 」 の 具 体 的 イ メ. ー ジ と して 、長 野 県 小布 施 町 に お け る 「 株 式 会 社 ア ・ラ ・小 布 施 」 に よ る 小 布 施 の 町 づ く りや 茨 城 県 霞 ヶ 浦 に お け る 「ア サ ザ プ ロ ジ ェ ク ト」 な ど18例 整 理 し て い る 。6っ. の 上 位 概 念 と は 、i)「. を 上 げ て い る が 、 そ の 際 、18例. を6つ. の 上位 概 念 に よ って. 非 営 利 セ ク タ ー の 活 性 化 と ソー シ ャ ル キ ャ ピ タ ル の 育 成 」、i). 「 新 し い 公 共 を 担 う社 会 的 ・公 共 的 人 材 の 育 成 」、ii)「 公 共 サ ー ビ ス の イ ノベ ー シ ョ ン 」、iv)「 新 し い 発 想 域 の 力 を 引 き 出 す 」、V)「. 『共 感 と コ ミ ッ トメ ン ト』 の 経 済 活 動 に よ る社 会 の つ な が り形 成 」、vi)「 民 間. に よ る組 織 的 な 公 共 支 援 活 動 」 で あ る が 、 む し ろ こ の 上 位 概 念 を 通 じて. 「 新 しい 公 共 」 の 意 味 す る と こ ろ. が 読 み 取 れ る で あ ろ う。 「 新 し い 公 共 」 の ポ イ ン トは 、第1に 事者 たちの. 「支 え 合 い と活 気 の あ る社 会 」、 お よ び 第2に. それ を 作 るた め の 当. 「 協 働 の 場 」 に あ る と い え る。 こ う した 発 想 は 、 円 卓 会 議 の 座 長 を 務 め る慶 応 大 学 の 金 子 郁 容. の 考 え 方 が 色 濃 く反 映 され て い る。 か つ て 、 金 子 は 、 「私 は 、 ボ ラ ン テ ィ ア の 提 示 す る 関 係 性 、 つ ま り、個 人 や 社 会 へ の 『か か わ り方 』 と 『つ な が りの つ け 方 』 は 、 社 会 を 多 様 で 豊 か な も の に す る 、 新 し い も の の 見 方 と 、 新 し い 価 値 を 発 見 す る た め の 行 動 原 理 を 提 示 す る も の で あ り、 社 会 の 閉 塞 状 況 を 打 破 す る た め の ひ とつ の 『窓 』 に な る の で は な い か と思 っ て い る 」 と記 し た こ と が あ る(金. 子 郁 容1997:69-70)。. その金.

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