大学生の「孤独感」と「アイデンティティ」の研究 - 映画鑑賞と関連づけて -
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(2) M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .1 .o fK i n k iU n i v e r s i t yN O . 1 9( 2 0 0 7 ). 8 2. 2 0 0 2年までの 1 8年間に続刊が計 7冊刊行されている 2. この事実は,エリクソン ( E r i k s o n,E .H .)の「ア イデンティティ J( e g o i d e n t it y:自我同一性) (1) が単にエリクソン心理学における重要な概念であるばか りか,心理学全体,ひいては人間科学における鍵概念であることを示唆しているものと考えられる.そして 精神分析家であるエリクソンが,臨床実践に基づき,個人の生涯を 8段階からなるライフ・サイクルとして 捉えた時,思春期・青年期の終わりに達成されるべき発達課題として提示したのがアイデンティティ」 の達成(確立)で、あった. 個人は,誕生して以来,様々な生活様式,行動ノミターン,価値規範を,両親をはじめとする他者との「同一. i d e n t i f i c a t i o n )を介して習得することにより,この世界に生きることが可能となるが,思春期から青 化 J( 年期の終わりにかけて,これらの彩しい個々の「同一化」を統合し,職業に就き,人生の多様な要求や局面を 乗り切っていくのに必要な自己確信と信念及び自己同一性 ( s e l f s a m e n e s s ) と連続性を備えた「自分」に 成 る と 考 え ら れ る が ア イ デ ン テ ィ テ イ J とはこのような意味での「自分 j を意味する.このような「ア イデンティティ」とし寸概念の普遍性とその青年期における意味を専門家の言葉にではなく,わが国の「普 通の」若者の語るところに確認しておきたい. ある女子学生は 2 0歳になって問もない日の日記にこう記す. ( 2 ). 「おまえは生きている.人に頼ることなしに,己の世界を築きあげるのだ.たとえ心房縞欠損ぎみの心 臓で、あっても,それが動き,血液を体内にくまなく流しこんでいる以上,おまえは,己の世界をどのように 築きあげるかということに立ち向かっていくんだ.独りであることを忘れていた.独りなのだ,おまえ自 身の世界をもつのだ.[中略]私は私の世界を摸索し始めた.人はみなそれぞれ,その人の世界をもってい る.しかし,その人が本当に己の世界をもっているとは限らない.J ほぼ 30年後, 25歳のある左官職人は,中学校卒業後入った修行時代を振り返って,こう述べている. ( 3 ). 「仕事を覚え始めの頃は,皆の意見や,やり方がちがうのに気づき,頭が混乱してしまった事もあり ました.基本となる本当のやり方を見失ってしまったのです.職人になると一人一人のやり方というも のがあって,皆それぞれちがった方法で仕事を進め,最終的に仕上がりは同じでも,皆ちがうのです.こ の頃は,一番辛かった時です.先輩も大事ですけど,親方も大事であって,誰の意見を聞けばいいのか本 当に困りました.結局私も一番自分に合うたやり方を見つける事ができ,また仕事を続ける事ができま した.J 前者では, 1 9 6 0年代後半世界を席捲し著者自身も参加した学生運動を背景として,やや強迫的な「本当の 己の世界」の確立への希求が語られ,後者では,同一のテーマが,左官業に携る質実な職人として技能習得の 際の苦労話として語られているのであるが,ここに述べられている「他ならぬ自分」とうテーマが「アイデ ンティティ」の問題に直結していることは疑いようもない. こうした「他ならぬ自分J に関わるものとして,わが国でも,統計的な手法による研究に基づき,孤独感 の要因のひとつとして落合が提出した「自己の個別性の自覚」という概念が 1 9 7 0年代に登場した (4) 落合 は,孤独感のいまひとつの要因として「人間どうしの理解・共感の可能性(への期待・信頼)J を見出し,. S O E 3を , I 人間どうしの理解・共感の可能性(への期待・ 「自己の個別性の自覚」を査定する尺度として L 信頼)Jの尺度として L S O Uを作成した.さらに,これら 2要因の組合せにより孤独感の 4類型を提示し,こ れらの類型が「孤独感Jという視点から思春期から青年期にいたる精神的・心理的な発達を段階的に記述し ていることを示した (5) (6)・(7) 筆者が L S Oを中学生に施行した際, L S O Eの得点の高い者は上級学年に多く,こうした被検者は,下級学年 2 I 参考文献」参照. 3 .LSO C L o n e l i n e s sS c a l ebyO c h i a i :孤独感類型別定尺度) .LSO 占 の Eは,落合によれば d a sE i n z e 1 neに由来する(引用文献( 4 )) .LSO・U の U については,現時点で、は,Understandに由来すると考えている(1理解(する ) J は独語で、は,V e r s t a n dもしくは V e r s t a n d n i s, v e r s t e h e n. なので).
(3) 8 3. の LSO-Eの得点が低い者に比べて身体的」および「意識的」ストレスをより強く感じていることから, 個人の成長と悩み(ストレス)が不可分の関係にあると結論づけた (8) また大学生を対象に「孤独感J と i d e n t it yc o n f u s i o n )4の関係を検討した際, LSO-Eの得点が高く発達的に進 「アイデンティティの混乱 J (. んでいると想定される被検者群において, r アイデンティティの混乱」の程度が高いとしづ結果が示された. その際,. r アイデンティティの混乱」を,病理的な人格構造を意味するものではなく,エリクソンが示したよ. うに「アイデンティティの確立」の過程で不可避的に生じる移行的な状態と解釈することで,中学生と同様 に,個人の成長と「危機 J ( =r アイデンティティの混乱 J ) が不可分の関係にあると論じた (9) 以上の論議から「自己の個別性の自覚 j と「アイデンティティ」はともに「発達」と不可分の関係を有 し,発達の指標としても論じられていることから 2つの概念の類向性が窺われる. しかしながら,冒頭で述べたように,. r アイデンティティ」に関しては膨大な研究がなされ,定量的に「ア. イデンティティ」を査定する方法についても洗練されてきているのに対して,. r 自己の個別性の自覚 Jにつ. いては, LSO以外に定量的にこれを査定する尺度は管見に属す限り見られず,しかも,筆者の研究では自 己の個別性の自覚」を査定する尺度として LSO-Eが必ずしも満足すべき信頼性及び妥当性(因子的妥当性) を示さなかった.また発達的見地から大学生においては孤独感の 2要因は別の次元にあり,これは統計的に は LSO-UとLSO-Eが無相関であることとして表現されることが期待されているにもかかわらず,筆者の研究 では, LSO-Uと LSO-Eとが有意な負の相関を示し,この結果が既述した LSO-Eの尺度としての不安定性に由 来するのか,それとも被検者である大学生の発達的未熟さに由来するのかという問題に明快な答えを与え ることができなかった.さらに基準関連妥当性については,中学生を対象とする研究では「ストレス」尺度, 大学生の場合には「同一性の混乱」尺度のそれぞれ外的基準として lつの尺度しか用いられなかったため, 複数の外的基準による検討の余地が残った. 個人の人格や性格を査定する方法としては一般に質問紙法や投影法が利用され,時に実験的な方法が用 いられることもあるが,集団方式で調査を行う場合(これが圧倒的に多いのであるが) ,最も使用頻度が高 いのは質問紙法であり,投影法としては実施が容易な描画法が併用されることも少なくない.筆者もこれま で質問紙法のみ用いてきたが,本研究では,寡聞にして類例を知らないのであるが,映画鑑賞のあり方を人 格査定の方法として用いる可能性について検討した.筆者は年来授業などである主題について説明する際 出席者の興味を喚起し,理解を促進するために,当該主題が扱われている(と筆者が考える)映画を利用す ることがあり,青年期のアイデンティティというテーマについては「キッズ・リターン J(北野武監督, 1996 年)を度々「教材」として利用して来た.思春期・青年期をテーマにした映画は数多くあるがキッズ・ リターン」はその中で一般的にはあまり注目されていないが,製作者の意図はいざ知らず,青年期における アイデンティティの問題が鮮鋭に表現されていると筆者は考えており,そのような観点から実証的な検証 を試みた.. 2. 自的. (1)映画「キッズ・リターン」の鑑賞のあり方を査定する尺度及び課題を作成する. ( 2 )落合の LSO (孤独感類型判別尺度)の信頼性と妥当性を再検討し,孤独感の構成概念の再定義及び尺度. の再構成を試みる. ( 3 )( 2 ) の再構成された「孤独感 J尺度の妥当性を「アイデンティテイ j ・「コーピング J尺 度 キ ッ ズ ・. リターン」評定尺度・課題との関係で検討する. ( 4 ) r キッズ・リターン」評定尺度・課題の特性について検討する.. 4 . 文献の中では調査に使用した質問紙の作成者を踏襲して「同一性 J を使用したが,本稿では「アイデンティティ J と記す..
(4) Memoirs o fTheS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9 (2007 ). 8 4. 3. 方法. (1)被検者私立大学 1 " ' 4年生 154名(1年:90名 , 2年 : 3 9名 , 3年 :23名 , 4年 :2名,男 95名,女 50名 , .1 2 ) (性別不明 9名,年齢不明 7名) . 平均年齢 19.3歳(標準偏差:1. ( 2 )材 料 ①DVD-VIDEO I キッズ・リターン. 5 .② ( a )映画「キッズ・リターン」評定尺度:新たに作成した. 20対の形容詞対を 6件法にて評定 . ( b )同映画の登場人物 5 タイプから「好まししリ人物と「好ましく. ない」人物を選択し,その理由を記述する課題.③「孤独感」尺度:落合(印)の L S Oに今回筆者が作成し た 7項目を加えた全 26項目の質問紙 ( 5件法) .④下山. ( 1 1 ). の「アイデンティティ」尺度 :11アイデン. アイデンティティの基礎」各 1 0項目からなる質問紙 ( 5件法) .⑤尾関 ティティの確立 J, I. ( 1 2 ). のコ. 積極型 J8項 目 消 極 型 ( 回 避 ・ 逃 避 型 )J6項目からなる質問紙 ( 5件法) . ーピング尺度 J:I ( 3 ) 手続き. 上記大学の授業場面で集団法・無記名・強制回収にて実施(ただし基本的な統計処理終了後. に返却するため本人のみ認知できる「パス・ワード」を記入させた) .被検者はまず映画を鑑賞し,映 3時間). 2 画終了直後に質問紙に回答した.質問紙回収後,筆者による映画に関する解説を聴いて終了 (. 週間 " ' 5ヶ月後尺度得点等を記載したラベルを貼付した調査用紙が返却され,調査の趣旨及び集計結果 等について説明を受けた(1.5時間) 6 ( 4 )実 施 時 期 平 成 1 8年 4月 " ' 7月.. 4. 結果 4. 1 尺度の作成と検討 4. 1.1. r キッズ・リターン」評定尺度の作成. 特性形容詞対全 20項目に対して主因子法,プロマックス回転により因子分析を行い固有値 1以上とな " ' 6因子を抽出した.固有値の変化(第 1因子から第 2因子 : 2 . 3 9,第 3:.69,第 4:.59,第 5:.06,第 6 : . 0 7 ), る2. 因子の解釈し易さ及び因子の項目数を考慮して因子数を 3 と定めた.因子分析及び項目分析の結果と項目 を併せて表 4-1-1aに示した. 重苦しい J, I 濁った J, I 冷たしリ, I 不誠実な J, I 醜い J 第 1因子は因子負荷量の高い順に「暗い J, I 等の感覚的・生理的要素も含んだ「美醜」とし 1 う次元を,第 2因 子 は 馬 鹿 ら し い J, I 浅はかな J, I 鈍 劣った」等の項目から成り,第 1因子と類似のニュアンスを帯びているが,強いて言えば知的判断 感な J,I 要素を踏まえた「卑俗さ-高尚さ」という次元を,そして第 3因 子 は た く ま し い J, I 男らししリ情 熱的な」等の項目から明らかなように,男性性の次元を現しているものと考えられた.因子負荷量 .40 を尺 冷静な-情熱的な」と .366の項目 5 .I 甘い-厳 度項目選定の基準としたが,因子負荷量は .352の項目1. I しい J は,他の因子への負荷が少ないため尺度項目として採用し,項目 20,6の 2項目を削除した.第 l因子 を「醜悪さ」尺度,第 2因子を「高尚さ J尺度,第 3因子を「男らしさ J尺度と命名した.各下位尺度の信頼 性(内的整合性)を検討するために,逆転項目には必要な処理を施し,各下位尺度の項目については I T相 rIT) を,尺度についてはクロ 関の検討,すなわち当該項目を除去した尺度得点 8と当該項目との相関係数 (. ンバック (Cronbach) の α係数を求めた. rIT) は最も低い項目 1 0で.310であり,全項目について, 0.1%水準で、有意で、 各項目と尺度との相関係数 (. あった.また α係数は「醜悪さ」尺度で .819, I 高尚さ」尺度で .703, I 男らしさ」尺度で .737 と項目数を 考慮すれば満足すべき内的整合性を示した.さらに各尺度得点について全被検者を中央値を基準として高 5 . ⑥ 1996,パンダイピジュアノレ/オフィス北野.発売販売元:パンダイビジュアル株式会社. 6 . I 手続き」に明らかなように,本研究は教育と研究を統合しようとする一つの試みであるが,これについては本稿では触れない. 7 . 本研究では以下の因子分析もすべて主因子法とプロマックス回転を用いた. 8 .本研究ではすべての尺度について項目得点の合計を尺度得点とするキッズ・リターン」評定尺度は 6件法であり,形容詞対の左 から右へ 1点から 6点を与えた.他の尺度はすべて 5件法で,査定する特性を備えている程度が大きさに応じて 5点 " ' ' 1点を与えた..
(5) 85. 得点群と低得点群に二分し,各項目の得点平均の差を t検定したところ,全項目で高得点群の平均が低得点 群の平均が 0.1%水準で、有意に高かった.また各下位尺度について折半法にて信頼性を検討したところス rSB) は 醜 悪 さ 」 が .773, f 高尚さ Jが.717, f 男らしさ Jが.787と満 ピアマン・ブラウンの信頼性係数 (. 足すべき値をしめした.以上の結 果から「キッズ・リターン」評定. 表 4-1-1a f キッズ・リターン」評定尺度因子分析・項目分析結果. 尺度の各下位尺度は十分満足すべ き信頼性を備えていると言える. 下位尺度ごとに項目得点を合 計し尺度得点を算出し尺度得点間 の相関を検討したところ,表. 番号. 形容詞対. 1 5非. 暗い一明るい. 1 4. さわやかな一重苦しい. 1 8井 濁 ( に ご ) っ た 澄 ん だ. 一. 7 0 2. . 2 4 3. .694. 一. 2 7 7. .083 . 5 2 7 * * * 一. 0 4 9 . 4 9 8 * * *. 一. 6 6 8. 一. 0 8 1. 一. 0 7 7. . 6 1 4 * * *. . 0 2 8 . 6 0 5 * * * . 0 8 3. . 5 3 2 * * *. . 5 1 8. . 0 8 8. 一. 0 2 6. . 5 2 5 * * *. . 4 9 5. . 3 6 6. . 1 5 9 . 5 0 2 * * *. . 4 9 1. . 2 3 8. . 1 1 2 . 5 0 3 * * *. 卑(いや)しい一気高い. 一. 2 6 2. 一. 1 9 7. . 0 9 9. むつかしい一易しい. 一. 2 3 6. . 1 1 9. 一. 1 4 9. 8. 美しい一醜い. が (r=-.339, pく.001 ) ,f 醜悪さ」. 4. まじめな一ふまじめな. と「男らしさ J にも同じく有意の. 3. 純粋な一不純な. 2 0 6. . 1 0 2. 一. 7 0 3. . 0 3 8 . 5 7 0 * * *. 一. 1 9 8. . 6 5 5. .020 . 4 0 6 * * *. 敏感な一鈍感な. . 0 6 8. . 5 1 9. 一. 0 7 0. . 4 6 4 * * *. 1 6非. 優れた一劣った. . 3 0 1. . 4 4 6. 一. 0 7 1. . 5 0 4 * * *. l 持. 面白い一つまらない. . 0 8 2. . 4 0 7. 一. 0 6 5. . 3 7 6 * * *. 1 3. 馬鹿らしい一考えさせる. らしさ」の聞には有意な正の相闘. 1 7 非. 深刻な一浅はかな. r = .36 , 1 pく.001 ). がみられた (. 1 9 井. 1 )L S Oの 検 討 落 合 の L S O全 16項. αイ 系 数. r I T. 一. 0 1 9. 「高尚さ J の聞に有意な負の相関. r 孤独感」尺度の作成. 男らしさ. 一. 0 6 9. 不誠実な誠実な. 4. 1.2. 第 3因子. 高尚さ. . 6 6 8. 暖かい一冷たい. 7 非. 一. 214, pく.01).また高尚さ」と「男. 第 2因子. 醜悪さ. 一. 537. 1 1. 4-1-1bに示すように「醜悪さ」と. 負 の 相 関 が み ら れ た (r=. 第l 因子. 9. ひ弱なーたくましい. 一. 0 5 5. . 0 5 5. . 7 9 7. . 6 5 1* * *. 目について 2因子を指定して因子. 1 2井. たくましい一弱々しい. . 0 9 9. . 0 4 1. 一. 7 4 3. . 6 2 8 * * *. 分析を行ったところ, L S O U全 9項. 2. 女々(めめ)しい男らしい. . 0 6 7. 一. 0 3 8. . 6 7 2 . 5 6 7 * * *. 目のうち 7項目が第 l因子に .35. 5. 甘い一厳しい. . 1 4 4. 一. 2 7 2. . 3 6 6 . 3 5 9 * * *. 以上の負荷量を示し,残る 2 項目. 1 0. 冷静な情熱的な. .024. 一. 0 2 9. . 3 5 2. のうち 1項目は第 2因子に .36の. . 8 1 9. . 7 0 3. . 7 3 7. . 3 1 0 * * * 一 」. * * * pく. 0 0 1. 負荷量を示した.L S O Eについて は全 7項目のうち 4項目のみが第 2因子に .35以上の負荷量を示し,. 表 4-1-1b. r キッズ・リターン」. 評定尺度下位尺度聞の相関. 残る 3項目のうち 2項目の第 2因子への負荷量は .2以下と小さく, 他の 1項目は第 1因子へ .48の負荷量を示した. 以上の結果から L S Oの下位尺度聞において項目の相互混入が見出 され,特に L S O Eについては因子的妥当性の点で満足すべき結果と は言い難いが,オリジナノレな尺度の内的整合性を求めたところ, α係. N=154. 醜悪さ. 高尚さ. 醜悪さ 高尚さ 男らしさ. 一.339*** 一.214**. . 3 6 1 * * *. 0 1* * * p < . O O l * * pく.. 数は L S O Uで.882と十分満足な値を, L S O Eでも .692とまずまずの 数値を示した.そこで,各尺度の尺度得点聞の相関を検討したところ,相当程度の有意な負の相関が見出さ れた (r=-.608, pく.001 ).. S O E 筆者がこれまで、に中学生及び大学生を対象に行った研究でも同様の結果が示されたが,中学生では L が査定するとされる「自己(人間)の個別性の自覚」が未だ十分確立されていないために, L S O Uが査定す るとされる「人間どうしの理解・共感への期待・信頼」と相関を持つのは理解できるにしても,少なくとも 2度にわたって大学生において中学生と同様の結果が示されたことをどのように考えるべきであろうか.. 9 .訴を付したのは逆転項目以下同様..
(6) 8 6. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .19 ( 2 0 07). この間いに答えるために L S O Eの信頼性と妥当性について再度検討した. 表 4-1-2a 項. 番号. 孤独感」尺度因子分析・項目分析結果. 目. 第l因子. 第2因子. 第3因子. YIT. α係 数. U7非10. 私の考えや感じを誰もわかってくれないと思う.. . 8 9 3. . 0 5 8. 一. 0 6 9. . 7 9 2 * * *. 井 U 10. 私の生き方を誰もわかってくれはしないと思う.. . 8 7 4. . 0 5 7. 一. 0 4 6. . 7 6 3 * * *. 私の考えや感じを何人かの人はわかってくれると思う.. . 8 1 0. . 0 7 3. . 0 5 7. . 7 3 0 * * *. 誰も私をわかっ てくれないと,私は感じている.. . 7 7 9. 一. 0 8 0. . 0 0 4 . 7 7 0 * * *. U 3. 私のことをまわりの人は理解してくれていると,私は感じている.. . 6 3 1. 一. 0 6 0. . 0 4 1. 8 7 3 . 6 0 0 * * * .. U4. 私は,私の生き方を誰かが理解してくれると信じている.. . 6 0 9. 一. 0 5 8. . 0 3 0. . 6 1 7 * * *. 一. 4 5 4. 一. 0 9 3. . 0 8 5. . 3 7 8 * * *. U6 U 14 井. t. 持E 1 2井 私と全く同じ考えや感じをもっている人が,必ずどこかにいると思う. u 1 井. 私のことに親身に相談相手になってくれる人はいないと思う.. . 4 4 3. 一. 1 3 4. . 2 9 1. キ* . 4 5 3 *. U 1 5. 人間は,互いに相手の気持ちを分かりあえると思う.. . 3 5 0. 一. 2 2 5. 一. 1 0 5. . 4 5 3 * * *. 一. 0 9 1. . 7 7 1. . 0 8 5. . 6 7 8 * * *. . 0 2 8. . 7 6 5. . 0 0 9. . 6 5 7 * * * . 5 7 3 * * *. E 5. 結局,自分はひとりでしかないと思う.. E 9. 人間は,本来,ひとりぼっちなのだと思う.. E 1 1. 結局,人聞はひとりで生きるように運命づけられていると思う.. 一. 0 3 3. . 6 7 3. 一. 0 1 5. E 1 6. どんなに親しい人も,結局,自分とは別個の人間であると思う.. 一. 0 9 5. . 5 0 0. . 1 9 8. 7 8 0 . 5 2 5 * * * .. A 1 9. 他人の苦しみを分かち合おうと,思っても,自分がその人にとって代わるこどはできない.. 一. 0 3 1. . 4 0 4. . 1 3 2. . 4 4 4 * * *. 持U 2. 人間は,他人の喜びや悩みを一緒に味わうことができると思う.. . 2 1 3. 一. 3 7 1. . 1 0 9. . 4 1 3 * * *. A17. 私がどんなに努力したところで,自分とは別の存在になることはできない.. . 0 9 1. . 3 3 5. 一. 0 4 8. . 2 6 4 * * *. A 2 3持. たいていの人は,私と同じ生き方をしているのだと思う.. 一. 2 2 9. 一. 2 9 4. . 2 8 1 . 1 8 0 *. A18井. 他人とおなじように生きるのが望ましい.. 一. 0 1 1. 一. 1 0 8. . 7 8 7. . 4 9 2 * * * . 2 7 0 * *本. A20. 他の誰とも異なる自分自身というものを失うことほど恐ろしいことはない.. . 2 1 8. . 0 8 2. . 4 2 1. E 1 3. 私の人生と同じ人生は,過去にも未来にもないと思う. . 0 4 3. . 0 9 4. . 3 2 8 . 2 5 5 * *. A 2 2. 他人が自分を理解してくれなくても,自分の意志に従って生きることは大切だと思う.. 一. 1 5 8. . 0 1 7. . 3 0 4 . 2 6 4 * * *. E 8. 自分の問題は,最後は,自分で解決しなくてはならないのだと思う. . 0 0 9. . 0 9 0. . 2 8 4 . 1 3 8十. 一. 0 1 7. . 1 6 0. . 2 3 5 . 1 9 3 *. A 2 1 一人きりになって,自分を見つめたいとよく思う. tpく 1 0* pく. 0 5* * pく. 0 1* * * pく. 0 0 1 2 )r 孤独感」尺度の作成. 「自己の個別性の自覚」を測定. するために今回新たに筆者が作成した 7項目を落合の L S O. 表 4-1-2b. が,因子に所属する項目数と本研究の趣旨を考慮、して因子 数を 3と定めた. 因子分析及び後述する項目分析の結果を併せて表 4-1-2aに示した.第 l因子の因子構造は前述の 2因子指定. 「孤独感」下位尺度・「孤立感 j 尺度の相関. に加えた全 23項目に因子分析を行い, 2 ' " ' " ' 4因子を抽出し, 固有値の変化,各項目の因子への負荷の状況等を検討した. . 5 1 5. 瑚1 ・ 共 感 の 可 能 性. N=154. 孤立感. 理解・共感の可能性 孤立感 自己の個別性の自覚. 一. 5 7 5 * * * 一. 1 1 0. . 1 3 6. * * * p < . O O l. の因子分析の結果とほぼ重なり, L S O U全 9項目のうち 8項 目と L S O Eの 1項目が第 1因子に .35以上の負荷量を示した.第 2因子には L S O E全 7項目のうち 4項目と. 1 0項目番号の前の#はオリジナノレの LSOの逆転項目で,E12#と U2は本研究でオリジナルとは異なる因子・尺度に所属させるため今一 及 び#U2と表記した 度逆転項目として扱うため #E12#.
(7) 8 7. る LSO-Uの残る 1項目及び追加項目 l個 ( A 1 9 ) 11が. 3 5以上の負荷量を示し,さらに追加項目 1個 ( A 1 7 ) が.335の負荷量を示した.第 3因子には残った追加項目 5個と LSO-Eの 2項目,計 7項目が所属するが . 3 5 以上の負荷量を示すのは 2項目のみで,他の 2項目の負荷量は .30代,残った 3項目では .20代で、あった 12 各因子の内容を検討すると,第 l因子は LSO-Uの構成概念である「人間同士の理解・共感の可能性への期 待・信頼」を現しているので「理解・共感の可能性J尺度と命名した.他の 2因子はいずれも「自己(人間) の個別性の自覚 J に関わるものであるが,第 2因子はどちらかといえば個別性の自覚に基づく寂しさ,孤立 感が現れているように感じられるので仮に「孤立感」と名づけた 13 第 3因子は自己(人間)の個別性に対 する責任性・倫理性のようなものが感じられるのでこちらを「自己の個別性の自覚」と仮に命名した. 一般に尺度作成を目的とする因子分析では因子負荷量の項目の取捨選択の下限は .35に設定されること が少なくないようであるが,厳密性の追求により失われる可能性のある潜在的意味の探索するために,試行 的にすべての項目を尺度項目として選択し,逆転項目については必要な処理を施し, 3つの尺度について各 項目と尺度との相関係数 rITと α係数を求めた. 孤立感」が .780と満足すべき値 尺度の内的整合性の指標である α係数は「理解・共感 J尺度が .873, r. I T相 関 は 理 解 ・ 共 感 」 及 び 「 孤 立 感 」 尺 を 示 し た が 個 別 性 の 自 覚 」 は .515を示すにとどまった . 度の全項目で rITは 0.1%水準で、有意で、あり自己の個別性の自覚」でも 1項目 ( E 8 ) 有意傾向にとどま ったが,他の 6項は 0.5%以上の水準で、有意で、あった.さらに各尺度得点について全被検者を中央値を基準 として高得点群と低得点群に二分し,各項目の得点平均の差の有意性を検定したところ, 22 項目で高得点、 8 ) も高得点群の平均が低 群の平均が低得点群より 0.1%水準で、有意に高く,残る 1項目(第 3因子所属の E. 得点より 1%水準で、有意に高かった.また折半法によるスピアマン・ブラウンの信頼性係数 ( rSB)は「理解・ 5 2 1 共感」が .903と 十 分 高 く 孤 立 感 」 が .665と満足すべき値を示したのに対して「個別性の自覚」は .. を示すにとどまった. さらに下位尺度ごとに項目得点を合計し尺度得点を算出し尺度得点聞の相関を検討したところ,表 4-1-2bに示すように「理解・共感」尺度と「孤立感 j 尺度の聞に有意な負の相関が ( r .575, pく. 0 01)見 二一. r = .1 10, p = .1 7 4 ) および前者と「孤立感」 出 さ れ た が 自 己 の 個 別 性 の 自 覚 J と「理解・共感 J ( ( r = .1 3 6, p = .0 9 2 ) の聞には有意な相関は見いだされなかった.. r 自己(人間)の個別性の自覚」尺度は他. の 2尺度とは連続性のない異なる次元の心的事象を査定していることが明らかとなった. 4. 1.3 アイデンテイティ尺度. 下山のオリジナルな「アイデンティティ J尺度 2因子を指定して全 20項目を因子分析したところ,第 l 因子で「アイデンティティの確立」尺度全 1 0項目が . 4 0以上の負荷量を,第 2因子に「アイデンティティ 0項目のうち 8項目が . 3 5以 上 の 負 荷 量 を 示 し た 基 礎J尺度の残りの 2項目も,第 l因 の基礎」尺度全 1 b 7持 ) ,この尺度への寄与の緊密さから ( b9枠 内 基 礎 」 尺 度 項 目 と し た . さ 子への負荷量の小ささや (. らに各項目の尺度への相関の指標である相関係数 r I T と尺度の内的整合性を示す α係数を求め,因子分析 の結果及び項目と共に表 4-1-3に示したなお念のため,さらに各尺度得点について中央値を基準として全 被検者を高得点群と低得点群に二分し,各項目の得点平均の差の有意性を検定したところ,全 20項目で高 得点群の平均が低得点群より 0.1%水準で、有意に高く,折半法でのスヒ。アマン・ブラウンの信頼性係数(r S B )は. 確 立 」 で .813, r 基礎」で .770と満足すべき値を示し,アイデンティティ尺度の信頼性が確認され. た. 11.オリジナルな LSO-Uの項目には番号の前に Uを , LSO-Eの項目には Eを,追加項目には Aを付加した . A I 7 ' " ' " ' A 2 3が追加項目である. 1 2 A23の因子負荷量は第 3因子が.280で,第 2因子の方が.294と高いが,第 2因子の所属とすると r r T は. 0 8 3と非常に低く(第 3因子 では . 1 8 0 ), α係数も第 3因子所属の場合の . 7 8 0から . 7 4 9へと低下するため第 3因子の所属とした. 1 3 理解・共感の可能性」を「理解・共感 J, I 自己(人間)の個別性の自覚」を「個別性の自覚 J と記すことがある. 1 4 b9#を第 2因子から除去して第 l因子へ所属させた場合,前者の α係数は . 7 6 2から . 7 5 4と低下し,後者も . 8 3 7から . 8 3 4へと低下する..
(8) 8 8. Memoirs o fThe S c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9 (2007 ). 表 4-1-3 アイデンティ尺度因子分析・項目分析結果 項目. 番号. 第 l因子. 第 2因子. r I T. e 4 私は,自分なりの生き方を主体的に選んでいる.. . 7 4 1. e 3 私は,十分に自分のことを信頼している.. .644. .154 . 6 6 0 * * *. e 2 自分の生き方は,自分で納得のいくものである.. . 5 9 5. . 1 8 5 . 6 2 4 * * *. e 6 社会の中での自分の生きがいがわかってきた.. . 5 9 1. 一. 0 1 9. . 5 2 7 * * *. e 9 私は,自分なりの価値観を持っている.. . 5 8 1. 一. 1 8 4. . 4 2 2 * * *. e 1 0 私は,魅力的な人間に成長しつつある.. . 5 6 5. 一. 1 6 0. . 6 0 8 * * *. . 5 5 7. 一. 1 3 3. . 4 5 4 * * *. e 8 私は,自分の個性をとても大切にしている.. . 5 5 3. 一. 0 6 7. . 4 6 0 * * *. e 5 自分は,何かをつくりあげることのできる人間だと思う. . 4 7 9. . 1 0 3 . 4 8 7 * * *. e 1 私は,興味を持ったことはどんどん実行に移していく方である.. . 4 4 8. . 1 6 7 . 4 8 2 * * *. . 2 6 6. . 2 4 0 . 3 3 3 * * *. 一. 2 3 3. . 6 6 9 . 4 5 3 * * *. . 0 1 3. . 6 1 6 . 5 3 2 * * *. b4 井 何かしているより空想に耽っていることが多い.. 一. 0 9 5. . 5 5 9 . 4 4 2 * * *. b 6井 私は,どうしたらよいかわからなくなると自分の設の中に閉じこもってしまう.. 一. 0 2 7. . 5 4 3 . 4 7 1 * * *. . 0 4 5. . 5 1 9 . 4 7 4 * * *. 一. 0 2 0. . 5 1 1 . 4 3 3 * * *. .1 8 1. . 4 3 9 . 4 9 4 * * *. . 0 6 0. . 3 8 3 . 3 2 5 * * *. . 0 2 3. . 3 3 9 . 2 9 2 * * *. b 2井 私の心は,とても傷つきゃすく,もろい. b 8持 まわりの動きについていけず,自分だけどり残されたと感じることがある.. b 5井 私は,人がみているとうまくやれない. b 1井 私は,やりそこないをしないかと心配ばかりしている. b 3井 異性とのつきあい方がわからない. b10非 自分の中には,常に漠然とした不安がある. b 7井 自分一人で初めてのことをするのは不安だ.. I.837. . 0 8 5 . 5 5 2 * * *. e 7 自分にまとまりが出てきた.. b 9井 私は,人と活発に遊べない.. α係 数. I.762. * * * pく. 0 0 1. 表 4-1-4 番号. 「コーヒ。ング」尺度因子分析・項目分析結果 項目. 第 l因 子. 第 2因 子. r I T. a 3 不愉快な状況が生じた場合,時の過ぎるのにまかせる.. . 8 2 3. . 0 7 8. . 5 8 9 * * *. a 2 困難な事態に直面すると,なれるようになれと思う.. . 6 6 9. . 1 4 7. . 5 4 5 * * *. a 6 不愉快な出来事に巻き込まれた時は,こんなこともあると思ってあきらめる.. . 5 3 2. 一. 0 6 1. . 4 8 9 * * *. a 5 不愉快な出来事が起きた時は,何らかの対応ができるようになるのを待つ.. . 5 3 1. . 0 0 7. . 3 9 6 * * * . 2 7 4 * * *. a4 強いストレスを与える出来事が生じた時は,たいした問題ではないと考える.. . 3 3 0. . 0 5 8. a 1 課題の提出期限が迫ってきた時は,先のことをあまり考えないようにする.. . 2 2 0. .004. q 2 難しい課題を与えられた時は,人に問題解決に協力してくれるよう頼む.. . 0 2 9. . 0 1 3. q 5 困難な事態におちいった時は,問題に関する情報を集める.. 一. 064. . 6 5 2. . 5 6 9 * * *. q 3 不愉快な出来事に巻き込まれた時は,問題の原因を見つけようとする.. 一. 1 9 7. . 5 8 9. . 5 2 6 * * *. q 1 不愉快なできごとに直面した時は,その状況を変えるよう努力する.. 一. 1 7 9. . 5 5 9. . 4 7 6 * * *. f 3 困難な状況に置かれた場合,今の経験はためになると思うことにする.. . 0 9 7. . 4 7 8. . 3 0 8 * * *. f 1 困難な状況に置かれた場合は,自分で自分をはげます.. . 2 4 7. . 3 8 2. . 1 5 2十. f 2 不愉快な状況に置かれた時は,ものごとの明るい面を見ようとする.. . 2 9 2. . 3 3 8. q4 不愉快な出来事に巻き込まれた時は,自分のおかれた状況を人に聞いてもらう.. . 0 8 0. . 1 7 6. 十p く. 1 0* * * pく. 0 0 1. α係 数. . 6 9 7. . 6 3 7.
(9) 8 9. 4. 1 . 4 コーピング尺度. 4項目で構成され,前者は「問題焦点型 J5項目と 尾崎のオリジナルで、は「積極型J と「消極型」の計 1. 「情動焦点型 J3項目に分割され,後者は「回避・逃避型J とも命名されているが,全 1 4項目を 2"'3因子を 指定して因子分析したところ,因子数 3の場合は第 3因子で .30以上の負荷量を持つ項目が 3個となり尺度 構成が不可能なため,因子数を 3に決定した.第 1因子に .35以上の負荷量を持つ項目は「回避・逃避型 J4 項目で,第 2因子では「問題焦点型 J3項目と「情動焦点型 J2項目で、あった.項目数を調整するために第 l 因子の負荷量が .330で,第 2因子では .01以下の 1項目 ( a 4 )を加え第 1因子を「回避・逃避型 J, 第 2因子を 「積極型 J と命名した. さらに各項目の尺度への相関の指標である相関係数 r I Tと尺度の内的整合性を示す α係数を求めたとこ ろ,全 1 0項目のうち 9項目で r I Tは 0.1%水準で有意となったが,残る 1項目 ( f1)は有意傾向にとどまっ 回避・逃避型 J が.697 と項目数の少なさを考慮すればまずまずの値 た.なお α係数は「積極型」が .637, I を示した.なお各尺度で 1項目が ( f 1, a 4 ),該項目を除去した際 α係数が向上するとの結果が出たが項目数 の減少を避けるために除去しなかった.以上の結果を因子分析の結果及び項目と共に表 4-1-4に示した.な お念のためさらに各尺度得点について中央値を基準として全被検者を高得点群と低得点群に二分し,各項 目の得点平均の差について t検定を行ったところ,全 1 0項目で高得点群の平均が低得点群より-O .10 / 0水準 で有意に高く,折半法によるスヒ。アマン・ブラウンの信頼性係数は「積極型 Jで rS = '635, I 回避・逃避型 J B で rS B = . 7 7 8と項目数を考慮すれば十分満足すべき値を示し,コーピング尺度の信頼性が確認された. 4. 2. r 孤独感」尺度の妥当 表 4一2. 性の検討. S Oの 3つの下位尺度 修正 L の妥当性をアイデンティティ 尺度,コーピング尺度との関 係において検討するためにこ れら 3尺度の下位尺度の得点 聞の相関係数を求め結果を表 4-2に示した. I自己の個別性. の自覚」は「アイデンティテ ィの確立 J (r=.358, pく .0 01 ). N = 1 5 1. 個別性の自覚. 孤独感 J ・「アイデンテイ J相関 孤立感. 共 感 ・ 理 解 の 時 性. 確立. 基礎. 積極型. 個別性の自覚. 共感・理解の可能性. 一. 1 4 9. 孤立感. . 1 6 3 *. 7 イ デ ン テ イ テ ィ の 確 立. . 3 5 8料 *. 7 イ デ ン テ ィ テ ィ の 基 礎 積極型. . 0 2 8 . 2 2 2料. 回避・逃避型一 . 1 7 6 * * pく. 0 5* * pく.0 1* * * p < . O O l. 一. 5 6 6 *料. . 1 6 2 *. ー .2 2 1* *. . 3 2 4 * * *. ー. . 3 1 2 * * *. . 3 7 0 * * *. . 2 1 1料. . 2 8 8料. . 5 3 1 * * *. 一. 0 0 6. . 0 2 5. 一. 2 3 5 * *. . 2 5 7 * * 一. 1 7 7 *. 一. 2 1 1 * *. 「積極型 J (r=.222, pく. 01 ), 「孤立感 J ( r = .1 6 3, pく. 0 5 ) と 正 の 相 関 を 回 避 ・ 逃 避 型 J (r=-.176, pく. 0 5 )と は 負 の 相 関 を 示 し た 人 間同士の理解・共感の可能性への期待・信頼」は「アイデンティティの基礎 J (r=.324, pく. 001 ),I 積極型」 ( r = .2 1 1, pく. 01 ),I アイデンティティの確立 J( r = .1 6 2, p < .0 5 ) と正の相関を, I 孤立感 J( r = .566, pく. 001 ). と は 負 の 相 関 を 示 し た 孤 立 感 J は「アイデンティティの基礎 J ( r = .312, pく. 001 ) , I 積極型 j ( r = .288, pく. 001 ) ,. I J( r .221, pく. 01)のいずれの尺度とも負の相関を示した.以上の結果から修正 L S O 二一. の 3つの下位尺度の妥当性(基準関連妥当性)が保証されたと考えてよいであろう. 4. 3. r 孤独感」類型と「孤立感」尺度・キッズ・リターン評定尺度・アイデンテイティ尺度・コーピン. グ尺度との対応 4. 3. 1. r 孤独感」の類型. 先に落合の L S Oに新たに 7項目を加え尺度の構成を試み, I 人間同士の理解・共感の可能性への期待・信 頼 J,I 孤立感 j 及び「自己の個別性の自覚 j の 3尺度を作成した.既述したように, I 理解・共感の可能性」 は 9項目のうち 8項目を落合の L S O Uと共有しており,尺度の構成概念も同一であると考えてよいが孤.
(10) M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .19. 90. (2007). 立感」は 7項目のうち 4項目を LSQ-Eと共有し ているものの「理解・共感の可能性J との聞に. 「理解・共感の. 有意な負の相関が見出されることから「自己の. 理解・共感し合える と考える. 可能性」. 個別性の自覚」を構成概念とする LSQ-Eとは異 なる. そして 2項目を LSQ-Eと共有するが,今回新た. D型. A型. に作成,追加された 5項目を加えた全 7項目の 「自己の個別性の自覚 j 尺 度 こ そ 理 解 ・ 共 感. 個別性の 自覚なし. 個別性の「自己の個別 自覚あり 性の自覚」. の可能性」および「孤立感 j と無相関であるこ. B型. Ic型. とからも,落合が LSQ-Eの構成概念であるとし 理解・共感し合えない と考える. た人間の孤独感の第 2の規定因子である「自己 の個別性の自覚 J を査定する尺度であることを 先に検討した. LSQ-Uの各得点の高低の組合せによ 落合は LSQ-E,. 図 4-3-1 孤独感の 4類 型. ) ,4つの類型 り孤独感を 4つに類型化し(図 4-3-1. 8 3 ),引用文献( 6 )による) (落合(19. 聞に発達序列があると主張したが,その際得点の高 低を判定する基準は,平均とか中央値などの相対的な得点ではなく絶対得点、で、あった.すなわち 5件法によ る回答に -2"-'+2点のいずれかを与え,合計得点すなわち尺度得点の正負の組合せにより類型化を行った ( 13 ). そして LSQ-U,LSQ-E共の尺度の得点がいずれも正となる類型 ( D型)が発達的にみて最も成熟してお. り,この類型は中学生ではあまり多くみられないが,加齢により増加し大学生では 3分の 2以上がこの類型 に到達することを示した.しかしながら大学生を対象とする筆者の研究においては過去においても,今回に. A型) おいても,落合や他の研究者を支持する結果は得られず,最も発達段階の高い群の度数が最も低い群 ( より有意に多いとは言えなかった 15 表 4-3-1 類型化の基準による「孤独感」タイプ度数の比較 A. B. C. D. 中央値を基準と. N. 41. 40. 34. 36. した場合. 共感・理解の可能性 自己の個別性の自覚. >=33. く3 3. く3 3. >=33. く= 27. く 二2 7. >27. >27. N. 4. 2. 29. 106. 共感・理解の可能性. >27. く2 7. く2 7. >27. 自己の個別性の自覚. く2 1. く2 1. > 2 1. > 2 1. 絶対得点を基準 とした場合. その他. 1 0. 外れ値 3. 1 5 1. 3. 1 5 1. このような先行研究とは異なる結果が生じた要因のーっとして, LSQ-Eの信頼性の不十分さを仮定し,既 述したように「自己の個別性の自覚」尺度を作成した.そして落合に倣って「理解・共感の可能性j と「自 己の個別性の自覚」の 2尺度の絶対得点を用いて全被検者の 4類型化を試みたところ,各類型の度数は,表 4-3-1に示すように,発達的に最も高い群の被検者数が全体の約 70%を占めた.絶対得点による類型化で. は 2つ群の度数が 5以下であり,本研究の目的の一つで、ある孤独感の類型聞の差異ついての統計的な方法に よる記述が困難で、あることが予備的分析によって判明したため,中央値を基準として孤独感の類型化を試 み , I 理解・共感の可能性」と「自己の個別性の自覚 j の 2尺度の尺度得点の高低の組合せにより全被検者 をA , s,C , Dの 4群に類型化した.さらにクラスター分析 ( t w os t e p クラスター)により外れ値として検出 1 5 オリジナルな LSO の類型化に従うと本研究では 4群の度数は発達的に成熟に低い方から,4 7 , 1 , 2 7, 6 6, 1 3 (その他)となり全体とし て度数に有意差が見られたが χ (2 = 8 3, 3 3 8, d f 弓 ,pく . 0 01 ) ,最も成熟度の高い群 ( N = 6 6 ) と低い群 (N=4 7 ) の度数の差は有意傾向にと (2 = 3 . 1 9 5, d f = 3, p = . 0 7 4 ) . どまり,有意とならなかったχ ,. ,.
(11) 9 1. された 3名 ( B:1名 , D:2名)を分析の対象から除外したベ 4. 3. 2 孤独感類型に基づく「孤立感 J,アイデンテイティ尺度,コーピング尺度,キッズ・リターン評定. 尺度得点の比較 下位尺度および「孤立感 J尺度の尺度得点を従属変数,孤独感類型を要因とするとする 1要因 4水準の 1 元配置の分散分析により検討した.表 4-3-2に示すように類型化に用いた 2尺度を除く 8つの尺度のうち 「回避・逃避型」と「男らしさ」を除く 6尺度の得点平均について,水準(類型)聞に有意な差が見出され た.これら 6尺度について多重比較を行い (Tukey法,有意水準 5%)ペその結果を図 4-3-2( a ' " ' ' f )に示した. 「アイデンティティの確立」で、は要因の効果は有意で、あった ( F ( 3,147)=7.876, pく. 001 ) .多重比較の結. r 理解・共感 J,r 個別性の自覚」の双方の尺度の得点が中央値より高く,最も成熟度が高いと考えられ. 果 ,. る D型の被検者が,最も成熟度が低いと考えられる A型 の 被 検 者 ( r 理解・共感高得点個別性の自 覚 低 得 点 ) よ り ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 確 立 」 の 得 点 平 均 が 有 意 に 高 か っ た ま た 「 理 解 ・ 共 感 J, r 個 別性の自覚」の双方の得点が中央値より低く,発達的には Aの次の段階にあると考えられる B型及び「理解・ 共感」が低得点,. r 個別性の自覚 Jが高得点で,発達的には B型より進んでいると仮定される C型,これら 2. 類型より D型の被検者は得点平均が有意に高かった.右上がりのグラフが発達的に A型から D型へと段階的 に進んでいくという仮説を支持すると同時に「アイデンティティの確立」尺度の妥当性をも保証している ものと考えてよいであろう. F ( 3,1 4 7 ) 6 .896, p .0 0 1く ),多重比較の結果, 「アイデンティティの基礎Jでは要因の効果は有意であり ( 二. A型と D型が共に B型と C型の双方の類型より得点平均が高かった.この尺度で A型の得点平均が高いこと. は「アイデンティティの基礎」は構造的な側面のみならず個人の状態をも測定している可能性を示唆して いるかもしれない. 「孤立感」では要因の効果は有意であり, ( F ( 3,147)= 1 3 .1 7 2, pく. 0 01 ) ,多重比較の結果, C型と B型が共 に A型と D型の双方の類型より得点平均が高かった.図 4-2-2cのグラフは「アイデンティティの基礎J の グラフ(図 4-2-2b) とみごとに対称をなしており個別性の自覚」が乏しく自他未分離な状態で安定し ている A型と,思春期の危機を乗り越えて「個別性の自覚」を持ちながらも人間同士の「理解・共感」に期 待・信頼する D型が,共に「孤立感」が弱く,その意味は異なるものの「世界との関係の安定性」を意味す る「アイデンティティの基礎」で得点が高いという事態をグラフの対称性が見事に表していると考えられ る. 「積極型 Jでは要因の効果は有意であり ( F( 3,1 4 7 )=4 .445, pく. 0 5 ) ,多重比較の結果, D型が A型 , B型の 双方より有意に得点平均が高かった.グラフ(図 4-3-2d) は「アイデンティティの確立 J と同じ右上がり で、あって,心理的成長の伴い行動面でも積極性が高まる事実が窺われる. 「回避・逃避型」では要因の効果は有意とならなかったが ( F( 3,1 4 7 )=.7 8 7, n .s . ) ,発達的に進んでいる と考えられる D型 , C型の双方が未熟と仮定される A型 , B型より見かけ上の差にとどまるとは言え,得点平 均が低い事実は妥当なものであろう 「醜悪さ」では要因の効果は有意であり ( F ( 3,147)=2.975, pく. 0 5 ) ,多重比較の結果, B型が他の 3類型 より得点平均が有意に高かった.グラフ(図 4-3-2e) は他の 5つのグラフと異なるパターンであるが B型 で最も得点平均が高い点で「回避・逃避型」と共通しており,このことが B型の特徴を現しているかもしれ ない 18 1 6 .便宜上落合が LSO の 4類型に用いた A""'Dというグループ名を踏襲したが,既述してきたように,落合の LSOによる類型とは類型 化に用いた尺度も得点の基準も異なることに留意されたい.なお類型化に中央値を使用したため各類型の度数は全体の 25%前後とな っている. 1 7 .両側検定の Tukey法で有意とならない場合,片側検定の Dunnettの方法による検定に進んだ(表 4-3-2欄外注記参照) . 1 8 .r 醜悪さ j のみ Leveneの等分散性の検定により水準聞の分散が等しくなかったため,ノン・パラメトリックの Kruskal-Wallis検.
(12) M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t y NO.19 (2007). 92. 表 4-3-2. r 孤独感」類型に基づく「孤立感J・「アイデンティティ J・「コーピングJ・「キッズ・リターン」 評定尺度得点の比較 水準. 平均. 標準偏差. 変動因. 偏差平方和. 自由度. 平均平方. F値. 多重比較. アイデンティ. A. 32.244. 5.508 要因. 9 1 5 . 0 6 1. 3. 305.020. > A 7 . 8 7 6 * * * D. ティの確立. B. 31 .5 7 5. 6 .1 8 5 誤差. 5 6 9 2 .7 0 0. 1 4 7. 3 8 .7 2 6. D > B. C. 3 4 .7 0 6. 7.510 全体. 6 6 0 7 .7 6 2. 1 5 0. D > C. D. 3 7 . 8 6 1. 5.673. アイデンティ. A. 30.415. 6 .7 9 7 要因. 675.570. 3. 2 2 5 .1 9 0. > B 6 . 8 9 6 * * * A. ティの基礎. B. 24.400. 5.952 誤差. 4800.218. 1 4 7. 32.655. A > C. C. 25.676. 6.456 全体. 5 4 7 5 .7 8 8. 1 5 0. D. 29.083. 6 .1 9 4. A. 1 9 .1 7 1. 5 .1 4 2 要因. 1 0 6 5 . 5 9 4. 3. 3 5 5 .1 9 8. > A 1 3 .1 7 2 * * * C. B. 2 3 . 5 2 5. 4.997 誤差. 3 9 6 4 .1 5 4. 1 4 7. 26.967. C > D. C. 2 4 . 9 1 2. 5 . 9 3 1 全体. 5029.748. 1 5 0. 孤立感. 積極型. 回避・逃避型. 醜悪さ. 高尚さ. 男らしさ. D > B D > C. B > A. D. 1 8 . 6 9 4. 4.695. A. 1 8 . 5 6 1. 3.464 要因. 1 4 7 . 6 7 6. 3. 49.225. B. 1 7 . 5 7 5. 3.679 誤差. 1 6 2 7 .7 5 5. 1 4 7. 11 .0 7 3. C. 1 8 . 9 4 1. 3.284 全体. 1 7 7 5 . 4 3 0. 1 5 0. D. 20.333. 2.746. A B. 1 5 . 3 9 0. 4.248 要因. 3 5 . 6 3 3. 3. 11 .8 7 8. 1 6 . 0 2 5. 3.393 誤差. 2 2 1 8 .7 3 8. 1 4 7. 1 5 . 0 9 3. C. 1 4 .7 6 5. 4 .384 全体. 2254.371. 1 5 0. D. 1 4 . 9 4 4. 3.439. A. 32.000. 4 .5 7 2 要因. 2 5 8 .1 5 7. 3. 86.052. B. 3 4 . 4 7 5. 4.432 誤差. 4252.045. 1 4 7. 2 8 . 9 2 5. C. 3 0 .9 4 1. 6 .924 全体. 4510.202. 1 5 0. D. 31 .9 5 8. 5 .524. A. 1 8 .3 6 6. 3 .1 4 4 要因. 1 6 2 . 4 3 2. 3. 5 4 .1 4 4 1 4 . 6 1 3. 4 . 4 4 5 *. B > D D > A D > B. O .787. 2 . 9 7 5 *. B > A ※ B > C B > D. B. 1 7 . 7 0 0. 4.256 誤差. 2 1 4 8 .1 4 7. 1 4 7. C. 1 9 . 0 8 8. 3 . 8 0 1 全体. 2 3 1 0 .5 7 9. 1 5 0. D. 20.500. 4.034. A B. 1 8 .1 9 5. 3 . 9 5 1 要因. 68.680. 3. 22.893. 1 8 . 6 0 0. 3.543 誤差. 2661 .9 1 9. 1 4 7. 1 8 . 1 0 8. C. 20.029. 4.713 全体. 2 7 3 0 .5 9 9. 1 5 0. 3 .7 0 5 *. D > A D > B. 1 .2 64. 4.825 D 1 8 . 6 5 3 0 5***pく. 0 0 1 多重比較:下線なし;Tukeyの方法 ( A > Bは Aタイプが Bタイプより得点平均が 5%水準で有意に高いこ *pく. とを意味する,両側検定) .下線あり;Dunnettの方法による(片側検定,有意水準 5%) . ※; 3組のベアの比較は Steelの方法に よる(脚注目参照) .. 「高尚さ j では要因の効果は有意であり (F(3,147)= 3.705, pく.05) 多重比較の結果, D型が A型及び B 型より得点平均が有意に高かった.右上がりのグラフ(表 4-3-2f) は「アイデンティティの確立」及び「個 別性の自覚Jのそれと全く同じパターンを示している. .264, n .s ) ,見かけ上ではあるが, C型が他の 3 「男らしさ」で、は要因の効果はなかったが (F(3,147)= 1. 定を用いた ( χ 2 ( 3 ) = 8 .4 5 6,p < .0 5 ) .多重比較は Sheffeの方法(両側検定, 5%水準)ではどの水準聞にも有意差は見られず,片側検 定の Steelの方法にて B型と他の類型との聞に有意差が見出された(表 4 3 2欄外注記参照) ..
(13) 9 3. 4 0. 3 2. 円三. /. 3 8 ト D>B D>C. 3 4. 3 0 2 8 2 6~. /. 3 2ト. 一 -. A>B A>C D>C. >:多重比較の結果 有意差あり ( 5%水準). 2 2 2 0. A. B. C. A. D. B. C. D. 図 4-3-2b アイデンティティの基礎. 図 4-3-2a アイデンティティの確立 2 4 26. D>A D>B. B>A B>D C>A C>D /. 2 2. 2 0. ¥. ~. 1 8. ¥. ¥. / E 2 1 0 B 6ト. 1 6 1 4 1 2. A. B. C. A. D. 図 4-3-2c 孤立感. C. D. 図 4-3-2d 積極型. 38. 2 2. 36 ト B>A B>C 34t. B. D>A D>B. ~' ~/\. 20. 32 1 8 28 26. 1 6 A. B. C. 図 4-3-2e 醜悪さ. D. A. B. C. 図 4-3-2f 高 尚さ. D.
(14) 9 4. .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 0 7 ) M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB. 類型より得点平均が高かった.特に「キッズ・リターン」を「醜悪」と感じる心理が B型の特徴をよく現 しているとするならば, I 男らしさ Jの得点平均の高さは映画鑑賞のありかたに C型の特徴が反映されてい るかもしれない.. 4.4. r 好ましい j 人物とキッズ・リターン評定尺度・アイデンテイティ尺度・コーピング尺度との対応. 「キッズ・リターン J に対する評定として登場人物の好悪を尋ねる課題を設定したが,予備的分析の結果 「好ましい J登場人物と諸尺度との対応を検討した円「好ましい」登場人物 に対する被検者の回答の集計結果は表 4 4 1 aに 示 す 通 り で あ る が 好 ま し. 4 1 a I 好まししリ 表4 登場人物①. いキャスト」を独立変数,諸尺度の得点を従属変数として分析するにあたって, 予備的分析の結果なども参照して, I 不明 Jを除く 5つの群を 3群にまとめた. すなわち共に高校をドロッフ ・アウトして自己実現を目指し急速に各々の世 0. 界で頭角を現すが性格要因などから嵯朕に終わるという共通の生き様を示す 「マサノレ」と「シンジ」を一つのカテゴリにまとめ,自己実現志向を持たない. 「好ましし ¥ 1 人物 1.マサノレ 2 .シンジ 3 .ヒロシ. N 1 9 37. 8. 4 .漫才師コンビ. 7 1. 順応的な生き様が榔撒的に描写される点で似ている「ヒロシ J と 1 1普通の」. 5 .P 翫亘の」高校生. 1 2. 高校生 J20も一つのカテゴリとして扱うことにした.そして楓爽とはしていな. 6 .不明. いが地道に努力して自己実現を果たした「漫才師コンビ」はそのまま一つの. 合計. カテゴリとして扱うことにした(表 4 4 1 b ).. 表4 4 1 b I 好まししリ. 水準間の標本数のバラツキがやや大きいこともあり, K r u s k a l-W a l l i s検. 4. 1 5 1. 登場人物②. 含めて多重比較を行い ( S c h e f f e の方法(両側検定, 5%水準) 2 1結 果 を 表. 「女子まししリ人物. 4 4 1 c に示した.また多重比較において水準聞に有意差が見出された尺度す. 1.マサル・シンジ. べてをグラフ化し図 4 4 1( a ' " ' ' f )に示した.. 2 .漫才師立ンピ. 一U. 一 レ. 才師コンビ」を「好まししリキャストとして選択した被検者が「ヒロシ・. ム 口. χ2( 2 )=4 .7 2 9,pく.1 0 ),多重比較の結果, I マサル・シンジ j および「漫 され (. 3 .ヒロシ・高校生 I T 三ロ. 「アイデンティティの確立」では水準間で得点平均の差に有意傾向が見出. 一6 1 0 T 4一 f 572. 定により水準聞の得点平均の差の有意性を検定し,有意差のなかった尺度も. 「普通の J高校生」を選択した. 被検者より得点平均が有意に高かった. χ2( 2 )=9 .5 2 2,pく. 0 01 ) ,多重比較の結 「自己の個別性の自覚」で、は水準間で、得点平均に有意差があり ( 果マサル・シンジ」を「好ましい」人物として選択した群が他の 2群より得点平均が有意に高かった. 「積極型」で、は水準間で、得点平均に有意差はなかったが ( χ 2 ( 2 )ニ 4 . 2 2 5,pく. 2 0 ) ,微かな有意傾向に注 目して多重比較を行ったところマサル. 6. シンジ」選択群が「ヒロシ・「普通の J高校生J選択群より有. 意に得点平均が高かった. 「醜悪さ J では水準間で得点平均に有意差があり ( χ 2 ( 2 ) =1 .7 0 1,pく. 01 ) ,多重比較の結果ヒロシ・ 「普通の J高校生J選択群が他の 2群より得点平均が有意に高かった.. χ2( 2 )=1 8 .4 5 8,pく. 0 01 ),多重比較の結果, I マサル・ 「高尚さ」で、は水準間で、得点平均に有意差があり ( シンジJ選択群が他の 2群より得点平均が有意に高かった. 「男らしさ」では水準問で得点平均の差に有意傾向が見出され ( χ 2 ( 2 ) =5 . 0 5 2,pく.1 0 ) ,多重比較の結 果「マサル・シンジJ選択群が「漫才師コンビ j 選択群より得点平均が有意に高かった. 「アイデンティティの基礎 J ( χ 2 ( 2 ) =1 .7 8 7,n .s . ),I 理解・共感の可能性 J ( χ2( 2 )=1 .4 6 3,n .s ., ) I 孤 立感 J ( χ 2 ( 2 ) =1 .0 2 8,n .s . ) 及び「回避・逃避型 J ( χ 2 ( 2 ) =1 .0 5 0,n .s . ) の 4尺度においては水準間で得 1 9 .登場人物については r 5 . 考察 J 参照. 2 0 .r r 普通の J高校生J を単に「高校生」と記すことがある. 21.多重比較は先ず S c h e f f eの方法(両側検定, 5%水準)行い,有意差が見出されなかった場合にはさらに S t e e lの方法(片側検定, 5%水 h i l e y 準) ,次いで S.
(15) 9 5 点平均に有意差は見られず,. 表4 4 1 c. 多重比較においても水準聞に. 好まししリ人物と「孤立感」・「アイデンティティ」 ・「コーピング」・「キッズ・リターンJ評定尺度得点. 有意差が見出されなかった. 水準. K r u s k a l-W a l l i s検定そし て/または多重比較で有意差 が見出された 6尺度のうち 5. アイデンティ ティの確立 アイデンティ. 一つのパターンに納まってお. ティの基礎. lつまたは双方より「アイデ. 積極性」に 個別性の自覚 J,I. 共感・理解の 可能性. 孤立感. おいて高いレベルにあり, I キ ッズ・リターン」という映画. 自己の個別性 の自覚. 積極型. 5.342. 27.821. 6.132. 行し, I 人間どうしの理解・共. 5 .3 7 3. 20.350. 5.770. 28.232. 3.799. 26.521. 3.609. 25.550. 3.900. 1 9 . 4 1 1. 2 .903. 18.620. 3.871. 17.900 15.518 14.930 15.900 30.938 32.958 35.000 20.098 18.873 15.825 1 9 .786 18.408. d. に 7項目追加した項目群を施. 6.012. 1 8 .1 2 5. 度の信頼性と妥当性について 前節で述べたように, LSO. 21.125 21 .704. 1 .7 8 7. 2. 1 .4 63. 2. 1 .0 28. 2. 9.522**. 1 >3. 1 >2 1 >3. 2. 4.225tt. ♀2. 1.050. 1 0 . 7 0 1 * *. 3 > 1 3 > 2. 1 8 .4 5 8 * * *. 1 >2 1 >3. 一つム. r 孤独感 j尺度,特に尺. 23. 5. 1. 男らしさ. 7.797. 2. 円. 一1. 5 考察. 33.800. 叫 ・. 23. 高尚さ. 7.468. 4.729t. 多重比較 2 > 3. 一円L. 一1. ことを示している.. 7.524. 31 .676. 2. 一円L. 23. いう 1点においてのみである. 32.464. χ2値. 一円L. のは映画を否定的に捉えると. 醜悪さ. 7.578 5.590. ----------------円 δ 一 λ4 q u q u一 4 4 A吐 つ. 一1. の」高校生」選択群が他の 2. 23. 回避・逃避型. 27.563 25.900. 円。一円台U A 吐円台U一 円O F b. 一1. 唯一右上がりのグラフを示し. 群より顕著な特性を露にした. .3 00 31. Q ニ唱 i Q d n d 一 Q U A吐 qu一 QU i ハU一寸i ハU F h U 5 - 5 7 2 一3 2 1 一2 1 5 一3 8 9 。 りム一円i n U ﹁ひ一円L n U 円。一ハU 円。つ白一 1i つd 円. 唆している.また「醜悪さ Jは. たが,これは「ヒロシ・「普通. 3. 23. を見出す傾向が強いことを示. 6.858. 一1. に「高尚さ」と「男らしさ」. 34.211. 2 3 一1 2 3. ンティティの確立 J,I自己の. 2. 一1inLqu. 選択群が他の 2群のいずれか. 6.731. qu. り,これは, I マサル・シンジ」. 自由度. 標準偏差. 34.839. ワ 山. つのグラフは右下がりという. 平均値. 5.052t. 1 >2. T十pく .2 0 tp < .1 0* * pく. 0 1* * * pく. 0 0 1 1:ヒロシ・. 「普通の」高校生. 多重比較:下線なし. 2:漫才師コンビ J3:マサル・シンジ. S c h e f f eの方法(両側検定, 5%水準) ,下線あり;S t e e lの方法(片側. 検定, 5%水準),イタリック ; S h i l e y W i l l i a m sの方法(片側検定, 5%水準).. 感の可能性(への期待・信頼)J を査定する尺度,これと同一 の次元にあって有意な負の相関を持つ「孤立感」尺度,これら 2尺度とは相関を持たず,したがってこれら. 2尺度とは異質な次元の心的事象を測定する尺度が作成され,この新しい尺度の構成概念こそ「自己の個別 性の自覚」であると考えられた.信頼性(尺度の内的整合性)という点で,他の 2尺度が満足すべき値を示 したのに対し,新たに構成された尺度は先行研究と同様に今回も必ずしも満足すべき結果がえられなかっ 積極型」及び「孤立感」と正の相関を回 た.しかし妥当性についてはアイデンティティの確立 J, I 避・逃避型」と負の相関を示したことから満足すべき妥当性(基準関連妥当性)が保証されたと考えてよ いであろう..
(16) M e m o i r so fTh eS c h o o lo fB. O. S . T .o fK i n k iU n i ve r s i t y NO.19 ( 20 07). 9 6. 中学生,大学生いずれを対象とした場合にも L SO Uと L SO Eは負の相関を示したが, L S O Uと負の相関を持. S O U及び「孤立感」尺度とは無相関の「自己の個別性の自覚 J つ尺度を「孤立感」尺度として独立させ, L を作成し,その妥当性を確認したことは本研究の成果であるが,依然, 信頼性(内的整合性)と因子的妥当性 の問題が残された . 36. 30 2> 1 3>1. 3>1 3>2. 34. 28. 32 ト. /. 26 〉 多重比較の結果 有意差あり (5%水準). 24 1ヒロシ, 高校生. 1ヒ口シ, 高校生. 3. マサル, シンジ. 2漫才師コンビ. 2漫才師コンビ. 3マサル, シンジ. 図 4-4-1b 自己の個別性の自覚. 図 4-4-1a アイデンティティの確立 36 3>1 19. 34. 18. 32. 1 7. 30. 16. 28 1ヒ口シ, 高校生. 2漫才師コンビ. 3マサル, シンジ. 1 ヒロシ, 高校生. 2. 漫才師コンビ. 3マサル, シンジ. 図 4-4-1d 醜悪さ. 図 4-4-1c 積 極 型 22 2>1 3>1 3>2. 1 6. 3>2 .-戸. 20. F. /. 1 9 1 8. 1 7. 14E. 1 6 1 ヒ口シ, 高校生. 2漫才師コンビ. 3マサル, シンジ. 図 4 -4-1 e 高尚さ. 1ヒロシ,高校生. 2漫才師コンビ. 3マサル, シンジ. 図 4 -4-1 f 男らしさ.
(17) 9 7. 5. 2 映画鑑賞のあり方と発達. 2 「キッズ・リターン J登場人物の 表 5. 心理学の研究で被検者に映画一本全. アイデンティティ. 体を鑑賞させ,それを何らかの方法で 評定させ変数として扱い,他の変数と. 危機. 積極的 関与. ×. ム. の関係を検討している例を筆者は寡聞 にして知らない.本研究において「キッ. 「普通の J高校生. ズ・リターン」の主たる登場人物を選. マサル・シンジ. O. O. 択させる課題を用い,分析に際してそ. ヒロシ・「普通の J高校生. ×. ×. れらの人物をタイプ分けしたが,ここ. ハヤシ22. ム. ×. では,マーシア ( M a r c i a,] .E .)のアイ. 漫才師コンビ. ム. O. デンティティ・ステイタスの考え方に 触れておきたい (14) マーシアは個人の. 0:経験済み又は経験中ム:暖昧. x. アイデンティティ -ステイタス 早期完了. モラトリアム アイデンティティ拡散 アイデンティテイ達成. 未経験. 「アイデンティティ Jのあり方を 4つの「ステイタス J(地位)に類型化した.分類に際して,面接,心理検査. c r i s i s ) と「積極的関与 J ( c o r n m it m e n t ) の有無を重視した.ステイタス聞に発達 等 を 用 い た が 危 機J ( の順序を想定して以下に各ステイタスの特徴を述べる. 親などの権威像と同一化し,価値観,職業,政治,宗教などの領域での模索とそれに続く自身による選択を 放棄した「早期完了 J ( f o r e c l o s u r e ;1 危 機 」 な し 積 極 的 関 与 」 あ り ) ,アイデンティの達成を求めて上 記の領域で模索する「モラトリアム J ( m o r a t o r i u m ;1 危機 j あ り 積 極 的 関 与 j の有無は個人差あり) ,. i d e n t i t ya c h i e v e m e n t ;1 危機」を経ての「積極的関与j あり),及び何らかの 「アイデンティティ達成 J ( i d e n t it yd i f f u s i o n ;1 危機」の有無に個人 事情によりこれら 3つのいずれにも属さない「同一性拡散 J ( 差 あ り 積 極 的 関 与 j なし)である.. 2に示した 「キッズ・リターン」の主要登場人物をマーシアの考えを参考にして分類し 23 表 5. 1 1普通. のJ高校生 Jを「早期完了」と「アイデンティティ」拡散の二つのステイタスに分類したのは,映画の中で 彼ら」は概ね大人しく学習していたり(正確には無言で椅 はあくまでも「背景J として描かれるのみで, 1 子に腰掛け,黒板の方を向いていたり,時に窓の外をよそ見して教師に注意されたりで学業に熱心な生徒は 一人として登場しないのであるが) ,構内をゾロゾロ歩いていたりするだけであるという理由により,厳密 には「彼ら Jのアイデンティティ・ステイタスは不明なのであるが,このように明確な特徴を持つ登場人物. e n t i f y ) しがたいところが, 1 早期完了 J と「アイデンティティ拡散」という真正のアイデ として同定Cid ンティティが不在の「地位J を象徴していると言えないこともない.このように考えるならば,登場人物と してのヒロシと「普通の」高校生は,マサル・シンジ,漫才師コンビより明らかに発達的に「遅れている J と言える. ヒロシと「普通の」高校生を「好まししリ人物として選択した被検者の数は 20名で,他の人物を選んだ 被検者(12 7名)より圧倒的に少ない (χ2 ( 1 )= 7 7 .884, pく .001 ) ) .そしてこれらの被検者は他の 127名 の被検者と比べてキッズ・リターン」に醜悪さ」を強く感じこそすれ高尚さ」は感じないのであ る.被検者間のこうした差異は,登場人物の映画における相対的な事情に由来するものであると考えること もできるが(例えば明らかにヒロシや「普通の」高校生はマサル・シンジに比べて出番が圧倒的に少ない), 「ヒロシ・「普通の」高校生」選択群は, 1 マサル・シンジJ選 択 群 よ り ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 確 立 J, 1 自 己の個別性の自覚 J及び困難な課題状況下での「積極性」を質す尺度で得点が有意に低く,漫才師コンビを 2 2 .r ハヤシ」は,中年にさしかったアマチュアかプロフェシショナノレかがはっきりしない中途半端なボクサーで,登場人物としては重. 要な役割を担っているが,年齢を考慮して今回選択肢として設定しなかった. 2 3 .登場人物における「危機」と「積極的関与」の有無及び「ステイタス」の判定は筆者の判断によるもので,マーシアの理論に基づ、. く判定と一致しないものもある..
(18) 9 8. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .1 9( 2 0 0 7 ). 選択した被検者と比べてもアイデンティティの確立 J, I自己の個別性の自覚」の得点が有意に低いと いう結果が示されている.したがって登場人物の選択の意味の差異は映画の外部の基準,すなわち心理学的 な特性を査定する信頼性と妥当性を兼ね備えた尺度の得点の差によって保証されたわけである. 要約すると,被検者は,映画の登場人物の中で発達的にみて自分自身と同程度の人物を「好ましい」人物 として選択する傾向があり,発達的に低い被検者にその傾向がきわめて強いことが示されたのである.ここ で「発達的に低しリという限定をつけたのは,エリクソンーマーシアの基準によれば, I 漫才師コンビjは「ア イデンティティの達成」に到達しており, I モラトリアム」のマサル・シンジより発達的に進んでいると言 ってよいのだが,有意差の有無は別として「マサル・シンジ j 選択群は「アイデンティティの確立」・「自己 の個別性の自覚」・「積極型」・「高尚さ J・「男らしさ」のすべての尺度で「漫才師コンビ J選択群より得点 平均が高く,発達の進んだ被検者ほど低得点を示す「醜悪さ」尺度では最も得点が低かった.このことは, 群聞に有意差が見出された 6尺度のすべてにおいて, I マサル・シンジ j 選択群は最も発達的に進んで、いる ことを示したことを意味する.これをどのように説明したらよいのだろうか. 官頭のシーンで「漫才師コンビ j は,満員の客から喝采を浴びながらラメ入りのし、かにも高価そうな衣 装でコントを演じる.彼らは高校ではコンビで暇さえあれば学内のそこかしこで可笑しくないコントを演 じる少年たちだ、ったが,ある日マサルに「お前ら,センスないんだから,大阪でも行って(修行して)こしリ と言われ,大阪の寄席に行く.官頭と最後の「スター」となったコンビと対比するかのように,映画半ばで, 数名の観客しかいないガランとしたホールで,二人が地味な衣装を着てコントを演じているシーンが映し 出され,彼らが地味な努力の積み重ねによって出世したこと示唆される.彼らは漫才師になるという夢を地 道な努力で実現したに違いないのだが,映画では職業選択とか価値選択における「危機 Jという「アイデン ティティ達成J に不可欠な要素が感じられないのである.一方,シンジはボクサー,マサルはヤクザ,と道は 異なるが,この二人は,資質と甘さが伴うとはいえ過去においてはおそらく皆無だ、った努力によって,瞬く 間に各々の世界で頭角を現す.しかし,前者は他人の言動に動かされ易く,後者は我が強いというように,全 く正反対ではあるが,それぞれ性格上の弱点(強さでもあるが)を抱えていて,結局それが命とりになって 転落する.彼らは天才でも秀才でも特別際立つた才能があるわけでもないが,ほんの少しの才能と彼らにし てみれば,生まれてはじめての努力(積極的関与)によって一度は輝いたのである.道を極める(アイデン ティティを確立する)前に性格的な弱さから転落するとはいえ.そうした意味で彼らの生き様は黙って毎日 登校し終日黒板を向いて座っていて終礼と共に何事もなかったかのように帰宅する「普通の」高校生とは 異 な り 危 機 」 と 「 積 極 的 関 与j すなわち「賭け 24J が本質といっても過言ではない. 6. 結論. 大学進学率の上昇に伴い、大学の大衆化が言われて久しいが,本研究の結果の示唆するところに従うな らば,研究に参加,協力した大学生の 48%が,高校を脱落しながらも地道に努力し夢を実現した漫才師志望 のコンビを「好まししリ人物として選んだ.さらに印象的なことに落ちこぼれ」として既成の秩序・価 値規範から逸脱しながらも,自己実現を目指して何事かに賭け,道半ばにして自身の弱さから転落すると, 「まだ始まってねえよ」と,新たな「賭け J を求めるという「危機」的な生き方する若者たちを, 38%の学 生が好まししリ人物として選び,しかも,これらの学生が参加,協力した学生の中で最も発達的に進んで いることが示されたのである.おそらく彼ら自身のどこかに彼らが選んだ若者たちのように生きたいとい う希求が潜んでいるので、あって,そこに「大衆の反逆」を垣間見るようにも思われる. 2 4 . c o m m it( m e n t )は commitoneself t o God (神に己の魂を委ねる)とか c o m m itsuicide(自殺する)などの用法にも窺われるように, 自分自身を退路を断って決定的なところへ追い込むというニュアンスを感じさせるが,このことはパスカル ( B l a i s ePascal)の深遠 な「賭け j に関する思想を想起させる.パスカルにおいては, [ " 賭 けJ ( p a r i e r )と「祈り J ( p r i e r ) とは一つで、あったという(引用文 ) ). 献(15.
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