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ニックリッシュの『経営経済』についての一考察
(その⑥)
牧
浦
健
二
要旨 本稿では,ニックリッシュの経営学の体系を明らかにするため,彼の著『経営経済』 の第3巻を2分割して,その後半(S.661742)を適宜に翻訳しながら,検討する。 本稿では,記帳(Buchhaltung)と計画を取りあげる。そこでは,税務会計ではなくて, 経済上の記帳と計画から,経営の活動が検討される。なお,ニックリッシュは,会計の主体 を,資本供与者とは独立した,企業自体とみなす,「貸借対照表学説」(Bilanztheorie)の代 表的な主張者とみなされてきた。 キーワード ニックリッシュ,経済上の記帳と計画,「貸借対照表学説」(Bilanztheorie)の 主張者 原稿受理日 2018年4月30日Abstract In this treatise, we conducted research on Nicklisch’s book“Business Economy”, in German“Die Betriebswirtschaft”. This paper divide the third volume in two part and traces the rest part(pp.661742). We considered the particular problem of bookkeeping and planning, by discretionary translation. He investigated into the business actions from economic bookkeeping and planning, not from tax accounting. He was regarded as a pioneer of Bilanztheorie. In his idea, the company, not the invester, is concerned with the main accounting constitutions.
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は じ め に
「記帳」(Buchhaltung)と呼ばれる分野で取り扱われる数値は,通常では,実績値であ り,「貸借対照表勘定項目」(Bilanzkonto)として記載される数値に関連したモノに限定 されるのに対して,「計画設定」(Planung)では,それ以外の数値も対象とし,予測値を 対象とする。この点,本稿で検討する,「時間間隙計算」( Zeitraumsrechnung )は,対 象とする数値が関連する期間に限定されているが,数値の体系的な獲得を目指すことによ り,経営のための比較計算に対して, 重要な数値を提供してきた。また,「計画の目的は [経営による]成果(Betriebsertrag)の確保(Sicherung)である」(Nicklisch, H. 1929/32. S.722.)。このため,[経営による]成果が,対象とする全体経営とその肢体的な経営に係 わる,過剰在庫や支払い能力の低下,工場の事故やストライキなど,事業分野に係わる, 季節変動,社会・経済問題に係わる,景気変動,技術革新,法制度の変更と共に,戦争や 関税障壁などが発生すれば,「時間間隙」の長さは調節されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.727728.)。この点,ニックリッシュは,「統計(Statistik)は,予測値と 実際値の比較を体系的に実施し,経営にとり重要な他の数値も把握し,比較のために(ver-gleichend )利用するという課題を有する。対象による区分は,ここでは,初めから,事 前計算と事後計算でより,より多様である。このための基礎は,把握され,使用される, 『他の数値』にある。このため,シェーマ(Schema)は統計に対して全く細編成(Unter-gliederung)を与えない。計算制度のこの部分の評価手続きは規則的な(regelma¨ ßig)比 較であり,これにより,また,比較計算(Vergleichsrechnung)と呼ばれる」(Nicklisch, H. 1929/32. S.583.)と述べるように,統計と計算制度を統一した視点から検討する。ま た,ニックリッシュは,記帳に関連して行われてきた,減価償却(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.586587 Fußnote 1.),共通必要経費(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.604605 Fußnote 1.),記帳の保証手段(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.663664 Fußnote 1.),記帳の仕訳・ 転記手続きの改善(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.721724 Fußnote 1.)などの先行研究 を踏まえた上で,当時としては少数派に属する,独自の立場を提唱した。この点,特に, 「最近の経営経済学は,利益の概念のために必要とは思われないため,必要経費(Aufwand) と原価(Kosten)を区分しない。しかし,これは非常に誤っている。むしろ,成果(Ertrag) の概念を明確に考え,実践で適用するためには,原価と必要経費の厳格な区分が必要であ る。この場合,利益は成果の残余(Ertragsrest)として解釈される」(Nicklisch, H. 1929/32. 880─ ( )─99 S.529.;参照。高田馨1957. 147頁;木村貞子2012. 90頁)とか,「[経営による]労働(Be- triebsarbeit)の経済性を跡付けようとする者は,[経営による]成果の分析の手段を有す る。 これは,必然的に,[経営による]給付に導く。この[経営による]成果の分析は, 価値の関係と容量の関係と,そこから生ずる,過程を明るみに出す。これらは,詳細に, かつ,全体に,作業された,経済性の程度を洞察する,比較を可能にする。利益は,この 後者の成果の部分が他者に渡される( fortgeben )ことにより,生ずる,成果の残余であ る。……成果から利益への行程( Strecke )は,経営での経済性を隠蔽する,成果の分配 (Ertragsverteilung)の関連を,有効にしてきた」(Nicklisch, H. 1929/32. S.535.;Vgl. Scho¨ npflug, F. 1933. S.191.;参照。大橋昭一・奥田幸助訳1970. 170頁)という見解は注 目されるべきである。そして,このような見解の下で,資本と資産の有り高による記帳体 系を主張した。その際,記帳は,継続記帳(laufende Buchhaltung)と〈【筆者補足】定 期記帳と訳されてきたが,不定期に行われる〉期間記帳(periodische Buchhaltung)に 区分し(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.),後者の期間記帳において,[経営による]給 付を,必要経費価値と,この必要経費で消耗された,原価の対価の間での差異から,また, [経営による]成果を, 売上げと, これに含まれている, 原価(外部価値)の補償の間で の差異から生ずることを根拠にした,経営計算を展開した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.528529.)。 本稿では,『経営経済』の第3巻の枠組みに即して, B)時間間隙計算:給付期間計算 として,①記帳と②計画,並びに,C)比較計算:統計を検討する。 B)時間間隙計算:給付期間計算 タイトル(U berschrift)の言葉は,給付予測(Leistungsberechnung)に対する対照¨ (Gegensatz)としての計算制度(Rechnungswesen)についての以前に与えた洞察に従っ て,使用される。しかし,これは,以下では,給付がもはや計算の対象ではないことを示 唆できない。むしろ,これにより,今後は,常に,時間間隙(Zeitraum)の経済上での内 容が問題になることのみが言い表される。もちろん,常に,経済上での経営の活動(Leben) による時間間隙についての内容を考える。予測計算と実際計算(Soll- und Istrechnung) での分離は,ここでは更に,給付予測(Leistungberechnung)でより,より統一的に, かつ, より強く実施され,初めから大きな関連と,計算制度の強く自己で完結した部分 (in sich geschlossene Partie)により把握される(ergreifen)。叙述の経過(Gang)は,
計算を負担し,これら領域を分割して取り扱うべきである。この過程は,とりあえず,記 881
─ ( )─100 帳(Buchhaltung)に本質がある,実際計算(後計算(Nachrechnung)に取り組み,そ の後で,予測計算(前計算(Vorrechnung),計画)の問題を処理しようとする(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.661662.)。 ① 記帳 〈【筆者補足】目次で,①には,「継続記帳(laufende Buchhaltung)での関連:時間上, 実物上での関連,勘定,有り高計算,必要経費・売上げ計算,資金計算(Geldrechnung), 共同体計算のような勘定のグループ。期間記帳(periodische Buchhaltung)での関連: 棚卸し表,有り高貸借対照表,期間値貸借対照表(Bilanz der Periodenwerte); 特殊問 題 :[コンツェルン貸借対照表での]統括,あるいは,分割,税務貸借対照表。記帳(Buchhal-tung)の方法」という補足が付いている〉。 継続記帳での関連 ここでは,とにかく,価値の運動の経過( Gang )を自然に反映する,記帳,つまり, 複式記帳の形式について考える(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.)。 その際,役割を果たす,関連では,継続記帳(laufende Buchhaltung)の形式と〈【筆 者補足】定期記帳と訳されてきたが,不定期に行われる〉期間記帳(periodische Buchhaltung) の形式を区分すべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.)。 継続記帳の叙述では,〈【筆者補足】仕訳と転記と呼ばれるが〉, そこで加工される, 資 料と,このような資料の処理(Ordnung),記載(Aufzeichnung)と加工が問題になる。 その際,系列と順序の処理原則(Ordnungsprinzip der Folge und der Reihe)が役割を 果たす(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.)。系列の意義は資料の年代順の処理に現れ, 順序のそれは,実物上での資料グループが相互に作成されるより,非常に多くの計算の並 列(Nebeneinander)をもたらす,実物上での編成(sachliche Gliederung)により代表 される。その際,もちろん,順序の概念は,純粋に適用されるのではない。というのは, 並列は,内部の結合( Verbundenheit ),有機的な関連である,資料グループの相互の内 部の関係(Verha¨ ltnis)を再現しないからである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.)。 これは,このような有機的なモノ(Organische)から[記帳のための]資料の加工のため の規則が,有り高貸借対照表の方針でも,期間値貸借対照表(Bilanz der Periodenwerte) の方針でも,生ずるよりも,更に強く強調されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662.)。
─ ( )─101 資料は,証拠(Belege)により描写される,価値から構成される。このような描写は出 来事の経過(Gang)から生ずる。このような基礎(Unterlage)が必然的に発生しないで, 価値が形成されたり,あるいは,運動したりする所では,紙,あるいは,表,あるいは, 記帳にとり適切な,他の形式で保証を与える記載(Aufzeichnung)により空白(Lu¨ cke)は 埋められる(ausfu¨ llen)べきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.662663.)。 )時間上,実物上での処理 時間上での処理(zeiliche Ordnung)は,価値が,相互に生ずるように,記載されるこ とにより,達成される。この価値の時間上でのグループ化は,期間(Periode),本来の事 業期間と,このような事業期間の肢体である,より短期の時期(Zeitabschnitt)で行われ る。記入( Eintragung )〈【筆者補足】つまり,日計記帳と仕訳〉は,その関連性と完全 性が特別に保証された,帳簿とバラの印刷紙(loser Bogen),紙片,あるいは,カードで 行われる。ここでは,特に,その後更に転記されうる(u¨ bertragen ),あるいは,初めか ら,転記の目的のために,複写される(durchschreiben),基本記入(Grundeintragung) が問題になる。転記,あるいは,複写,あるいは,他の使用可能な様式で,基本記入から 誘導される,記入は,既に,結局,時間上での処理を中止するのではなくて,むしろ,ま ず第一に,実物上での(sachlich)〈【筆者補足】処理〉に役に立つ。期間内での個々の基 本記入が誘導された記帳と関連付けられる所〈【筆者補足】つまり,仕訳と転記〉では, 記入順序は廃止され,時期による,実物上で関連した勘定のグループ化のみが堅持され, このような関係が更により強く現れる。ここでは,複写方法での,集合仕訳帳(Sammeljournal) と,[グループのための]紙片とカード(Grupenblatt oder -karte)の意義を指摘すべき である。通常では,しかも,基本記入自体がある程度で,既に実物上で処理され,このた め,時間上での処理によれば,実物のグループでの価値の順序による記入と,時期による 区分のみが残されている。すなわち,メモ,現金帳,フランス式の仕訳帳(franzo¨ sische Journale),表形式の台帳(Grundbuch)である。しかし,記帳では,総ての種類の実物 上でのグループ化と関係して,期間の区分は行われる。そこから,特に,上記で使用され た,「時間間隙計算」(Zeitraumrechnung)というタイトルに対する資格(Berechtigung) は誘導される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.663665.)。 883 この点,ニックリッシュは,「保証の手段は,1 .総ての記帳を実行し,不当な記帳を企てない こと,2 .正しい勘定に記帳されること,3 .記帳される金額が正しく,後からの変更が持ち出さ れないこと,4 .どのような記帳のための資料も喪失しないことである」(Nicklisch, H. 1929/32. S.663 Fußnote 1.)と補足している。
─ ( )─102 )勘定 〈【筆者補足】また,仕訳帳への転記が行われる〉時間間隙内では,実物上での処理(sachliche Ordnung)が決定的である。そこでは,最小の組織単位は,……勘定(Konto)である。 記帳が導かれる,元帳(Hauptbuch)が総ての勘定を一緒に形成する(zusammenbilden) (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.665.)。 〈【筆者補足】ところで〉, 勘定の形成の過程にとり, 経営の価値の運動が,計算上で, ある経営から他の経営,ある工場(Werkstatte)から他の工場,ある事務所から他の事務 所,ある作業場(Arbeitsstelle)から他の作業場への,容量(Menge)と価値の流入と流 出の記載に基づいて,完全に叙述することが重要である。そして,流入と流出は,流入さ れたり,流出された,あるいは,流入できたり,流出できる,対象の手段(Mittel)以外 には,相互に関係付けられない。 そこで, このような〈【筆者補足】流入と流出〉が注目 される。このため,勘定は必然的に有り高勘定(Bestandskonto)として形成される。経 営の活動での他の関係は, 勘定のグループ化により初めて表されうる( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.665.;参照。上野清貴1996. 2829頁)。 そこで,〈【筆者補足】第一命題として〉,「総ての勘定は有り高勘定であることが明らか になる」(Nicklisch, H. 1929/32. S.665.;Nicklisch, H. 1925. S.276.;参照。奥山茂1991. 7980頁)。 「この命題に,同様に更に,第二命題が追加されるべきである。 すなわち, 資産と資本 の有り高のみが存在するため,資産と資本の有り高勘定のみが存在しうる。すなわち,2 つの勘定の系列〈【筆者補足】が存在し〉,その他は全くない」(Nicklisch, H. 1929/32. S. 665.;Vgl.Nicklisch, H. 1925. S.276 u. S.70.;Nicklisch, H. 1912. S.215.;参照。市原季 一1954. 157頁;高田正淳1963. 72頁;奥山茂1991. 81頁;上野清貴1996. 29頁;五十嵐邦正 1996. 130頁)。 初めの命題については,現金勘定,商品勘定,売掛金勘定( Debitorenkonto )のよう な,勘定が,有り高勘定として共通して認識されることに注目すべきである。しかし,同 様には,報酬勘定,賃金勘定,共通必要経費勘定( Gemeinaufwandskonto )(出費勘定 (Unkostenkonto))は〈【筆者補足】有り高勘定として認識されない〉。だが,また,これ ら勘定により有り高は清算される( verrechnen )。その際,〈【筆者補足】間接費(参照。 高田馨1957. 156頁),製間接費(参照。高田正淳1963. 78頁),一般費用(参照。上野清貴 1996. 39頁)などと訳されてきたが〉,共通必要経費勘定で通常当てはまるように,実物価 値,資材が問題にならない時にも,給付価値に関するこのような有り高が問題になる。運 884
─ ( )─103 賃勘定,あるいは,郵便料金勘定( Portokonto )では似ている。すなわち,支出は現金 で追跡されるべきである。これに対して,両勘定での流入側は鉄道と郵便の給付の価値を 〈【筆者補足】資産の増加と認識して〉受け入れる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.666.; 参照。高田正淳1963. 72頁;上野清貴1996. 29頁)。従って,貸借対照表勘定(Bilanzkonto) は有り高以外のモノを含まない。もちろん,この貸借対照表勘定は,資産の有り高と資本 の有り高を内容とし,しかも完全であるため,これら有り高は均衡する( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.666.)。 売上高( Umsatz )以外には何も含まない,勘定は,〈【筆者補足】資産の減少であるた め〉,両有り高系列の1つに属する。これらを越えて転換された有り高は通常では資産の 一部分であるため,この点で,資産有り高の系列に対する帰属性を主張しうる。これらは, 総ての販売のケースで,同一の価値額で負担され,認識されるため,通常では,それ自体 は有り高として呈示されない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.666.)。〈【筆者補足】このた め,後記の計算例では,相手勘定として,売掛金(Debitoren)が設定される〉。 「今までの解説は, また, 既に,2 つの勘定の系列のみ,すなわち, 資産有り高勘定と 資本有り高勘定が存在するという,2 つの命題を共に取り扱った。多くの経営経済学者は, 更に,第三の系列,すなわち,成果勘定(Erfolgskonto)を認知する。しかし,これは, 利益が,だが,新規資本(Neukapital)であるため,誤りである」(Nicklisch, H. 1929/32. S.666667;Vgl.Nicklisch, H. 1925. S.276.;参照。高田正淳1963. 72頁;上野清貴1996. 31頁)。 更に,1 つの種類の勘定が特に扱われるべきである。特に目立つ,これらの例として, 当座勘定(Kontokorrentkonto)があげられるが,売掛金と買掛金のための金額を含み, これらを相互に清算する。そこでは,資産有り高と資本有り高が含まれる。清算は,両側 での有り高計算を偽装する(verschleiern)。混合して処理される資産有り高勘定(gemischt gefu¨ hrtes Vermo¨ gensbestandskonto),特に,商品有り高勘定と有価証券勘定での状況は
885 この,「貸借対照表勘定(Bilanzkonto)は,資産の有り高と資本の有り高を含み,しかも完全 であるため,これら有り高は均衡する」(Nicklisch, H. 1929/32. S.666.)という均衡体系性は, 「企業内では,資産と資本は同一物に対する2つの表示である」(Nicklisch, H. 1925. S.64.;参 照。上野清貴1996. 27頁 49頁)という命題に基づくものであり,この命題から,資産=資本とい う貸借対照表等式が引き出されている(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.375.;参照。笠井昭次1994. 247頁;上野清貴1996. 42頁)。 「多くの経営経済学者は,更に,第三の系列,すなわち,成果勘定を認知する。しかし,これ は,利益が,だが,新規資本(Neukapital)であるため,誤りである」(Nicklisch, H. 1929/32. S.666667.)という主張は,収益勘定,つまり,収益と費用による勘定を認めず,これらの発生 は,その都度,資産の増減として認識し,資産勘定に計上し,決済時に実際の資産有り高と比べ て,資本勘定での自己資本の増減として認識し,記載する,ニックリッシュ流の記帳原則を示唆 している(参照。上野清貴1996. 4346頁)。
─ ( )─104 完全に同様である。これらは, 資産有り高と,資本有り高である,利益を含む。 損失の ケースでは,これらは資本有り高の修正を含む(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667.)。 このような勘定の詳細な解明のためには,とりあえず,継続記帳(laufende Buchhaltung) により価値の運動を研究することが必要である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667.)。こ のような価値の運動は開始貸借対照表(Ero¨ ffnungbilanz )から始まる。これは,資産勘 定 で の 1 つ の 側 と, 資 本 勘 定 の 他 の 側 で 処 理 さ れ る。 す な わ ち, 対 照 的 に(gegen- sa¨ tzlich)〈【筆者補足】処理されるのは〉,資産勘定と資本勘定が貸借対照表では相互に対 比されるからである。そこで,資産額が記帳で勘定の借り方に導入される時には,資本額 に対しては,その勘定の貸し方への手段(Weg)が採用されなければならない。これと共 に, 流出のためには, 資産勘定では貸し方,資本勘定では借り方が明確に確定される (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667.)。また,全体を締め切るために,有り高貸借対照表 に転記されること以外に可能性はない。今や,このようにして,貸借対照表の両側と,こ れと共に,貸借対照表が必然的に常に繰り返して獲得される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667.;参照。上野清貴1996. 3132頁)。これは,以下のことのため,常に,堅持されるべ きである。すなわち, 資産勘定での流入=借り方 資産勘定での流出=貸し方 資本勘定での流入=貸し方 資本勘定での流出=借り方 後者は,自己資本の勘定も,他人資本の勘定もそうである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667.;Nicklisch, H. 1925. S.281.;参照。上野清貴1996. 32頁)。 混合有り高勘定(gemischtes Bestandskonto)の取り扱いにとって,とりわけ,決算 において,2 つの規模,すなわち,差額( Saldo )と有り高が決定的に重要である。差額 は他の経営経済学者により,各勘定の両側の差異とみなされている。これはわれわれの問 題には全く不充分で,正につまらないモノである。このため,われわれは,この本の第一 版『一般商事経営学』から,そして,それ以前から,他の過程を進んできた。最も身近な 命題によれば,既にこれに戻るべきである。 有り高の問題では, 読者がこれまで慎重に 従っておれば,彼には困難はもたらさない。彼は,このような勘定に,(計算上では),資 産有り高も,また,資本有り高も含まれていることを知っている。個々の混合勘定では資 産有り高と資本有り高が対向している。総てのその他の勘定は均衡している(ausgleichen)。 そこで,差額が両有り高の差異に等しいことは明らかである。利益のケースでは,決済以 886
─ ( )─105 前に借り方側が優位である時には, 資産有り高は〈【筆者補足】借り方〉差額だけより大 きいべきである。これに反して,貸し方側が優位であれば,資本有り高,つまり,損失は, 〈【筆者補足】貸し方〉差額だけより大きいべきである。その都度,資産有り高,あるいは, 資本有り高に対する差額の補完は,他の有り高を形成する。 資産有り高(Bv)=借り方差額(SS)+資本有り高(Bk) 資本有り高(Bk)=貸し方差額(HS)+資産有り高(Bv) これは,また,利益〈【筆者補足】つまり,資本有り高(Bk)〉,あるいは,資産有り高 (Bv)が全く存在しないケース,すなわち,資産有り高(Bv)=借り方差額(SS)+0,資 本有り高(Bk)=貸し方差額(HS)+0のケースに対しても妥当する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.667668.)。 損失のケースでは,マイナスの規模で計算される。すなわち, 資産有り高(Bv)=借り方差額(SS)+資本有り高(-Bk), 資産有り高(Bv)+資本有り高(Bk)=借り方差額(SS) このようなケースでは貸し方差額(HS)は可能でない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.668.)。 決算の過程( Lauf )では,このような勘定に対して,差額と資産有り高( Bv )が知ら れている。 すなわち,元帳と棚卸し表からである。この場合,第三の規模,資本有り高 (Bk=x)を計算する,すなわち,x=資産有り高(Bv)-借り方差額(SS)は困難ではな い。あるいは,上記で既に確認したように,他のケースでは,x=貸し方差額(HS)+資 産有り高( Bv )である。あるいは,損失のケースでは,x=借り方差額( SS )-資産有り 高(Bv)である。算出された,資本額は新規資本(Neukapital)で,古い〈【筆者補足】 資本額, つまり,期首資本額〉に対するこのような追加資本として〈【筆者補足】算定さ れる〉。これは, 借り方側を上回る, 混合有り高勘定から〈【筆者補足】算定され〉, 資本 勘定で処理される。総てのこのような新規資本有り高が処理される,一般勘定(Generalkonto) は,損益勘定(Gewinn- und Verlustkonto)である。ここでは,このような新規資本に 係わる全体の有り高が算定される。上記で使用された表示が,また,混合有り高勘定,「当 座勘定」(Kontokorrentkonto)に対しても妥当することを指摘することを忘れるべきで ない。ただ,そこでは,資本有り高( Bk )は,利益の意味での新規資本ではない。読者 は,〈【筆者補足】たとえば,売掛金と買掛金を均衡させる方針では〉, 差額と売掛金有り 高から,買掛金の金額,買掛金有り高と差額から,売掛金の金額を計算することが困難で ないことを自ら認める(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.668669 u. S.469471.)。 理論と実践,とりわけ,前者の理論では,混合有り高勘定をできる限り分解する,傾向 887
─ ( )─106 が存在する。これは,個々の事業のケースでは,利益,あるいは,損失が,直接,成果勘 定で処理されることにより行われ,このため,資産勘定での流出する容量はその流入価値 で表される。そこで,手形交換での割引額,手数料額と印紙税額は,手形勘定では考慮さ れずに,むしろ,割引勘定,あるいは,利子勘定,手数料勘定と出費勘定(Unkostenkonto) の貸し方に記入されるか,あるいは,負担される。この場合,手形勘定は,借り方と貸し 方では名目額で呈示され,その差額は,手形有り高の名目額の合計〈【筆者補足】の差額〉 に等しい。しかし,目標は,この総額が有り高の有効価値( Effecktivwert )に等しくな いため,更に,価値の是正が企てられるべきである限り,完全に達成される。また,有価 証券計算(Effektenrechnung)の利子額,手数料額,仲介額(Courtagebetrage),印紙 税額もこのように取り扱われ,多数の会社でもそうなっている。この場合,しかし,有価 証券勘定は,更に相場利益(Kursgewinn)を証明し(nachweisen),常に,「正味」で確 認されるのではない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.669.)。 商品勘定の内,商品価値による計算で特別に実行される勘定(手数料など)は常に簡単 に回避され,成果勘定(Erfolgkonto)で行われる。これを完全に純粋に処理することは またここでは難しい(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.669.)。 混合勘定を純粋に処理するという課題は,そこでの財の支出価値を継続して算定するこ となしには,解決されえない。このための試みは継続して行われてきた。このような試み は,有価証券の利益,商品の利益,あるいは,その他の特別な利益を,売却された財を, 支出価値で, 本来の資産勘定の借り方側で受け入れ,売却価値で放出する, 売上高勘定 (Umsatzkonto)の支援により示すことから始められる。このような勘定への引き継ぎは, 財が企業から離れる時に,初めて行われる。上記で述べた,利子額と手数料額がこの売上 高勘定で現れるのかは,総ての控除,あるいは,追加を考慮した,計算の最終額,あるい は, このような勘定でこれらを考慮しないで流出価値で記帳されるのかに依存する。[製 造工場のための]記帳管理(Fabrikbuchfu¨ hrung)では,商品勘定のためのこのような解 体が実施されている。すなわち, 製造勘定=[経営のための]勘定( Betriebskonto )(まだ完全な工業製品でないモノに 対する,有り高勘定) 工業製品勘定=資産有り高勘定 売却勘定(Verkaufkonto)=正に説明された意味での成果勘定(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.669670.)。 また,初めから混合して処理されない,有り高勘定は簡単にはこのようにはならない。 888
─ ( )─107 このような純粋な資産有り高勘定は,その差額で,常に帳簿上での有り高を表しうる。す なわち,借り方差額(SS)=資産有り高(Bv)。棚卸し表のための,在庫されている有り高 の評価で,帳簿上での価値と異なる,有り高価値が算定される時には,この純粋な有り高 勘定は〈【筆者補足】棚卸し表のために評価された〉この有り高価値に優先し, 勘定は, 今や,単なる資産勘定だけではなくて,むしろ同時に資本勘定であり,資本の価値の有り 高の削減,あるいは,増加を示唆する,差異まで,資本勘定の負担,あるいは,有利に, 調節される。これは,特に,差異が不回避な程度を越える時に,妥当する。このような関 連では,これら秘密の準備金が,また秘密にされる時には,資産有り高勘定を常に混合有 り高勘定にするため,記帳の立場から秘密準備金が語られうる(besprechen)。ここでは, 純粋な〈【筆者補足】有り高〉への転換, 正に秘密準備金である, その資本有り高の分離 のためには,またとりあえず,必要な資産有り高の新たな正しい評価が,この場合,これ により,上記で示唆されたように,優先されうる。しかし,設備資産(Anlagevermo¨ gen) の勘定は,これについて継続して記帳される,減耗により工業製品に移転される価値が問 題になる限り,これには属さない。ここでは,有り高価値の新しい算定が評価により行わ れる時には,混合有り高勘定の外観(Schein)が呼び起こされる(erwecken)。この場合, 資本の増加,あるいは,減少として現れる, 古い〈【筆者補足】期首の〉有り高価値に対 する差異が生ずる。しかし,常にまた,このような差異では,消耗する価値の金額が含ま れる。これが問題になる限り,資本が増減しないで,むしろ,同一である。というのは, このような価値は,資産の部分,つまり,設備資産から,他のモノ,たいていは,半製品, あるいは,完成した[経営による]給付に,移転されるのみであるからである。減耗価値 は,これによれば,資産有り高の流出(Ausgang)を示唆し,新規資本の流入(Eingang) を示唆しない。これは, それ自体では,〈【筆者補足】価値の移転であり〉, 純粋な資産有 り高勘定から,この場合再び分離されるべき,混合資産勘定が処理されることには,全く 貢献しない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.670671)。 勘定は,しかも,総て有り高勘定である。しかし,これらは総て同一の序列( Rang ) を有しない。期間値貸借対照表(Bilanz der Periodenwerte)と有り高貸借対照表に対す るその関係が,これらにとり決定的である。他の関連と同様に,ある関連にとり,第一序 列の勘定は,その金額が,決算では,直接,貸借対照表に与える,勘定である。その他の 勘定は,第二位の序列,あるいは,更に低い序列である,このような勘定は,自らの金額 を,第一序列の勘定により,貸借対照表に入られる。また,このような第一位の勘定は貸 借対照表勘定(Bilanzposten)という名称が与えられる。更に,期間値貸借対照表にとり 889
─ ( )─108 第一位である(erstrangig)勘定が,後者の有り高貸借対照表にとり,それ自体また,第 一位でない時には,有り高貸借対照表では低い序列のみであることが追加される。混合し て処理される勘定で行われうるように,後者の低い序列は,それにもかかわらず(nur bei allen ),損益計算での,必要経費,あるいは,利益と損失だけではなくて,むしろまた, 有り高貸借対照表に転記される,勘定に与えられうる。逆に,期間貸借対照表(Periodenbilanz) の立場からは,有り高貸借対照表の勘定は,その期間貸借対照表に対してそれ自体第一の 序列でない時には,第一の序列を有しない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.671.)。
「期間値貸借対照表(Bilanz der Periodenwerte)は,通常の記帳では,利益勘定と損 失勘定で代表される」(Nicklisch, H. 1929/32. S.671.;参照。五十嵐邦正1996. 367頁)。 これら利益勘定と損失勘定が有り高貸借対照表との関連で第一位である(erstrangig)の かは, 企業の[法律上での]形態により影響される。資本会社では,これ〈【筆者補足】 つまり,損益勘定〉を,法律上で決算義務があり( bilanzpflichtig ),第一位とする。個 人商人と人的会社では,これ〈【筆者補足】つまり,損益勘定〉は, 資本勘定に従う,特 殊勘定として現れる。利益勘定と損失勘定の下位勘定( Unterkonto )は更に低い序列で ある。これらは,同時に,内容では,更に特殊である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.671.)。
しかし,一般勘定と特殊勘定(Greneral- und Spezialkonto)の区分は,このような密 接な関連にも係わらず,論議された序列段階とは一致しない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.671.)。このため,非常に良く,1 つの必要経費の種類に対して,全体の必要経費の立場 からは,同時に,特殊勘定という呼称を受ける,1 つの一般勘定が存在する。特殊勘定は, あるケースでは,貸借対照表に直接引き渡され,従って,第一の序列であるのに対して, 他のケースでは,決算上で正当で,義務がある,一般勘定の下位勘定( Unterkonto )と して処理される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.672.)。 勘定の開設( Kontierung )は,個々の経営では,専ら,一般勘定か,あるいは,特殊 勘定に向けられるのではなくて, むしろ, 要求により,後者か前者のいずれか〈【筆者補 足】に向けられる〉。様々な可能性がある,組み合わせが生ずる。すなわち, 1.記帳の資料の重要な部分に対してのみ特殊勘定が配置され,残りに対しては一般勘定 〈【筆者補足】が配置される〉。 2.一般勘定が配置され, ―正に,必要により―2段階とそれ以上の段階で処理され る。 a)主要区分(Hauptspalt)の価値の,同一側の特殊区分(Sonderspalt)への分解のた め。 890
─ ( )─109 b)元帳での容量の証明のため。これが実践では通常行われる,例として,海外の顧客で の銀行の当店勘定(Nostrokonto)があげられる。外貨の区分(Spalt)は容量区分(Men-genspalt)とみなされうる。もちろん,これは,このようなケースでは,制限を付けての み成立する。 3.その内容が分解して証明されるべきである,一般勘定に対して,特殊勘定は,いずれ の項目(Posten)によりまず処理されたかという,下位勘定(Unterkonto)として,配 置される。これら特殊勘定は一般勘定により纏められ,これにより,その金額を,総額, あるいは,差額当たりで,後者の一般勘定に引き継がれる。 下位勘定は,a)元帳,b)元帳に先行するモノ(Vorhauptbuch)〈【筆者補足】たと えば,仕訳帳〉で据え付けられる。 4.また,一般勘定の内容は補助簿で分解されうる。最良の例は,元帳の当座勘定,ある いは,当座取引帳(Kontokorrentbuch)の,債権と債務の差引勘定(Skontro)への分 解である。その内容が分解を許可する,総ての元帳勘定に対して,このような分解は補助 帳簿で行われる。補助帳簿での同様な個別計算(Einzelrechnung)は,下位単位(Untereinheit) で統合されうるが,これは経営の状況の認識にしばしば役に立つであろう。これは,地理 上,あるいは,事業部門により,区分されうる,当座勘定帳簿に妥当する。しかしまた, 他の補助帳簿に対してもである。この場合,これは,もちろん,下位単位が獲得されうる, 他の関係である。 5.一般勘定の内容は,また,区分記帳(Gliedbuchhaltung)で特殊化される。これは, (たとえば, 工業経営での)ケースの特殊な[経営のための]記帳で妥当する。このため には,文献で見られるが,更に異なる可能性が存在する。 6.記帳が記帳材料の分解を充分に配慮しない時には,このような分解は,必要である限 り,他で行われる(leisten)。すなわち,統計家,あるいは,企業の統計上での区分によっ てである― (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.672673.)。 )特殊問題:統括,あるいは,分割 勘定についての今までの解説は,記帳管理の機構(Buchfu¨ hrungsmechanismus)が頼 891
ニックリッシュによる一般勘定と特殊勘定(Greneral- und Spezialkonto)の説明は,かなり 詳細なモノであるが,この背景には,彼が,成果勘定を廃して,資産と資本の二系列の勘定で, 価値の運動を把握するため,このような説明も必要であると考えたことがある。なお,後述する 数例では,第一位の一般勘定は有り高貸借対照表に採用される勘定とみなされる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.682687 u. S.677.)。
─ ( )─110 る,総ての区別(Unterscheidung)を与える。これら区別は,今や,統括(Zentraliserung), あるいは,分割( Dezentralisierung )の必要性に従うこと,誤った分野( Fehlerfeld ) を形成すること,決算を実施することを可能にする(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.673.)。 分割の問題は,経営が,活動するために,編成される(gliedern)べきであることと, 記帳(Buchhaltung)はこのような編成に従えるべきであることに起因している。全体の 経営を形成する,工場経営と商事経営ではそうである。所属する経営が密接に充分に相互 に結び付いている限り,子会社経営でも,コンツェルンでもそうである。また,秘密記帳 (Geheimbuchhaltung)の完全に異なって配置されるケースも,このように計算されるべ きである。工場記帳と商事記帳,子会社記帳と統括記帳( Zentralbuchhaltung )〈【筆者 補足】つまり, 連結記帳〉, 秘密記帳と開示記帳は, より大きな全体の領域で相互に対比 されるが,このような記帳は,肢体を相互に結び付ける能力があるが,これは再び勘定の 形式でのみ行われうる。同時に[接合される]勘定(Abgliederungskonto)である,結 合勘定(Verbindungskonto)は,ここに,姿を現す。すなわち,〈【筆者補足】たとえば, 販売会社と完全受託製造会社が統合されれば〉,工場記帳は,自らの勘定により, 商事記 帳で,代理し(vertreten),後者の商事記帳は,自らの勘定により,前者の工場記帳で, 代理すべきである。両勘定は内容上では完全に対応しており,他の記帳が貸し方で有する, 価値を,ある記帳は借り方で有するが,逆もある。総ての勘定は,同時に,他の肢体に対 する,ある肢体の流入と流出の入り口である。「対応する勘定」(korespondierende Konten) という名称は,このため,むしろ,これらに対して自ら見付けさせる,最良の専門的な呼 称である。そこで, 工業記帳では,記帳の分割の他のケースでも, ここでのようである (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.673674.)。 もちろん,対応する勘定なしに目標に到達することを熱望している,形式もある。しか し,これらは,真の分割とは呼べない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.674.)。 誤った分野の形成( Fehlerfeldbildung )の手段は,帳簿と同様に,勘定である。誤っ た領域は,記帳では,誤りが,他のこのような肢体に独立した分野が探求され,見付けら れうる,肢体である。たとえ,記帳の総ての構成体が他の構成体から区分されるとしても, これは,だが常に,誤った領域が無いことを示唆しない。このためには,境界が,これに 基づいて,流入するモノ,流出するモノ,総てが,正当で,適時に流入,流出するのかが 調べられうることが必要である。分野が,過多,あるいは,過小に含まない,あるいは, 相応しいのかが調べられるべきである。総ての分野はそれ自体で調子を合わせられるべき である。このためには,比較の可能性が必要である。これは,かねて,体系的な記帳管理 892
─ ( )─111
(systematische Buchfu¨ hrung)で,総ての期間で,総ての流入の総額が,総ての流出の 総額に等しいべきであることにより与えられた。更に,また記帳(Buchhaltung)では, 総ての時点で,総ての資産有り高価値の総額が,総ての資本有り高価値の総額に等しいこ とにより,〈【筆者補足】与えられる〉。最後に,時々,個々の帳簿の有り高(Buchbestand) が実際の有り高と,これらが一致するのか,否か,そして,どの程度一致しないのかを確 定するために,比較でき,比較されるべきである。〈【筆者補足】つまり,試算されるべき である〉(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.674.)。 このような本来の(natu¨ rlich)比較可能性以外に,人為的な比較可能性を創造できる。 総価値の流入と流出,資本有り高と資産有り高の総額の間での,あげられた,有名な数値 関係は,時々,記帳の全体の分野を締め切ることを可能にするが,しかも,2 段階でであ る。 すなわち,大雑把な(実地でない),流入と流出の比較, あるいは,完全な(実地で の), 資産有り高と資本有り高の比較である。しかし,後者は,常に,実際に存在するモ ノと帳簿有り高を比較し,必要な場合に,修正されることを前提にする。この前提に一致 しない,決算(Abschluß)は,中間決算(Zwischenabschluß)とみなされるべきである。 これらは,大雑把(roh)と完全な決算の間にある,半大雑把(halbroh),あるいは,4 分の3の大雑把(drei-viertelroh),あるいは,不完全な決算と呼ばれるうる。月末決算, 半期決算はこのような形式を有し,例外のケースでは,また更に年度末決算である。日計 貸借対照表( Tagesbilanz )は,これらが,可能でかつ有益,あるいは,完全に必要なた め,行われる所では,大雑把である。大雑把で,不完全な決算は,誤りを探し,また,見 付け,訂正されうる,[期間の]分野(Zeitfelder)を形成する。時間間隙毎の計算の進行 (Fortschreit)では,この場合,常に,最後の,大雑把に決算されるべきモノのみが考慮 される必要がある。これは,完全な決算にとり大きな意義がある。すなわち,全体の期間 に亙った誤りの,不確実な,時間の掛かる探索は回避される。もちろん,予めまた実際に 総ての誤りが見付けられるのかは,全く(durchaus)分からない。在庫有り高が帳簿有り 高と一致するのかが確定されない限り,誤りのための隠れ場所(Schlupwinkel)は残る。 しかも,明らかに,不完全な決算での利益と損失の一時的な確定はまたこのような誤りの 追い出しを共に導く。しかし,有り高の比較と訂正による,完全な決算はここで初めて充 分な確実性を与える。読者は,主張されたことの具体化のために,既に,記帳の証拠が, 容量でも,誤っていたケースを設定できる。商品の証拠が問題にされるべきである。大雑 把な貸借対照表はこのような誤りを明るみに出さないし,また,不完全なモノもできない が,在庫有り高が,かなり,人目に付く程に,帳簿有り高と乖離している程に大きくない 893
─ ( )─112
時には,書類による容量帳簿(Mengenbuch nach den Beleg)は正確に記帳されている。 というのは,商品勘定での不完全な決算で,売上高(Umsatz)と利益の関係でズレ(Ver-schiebung )が生ずるが,このズレは,事業過程の全体の印象に矛盾し,専門知識のある 観察者に,―ここで示したように,―本来の記帳の誤りであることは全くもたらさな いが,だが,記帳での誤りである,誤りが存在することを推測させる。この誤りは,この 場合,帳簿有り高と在庫有り高との比較により明らかにされる。この中では,既に,常に 最初に,完全な決算が,誤りの可能性に対して,充分な(ausreichende)確実性を呈示す ることが示される。ここでは, このような限界を上回る,誤りが存在するため,「充分な モノ」が設定される。読者は,金額が,借り方では正しいが,しかし,商品Aの勘定では なくて,むしろBの勘定であるような,誤った勘定に投入されたことを考える。更に,読 者は,「実物価値」としてではなくて,むしろ, 給付価値,移送給付の価値として流入す る,ある価値が問題になることを仮定する。結局,間違った帳簿での在庫記帳管理(Lagerbuch- fu¨ hrung )が先導する( vorangehen )か,あるいは,従わさせられ,この金額は,商品 勘定Bの価値の間隙(Wertspalt)に記入された。ここでは,大雑把な貸借対照表と,不 完全な決算は全く機能せず,誤って記帳される金額が,記帳により惹き起こされる,売上 高と利益の間での関係でのズレが,慎重な目に気づかれない程,大きくない時には,完全 な決算がより良く有能であるのかは分からない(ungewiß)。しかし,この場合でも,誤り は,また既に,不完全な決算でも見付けられうる。最後に,しかし更にまたここでも,帳 簿有り高と在庫有り高の比較が在庫記帳の検査をもたらし,そこで誤りが見付けられる, 可能性がある。既に示したように,誤って記帳される価値で,同時に,容量が問題になる 限り,もちろん,誤りの発見に対するケースは異なっている(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.674676.)。 総ての種類の勘定の有り高と実際の有り高の比較が,独立して,誤った分野(Fehlerfeld) の形成のために利用される時には,[価値の]分野(Wertfeld)が生ずる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.676.)。しかし,正に[期間の]分野(Zeitfeld)が常に[価値の]分野で あるように,これら分野がその時間間隙の記帳の全体の内容を対象にするため,[価値の] 分野は同時に常に[期間の]分野である。[期間の]分野で期間の境界(Zeitgrenz)が設 894 ここでは,ニックリッシュは,実地棚卸しなどによる完全な決算は,時間と手間が掛かるため, 頻繁には行えないが,継続記帳までの,帳簿による数値を用いた,大雑把な決算でも,数値の異 常な変動により,誤りを見付けられる可能性があると主張したが,完全な決算に比べて,大雑把 な決算では,誤りを発生させた行為との時間間隙が短いことや,貸借対照表項目を支援する,下 位勘定(Unterkonto)により,区分されて記帳されているため,誤った分野(Fehlerfeld)を 見付けやすいと考えられる。
─ ( )─113 定され,その期間の境界に係わる記帳が簡略化して(summarisch)コントロールされる か,あるいは,形式上で決算されるのかに対して,[価値の]分野では, もちろん,期間 の境界を無視することなしに,問題になる,価値に従って区切られることに,差異の本質 はある。期間による区分は,繰り返して,共通した区分として,期間の境界の内部で作用 するモノとして示される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.676.)。 その他,記帳には,また,他の種類の誤った分野が存在する。〈【筆者補足】たとえば〉, 商品購入帳が,在庫帳の流入側による編成(Zusammenstellung)と対比され,正に,元 帳の金額の総計に取り入れられる〈【筆者補足】ケースである〉。この場合,ほぼ,1 つの 勘定の側から1つの誤った分野が形成されるのではなくて,むしろ,この勘定に対しては, 項目は勘定では誤りがないとして始める。販売帳に対して,検査のために,在庫帳の流出 側からの編成が対比されうる。これは,容量額以外に,また,価値額を内容とする,有り 高のための補助帳簿(Nebenbuch)に記載される時には,総ての有り高で起こりうる。そ の際には,「出費」勘定(“Unkosten”skonto)と比べるように,元帳(Grundbuch)か らの決算報告が必要になりうる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.676677.)。 誤った分野の形成の多様な可能性の下には,企業が断念すべき,分野もまたある。これ には,取引き相手(Gescha¨ ftsfreude)の協力が属する。というのは,彼らが勘定の決算報 告(Kontoauszug)を受け取る時,このようなモノでの誤りを更に調査すべきであるとい う規則が必要とされるためである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.677.)。 記帳の機構(Buchhaltungsmechanismus)は2つの勘定の系列に基づいて機能してい る。総ての系列の第一位の序列の勘定は,下位勘定( Unterkonto )がこれらに転記し, これら自体は決算の用意をすることにより,資産と資本として相互に比較する,有り高貸 借対照表でのその有り高を与える(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.677.)。〈【筆者補足】こ のような〉期末有り高は,常に,相互に同じである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.677.; 参照。奥山茂1991. 96頁)。
期間値貸借対照表(Bilanz der Periodenwerte)は,有り高貸借対照表より前に,作成 され,資本側での有り高貸借対照表の勘定がその差額を初めて完全にするために,調整さ れる。有り高貸借対照表に対して, 前者〈【筆者補足】期間値貸借対照表〉の代理として 利益と損失の勘定に資格があれば, これ〈【筆者補足】利益と損失の勘定〉はその差額で 自ら現れる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.677.;参照。上野清貴1996. 34頁注2;参照。 五十嵐邦正1996. 367頁)。 大雑把な記帳の機構の機能としての区分以外に,詳細な,非常に重要な区分が存在する。 895
─ ( )─114 そこでは,記帳の資料で活動している(lebendig) ,内部の経営の関連(Betriebszusam-menhang)が表される。これらは,相互に貫流する(durchdringen),記帳の領域を意味 する,勘定のグループで生ずる。このため,分割については,ここでは,語られない。ま た,このような区分は,中央で処理される記帳にとり,これらが,与えられた時間間隙で の経営の関係についての決済( Abrechnung )と計算報告( Rechnungslegung )の目標 を達成しようとする時には,絶対必要である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.677678.)。 )有り高計算,必要経費・売上げ計算,資金計算,共同体計算のような勘定のグループ ここで問題になる,様々な領域は,有り高計算,必要経費・売上げ計算,資金計算と共 同体計算と呼ばれる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.678.)。 α)有り高計算 有り高計算(Bestandsrechnung)は,次の問題に答える。すなわち,どれ程の有り高 が(容量と価値に従って)個々の勘定に与えられるのか。どれ程が全体(資産価値,資本 価値)で与えられるのか。開始の価値の有り高(資本)がまだ存在するのか。そして,こ の有り高が増加したのか,縮小したのか。系列と序列での[経営による]欲求(Betriebsbe- du¨ rfnis)による勘定の処理(Ordnung)は,有り高計算の本質ではなくて,むしろ,常に, 資産側での,必要経費計算に属する。様々な有り高は,様々な個別勘定(Einzelkonto)にお いて,周知の様式で算定される。すなわち,何が流入し,しかし,まだ再び流出していない のかを確定するために,流入する価値に対して,流出する価値が対比される。容量の有り 高の算定は,流入する容量と流出する容量の対比により行われる。混合有り高勘定では, 有り高計算は難しい。というのは,資産有り高と,資本に係わる有り高,通常,新規資本 896 ここで,4 つの計算の基本的な特徴について概観すると,必要経費・成果計算,資金計算(Gel-drechnung)と共同体計算は,貸借対照表勘定に直接的な関係を有しない。また,有り高計算は 時点計算であり,必要経費・成果計算は,価値の運動に係わるモノであれば,期間値計算である。 しかし,ニックリッシュの場合,必要経費・成果計算は,一般勘定, すなわち,[給付による] 原価勘定と[経営による]給付勘定の結果と売上高を検討する,[経営による]成果勘定で実質 的には行われる。また,資金計算は,本来,収支計算であり,現金の流入と流出による有り高を 計算するものであるが,収入では,期首での貨幣収入と売掛金に,当該期間での貨幣収入と売掛 金の増加を加算した後,非資金項目を控除する反面,支出でも,期首での支出価値に,当該期間 に調達した財の支出価値を加算した後,当該期間に無関係な支出を控除する。これでは,後述す る,有り高計算による期末有り高貸借対照表が完全な収支計算ではないという欠点を克服でき ないし,貨幣計算や収支計算と呼ぶならば不必要な誤解を招き易い(参照。高田正淳1963. 8184 頁)。この点,現金だけでなくて,売掛金,買掛金を含めた貨幣性資金(luquides Mittel)の概 念が利用される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.516 u. S.694.)。なお,共同体計算は,成果分配 計算であり,[経営による]成果に, その他の源泉による成果を加えたモノを,経営の構成員に どのように配分したのかを示す(参照。高田正淳1963. 81頁注41)。
─ ( )─115 が,初めて別々に計算されるべきであるからである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.678.)。 資本有り高勘定( Kapitalbestandskonto )では,価値基準,貨幣単位の価値が変化し ない,あるいは,部分金額がまだ払い込まれない時には,有り高は常に差額に等しい。ま た,その有り高が更に他の勘定による是正( Berichtigung )を必要とする時には, これ は,決して,混合有り高勘定にはならない。資産勘定では,このような関連は複雑である。 そこでは,小さな差異は非常に簡単に,すなわち,計り分け( Auswiegen ),蒸発などに より,形成される。しかし,このような差異は,これらが,品行方正なビジネスマンの経 験の限界にとどまる限り,資本有り高計算ではなくて,資産有り高計算にのみ全く属する。 すなわち,これらは,必要経費計算の最終的な消滅に属する。より大きな差異が問題にな る時には,異なる。この場合には,この差異により,個々のケースでは,資産有り高勘定 から出て,資本有り高勘定になるが,これは,一部はその他の資本勘定の内容に含まれ, 減少,あるいは,増加を意味する。ここでは,計算についての部分(Teil)での[必要経 費での]損失(Aufwandsverlust)のテーマを参照してもらいたい。このようなケースで は,常に,有り高計算の最終的な結論が締め切られる前に,最初に,混合有り高計算の純 粋有り高勘定への分解が行われるべきである。このため,総ての勘定は,B=S,有り高 と残高(Saldo)が等しいという,水準(Stand)でもたらされるべきである。この場合, また,記帳では,総ての資産有り高の価値の総額は資本有り高の価値の総額に等しい。こ のような均衡状態では,有り高計算は,その最も緊密に守られた二重性から統一体を見付 ける。これが有り高貸借対照表で示されれば,この有り高貸借対照表は記帳(総ての勘定 が統合されたモノ)をまた締め切る(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.678680.)。 記帳の後続する再開による,このような貸借対照表の発生は,図19上で,再現されるう る(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.680.)。 897 図19では,決算貸借対照表の作成時の資産勘定と資本勘定の関係を示している。各々の勘定に 下位勘定が補足されているが,基本原則を説明するには無関係である。そこでは,実線で示され るが,個々の資産勘定の借り方で構成要素が加算され,結果として,貸し方の差額の数値が,決 算貸借対照表の借り方(資産側)に転記され,個々の資本勘定の借り方で構成要素が加算され, 結果として,借り方の差額の数値が,決算貸借対照表の貸し方(資本側)に転記される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.679.)。再開時には,点線で示されるが,反対方向で,翌期の期首貸借対照表に転 記される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.680.)。 図19 貸借対照表の勘定での基本構造(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.679.)
─ ( )─116 勘定での有り高は十字(+)により示される。連続した矢印の付いた実線は,有り高数 値が貸借対照表に入る, 経路を示す。点線は勘定の再開時のための逆経路を示唆する (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.680.)。 経営が獲得する,最初の開示貸借対照表は―これは,総ての事業期間の開始にある, モノで―以下の像で具体的に示される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.680.)。 これは,事業期間の1つの決算での有り高貸借対照表による勘定の再開示でと同じ図表 である。ただし,そこで具体的に示された,貸借対照表への運動は,もちろん,ここでは 脱落している(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 貸借対照表の問題は有り高計算ではまだ終わりまで説明されていない。とりあえず,そ の他の計算が更に追加するモノが確認されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 β)必要経費・売上げ計算
必要経費・売上げ計算(Aufwands- und Erlo¨ srechnung)は,容量と価値での事業期 間中での経営の総必要経費と,[経営による]給付( Betriebsleistung )の容量単位での [経営による]作業(Betriebsarbeit)の総成果についての問題に答える(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 898 ニックリッシュの貸借対照表学説では,不定期に行われる期間記帳が,継続記帳に対して,主 導的な役割を果たし,棚卸し表が重要な役割を果たす(参照。上野清貴1996. 47頁 56頁)。ところ で,日常的な記録である,継続記帳では,資産・資本の2つの勘定系統のみが存在するという前 提の下で,給付価値は,貨幣の減増に対応する,資産有り高の増減として取り扱われるが,決済 までに,給付価値は必要経費化され,他の必要経費と合計され,売上高と対比され,プラスの残 高は新規資本(Neukapital)の有り高として,資本有り高の増加要因とみなされる(参照。高田 正淳1963. 72頁)。このため,資本有り高の増減要因を含めて記帳・処理される有り高勘定は混合 勘定,特に,生産プロセスに関連して,決算時での資本有り高に影響を及ぼす勘定,つまり,貸 借対照表勘定は一般勘定(Generalkonto)と呼ばれる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.668 u. S.669.;参照。高田正淳1963. 7273頁)。ここで,簡単な具体例を示せば,たとえば,減耗資産 〈【筆者補足】つまり,償却資産〉勘定では,消耗( Gebrauch )により,開始有り高と決算有り 高の間に,差額(Saldo)が生ずるため,この差額は減価償却費と呼ばれるが,減耗資産(Gv) に関する有り高計算では,開始有り高(Eb)=減価償却費(Abn)+決算有り高(Bb)という等 式で示されるが,継続記帳では,減価償却費(Abn)は[給付による]原価(Lk)の構成要因と して転記される。また,労働力という給付の調達では,無形資産の調達として,現金(Ka)に関 する有り高計算では,現金払いの必要経費と同様に,開始有り高(Eb)=給付(L)+共通必要経 費(Ga)+決算有り高(Bb)という等式で示されるが,継続記帳では,給付(L)は[経営によ る]給付(Betriebsleistung)の構成要因として転記される。そして,売上高は,[経営による] 成果勘定(Bertrg)に集められ,たとえば,利益が発生すれば,[給付による]原価の総額(Lk) +[経営による]給付の総額(Bl)+[経営による]成果(Bertrg)の差額としての利益(Gew)= 売上高(Erl)+売上補充の総額(▲Ee)という等式で示される。しかし,この売上高勘定は貸借 対照表勘定に含まれてない。 このため, 完全な信用販売が行われると仮定して,[経営による] 成果(Bertrg)=売掛金(D)という等式が設定される。この点,ニックリッシュは,「売上げは 収入である。支払猶予による売掛金( Debitoren )は,その際,流入し,支払者に再び貸し付け られた,貨幣価値とみなされる」(Nicklisch, H. 1929/32. S.516.;Vgl.Vo¨ lker, G. 1961. S.80.; 参照。渡辺朗訳1996. 105頁)と主張している。他方,[経営による]利益( Gew )は,損益勘定 で,その他の利益と加算され,期首資本との合計額が,決算貸借対照表の資本額として記載され る。
─ ( )─117 これは,給付が売却される,時点までの,全体の経営の製造価値の貫流(Durchlauf) についての計算である。必要経費・売上げ計算は,他の給付のための勘定と材料勘定で始 まり,[実物財のための]経営(Sachgutbetrieb)では,完成品の在庫勘定で終わる。売 却勘定(Verkaufkonto)は,既にしばしば,この領域の外にある。これが容量計算であ る限り,これらは,補助簿で,容量勘定( Mengenkonto )において処理されるが,これ は,たとえ,その勘定に価値額,すなわち,割引(Skontro),在庫帳,在庫票が追加され ても,常に,主に,容量勘定のみが残される。記帳の必要経費・売上げ計算が,経営経済 上での生産プロセスのしばしば非常に広範囲に分岐した区分をもはや追跡できなくても, これらは,より柔軟な( beweglich ), 統計上での手続きに移転される( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 必要経費・売上げ計算で算定された必要経費価値は,売却価値の全体と個々のケースで, 対比されるが,その対価が資金計算(Geldrechnung)の対象である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 以下では,必要経費・売上げ計算が若干の数例で具体的に示される。このような例は, 良く理解できるために,開始有り高貸借対照表(ero¨ ffnende Besta¨ ndebilanz )から始め て,決算有り高貸借対照表(abschließende Besta¨ ndebilanz)まで処理されるべきである。 これらは,また,売上げ勘定により,補足された損益勘定を含むべきである。更に,その 内容が,狭義の,厳密な意味で完全に理解されるべきである時には,この貸借対照表では, また,現金,売掛金,負債とその他の資本勘定が,またまだプロセス内にない手元在庫と 同様に,含まれるべきである。これにより,計算の厳密な限界が初めて正確に明らかにな る(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.681.)。 899 ニックリッシュが示す2つの計算例は,開始貸借対照表から決算有り高貸借対照表への記帳の 手続きを呈示している。これは,決算手続きであり,通常では,会計期間が予め決められている ため,「定期簿記」と呼ばれているが,たとえば,経営活動の継続性が問題になる,特定時点で の「財政状況」を把握する必要が起こった時に行われる,「期間記帳」の手付きを説明すること を目指している。ところで,経営では,たとえば,現金,原材料や売上高のような勘定では,取 引きの発生毎に, 仕別し, 記載を行う,「継続記帳」が行われており, その結果を集計した数値 が「元帳」に表示される。反面,[給付による]原価(Leistungkosten),[経営による]給付, [経営による]成果の各勘定では,転記,つまり,決算のための振り替えが行われる。 その際, 原材料,補助材料, 売掛金などの勘定では,実際値を確定する「実地棚卸」, 給付, 共通必要経 費,減価償却, 利子などでは, 当該期間中に価値の循環が終了したモノと, 終了してないモノ (売上補充(Erlo¨ sersatz ))に区分される。ところで,ニックリッシュの考える「貸借対照表学 説」では,記帳の手続きで,費用・収益とみなされているモノも,発生時点で資産の増減として 認識され,記録されることにより,総ての勘定が有り高勘定として捉えられる。そこでは,記帳 の対象が,資産と資本の2つの勘定の系列に限定され,かつ,有り高として認識される。また, 認識される有り高は,発生時点や取引相手などの属性で区分せずに,加算が可能とみなされてい る。そして,貸借対照表を,有り高貸借対照表として作成することは,決算時点と呼ばれる,特 定時点で,資産と資本の対比の可能性を認めている(参照。上野清貴1996. 47頁 54頁)。