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リン酸塩グラス中の希土類イオンの化学結合状態と電子スペクトル

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Academic year: 2021

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(1)リン酸塩ガラス中の希土類イオンの化学結合状態と電子スペクトル 教科・領域教育学専攻 自然系コース(理科).     M10197G     谷口真日東.   1 はじめに. 書に見られる。その背景矢口識としては、’それら.  現在、日常的にr希土類」ないしrレアアー. の色の原因は吸収スペクトルの特徴にあり、そ. ス」なる用語を見聞きすることが多い。実際に. れはd・d遷移によるものであることが挙げられ. 希土類元素は、イオンの形で蛍光体の成分とし. る。そして、大学で無機化学を学んだ教員なら. て加工され、ブラウン管やプラズマディスプレ. その知識に基づいて生徒の学習段階に応じた適. イのカラー画素、照明用蛍光灯や発光ダイオー. 切な説明をすることが可能であろう。ところが、. ドの色調整、光通信でのレ』ザー増幅器などに. 希土類元素に関しては大学でも学部段階ではそ. 使われている。また磁性体として高性能磁石や. う深く扱われるとはないと思われる。しかし、. それを組み込んだモーター等に使われ、いずれ. r化学的に個性に乏しい」などの希土類の特徴. もrIT社会」やr省エネルギー社会」といわれる. は主にf軌道の電子状態に起因するとされ、そ. 現代社会に不可欠の材料の一角を占めている。. の説明には、遷移元素の場合よりも高度な理論.  ところで、現行の高等学校の教育課程におい. が必要である。そこで筆者は、希土類の中でも. ては、希土類元素が直接的に扱われることはな. 蛍光体の成分として古くから利用されているユ. い。しかし、「レアアース」、「レアメタル」等の. ウロピウムを取り上げ、イオンの電子状態およ. 語の意味・用法を生徒たちが、一市民としても. び周囲の原子・イオンとの結合状態を明らかに. 知っておく必要はあろう。そのためには、高等. することを考えた。そして、リン酸塩ガラス中. 学校の授業で、希土類元素を直接の教材でなく. に添加されたEuイオンについて構造をモデル. ともr化学」の導入部にあるr日常生活における. 化し、理論計算による電子状態の解明を試みた。. 化学」や「無機化学」領域での話題ないし動機づ.  2計算方法. けの題材としてとりあげることが可能である。.  ガラス中のEuイオンとその周辺環境のモデ. そのような場面では、教員の説明が、曖昧ある. ルとして、メタリン酸塩の結晶構造から一部を. いは不正確な知識をもとにしていてはならない。. 切り出したクラスターを考え、それについて分. それゆえ、話題の背景にある事象やそれを説明. 子軌道計算を行った。. づける理論について、高等学校の理科教員が一.  モデルクラスターは、中心イオンの周囲にリ. 定程度の理解をもっておく必要があると考える。. ン酸イオン6個または7個を配置したものを考.  高等学校のr化学」でも遷移元素については、. え、中心イオンとしてEu3+またはEu2+を置く. 単元が設定されており、たとえば「イオンや化. ので計4種のモデルクラスターを構築した。こ. 合物には有色のものが多い」といった記述が教科. のうち、リン酸イオン6個のものはP04四面体.

(2) から各1個の0が中心イオンの第」近接をなし. ずれにおいてもEu−O結合に振り向けられてい. ているので6配位となるが、リン酸イオン7個. る電子は0原子1個あたり0.1個程度であった。. のものはP04四面体のうち1個から2個のOが. このことから、このモデルにおけるEu−0間の. 第一近接に含まれるので8配位となっている。. 結合には共有結合性は小さく、ほぼイオン結合.  希土類の電子状態については相対論効果を無. であると判断された。また、その値が、6配位モ. 視することができない。そこで、計算プログラ. デルと8配位モデルの間の違いがほとんどなか. ムには分子軌道計算法の1つである相対論. ったことから、Eu−0の結合状態、さらには中. DV・Xα法を用い、一電子近似にもとづく分子軌. 心イオンのエネルギー状態に、周辺の配位構造. 道を得た。さらに、4f軌道の電子状態を考え. の違いは大きな影響を与えないと半1」断された。. るには電子間の相互作用を考慮する必要がある.  さらに、分子軌道はいくつかの原子軌道の一. ため、次の段階として、配置間相互作用を考慮. 次結合として近似(LCA0・M0)されており、そ. した計算プログラムであるDVME法を用いて、. のLCAO係数の値から、各原子軌道の寄与の度. 4f軌道の準位の分裂すなわち多重項化の状況. 合いが算出される。その結果、各モデルクラスタ. を計算した。計算結果の妥当性については、得. ーに含まれる分子軌道のうち、Euの4f原子軌. られた計算結果にもとづいて理論的吸収スペク. 道が関わるものについては、他の原子軌道の寄. トルを求め、報文にある実測スペクトルと比較. 与はほとんどなく、ほぼEuの4f原子軌道のみ. することにより検証した。. を成分として形成されていることがわかった。.  3結果と考察. そして、これらの分子軌道が、クラスタ』の最.  計算対象の4種のモデルクラスターのうち、. 高被占軌道となっていることがわかった。. Eu2+の8配位モデルについては計算の進行が.  4結論. 思わしくなかったので除外し、他の3種のモデ.  リン酸塩ガラス中の瓦uイオンの状態を模し. ルについて、計算により得られた理論スペクト. たモデルクラスターについて、理論計算を行っ. ルを実測スペクトルと比較した。その結果、理. た結果、希土類イオンについて一般に言われて. 論スペクトルのピークの位置と強度の正確さに. いる事柄がほぼ確かめられた。すなわち、. は若千の問題があるものの、スペクトルのおお. (A)分子軌道のうち最高被占軌道は、ほぼEu. よそのパターンは、ほぼ実測スペクトルとの対.   イオンの4f軌道のみで構成されており、他. 応がみられた。本研究は、各軌道のエネルギー.   の軌道成分はほとんど含まれない。. の値そのもの、つまり吸収/発光ピークの正確. (B)Euイオンのエネルギー状態は、周辺環境. な位置や吸収強度の細かな分析を目的とするも.   の構造的な違いの影響をあまり受けない。. のではなく、化学結合性の検討を旨とするもの.  (C)Euイオンと配位子との結合では、共有結. であるので、この計算結果をもとに議論をする.   合性はごく小さく、ほぼイオン結合である。. ことができると考えた。.  さらに、Eu−0結合の性格の判定のための指 標として、有効共有結合電荷の値も計算した。そ. 主任指導教員 尾開 徹. の結果、検討した3種のモデルクラスターのい. 指導教員 小和田善之.

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