はじめに
現在、国公私立大学は、認証評価機関による評価(以 下「認証評価」という。)を7年に一度受審しなければ ならない。また、国立大学法人は、中期目標・中期計画 の業務実績の評価(国立大学法人評価)を6年に一度、 そして、その年度評価を毎年受けなければならない。両 者とも、大学あるいは国立大学法人の自己点検・評価を 基礎として評価制度が組み立てられている。 そこで、本稿は、私立大学の一職員そして大学評価担 当の実務の立場から、認証評価(学校教育法第 69 条の 3の2項に規定されている評価。本稿では大学院の認証 評価は扱わない)や国立大学法人評価がどのように大学 の教育研究や管理運営等の強化、向上、改善、改革(以 はじめに Ⅰ.認証評価 (1)認証評価 (2)大学基準協会による認証評価 (3)大学評価・学位授与機構の認証評価 (4)認証評価と大学の改善・改革 Ⅱ.国立大学法人評価 (1)国立大学法人中期目標・中期計画の法定事項 (2)国立大学法人評価制度とその仕組み 1.国立大学法人評価制度 2.国立大学法人評価制度の仕組み 3.中期目標期間の業務の実績に係る評価 〔参考〕中期目標機関の業務実績評価の仕組 み (3)大学評価・学位授与機構の行う国立大学法人 の教育研究にかかわる評価 1.教育研究評価の目的 2.基本方針 3.評価のすすめ方 4.実績報告書の作成方法 5.学部・研究科等の現況調査表 6.中期目標の達成状況報告書 (4)国立大学法人の各年度終了時の評価 1.年度評価の概要 2.年度評価の実施 3.国立大学法人評価委員会による年度評価結 果 〔参考〕年度計画の業務実績評価の仕組み Ⅲ.認証評価と国立大学法人評価のまとめ−私立大学 における自己点検・評価の高度化と「大学評価文 化」の定着を目指して (1)認証評価の仕組みと国立大学法人評価の実践 的な特徴と仕組み (2)大学の改善・改革をすすめる認証評価と自己 点検・評価 1.国立大学法人評価の、認証評価と自己点 検・評価への取り込み 2.自己点検・評価活動の高度化――目的・目 標と成果 3.自己点検・評価と事業報告書(私立学校法 第 47 条1項)と認証評価を連携させる合 理的な仕組み 4.認証評価と大学教育の改善・改革 5.自己点検・評価や認証評価と業務の高度化 ―「大学評価文化」の定着 (3)認証評価と自己点検・評価を大学の改善・改 革につなげるためのいくつかの問題 1.「学士課程教育の構築に向けて(審議のま とめ)」の「第五節 質保証システム」にお ける問題提起 2.テーマ別の自己点検・評価 3.専門分野別あるいは課程・プログラム別の 認証評価 おわりに−大学の改善・改革の手段としての認証評価 と自己点検・評価 参考資料・文献認証評価制度と国立大学法人評価制度における
大学の改善・改革
――自己点検・評価の高度化と「大学評価文化」の定着を目指して
伊藤 昇
(
大学行政研究・研修センター専任研究員)
研究ノート
下、「大学の改善・改革」という。)をすすめる仕組みを 持っているのかを、評価制度の実施要領などに基づいて 明らかにしようとした。本稿は両制度の概要をそれぞれ の実施要領などの引用によって、とくに国立大学法人評 価はやや詳細に引用して説明している。その上で制度の 検討はその実際の状況ではなく制度設計の意図を読み解 く形で行っている。なお、財務に係る評価項目は、全体 の説明が複雑になるので、ここでの整理から除いている。 検討は以下のようにすすめた(*)。 ①認証評価の制度概要から認証評価制度がどのように大学の 改善・改革をすすめようとしているのかを検討する。 ②国立大学法人評価の制度の概要を明らかにし、制度に組み 込まれている国立大学法人あるいは国立大学の改善・改革 の仕組みを検討する。 ③二つの検討を踏まえて、自己点検・評価や認証評価が私立 大学の改善・改革をより推し進めるものとするため私立大 学の課題を試論的に整理する。 また、本稿では自己点検・評価活動を、大学の取り組 みや活動を自ら評価・点検するという狭い意味だけでは なく、それに加えて大学の取り組みや活動を作り出し、 成果を生みだし、それを点検・評価するという広い意味 で使用している。 さらに、筆者は、中期目標・中期計画にかかわる国立 大学法人の実務と大学評価・学位授与機構の認証評価に かかわる国立大学の実務、そして国立大学法人評価の先 行研究をほとんど承知していない上に、実施要領などは 大学の改善・改革をすすめる視点から読んでいるので、 読み違いや読み込み過ぎのおそれがある。これらの場合 は読者諸氏からご批判とご教示をお願いする。 *『国立大学法人化の衝撃と私大の挑戦』(エイデル研究所、 2005 年)所収の「〔座談会〕認証評価と国立大学法人評価」 は本稿の問題意識と整理を理解する上で参考になる。
Ⅰ.認証評価
(1)認証評価 認証評価の受審の義務化は、2002 年の学校教育法改 正によって、自己点検・評価の実施と結果の公表の義務 化とともに法定(第 69 の3乃至同条の6)され、2004 年度より施行された。主要な認証評価機関として大学基 準協会(以下「協会」という。)と大学評価・学位授与 機構(以下「機構」という。)そして日本高等教育評価 機構の三つがある。本稿では、立命館大学と立命館アジ ア太平洋大学が認証評価を受審した協会と、国立大学法 人評価の一部をも担当している機構を取り上げる。 なお、立命館大学は 2004 年度に協会の認証評価を受 審し、大学基準に適合しているとの総合評価を得た。立 命館アジア太平洋大学は 2008 年度に協会の認証評価を 受審している。 (2)大学基準協会による認証評価 協会の認証評価の考え方、方法などについては、「『大 学評価』ハンドブック(2007 年度評価者用、2008 年度 申請大学用)」(以下「ハンドブック」といい、引用はこ れによる。)の記述によりながら整理する。 〔大学基準協会の大学評価(認証評価)の目的と特徴〕 ハンドブックによると、協会の大学評価の目的は次の 2点とされている。 ①「協会の定める大学基準等に適合していることをもって、 社会に対してその質を保証する」 ②「評価結果の提示とその後の改善報告書の提出とその検討 というファクターを通じて・・・大学全体の改善を継続的 に支援する」 認証評価の目的は、「認証評価機関の大学基準適合= 大学の質保証」と認証評価結果による大学の継続的改善 の支援であると規定している。問題は、大学基準への適 合は大学の社会的責務として当然であるとして、継続的 改善の支援がどのように実質化されているかである。そ れにかかわっては、「社会に対して保証する『大学の質』 については、当該大学が自身の掲げる使命や目的の達成 に向けた活動を行っていること、自己点検・評価活動を 改善に結びつける=自己改善を進めるシステムを持って いること、の 2 点を重視しています。」としている。 このように、認証評価は大学基準へ適合しているとい う適合結果をもって大学の質を社会に対して保証するこ とに主眼があり、大学基準への適合の内容やレベルをさ らに向上させるという大学の改善・改革は、大学の「自 己改善を進めるシステム」に委ねるものになっている。 大学基準においても、自己点検・評価体制の確立として 示されているだけであり、大学の改善・改革の取り組み そのものが直接に問われるものとはなっていない。一方、 国立大学法人評価は、後述するように、国立大学法人の 中期目標すなわち改善・改革の目標の達成を毎年度の評 価を積み上げて総括的に中期目標期間(6 年間)における実績によって評価することになっている。私立大学は、 認証評価を含め自己点検・評価活動に大学の改善・改革 をすすめる仕組みや仕掛けを組み込まなければ、国立大 学法人と国立大学の改善・改革に「遅れる」「置いてき ぼりをくう」ことになる。これが本稿の問題意識であ る。 ハンドブックによると、協会の大学評価の特徴はおお むね次の5点にまとめられている。 ①各大学が掲げる理念・目的・教育目標がどのように達 成されているかという達成度評価と協会が定める大学 基準に照らして教育研究活動の状況がどの程度充実し ているかという水準評価の、二つの観点から評価を行 う(「達成度評価と水準評価」) ②専門分野ごとの専門分野別評価と全学にかかわる事項ご との全学的事項評価を組み合わせて総合的に大学を評価 する(「専門分野別評価と全学的事項評価の総合的評 価」) ③受審した大学は、評価において助言および勧告とされた 事項について、3年後に改善報告書によって改善の取り 組みについて報告をもとめ、大学の改善・向上を支援す る(「改善報告書の評価(中間評価)」) ④評価者は正会員大学の教職員を中心に構成し、同僚評価 を重視している(「同僚評価(ピア・レビュー)の重 視」) ⑤受審する大学に協会が提出を求める「点検・評価報告書」 は、大学基準の主要点検・評価項目を中心とする自己点 検・評価(現状把握と分析・評価、問題点の改善策、長 所の伸張策など)をまとめたものであって、その自己点 検・評価の過程や長所や問題点の洗い出しとその改善や 伸張の検討などによって、大学の自律的な改善・改革を 推し進める大学評価を実施している(「自己改善機能を 重視した評価」) 目的「①」に特徴「①・②・④」が、目的「②」に特 徴「③・⑤」が対応している。 認証評価の特徴のポイントは、「達成度評価と水準評 価」と「自己改善機能を重視した評価」である。具体的 には、特徴「①」の、各大学が掲げる理念・目的・教育 目標がどのように達成されているかという達成度評価と 協会が定める大学基準に照らして教育研究活動の状況が どの程度充実しているかという水準評価の二つの評価 (達成度評価と水準評価)によって、特徴「⑤」の、大 学基準の主要点検・評価項目を中心とする自己点検・評 価(現状把握と分析・評価、問題点の改善策、長所の伸 張策など)などによって、大学の自律的な改善・改革を 推し進めるとされているところにある。しかし、大学が 認証評価受審に際し先ず行わなければならないことは大 学基準の主要点検・評価項目を中心とする自己点検・評 価(現状把握と分析・評価、問題点の改善策、長所の伸 張策など)とそのまとめの作成である。大学の自律的な 改善・改革はその取り組みの結果(「達成度評価と水準 評価」)として、現状の分析・評価のまとめの記述のな かにあり、国立大学法人評価の中期計画や年度計画の評 価ように、改善・改革の取り組み自体が直接に評価され るものではない。改善・改革はあくまで大学の自律的な 取り組みに委ねられている。問題は、前述の通り、この 大学の自律的な取り組みをどう自主的に組織し、認証評 価や自己点検・評価を大学の改善・改革につなげるかと いうことである。 本稿は、この問題を私立大学において国立大学法人評 価にも学んで具体にどう実効的なものとして組み立てる かを、検討しようとするものである。 〔点検・評価報告書〕 認証評価を受審する大学は、「点検・評価報告書」を 作成し、協会に提出することによって、手続きが開始さ れる。 「点検・評価報告書」は次に述べる基準ごとに、具体 的な「到達目標」を記し、主要点検・評価項目「A・B 群(後述)のすべての項目を網羅して現在の状況を記述 し」(「現状の説明」)、その結果、「教育研究水準の充 実・向上を図る上で取り上げるべきと判断した長所と問 題点について重点的に記述し」(「点検・評価」)、「長所 をさらに伸張させるための方策や問題を解決していくた めの方策を具体的に記述」(「改善方策」)するものとさ れている。そして、「全体の記述にあたっては、その論 拠を明確にするため可能な限り客観的なデータを利用す ることが望まれます。」と指示している。 ここで注目しなければならないことは、先に認証評価 の特徴とした「達成度評価と水準評価」と「自己改善機 能を重視した評価」の特徴を各大学がどう具体なものと して自己点検・評価活動として取り入れているかであ る。取り入れていれば、大学基準協会の認証評価を受審 する際の自己点検・評価活動とその「改善方策」が認証 評価受審を契機として大学の改善・改革をすすめるもの となる。しかし、認証評価は大学基準への適合の評価 (判定)であり、「現状の説明」で大学基準へ適合してい
れば、「長所をさらに伸張させるための方策」はあって も、論理的には問題点の「改善方策」が問われることに はならない。設置基準が大学設置に際しての最低基準で あるのと同様、認証評価は認証評価機関の「大学基準等 への適合」をもって「社会に対して質を保証する」もの であることから、認証評価機関が社会に担保しようとす る(設置された)大学の質の“今日的最低基準”である といえる。そうだとすれば、大学の質の“今日的最低基 準”に照らして問題があれば、適合判定を得るために 「問題を解決していくための方策」を立て、取り組み、 改善することが必須となるが、それ以外の改善・改革は 認証評価の制度のなかでは必ずしも必須の位置にないこ とになる。ここに、認証評価の「質の保証」という機能 と、「達成度評価と水準評価」による「自己改善機能を 重視した評価」を大学の改善・改革につなげようとする 機能との間に距離がある。あるいは、協会の客観的な 「質保証」の機能と、各大学が認証評価を改善・改革に つなげる大学の機能とが並列していることになる。この 距離をどう埋めるのか、並列をどう橋渡ししつなげるの かが問題(*)である。 *この問題の重要な方策の一つが、第三章で指摘している自 己点検・評価における目的の達成度あるいは実現度を測 定、評価する目標を具体に設定することである。 〔評価基準と点検・評価項目と評価結果〕 認証評価における評価基準と点検・評価項目は、次の ように構成されている。 評価基準は、協会が行う「大学評価の基準となるもの であり、同時に大学が適切な水準を維持し、その向上を 図るための指針」を定めている大学基準と、その下位基 準である学士課程基準と修士・博士課程基準で構成され ている。認証評価とはこれらの基準に適合しているかど うかを判定するものである。 大学基準は 15 項目からなり、各大学の理念・目的に 向けた改善・向上のための指針とするべきもので、大学 のあるべき姿を追求するための留意点を明らかにした、 大学として守るべき基準であるとされている。すなわち 今日における“大学像の最低基準”である。 学士課程基準、修士・博士課程基準には基準ごとに主 要点検・評価項目が設定されている。項目は、大学・学 部・研究科等として具備することが必須不可欠なもの (A群)、具備することが高度に望まれるもの(B群)、 項目として採用するかどうかは大学側に委ねられている もの(C群)で構成されている(A・B・C群は 2009 年度以降「評価の視点(必須)」と「評価の視点(任意)」 に置き換えられる)。 各大学は、主要点検・評価項目のA・B群は必須のも のとして、そして、自ら採用するとしたC群の項目を対 象に自己点検・評価を行い、「点検・評価報告書」をま とめ、項目に対応した「大学基礎データ」を編集し、協 会に提出する。協会は、これらの資料の審査と実地視察 ののち、大学評価結果をまとめ、大学に通知し、公表す る。 評価結果は次にように構成されている。 Ⅰ 評価結果(大学基準への適合認定) Ⅱ 総評 1 理念・目的・教育目標の達成への全学姿勢(達成状 況と達成に向けての課題) 2 自己点検・評価の体制(自己点検・評価の仕組みと その機能の状況) 3 長所の伸張と問題点の改善に向けての取り組み(主 要点検・評価の項目ごとの適合状況や特徴的な長 所・問題点) Ⅲ 大学に対する提言 ・長所として特記すべき事項 ・勧告(大学として最低要件を充たしていない、あ るいは改善・向上・改革への取り組みは十分でな い事項で、義務として改善を求めるもの。3年後 にその是正措置を「改善報告書」で提出) ・助言(理念・目的・教育目標の達成に向けて一層 の改善・向上・改革の努力を促がすもの。3年後 にその対応の有無を含めて「改善報告書」で提 出) 〔「大学・学部における主要点検・評価項目」のA・B・ C群の記述の特徴〕 ここで受審にあたって行う自己点検・評価の項目とな る「大学・学部における主要点検・評価項目」(学士課 程基準)のA・B・C群の記述を見ると、次の例に示す ように、取り組みやその状況を評価する「体言止め」 (*)で表現されている。
*何々について、あるいは何々の、「適切性」「有効性」「(導 入・見直し・策定・実践(実施)・確立・人材輩出・活 用・整備・展開・参加・申請と採択などの)状況」「適切性、 有効性」「条文との関連性」「体系性」「位置づけ」「適合性」 「適切性、妥当性」「○○率(数)」「適切性」「割合」「充実 度」「配慮」「透明性」「適切性と明確性」「妥当性」「明確 化」「貢献度」「対応」など。下記は主要点検・評価項目の 例。 基準1 A群 ・大学・学部等の理念・目的・教育目標 とそれに伴う人材養成等の目的の適切 性 3 A ・各授業科目の特徴・内容や履修形態と の関係における、その各々の授業科目 の単位計算方法の妥当性 ・学生の学修の活性化と教員の教育指導 方法の改善を促進するための措置とそ の有効性 B ・一般教養的授業科目の編成における 「幅広く深い教養及び総合的な判断力 を培い、豊かな人間性を涵養」するた めの配慮の適切性 ・教育効果や目標達成度及びそれらの測 定方法に対する教員間の合意の確立状 況 ・教育効果を測定するシステム全体の機 能的有効性を検証する仕組みの導入状 況 5 B ・教員の教育研究活動についての評価方 法とその有効性 6 A ・論文等研究成果の発表状況 11 A ・教学組織と学校法人理事会との間の連 携協力関係及び機能分担、権限委譲の 適切性 13 A ・事務組織と教学組織との間の連携協力 関係の確立状況 特に多い表現は、「適切性」と「(導入・見直し・策 定・実践(実施)・確立・人材輩出・活用・整備・展開・ 参加・申請と採択などの)状況」で、237 項目のなかで、 それぞれが 90 を超える項目で使われている。項目の総 数の8割近くでこの二つの表現が使われていることにな る。これは、協会の大学評価の目的が、協会の定める大 学基準等に適合していることをもって、すなわち、大学 の取り組みの結果や状況である「大学の教育研究等の総 合的な状況」(学校教育法第 69 条の3)について、認証 評価を「適確に行うに足りる」「大学評価基準及び評価 方法」(ともに学校教育法第 69 条の4の2項1号)によ って、大学であれば当然であると期待・想定する「状況 にある」、あるいは大学として期待・想定する「適切」な 取り組みであると評価することをもって、その大学の質 を社会に対して保証するという論理立てによるものと考 えられる。 しかし、何をその「体言止め」の具体の内容とするの かは、各大学が自らの「理念・目的・教育目標」から大 学基準等にそって「現状を把握し、それを分析・評価し て問題点や長所を洗い出し」、改善策や伸張方策を「導 き出す」という自己点検・評価による。ここに大学基準 と主要点検・評価項目の、各大学の個別・特殊性に応え られる評価の操作性と柔軟性そして、必ずしも改善・改 革までを求めていない曖昧性という特質がある。先に認 証評価の「質の保証」という機能と、「達成度評価と水 準評価」による「自己改善機能を重視した評価」を大学 の改善・改革につなげようとする機能との間に距離があ る、あるいは二つが並行しているとしたことはこの主要 点検・評価項目の「体言止め」の二つの特質から説明で きる。それは、評価の操作性と柔軟性が認証評価の「質 の保証」という機能に対応し、曖昧性が認証評価を大学 の改善・改革につなげようとする機能に対応しているこ とである。大学は認証評価を大学の改善・改革につなげ るためには、それぞれの「体言止め」の内容をその操作 性と柔軟性を活かして、改善・改革の具体の取り組みと して作り上げ、その具体の成果によって曖昧性を排する 自己点検・評価を行い認証評価を受審することが必要で ある。 (3)大学評価・学位授与機構の認証評価 機構の認証評価の考え方、方法などについて、平成 20 年度実施分である「大学機関別認証評価実施大綱 平成 16 年 10 月(平成 18 年 3 月改訂)」(以下「実施大綱」 という。)の記述によりながら、以下に整理する。 〔大学評価・学位授与機構の大学機関別認証評価の目的 と基本的な方針〕 機構は、大学機関別認証評価の目的を、「我が国の大 学の教育研究水準の維持及び向上を図るとともに、その 個性的で多様な発展に資する」ものとしている。 これを受けて、より具体的に認証評価の目的として次 のものをあげている。 ①「機構が定める大学評価基準に基づいて、大学を定期的に 評価することにより、大学の教育研究活動等の質を保証す
る」 ②「評価結果を各大学にフィードバックすることにより、各 大学の教育研究活動等の改善に役立てる」 ③「大学の教育研究活動等の状況を明らかにし、それを社会 に示すことにより、公共的な機関として大学が設置・運営 されていることについて、広く国民の理解と支持が得られ るよう支援・促進していく」 協会との違いは、目的の「個性的で多様な発展に資す るもの」としている点と、具体的な認証評価の目的の 「③」である。この二点は、必ずしも協会の認証評価に は明示されていない。機構は、大学の「個性的で多様な 発展」を、各大学の目的にそって評価を行うことによっ て図るものとしている。この観点は、国立大学法人評価 においても同様に重視され、業務実績評価の重要なポイ ントの一つとなっている。協会では、各大学が掲げる 「使命や目的の達成に向けて活動を行っていること」と の一般的な記述にとどまり、「個性的で多様な発展」と までは言及されていない。 また、具体的な認証評価の目的の「③」は、私立大学 においても当然のことであるが、国立大学法人が基本的 に国費で運営されていることを強く意識した目的であろ うと推測される。 そして、評価の基本的な方針として次の六点を掲げて いる。 ①「大学評価基準に基づき、各大学の教育研究活動等の総合 的な状況について、基準を満たしているかどうかの判断を 中心とした評価」(「大学評価基準に基づく評価」) ②「教育活動を中心として大学の教育研究活動等の総合的な 状況の評価」(「教育活動を中心とした評価」) ③大学評価基準に基づく判断に当たっては、「大学の個性や 特色が十分に発揮できるよう、教育研究活動等に関して各 大学が有する『目的』を踏まえ」、個性の伸長に資する評 価(「『目的』とは、大学の使命、教育研究活動等を実施す る上での基本方針、達成しようとしている基本的な成果等」 をいう。)(「各大学の個性の伸張に資する評価」) ④評価は、「大学評価基準及び別に定める自己評価実施要項 に基づき」大学が行う自己評価(*)の結果(大学の自己評価 根拠として提出された資料・データ等を含む。)を分析し、 その結果を踏まえた評価(「自己評価に基づく評価」) *「教育研究活動等の個性化や質的充実に向けた大学の 主体的な取組を支援・促進するため、透明性と公平性 を確保しつつ、実効あるものとして実現していくため には、大学評価基準及び別に定める自己評価実施要項 に基づき、大学が自ら評価を行うことが重要」 ⑤「大学の教員」とそれ以外の「大学の教育研究活動に関し 識見を有する者によるピア・レビューを中心とした評価」 (「ピア・レビューを中心とした評価」) ⑥意見の申立て制度を整備するとともに、評価結果を広く社 会に公表し、「透明性の高い開かれた評価」。また、「開放 的で進化する評価を目指し、評価の経験や評価を受けた大 学等の意見を踏まえつつ、常に評価システム」を改善 (「透明性の高い開かれた評価」) 協会の特徴と対比してとくに気になるところは、ここ でも協会の「自己改善機能を重視した評価」が機構では より具体に「各大学の個性の伸張に資する評価」とされ ていることと、協会の「専門分野別評価と全学的事項評 価の総合的評価」が機構では「教育活動を中心とした評 価」とされていることである。 とくに前者にかかわって、協会の認証評価は、認証評 価の「質の保証」という機能と、「達成度評価と水準評 価」による「自己改善機能を重視した評価」を大学の改 善・改革につなげようとする認証評価の役割との間に距 離がある、あるいは並列しているとして、そして距離を 埋める、並行の橋渡しをするのが目標の具体の設定であ ると注記した。機構の認証評価では、「大学の教育研究 活動等の質を保証」するという機能に「各大学の個性の 伸張に資する」役割をもたせて、大学の改善・改革につ なげようとしていると統一的に読めるものとしている。 機構の認証評価は「大学評価基準と基本的な観点」(後 述)にそって「個性の伸張」の方向で具体の取り組みを 組織することによって、大学の改善・改革をすすめよう としている。 なお、機構は「教育活動を中心とした評価」であるた め、研究活動の状況は、「選択的評価事項A 研究活動 の状況」を大学評価基準とは別に定めている(もう一つ の選択的評価基準は「B 正規課程の学生以外に対する 教育サービスの状況」である)。選択的評価基準は、そ の評価を受けるかどうかは大学の選択に任されている。 これに対して、協会の大学基準には「6 研究活動と研 究環境」が定められ、認証評価を受審する大学は、この 「主要点検・評価項目」にそって自己点検・評価しなけれ ばならない。 〔大学評価基準と評価〕 大学(評価)基準(協会は大学基準といい、機構は大
学評価基準というので、両者をまとめて「大学(評価) 基準」という。)は、機構のそれは学士課程、大学院課 程を一本に包含しているが、協会のそれは上位基準とし ての大学基準のもとに、学士課程基準と修士・博士課程 基準が別立てされている。 大学評価基準は、教育活動を中心として大学の財務、 管理運営等の総合的な状況を評価する 11 の基準で構成 されている。この基準は、機構が大学として満たすこと が必要と考える内容である。また、基準ごとに、その内 容とそれを踏まえ教育活動等の状況を分析するための 「基本的な観点」が設けられている。 基準(11 項目)――基準の内容(36。学部のみで は 28)――基本的な観点(114。学部のみでは 87) 前述したように、他に希望する大学を対象とする選択 的評価事項として「研究活動の状況」及び「正規課程の 学生以外に対する教育サービスの状況」を設けている。 大学評価基準は満たしているかどうかを判断するが、選 択的評価事項は国立大学法人が設定した目的の達成状況 を評価するものとしている。 機構は、各大学が「自己評価実施要項」に従って作成 した自己評価書(「基本的な観点」と各大学が独自に設 定した観点ごとに自己評価を行い、根拠となる資料・デ ータをそろえてまとめたもの)に基づいて評価を行う。 そして、訪問調査を経て、大学全体として 11 の基準す べてを満たしているかどうかをその理由を明らかにして 判断し、評価結果(「評価報告書」)をまとめる。 機構の認証評価では、一つでも満たしていない基準が あれば、大学全体として大学評価基準を満たしていない と判断される。この場合には、評価実施年度の翌々年度 までに、満たしていない基準に限定して「追評価」を受 けることができる。この評価において当該基準を満たし ていれば、全体として大学評価基準を満たしたものと認 められる。 基準を満たしている場合であっても、さらに改善の必 要が認められる場合や、基準を満たしているもののうち、 その取組が優れていると判断される場合には、その旨も 指摘する。 機構は、認証評価による改善を主に評価結果の大学へ のフィードバックによって行うとしている。改善は大学 に委ねられている。だから機構の目的は、「評価結果の 各大学へのフィードバックにより、各大学の教育研究活 動等の改善に役立てる」という表現になる。協会は、評 価結果に加えて、大学基準適合のもとで助言に対する 「改善報告書」による「中間報告」によって制度的に改 善・向上をはかるという仕組みとしている。両者の認証 評価における改善のすすめ方は異なっている。 〔大学評価基準の基準と基本的な観点〕 機構の大学評価基準の内容(36 項目。学部のみでは 28 項目)に則して「基本的な観点」(114 項目。学部の みでは 87 項目)がある。「基本的な観点」は、協会の 「主要点検・評価項目」がA・B・C群に分れ、その記 述が適切性、有効性、導入や実践や見直し等の状況など の「体言止め」であったことに比して、次の例示ように、 何について、どうしているのか、あるいはどうなってい るのかを問う疑問文の形をとり、具体的かつ説明的であ ることに特徴がある(前の付番は、「基準―基準の内容 ―基本的な観点」を示している)。自己評価書の記述は、 この基本的な観点の具体な問いに対して、検証資料を添 えて具体にこたえるものとしなければならない。 1−1−① (大学の)目的として,教育研究活動を行う に当たっての基本的な方針や,養成しようとす る人材像を含めた,達成しようとする基本的な 成果等が,明確に定められているか。 2−1−② 教養教育の体制が適切に整備され,機能して いるか。 3−2−① 教員の採用基準や昇格基準等が明確かつ適切 に定められ,適切に運用がなされているか。特 に,学士課程においては,教育上の指導能力の 評価,また大学院課程においては,教育研究上 の指導能力の評価が行われているか。 5−1−⑤ (科目の)単位の実質化への配慮がなされて いるか。 6−1−① 大学として,その目的に沿った形で,教養教 育,専門教育等において,課程に応じて,学生 が身に付ける学力,資質・能力や養成しようと する人材像等についての方針が明らかにされて おり,その達成状況を検証・評価するための適 切な取組が行われているか。 9−1−① 教育の状況について,活動の実態を示すデー タや資料を適切に収集し,蓄積しているか。 9−1−④ (教育活動の)評価結果がフィードバックさ れ,教育の質の向上,改善のための取組が行わ れ,教育課程の見直し等の具体的かつ継続的な 方策が講じられているか。
9−1−⑤ 個々の教員は,評価結果に基づいて,それぞ れの質の向上を図るとともに,授業内容,教材, 教授技術等の継続的改善を行っているか。 9−2−② ファカルティ・ディベロップメントが,教育 の質の向上や授業の改善に結び付いているか。 基本的な観点の問いただしている表現を学部のみ集約 すると、「適切なものになっているか」「適切に実施(あ るいは運用、配置、活用、反映)されているか」「適切 な措置(あるいは対応、取組)がとられているか」など、 適切性を問うものが全体の約4割を占めている。続いて、 「機能しているか」「活用されているか」「実施されてい るか」「方策(あるいは改善)が講じられているか」など、 実際にそうなっているかという「実際性」あるいはその 「状況」を問うものが約2割を占めている。 さらに、疑問文である基本的な観点は、例えば「1− 1−① (大学の)目的として、教育研究活動を行うに 当たっての基本的な方針や、養成しようとする人材像を 含めた、達成しようとする基本的な成果等が、明確に定 められているか。」であれば、先ず YES と NO を明確に し、YES であれば「教育研究の基本的な方針」「養成し ようとする人材像」「人材像を含めてその基本的な成果」 を明確に定めていることを説明し、それを具体の資料等 で検証できれば、この観点が満たされているということ になる。自己点検・評価の論理立てとしては極めて明快 な仕組みである。 上にあげたものと同じ協会の自己点検・評価項目は、 「基準1 A群 大学・学部等の理念・目的・教育目標 とそれに伴う人材養成等の目的の適切性」という一般的 な記述になっている。各大学はこの記述を大学基準の当 該項目の解説と学士課程基準の当該項目の説明を読み解 き自己点検・評価することになる。この意味では、前述 したように、協会の基準は、多様かつ個別に対応できる 操作性と柔軟性をもっているとともに、曖昧性をも合せ てもっていることになる。 〔自己評価〕 機構の自己評価書の作成は、「自己評価実施要項 大 学機関別認証評価 付 選択的評価事項 (平成 20 年度 実施分)」(大学評価・学位授与機構)(以下「実施要項」 という。)に詳しく記載されている。機構は、認証評価 にあたっての自己評価書の作成を極めて重視し、そのガ イドラインを明確に定めている。 実施要項によると、先に示した評価の基本的な方針の、 「大学評価基準に基づく判断に当たっては、大学の個性 や特色が十分に発揮できるよう、教育研究活動等に関し て各大学が有する『目的』を踏まえ、個性の伸長に資す る評価」を受けて、自己評価は先ず大学の目的の明示を 行うものとしている。大学の「目的」とは、「大学の使 命、教育研究活動等を実施する上での基本方針、達成し ようとしている基本的な成果等をいう。」ものとしてい る。留意しなければならないのは、次の評価結果の「Ⅰ 認証評価結果」にあるように、「大学の目的に照らして」 「主に優れた点」「主な改善を要する点」を「抽出」する ように指示している。機構の認証評価は、「大学の目的」 に照らした大学の「個性的で多様な発展に資する」目的 的な認証評価の仕組みを有している。 次に、実施要項は、自己評価書を各大学は 11 の基準 ごとに自己評価を行い、「観点ごとの分析」(「観点に係 る状況」と「分析結果とその根拠理由」)、「優れた点及 び改善を要する点の記述」、「概要の記述」をまとめ、作 成するものとしている。 「観点ごとの分析」は、大学・学部等の目的との関連 を踏まえて、取組や活動の内容等の客観的事実について、 現在の状況を具体的に記述するものとしている。また、 「分析結果とその根拠理由」は、「観点に係る状況」につ いての分析結果を分かりやすく明確に記述し、それを導 いた理由をその根拠となる資料・データ等を摘示しつつ 記述するものとしている。機構は、その資料・データを、 実施要項の別紙「自己評価の根拠となる資料・データ等 例」(A4で 27 頁)において、基本的な観点ごとに逐一 かつ詳細に示し、資料・データ等による現状の分析の 「根拠付け」を重視している。 この仕組みは協会の「点検・評価報告書」とほぼ同じ であるが、次の点が異なっている。 実施要項の「3 目的の記載に当たっての留意事項」 の「(1) 大学として期間を定めた目標等を有する場合」 では、「大学がその運営に関する期間を定めた目標等を 有している場合には、その目標等の達成状況等を評価に 反映させることも可能です。その際には、その目標等の 基本的な内容を目的として位置付け、記載することが必 要です。」と、国立大学法人の「中期目標・中期計画」 の目標と実績評価を、認証評価の自己評価に活用できる と配慮していることである。国立大学法人は、7年に一 度の認証評価、6年ごとの国立大学法人評価、そして毎
年の国立大学法人評価年度評価がある。その作業の負荷 は相当なものであろうと推測できることから、配慮は適 切なものであろう。むしろ、国立大学法人は、中期目 標・中期計画の国立大学法人評価の作成に当たって、認 証評価期間の大学(評価)基準の組み立てを意識してそ れに適うようにしておけば、国立大学法人の中期目標の 達成状況(成果)を認証評価に取り入れることができる ことになる。総じて国立大学法人の改善・改革を着実に 進めることができるようにしているとも読み取れる。 〔評価結果〕 評価結果は、次のような構成で各大学に示され、公表 される。 Ⅰ 認証評価結果 ・大学評価基準を満たしているかどうか ・大学の目的に照らして抽出した「主な優れた点」と 「主な改善を要する点」 Ⅱ 基準ごとの評価 ・基準1∼11について、当該基準を満たしているか どうかの評価結果 ・その評価結果の根拠・理由 ・基準ごとの「優れた点」及び「改善を要する点」 Ⅲ 意見の申立て及びその対応 参考 自己評価書に記載されている「¡ 現況及び特徴」 「™ 目的」「£ 自己評価の概要」の転載など 機構の認証評価は、「Ⅱ 基準ごとの評価」の「各大 学へのフィードバックにより、各大学の教育研究活動等 の改善に役立て」、各大学の改善・改革がすすむという 仕組みであるが、ここでも基準をクリアしていれば、 「優れた点」を伸張させることを除けば、大学の改善・ 改革を直接にすすめる仕組みとはなっていない。 (4)認証評価と大学の改善・改革 認証評価の目的や方法は、機構と協会では本質的な違 いはないと考えられる。 機構も協会も、大学の取り組みとその結果の自己点 検・評価が、その定める大学(評価)基準等を満たして いることをもってその大学の質を社会に対して保証する こととしている。そして、その「点検・評価報告書」や 「自己評価書」を作成する自己点検・評価の過程におい て、「目的」や「到達目標」が設定され、取り組まれ、 大学の改善・改革がすすみ、認証評価結果によって「継 続的に支援」されたり、「役立」てられたりすることに なる。 これに対して、国立大学法人の中期目標・中期計画の 実績評価は、国立大学法人の改善・改革の目標と計画で ある中期目標・中期計画をたて、年度計画の進捗状況を 積み上げ、中期計画の進捗(取組)と実績(結果)によ って中期目標の達成度を評価するものである。国立大学 法人評価はそもそも国立大学法人の改善・改革の目標と その達成を対象にしているという点での認証評価との違 いに注目しなければならない。違いに注目するとは、具 体には認証評価をどう大学の改善・改革につなげてすす めるかという問題を立てることである。 〔自己点検・評価と大学の改善・改革〕 ここまでの議論でいえば、具体的に認証評価を大学の 改善・改革につなげる方法は大きく二つある。 一つの方法は、認証評価の自己点検・評価の仕組みの 中にある。協会の認証評価では「質の保証」という機能 と大学の改善・改革につなげようとする認証評価の役割 との間の距離の埋め合わせあるいは並行の橋渡しは、自 己点検・評価における目的の達成度あるいは実現度を測 定、評価する目標を具体に設定することであるとした。 機構の認証評価では、「個性の伸張」をはかる取り組み を組織することによって、「大学の教育研究活動等の質 を保証」するとともに大学の改善・改革につなげようと しているとした。ここでは認証評価を大学の改善・改革 につなげる方法として、目標の具体の設定と「個性の伸 張」があるということのみを指摘しておく。なお、自己 点検・評価における目標を具体に設定することについて は第三章で詳論する。「個性の伸張」については第二章 の国立大学法人評価の説明においてその意味や内容など を整理する。 なお、認証評価によって大学の改善・改革を進めるの は本末転倒ではないかという議論もある。すなわち、本 来は、認証評価を契機に具体に大学の自主的、自律的な 改善・改革に取り組むのではなく、逆に設置基準の大綱 化や「規制緩和」などをおおいに活用して日常的に大学 が自主的、自律的に具体の改善・改革の取り組みをすす め、その成果が認証評価という制度によっても.評価され るというものである。「も」の意味は認証評価制度が有 ろうと無かろうと、大学は自覚的にあるいは自主的、自 律的に改善・改革に取り組み、その総括という形で自己 点検・評価を行っているはずであることを示している。
そして、その自己点検・評価が大学(評価)基準に当然 として適合し、社会的に質の保証がなされる。認証評価 制度は、大学の自覚的あるいは自主的、自律的な取り組 みとその総括に質保証の「お墨付き」を与えるだけのも のであるということである。このように認証評価を本来 の姿で受け止める必要がある。しかし、現実が必ずしも そうでないから認証評価制度が創設されたということも できる。だとすれば、認証評価を契機として具体に大学 の改善・改革をすすめるようにするのが、国費や学費で 運営されている大学のアカウンタビリティの「最低基準」 となる。 〔もう一つの方法―「大学評価文化」の醸成と定着〕 「最低基準」の一里塚として、7年に一度の認証評価 の受審を見越しながら、大学(評価)基準等をより高い 水準で、あるいはより特色ある個性的な取り組みでクリ アすることを自己点検・評価の目標とすることが考えら れる。大学は、7年という期間を見越して大学(評価) 基準の主要点検・評価項目あるいは基本的な観点を自主 的に自己点検・評価し、最低、そのような「状況にある」 あるいは取り組みは「適切である」などと評価できるよ うにする。さらに、評価をより高い水準でクリアできる ものに、あるいはより特色ある個性的なものとするよう に、これらの年度計画を立て自主的に改善・改革の取り 組みをすすめる。そして、認証評価を受審する際には、 その成果を「点検・評価報告書」あるいは「自己評価書」 にとりまとめる。これがもう一つの方法である。これは 自己点検・評価の日常化として「大学評価文化」の醸成、 定着に帰結していく。 この方法は、具体には以下の手順ですすめることにな る。 先ず、大学の各機関・部課等が自らの機能、役割、職 掌にかかわる認証評価の制度や仕組み、とくに関連する 大学(評価)基準と主要点検・評価項目(協会)や基本 的な観点(機構)を正確に理解する。 次に、各機関・部課等は関連する主要点検・評価項目 (協会)や基本的な観点(機構)ごとに、大学(評価) 基準等をクリアできるようにする。さらにクリアをより 高い水準で、あるいはより特色あるものにする。これら の目標と課題を設定する。目標や課題のクリアの内容は、 理念・目的等に関するものは、「十分達成」「おおよそ達 成」に、水準に関するものは「十分にクリア」に置き、 かつその内容が大学の「特色・強み・個性」や「他大学 の模範」となるものとする必要がある(大学基準協会の 「評定基準」)。 三つ目に、課題を遂行し目標を達成するために必要な 制度や組織を整備する。 四つ目に、「目標−計画−取組−実績−評価−課題」 の自己点検・評価活動に取り組む。 こうして、各機関・部課等が自らの機能、役割、職掌 にかかわる認証評価の大学(評価)基準と主要点検・評 価項目(協会)や基本的な観点(機構)を、より高い水 準で、あるいはより特色あるものとしてクリアし、それ が大学の「特色・強み・個性」となり、あるいは「他大 学の模範」となる。こうして、認証評価の基準等のクリ アが大学の改善・改革につながっていく。 このように、認証評価の大学(評価)基準と、主要点 検・評価項目(協会)や基本的な観点(機構)を積極的 に大学の改善・改革の柱や項目として受け止め、それに そって大学の改善・改革の活動を組織し、日常的に成果 をあげていくという自己点検・評価は、認証評価制度を “真に”活かすことになる。認証評価機関の大学(評価) 基準等だけでなく、大学の独自の諸課題についても同じ ように「目標−計画−取組−実績−評価−課題」(自己 点検・評価活動)が日常的に取り組まれ、成果が積み上 げられ、改善・改革がすすんでいくようになれば、大学 に「大学評価文化」が定着することになる。いうなれば 「大学評価文化」とは、各機関が日常的に大学の使命・ 目的のもとに、認証評価の大学(評価)基準等を枠組と して活用しながら、各機関・部課等の目的と目標を具体 に設定し、「目標−計画−取組−実績−評価−課題」の サイクルをまわすことである。認証評価はこの契機とし なければならない。 なお、機構の満たされているのかどうかを疑問文で問 う基本的な観点は、協会の体言止めの主要点検・評価項 目より具体的であるので、実務的には自己点検・評価の なかに「目標−計画−取組−実績−評価−課題」という仕 組みを組み込みやすいという利点があるように思われる。
Ⅱ.国立大学法人評価
(1)国立大学法人中期目標・中期計画の法定事項 国立大学は、2004 年4月の国立大学法人化により、 期間を6年とする中期目標・中期計画の作成とその公表が国立大学法人法において定められた。その主な法定は 次の通りである。 中期目標とは、「達成すべき業務運営に関する目標」 をいい、文部科学大臣が定めるものである(国立大学法 人法第2条5項)。中期計画とは、「中期目標を達成する ための計画」をいい、国立大学法人が作成し、文部科学 大臣の認可をうけたものをいう(同第2条6項)。 中期目標と中期計画の法定の事項は次の通りである (同第 30 条2項、第 31 条2項)。 中期目標・中期計画は、国立大学法人法第 35 条(独 立行政法人通則法の準用)により、国立大学法人は、中 期計画に基づく事業年度の業務運営に関する計画(年度 計画)を定め、文部科学大臣に届け公表する(独立行政 法人通則法第 31 条1項)、各事業年度の業務の実績につ いて国立大学法人評価委員会の評価を受ける(同第 32 条1項)、中期目標期間の終了後 3 ヶ月以内に中期目標 期間の事業報告書を文部科学大臣に提出し公表する(同 第 33 条)、中期目標期間の業務の実績について、国立大 学法人評価委員会の評価をうける(同第 34 条1項)と 定められている。 国立大学法人評価には、中期目標期間の業務実績評価 と各事業年度の業務実績評価(年度評価)の二つがある。 〔中期目標・中期計画の法定の意味〕 中期目標・中期計画とその評価の法定の仕組みは、次 に整理するように巧妙で、政策的で、極めて実践的であ る。 法定の意味の第一は、当然であるが、国立大学法人の 中期目標・中期計画の制度が、それぞれの事項を含めて 法定され、全国立大学法人が取り組まねばならないもの となったことである。認可、届出、公表を怠れば罰則が 適用される(国立大学法人法第 40 条)。 第二の意味は、中期目標のそれぞれの分野(教育研究、 業務運営、財務、自己点検・評価)とその目的(「質の 向上」「改善」「効率化」「情報提供」)が法定され、国立 大学法人は「教育研究の質の向上」「業務運営の改善及 び効率化」「財務内容の改善」「教育研究、組織、運営の 自己点検・評価とその情報の提供」などに取り組まなけ ればならないことである。 第三の意味は、国立大学法人法第 30 条3項(「文部科 学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとす るときは、あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、 当該意見に配慮するとともに、評価委員会の意見を聴か なければならない。」)の規定にある。これは三つの意味 に分かれる。その一つめは、中期目標は文部科学大臣が 定めるとあるが、「国立大学法人等の意見」が、「実際の 中期目標」の案になると考えられることである。 二つめは、しかし、その案には「評価委員会の意見を 聴かなければならない。」とされていることである。そ の意味を中期目標・中期計画の初年度の「国立大学法人 の中期目標原案および中期計画案について」(国立大学 法人評価委員会 総会(第5回)H 16.5.11)にお いてみることができる。それによると、「『文部科学大臣 が行う国立大学法人の中期目標・中期計画の素案の修正 について』への対応状況」では「修正の指摘を受けたす べての大学(23 大学)が、趣旨にそって修正を行って いる。」とし、「『国立大学法人の中期目標・中期計画 (素案)についての意見』(国立大学法人評価委員会意見) への対応状況」では「当該意見への対応は、各大学の自 主的・自律的な見直しや検討に委ねられていたところで あるが、89 大学中 85 大学(95.5 %)が意見を踏まえて 修正を行っている。」としている。その修正の主な内容 は、「全体の整合性確保の観点からの修正」が 85 大学、 「各大学の個性伸張の観点からの修正」が 17 大学、「具 体性の向上の観点からの修正」のうち「具体的な記述の 追加」が 72 大学、同じく「達成時期の設定」が 32 大学、 同じく「数値目標の設定」が 37 大学あり、「その他、国 立大学法人として当然に求められている事項は目標から 削除したり、全体の構成を見直す観点から修正を行うな ど、所要の変更が行われている。」とまとめている。国 立大学法人評価委員会の「修正」と「意見」によって各 国立大学法人の中期目標・中期計画はより総合的、実践 的なものとなっているはずである。そして、第二期の中 期目標・中期計画の設定はこの経験と第一期の実践を活
かしてより具体の実践的なものになると考えられる。 三つめは、国立大学法人が文部科学大臣に提出する中 期目標の原案には、文部科学省の政策の重点や方向ある いは中央教育審議会の審議の動向などが反映することは 想像に難くないことである。例えば、国立大学法人にか かわる主な論点が、「(国立大学)法人が取り組む必要の ある最小限の共通事項」として「国立大学法人評価にお ける業務運営等の共通事項に関する観点」が示され、ま た年度の業務実績評価の「教育研究等の質の向上の状況」 の評価において、「年度評価における教育研究の事項例」 が示されている(後述)。これらはこの具体の例証であ る。さらに、例えば「教育研究の質の向上」にかかわっ て文部科学省や中央教育審議会の高等教育の答申で「教 育の国際的通用性−英語によるカリキュラム設計」「学 士課程教育のディプロマ・ポィシーの設定」などが提起 されれば、あるいは文部科学省の「教育 Good Practice」 などとして政策化されればなおさら、またそうでなくて も中期目標・中期計画の評価が運営交付金の算定に反映 されることなどにより、それらの提起が多くの国立大学 法人の中期目標・中期計画に取り込まれ、年度計画にお いて着実に実施され、実現していくことになろう。私立 大学は、国立大学法人評価制度がこれらの行政等の政策 意図や目的などを迅速に実行あるいは実現していく機能 をもち、その「手段」となることを留意しておく必要が ある。 第四の意味は、中期目標・中期計画を立体的かつ実践 的に組み立てていることである。中期目標・中期計画は 分野ごとに「中期目標」を法定し、各国立大学法人にお いてそれを具体化したものが実際の中期目標となる。各 国立大学法人は、その中期目標を中期計画に、そして年 度計画へと落とし込み、計画を実行し、年度計画の業務 実績を評価する。この評価を積み上げて中期計画の実施 状況を評価し、中期目標の達成状況を評価する。これら の評価を国立大学法人評価委員会が評価する。評価の組 み立ては「中期目標−中期計画−年度計画−取組−年度 計画の業務実績評価−中期目標期間の業務実績評価」と いうように立体的かつ実践的なものになっている。 第五の意味は、第一の意味とは違う面から、法定が中 期目標・中期計画の実践性を担保していることである。 担保の仕組みは三つある。 一つめは、法定により制度的にその実践が担保されて いることである。中期目標は文部科学大臣が定め、中期 計画は文部科学大臣の認可事項であり、年度計画は同じ く届出事項であり、それぞれの業務実績が評価され、そ の結果が公表される制度となっている。また、文部科学 大臣は中期計画が中期目標の法定「事項の適正かつ確実 な実施上不適当となったと認めるときは、その中期計画 を変更すべきことを命ずることができる」(国立大学法 人法第 31 条4項)。こうして中期目標と中期計画の「一 体性」を確保できるように法定している。 加えて、国立大学法人の存続にかかわるところまで厳 しく法定している独立行政法人通則法の準用による制度 的担保がある。それは国立大学法人法第 35 条による独 立行政法人通則法の規定の準用である。その一つは、国 立大学法人評価委員会は、評価の結果を国立大学法人と 政策評価・独立行政法人評価委員会に通知し、各事業年 度と中期目標期間の業務実績評価から必要があると認め るときには、国立大学法人に「業務運営の改善その他の 勧告をすることができる。」(独立行政法人通則法第 32 条3項、第 34 条3項)と勧告が規定されている。もう 一つは、独立行政法人通則法第 35 条の「中期目標の機 関の終了時の検討」である。同条の1・2項では、文部 科学大臣は、「中期目標の期間の終了時において、」国立 大学法人の「業務を継続させる必要性、組織の在り方そ の他組織及び業務の全般にわたる検討」を行うにあたっ て国立大学法人評価委員会の意見を聴いた上でその検討 を行い、「その結果に基づく、所要の措置を講ずるもの とする。」と定めている。また、同条3項では政策評 価・独立行政法人評価委員会は、国立大学法人の「主要 な事務及び事業の改廃に関し、」文部科学大臣に「勧告 することができる。」と定めている。こうした規定によ り、国立大学法人は、中期目標期間の業務実績評価の如 何によっては、「業務を存続させる必要性」を検討され 「所要の措置を講」ぜられることもあり、さらに事業の 改廃まで問題にされることもあることになる。国立大学 法人は中期目標・中期計画の検討とその実践に否が応で も真摯に取り組まなくてはならないことになる。なお、 逆にいうと、このような事態を避けるため中期目標・中 期計画を「緩め」に設定することも考えられる。先に第
三の意味(国立大学法人法第 30 条3項)の二つ目で指 摘した国立大学法人評価委員会による中期目標・中期計 画の「素案の修正」「意見」の重要性はここにある。 二つめは、何をもつて「質の向上」「改善」「効率化」 「情報提供」というのかは別にして、各国立大学法人は 各事業年度そして中期目標機関の「実績報告書」で、 「質の向上」を図った、「改善」「効率化」を行った、「情 報提供」を行った、との説明責任(実証)を自己評価の 形で負うことによって、実態的にも担保されている。 三つめは、「中期目標期間の業務の実績に係る評価に おいては、各法人が自主的に行う組織・業務全般の見直 しや次期の中期目標・中期計画の検討に資するものとな るように留意する。また、評価結果を次期の中期目標期 間における運営費交付金の算定に反映させることができ るものとなるように留意する。」(「国立大学法人及び大 学共同利用機関法人の中期目標期間の業務実績評価に係 る実施要領」平成 19 年4月6日 国立大学法人評価委 員会決定)によって政策的にも担保されている。 (2)国立大学法人評価制度とその仕組み 国立大学法人の中期目標期間の業務の実績に係る評価 は、「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の中期目 標期間の業務実績評価に係る実施要領」(平成 19 年4月 6日 国立大学法人評価委員会決定)(以下「実施要領」 という。)に基づいて行われている。 以下、実施要領に基づいて整理する。 1.国立大学法人評価制度 実施要領の「1−(1) 国立大学法人評価制度につ いて」(1 章のタイトルは「1 中期目標期間の業務の 実績に係る評価についての検討の前提」)は、国立大学 法人制度の目的と国立大学法人評価の概要、そして国立 大学法人評価の果たすべき役割などを、以下のように整 理している。 国立大学法人制度の目的は次の二点であるとしている。 ①大学等の教育研究に対する国民の要請に応える ②我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発 展を図る その上で、国立大学法人評価の概要を次のように記し ている。 「国立大学法人(以下「法人」という。)は、中期目 標・中期計画に基づき、大学等の基本的本質を踏まえて 自主的に運営を行うものである。」と、国立大学法人の 自主的運営を前提に、「国立大学法人評価委員会(以下 「評価委員会」という。)が各法人の自己点検・評価に基 づき、教育研究の状況や業務運営・財務内容の状況等に ついて」、事業年度及び中期目標期間における「各法人 の中期目標の達成状況等の調査・分析を行い、法人の業 務実績全体について総合的に行うこととなる」。 上記の国立大学法人評価の説明を受けて、とくに「役 割等」と明記していないが、文意から国立大学法人評価 の果たすべき役割等を次のように明確に整理している。 ①「教育研究の特性や法人運営の自主性・自律性に配慮しつ つ、法人の継続的な質的向上に資する」 ②「法人の状況を分かりやすく示し、社会への説明責任を果 たしていく」 ③「教育研究の高度化、個性豊かな大学づくり、法人運営の 活性化等を目指した法人の取組を積極的に支援する」 ④「各法人が自主的に行う組織・業務全般の見直しや次期の 中期目標・中期計画の検討に資する」 ⑤「評価結果を次期の中期目標期間における運営費交付金の 算定に反映させることができるものとなるよう留意する」 特に、「①∼④」は国立大学を主体とすれば、認証評 価と論理立てはほぼ同じである。「⑤」は国立大学法人 評価の特別な役割である。 続いて、実施要領の「1−(2) 評価の視点等」で、 「積極的に評価する」事項、「重視する」視点を、次のよ うに整理している。 国立大学法人評価にあたって、「国立大学等の基本的使 命に十分配慮しつつ、法人化を契機としていかに各法人 の改革と新生が図られたかという視点が重要である。」と した上で、次の事項を「積極的に評価する」としている。 「①個性豊かな大学、国際的にも存在感ある大学等を目指 して教育研究活動等が積極的に展開されていること」 「②学長・機構長のリーダーシップの下、機動的・戦略的 な運営が実現されていること」 「③国民や社会に対する説明責任を重視した、社会に開か れた運営が行われていること」 ここでは、国立大学法人化の論点であった学長のリー ダーシップと機動的・戦略的な運営が、「積極的に評価 する」事項として正面に据えられていることに、留意が 必要である。これは、国立大学法人化をめぐる議論のな
かで論点となった国立大学の管理運営等をめぐる改善・ 改革の諸課題(以下総称して「国立大学法人化の論点」 という。)が、国立大学法人評価制度において「積極的 に評価する」事項として組入れられ、その実現を目指し ているといえる。もう一つ留意しなければならないこと は、「個性豊かな大学」とともに、わざわざ「国際的に も存在感のある大学」をあげていることである。ここに も国立大学法人評価において今日目指すべき重要な大学 像が呈示されているといえる。 「重視する」視点は分野ごとに示されている。 「教育研究の評価については、その特性に配慮して、 独立行政法人大学評価・学位授与機構(以下「機構」と いう)に評価の実施を要請し、その結果を尊重する」と した上で、教育については、①「教育の質的な向上を図 る」、②「教育の受け手である学生の立場に立った教育 機能の強化」の視点を重視するとしている。 「学生の立場に立った教育機能の強化」の視点に留意 が必要である。例えば、この「重視する」視点を受けて 「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」(平成 20年3月25日中央教育審議会大学分科会制度・教育部会) の提起のいくつかを「学生の立場に立った教育機能の強 化」として「年度評価における教育研究の事項例」(後 述)に取り上げれば、先に指摘したように、国立大学法 人評価は行政等の政策意図や目的などが迅速に実行ある いは実現されていく有効な「手段」となり、それにむけ て大学の取り組みが急速にすすむということになる。 研究については、①「学術的な視点」、②「社会、経 済、文化への貢献」を「重視する」視点とされている。 業務運営・財務内容等はより具体的に「重視する」視 点を次のように示している。 「①法人内の資源配分を戦略的に見直し、機動的に決定・ 実行しているか」 「②法人内コンセンサスの確保に留意しつつも、全学的・ 全機構的な視点による本部の主導による意思決定の仕組 みを確立しているか」 「③法人運営全般にわたっての、ルールの明確化、透明性 の確保や社会への積極的な情報提供」をしているか 「重視する」視点と「積極的に評価する」事項を対応 させると次のように整理できる。 「大学等の基本的本質」や「大学等の教育研究の特性」 などから、教育研究は一律に「重視する」視点や「積極 的に評価する」事項などを具体に特定することが難しい が、業務運営や財務などではより具体に示されているこ とに留意が必要である。 2.国立大学法人評価制度の仕組み 〔「積極的に評価する」事項と「重視する」視点の読み解 き〕 国立大学法人評価制度の目的と仕組みは、「積極的に 評価する」事項と「重視する」視点を次のように読み解 くことによって一層明確になる。 A 国立大学法人は、 「法人運営全般にわたっての、ルールの明確化、透 明性の確保や社会への積極的な情報提供」をし (「重視する」視点)、 「学長・機構長のリーダーシップの下、機動的・戦 略的な運営」(「積極的に評価する」事項)を実現 し、 「法人内の資源配分を戦略的に見直し、機動的に決 定・実行し」、「法人内コンセンサスの確保に留意 しつつも、全学的・全機構的な視点による本部の 主導による意思決定の仕組みを確立」(「重視する」 視点)することにより、 B 国立大学は(の)、 「教育の質的な向上を図るとともに、教育の受け手 である学生の立場に立った教育機能の強化」と、 研究における「学術(的な視点)とともに、社会、 経済、文化への貢献」(「重視する」視点)を図 り、 「個性豊かな大学、国際的にも存在感ある大学等を 目指して教育研究活動等を積極的に展開」(「積極 的に評価する」事項)し、 C 国立大学法人と国立大学は、 「国民や社会に対する説明責任を重視した、社会に 開かれた運営」(「積極的に評価する」事項)を行 う。