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若年者就業と地域組織間連携

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Academic year: 2021

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(1)若年者就業と地域組織間連携 國 重 正 雄. 1 はじめに. 成を行い,終身雇用を保障するという時代で はなくなってきている1).2008 年のリーマン・. 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災か. ショックの際にも,多くの派遣労働者が解雇あ. ら早くも 1 年あまりが経過する.2008 年の金. るいは雇止めとなったことは記憶に新しい.. 融・経済危機以降,ようやく回復の兆しが見え. とりわけ現代に生きる若年者にとって,就. つつあった日本経済に対して,東日本大震災と. 職・就業は大変厳しい状況が続いている.非正. 福島原発事故による放射能問題,電力不足は計. 規雇用者と正規雇用者とでは,結婚する比率に. り知れない影響を及ぼしつつある.. 差が生じているという状況も生じている2).さ. また,1990 年代初頭のバブル経済の崩壊後,. らに就職に失敗したことを苦に自殺した 30 歳. 既に 20 年が経過した.今やバブル崩壊後に生. 未満の若者は,2010 年に全国で 150 人に達し. まれた世代が成人するという時期を迎えつつあ. ており,2007 年の 2.5 倍となっているという3).. る.彼らは日本の高度経済成長もバブル期の経. このような日本社会の中に差し込む数少な. 済的繁栄も体験していない世代である. そして,. い 光明 は,東日本大震災 で 多 く の 被災地支援. 団塊の世代が 60 歳定年の時期を迎える 2007 年. ボランティアや NPO が活躍してきたことであ. を 通過 し た.し か し,2006 年 4 月 に 改正高年. る.振り返ればボランティアや NPO 法人の活. 齢者雇用安定法が施行され,定年引上げ,継続. 動 は,阪神淡路大震災以降,こ の 十数年間 で,. 雇用,定年廃止といった対策が採られたため,. 活発化が顕著なものとなってきたといえる.そ. 団塊の世代が 65 歳になる 2012 年に,労働市場. して,被災地支援のボランティア活動には数多. から本格的に引退の時期が到来する.企業に. くの若年者が参加し,活躍してきた.厳しい社. とって退職金の負担が増加し,経験豊かな労働. 会経済情勢の中にあっても,若年者にとって将. 力が減少するという意味で「2012 年問題」と. 来に希望の持てる社会づくりを目指すことが切. も呼ばれている.. に望まれている.. このような状況の下で,戦後の経済成長の中. 筆者 は,こ れ ま で 職業能力開発 と 地域産業. で形成された終身雇用制や年功序列賃金体系も. 界・地域団体との関係,中小企業技術者の研修. 揺らいでいる.既に戦後の大量生産,大量消費. 事業と地域産業界・近隣大学等との関係につい. という社会構造が変革し,高度成長,安定的な. て検討・研究してきた.雇用・労働の研究分野. 成長を続けてきた時代も終焉した.経済成長の. で,職業能力開発政策における地域社会との関. 低迷は,企業の雇用・就業面にも大きな影響を. わりを重視する指摘も次第に見られるように. 及ぼし,企業福祉の時代も終わりつつある.企. なった.地域社会の役割が今,問われつつある.. 業が全ての従業員に対して,研修などの人材育. しかしながら,これまでの職業能力開発政策に.

(2) 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 116 (312) � % �. �� ������ ����. ��. ���� ���� ����. ����. ������. ����. ���� ����. ������. ��. ��� �. ����. �. � ���. ���. �. �. ���. ���. ��� ���. ���. ��� ���. �. ���. ���. �. �. ���. ��� ��� ���. ���. ���. ��� ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ��� ���. ���. �. �. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. ���. �. ���. ��� ���. ���. � � ���. ���. ���. ���. �. ���. ���. � �. ���. ���. ���. ���. ��� �. ���. ���. ���. ���. �. ���. ���. � ���. �. �. �. �. 出所:総務省「労働力調査」. ��. ��. ��. ��. ��. ��. �. � � � � � � � � � � � � ��. � � �. 図1 若年者失業率の推移 � � � � � � �. � � �. �. �. おいて,地域の企業集団や経営者団体,公的機 � � � � � � �関等がどのような役割を果たしてきたのか,具 � � � � � � � � � � � � � � ��� �� 体的に検証した研究はさほど多いとは言えな. 討する必要がある.. � �� ���. � � �����. ��� ���. ���� ��. い.また,職業能力開発政策における地域社会 �����. 地域における職業能力開発政策の有効性を問う � � � � � � 観点から,地域組織間の連携について検証・検 ������. の役割が,今後重要となるのであれば,地域の ���� � � 中小企業集団,企業経営者団体や公的機関とい � � � う地域組織の役割や関係性をどのように捉える のか,さらに踏み込んでそれらの連携のあり方. � � � � � � ���� ��. ���� ���� ��� �� 2 若年者就業の課題 ���� �� �� ��� ��� �� ��� �� 2―1 若年者の失業と二極化問題 ������ 本稿 は,若年者 の 失業問題自体 を 中心的 な ��. テーマとしている訳ではないが,はじめに近年. ���� ���� ��� ��� ������ ��� ��� ��� ���� ���� をどのように考えるべきか,概念的な枠組が用 � ������������ � ��� �� � ��� � � の若年者の雇用状況を簡単に振り返っておきた � � � � ��� ��� �� � � � � � � � ���� 年間 の 若年 ���� ��� � � � ���� 意されなければならないと考える. い.図 1 は��� 平成 に 入って 以降,22 � � � � � � � � � � �������������� � ������ 非正規雇用者の増加,中小企業の若年技術人 者の失業率について,15 歳から 29 歳まで 5 歳 ��� � ����. 材の育成,若年者の就職・就業問題など,いず. 刻みの階層で推移を示している.いずれの若年. れの課題に対しても,短期的にも中長期的にも. の階層も全年齢計の失業率を上回っている.ま. �. �������.

(3) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (313) 117. た,年齢の若い層ほど失業率が高いことも示し. 資本ストックに適用すべく,制度的硬直性や摩. ている.しかし,この推移を注意深く見ると,. 擦によって構造的失業が増大し,移行期におけ. 25~29 歳の平均は,この 3 年間は 7.1% と高く,. る過渡的な性格の不況が生じたこと,⑹ 構造. 平成 14 年のピーク時の値に戻ってしまってい. 転換,工業生産力の移転と工業製品の交易条件. ることが分かる.一方,15~19 歳の階層の失. 悪化によって,中心地域に相対的に不利な所得. 業率 は , こ の 数年 で 10% 台 か ら 1 桁台 へ と 下. 再分配がなされたこと,である(Beenstock, 1984,. がってきている.. pp. 14─17, 61) .. また,平成元年と平成 22 年の失業率を比較. 第 2 の問題は,若年者がようやく就職や就業. すると,15~19 歳では 7.0% から 9.8% へ 1.4 倍. を果たしたとしても , かなりの割合の人が早期. であるのに対し,20~25 歳では 3.8% から 9.1%. に離職してしまうという問題である.一般に 7・. へ 2.4 倍,25~29 歳 で は 2.8% か ら 7.1% へ 2.5. 5・3 問題と言われるように,就職後 3 年以内. 倍と高い値となっており,全体として高止まり. に,中卒者で 7 割,高卒者で 5 割,大卒者で 3. の方向に収斂しつつあることが分かる.. 割が離職してしまっている.若年者の就業環境. このような高い失業率が続く若年者の雇用状. は大変厳しい状況にあるという一方で,就職し. 況には , 具体的な課題が存在する.. ても早期に離職してしまうという状況が他方に. 若年者の就業問題の第 1 点は,非正規労働者. ある.太田聰一(2010)は,自発的離職による. の問題である.近年では,いわば「雇用劣化」 ,. 失業のシェアが若年で高く,景気が良くなって. あるいは「雇用断層」という状況を生み出して. も自発的に会社を辞めて仕事探しをする人が多. い る.今 や 20 歳~24 歳 の 就業者 の 約 4 割 が,. くなるため,若年失業率は景気に反応しにくく. 非正規雇用者となった.非正規労働者の割合が. なるとしている(太田,2010, p. 79).. 高 ま る と と も に,完全失業者数(2012 年 1 月. また,サスキア・サッセンは,経済と都市空. 現在)も,15 歳~24 歳では 41 万人,25~34 歳. 間の二極化について論じている.経済の二極. では 71 万人にものぼっている.. 化とは,賃金格差の問題であり,グローバル化. 若年者の失業が大きな社会問題となっている. の中で成長した金融業や会計・法律,エンジニ. のは,我が国だけではない . 欧米先進国に共通. アリングなどの高度な専門サービスに従事する. した課題となっている.M. ビーンストックは,. 高所得者層が存在する一方で,移民労働者を含. 「移行理論(Transition Theory) 」に よ り,周. む低賃金労働者が建設業や衣料品・家具製造な. 辺地域に波及した工業化が,相対価格を変化さ. どに従事し都市を底辺で支えているという二極. せ,部門間・地域間の利潤率を変えて,世界的. 化である.都市空間の二極化とは,グローバル. な構造変化を加速させたと主張している.移行. 都市空間において,超・高給職と超・低賃金労. 理論の命題は次のようなものである. . 働が都市の中で偏って集積していることである. すなわち,⑴ 1960 年代半ばから途上国の経. (サッセン,2008,p. 394).. 済成長率が上昇し,特に製造部門での成長が加. サッセン(2004)ではアメリカ・日本をはじ. 速したこと,⑵ 1970 年代に世界的な工業製品. め と す る 先進諸国 で,国民経済 の 重要 な セ ク. 価格が低下したこと,⑶ 工業製品の下落によ. ターだった製造業の主要部門が落ち込んでいる. り,工業部門における収益が悪化し,旧工業地. が,製造業自体はグローバルなレベルでめざま. 域(OECD 諸国全般)の脱工業化が進んだこと,. しく伸びていること,今日の成長は,産業複合. ⑷ 新工業地域(途上国)の 収益増大 と 旧地域. 体で起きており,中産階級が増えることなく,. (OECD 諸国)からの国際資本移動が進んだこ. 所得格差が開いていること,そして社会経済的. と,⑸ 旧地域内では,相対価格の変化と低い. な二極化は,サービス産業における雇用と雇用.

(4) 118 (314). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 関係の非正規化に関して二極化するとした.. な指摘は,先に述べたビーンストックの移行理. サービス産業における雇用と雇用関係の非正. 論に基づく先進国の状況を裏づけ,描出したも. 規化に関しても,サッセンは 2 つの重要な指摘. のとなっている.. を行っている.1 点目は,サービス産業が技術. 我が国におけるこうした状況について,山田. 水準の高低で両極端に分断されていることであ. 久(2007)は,このような正社員・非正規社員. る.アメリカにおける労働集約型サービス産業. の二重構造が続けば,職業能力・所得面での社. の新規雇用の大半は低賃金であり,新規雇用に. 会の階層化が生じるリスクが高いとしている4).. 占めるその割合が,1970 年代の 29% から 1980. さらに,みずほ総合研究所(2009)は,若年. 年代は 37% へ増加している.その対極に位置. 者の非正社員化の動向による雇用断層が今後の. するのが情報・知識集約型サービス産業におけ. 「労働力の質」に影響を与えるだけでなく,時. る知識専門職である.2 点目は,雇用関係の非. 間をかけて日本経済と企業の活力を奪っていく. 正規化には 2 つの傾向があることである.第一. 懸念があると指摘している.現在の日本社会に. の傾向は,雇用関係の構造化において,企業の. 蔓延する閉塞感は,この事態に対する打開策が,. 役割が弱体化していること.第二の傾向は,募. 明確に示されていないことが 1 つの要因である. 集,選抜,訓練 と いった 伝統的 な 労働市場 の. と考えられる.. 機能 が,労働市場 や 企業 か ら,コ ミュニ ティ. 駒村康平(2011)は,大卒,短大卒の就職内. や世帯に移転していることである(サッセン,. 定率の低下とともに,「就職枠外者比率」すな. 2004, p. 235) .. わち学校から直接,就職職業生活に入っていか. この第二の傾向に関連して,我が国の状況を. ない人の割合が 1980 年代末に急増しているこ. 須賀優(2009)が 分析 し て い る.須賀 は 1990. と,さ ら に,高校中退者 7 万 3 千人(平成 19. 年代 に お け る 日本企業の労働者 1 人当たりの. 年調査),大学,短大,高専の中退者は 5 万人(平. 教育訓練費 を 分析 し た 結果,1990 年代 に 採用. 成 21 年調査)に達していることなどから,教. された常用労働者に対する教育訓練費は,1980. 育から職業への連結の揺らぎを指摘している.. 年代後半と同等かそれ以上であることを示して. そして,「グローバル経済のもとで変わったも. いる.しかし,一人当たりについての教育訓練. の,変わらなかったもの」として,旧システム. 費は減少していないものの,超氷河期といわれ. の中で日本的経営は部分的には変化したが,本. る時期であるため, 新規採用の絞込みは大きく,. 質のところは変わらず,変化したのは日本型雇. 社会全体でみた場合の企業による教育訓練の比. 用慣行の対象メンバーを厳選するという点であ. 率は下がっている. 須賀も指摘しているように,. るとしている5).. 問題となるのは,この間に企業に採用された者. そこで,課題となってくるのは教育・訓練と. と不安定な雇用身分の下で能力開発機会を十分. 雇用とのギャップを減らさなければならないと. に与えられずにいる者との間での二極化なので. いうことである.そのために,民間セクターと. ある.. の連携を図ることが考えられる.また,企業に. さらに,サッセン(2008)では,社会経済的. 特化した高等レベルの技術者養成ではなく,産. な二極化は,ニューヨーク,ロンドン,東京と. 業に特化した,失業者,フリーターにとって身. いった大都市で起きており,新しい成長セク. 近な訓練,技能修得が望まれている.また,企. ターが 大都市 に 集積される中で,収益性の低. 業ニーズや産業界の要請に,より的確に対応す. いサービスや低賃金労働に対する需要も生み. るためには,全国画一的な政策展開では難しく,. 出されていることを指摘している(サッセン,. 雇用対策を中央政府から地方政府へ移行するこ. 2008, pp. 372─376) .サッセ ン に よ る こ の よ う. とが必要となっている..

(5) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (315) 119. 太田聰一(2010)も地域ごとの取組みの重要. も,生活に必要な物資や社会制度にアクセスす. 性を指摘している.各地方が若年者の就業問題. ることができないで, 『社会的排除』の状態に. の発生源であること,若年雇用対策は,国レベ. ある人たちが増えていると言われている」と述. ルの一律なものよりも,地域に降り立ったもの. べている(久米他,2010, p. 1).. の方が, 効率的に遂行されること, そのキーワー. ひきこもりやニート,あるいはネットカフェ. ドは「地域適合性」と「参加」であるとしてい. 難民と言われるこれらの若者は,このような意. る6).その例として,地域レベルにおける労働. 味で,社会的排除の状態にあると言える.単に,. 需給の見通しや,望ましい教育訓練を事業主や. 社会生活を送る上で必要な財,すなわち資産や. 経済団体に提供してもらうことで,地域の事情. 収入が欠如しているだけでなく,社会関係,す. を織り込んだ,より効果的な教育訓練プログラ. なわち雇用関係や教育・訓練を受ける関係,相. ムを策定することができるようになること,ま. 談する人間関係などが欠如しているのである.. た,就業意識を高めるために小中学校において. 阿部彩(2011)は,大震災後の状況を含め,貧. 就業体験学習を実施する際にも,地元教育界と. 困と格差が生じた社会を「弱者の居場所がない. 産業界,そして地域社会の緊密な連携が必要と. 社会」と表現し,関係からの排除,仕事からの. なることを挙げている.. 排除,場所からの排除を説いている. 久米功一他は,非正規雇用者の貧困と社会的. 2―2 社会的排除と社会的統合. 排除の実態について,雇用形態の違いに注目し,. 前節では,1990 年代からの長期に亘る雇用. 労働参加と社会的包摂の関係を実証的に明らか. 情勢の悪化により,正社員として就業できな. にしている.その結果,①日雇い派遣は,すべ. い 若者 が 増 え,正社員・非正規社員間 の 二極. ての社会的排除指標において排除率が高いこ. 化が生じている問題を扱った.日雇いとして. と,②製造業派遣では社会関係の欠如が顕著で. 働きながらネットカフェで寝泊りする若者も. あること,③これらの結果は,派遣労働という. 多い.い わ ゆ る ワーキング・プア(働く貧困. 雇用形態よりも雇用契約期間が短いことや製造. 層)が 社会的問題 と なって い る.さ ら に,ひ. 業における業務に関連することが分かった,と. きこもりやニート(NEET:Not in Education,. し て い る(久米他,2010, p. 22).ま た,こ れ. Employment or Training)と い う 状況 の 若者. らの分析の結果の政策的対応として,雇用保険. も数多い.こうした問題は,1990 年代のヨー. の加入条件の緩和,職業訓練を受けながら生活. ロッパ で も 大 き な 問題 と な り,社会的排除. 費も保障する訓練・生活支援給付7),結婚する,. (Social Exclusion)や社会的統合あるいは社会. 子どもを持つなどの家族コミュニティによる包. 的包摂(Social Integration)といった問題が政. 摂,職場コミュニティの活性化,非正規社員の. 策的課題として盛んに議論されてきた.. メンバーシップの確立などを提案している.さ. 久米功一他 は, 「社会的排除 と は,社会生活. らに,この分析の対象外となった,非労働力化. を送る上で共通に必要となる財や社会関係を. して社会的排除にある人々の状態についても把. (他人と比較して)相対的に欠くことをいう.. 握する必要があるとしている.. 逆に,そうした関係をもっている人を社会的に. このような問題に対し,各都道府県では,ジョ. 包摂されていると呼ぶ.日本では従来,人々は. ブカフェ,若者就職支援センターといったキャ. 働くことによって,社会・経済的に自立すると. リア・カウンセリングを中心とする就職相談窓. 同時にさまざまな社会制度の庇護を受けるとい. 口が設置されており,就職難を背景に,その利. う意味で,労働参加によって社会的に包摂され. 用者もこの数年,増加傾向にある.. てきた.しかし,近年,労働参加をもってして.

(6) 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 120 (316). 表 1 資本の理論の類型 新資本理論. 古典理論. 人的資本. 文化資本. 社会関係資本. 理論家. マルクス. シュルツ,ベッカー. ブルデュー. リン,バート,マー スデン,フラップ, コールマン. 説明. 社会関係:資本家(ブル ジョアジー)によるプロレ タリアートの搾取. 労働による余剰価値 の蓄積. 支配的なシンボルと 価値(バリュー)の 再生. 社会的ネットワーク グループの連帯意識 に埋め込まれた資源 (solidarity) の利用とアクセス と再生 (reproduction). ブルデュー,コール マン,パットナム. 資本. A. (消費市場における)使 技術的スキルと知識 支配的な価値の吸 社会的ネットワーク 相互の評価 用価値と(生産-労働市 の投資 収(internalisation), の投資 (recognition)と承認 場 に お け る)交換価値 又は不承認 (acknowledgment) の 間 の 余剰価値 の 一部 (misrecognition) の投資 B.財の生産と流通におけ る投資. 分析 (構造的)階層 レベル. 個人. 個人/階層. 個人. グループ/個人. 出所: (Nan Lin, 1999)筆者訳. 3 地域組織間連携とは何か. の分析レベルが,単に階層や個人ではなく,グ ループ及び個人であることに注目しておきた. 3―1 地域活動団体の類型と機能. い.. 社会的排除については,地域コミュニティの. さらに,マーク・グラノヴェダー(1998)は,. 包摂力に期待が高まりつつある.先述した阿. 親密な友人や親類は就職情報で我々を助けよう. 部(2011)も,東日本大震災においては地域コ. と強く動機づけられているかもしれないが,実. ミュニティの大切さが改めて認識されており,. はたまにしか会わないような人との「弱い紐帯」. 社会的包摂という観点からも地域力は重要であ. の方が,援助を提供できるような構造的な位. り,さらに,この地域の包摂力を社会関係資本. 置にあるとしている(グラノヴェダー 1998,. (Social Capital)という言葉で捉えられるとし. pp. 50─52, p. 151).就職情報 に つ い て は,「強. ている.. い紐帯」よりも,意外ではあるが「弱い紐帯」. 表 1 は,これまでの資本の理論の類型をリン. の方が,有効であるというのである.雇用機会. (1999)が整理したものである.マルクスによ. の拡大にあたり,地域における連携は,より緩. る古典理論の資本から新資本理論としての人的. やかで異業種のものが望ましい.ビジネスチャ. 資本(Human Capital) ,文化資本,社会関係. ンスの考え方と同様に,より緩やかで異業種の. 資本(Social Capital)が位置づけられている.. ものの方が,就職,雇用に関するものとしての. 近年,ロバート D. パットナムの著作を中心に,. 可能性が拡大すると考えられるからである.こ. 社会関係資本に対する関心が高まり,このテー. れまで取り組まれてきた職業能力開発校ごとの. マに関する論文も多数提出されている.表 1 の. 企業団体である職業能力開発推進協議会や人材. 中の最右欄では,社会関係資本が「グループの. 育成機関同士 の ネット ワーク の よ う な 取組 み. 連帯意識と再生」と説明され, 「相互の評価と. は,その基礎的な連携となるものと考えられる.. 承認の投資」と定義されている.とりわけブル. では,地域コミュニティについては,どのよ. デュー,コールマン,パットナムといった論者. うに具体的に捉えればよいのだろうか.筆者は.

(7) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (317) 121. 表 2 地域活動団体の類型と提供される機能 地域活動団体により提供される機能 多 数. 少 数. 濃厚 (狭域). Ⅰ 地縁型活動団体 (自治会等) ○環境美化・清掃 ○住民相互の連絡 ○お祭り・イベント開催 ○行政からの広報・連絡 ○街路灯・集会施設の維持管理 など. Ⅲ テーマ別地域活動団体 (老人会,子供会,消防団) ○老人相互の親睦 ○子供を通じた親睦 ○消防・防犯 など. 薄弱 (広域). Ⅱ 地域ネットワーク活動団体 (まちづくり協議会等) ○住民意見の行政への反映 ○予算の配分 ○まちづくりへの参加 など. Ⅳ テーマ別ネットワーク活動団体 (NPO 法人等) ○地域福祉・保健 ○教育(不登校・引きこもり等) ○芸術・文化活動 など. 地域的基盤. 出所:國重(2006)を修正. 表 3 地域組織の類型 同種・異種. 連携の広さ. 狭いネットワーク. 広いネットワーク. 同種連携. 会員組織型. 連合会型. 異種連携. プラットフォーム型. 連絡会型. 出所:筆者作成. これまで,地域社会における団体・組織に注目. 施設の維持管理に至るまでの多種,多数の機能. し,研究を進めてきた.具体的には,自治会,. を提供している.同じ地域的基盤の濃厚な団体. 子ども会,消防団などの地域社会組織に関して,. でも消防団や子ども会などは,ある程度活動の. 地域的基盤や提供機能数に関する類型などを試. 目的が定まった団体であり,「Ⅲ テーマ別地. みた(國重,2006) .. 域活動団体」として整理される.「Ⅳ テーマ. 表 2 は,地域活動団体により提供される機能. 別ネットワーク活動団体」は,地域福祉・保健,. の多寡と地域的基盤の濃淡という 2 つの軸によ. 教育,芸術・文化活動などの機能を提供してい. り類型化を試みたものである.例えば,地域的. る場合が多い.非営利活動団体として法人格を. 基盤が濃厚でその地域社会組織により提供され. 有している団体もある.特に,地域福祉や教育・. る機能の数が多数であるものは,自治会などの. 子育て支援の分野では,こうした団体・組織に. 地縁的活動団体である.一方,地域的基盤が薄. ついての実践分析や研究も多数に及んでいる.. 弱で,提供される機能の数が少ないものはネッ. 表 3 は,地域組織を類型化したものである.. トワーク型活動団体であると言える.. 連携の広さと同種・異種の連携という 2 つの軸. 表 2 ではこの類型に基づいて,具体的に提供. により,会員組織型,連合会型,プラットフォー. される機能を当てはめている.表中の「Ⅰ 地. ム型,連絡会型を位置づけている.のちにこの. 縁型活動団体」では,環境美化・清掃,住民相. 類型を用いて職業能力開発分野の地域組織を類. 互の連絡から,防災・防犯活動,街路灯・集会. 型化する..

(8) 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 122 (318). 表 4 経営者団体内におけるセミナー等の主要な対象者の雇用就業形態 . (複数回答). 合計. 大企業 サラリー マン. 中小企業 サラリー マン. 公務員・ 団体職員. 自営業・ 自由業. パート・ アルバイト. 主婦・ 学生. 離職者・ 無業者. 対象層を 想定して いない. 全体. 5,750. 21.0. 60.3. 20.5. 40.2. 14.9. 18.7. 20.9. 13.2. 事業主団体. 1,337. 8.6. 72.2. 7.3. 72.6. 11.0. 8.2. 6.4. 3.9. 231. 2.2. 78.4. 3.0. 42.0. 7.8. 2.2. 0.9. 3.9. 1,106. 9.9. 70.9. 8.1. 79.0. 11.7. 9.4. 7.6. 2.4. 民間企業. 606. 39.9. 61.7. 19.5. 27.6. 20.1. 23.3. 28.5. 16.7. 公益法人. 1,559. 36.0. 77.5. 29.8. 27.5. 6.2. 7.4. 15.1. 3.7. 296. 10.8. 33.1. 13.9. 27.0. 29.7. 44.9. 63.2. 7.8. 1,215. 9.7. 19.2. 26.4. 26.7. 22.1. 37.9. 24.5. 43.0. 737. 18.6. 79.6. 18.9. 46.4. 18.6. 15.7. 30.3. 2.3. うち協同組合・ 商工組合 うち商工会議 所・商工会. 専修学校等 大学等 職業訓練法人. 出所: (独)労働政策研究・研修機構編(2008) (単位:%,合計欄縦列は実数). 次に,これらの地域の経営者団体などが果た. 地域の経営者団体や専門学校,職業訓練法人. している役割に眼を向けることとする. 近年は,. が教育訓練に多様な形で取り組んでいることが. 「教育訓練の主役を担ってきた企業の役割が縮. 読み取れるが,日本の地域の雇用促進について. 小しつつある」ことから, 「 (教育訓練サービス. 必要なことを樋口美雄とシルヴァン・ジゲール. 市場を整備する)にあたって,これまで注目さ. は,次のようにまとめている(樋口・ジゲール. れてこなかった公益団体や経営者団体といった. 2005, p. 10, 11).. 公的組織の役割に注目する必要がある」 ( (独). ⑴ 知識基盤を構築し,従来の公共投資に代表. 労働政策研究・研修機構編(2007a) )という指. される外部依存型の雇用創出策から,熟練. 摘がある.. した労働力を育成し,活用できる地域内部. (独)労働政策研究・研修機構編(2008)は,. 自律型の開発戦略への移行.. 経営者団体における教育訓練プロバイダーとし. ⑵ 労働市場政策および経済開発政策の連携を. ての能力開発・人材育成を分析している.表 4. 強化する必要があり,地域が独自の判断で. は,協同組合,商工組合,商工会議所,商工会. 両者の調整をできるように権限と責任が与. がセミナーや講習会の開催に際し,どのような. えられること.. 対象者を中心に行っているかを示している.. ⑶ 地域特区的に各地域が独自の戦略を実施す. こ の 表 か ら は,商工会議所・商工会 は 中小. ることにより,それぞれの試みの成果を評. 企業 サ ラ リーマ ン(70.9%) ,自営業・自由業. 価することによって,他の地域もそれを参. (79.0%)を中心に対象とし,協同組合等は,中. 考にすることができること.. 小企業サラリーマン(78.4%)を主な対象とし. ⑷ 地域が戦略の立案と政策の方向づけを決定. ていることが分かる.また,専門学校等が主な. するためには,自治体とともに企業や労働. 対象としているのは,離職者・無業者(63.2%). 組合,市民,NPO の参画が不可欠であるこ. であり,離職者・無業者の割合が次に高いのは. と.. 職業訓練法人であることが分かる.. 上記のうち,⑷ の指摘は,本稿の課題認識.

(9) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (319) 123. 就業継続(労働市場への社会的統合). 技術力向上・技能継承. 教育・訓練. 出所:筆者作成. 図 2 職業能力開発政策における 3 つの役割と地域組織との関係. に即したものであり,妥当なものと思われる.. 企業,地域企業群などから構成されているもの である.この地域企業群には,商工会・商工会. 3―2 職業能力開発政策の 4 つの主体と 3 つの 役割. 議所,経営者協会,経済同友会,中小企業団体 中央会,工業会など様々な組織・団体が含まれ,. 若年者の雇用・就業対策の中でも,有効なも. これらの組織・団体も地域社会の構成員である. のと位置づけられているのが,職業能力開発政. と捉える.. 策である.. 図 2 は,職業能力開発政策の役割と各主体の. これまで職業能力開発と地域産業社会との関. 関係性を示した模式図である.内側にある逆三. 係を論じた際にも整理してきたが,職業能力開. 角形 が 職業能力開発政策 の 3 つ の 役割,①教. 発 に は,3 つ の 役割,す な わ ち,教育・訓練,. 育・訓練,②就業継続(労働市場への社会的統. 技術力向上,技能継承のほかに,就業継続(労. 合),③技術力向上・技能継承の支援を示して. 働市場への社会的統合)という役割がある.例. いる.そして,3 つの頂点には,教育訓練機関,. えば,職業技術教育訓練は「労働力の質(企業. 職業紹介・社会 サービ ス 機関,試験研究機関,. の経営・競争力の向上,労働者の収入確保)に. 近隣大学が配置されている.. 直接影響するばかりでなく,地域における学習 支援,イノベーション過程,恵まれない階層の. 3―3 職業能力開発における地域組織間の連携. 労働市場への社会的統合という機能を有してい. 次に,上記の整理を基に,本節では若年失業. る. 」 (Grollmann and Rauner, 2007)とされて. 者に対する職業能力開発の課題における地域組. いる.また,職業能力開発を考える際,その主. 織間の問題を検討したい.「組織間関係」ない. 体として,個人,労働市場,地域社会,行政と. し「組織間連携」という考え方は,近年,経営. いう 4 者を想定する.ここでの地域社会とは,. 学の中で扱われているものである.例えば,山.

(10) 124 (320). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 倉健嗣(1993)は,組織間関係論の中で,地域. ⑶ パートナーシップの成功のポイントは,そ. 社会における企業のパワーと組織間ネットワー. の 規模 と パート ナー間 の 信頼関係 に あ る.. クとしての地域社会について論じている.また,. 規模は参加者数が多すぎないこと,また,. 山倉(2009)では,中小企業が成長していくた. 信頼関係に関して民間企業の政策参加の負. めには,他企業や他組織との共同で戦略展開を. 担を減らすために,公的機関が柔軟に対応. していくことが求められているとしている.. できるかということを挙げている.. 菊池宏之(2007)は,組織間連携という視点. 地域レベルにおける多様な主体がパートナー. から,主体間関係における菓子卸売業の販売戦. となって,職業能力開発を中心とする支援体制. 略の解明を試みている.そこでは,企業間の協. を整え,政策の運営会議や公的機関との関係を. 調的パートナーシップを構築することが求めら. 整理しており,大変示唆に富む知見である.特. れており,そうしたパートナーシップ構築の成. に,規模は参加者数が多すぎないことという点. 果を得る条件として,①信頼の形成,②組織間. は重要である.例えば,ジョブ・カード制度は,. 学習の重要性が指摘できる, としている(菊池,. 書類の数だけも多数に上る.関係機関の数が多. 2007, p. 52) .本稿 で の 組織間連携 と も 通 じ る. く,広範囲なものになればなるほど,制度の基. 課題整理となっている.. 本形はシンプルなものにすべきである.まして. また,香川・伊藤(2003)は,ケーススタディ. 全国的なもので,かつ精緻なものとなると,そ. としてイギリス・イングランド北東部のサン. れを動かす労力及び経費は,莫大なものとなり,. ダーランドで若年失業者向けニューディール政. 結局,機能することが難しいという結果となる.. 策が実施された例を扱っている.職業能力開発. そこで,3─1 で整理した考え方である表 2 の. と地域レベルでのパートナーシップの成功のポ. 類型を職業能力開発に関する諸団体・組織につ. イントは,その規模とパートナー間の信頼関係. いて当てはめてみたい.表 5 が職業能力開発に. にある,としているが,地域組織間連携で生ま. 関係する地域組織の類型である .. れる信頼関係は,社会関係資本の蓄積につなが. 会員組織型では,職種ごとに組織されている. るとも考えられる.. 技能士会,例えば調理技能士会や塗装協会など. その研究の結果では, 「単独で職業能力の開. が位置づけられる.これらの連合会として,左. 発のみを行っても,失業率の低下につながらな. 官業組合連合会や技能士会連合会があり,より. い,地域レベルでのパートナーシップを用いな. 広いネットワークとなっている.. がら運営された場合,効率的な政策効果を追求. プラットフォーム型は,異種の法人・企業の. することができる」としている.その中で,こ. 連携であり,文字通り商業者や工業者,サービ. の研究で得られた知見を次の 3 点にまとめてい. ス事業者等で組織される商工会,商工会議所な. る.. どが位置づけられるほか,各職業能力開発校ご. ⑴ 新規雇用を生むために,地域レベルでの投. とに組織される地域の職業能力開発推進協議会. 資活動と雇用政策がリンクしている必要が. もここに位置づけられる.また,製造業やサー. ある.また,単に雇用主と公共職業サービ. ビス業など様々な事業者で活動が展開されてき. スだけではなく,地域レベルにおける多様. た異業種交流グループもこの異種連携というこ. な主体がパートナーとなり,サポート体制. とで,プラットフォーム型に入れることができ. を作っていく必要がある.. る.. ⑵ 政策の運営会議がパートナー間で定期的に. 連絡会型には,職業能力開発推進団体連合会. もたれており,訓練センターなどが共同で. などが位置づけられる.また,神奈川県の場合. 設立されている.. を 例 に と る と,か な が わ 人材育成支援 ネット.

(11) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (321) 125. 表 5 職業能力開発に関係する地域組織の類型 同種・異種. 連携の広さ. 同種連携. 異種連携. 狭いネットワーク. 広いネットワーク. 会員組織型 調理技能士会,塗装協会など. 連合会型 左官業組合連合会 技能士会連合会など. プラットフォーム型 地域職業能力開発推進協議会, 商工会,商工会議所, 異業種交流グループなど. 連絡会型 職業能力開発推進団体連合会, 人材育成支援ネットワーク, 異業種交流グループ連絡会, 障害者雇用推進連絡会など. 出所:國重(2011b)を修正. ワークがある.これは,職業能力開発に関わる. 体状況である.まして,東北地方太平洋沖地震. 多様な教育訓練資源(訓練講座,指導人材,教. とその津波による東日本大震災は,日本経済に. 材等)を持つ民間教育訓練機関と公共訓練機関. 対して大打撃を与え,雇用情勢に深刻な影響を. とが相互に連携し,神奈川県の産業を支える人. 与え始めている.. 材の育成活動に支援する仕組みである.. 地域における雇用問題に対処していくために. さらに,これらの地域組織の間の関係をまと. は,教育・訓練,就業継続,技術力向上・技能. めてみたい.第一に挙げられるのは,公的機関. 継承という職業能力開発政策に求められている. 同士の連携である.すなわち,三角形の頂点に. 3 つの役割が,相互に連携して機能していくこ. 位置する教育訓練機関,職業紹介・社会サービ. とが必要である.それぞれの役割が単独で機能. ス機関, 試験研究機関等の相互間の連携である.. するだけでは,不十分であり,連携して機能す. 第二に考えられるのは,公的機関と地域社会. ることで,地域自律型の成長を果たすことがで. との関係である.すなわち,教育訓練機関と地. きる.. 域社会の間の連携,試験研究機関等と地域社会. そのためには,まず教育訓練機関,職業紹介・. との間の連携である.あるいは職業紹介・社会. 社会サービス機関,試験研究機関,近隣大学と. サービス機関と個人や労働市場を介して地域社. いう公的なセクターが連携する必要がある.中. 会との間の連携ということも考えられる.. 央政府のような縦割りの政策展開ではこの連携. 第三に考えられるのは,地域社会における企. は困難である.これら公的なセクター間の連携. 業や様々な団体の間の連携である.. は当然のことであるが,今後,一層求められる. 以上の 3 つのパターンの連携をまとめると,. のは,樋口・ジゲールが整理した ⑷ で指摘し. 表 6 のようになる.. ているように,地域における企業や労働組合, 市民,NPO などの参画が重要である.それら. 3―4 地域における職業能力開発政策のダイナ ミズム. は,会員組織型やプラットフォーム型,連合会 型,さらには連絡会型という形で繋がっている.. 冒頭にも述べたように,現在,若年者層をめ. そのさまざまな形での連携に,政策的な働きか. ぐる雇用は,大変厳しい状況の下におかれてい. けを行うことで,活性化を図ることが求められ. る.また,その状況に対する政策の方向性も揺. ている.従って,図 3 のような政策のダイナミ. らぎを見せており,それ故に将来が見えないと. ズムが展開されてはじめて,地域組織間の連携. いう閉塞感に覆われているというのが現在の全. による活性化が生じてくるのである..

(12) 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 126 (322). 表 6 職業能力開発政策における地域組織間の連携 連携パターン. 第一の連携. 第二の連携. 第三の連携. 内 容(例示). 公的機関相互の連携. ・公共職業安定所と職業能力開発校との連携 ・職業能力開発校と教育機関(高校・専門学校等)との連携 ・公設試験研究機関と職業能力開発校との連携 ・職業能力開発校と都道府県職業能力開発協会との連携 ・都道府県と(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構との連携 など. 公的機関と地域社会との連携. ・職業能力開発校と地域職業能力開発推進協議会(地域企業)との連携 ・都道府県職業能力開発協会と職種別団体との連携 ・公設試験研究機関と商工会議所・商工会との連携 ・公共職業安定所と商工会議所・商工会との連携 など. 地域社会における企業・団体の連携. ・地域職業能力開発推進協議会と職業能力開発推進団体連合会との連携 ・地域職業能力開発推進協議会と商工会議所・商工会との連携 ・地域職業能力開発推進協議会と職種別団体(塗装協会,調理技能士会等) 及び技能士会連合会との連携 など. 出所:國重(2011b). 就業継続(労働市場への社会的統合). 技術力向上・技能継承. 教育・訓練. 出所:筆者作成. 図 3 地域における職業能力開発政策のダイナミズム. 雇用改善のための共通認識としては,これま. ができる.. で議論してきたように,①広範囲な技能形成を. さらに,職業能力開発政策の 4 つの主体の中. 行うこと,②民間セクターとの連携,そして③. でも地域社会に注目し,地域組織間の連携を公. 雇用対策の中央から地域への移行を挙げること. 的機関相互 の 連携(第一 の 連携),公的機関 と.

(13) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (323) 127. 地域社会との連携(第二の連携)及び地域社会. ⑵ コミュニティの強み,力,資源をつくり出す.. における企業・団体の連携(第三の連携)の 3. ⑶ 生態学的文化的な視点をもち,相互に学習. つに整理できる.. やエンパワメントのプロセスを促進する.. 雇用機会の拡大にあたり,地域における連携. ⑷ す べてのプロセスへのメンバーの参加と協. は,より緩やかで異業種のものが望ましい.ビ. 働によりパートナーシップを促進する.. ジネスチャンスの考え方と同様に,より緩やか. ⑸ 循環や反復のプロセスを繰り返し,研究と. で異業種のものの方が,就職,雇用に関するも のとしての可能性が拡大すると考えられるから である.これまで取り組まれてきた職業能力開. 実践を統合する. ⑹ 得 られた結果と知識をコミュニティとパー トナーに普及させる.. 発校ごとの企業団体である職業能力開発推進協. 我 が 国 の ニート や フ リーターの 人々を 支援. 議会やかながわ人材育成ネットワークのような. する NPO は,既に全国的に多数設立されてい. 取組みは,その基礎的な連携となるものと考え. る.また,これらの NPO の情報についてもイ. られる.. ンターネット上に都道府県ごとに整理されるな 4 社会的統合と地域社会. ど,利活用しやすいような形で展開されている. このように NPO の設立や活動展開は進んでい. 4―1 コミュニティにおける参加型調査. るものの,一方で,家庭の中で引きこもったま. 本節 で は,ワーキ ン グ プ ア と 社会的排除 の. まの若者や個々の家族のみで悩んでいるケース. 問題,そ の 対応手法 の 一 つ と し て,コ ミュニ. も数多い.近年では,家庭内暴力などへ発展す. ティに お け る 参加型調査,Community-based. るケースも数多い.また,社会との関わりがな. Participatory Research(以 下,CBPR と 略 す). いという意味で,「無縁社会」といった言葉ま. を検討する.コミュニティにおける貧困層や社. で流行している.. 会的排除の状態にある人々の実態を把握するこ. 筆者が注目しているのは,CBPR が,コミュ. とは,容易ではないし,この CBPR の手法がど. ニティを一つの単位として捉え,コミュニティ. のような課題をも解決できる訳ではない.しか. において資源づくり,組織づくりから始めてい. し,こうした問題に関して CBPR の手法がある. ることである.そして,コミュニティの住民の. 程度有効ではないかと考えられるからである.. 参加の下に,問題を発見,特定することであ. CBPR は,主に公衆衛生,社会福祉分野に活. る.この場合の問題は,ニートやフリーターな. 用されてきた.これまで研究対象となってきた. どの社会的排除といった課題である.CBPR で. のは,貧困や社会的不平等を抱えるアメリカで. は,コミュニティの中での学習やエンパワメン. のマイノリティのコミュニティであり,主にア. トのプロセスを促進し,すべてのプロセスへの. フリカ系アメリカ人,ヒスパニック系アメリカ. メンバーの参加と協働によりパートナーシップ. 人,先住民などである.そのテーマとなったの. を促進するとしている.そこで,引きこもりや. は,こうした人々を対象とする健康問題などで. ニートの若者の存在を見出すだけでなく,人間. ある.研究分野としては労働分野よりもむしろ. 関係づくり,社会的な関係づくり,社会参加プ. 保健福祉や社会福祉分野に属する手法である.. ログラムへと繋げていくことが必要である.こ. 酒井昌子他(2006)は,CBPR の基本的,根. れらのプロセスを繰り返すことで,最終段階で. 本的な規則・きまりを CBPR の原則として次. コミュニティに合った問題解決のためのプログ. の 6 点にまとめている.. ラムを計画,実施するとしている.表 7 はこの. ⑴ コ ミュニティを独自性のある 1 つの単位と. ような CBPR のプロセスと技術をまとめたも. して捉える.. のである..

(14) 128 (324). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 表 7 CBPR のプロセスと技術 プロセス. 内 容. Ⅰ 対象と問題にあたりをつける. ・コミュニティがなんらかの問題をもっている,CBPR の対象となるコミュニティを決定す る.例えば貧困層のコミュニティ,専門職がいないハーレムなど.. Ⅱ 組織をつくる. ・研究者やコミュニティの代表者等で構成されるコアとなる組織 ・CBPR の財源確保や運用における安全保障のための支援組織 ・プロジェクトやプログラム実行のための実働組織. Ⅲ 問題を特定する. ・問題を特定するため,多様なアプローチを用いてニーズ調査やデータ収集を行う. ・タウンミーティングの開催,グループインタビューやキーインフォーマントなどからの聞 き取り調査,コミュニティの地区調査や主要なメンバーへの質問紙調査など.. Ⅳ プログラムの計画・実施. ・コミュニティの意見や調査から得られた住民の対処をガイドにして,コミュニティに合っ た問題解決のための具体的な介入計画を立案する. ・コミュニティメンバーの育成,サービスの提供,コミュニティのグループ育成やサポート, コミュニティ組織のネットワーク. Ⅴ プログラムの評価. ・プログラム及びプロジェクトの評価を計画立案と同時に計画する. ・評価の方法は,介入調査,質問紙調査,追跡調査の実施,あるいは複数の方法の併用など.. 出所:酒井昌子他(2006)より筆者が要約,表にまとめた.. CBPR の参加者は,大学や研究機関の研究者,. CBPR の 特徴 は,住民 を 対象 と す る 実態把. NPO や 住民組織,コ ミュニ ティの リーダーや. 握 や 因果関係 の 検証 と いった,こ れ ま で の. 地域住民,ソーシャルワーカーなどの保健医療. 研究手法 に 止 ま ら ず,コ ミュニ ティの 能力. 福祉の専門職,医師,保健福祉や住宅・まちづ. (competence)の向上をアウトカムとして示し. くり分野の行政機関といった多彩なメンバーや. ていることであるといわれている.従って,引. 組織で構成される.また,これらの参加者は,. きこもりやニートの若者への対応に止まらず,. 平等の立場で各研究段階に参加している.. 高齢世帯の多い団地でのコミュニティ再生や障 害者雇用促進の分野でも対応策の一つとして,. 4―2 若年者の社会的統合と地域組織間連携. 有効な手段であると考えられる.. コミュニティにおける貧困層や社会的排除の. そして,この参加型調査の考え方に基づき,. 状態にある人々の実態をこのような CBPR,コ. フリーターやニート・引きこもり等に対する社. ミュニ ティを 基盤とした参加型の調査によっ. 会的統合のプログラムを提案すると表 8 のよう. て,実態把握,対応策づくりに役立てることが. な形となる.. できるのではないかと考える.. 例えば,樋口真己(2006)は,2003 年 3 月よ. その簡単なスキームは次のようなものである.. り北九州市社会福祉協議会と西南女学院大学コ. ⑴ コ ミュニ ティ単位=フ リーター・ニート・. ミュニティ研究グループとの共同研究で行われ. ひきこもりの参加 ⑵ コ ミュニ ティを 基 盤 と す る 参 加 型 調 査 (CBPR) ⑶ コ ミュニティ,地域組織間連携による政策 展開 ↓ 地域における職業能力開発政策のあり方. た「地域住民におけるまちづくり計画」支援プ ロジェクトを紹介している.これは参加型調査 の具体的な事例といえる. また,CBPR 研究会(2010)でも,不眠に悩 む地域住民を対象にした茨城県龍ケ崎市での 「龍ケ崎快眠プロジェクト」という取組みや佐 倉市・聖路加看護大学共同実践研究事業として 取り組んだ「新興住宅地における中高年女性の.

(15) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (325) 129. 表 8 若年者の社会的統合のプログラム(試案) 段階(フェイズ). 内 容. 社会的弱者の社会的統合. Ⅰ. 最初のフェイズ. ①自信の構築 ②調和の確立 ③ゆるやかに構造化された会合. ニート・ひきこもり等を地域で見出す,個々 人の問題の発見,地域での会合. Ⅱ. 中間のフェイズ. ①プロジェクト集団の継続的な構造化 ②連帯 ③活発な内部的な参加. コミュニティを基盤とする参加型調査(CBPR) による連帯,職業訓練プログラムの計画・立 案. Ⅲ. 主要なフェイズ. ①構造化された組織 ②公式化 ③独自の行動 ④外部との接触. 職業訓練 の 実施,コ ミュニ ティ,地域組織間 連携によるインターンシップ,就職への誘導, 就職. Ⅳ. プログラムの評価. ①社会的統合事業の評価. 就職後 の ア フ ターケ ア,質問紙調査,追跡調 査の実施. 出所:國重(2011b)を修正. ための近隣者との交流促進プログラムの開発」. 言行不一致,⑶ 未経験者の過剰な熱狂,⑷ 専. という事例を紹介している.これらの事例につ. 門分野・専門領域からの敵意,⑸ 安易に小さ. いて取組みのきっかけ,組織づくり,計画づく. な NGO だけを対象とする指導,である.. り,事業評価ということが具体的に紹介されて. この 5 つの危険は,チェンバースが説いてい. おり,示唆に富むものとなっている.また,こ. る開発援助に限らず,参加型の調査や支援に取. れまでの取組みの対象は不眠に悩む地域住民や. り組むに当たっても陥りやすい問題である.と. 新興地域の中高年女性であったが,ニート・引. り わ け「未経験者 の 過剰 な 熱狂」と い う「危. きこもり等についても近似した要素を含んでお. 険」は,支援・援助への熱意のあまりに生じや. り,大いに参考とすることができる.. すい危険であり,地域や個人の主体性や自律性. 先に示した阿部彩(2011)は , 職業訓練を始. の尊重という最も重要なポイントをなおざりに. めとする人的資本への投資プログラムに貧困の. しかねない陥穽である.また,「専門分野・専. 解決を求めることは,結局のところ貧困が自己. 門領域からの敵意」もやや似通った意味からあ. 責任であるという発想から脱していない,とし. りがちな事柄であるが,やはり慎むべき問題で. ている(阿部,2011, p. 176) .しかし,筆者は. ある.開発援助であっても,参加型の調査・支. 地域における職業能力開発の取組みにも限界は. 援であっても,あくまでもその主体は,当該地. あるものの,太田聰一(2010)が指摘した「地. 域あるいは個人であって,支援者・援助者では. 域適合性」と「参加」に配慮することにより,. ないということを常に念頭に置かなければなら. 若年者の社会的統合に向けた有効な手段となり. ない8).. 得ると考える. ただし,参加型の調査や開発についても充分. 4―3 取組みの持続性―連携から連携へ―. 留意すべき点はある.例えば,開発援助におい. フリーターや引きこもり,ニートに対する取. て,ロバート・チェンバースは,参加型農村調. 組みは,地域に根ざしたものから進めることが. 査手法(PRA:Participatory Rural Appraisal). 望まれる.たとえ企業の社会的貢献であっても. の普及における 5 つの「危険」を挙げている. 単独の取組みに止まることなく,NPO や地域. (佐藤寛編,2003, p. 50,チェン バース,2007,. 組織との連携を図ることが必要である.市民,. pp. 480─487) .すなわち,⑴ 儀式尊重主義,⑵. 各団体・各機関が地域参加型調査などの活動に.

(16) 130 (326). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). より,対象者を中心とする課題を共有化するこ. 試みが期待される.地域組織間連携の今後の課. とがまずもって,重要である. . 題は,こうした連携の連鎖にあるといえる.. その対策も単に,職業訓練を実施して就職で きればよいという一過性の対応に止まるもので. 宮本 み ち 子 は, 『格差社会 と 新自由主義』 (2011)の 中 で「伴走型支援」と「事後的施策. はない.多くの場合,就職後 3 年後,5 年後で. から予防的施策への転換」を提唱している9).. の離職も想定されるためである.離職者は再び. この点に関して,引きこもりやニートの状態に. 地域で育まなければならない.地域に根ざした. ある若者に対して,小学校や中学・高校時の友. 対策を図る所以がそこにある.従来の企業を中. 人関係や民生児童委員などのネットワークを活. 心とする終身雇用,人材育成の仕組みが見直さ. 用しながら,社会との関わりの糸口を見出す,. れている結果,その代替となる基盤を地域社会. さらに,NPO 団体をはじめとする,より広い. に見出すことができる.. 緩やかな人間関係において新たな人的ネット. さらに,持続可能な政策ということでは,新. ワークへ誘導するということが考えられる.. たな取組みや提案,働きかけが,次々と誘発す. 最後に,地域の広がりの問題について検討す. る必要がある.例えば,職業能力開発校では,. る.職業能力開発政策は,現在,都道府県を中. カリキュラム改善や授業評価の取組みが,地域. 心に取り組まれているように,ある程度の広. 企業との連携の中で進められてきた. 「基盤技. 域(region)で行われることが効率・効果的で. 術高度化支援に関する相互協定」の締結なども. ある.一方,フリーターや引きこもり,ニート. 行われている.あるいは,公設試験研究機関の. に対しては,地域に根ざしたものから進めるこ. 中小企業人材育成の取組みの中から,中小企業. と が 望 ま れ て お り,近隣(neighborhood)に. の技術の発展,確立が進められてきた.産学連. おける取組みが中心となるであろう.そこで,. 携も図られてきた.このような新たな取組みや. この取組みをより実効性あるものとするために. 提案,働きかけが次々と生まれることが重要で. は,表 9 に示すような中間域での取組みが必要. あって,そのためには,連携から連携へと振り. となる.. 子のように行きつ戻りつすることが必要と考え. 東日本大震災などでもフェースブックなどの. る.. インターネットの交流サイトで繋がる人的なつ. 具体的には,表 6 で示した公的機関相互の連. ながりが,緊急的な救出要請や継続的な支援に. 携(第一の連携)から公的機関と地域社会との. 大きな役割を果たしている.このような連携は ,. 連携(第二の連携)へ,さらに地域社会におけ. 広域的な連携であるといえる.. る企業・団体の連携(第三の連携)へという流. 例えば,平成 24 年 1 月 24 日付け新聞報道で. れがある一方で,反対方向に,地域社会におけ. 次のような記事が紹介されている10).「津波の. る企業・団体の連携(第三の連携)から公的機. 被災者らが暮らす宮城県名取市の仮設住宅に ,. 関と地域社会との連携(第二の連携)へ,さら. 仮設住宅の押入れの棚を製作し提供するボラン. に公的機関相互の連携(第一の連携)へという. ティア活動がある.この活動は,神奈川などの. 流れへ新たな取組みや提案,働きかけが,振り. 中小製造業者からなる被災者支援のボランティ. 子のように往復することが望まれる.そうする. アチームが東北金型工業会の若手メンバーと連. ことで継続性のある政策となり得る.. 携しながら取り組んでいるもので,現地では仙. これまでは単に公的機関相互の連携のみが注. 台高等専門学校 の 建築 デ ザ イ ン 学科 の 学生約. 目されてきた.今後は,地域社会における企業・. 50 人が協力した. 」というものである. 「それ. 団体の連携の中から,新たな取組みや政策提案. ぞれの得意技術を生かし,棚作りの他に,梅雨. が生まれ,公的機関相互の連携を動かすような. 時にはエアコン室外機の雨音対策,夏場には玄.

(17) 若年者就業と地域組織間連携(國重). (327) 131. 表 9 「地域活動団体の連携」と近隣・中間域・広域との関係 近 隣 (Neighborhood) 地域活動団体. 町内会・自治会, 消防団,青年団,老人会, 檀家制度. 広 域 (Region). 中 間 域. 近隣,広域のそれぞれの団体 NPO 法人, が自由に参加できる. 県人会,ス ポーツ ク ラ ブ,高 校・大学同窓会. ライフスタイルの個性化によ 広域に活動が偏る人も近隣に 携帯電話 や イ ン ターネット で コミュニティを巡る状況の変化 り共通の課題が見いだせない. 活動が偏る人も,新たな活動 の情報交換が容易になった. の場として注目 コミュニティの潜在能力. 近所づきあい, 活動への新たな取組みを展開 方言,郷土意識, ボランティア活動,防災訓練, する場,縁域の異なる活動者 子育てやスポーツなどの趣味 信頼関係 同士をつなぐ場 の友人関係. 出所:國重(2006)を修正. 関口に虫よけの網戸も設置した. 」ということ. とを繋ぐ,あるいは縁域の異なる活動者同士を. である.. 繋ぐような中間域での連携が注目されるように. 中小企業 の 社員と地元の高専の学生が連携. なりつつある.. し,仮設住宅に住む被災者の生活に即したニー. 5 おわりに. ズに対応するという,広域における組織間連携 の一例といえる.. 筆者は,職業能力開発政策における地域組織. また,この取組みと大変近似したものとして,. 間連携の必要性が高まっているとの認識のもと. 東京都 が 平成 24 年度予算 に 計上 し た「被災地. に,これまで中小企業技術者研修事業と職業能. 11). 県等中小企業ビジネス革新支援事業」がある .. 力開発校の取組みを分析してきた(國重 2010,. この事業は,被災 3 県の中小製造業者の技術. 2011a) .. 力や施設の状況を把握し,都内の中小企業の現. そこから,明らかになったことをまとめると. 状と照らし合わせて技術提携を後押しする.一. 次のとおりとなる.. 方,都内の大企業の開発試作部門に聞き取り調. ⑴ 産業構造の変化に対して,職業能力開発校. 査を行なったり,商談会を開催するなどして,. の職業訓練や公的試験研究機関による中小. 中小企業グループによる部品納入など受注拡大. 企業技術者研修事業は,ある 程度適応し,. を支援するというものである.. 有効に働いてきた.その適応について,大. 広域的な連携は, インターネットなどの普及,. きな働きをしてきたのが,地元の中小企業. 活用により一層の進展が期待されている. 一方,. 群である.従って職業能力開発は,単なる. 近隣の関係は,ライフスタイルの個性化により. 経済合理性だけでなく,地域社会における. 共通の課題が見出せない,あるいは町内会,自. 組織間の連携において機能している.. 治会,消防団などの役員の高齢化が進み,後継. ⑵ 地域経済集団(主 に 中小企業群・地域職人. 者問題が表面化するなど厳しい状況に直面しつ. 集団)またそれらを組織化した地域組織の. つある.. 活動と職業能力開発政策との相互作用は存. 表 9 にあるように,中間域とは地域活動団体. 在する.. にとって近隣,広域のそれぞれの団体が自由に. ⑶ 地域経済集団(主 に 中小企業集団・地域職. 参加できる場である.そこで,新たな進展が期. 人集団)・地域組織と職業能力開発政策との. 待される広域と地域的基盤がしっかりした近隣. 相互作用を尊重しつつ,職業訓練環境の整.

(18) 132 (328). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 備を推進することが望まれる.. 業会,技能士会など様々な組織・団体が存在し. ⑷ 自治体は職業能力開発政策を単なる教育訓. ており,これらの組織・団体も地域社会の構成. 練政策としてではなく,地域産業政策の一. 員である.このような地域組織と教育訓練や職. 環として位置付ける必要がある.さらに,. 業紹介を行なう公的機関が連携することで,若. 地域産業政策の一環としてのみではなく,. 年者各個人に適したそれぞれの職業訓練を実施. 地域社会開発の一環として,位置付けるこ. し,就職・就業に結びつけていくことが望まれ. とが重要である.. る.. ⑸ 地域格差・所得格差 の 是正,地域 の 自律的. さらに,一過性の対応に止まることなく,就. 発展に向け,自治体は今後の産業構造の展. 職後 3 年後,5 年後に想定される離職に対して. 開の行方を見据えつつ,地域住民の職業能. も.再び若年者を地域で育み,社会的な関係を. 力,技能の習得に取り組まなければならな. 築いていくことが期待される.CBPR による取. い.. 組みは,保健・子育てなどの分野で既にいくつ. また,本稿では,フリーターやニート・ひき. かの地域で実践されているが,今後は若年者の. こもりの若者の社会的統合へ向けた取組みとし. 就業の分野でも,若年者の主体性や自律性を尊. て,コミュニティにおける参加型調査(CBPR). 重しながら取り組まれてよいと考える.. を取り上げた.本稿の前半で述べたが,若年者. 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災に. の就業問題に取り組むキーワードは,太田聰一. より,我が国は過酷な震災復興の道を歩まなけ. (2010)が指摘するように, 「地域適合性」と「参. ればならない.既に多くの企業倒産と多くの失. 加」である.CBPR は,コミュニティを一つの. 業者が生まれている.今後とも数多くの中小企. 単位として捉え,コミュニティにおいて資源づ. 業が経営悪化と倒産の危機に直面するであろ. くり,組織づくりから始め,コミュニティの住. う.しかし,結局のところ,今後の日本にとっ. 民の参加の下に問題を発見,特定する.さらに,. ての復興,雇用改善は,成長の可能性を秘めた. コミュニティの中での学習やエンパワメントの. 中小企業から始まると考えられる.その意味で. プロセスを促進し,すべてのプロセスへのメン. 中小企業振興は極めて重要である.現在でも,. バーの参加と協働によりパートナーシップを促. 一部の中小企業は求人ニーズが満たされていな. 進する.. い部分があり,就職希望者とのミスマッチの解. このようなことから,CBPR が社会的排除状. 消を促進すべきである.そのためには地域にお. 況にあるニートやフリーターなどの若者へのア. ける就職支援の橋渡し機能が必要である.さら. プローチとして有効であると考えた.単に引き. に,公設試験研究機関や大学の果たす役割とし. こもりやニートの若者の存在を見出すだけでな. て,就職後の中小企業技術者育成への貢献が望. く,人間関係づくり,社会的な関係づくり,社. まれている.本稿では,若年者の就業問題を念. 会参加プログラムへと繋げていくことが必要で. 頭に置きつつ,地域組織間の連携に関する概念. ある.. 的な枠組を中心に論じたが,今後ともこのよう. そのためには,地域における職業能力開発が. な形での連携の一層の促進が期待されている.. 重要となる.職業能力開発には,①教育・訓練,. 今回,十分に検討しえなかった課題が数多く. ②技術力向上,技能継承のほかに,③就業継続. 存在する.中小企業振興における産学連携など,. (労働市場への社会的統合)という 3 つの役割. 地域組織間連携と地域活性化の面での更なる検. がある.地域には,商工会・商工会議所,経営. 討も必要と考える.残された今後の研究課題と. 者協会,経済同友会,中小企業団体中央会,工. したい..

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