国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一)
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(2) 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 【翻刻】. 前後ともにナシ。奥書ナシ。. 巴の参加した百韻は未翻刻のものが多い。紹巴の参加していない宗養. 『百韻連歌集』は整理書名であろう。 題簽には「寄合連歌」とあり、 これらの百韻は、宗養・紹巴時代の連歌を中心としたもので、特に紹. 4. 3. 2. て補うことができた箇所は( )で示した。難読語には( )にルビ で読み方を入れた。 【書誌】. (二). 草文庫」の朱印。表紙は、藍色無地。本文楮紙。寸法、縦一二・八糎. ◎㉝ 永禄九年閏八月十八日肥後天草住妙楽寺秀舜興行何路百韻 ◎㉞ 元亀三年九月廿八日於醍醐山舜静院谷無量寿院興行何人百韻. の百韻⑪・⑫・⑯・⑱・⑲・⑳については、斎藤義光『宗養連歌百韻. 5. 国立公文書館内閣文庫蔵本。所蔵者整理書名『百韻連歌集』。題簽 に 「寄合連歌」 とある。函番、 二〇二・二五二。写本一冊。内題ナシ。 「浅. 卯花のかきねや里をへたつらん 水の流の山のかたはら . さすとみし小舟は波につなき置 月またをそき河風の音 □□跡のかりの一つら. 霧はたゝ田面の末に晴残り □□き中空よりも明離 時雨にけらし山松のこゑ. みる〳〵も雲のけしきのかはりきて またき入日のかすかなる影. 涼しさをとめてこそよれ岩かくれ つもる雫の水のをち合. 浅沢もたよりに小田や作らん ひとつふたつの山もとの庵. 叱. 仍. 巴. 札. 寿謙 政行. 承由. 景敏. 禅昭. 禅昌. 友益. 禅祐. 玄仍. 昌叱. 能札. 紹巴. ×横二〇・〇糎。本文、墨付一六四丁、一面一三行書、一句一行。遊紙、. ◎㉟ 元亀三年三月十八日於吉野山松室別当何船百韻 ◎㊱ 元亀二年八月六日肥後御舟林中務少輔興行山何百韻. ① 文 禄二年五月 何木. ◎㉛ 天正三年正月七日於昌叱何木百韻 ◎㉜ 天正四年八月十九日肥後国甲斐左京入道宗柳興行. ◎㊲ 元亀三年七月十三日「あきかぜの」何人百韻 ㊳ 慈音院前天台座主二品堯然親王御追善独吟. 撰』 (一九八九年、私家版)に翻刻が掲載されている。大部な資料で. 雨の日の夕しらするほたる哉. あるため、今回は(一)とし、前半の○印で示した①~⑩、⑬~⑮、. 6. しけりにつゝく竹の下道. ⑰の紹巴が参加した百韻を翻刻しここに掲載する。◎印で示した百韻. 7. なお、翻刻に際し、仮名遣いと踊り字は底本のママに、旧字は新字 に改めた。虫損や汚れ等で判読不明の箇所は□で示した。また諸本に. は(二)に掲載予定である。. 1. 8. 16 15 14 13 12 11 10 9.
(3) 二. ウ. うつしぬる里なからにも住つかて したはるゝこそ都なりけれ . 河そひのつゝみや浪の超ぬらん 暮ぬるかたに舟よはふなり . 柴人の友にをくれし山のかけ あらしにきほふ□やさゆらん. 益 祐 昭 昌 由 敏 行 謙 巴 札 叱 仍 祐 益 昌 昭 敏 由 巴 叱 謙 行 札 巴. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 松かけの落はさひしき寺ふりて 風さそひくるかねのま近き . 石間〳〵の道ほそみ 分て行 (こけ) 重る苺のすゑのかけはし . □□きしねの舟や流るらん 浅瀬なからも水はやき音 . 春雨のはるゝそのふは露ちりて □□ひまにそよく呉竹 . はつかにも夕日や野へにうつるらん やとりもあへすこてふ飛かふ . 荒わたる田中はしけきむら薄 かたふきつゝも残る草かき . 遠近の月のうき霧立消て ふしとしらるゝさをしかのこゑ. ほころふる花ふさおもき露見えて 乱れ合たる青柳のいと . 打むかふ雲間の月やかすむらん 風吹たゆる春の明ほの . 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17. 三. 夜々になれは身にしむ月もうし. 仍. 昭. 叱. 昌. 昭. 敏. 人こそ見えね道のたえ〳〵. 由. 明過る市の名残の暮ふかみ. 汲すてにたるさけのさかつき. 益. 昭. 仍. 叱. 祐. 札. 敏. 仍. 巴. 益. ほとゝきすなく杉のした陰 霞かたよる滝の白波. 長閑なる末はあらしの音羽山 そゝき〳〵し雨すくる空 打なひく竹のは分の明初て むらにたく火の煙寒けき. 限とてわかるゝはうき関送り. 巴. 益. 行. 由. 叱. 謙. 昌. なつみぬる駒は度々引とめて. いつかさてあらためぬへき宮所 □□さやたゝ木間もる月 霧のと絶の風そはけしき. □□ときけは色なる落はして 出て行舟も汀にこき帰り 沖より汐やみちてきにけん. かりのやとりも程はへにけり. 雪にしられぬ谷合の道. 冬こもるかけの山かついかならん. 遠からぬいらかのみねの花落て. 秋の田のふせやはちりにうつもれて. はらふもあやな手枕の露. 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41. (三).
(4) . 謙 昌 巴 敏 仍 叱 益 行 札 巴 昭 由 叱 祐 敏 仍 巴 益 昌 謙 叱. 里遠きふもとの原に求いり. 山の栖はいつこさためん. 由. 札. 仍. 昌. 益. 巴. み渡せはなへてさかりの春の花. 消間もあらぬ雪の木つたひ. 札. 鴬の朝けを寒み羽吹出て. すそのより先かすむ日の色. 行. 叱. 昭. 敏. 能舜. 水上やとちし氷の残るらん あくれは白き霜の柴はし 山里は人の往来も稀にして. 夏草の生そふかけは浅からす. 鹿子たゝすむかた岳の末. うへし早苗の田つらはるけし. 義範. 紹巴. 紹巴 十一 禅昌 八 能舜 一 能札 八 禅昭 八 昌叱 十一 景敏 八 玄仍 九 承由 七 禅祐 七 寿謙 六 友益 九 政行 七 ②( 文)禄二年五月六日 何路. 東屋の猶あまりあるあやめ哉 行. 昭. ウ. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 一方は波のうき鳥立さはき 置まよひたる岩かねの霜 . 刈残す跡しらすけのおれふして 山田のあせやくつれそふらん . なかめ猶ふるのゝ末は道もなし 心の花の雪つもる袖 . 園に梅木かけを知は匂ひにて 枕の夢をさます春風 . □□るゝや有明かたの雁の声 雲にうかへるをちの山のは . 住江や浪にへたゝる淡路島 くるゝ光に舟とむる袖 . かけ高き芦へは夏も忘きて しはしはかりの道のやすらひ . 小車のいるへき門もひらきかね 我にしのひてたか閨の内 . 物のけの詞の末もたゝならす □のうきふしのうらみはかなき . 契りしも使からにやたかふらん 秋のあはれをとはぬやはある . 雫と絶ぬ五月雨の空 祐. 1. かそふれはなきはそひ行玉道に □□る衣露にしほるゝ . □□も手折れる萩の散はおし えらひかへたる松虫の声 . 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 2. ウ. 名. 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65. (四).
(5) ウ. 蛍飛影も露けきよひ更て. 月また遅き竹のはかくれ 秋風や端ゐの袖にをくるらん. 3 4. 昌叱 英怙 玄仍 友益. 範. 叱. 佐. 巴. 湖. 敏. 如. 景. 仍. 益. 叱. 怙. 巴. 範. 能舜. 玄佐. 明宗. 玄湖. 景敏. 兼如. 霧の笆はひまそひにけり 軒近き山はみる〳〵明離. 光うつろふ松の木高さ 一返時雨ていつち過つらん. 雪になりたる半天の雲 昏ぬれは音も嵐のすさひきて. 入江の波に舟つなく也 山きはの里は竹にやこもるらん. ちりし林のあらはなる色 声絶すふしとの鹿の立帰り . 月に目さます小田のかり庵 衣手ははらふも露にぬれ〳〵て. またしとするも忘られぬ暮 我にしもつれなき人の前渡り . やつす車のけはひしるしも たそかれの花にしはしのやとかりて. かすむ山ちや分まよひぬる (ききすゑ)し鳥のねとむる野を遠み. (かけも)猶はたしけき草村. いにしへの砌の池は水さひゐて きよめもやらぬ神かきの内 . 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 6. 5 7 8 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. ウ. いつよりか哀まつりは絶ぬらん. みとりの袖もあらたむる色. 程もなく春の限や過けらし 夜は暁のかねかすむをと 夢の行ゑの山ほとゝきす. 月に猶花の下臥名残あれや ま木の戸を開出たる朝朗. さえしも風のしつかにそなる. 玉あられたはしる竹の方よりて 波こそかゝれ河そひの道. 絶たるはわたさぬ橋のかたはかり. 仍. 怙. 如 益. 湖 敏. 宗. 巴. 仍. 叱. 怙. 如. 巴. 湖. 叱. 仍. 益. 巴. 雲引捨しかつらきの峰. 怙. 範. 宗. 佐. 叱. 敏. 影はまた有明の月の幽にて. うつり香を身にしめしたふ床の上 はひかくれしにしのひよる中. 思はぬをおもふこそたゝあやなけれ. めくみにもるゝつかへくるしも (いりそむる)学ひの道もいたつらに (をしむ)命のみしかきは何. 露をかたしくきぬ〳〵の跡. かしこきやいはけなきにもよらさらん. 歌のむしろにましはれる人. ことの緒のしらへはかたきつたへにて. 乱れしまゝの世々のすゑ〳〵. 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27. (五).
(6) ウ. 巴 益 叱. 仍 範 敏 叱 湖 巴 怙 仍 如 湖 益 宗 叱 敏 仍 怙 佐 範. ウ. 名. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 如 いさなはれてやま柴とる袖 くもるかとみるも晴つゝ出る日に 宗 佐. 別るとも後せちきらは恨しな 終にとゝまる身もわたり河 . 度々にちいさき舟のさほさして 野へ近からし馬草かふ袖 . 松立る軒の蔦のは落つくし 露もさなから時雨めく昏 . 分帰る小倉の山は霧こめて さかのゝ原の秋寒き道 . 月にしもほのか也ける虫のこゑ 風に乱るゝかけの草ふき . かこふともあらぬめくりは荒まさり 板まもり入風のはけしさ . しはしたにまとろみやらぬ月のもと そむき〳〵にあかぬ手枕 . 刈田にも残る落ほや朽ぬらん 芦のや そよめく秋の風の. みちあへすしも汐や引らん 遥にあらはれて 波間より洲崎 あさるもしるき村とりのこゑ . 跡こそ残れおく山の庵 かよひちも近き隣の雪の内. 人はたゝあやし宇治てふ住所. 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51. (なはしろの)流に花のうかひきて. 頼めしもなかき恨のさゝめこと. あたなるに今みえてくやしき. かへしせぬ文をはなとかとゝめけん 遠つ国にや人は住つく. ゆるされん比も過行さすらへに いつか衣はぬきもかへまし. あつさまた残れる月に立すゝみ 秋にもくるし閨の蚊の声. 露のまの夢より後も明ぬよに をきし扇そかたみとはなる. 旅行も限いまはの門出にて かり初なれや哀世中. さのみなとさかへを人のねかふらん かくれ住山は出しの心にて. おまへちかきや時もうしなふ 朽るをまゝの谷のかけはし. 巴. 叱. 益. 如. 宗. 巴. 湖. 怙. 敏. 仍. 如. 巴. 益. 怙. 範. 湖. 巴. 如. 敏. 佐. 怙. 仍. ちきりぬる世にをくるゝはうし 益 叱. 身を捨ておもふこそたゝ法ならめ. かけにいりつゝ薪こる山. 綱なからいつくよりかははなれ駒. 里はみえぬも道の一すち. 絶々につゝくつゝみの朝霞. (やなきに)残る河上の雨. 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75. (六).
(7) (こけ). 茂りをわくる山水の音 刈残す岩ねのま菅そよめきて. たか庭も五月雨のうちは雲の上. ③ 文禄二年五月廿七日 白何. ウ. 田つらの秋の月寒き暮 翅や霜をはらふらん 立鴫の うら枯わたるかけの草村 . まはらなる垣ほの野への道みえて 霞に風の吹とをる跡 . 朝朗いつくの梅の匂ふらん 日影ほのかに雪消るころ . 谷々の流の末の音そひて かたへ朽つゝ残るかけはし . 叱 範. 紹巴 定西 昌叱 文閑 玄仍 友益 景敏 宗色 底相 全波 重勝 春味. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 友益 九 能舜 一 . 玄仍 十 玄佐 六. 英怙 十 明宗 七. 昌叱 十二 玄湖 八. (紹巴) 十 二 兼如 九 (義)範 八 景敏 八. 苺ちの花の色 誰ふめる跡は 岩ねつたひの水のゝとけさ. 100 99 1 2 3 4 5 6 7 8 12 11 10 9. 二. 小若. 巴. 西. とひよるをいとふ栖やかへぬらん. したしき友もおとろへぬ程. 巴. 西. 味. 勝. 波. 相. 色. 敏. 閑. 仍. 益. 叱. 稀にあふ袖は涙に打しほれ. □□□□□み晴る跡より霧立て. □□□□絶も露しくるめり ひまそへは猶冷しきさゝの庵 あれしをまゝの小山田の原 霞のおくの杉の木高さ. いつうへてふる野の花のかけならん 時鳥啼かた近き春の昏 雨になりたる明ほのゝ空. さよ風の音もやゝはたしつまりて. 閑. 舟こき出るうら〳〵の波. 山あひに入ぬる海や遠からん. 叱. 相. 巴. 敏. 色. 仍. 益. 叱. うす雪は朝けはかりの色にして かりはの道を分て行袖. をしか臥夏のやはてもあらさらん なひきそひたる末の草々 吹すさふ嵐の後の露しけみ 月のかけもる軒の玉たれ. 残りぬるあつさ忘るゝ端ゐして くるれは袖にかゝる河波. けふりにつゝく松のいくむら. さはり有てのへたてもそ憂. 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13. (七).
(8) ウ. 三. 西 仍 閑 味 叱 敏 巴 相 色 波 勝 叱 益 閑 味 巴 仍 益 閑 色 叱 西 敏 相. 名. ウ. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 関の戸の紅葉むしろを敷捨て 汲かさねたるさけのさかつき. かた〳〵の袖あまたなる市の場 帰るさいそきよほふ河舟 . 水上は宇治の山かけ暮初て の音より時雨ふるらし 波 (とまぶき). 苫茨の軒の嵐にちる木葉 窓にさしいる光しつけし. みし夢は跡なき月を俤に ひらけはいとゝ露の玉章. 槿をゝくるもあたし心にて いつしか秋になしはつる中. たのめつる月に心やつくすらん よなかさいつら鳥のなくこゑ . 夕顔のは隠ふかき露の音 しのふあたりの道たと〳〵し. □□□□き田中のつゝみつきかへて □□□ふまゝの竹のいくもと . 下萌の野も置霜にむすほゝれ 氷によとむ浅沢の水 . てふ鳥の砌の内にみたれきて 春また寒き山のかたはら . 行々も立さりかたき柳陰 なみ木の花のさかりなる色 . 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37. あかたをはとゝめ置ての司召. 引こもりたるいほの哀さ. 渡す江の舟もくるれはほのかにて. 吹をろしたる袖の山風. 松のはの雪や晴てもそゝくらん 雨こまかにもくもる日のかけ □□□猶おしむはかりの駒の音 □□□□るへき歌のましはり. したひ行人はなさけのふかくして しのひいれとやをしへぬる宿 いにしへの跡はかはらぬ春の花 そのふはなれすうくひすの声. 笛竹の声ものとけき折にあひて さらに仏やあらはれぬらし 古寺は起ゐてむかふよはの月 なきを身にしめおもふ行ひ. 霧くらく暮ぬる方のかねのこゑ. たゝくこたへの門のつれなさ. あやしきは誰にか契かはすらん たのむ心もいはけなき人. かりよるもしるへはあらぬとりにて. 猶行末は遠きはつせち. のかるへき世もあらましの世はかなし. としたくるまてつかへてそこし. 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61. 巴. 仍. 益 勝. 色. 巴. 仍. 叱. 相. 閑. 西. 益. 巴. 敏. 叱. 味. 波. 仍. 勝. 巴. 敏. 叱. 閑. 相. (八).
(9) . 益. □□□とふ方もわかれす広き野に . □□□□たふく玉鉾の末 . 衣手は残るともなきあつさにて . 戸ほそひらけは過る秋風 . 明ほのゝ月や笆に澄ぬらん . きえぬるうへに霜そふりそふ . 梯の行ゑの山のかけふかみ . はるかに□□る小田のかた〳〵 . 日くるれは汀の蛙啼出て . 池の流のかすむかたはら . 庭草の下よりいそく雪間哉 . 行. 小梅. 祐恵. 宗色. 兼如. 景敏. 友益. 玄仍. 頼純. 仲康. 昌叱. 政行. 紹巴. ④ 文 禄二年正月十日 何人. けふもや草の枕むすはん . 巴. 4. 3. 2. 1. 西. 益. 敏. 叱. 閑. 仍. 5. 色. 夢にさへ都は遠く成てきて . 康. 仍. 松風絶ぬおく山の庵 . 叱. 西. 冬枯の梢つゝきの色さひし . 仍. 巴. むら〳〵なれや霙せし跡 . 純. 味. 昏初る雲間の月は幽にて . 敏. 叱. 天とふかりの啼おつるこゑ . 益. 波. 冷しき波は入江の末遠み . 色. 色. かた山もとはあらしはけしも . 如. 巴 ウ. 青葉かつ花の林にあらはれて . 6. かいま見の姿おもふもたゝならて それとしるきや小車の袖 . たき物の香にくさ〳〵もわかるらし 手折かねたる月の白菊 . 露霜のふかき笆はかたふきて 野分のゝちの夕さひしも . こにかふもやゝ虫のねのかれ〳〵に うつりもて行秋のかなしさ . 今こんとなくさめつゝも起出て さすらふる身もいたつらになる. □□□□の中もそねみやふかゝらん □□□□かちたるきぬの色あひ . 花のえをかさしの舞の右左 しらへそへたる春のことのね . 霞ぬる池の汀に舟うけて あたゝかけにもあそふをし鴨. 晴てもしけき春雨の露 . 7. 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. 8. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 小若 一. 玄仍 十 重勝 五 友益 九 春味 六. 昌叱 十二 全波 五 前 文閑 九 底相 七. 後. 紹巴 十二 景敏 八 定西 八 宗色 八. ウ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85. (九).
(10) 二. 巴 恵 叱 行 純 康 益 仍 如 敏 色 巴 恵 叱 仍 純 如 巴 康 益 叱 色 行 恵. ウ. 三. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 契りしを頼もあたの哀しれ 忘られはつるこの比のうさ. 松風の雨に板間の月もりて かたしきかふる手枕の露 . 侘人のはたへはいかに寒からん うちしきりぬるあさのさ衣 . こすのとのあたりしつけくうつる日に 霧にぬれたる窓のむら竹 . □□□□は三輪のひはらに雪ちりて 春ちかゝらし羽吹うくひす . 月渡る尾上は雲にみえかくれ □□□の寺のかねくらきこゑ. 舟よはふこたへも波にさたまらて あらしにまよふ遠近の袖 . 高かりしつゝみの末もくつれ添 河上い□□わかぬ長雨 . 下葉より砌の柳ちり初て 田中の栖あらはなりけり. 月にしもま柴とりてや帰るらん 袂涼しき秋になる比 . きし根よりおつる雫も氷ゐて 昏行かたの山きはの道 . 朝日さす垣ほの野へにぬるこてふ そよきしつまるかけの草村 . 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23. 待わふるみとせも過る中にして. かけさひしくもかすむ槙原. それかあらぬか行ほとゝきす. 敏. 叱. 巴. 如. 益. 仍. 純. 康. みしか夜の夢は枕に覚残り. 叱. 如. 康. 巴. 叱. 純. 仍. 益. 巴. 叱. 色. 行. 恵. 敏. 如. 巴. 絶はたえせてなにたのむらん. 玉の緒の哀かけなん人もいさ 友によりてそことさらに引 遠き門出をおもひやるのみ. 雪深くつもらは駒をいかゝせん よをこめつゝもこゆるあふ坂 □□の契はゆるさぬそうき. そゝくあまりやみのもか□ぬ. 先立跡のからす啼也. 一むらの雲にしはしの夕日影. ねふる間もなみの舟長はらひかね. 身にしみけりなすさふ河風. 露ふかみ宇治のかよひち分々て. 霧の内なる小車の音. □□の月は入かたの前渡り. よはひをもやつるゝ袖や忍ふらし. 酒はたゝすゝむるからに汲かさね. 春の日も夕の空の鳥のこゑ. みよしのや花より花を分つくし. こもりし山もいつる行ひ. 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47. (一〇).
(11) 名. ウ. 霜寒き松やひゝきも添けらし たく火幽に絶ぬ柴の戸 . ほのかなる月にをしかの声遠み 色にかくるゝ野への草ふき . 蓬生も昔に帰る花咲て 猶わすられぬ捨し世の春 . 立のほる霞の谷の憂名残 をしへはてぬはまとふ山道 . 入相のかねなる方や里ならし 竹の葉分のおくふかきかけ . 河くまは乱れあひつゝ飛蛍 天つ星をもうつす下水 . 益 恵 敏 色 行 仍 叱 康 巴 如 純 行 仍 叱 色. をろかさの学こそ身のとかならめ. 盃に心のほともむすほゝれ. うけてもそむくいましめの道. あかぬかりはの帰さ忘るゝ. しはしとや雨にやとかる花のもと. 木の間もあらぬ松の藤かえ. 紹巴 十二 友益 九 政行 八 景敏 八. 巴. 益. 行. 色. 仍. 如. 景敏. 紹与. 兼如. 玄仍. 生. 昌叱. 助信. 紹巴. 昌叱 十二 兼如 九 仲康 八 宗色 八 . 梅かえの誰軒端より匂ふらん (かき)ほつゝきの竹なひくかけ. (いけみつ)もけふりの末は明初て. こほれし跡も露の草々. 頼純 八 祐恵 七 玄仍 十 小梅 一 ⑤ 文 禄二年正月十四日 山何. 康. 敏 益. 1. 今朝のまに消しや霞む峰の雪 恵. 2. 巴 叱. 3. こすまきあくる袖の春風. 仍. 波にうかへる月かすかなり. 5. 菊はたゝ月出ぬまの色にして 袖にそのふの露こほすくれ . 敏. しはし猶秋の蛍や残るらん. 6. 4. 吹まゝに冷になる風の音 □□ならぬ身はとさしかたむる. □□人もいとふはかりに庵ふりて 所かへたるかくれ家の道 . したふやと心みるこそ世の行ゑ つれなさはたゝ猶くらへまし . 純. 7. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 物のけはいのるもさらにおこたらて 日々にうらみのつもるはて〳〵 . 100 99 98 97 96 95 8. しつか行田つらの道は山かけて 明るあさけの霧のひま〳〵 . 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71. (一一).
(12) ウ. 二. 玄湖 承由 盛政 秀益 信 巴 生 叱 如 仍 敏 与 由 湖 巴 政 叱 信 仍 生 与 如 湖 敏. 三. ウ. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 風の音たゝ一とをり吹すてゝ. わつかにすめる木隠の里 汲よるや岩の雫のたまり水 . あれしも作る小田のかたはら 草むらの茂り残らす刈はらひ. 野へのいつくかをしか立道 霧間よりかた山もとの明離. さひしさや草の庵の月の暮 (あき)にそかはる松風のこゑ. (むすふ)手の水もやゝはた冷に. 岩やの内に引こもる道. 爰かしこ鹿子やかりもつくすらん をくれし友もかへり行袖 . うすき氷もとけぬ河水 芦の枯はは置霜に 下折の 田中の道そかよふ跡なき . 砌をよそのうくひすの声 谷の戸はあけても遅き日の光. 晴てはそゝく雨のいく度 さかりそとみれはうつろふ花の色. かねほのかなる秋の半空 やとりをもとはん行ゑの月出て. 行こそすくれ山あひの道 梯やくつるとみるも絶さらん. 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. とひよるも世をのかるゝやいとふらん. たれも心の花になるころ. 田面浪こす五月雨のうち 夏に猶乱れそひたるむら柳 涼しきまゝに休らへる道. さし入も遠山寺はしつかにて 板間の月にね覚する床 昔おもふ涙も露も袖の上 人の心の秋そかなしき. 由 巴. 生. 叱. 信. 仍. 如. 与. 巴. 由. 叱. 生. 敏. 湖. 叱. 政. 仍. 巴. 待にほとふる旅のかへるさ 冬のおくしるあらしはけしも. 都にも雪をみ山はいかならん. 政. 巴. 敏. 叱. 与 信. けふり消ても里そかすめる 一筋の行末遠き水無瀬河 よとみもあへすおち滝つ波. おしむにも秋は木葉に暮はてゝ すみのほりぬる山のはの月. 袖はたたゝ去年にかはらぬさむさにて. 野へのわかなは摘もすくなし. 栖猶たへかたきまて荒渡り. かた見とは置もあたなる扇にて. せきとむる流の末はひろかれや. かひなれにたる鳥のさへつり. 春はたゝ霞む野山を住所. 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33. (一二).
(13) ウ. 名. 露にしもしくるゝ雲の晴渡り 下ゐしかりも空につらなる . かき内やまよふも霜の薄からん よはのかくらの庭火たく跡 . 暁にうつろふ星はさやかにて 末もたとらすこく沖つ舟 . 満汐に高き洲崎もしつむらし . 松の木の根や朽てかたふく (こけ) 苺むして. 分て入よもきかもとの道細み 虫の音えらふ袂露けし . おもほえす月みつゝよは更々て 吹出にたるあらし冷し . ちる花やあまきる雪にまかふらん 夕の色をいそく春雨 . 東屋のまやも霞の戸さしして かへりつくせるかけの山人 . 生 如 湖 仍 由 巴 叱 生 如 与 信 叱 巴 湖 政 仍 敏 由 生 如. ウ. 乱つゝ国も治る折にふれ. 敏. 由. 生. 絶しもさらにおこす神事. 叱. 巴. 限あれはぬき捨にける藤衣. 信. 敏. 仍. 与. 政. 湖 如. いなはもる身もやすめぬるいほ. 月になる枕にしはしよりふして. あたゝめ酒や酔心なる. くるゝまて小たか狩はを別かね のる駒いそく道のへのすゑ. へたゝりし都も今は近つきて かた〳〵に住家も数そふ. 巴. 生. うへし早苗の山田はるけし. 叱. さりともと待程しれな子規. 流ぬるかけひの水やつゝくらん. 夢のなこりをしたふ明ほの. 仍. 生. 与. 湖. 如. 俤はまたみぬ人に行こゝろ. たゝならさりし文の一筆 (さすらへ) 迁に ゆるされんことをし思ふ左 世のたのしみも命也けり. いく春も咲にあふへき花の宿. 紹巴 十二 紹与 八. 巴. 庭は若木の桜さかふる. 仍. 叱. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81. 助信 八 景敏 八 昌叱 十二 玄湖 八 信 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). やすからぬ法のをしへをうけつきて わかたつ杣の行ゑあらすや . つかへこしよはひや稀の程ならん 世々のおきてを知かかしこき . ふりにたるいらかの軒は 車もちりのつもりぬる門. みる〳〵も田つらほのかに明過て 冬まてのこるすゝきいく村 . 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57. (一三).
(14) 巴. 仍. 小若. 恵意. 了照. 乗昌. 慶純. 宗頓. 春慶. 景敏. 既在. 誓忍. 玄春. 忠長. 玄仍. 昌叱. 嘉昭. 紹巴. ウ. 二. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 生 十一句 承由 七. 玄仍 十 盛政 六 兼如 九 秀益 一. 夕々聞こそあかね虫のこゑ 涼しきかたに立出る道 . 軒近き竹の葉伝そよき合 とけて雫もふかき朝霜 . 山もとの林つゝきや暮けらし あらしのさそふかねさやか也. よをこめて月にそ出し泊舟 かたへ霧ふる沖つ白波 . 日の影は雲のまに〳〵いさよひて ほのかに鳥の啼つれて行 . 霞にましる袖のいろ〳〵 かたの雲井の庭に春立て (久 すだれ) 箔をまけは光のとけし. . 月に猶夢も結はぬかり枕 うつろふ草を野へのかたしき. 5. 雨は猶峰より遠に晴渡り 音あらましきよはの山風. 若な摘し雪間とめ行子日哉. ⑥ 文 禄二年正月十八日 何人. ウ. 1 2 3 4 6 7 8 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. うら遠み秋の時雨や過ぬらん. 雨に蛍やうち乱るらん. 月遅き木の下草の露しけみ なる 吹くる風のやゝさむく (つて). 旅衣うちきせはやと伝待て. 都出しや遠さかる跡. 春. 叱. 在. 長. 純. 忍. 慶. 敏. 照. 巴. 頓. 昌. 叱. 敏. 巴. 仍. 慶. 忍. 在. 春. 仍. 長. 意. 叱. うつり行日数は程もなかるらし あらためつくる神かきの内. 乙女子の引まゆすみはほのかにて 夕のおくにことのねそする. 舟よせて帰るたよりや須磨の浦 独かなしきかけの山住. いほちかみつまとふ鹿の声たてゝ 外面ののへの小萩さく比. よな〳〵に月もうつろふ秋淋し 身はかたはらのさむしろの露. そことしもわかすたく火の影みえて. 里はむかひによはふ河舟. 袖やたゝま柴とりつゝ帰るらん. つもるともなき雪の呉竹. すさひにしあらしの音も春めきて. 霞のうちの末のうき雲. 明はては花にこゆへき山高み. 一つらかりの羽吹行こゑ. 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19. (一四).
(15) 三. ウ. あた人の夢の俤なこりあれや ひゝきそひつゝ高き松風 . 春を待心の花の岩かくれ 若木なからに梅にほふ也. 風はまたかすむともなき朝朗 なかれし跡の氷る河上 . すき残す田中や水もせかさらん さとはなれなる道の絶々 . 飼捨る馬草はみとり重りて ひとりこほるゝをのゝ夕露. 我なくはたれかは玉も祭らまし 哀もうさも月のみそ知 . 在 長 意 春 巴 頓 小梅 昌 慶 巴 叱 純 頓 意 仍 在 長 叱 敏 忍 在 春 叱 敏. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). かこひつるよもき葎も冬枯て 立枝もしるき梅の一本 . ことはりをたゝさはいかてさそふらん たのみしかひもあらぬ後見 . かたゝかへまたいはけなき使にて はかなきは名の世にそもれぬる . あはてしもいくたひ帰る袖ならん をしへし宿も求かねけり . 山あひのけふりに村やこもるらん いくへはかりのかけはしの霜 . 暮初るいそには波のかけてきて つなき置ぬるあまのつり舟 . 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43. 名. おもはすも春やとはるゝ友ならし. 汐みつさかひあしへへたつる. 在. 慶. 意. 巴. 昌. 仍. 純. 忍. 春. 長. 敏. 頓. 叱. 又とはんけはひならぬを恨侘. かすみをくめる袖の度々. 純. 意. 巴. 在. 永日もをくる関ちにくらしはて ともにわかれをおしむ旅人. なさけ猶かり初臥に浅からて よそ目しのふはやまぬくるしさ. 春. 長. 昌. 慶. 巴. 仍. 叱. なかめつゝ花に忘るゝわかよはひ. 折々は物のけめくをいかゝせん 絶いるほとのおもひあはれめ. かたふくまゝの月の山のは 暁は鴫の羽かき数そひて. ぬるほとやなきをしねもる袖. 晴とをる雪もみる〳〵かきくらし. 出なはうちのやとりならまし. さかしらはおやさへさくる中にして. 捨てもおもふうき世とをしれ. 別をしたふ玉鉾の末. とり〳〵に鳴立かたの跡遠み. 舟やたゝ入江の波にうかふらん. 雨けもよほす風の中空 . かけは猶かすめる月の明やらて. 枕に近きうくひすの声. 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67. (一五).
(16) . 叱. 秋の雲まよふ跡より晴とをり. はなれす雁渡る空 (翅 はるか). 杳なる田つらも色に成初て. 流もほそき水の水上. 雨は今けしきはかりに晴渡り 蜩の声する方の月待て. 夕日すくなき山のかたはら 霧の雫に袖はぬるめり. 虫の音をしも聞や初けん. 野をかけて茂りそひぬる道の末. 行人みえぬ寺のさし入. 霜こそはかさなりにける橋ならめ. とくる氷のけふる河上. 谷あひは明る朝日の長閑にて. そのふをよそにうつる鴬. 守かけの花のさかりも過けらし. 及ぬをしもおもふくるしさ. 身にしめて思ふあたりの門の前. 一むらやけふりの内にこもるらん. おく猶ふかくなひく竹のは. 袖はたゝ涼しき方にいさなはれ. 人の往来もしけき里々. 雪やたゝ昏行まゝにつもるらん. 仍. 守棟 紹巴 昌叱. あらしの後の月のさやけさ. 巴. 昌叱 十一 景敏 七 恵意 六 玄仍 九 春慶 七 小若 一. 梅咲て匂ひ外なる四方もなし いくへ霞のかこふかき内 . 義光. 忠長 七 宗頓 六 小梅 一 玄春 七 慶純 六 ⑦ 文 禄二年二月十二日 何人. 春ふかきかけの山畑道みえて 絶たるも猶かけはしの末 . ウ. 敏. 慶. 仍. 純. 在. 叱. 頓. 5. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 草ふきははらひ侘らし秋の霜 風もたまらぬ軒のひま〳〵 . 6 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. かしけたる竹の末々方よりて くつれしつゝみ波やこえけん. はる〳〵と舟の綱手を引のほり よとのゝ道を人帰るくれ . 俄にも時雨きにける伊駒山 みるか内より雲かゝる峰 . 花さかり霞晴るれは顕れて 袖にあかなきすみれ幾本 . 7 二. 8. 紹巴 十一 誓忍 五 乗昌 五 嘉昭 一 既在 八 了照 二. ウ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 1 2 3 4. 玄仍. 禅祐. 禅昭. 光清. 景敏. 慶広. 右能. 玄陽. 寿忍. 乗昌. 高正. 能舜. 叱. 巴. 祐. 仍. 清. 昭. 広. 敏. 陽. 忍. 昌. 正. (一六).
(17) ウ. 三. 月になる砌の内の暮渡り 露置にたる窓の呉竹 (とまぶき). 波こゆるきしねの舟に苫茨て うら風はけし明やらぬ山 . 藤かえや春の名残と折もおし 霞によする池のさゝ波 . 糸竹のなかき日くるゝ舟の上 つりたれにしも立帰り行 . 舜 能 巴 叱 仍 祐 昭 清 能 巴 叱 昌 敏 仍 正 昭 忍 陽 祐 叱 巴 舜 仍 祐. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 国々のまもりなるへき身はしるし いはけなきよりつかへぬる袖 . あらそふもさすかゆへある和歌 うしろみからに学ひこそすれ . いつしかに秋になされし中はうし 人の心は花よもみちよ . 有明の月を枕のさむしろに はらひもあへぬ衣手の露 . 風は猶音あらましく吹落て すき間かちなる柴の戸の内. 里近きあたりなからも道細み おとろへにたるやとの哀さ . かり人の袖の帰さは暮はてゝ 声をしるへに駒やかふらん . 松原や尾上につゝくかけならん うす雪ふれる遠近の空 . 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29. 哀むやをもきとかをもゆるすらん. 仏の御名もすめるよのこゑ. くもりなき月の光に打むかひ. おもひ出けり故郷の秋. 露ふかき野を分衣しほれきて. 陽. 能. 叱. 巴. 昌. 正. 清. 敏. 昭. 広. 袖の小萩にをくる夕風. 叱. 祐. 仍. 巴. 忍. 舜. 鹿の音や栖の方に近からん. さひしさを猶はたそふる雪にして. かりのやとりそ戸さすまゝなる. 朝市はたちすかりたる里離 日影を袖にねふる舟長. 波の音風につれつゝ絶はてゝ. 敏. 陽. つゝみの滝もときや過らん. 巴. 能. 昭. 叱. 昌. 忍. 秋の夜も明行ふるの神かくら. 暮ぬるまゝの袖のかたしき. 又も夢うつゝにたのむ袖の□□ みし俤は忘られぬのみ. つらきこそ別し後の思ひなれ 道の行ての人の音信. 霜になほ啼よはりたるきり〳〵す. さゝのくまにや月もうつろふ. とふ人あらぬおくの山かけ. 老にたるとしもてはやすましはりに. かすもおほえすくめる盃. 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53. (一七).
(18) . 仍 敏. 紹巴 十 景敏 七 高正 五 昌叱 十 慶広 四 能舜 五. 義光 一 禅昭 八 寿忍 七 守棟 一 光清 五 乗昌 六. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 花の香をこめて立らん春霞 陽 清. 野へのこてふのさらぬね所 明ほのゝ空にひはりの声す也 . 昌. 仍. 昭. 紹巴. 玄仍. 昌叱. 盛政. 軒はもる月の春風吹絶て. (ママ 与か). 友益. 沢水の流の末はかた〳〵に. 芦の枯はやうちそよくらん . 霜はらふ道のかたへは暮初て 寒さやさそな柴人の袖. 山かけは音も嵐のをくるらし ね覚の月にをしか鳴いほ. さひしさの砌は秋の野をかけて 分る跡なき露の草々. 巴. 小梅. 時能. 慶純. 承由. 玄陽. 恵意. 明はなれたる田面はるけし 紹巴 景敏. つらなりて天飛かりや帰るらん. こす巻あくる袖のとか也. 玄仍 九 右能 六 小梅 一 禅祐 八 玄陽 七 . 敏. ⑧ 文 禄二年二月十八日 何人. 忍. 祐 仍 昭 忍. 花さけといさむるやきく雨の声. 能. 1. 梢の露のかすむ明朗. 舜. 2. 祐. 広. 叱. 巴. 正. 巴. 3. 出る日にしもぬるむ沢水 草刈や心々にさそふらん. 陽. 4 小梅. ウ. 5 叱. 6. かの丘超の道のかた〳〵 とめいれはしのふの里も顕れて. 7. 庭も軒はも草うつむ跡 松虫のこゑ幽なる秋の暮 . 露よりも猶霜まよふらし 月にたゝよ寒の枕目覚して . と絶しも又衣うつをと あま人や波の汐木をはこふらん. ちいさき舟をつなきもそ置 暮ぬれは野は行かひもみえわかて. かねかすみつゝ道のはるけさ 咲かくす花のいらかの峰高み. 春もまたるゝ山ほとゝきす つれ〳〵のよや独ゐの雨中. 昔おもふに心なくさむ にける後はうき世と猶知て 捨 (こけ). 苺の衣そかへしまゝなる. 重れる岩の雫は絶やらす いく千町田か水まかすらん . 8. 14 13 12 11 10 9. 名. ウ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77. (一八).
(19) 二. 霧深きもりの下道絶々に ゆふ四手朽て残る神かき. くから衣 小車の跡たちつ(ゝ はるか) かりはの野へや杳なりけん. 鳥のなくかた山もとは明残り また越やらぬ関の戸の道 . 政 叱 仍 益 与 敏 意 陽 由 純 能 敏 巴 仍 叱 与 益 意 敏 巴 陽 叱 純 由. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). かすむ野にうつる光は春めきて かきねの水の氷とけ行 . 雪はたゝそゝきもあへす晴返り 今朝やみ谷も出るうくひす . かねひゝく松よりおくの暮果て 落はのうへの月のさやけさ . 流てや絶たるまゝの橋ならん ゆきゝも見えぬ一むらの里 . ぬれ〳〵ん波いか斗すゝか河 雨のなこりの水かさます音 . ともなへはゆかりならねと猶床し いさなはれつゝつかへぬる袖 . 出てよりたよりも稀の旅にして しらぬ国にそ住つきにけり . 及ぬにかくるたのみはいやはかな 文の返しはいつかみてまし . 御祓せし河せの波の行ゑあれや おもひやまんの心もそうき . 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15. 三. 苗代はしつか前田のかたはらに. たゝく戸さしのこたへあやしき. 命のあるをあふせともしる. さすらへもゆるされをうる時待て そむる衣や色をそふらん. 仍. 能. 巴. 益. 叱. 敏. 意. 陽. 政. 与. 巴. 叱 枕もとらしはなにかるやと. みしかよの月をそしたふ酔心ち 春とても一こゑはなけ子規. 能. 仍. 敏. 与. 叱. つもりぬる山も残らす雪消て 水の水上 庭まてすめ(る うきくさ). 風吹は波の萃かたよりに. 純. 秋の蛍のかけは涼しも. 村雨の音せし庭の露ふけて. 由 叱. 政. 益. 意. 巴. 契つゝよその帰さを待もうし なとふた道になれる心そ. つれなさの恨に中は絶もせて したふを後のおやも哀め. ならはしゆかん舞のあしふみ. よしあしをわかたんもまたいはけなし. 月におとろくかたしきの夢. ふる野の田つらすき渡す比. よむ歌にとしふる恨いひつくし. しるへ今忍ふあたりををしへすて. ふみ初つゝも道そよきたる. 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39. (一九).
(20) ウ. 名. 仍 巴 与 能 陽 敏 益 仍 巴 純 叱 政 意 由 仍 益 能 巴 敏 意 政 叱. ほのかなる. 芦屋を近み汐満て. 由. 仍. 益. 能. 叱. 陽. 与. 巴. 敏. 政. 仍. 叱 御階のもとのへたてある袖. 心のみ行ておりけり花の枝. 益. 純. 霞の内の山はつかなり. うらゝなる夕は窓をとちやらて. 風のたひ〳〵をくる梅か香. 笛のねもことのしらへにたとられて. あふやと時を待かくるしき. いちはやき世とは知てもかゝつらひ. いかにしてかはうきを忘ん. とはれぬを夢になせとのさよ枕. 今はといひてふしとさたむる. 月にたゝえらひつくせる虫の声. 霧分てしも人帰るみゆ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87. 友益 九 慶純 六 紹与 八 時能 七. 昌叱 十二 玄陽 六 玄仍 十 承由 六. 紹巴 十二 景敏 八 小梅 一 盛政 八 恵意 七. ウ. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 巴 かりかねのをくるゝ跡は遠き江に くるれはあらき波の秋風 与. 時雨くる程は立よる松高み くもりの内や雪の峰雲 . かりそめに雲の林を分入て ちるに紅葉そたのむかけなき . えにしとてかれ〳〵なるは世のならひ しゐてもとめは法もつたへん . おもふとちまろひあひつゝ枕して 名はもらさしのちかひたかふな . 秋の日の出るやはやき空ならん 月にむかへは長夜もなし . みし跡はやふしかくれの栖にて しほれはてたる霜のあさかほ . 落行をせく池水やよとむらん あるゝめくりを田にそほりなす . 羽よはきこてふも花を求きて 笆しつかにかすむ鳥の音 . たはつけし筋ともあらぬ乱髪 露にぬれぬる青柳の糸 . 焼物は猶しな〳〵の匂ひにて あさけの枕たれになれけん . いとむこそ豊明のすかたなれ つほね〳〵のしるき袖くち . 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63. (二〇).
(21) 雨晴る野は夏草の露 沢水の流涼しき月出て . は山さへ今しけ山の若は哉. ⑨ 文 禄二年五月十六日 何路. ウ. 1 2 置霜しろき竹の末々 ね所を定かねつゝ鳥鳴て. をくるゝ袖の尋行跡 やたゝ駒にまかせていそくらん (道 はるか). 杳なる野は末もわかれす. 聞か内に夕のかねの声絶て 霧よりおつる松の下風 . 秋ふかき山や時雨てきにけらし 目覚すよはの冷しき床 . 月にしもふるき枕をゝしやりて 忘れし中の人香もそうき . 衣手は涙に朽やはてなまし 昔をおもひすめるよもきふ. 興山上人 昌叱 生 紹巴法橋 玄仍 友益. 色. 閑. 与. 仍. 益. 生. 巴. 山. 叱. 小君. 底相. 宗色. 景敏. 紹与. 文閑上人. 敏 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). いつうへて残れる花のかけならん 霞分いるふるの神かき . 日はをちかたのあらしはけしき 立まよふ雲のまかひの山高み . 田中の道の袖のかへるさ 幽なる里のかたへや暮ぬらん. 3 4 5 6 7 8 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. 二. ウ. 一声をしたふや春の郭公. 生. 相. 巴. 仍. 山 叱. ふるかる方とをとつれぬ宿. 山. 巴. 色. 叱. 与. 敏. 益. 閑. 住捨る門は葎のうちにして. 相. 朝霧にまた入はてぬ月さひし あは島とをき秋のうら波. 引汐にさそはれて行あま小舟 吹そふ音の高き夕風. あらはにも笆の梢落はして 山のは寒みうつる日の色. 初雪やふる跡よりも消ぬらん. 生. 竹うちそよきむら雀鳴. 人みえぬ田面の末の草の庵. 敏. 山. 巴. 色. 叱. 与. 仍. 益. 河橋の朽たる方は水かくれて 浅せもいさや五月雨の比. 山あひはいくへ下ゐる雲ならし 花にうつめる春の鳥の音. くるゝよも匂ひはしるき梅咲て 窓のひまもる風のゝとけさ. 独ぬる栖ともなき月のもと かた見とたのむ手枕の露. あるかなきかにつゝく通路. かたふくかけに松虫のなく. かそふれはうさもいくよかかわるらん. 夢より後も明やらぬ空. 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23. (二一).
(22) 三. ウ. 仍 閑 叱 益 巴 仍 生 叱 閑 与 敏 色 益 相 山 巴 叱 敏 色 生 巴 叱 仍 益. ウ. 名. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 旅なるに衣はいつかうちきせん. もろこしのよのをしへしらるゝ 松たてる高野の奥も道有て . あらしの雪はたかはらひけん 御狩はの跡になりたる馬の上. こなたかなたの小車の袖 契たゝあためくは憂人心. いかにたのまん言葉の末 物思ひ今はのきはとあらはして. かたしく月に過るかりかね 舟つなく入江も広き秋の水. 芦へほのかにかり渡す跡. 一むらの霜のふか田や残るらん 冬もをしかの里ちかきこゑ . 春雨の音はしられぬ空晴て 小家の軒端けふり立なり . 白妙によも明かたの花さかり うくひす羽吹月のしつけさ . 春日野やふもとのさかひへたゝりて 霞もやらぬまのかく山 . しのふ別の明るあやなさ よこ雲も夢の行ゑの名残あれや. ゆるす限をまつはさすらへ かしこきの心を文にかきつくし. 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47. 夕顔の色もわかれぬたそかれに. 敏. 巴. 相. 仍. 叱. 敏. 相. 山. 生. 色. 益. 叱. 与. 閑. 仍. 巴. 色. 生. 山. 与. 閑. 品々を知かたきこそ歌ならめ. 木々にみせたる春秋の程. 藤かえにましはる松のつた紅葉 岩ほのかけの雫露けし. いけ水も月更ぬれは音澄て 氷をくたく波のをし鴨. 去年よりの寒さ今はた絶けらし 霞こめたるすみかまの道 ふむ跡を大原山の雪間にて 青柳の梢かたよる庭広み. わくれは袖にさくらちるかけ 吹とをりたるこすの朝風 秋もしはしはあつさ残れり 月まては戸さしの外に立出て ちきらぬ暮を日くらしの鳴. 巴. 相. 閑 一度は捨にし世にも帰りきて. あかしの波のへたてはるけし. ぬきかへなんもうき藤衣. 袖の露や身にしむ色にこほるらん. ふるとしもきゝたにあへぬ雨そゝき. はちかはす心の程のいか斗. またいはけなき文の墨つき. かさす袂はあやし行すち. 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71. (二二).
(23) 友をしもまとはす声や村鵆 さよ風さゆる霜の芦のや . 生 九句 景敏 九 紹巴法橋 十一 宗色 八. 玄仍 十 底相 七 友益 八 小若 一 ⑩ 文 禄二年五月廿日 何人 . 若竹をみれはしけらぬ草木哉 そのふも野へも五月雨の露 . 蛍とふかけは涼しき流にて まつよひ過る月の河上 . せのこゑはいくへの霧にむせふらん 風しつまれる秋の山本 . 与 敏 叱 山 仍 生. 春 池 紹巴 白 杉 日 野新大納言 昌叱. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 丘越の道の紅葉はちりつくし 夕霜しろき松の村立 . 雲. 興上人 九 文閑上人 八 昌叱 十二 紹与 八. 花さけは心よりいる山のおく つれ〳〵にさへをくる春の日. 草枕かりよる旅ねあかしかね 夢も都は遠さかりけり . 100 99 98 97 96 95 1 2 3 4 5 6 7 8. ウ. 二. いつくにか鳥のやとりを求らん. 夕々の秋のあはれさ. 砌さへ野と成斗里は荒て つゝきつゝかぬ草むらの道. 春のあらしのすさふせき山 空はまた霞もやらぬ朝朗 竹のは末のあは雪の色 浅見も渡す河つらの舟. 里人のま柴にかよふ道遠み 夏なき方や谷の戸の山. 一とをりふかき木陰の風過て 松かね枕夢はさめけり 板間もり入月のあかつき. 露霜をかたしく袖はぬれまさり. よせ帰る波やつゝみを越ぬらん. 行駒の跡をも花やうつむらん. 旅なるを思ひやりてやうつ衣. 幽に過る初かりのこゑ. 月は今霧のまかひの影見えて. 空にいくたひ雨そゝくらん. もえ出る野沢の草の浅みとり. 氷とけそふ水のすゑ〳〵. はるかにも返す田面の明離れ. 往来も絶ぬ里のかたはら. 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. 杉. 白. 春. 池. 敏. 雲. 光. 仍. 広. 右. 日. 叱. 白. 杉. 池. 巴. 雲. 春. 賢好. 景敏. 玄仍. 光豊. 広橋中納言 右衛門督. (二三).
(24) ウ. 三. 日 巴 叱 仍 広 雲 敏 白 光 池 杉 叱 巴 右 仍 日 春 杉 叱 光 白 春 池 仍. 名. ウ. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). あかす猶なれ〳〵てみる秋の月 さけはうつろふあさかほの色 . 夏きてもいかにつれなき郭公 草の庵の夕あけほの . 中空はさえ残るかと雪ちりて またほのかなる鴬のこゑ . 峰つゝき花の限はかすむなよ 春の日もやゝをちかたの松 . 村雨の名残の露やこほるらん 消ての跡の雲の絶々 . こゝかしこ田中の鴫の床かへて 度々秋の風そはけしき . 芦の一夜の月の下臥. 明る波間にうかふ江の舟 鐘の声枕に遠き難波かた. しのき〳〵て岩つたふすゑ をくれしと旅行袖やいそくらん. 落はの跡に残る木高さ 立ならふひはらに寒き入日影. 小倉の山のかけや暮けん 吹出る嵐の雲の時雨きて. たれにかみせん花の草々 分ならす野へは虫のね鹿の声. たへたるをとはれぬ宿の秋淋し. 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33. 巴. 日. 広. 敏. 雲. 右. 叱. 巴. 杉. 春. 白. 叱. 日. 光. 池. 広. 敏. 杉. 杉. 賀茂河やわかるゝ末も絶やらす. 中の契も神やたのまん. 年へてもつらさはおなし心にて. 涙に猶もおもひよはれる. いつかはかへりあふさかの関. おしむこそ都の内の春ならめ ちれは花さへ青柳の色(に わ) 場にして 永日もおほえぬまりの むかしさそなの御幸なりけん. おやと子のたゝしき道は絶ぬよに つたへもてこし歌のかしこさ. 仍. 右. 雲. 春. 巴. 後はたゝ心つからの学ひにて かゝけそへたるよはのともし火 松の戸に更ても遅き空の月. うきはとはれぬ床そ露けき 独きく哀はしらし荻の声 身にしめ思ふ人の行末. 俤や夢うつゝともわかさらん あら玉の春を隣のかたゝかへ. 月をも日をもえらふうらかた. 明はてぬよりいそく帰るさ. したしきは門出をしたひしたはれて. ひま〳〵に霧の笆の水晴て. さすかに跡を残すしほかま. 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57. (二四).
(25) (すべらぎ). 皇のをこらぬ代のまつりこと 国の司もかきりこそあれ . 日. 紹巴 九 右衛門督 六. 池. 仍. 光. 蒼. 金. 宗養. 紹巴. 金. 蒼. 巴. 養. 蒼. 金. 養. 雨になりつゝ永日の空. 巴. 蒼. 巴. 泪さへむかし語のかす〳〵に 人伝はおもふ恨や残すらん. 養. 金. 蒼. 金 あらぬ情のまことしもなき. 音信や道のたよりの前渡り. 杳なる野を月に行袖. (はるか). ふかくなる秋とは露を払かね. 蓬生なからみれはみしやと. かこつに近きゆかりしるしも. 帰るへき折しる鳥も打羽吹. 暮けり ふるえの柳春とも やイ. しけりそふ木間も苺の浅緑. をと 岩ね〳〵の水くゝる (こけ). 一筋の流のすゑは橋見えて. ははけにつゝく里の村竹. 秋の風たか軒はより時雨らん. ⑬ 弘 治五年八月十一日 何船. 白. 巴 雲 杉 春 白. 春 九句 昌叱 九 賢好 一 池 七句 広橋中納言 六. 白 八句 光豊 六 杉 九句 玄仍 八. 巴 雲 広. 春. 叱. 敏. 1. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 立ならせ月も峰行鹿鳴草. 右. 2. 叱. 3. 朝霧わたる岳の辺の道. 日. 4. 仍. 5. 舟路さへゑそか千島はへたゝりて 東風吹風はかすむしのゝめ . 6. 軒近き袂に匂ふ梅の花 ことゝひきぬる蓬生の春 . 日のうつるあたりは蝶の去やらて 野もかた分る露のしつけさ . 色なるを残す草刈心あれや あらし置たる秋のふる畑 . 月のみは住なれにける庵の内 音信絶し暮はわひしも . 7. 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. またれつる後の朝の文もいさ 使も遠き宇治の中道 . 春日野やかすむ行ゑの袖ならん かたよりなひく若草のかけ . 乱つゝしつえをつたふ花の露 雨に翅やうくひすとなく . けふのみの春こそ春としたふらめ 仏なき世も法にいる門 . 8. 雲 八句 日野新大納言 八 景敏 六. ウ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81. (二五).
(26) . 金. 蒼. 巴. 養. 金. 蒼. 巴. 養. 蒼. 巴. 金. 養. 巴. 蒼. 養. 金. 蒼. 巴. 金. 養. 蒼. 金. 巴. 養. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 守捨る岩まのほとり氷ゐて 網代の波に明る日の影 . 小車をひくや河せの末遠み 賀茂の祭も春過てとや . 花を待心はたれもまたけきに わかれも行か天つ雁かね . 男山あふく峰より霞きて 月はふもとのわか草の露. わかいらむ道の行ゑは宇津の山 夏ををくれと茂る葉かくれ . 暮果ぬ鶉の床に枕かせ 便もとむる旅のあはれさ . 朝かほも咲やとまたき起出て お花かすゑはうす霧の色 . 難面につれなくもこそ慕つれ 閨の戸さしも明かたの月 . をくれたる駒も行々待つれて 心くらへはまけんともなし . 春かけてすみやく煙風をいたみ 市路のかへさ日は暮ぬめり . 世の外と一木の花の山にきて 雪やかすみのおくに残れる . 哀やはあさ沢水に鴫のこゑ 草ふく陰そあたり離れし . 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19. 舟ひとり明終るよのかち枕. 置こそあへね霜のむら消 一本の枯のゝ中の花薄. すみれつむ野はひはり立也. 紫の霞の日影かたふきて 夕の遠の山のはの雲. 巴. 養. 金. 蒼. 巴. 養. 蒼. 金. 養. 巴. 金. 蒼. 養. 金. 巴. 養. 蒼. 蒼. 巴. 金. 巴. 養. 養. 金. 顕れしかたちたのもし神慮 . 恨のみつもれる中の絶々に こゝらの文のけふりはかなや. いのるにものゝけしきたつ人. いくしほあひの沖つ白(波 かみごころ). うら風も雨け有とや泊舟. 花さけはとひくる人の浅茅生に. 忍ふに似たる偽はうし. 頼むよの打もねよとの月落て. 誰にひらかん雲霧の窓. 身をかくす栖も秋の猶さひし. したに木ふかき松虫のこゑ. うるほへる柴焼ならし薄煙. すめる陰さへ遠き山かつ. 古畑に臥猪のかるもかき捨て. はらへとちりのうつむ細道. 立出ん方なきまゝのつれ〳〵に. 苫屋の波を雨にまかへて. 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43. (二六).
(27) . あらそふもふかきは残る法にして る身そはちかはしぬる をろか(な ちかきまもり). 九重や近衛はうらやまし あかためしにももるゝ度々 . 若はより荻には風のやとりきて おり〳〵とふをおもひとはせん. 打そはゝ身のうきふしもみえつへし ちきる心はいはけなき人 . 方たかへむなしき夜半も有明に 露よりさきの袖しほれとや . 山陰も残るあつさの暮やらて またほのかなる日くらしのこゑ . 巴 蒼 養 金 蒼 巴 金 蒼 養 金 巴 蒼. 分てこし雁の羽風に雲晴て. 空にそ澄る衣うつこゑ. かり初のね覚も秋はいさときに. 物おもふ身や老となるらん. ともすれは泪もろさをくせにして. 花にもかこつ紅葉にもまつ. あらましや折ふし毎の都人 たゝしき道は誰に求ん. 身は旅にしもいつまての空. 水の山かけて 雨かすむかきほ(の はるか). しるへせよいつくかわかの浦鵆 けふりにこもる霜の芦原 蒼 廿五句 金 廿五句 宗養 廿五. 金 養. 紹巴 廿五 ⑭ 元 亀四年六月六日 何人. 蒼 巴 金. 蒼 養. 花の時も風をや待ん夕涼み 巴. 1. むつましきわかなてしこも咲つらん 住にしほともふるさとの庭 . 蒼. 2. 養. 返す田面のすゑ杳なり. 3. しける木間の月薄き庭. 巴. 跡先に立別行雁のこゑ. 4. しほかまの煙は消て色もなし しらぬ時世そ風にうつろふ . 仙人のうるやいかなる道ならん 拾ふ爪木も雪ふかきころ . 松はたゝのへ臥をのみ姿にて さし入よりも寺のさひしさ . 金. 5. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 鐘の音の谷の底なる夕附日 よを待影や河上の月 . 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 6. 霞もや行へき花を隔らん 春のはてしもあらしむさし野. 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67. 養. 巴. 蒼. 金. 巴. 蒼. 金. 蒼. 養. 巴. 藤孝. 紹巴. 紹巴. 孝. 同. 巴. (二七).
(28) . 同 孝 同 同. 巴 孝. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 狩場の小野の日こそ暮ぬれ 萩薄おらぬ袖なき帰るさに. 虫の鳴ねそ稀になりたる 秋の風更行霜や重ぬらん. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 五月雨はよと野も浪に舟とめて ところ〳〵のまこも刈跡 . 流にやむらのさかひを分つらん 田中につゝく道の一筋 . 離駒いはふ方にし行つれて 頼むともなくともに打ふす. いはけなき使は何といひなさん 忍ふ限はあふまてとこそ . さかしらとかつはしる〳〵遠さかり しもかしもにも猶つかへてん . おとろふる二人のおやに身は独 あかしの波にしつまむもうし . 故郷は忘れん物を袖の露 人かへりたる山のさひしさ . 須磨の浦や暁方の空の月 つまとふ千鳥霧にしは啼. すて人はねぬめり 砧ま(き やや) 漸明方近き草の戸に 月も 哀いつくの山ほとゝきす. かり初のやとりに雪の降添て. 7 8 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. 立もたゝしはしか程の朝市に. 湊河 棹さして舟よる春の (あけぼの). 軒の板間の光さやけし 蛍とふ夕は橋の方にねて. つきもて行に猶高き家. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 片岸の筧の水をせき分て. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. なひくも散もしけき竹のは. 春の雨よは明るともなし. 影もたゝ雲間の月のゝとかにて かりねの夢はいかにさめつる なれ〳〵し中の衣もたち隔. いらんいれしの戸さしくるしき. 雪とたにみせぬや花の山颪. かしこさを生なからの習かは. 誰かうちそひておふしたてにし. 墨付もほのか也ける一筆に. 其ことゝなきおもひかなしも. ふる雨も時雨めきたる秋風に. こゝろをうつす山のはの色. 霞のすゑはくらき明更 翅や月をかへすらん 雁渡る. かたへの氷流行あと. あたゝかになる野の草の深緑. 老たる馬や先ねふるらん. 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31. (二八).
(29) 其人とまねひなしたる声にして いむことをしもうくる法師 . 知しらす超もてきぬる関路にて 都の外はたよりなきのみ(おも いやり). 孝 同 巴 同 孝 同 巴 同 孝 同 巴 同 孝 同 巴 同 孝 同 巴 同 孝 同 巴 同. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 横雲に春のあらしの吹絶て つくや枕の夢のうき橋 . わたつ海をかさしの花に想像 霞のうちやあはち島山 . 契らぬも待をくせなる夕々 頼むむかへもおなしかたらひ . 涼みしもよ寒の月の衣手に 立休らひてわか閨のうち . 守捨ておくての稲葉打そよき 秋過ぬとやふかき露霜 . 片岳の野への向ひの峰高み 明はなれてもさをしかのこゑ . 日の色もうつるとみれは冴かへり 霞なからに雪そ打ちる . 花や猶藤のうら葉に残るらん 笆のこてふ行ゑ定めぬ . いましはと緑の洞を住かへて 岩ねの水に松の夕風 . あけ 盃はかすの仏をとなへ (ことぶき) 年のをはりのさそな祝言 . 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55. 床の上のうたかたや身の泪河. 袖口いくへこすの小車. 祭にとさそひ出たる人多み. 猶わか国とまつる氏神 唐やむなしき塚の跡問て. 剣もおもふためにおしまぬ. 花にはらひし浅茅生の道 梅かゝも有明方の野への露. はふきもいかにうくひすのこゑ. 今日はまた霞もやらぬ春立て かゝる山 東の空に雲 (かじ) 橈を絶て沖つ舟 暮てより. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 孝. 同. 巴. 同. 巴. 同. 同. 孝. けしきも風の遠近の波. 巴. 同. 秋に今した葉散そふ柳原. 藤孝 五十. なれ〳〵てしもつるの諸こゑ. 月こそはかはらぬ代々の友ならめ. よもきの露も古にたる門. 忍ひよるあたりに人のたゝすみて. ねたましきこそ前渡りなれ. 百敷やきさみ〳〵にまうのほり. 通路はほとふるかほをあらはさて. よるよひるよと物おもふ比. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79. (二九).
(30) . 紅葉ゝの散ていつくにまよふらん 本たてるかたはらの松 (一 はるか). 杳なる末のゝ行て里ありて 絶々つゝく道もみえけり . 秋の霜消渡りたる朝朗 かれても残る草村の色. 澄のほる月に方よる虫のこゑ すゝみくらせる玉鉾の袖 . 待人のなきにはあらぬけしきにて 物おもふにや打なかむらん . くせとなる泪もろさのいか斗 あたし心もよはひにそそふ . 又あはむ春もたのまぬ花はおし かすむ夕の友したひつゝ . 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 紹巴. 長慶. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 紹巴 五十. 雨はまた残る方よりくるゝ日に 風のまゝなる中空の雲 . ⑮ 永 禄七甲子年正月廿二日 懐旧. 江を遠み汀に春の雁鳴て 舟は流の山ちかきかけ . し其人のかた見や宿の梅 消 (こけ). 苺地かすめる月は有明. 1 2 3 4 5 6 7 8 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9. 鳴鳥の音に行空は長閑にて. 同. 巴. 慶. 巴. 同. 同. 同. 巴. 同. 舟さしわたすみしま江の波. 慶. 同. 巴. 慶. 慶. 草かきのあたり一入生添て. 置露や朝な〳〵の秋の色 山は日くらしおりはへて啼. 刈跡の菅のはつたひ水超て. 同. 巴. 同. 慶. かたはかりなるあせの細道. 牛の子のいり日にたてる門の前 住家しられてなひく呉竹. 雪晴る山をむかひの岳のへに. 慶. さよの時雨も明方の雲. 同. 同. 慶. 同. 巴. いねかての枕の上に月落て. みせはやの小萩うつろふ夕々 野となるまてもすめは住跡. 憂身とも世にし任ておもふなよ たゝ何こともこゝろなりけり. こぬ人ゆへの秋のかなしさ. たをやめのあたの契もあかなくに. かり初臥のよや更ぬらん. あつかりし空も忘るゝ月待て. またほに出ぬ早田おくて田. 屋の道 人けまれなる芦の (ひとしお). ま柴たくほ影もしめるうら風に. よる波高き磯の山きは. 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21. (三〇).
(31) 唐にかよふ哀や和歌 したふもさそな春秋の暮. 巴 同 慶 同 巴 同 慶 同 巴 同 慶 同 巴 同 慶 同 巴 同 慶 同 巴 同 同 慶. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). つれ〳〵とならす硯の終日に むかしを知もことのはにこそ. 蓬生のかきほのかたへ道有て と絶もはてぬ水幽なり . 日の色もほの霞つゝうつる野に 駒はなちかふ陰の藪原 . 隠家の春にこゝらの人のきて ふめる跡より雪の消行 . 足引の山路くらして草枕 かへらはさくらわれやうらみん. 覚やすき夢やよ寒の空ならん 袖に片敷故郷の月 . 海かけて河霧流す朝あらし みれは一つら落る雁かね . 立初し名は行ゑまて残る世に 跡もなからの憂橋はしら . 難面にさらは命の絶もせて はかなやさても恋といふ物. 旅衣かふる都の関むかへ おとろふる身のよそめはつかし. ちりぬれは木葉も花の俤に 分入まゝの道の山風 . 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45. 頼まれぬ人の心の岩木にて. 松は遠なるうらのしつけさ 花盛波さへしかの山越に. の 霞やしはし残すあけほ (ぬれ) のね所さらぬ雨に沾て (鴬 すだれ). しのふる袖は行方もなし. 猶一こゑを待ほとゝきす. むら雲にかくれし月も影暮て 空に吹立秋の木からし. 霜ふれは色もすくなき菊の花 こほれ〳〵て跡の白露. ともなふも先起出て行野へに 旅としいへはやかてもそ憂. いさ爰にこよひはねなんうつの山. 夢の間にこそうきも忘れめ. 魂の送り出ると人もしれ. 小車のたゝすむあたり暮渡. 箔のひまは春風の露. みつ汐につれて舟よる和田の原. 出てよをまつ月そいさよふ. 秋風のふけは軒はもまはらにて. 賤か小田守庵わひしも. 鹿のねも隔るつまを思ひねに. 野山の露をさなからの袖. 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69. 同. 同. 巴. 同. 同. 慶. 同. 同. 巴. 同. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. (三一).
(32) . (うきくさ). 萍のすゑはは水の遠近に. 巴. 養. 同. 巴. 同. 養. 紹巴. 重興. 宗養. 巴. 同. 慶. 同. 巴. 同. 慶. 巴. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 雲間より花の梢の顕れて 松に藤さくふる寺の道 . 長慶朝臣 五十 四十才. 紹巴 五十. ⑰ 弘 治二年三月廿四日 何路 江州永原筑前守重興興行 於 (こけ). 行水やさゝれ苺むす岩つゝし 雨のなこりの藤かほる山 . 時鳥またれぬ春の月出て なかめをうつす夕暮の空. から衣はしめて薄き秋風に 分ているのゝ露の色々 . 3. 虫のねはいつれともなく鳴添て よるの蛍の明はつる影 . 風落て日もかたふきぬ海士小舟 山はむら〳〵雪しろくみゆ . 遠さかる中としもはた成初て 消しあはちの島の夕波 . 独のみかりのやとりの方たかへ ぬき置衣身にやそへまし . 100 99 98 97 96 95 94 93 1 2 4 5 6 7 8 9. あさき流や先氷るらん. ふかき心のみえぬものかは. 身はうたかたの哀いく程. 養. 同. 巴. 養. 同. 巴. 同. 養. 同. 巴. 同. 養. 巴. 同. 養. 巴. 巴. 夕へになれは袖ほのかなり とふ人あらぬ故郷の秋. 此世さへ忘るゝ物を後かけて. 同 たゝたのめとの法のうれしさ. 同. 巴. 養. 憐みに さすらへの限はふかき (とまぶき). 行こそとまれあまの苫茨 . 松たてる江の水遠き夕鴉. 同. 養. 晴渡りたる雪の山々. 巴. 秋の月時雨の後の雲消て. あたりまて野寺の道の高萱に. 色なき鐘も声そ身にしむ. あかぬこゝろもいやはかなゝり. 長夜を添ねの夢の朝朗. 露なから月をやまねく花薄. 道のへに捨をく跡の幣祓. 一度はあふをおしへよ泪川. 帰るさをうらみん花にやとかりて. 夢もおしまし明ほのゝ春. 啼落る雁の羽風も打かすみ. 田中につゝく片岡のむら. 汲捨し山井の道は霜ふりて. 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10. (三二).
(33) 送りも捨ぬ袖のした風 もてならす扇の匂ひいか斗. つまとふ千鳥風にしは啼 霜白き茅原むら〳〵枯立て . 遠方人の袖のよふかさ 月残る嶺の梯行雲に . 木すゑの秋のかけ浅き道 なれきつる里遠くなる鹿のこゑ. 片山陰や明残るらん むら竹のはたれになひく雪落て. はらふ露をやうくひすとなく 旅衣立別てのあさ霞 . 養 同 巴 養 巴 養 同 巴 養 巴 養 同 巴 同 同 養 巴 養 同 巴 同 同 養 巴. 松本麻子:国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(一). 都の方は空ものとけし 秋風もしけき草木にみえ初て. けふりをくゝる水の一すち かゝり焼よるの鵜舟の綱手縄 . あらしや野へに吹たゆむらん 松のはの入日をうすみ雨過て. 絶ぬすさひやうつしゑの跡 すまの浦や侘つゝ送る明暮に . 身をしつくせの命ならまし ちれはこそ花に紅葉もおしまるれ. 名乗をきかぬ行ゑかなしも 物のけにかつはみえても難面や. 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34. 月影さひし山しなの跡. 養. 同. 巴. 養. 同. 巴. 同. 同. 養. 同. 巴. 同. 同. 養. 同. 巴. 巴. 同. 同. くるれはかねの音もそひけり. よしあしきとてふたつあるやは. 野分せしけさまて月に蛬. 残るはまれのよもきふの陰 ねぬよおほゆるさ筵の露. いつよりか秋になしぬる人心 木の葉ふりしく中の通路. 花のえは春の隣の色みえて 霜の雫を羽吹鳥のね. ふむ跡もあらいそ波の真砂地に はこふもしほのけふる山もと 里はたゝ夕日のすゑに遠からて. 同. 吹きて涼し風のむら雨. 養. 養. 同. 巴. 袖は猶むすふかうへの秋の露 菊の香も昨日の跡は幽にて. ぬるをしやつらゝの枕侘ぬらん. やとりあまたの月のみ山ち. つみてくやしきわかおもひ草. はしめよりつかへ初しに任きて. 捨しにやおなし憂身もなくさまん. 柴おひ出る谷合のみち. こき帰る波の友舟よひかはし. 春日野や甍かさなる霧の内. 81 80 79 78 77 76 75 74 73 72 71 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58. (三三).
(34) 巴. 同. 本稿は平成三〇年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金. 〈付記〉. (三四). 同. 課 題 番 号: 18K00286 ) の 研 究 成 果 の 一 部 を ま と め た も の で あ る。 貴 重な資料の閲覧と翻刻許可を出して下さった国立公文書館に御礼を申. 医療創生大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇 第五号(通巻第三十三号). 養. し上げる。. (まつもと あさこ/日本文学). 同 . 巴 同 同 養 同. 同. 巴. 養. 巴. 同. 養. 巴. 養. 巴. 打いてゝ駒いはふのゝ春さむみ ひま〳〵みゆる雪の下水 . 鳩鳴て雨雲かゝる古畑に さひしき暮をいそく秋の日 . 萩のはや先ほのめかす月ならん 砌玉しく露の木のもと . 卅一才. 宗養 五十 興 一 重 卅二才 紹巴 四十九. 木からしの色は岩ねに朽やらて 住かたふかき山の松かき . 俤をとめこし花の夕かすみ かりはのきしのこゑの落草. 生れあはんとは頼てもおほつかな たちそふ程をせめて隔つな . 袖つゝく河への小舟引捨て ひとり〳〵にわかれ行道 . 秋ちかき空は雲間の浅みとり うへのほりたる田上の山 . 外面なるは広柏のまはらにて にし日なからも影はさやけし. 風のまに〳〵にあられふりきぬ. 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82.
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