No. 703/Special Issue 2019 53 賃金に下方硬直性がある場合には,使用者側からの 一方的な解約である解雇により量的な調整が行われ る。人員整理のための解雇が自由なら,人数,人選の 両面で労働力という資源の配分の観点から不効率な解 雇が行われる。解雇者の人数,人選を望ましいものに し,資源配分を改善するような社会的な人員削減ルー ルが必要とされる。本稿では整理解雇のモデルを提示 し,人員整理に当たって次点価格オークションを行わ せることにより,効率な資源配分をもたらす人選が行 われることを示した。これにより効率性が高まるの は,オークションでの入札を通じて,雇用を解約する 労働者の人選に労働者の事情,機会費用の差が反映さ れるからである。解雇ではなく,希望退職の募集など 合意解約を行う過程では,何らかの形で労働者の事情 が反映される可能性がある。この意味で,整理解雇法 理が組合,労働者との協議・説明,整理解雇回避の努 力を求め,希望退職の募集に誘導していることは意味 があろう。また,裁判で被解雇者の選定基準とその適 用の合理性の判断に当たって,労働者側の立場を考慮 することも,社会的な効率性の観点からは望ましいと 思われる。人員削減のルールを考えるときには,当事 者間の利益の調整,社会的な公正,正義など労働法学 が取り組んできた側面も重要である。同時にそのルー ルが,整理される労働者の人選を通じて労働力の配分 の効率性に影響を与えることも無視できない。何らか の形で機会費用が人選に反映されるようなメカニズム デザインが求められている。 たかはら・まさゆき 大正大学客員教授。最近の主な論 文に「解雇規制は本当に日本の就業率を下げているのか?」 『日本労働研究雑誌』No. 679。労働経済学専攻。
次善の資源配分を達成するための人員削減ルール(PDF:463KB)
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