IRUCAA@TDC : 少子社会における小児期の口腔健康管理 : 8020は小児から 4.混合歯列前期における口腔健康管理
7
0
0
全文
(2) 8 0 5. ―――― 教 育 ノ ー ト ――――. 少子社会における小児期の口腔健康管理 ―― 8020は小児から ―― 4.混合歯列前期における口腔健康管理 関 口. 浩. 米 津 卓 郎 藥師寺. 久 保 周 平. 仁. 東京歯科大学小児歯科学講座. は. じ. め に. いて患児を歯列発育段階別に区分してみると混合. 近年,母子保健の一環として保健センターでの. 歯列前期(第一大臼歯,切歯萌出期)が全体の約6. 乳幼児歯科健診や学童の学校歯科健 診1)を 通 じ. 割を占めていた。また,保護者が処置を希望した. て,保護者の歯科保健意識は向上し,小児の口腔. 歯列・咬合不正の部位はいずれの歯列発育段階に. 内の健康を維持増進してあげようとする意識が顕. おいても殆どが前歯部であり,臼歯部の処置を希. 著になっている。実際,本講座が参画している小. 望した者は僅かであった。すなわち,保護者の関. 児の歯科健康診査の場では,齲蝕に関する事項の. 心は審美的要素の強い前歯部に向けられており,. ほかに歯列不正,不正咬合,口腔習癖についての. 機能面で重要な臼歯部には殆ど向けられていな. 相談が多くなってきた。この傾向は小児歯科臨床. かった。一方,その他の来院動機群の患児につい. においても同様であり,本学の小児歯科臨床にお. て,小児歯科医が歯列・咬合不正の有無を診断し. ける調査結果からも最近は歯列不正や萌出異常を. たところ419人中,228人(54. 4%)に 何 ら か の 歯. 来院動機とする小児患者が著明に増加し,咬合に. 列・咬合不正が認められた。すなわち,全調査対. 関する関心が高まってい る。本 講 座 の 小 川 ら2). 象患児において,何らかの咬合誘導処置を必要と. は,平成7年3月から平成10年3月までの3年間. する歯列・咬合不正を有する患児は673人中,466. に,本学千葉病院小児歯科臨床に来院した6 73人. 人(69. 3%)と高率であった。本結果を講座開設当. の初診患児およびその保護者を対象に,歯列・咬. 初の結果と比べると,ここ30年間で約10倍に増加. 合不正の有無およびその発現部位について調査を. していた。. 行った。その結果,全調査対象患児6 73人中,歯. 小児の齲蝕減少と軽症化が顕著となっている昨. 列・咬合不正を来院動機とした患児 (歯列・咬合. 今,これに関連して小児歯科を受診する患児の来. 不正群)は254人(37. 7%)であり,来院動機が齲蝕. 院動機も変化し,齲蝕処置を希望する患児は減少. 治療,予防処置,歯牙外傷,歯科健診などの歯. し,逆に歯列・咬合不正の改善を来院動機とする. 列・咬合不正以外の患児(その他の来院動機群)は. 来院患児が増加する傾向がみられる3∼5)。. 419人(62. 3%)であった。歯列・咬合不正群につ. そこで,患児および保護者からのニーズの高い. H. Sekiguchi, T. Yonezu, S. Kubo and M.Yakushiji : Child Oral Health Care on the Society Diminished in Child Population Part 4.Pediatric Dental Care for School Children(Department of PediatricDentistry, Tokyo Dental College) 別刷請求先:〒2 6 1 ‐ 8 5 0 2 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学小児歯科学講座 関口 浩 ― 1 ―.
(3) 8 0 6. 関口, 他:少子社会における小児期の口腔健康管理. 混合歯列期における咬合誘導処置について,特徴. いは拡大ネジを付加した可撤性床型空隙回復装置. 的にみられる歯列・咬合不正とその処置法につい. の応用が一般的である(図1)。空隙回復後は保隙. て述べてみたい。また,萌出間もない第一大臼歯. 装置を装着し,回復した空隙が再び短縮しないよ. の齲蝕予防処置についても紹介したい。. うに定期的な検診を行うことが肝要である。 2)第一大臼歯の異所萌出. 1.第一大臼歯萌出期の咬合誘導処置. 異所萌出とは永久歯の萌出に伴い先行乳歯以外. 一般に上下顎第一大臼歯は初期咬合においては. の近接する乳歯の歯根を異常に吸収し,その乳歯. 咬頭対咬頭のものが多く,下顎第一大臼歯が上顎. の動揺や脱落を起こさせたり,また,すでに萌出. 第一大臼歯に対して相対的に前方に変化すること. している永久歯の歯根を吸収するような永久歯の. により永久歯列期の正常咬合に移行する。この変. 萌出ならびに萌出経路の異常をいう。原因として. 化は第一大臼歯初期咬合から19歳頃まで継続して. は,歯牙の位置異常,歯牙の萌出方向の異常,乳. 6, 7). 。歯. 歯の外傷,乳歯の根端病巣,顎骨の成長不足,歯. 列弓全体の空隙の調整を考慮しつつ,この第一大. 牙の大きさと顎骨の大きさの不調和などが挙げら. 臼歯の咬合関係の確立を管理,調整することが望. れる。. いるが,側方歯群交換期には変化が大きい. 異所萌出の好発部位としては中切歯,側切歯,. まれる。. 第一大臼歯があげられる。第一大臼歯の異所萌出. 1)第一大臼歯の近心移動 乳臼歯の早期喪失,隣接面齲蝕,第一大臼歯の. は上顎に多く発現する。. 異所萌出などが原因で第一大臼歯が近心位に移動. 第一大臼歯の異所萌出の発現頻度は欧米では2. した症例に対しては,空隙回復処置 (第一大臼歯. ∼4%,我が国においても約3%と報告されてお. の遠心移動)を行い,本来存在していた空隙を取. り,決して数多く経験する症例ではない。しか. り戻すとともに上下顎第一大臼歯の前後的咬合関. し,異所萌出を放置すると第二乳臼歯の早期喪失. 係を正常な状態に確保しておくことは重要なこと. を来し,第一大臼歯が本来の位置よりも近心位に. である。ところで,空隙回復処置を行う際に,第. 出齦し,歯列周長の減少につながるため異常を発. 二大臼歯の発育状態ならびに第一大臼歯との近接. 見したら,直ちに処置することが必要である。 異所萌出の原因には,!第一大臼歯歯胚が不正. 状態は空隙回復難易に大きく関係し,早い時期に. 位置にある,"第一大臼歯の萌出角度の異常,#. 処置を行うほど遠心移動が容易である。 第一大臼歯の遠心移動に用いられる咬合誘導装 置としては,弾線(カンチレバースプリンブ)ある. 図1. 第一大臼歯,第二乳臼歯の形態異常,$第一大臼 歯萌出の場の不足等が挙げられる8)。. 6 の遠心移動 カンチレバースプリングを用いた!. ― 2 ―.
(4) 歯科学報. 図2. Vol.1 0 1,No.9(2 0 0 1). 8 0 7. 下顎右側第一大臼歯の異所萌出(ブラスワイヤーの使用). Young9)は,第一大臼歯の異所萌出状態をその 予後から2型に分類している。 ジャンプタイプ:萌出過程で隣接する第二乳臼 歯の歯根を吸収し,一時的に第二乳臼歯の遠心部 にかかっているが,自然に外れて正常位置に萌出 してくるもの。 ホールドタイプ:萌出過程で隣接する第二乳臼 歯の歯根を著しく吸収し,第二乳臼歯の下部にか かってその位置に留まったり,第二乳臼歯を脱落 させてしまうもの。. 図3. 第一大臼歯の異所萌出に対する処置には,第二. 上顎左側第一大臼歯の異所萌出(安全ピン型スプ リングの使用). 乳臼歯を保存する方法と第二乳臼歯を抜歯し,そ の後第一大臼歯を正常位置に誘導する方法があ. 第一大臼歯をその部に沿って萌出してくるように. る。. する方法。本法により第一大臼歯が萌出したとし. 第二乳臼歯を保存する方法としては,!第二乳. ても第二乳臼歯遠心面を削除した分だけ第一大臼. 臼歯の歯根吸収が軽度で動揺が少ない場合に,ブ. 歯は近心移動することになるため,推奨すべき方. ラスワイヤー (図2),安全ピン型スプリング (図. 法ではない。. 3),矯正用セパレーティング ゴ ム な ど を 用 い. 一方,第二乳臼歯の歯根吸収が著しく,保存不. て,第一大臼歯と第二乳臼歯の歯間分離を行い,. 可能な場合,第二乳臼歯を抜歯し,その後第一大. 第一大臼歯の萌出方向を正常に誘導する方法。". 臼歯を正常位置に誘導する方法がある。第一大臼. 乳臼歯部に弾線を鑞着した矯正用既製バンドある. 歯の誘導にはアダムススプリングや遠心移動用ス. いは既製金属冠を装着し弾線の作用により第一大. クリューを付与した可撤性床型空隙回復装置が用. 臼歯を遠心移動させ,正常位置に誘導する方法(図. いられる。. 4)。本法では,一般に固定源として第二乳臼歯. 3)第一大臼歯の交叉咬合と処置. を用いるが,異所萌出部位の第二乳臼歯の歯根吸. 第一大臼歯の交叉咬合は逆被蓋,完全逆被蓋,. 収が著しい場合には口蓋(舌側)弧線装置を用いて. 鋏状交叉咬合の3型に分類され,さらに片側性と. 反対側の乳臼歯部にも固定を求めるのが得策であ. 両側性に分けられる10)。発現頻度は片側性の逆被. る。#第二乳臼歯遠心面を削除することにより,. 蓋ないし鋏状交叉咬合が多い。原因には,逆被蓋. ― 3 ―.
(5) 8 0 8. 関口, 他:少子社会における小児期の口腔健康管理. 図4. 上顎右側第一大臼歯の異所萌出(口蓋弧線装置にスプリングを付加). 交叉咬合は上顎が狭窄歯列弓を呈している場合 に,第一大臼歯はその歯槽堤の延長上に萌出する ことが多く,下顎歯と逆被蓋の咬合を形成する。 鋏状交叉咬合は下顎歯よりも上顎歯の頬側への萌 出異常(頬側転位)が原因で起こる。このような不 正を長期間放置しておくと,下顎が左右のいずれ かに偏位する原因となりうるので。早期に改善す ることが必要である。 処置法としては,逆被蓋交叉咬合ならびに鋏状 交叉咬合については,一般的に上下顎第一大臼歯. 図5. 左側第一大臼歯の鋏状交叉咬合. にフックまたはボタンを鑞着した既製バンドを装 着し,顎間ゴムを 用い る 方 法 が 使 用 さ れ る (図 5)。逆被蓋交叉咬合については,上顎は舌側,. レバースプリングを鑞着した可撤性床型装置の応. 下顎は頬側,鋏状交叉咬合については上顎は頬. 用が有効である(図6)。. 側,下顎は舌側にそれぞれフックを鑞着する。し 2.萌出間もない第一大臼歯の齲蝕予防. かし,本法は患児によるゴムの装着が困難であっ たり,咬合時にゴムが切れやすいなどの欠点があ. 萌出間もない第一大臼歯の小窩裂溝は複雑な形. るため,このような場合には,クラスプにカンチ. 態を呈しており,歯ブラシでは窩溝低部にまで圧. ― 4 ―.
(6) 歯科学報. 図6. Vol.1 0 1,No.9(2 0 0 1). 8 0 9. 両側性第一大臼歯の鋏状交叉咬合. 入された食物残渣や歯垢を完全に除去することが. 事指導に加えて,窩溝填塞法による予防処置を施. 困難な場合が多い。従って,食物残渣,歯垢が除. すことが多い。填塞処置は歯牙の出齦後,できる. 去されずに窩溝内に停滞した場合,齲蝕発生の原. だけ早い時期に行うのが望ましいが,萌出間もな. 因となることは言う間でもない。特に萌出間もな. い第一大臼歯に対して,ラバーダム防湿を施すこ. い第一大臼歯の歯質は未成熟であるために,耐酸. とが困難である場合が多い。窩溝填塞法の実施に. 性能は低く,そのために齲蝕の発生および進行が. 当っては,酸処理した歯面を唾液による汚染から. 成熟永久歯に比べて速いという特徴を有してい. 保護し,しかもレジンの歯面との接着力を十分に. る。臨床では萌出間もない第一大臼歯に対して. 発揮させるためには,ラバーダム防湿の使用が不. は,刷掃法,フッ化物溶液の局所塗布や洗口,食. 可欠である。従って,このような場合には,簡易. ― 5 ―.
(7) 8 1 0. 関口, 他:少子社会における小児期の口腔健康管理. 参. 防湿下でグラスアイオノマー系の窩溝填塞材を用 いて暫間的な処置を行うのが得策である。処置 後,定期健診を行い,ラバーダム防湿が可能なま でに歯冠の萌出するのを待って,必要があればレ ジン系窩溝填塞材を用いて再び窩溝填塞処置を行 う。 ところで,萌出間もない第一大臼歯の咬合面遠 心部が歯齦弁により被覆されているために,歯齦 弁下部の窩溝部の填塞操作がしづらいことがあ る。このような場合には,歯齦弁を圧排して行う か,もしくは歯齦弁を切除する必要がある。 お. わ. り に. 乳歯列期の歯列・咬合は正常であっても,混合 歯列前期を迎えると,第一大臼歯の近遠心的ある いは頬舌的な萌出異常が生じ,正常な永久歯咬合 の完成を障害する発育変化が現れ始めることがあ る。また,第一大臼歯が萌出する時期は切歯の交 換と時期を同じくする小児が多く,歯と顎の大き さの関係,臼歯部の咬合関係,切歯部の被蓋関 係,顎の成長方向などについて予測する時期でも ある。混合歯列前期では第一大臼歯のみならず, 歯列・咬合全体について定期的に診査を行い,も し歯列・咬合に不正の発現を認めた時には,早期 に改善を計ることが必要である。. 考. 文 献. 1) 能美光房,宮武光吉(編集) :平成1 0年度歯科六法必 携(法 令 編) 第1版,5 1 9∼5 2 1,日 本 歯 科 評 論 社,東 京,1 9 9 7. 2) 小川尚子,関口 浩,宮田太郎,久保周平,町田幸 雄,薬師寺 仁:小児歯科来院患者の来院動機と歯 列・咬合不正との関連について,歯科学報,9 9:5 7∼ 6 3,1 9 9 9. 3) 島 博史,米津卓郎,望月清志,町田幸雄:本学小 児歯科学講座開設当時と現在における小児患者の来院 動 機 の 変 化 に つ い て,歯 科 学 報,9 1:7 6 5∼ 7 7 3,1 9 9 1. 4) 吉村 譲,石野愛子,清水良昭,佐藤直芳,時田幸 子,盛島美智子,辻川裕久,逢坂亘彦,渡部 茂:明 海大学付属病院小児歯科外来における患者の実態調査 −過去5年間の初診患者の動態について−,小児歯 誌,3 5:9 0 1∼9 0 6,1 9 9 7. 5) 宮田秀昭,大塚由美子,佐野富子,田中裕子,田邊 義浩,田口 洋,野田 忠:新潟大学小児歯科外来に おける初診患者の実態調査−1 9 8 0年,1 9 8 8年,1 9 9 6年 の比較−,小児歯誌,3 6:6 5 2∼6 5 9,1 9 9 8. 6) 秋元英典:乳歯列期から混合歯列初期にいたる咬合 関係の変化に関する累年的研究−特に前後関係を中心 として−,歯科学報,9 0:2 1∼7 0,1 9 9 0. 7) 大西美香:乳歯列期から永久歯列安定期にいたる側 方歯群部の前後的咬合関係の変化−5歳から2 0歳まで −,歯科学報,9 5:7 9 3∼8 2 8,1 9 9 5. Pulver, F. : The etiology and prevalence of ectopic 8) eruption of the maxillary first permanent molar, J. Dent. Child., 3 5:1 3 8∼1 4 6,1 9 6 8. 9) Young, D. H. : Ectopic eruption of the first permanent molar, J. Dent. Child., 2 4:1 5 3∼1 6 2,1 9 5 7. Sim, J. M. : Minor tooth movement in children, C. 1 0) V. Mosby Co., Saint Louis, 1st ed. Chap. 1 2. Trestment of posterior crossbites, p.1 7 5∼1 9 4,1 9 7 2.. ― 6 ―.
(8)
関連したドキュメント
調査の概要 1.調査の目的
教育・保育における合理的配慮
母子保健・子育て支援の領域では現在、親子が生涯
当財団では基本理念である「 “心とからだの健康づくり”~生涯を通じたスポーツ・健康・文化創造
小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児
ダイダン株式会社 北陸支店 野菜の必要性とおいしい食べ方 酒井工業株式会社 歯と口腔の健康について 米沢電気工事株式会社
認知症診断前後の、空白の期間における心理面・生活面への早期からの
の会計処理に関する当面の取扱い 第1四半期連結会計期間より,「連結 財務諸表作成における在外子会社の会計