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相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオベントスの分布生態

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(1)(12). Ac血Ia. :. (1999). 135-146. 135. 相模湾真鶴半島尻掛海岸における メイオペントスの分布生態1) 菊池知彦2) ・小菅英明3). On. the distributional Shikkake. Inlet, Manazuru, KIKUCHI2). Tomohiko. Abstract and. biomass. Samplings phyla. Horizontal. :. of were. diversity and. of. were. volume. of organic. vertical distribution. Dec・ 10. indices. are. to. Dec・. 1991. to. change. in the. were丘)und. of species. Shikkake. means. of. core. close. Inlet, Sagami. in the collections.. layers. year,. (O12cm). relatioⅢsbip with. composition. Nematods ney. of sediments,. water. Bay.. In total, 10. sampler.. of animalsthrough. in the upper have. KosuGE3). seasonal. by. component. distributed thought. and. stations. of animals. dominant. and. three. at. 1990. orders. the most. total catch. evenness. and. from. SagamiBayl) Hideaki. and. analyzed. than. more. copepods. 800/. of. morethan. were. out. carried. of 9 classes. Harpacticoid. distribution,. meiofauna. of the meiobenthosinthe. ecology. column. and. occupied Species stabilities. deposits.. はじめに 海洋の底生生物はその大きさからメガベントス(Megabentbos),マクロベントス(Macrobenthos),メイオペントス(Meiobenthos),マイクロベント(Microbenthos)の4つに大別 されている。ベントス群集の活動は,懸濁物食性のものは海水中の懸濁物を渡過摂餌し,. 堆積物食性のものは底質表面の有機物を摂餌し,それらのいくつかは夜間海底から水中浮上し,海水中と海底との間の物質循環に大きく貢献している(AlldredgeandKing, Kaartvedt,. 1985;. 1989など)。さらに,海底に生息しているハゼやカレイ,ヒラメ等の底生魚類の. 他にアミ類やエビ類といった甲殻類の胃の中から底生性のカイアシ類が観察されたという 報告も多い(Mclntyre andHastings,. 1982)o. and. Murison,. 1973. ; Bodiou. また,イギリスのGee. and. Villiers,. 1979. ; Healey,. (1989)やアメリカのCoull. 1980. ; Carle. (1988,1990)も. ベントス群集が魚類や他の高次の消費者の重要な栄養源となっていることを指摘してい る。その一方でベントス群集は一般に生存期間が長いこと,移動が少なく調査地の海水や 底質といった海洋環境の影響を直接受けやすいことなどから,海底環境の長期的な変動を. 知る上からも有効な生物群集であるといえる。 1. )横浜国立大学教育人間科学部付属理科教育実習施設研究業績第62号. 2. )横浜国立大学教育人間科学部自然環境講座(Department Faculty. of Education. 3)株式会社伊勢丹(Isetan. and. Human Co.. Sciences,. LtdっTokyo). Yokohama. of EⅣironmental National. University). Sciences,.

(2) 菊池知彦・小菅英明. 136. (1942)により海底の この様なベントス群集の中でもメイオペントスはイギリスのMarら 動物群の分析のために提唱されたものである.具体的には1mmの飾を通過して32pmの備に. 捕らえられる底生生物をさし,多くの線形動物や有孔虫,それに底生性のカイアシ類,蘇 皮虫類(動吻動物門),イタチムシ類(腹毛動物門),ゴカイなどの環形動物,ホシムシ類. (星口動物門)など20を超える動物門がこの節分画から見いだされている。これらの多くが 底質の間隙から見いだされるため,メイオペントスはしばしば間隙性生物群集とも言われ ている。. メイオペントス群集に含まれる多くの動物は,その体のサイズが極めて小さく,分類学 的にも難しいグループを含んでいる。このため,研究も遅れており近年になっても新たな 檀,属,科の発見がつづき,さらには胴甲動物門や有輪動物門といった新たな動物門も報 告されている(Kristensen,. 1983. ; Funk. and. Kristensen,. 1995).. 分類や系統といった研究の反面,海洋生態学の分野において,メイオペントスは浅海域. から超深海域にかけて多く分布し,これらのエネルギー消費量はマクロベントス群集の5 倍に達すること(Gerlach,. 1971),さらには底質内の酸素分布に重要な役割を果たしてい. ること(白山,1986)などから堆積物生態系内の極めて重要な要素であると考えられている0. しかし,本邦でのメイオペントス群集の研究は Thiel. Mclntyre. (1969),白山・堀越(1982),. (1983)などによる研究がはじまりで,その後,いくつかの研究がなされてきている. だけで(白山ら,. 1993;板岡・玉井,. 1993;岩崎,. 1995a,b. ;金・白山,. 1996),沿岸域. のメイオペントス群集の種類と生態に関する包括的な研究は十分ではない。 本研究では,沿岸浅海域に分布するメイオペントスの種類と分布生態及びその現存量の 解明を目的として,相模湾西部の真鶴半島尻掛海岸において研究を行った。. 調査地の概要. 調査を実施した尻掛海岸は,相模湾西部の真鶴半島西側の中央付近に位置し,南に向かっ て開口している小さな入り 江状の海岸である(図1,. 2)。海岸の周囲には民家や 河川の流入は無く,さらに 人工光の影響も少ない。入 り江入り口の幅は約40m, 奥行きは約60mである。入 り江入り口付近の水深は満 潮時約5mである。汀線一. 帯は一部砂浜域があるもの の,ほとんどが転石海岸で あり,入り江東側は切り 立った岩場,西側は岩礁域. になっている。汀線から沖 に向かい約15mまでは転石. 図1,調査地.

(3) 相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオペントスの分布生態. 域で,入り江中央部分から沖合いにかけて砂地が広がっている。そこでは通年リップルマー クが観察される。 材料及び方法. Ⅰ,試料の採集 調査は1990年12月から1991年12月に かけて毎月1回,調査地内の異なる3測 点(測点A,測点B,測点C)において 実施した(図2)。測点A,. B,. Cの状. 況は以下の通りo'瀕叫点A:入り江の入り 口に位置し,外海の波浪や潮流の影響を 大きく受ける地点。水深は平均で5m。. 底質は砂。間隔が約20cmのリップルマー クが通年観察される。測点B:入り江中 央部に位置する。水深は平均で3m。底. 質は砂。リップルマークは通年観察され るが,間隔は測点Aよりも短い。測点 C:底質が砂と転石の境界に位置し,付 近一帯には通年有機物質の堆積が確認 される。水深は平均2m。. 試料の採集には小型のコア-サンプ ラ-. (口径32Ⅲmのアクリル管の一端に. 330pmのプランクトンネットを張った. 25M. もの,以下コアと呼ぶ)を用い,ダイビ. [二]砂-. ングにより底質ごと採集した。コアは採 集地点で海底に垂直に5cmさし込み,. 図2,尻掛海岸内の底質と3測点の位置. ネットで被った管の上部に蓋をした後引き抜き,管の下部にも蓋をして直ちに実験室-拷 ち帰った。その後試料はローズベンガルを溶かした7%中性フォルマリン海水で固定した。. 1991年12月の試料については,メイオペントスの底質内における鉛直分布を調べるため に,試料を1cmごとに区切って1地点から5つの試料を得,別々に固定した。. 試料の採集時には気温,海面の水温,海水の透視度(水平方向)を併せて測定した。 底質の要因分析を行うための試料の採取は1991年10月29日に行われた。底質の採取には. 口径32mmのアクリル管を内容量50ccになるように切断したもの(長さ62mm)を用いたQ Ⅱ,生物試料の選別,保存及び解析法. 研究室に持ち帰った底質は500ccビーカーに移した後,洗い出し法により底質から生物と 有機残さを分離した。その後実体顕微鏡下で生物を選別,同定し,個体数の計測を行った。 この際,個体数の多い種類についてはプランクトン分割器を用いて試料を適宜分割してか ら計数した。生物を全て抜き出した後の有機残さは沈殿管に移し,その容量を測定した。. 137.

(4) 菊池知彦・小菅英明. 138. 出現した動物群については,出現種類数(S)と個体数(n)から多様度指数H'(S血amon andWeaver,. 1949)と均衡度J'. (Pielou, 1969)を算出した。但し,. Nは総個体数,. ni柱. i番目の種の個体数である。 n. Pi H'--i$l. log2Pl. J'=H'/log2S. pi=ni/N. Ⅲ,底質の要因分析 メイオベントスの種構成やそれの微′J、分布を決定する主たる要因は底質の含水量と砂粒 の大きさである。含水量は底質の間隙量から求めた。間隙量は底質の比重を測定すること により,底質の占める体積を求める方法(伊藤,. 1980)で算出した。底質の粒度分析は,. 底質を乾燥させ後9種類の鯨 (目合い2.0,. 1.68,. 1.41,. 1.19,. 1.00,. 0.71,. 0.25,. 0.177. 0.84,. フに全量を100%とする累積曲. 柑. LL,. 線を描き, 50%になるサイズを. 15. 頭鴬壊. より重量を測定し,片対数グラ. 胡. (3). nm)にかけた.ふるい分けられ た粒子はそれぞれ,電子天秤に. 中央粒径値として読みとった。 bcL. 結. Jam.. 果. Feb.. Har.. Rpl.. PbリJul.血g.. Sep.. Oct.. Nov.. Dec.. 1991年 図3,調査地における海水温の季節変イヒ. 海洋環境. I. ナ. 1. ) 水温. 2. 調査地での水温変化を示す. I. 3. a. (図3)。水温は調査開始時の 1991年12月に17.8℃を記録し. 月には最低水温13.8℃となり, その後1カ月に約2.0℃ずつ上 昇し,. 8月には最高の28.0℃と. なった後下降した。. Jam.. Fob.. (br.. Apt.. IセリJul.血g.. bo,. Jam.. Felb.. 1tar.. FIF)1.. naリJuI.. Sep.. Dot.比Ⅳ.. Zb.. SEiP.. Oct.. Zk.. 3. (u3)桐蘭33容蟹替筆触. た後緩やかに下降し,翌年の2. bo.. 2 1 l凹. hg.. 2)透視度 透視度は調査日の天候に大 きく左右されたが,冬期は平均 して10m以上であり,春から夏 にかけては3-5m程度で あった。 3)堆積物 各測点ごとの堆積物の経年. 図4,調査地内の3測点における有機堆積物沈殿量(cc)の 季節変化。上から測点A,測点B,測点Cでの結果。. Nov..

(5) 相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオペントスの分布生態. 139. 変化を示す(図4)。測点Aでは年間平均で0.3cc,測点Bでは0.5ccであったが,測点Cで は2地点と比べると平均で2.5ccと高く,特に8月には8.25ccを記録した。 4)底質 底質の要因分析結果を示す(表1. )0 3測点間に底質の顕著な違いは観察されず,粒度分. 布では測点Aが僅かに細 表1尻掛海岸内の3測点における底質の要因分析結果. かいものが多く0.17皿以 下の粒子が全体の97%を しめたのに対し,測点C. 底質1OOcm3当たりの孔隙量(cc) 中央粒径(仰1). では82%。また,孔隙量. 測点A. 測点B. 測点C. 4l.9 480. 43.9 565. 44.9 540. も測点間に大きな差はな く測点Aが100cc当たり41.9ccであるのに対し,測点Bが43.9cc,測点Cが44.9ccであっ たo中央粒径は3測点ともに50CTpm内外で,測点間でも最大85pmの差しかなかったo. Ⅱ,出現種 本調査により得られた試料から10動物門9綱10日以上の動物群が見いだされた(表2)o. 測点A. 通年カイアシ類,カイアシ類のノープリウス幼生,線形動物,腹毛動物,扇形動物,動 吻動物が優占的に出現した(図5A)。最も卓越したものはカイアシ類であり,年間を通じ. 表2. 本研究に出現した生物群 界. 原生生物界 動物界. 門. 亜門. 繊毛虫門 刺胞動物門花虫動物亜門 扇形動物門 紐形動物門 腹毛動物門 線形動物門 動吻動物門 環形動物門 緩歩動物門 節足動物門. 綱. 亜綱. 目. 亜目. 小膜綱 ヒドロ虫網 渦虫網 無針綱 有針綱 マクロダシス綱 トゲカワ目 遊泳目 底在目. 多毛綱. 甲殻亜門. 上目. クマムシ綱 顎脚綱. カイアシ亜綱. カラヌス目 サイクロブス目 ハルバクチクス目 ポエシロストム目. 貝虫網 軟甲綱. 真軟甲綱. フクロエビ上目 アミ目. 端脚目 等脚目. ヨコエビ亜目 ワレカラ亜日 ウミナナフシ亜目. クーマ目. 妹形綱 ウミグモ綱. タイナス目 ダニ目 ]ロイウミグモ目. クモヒトデ綱. 節腕目. ニンフオン目. 薄皮動物門.

(6) 菊池知彦・小菅英明. 140. て52187個体が出現. ー的. し線形動物がこれに. 細. ついで多数出現し. 物 7. CS). た。またこの2グ. ループは通年卓越. 6 C9. し,総出現個体数の. 58. 60-80%をしめた。. 4 l∽). また,端脚類のヨコ. 3. 血口. エビ類は個体数自体. 2. 由U. は少ないものの,過. 1 E9. 年出現し,. 5月には. luU. 最高の261個体が出 現した。. 潤. 測点B. 珊. 測点A同様カイア. O9仇U. 7 eD. 出現し,以下線形動. 6 C9. 物,カイアシ類の. 多毛類,扇形動物,. アシ類と線虫類とで. 3 lM) 2. ー CS). (図5B)。通年カイ. 4. (MV. 腹毛動物となった. 5 瓜U CS). ノープリウス幼生,. (%)唱威容雇醇FF7. シ類が通年最も多く. 】H). 全体の約80%を占め た。測点BはAやC. 1一犯. に比べると出現種と. 9C). その個体数に年間,. 88. 大きな変動は認めら. 7匂. れなかった。. 68. 測点C. 5G). 線虫類が年間を通. 4匂. じて卓越し,以下カ. 38. イアシ類,多毛類,. 28. カイアシ類のノープ. 18. リウス幼生,扇形動. 匂 12. 物,紐形動物となっ た(図5C)。特に紐 形動物はこの測点に. 1. 2. 3. A. 5. 7. 8. 柑. 11. 12. 月. EZ)copepoda. 国NeTnatOda田Naup=u5 囲Nemert;.国plathリ.囲polリCha.. ロothers. 特異的に多く出現が 認められた。また,. 9. 図5,測点A,B,Cに出甥する動物群の組成の季節変化.

(7) 相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオペントスの分布生態. 141. 出現個体数は少ないものの,甲殻類のクーマ類が年間を通じて出現し,. 4月には249個体を. 記録した。. 3. Ⅲ,多様性 各測点A,. B,. Cにおけ. 2.5. る多様度指数(H′),均衡 2. 度指数(J′)の年間の変化 の様子を図6A-C. に示. l.5. す。. 1. 測点A 臥5. 多様度指数は通年1.38. B. -2.48の範囲内を,均衡度 は0.40-0.75の範囲内を 推移したo. Deo.. Jam.. Feb.. Mar.. F)pl.. Sop.. maリJul.仙g.. Ck)t.. Nov.. 多様性指数,均. B. 2.5. 衡度指数ともに1-2月. 2. にかけて低く,その後5月 にかけて増加したが,. Dec.. 3. a. 7月. に一時的に減少した。. 史 観1.5 # 鳴. 卓--ムー-A\ /A--A、. l. ヽヽ. ___ーヽ. 一′一一′. \.. 測点B. \.-. /. ざ. 臥5. 多様度指数は通年1.13. -2.15の範囲内を,均衡度 は0.34-0.60の範囲内を 推移した。多様性指数,均. B. Jam.. Fob. Mar.. FLPl.. HaiJ. Jul.触g.. Sep.. Ck)t.. Nov.. Dec.. 3. 2.5. 衡度指数ともに12月から 8月にかけて比較的安定 した価を取っていたが,. u Doc.. 2. 9. 1.5. 月に最小値を記録し,その 1. 後回復した。 測点C. a.5. 多様性指数,均衡度指数. 8. ともに3測点中最も変動 が激しく,多様度指数は通 年0.99-2.59の範囲内を,. 均衡度は0.30-0.77の範. □多様度指数. A. 均衡度指数. 図6,調査地における多様度指数と均衡度指数の季節変化。 B, 図中のA, Cは各測点を示す。. 囲内を推移した。多様度指 敬,均衡度指数ともに8月一時的に大きく減少した。. Ⅳ,鉛直分布 1991年12月17日に3測点にて実施した主要出現種の鉛直分布を示す(図7)0 に深度o-. 1. cmの範囲には総出現個体数の約30%,. 1. 3測点とも. -2cmには総出現個体数の約24-50%.

(8) 菊池知彦・小菅英明. 142. (出現個体数/100od). の生物が分 布してい た。ま. o. た,. 2. cm以深で は出現個体. O O 寸. 0 O q. rヽ. (⊃ <⊃ 」. o. i. O. r). 室賀賀. hZI. 0. 80 0. 8. O 寸. N. 8. 0. t.D. 0-1. 1∼2. 数は急激に. 専. 減少した. 測点間で の鉛直分布. 崇2-3 3-4. の違いで は,測点A にくらべ測 点B,. 測点A. Cに. 出現する生. 測点B. 測点C. 図7,調査地内の3測点における主要動物群個体数の鉛直分布。. 物量(個体. 敬)が2-4倍も多く,動物群の出現深度についてみると,測点Aでは表層に多く,深度 Cでは,表層の. の増加に伴って,徐々に生物量が減少する傾向が認められたが,測点B, 2cmまでに出現する生物の大半が分布し,. 2cm以深では生物量が急激に減少する傾向が認. められた。出現した生物は,カイアシ類と線形動物が圧倒的に多く,この二つで総出現個 体数の90%以上を占めた。また,出現は僅かではあるが,多毛類が0-5cmの層から,動吻 動物が3-5cmの層に多く出現した.また,クーマ類,ヨコエビ類,アミ類,貝虫類が表層 の0-1cmの層から出現した。 考. 察. 1,水平分布. 3測点間において出現した動物群を比較してみると,測点A,. BとCとではその個体数. に明らかな違いが認められた。. 3測点間での海水温,塩分濃度には殆ど差がなく,また,底質の粒度分析からも入り江 内の3測点間の底質に明瞭な違いは認められなかったが,年間を通じた有機残さの量には 顕著な違いが認められた(図4)0 測点Aの冬期を中心に出現した腹毛類と動吻類,測点Cの夏期に多数出現した多毛類, 測点A,. Bの春-夏にかけて特異的に出現した端脚類のヨコエビ類,そしてこの時期の測. 点Cに多く出現したクーマ類などについては,ここの生活史と密接にかかわり合った結果 として,調査地に出現したものと思われる。 各測点の立地条件も,出現する動物群の種類と量に大きな影響を及ぼしていると考えら. れる。入り江の一番外側の測点Aで観察されたカイアシ類のハルパクチクス目の急激な季 節的消長や,腹毛動物などの突発的な出現や,他の測点では観察されない動吻動物のよう な動物群の出現,そして,この地点で通年観察されたリップルマークはこの地点が外海の 波浪の影響を大きく受けていることを示しいる。波浪による底質の撹乱は,小型のベント.

(9) 相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオペントスの分布生態. ス群集にとって,捕食者に狙われやすい状況を作り出すが,ベントスが必要とする餌料を 底質中-供給し,さらに動物の分泌物質で固まった砂を解すことに有効である(伊藤, 1985)。これらのことから入り江の入り口付近は多くの底生動物にっとて比較的好適な生息 環境にあると言え,従って種間競争も大きいと推察される。. 図8,調査地における主要動物群の推定分布模式図。. 143.

(10) 菊池知彦・小菅英明. 144. 入り江中程の測点B付近は一面の砂地であり,リップルマークも顕著ではなく,出現す. る動物の個体数変動は小さく,反面,分布する種の優先度が高い。ここで線形動物とカイ アシ類のハルバクチクス目が全体の約90%を占めたことは,安定した環境に適応的なこれ らの種が繁栄することで卓越し,他の種の侵入や繁栄を抑えている結果であると考えられ た。. 入り江奥の測点Cは,出現個体数の60%以上を線形動物が占め,他の動物群も,測点A やBにくらべて少ないこと,そして有機残さの堆積量が多いことや多様度指数の変動の大 きいことから,この地点が多くの生物にとってあまり好適な生息環境でないことを示して いるといえる。その理由の一つに測点Cにおける溶存酸素量の低さがあげあれる。海底面. 直下に無酸素状態の還元的な黒色層が形成されていたことからも,有機物質が過剰に供給 され,それが分解される過程で大量の酸素が消費されたことが伺われ,結果としてそこに は賓酸素状態に適応的な線形動物や環形動物の多毛類や甲殻類のクーマ類が卓越したもの と考えられた。. 図8には尻掛海岸における主要な動物群の推定分布模式図を示す。 2,鉛直分布 3測点におけるメイオペントスの鉛直分布から,多くが海底面から1-2cmの深度に高密. 度で分布していた。この1-2cmという深度は,魚類等の捕食者から逃れ,夜間に底質から 水中に出現するために最も適した深度であること,また,海底付近に海水の流動から身を 保護するために適当な深度であること(Foy andCoull Maddupratap. andThistle,. 1991)などが考えられた。. Hickes. (1983)はメイオペントスの多くが稚魚の餌として重要であることを,また, et. al,. (1991)は底生性動物の80%が夜間浮上を行うとを報告しているo. 各動物群の出現深度をみると,線虫類やカイアシ類のハルパクチクス目は表層の2cmま でに卓越するのにくらべ,クーマ類,ヨコエビ類,アミ類,貝虫類が表層の0-1cmの層に. 集中すること,多毛類が2cm以深の深度からでも一定量出現すること,動吻動物が3-5cm に多く出現することなどから,メイオペントス群集の鉛直分布様式には,出現する個々の 動物群に固有の生息深度帯が深くかかわっているものと推察された。また,この様な深度 分布は,現場における海底面-の有機物供給と関連しているようにみえる。測点Cでの有. 機残さ(有機堆積物)の量は通年の平均で測点A,. Bの約5-8倍と高く,このことが測点. cにおける生物の出現量と,深度2cm以深にも大きな生物量を持っていることに密接に関 連しているものと思われた。. 3,調査地におけるメイオペントス群集の役割 本研究により,調査地である尻掛海岸のメイオベントス群集の季節消長と水平分布,鉛 直分布の実態が明らかにされた。メイオペントス群集の海洋生態系に及ぼす影響について は,多くの魚類(主に稚仔魚)の主要な餌生物として,また,海底に堆積する有機残さの. 消費,分解,そして海底の撹拝,さらに夜間水中に浮上するものは海底と水中間でのエネ ルギー輸送を効率的に行う担い手として極めて重要であることなどが改めて推察された。 メイオペントスの海洋生態系に果たす役割を考える上からもその現存量の見積もりは特 に重要である。従来浅海系の堆積物1. m2からは106-107個体のメイオベントスが得られ.

(11) 相模湾真鶴半島尻掛海岸におけるメイオベントスの分布生態. 145. (Mclntyre, 1969),最も貧栄養な海域からでも104-105個体/m2程度の個体群密度が維持さ. れている。本研究で得られたメイオペントスの個体数の季節変化から3測点を平均した出 現個体数は1.57×109個体/m2であり,このうち高次の捕食者の重要な餌生物と考えられるカ イアシ類は5.88×108個体/m2,線形動物は4.73×10個体/m2であった.このことから尻掛海 岸は一般的な浅海系とほぼ同等のメイオペントスの生物量を持っていることが明らかと なったo. これらの多くは海底面からわずか2cmほどの「マット」内に高密度で生息してお. り,メイオペントスのエネルギー消費量,呼吸量が堆積物内に多大な影響を及ぼしている (白山, 1986)ことを考慮すると,メイオペントス群集は堆積物生態系内の重要な構成要素 であり,尻掛のような沿岸砂浜域生態系にとっては極めて重要であると言える0. 今後は出現種の正確な種レベルまでの同定と,個々の種の生活史の究明が不可欠となる。 謝. 辞. 本研究を遂行するにあたり,貴重な御助言を賜った横浜国立大学教育学部教授(現在名 誉教授)蒲生重男博士に厚くお礼申し上げる。 引用文献. Alldredge,. A・. benthos Bodiou,. L・ and :. implications. J・ Y・. L・. and. Deltentosteus Carle,. K・. B・. 1988・. BI. C・. Ml'cmsc. M・. 1990・. Are. soc.,. 109. S・ and. D・. P・. R・. and. Selection. 5. :. zooplankton. mlgrate. the. above. 253-260.. la meiofaune. les formes. par. vile Ml'll'eu, 28/29. :. 143-156.. prey by the darter goby,. ofmeiofaunal. de. juveniles. Gogl・onellus. 316-318.. marine. of Mel'ofauna,. In. meiofauna・ Smithsonian. M・. HigglnS,. R・. lnstitution. P・. Press,. HI. and. Thiel,. Washington,. eds.,. D・. C・,. An. Ll'nnean. soc". 96. S・. A.,. 1991・. results. J. Exp. 1995・. ecologlCal :. 1971・. highertrophic. the vertical distribution. On. 378. Natwe,. 1989・. fわod for. levels?. Transact.也. (3) : 2331246.. Kristensen,. J・ M・,. Gerlach,. of the meiofauna. andflume. Ectoprocta.. and Gee,. the. members. Thistle,. field, laboratory, Funk,. 1982,. of. the Study. to. de. predation. :. 18-38.. pp.. Foy,. Hastings,. Ecology. Bl'01., 84. Mar.. La. demarsal. (Teleostei,Gobiidae).. quadrimaculatus. htTOductl'on. Coull,. 1979・. (Gobiidae).Estuan'es,. C・. distance. The. for predation.. Villiers,. J・ and P・ AI. boleosoma Coull,. JI M・King'19851. :. Maz.,. Cycliophora. of. a. benthic. Bllo1. Ecol.,. is. a. new. 153. :. barpacticoid. :. copepod. 153-164. affinities to Entoprocta. phylumwith. 7111715.. and. economic. review. of. as. meiofauna. food. for fish. Zool.. J.. 2431261, On. the importance. of marine. meiofauna. Nanaimo. River. for benthos. communities・. Oecologl・a,. 6:176-190. Healey,. M・. C・,. Onchorhynchus Hicks,. G・. R・. 1980・. Utilization. tshawytscha.. F・ and B・. C・. Coull,. of. the. Fl'sh. Bull_, 1983・. The. 77. :. estuary. by. juvenile. chinook. salmon,. 6531668.. ecology. of marine. meiobenthic. harpacticoid. copepods・.

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