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海の自然観察会を基盤とする 沿岸環境保全

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(1)

2007 年度日本財団助成事業

海の自然観察会を基盤とする 沿岸環境保全

(事業ID:2006537009)

事業成果物1

調 査 研 究 報 告 書

2008年4月

国立大学法人東京大学

(大学院理学系研究科附属臨海実験所)

(2)

2007 年度日本財団助成事業

「海の自然観察会を基盤とする沿岸環境保全」

調 査 研 究 報 告 書 目 次

第1章 調査研究の総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1-1.調査研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1-2.調査研究の目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1-3.調査研究体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第2章 生物相の定点観測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2-1.概略 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2-2.定点観測の実施、結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2-2-1.東京大学臨海実験所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2-2-2.県立三浦臨海高校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2-2-3.県立逗子高校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

第3章 自然観察会と木造和船による海と船に親しむ活動・・・・・・・・・・ 41 3-1.取り組みと実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 3-2.アンケートの結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 3-3.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

第4章 実習船を利用した沿岸海域の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4-1.取り組みと実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4-2.アンケートの結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 4-3.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

第5章 生物データベースの構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 5-1.取り組みと実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 5-2.方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 5-3.結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

第6章 報道 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 6-1.報道一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 6-2.新聞記事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 6-3.ポスター発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68

第7章 今年度の成果と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69

(3)

1

第1章 調査研究の総括

東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所(以下、東京大学三崎臨海実験所)は、世 界的にも屈指の豊かな生物相を誇る相模湾に面しており、その環境と立地を生かして、明 治時代の初期から 120 年にわたって海洋生物の研究及び教育を行ってきた。本事業は、東 京大学三崎臨海実験所の実績を基盤に、日本財団の助成により 2005 年度から開始したもの であり、海洋生物に関心を持つ神奈川県内外の中学校・高校、さらには関東一円からの参 加者の協力を得て、相模湾沿岸での自然観察会およびフィールド調査を行い、環境保全の 啓蒙活動を行っている。また、種の同定に用いる DNA 配列情報の収集を行い、液浸標本・

デジタル映像・DNA 及びその情報をセットとして保存・提供するゲノムバンクを構築すると ともに、本事業を通じて、系統分類の研究・教育を担当する人材を育成している。

1-1.調査研究の目的

次世代を担う中高校生に、海と海に棲む生物に興味をもたせ、環境保全への意識を高めるこ とを目的とする。また、当該事業を達成し発展させるために、多様な生物と自然環境の教育を 担う人材を育成するとともに、生物・自然環境の教育研究基盤となる生物データベースを構築 し、ホームページ等で広く公開することを目的とする。

1-2.調査研究の目標

中高校生が海と海に棲む生物に興味を持つ環境を構築することを目的として、以下の活動を 行う。

(1)自然観察会:多様な生物が生息する東京大学三崎臨海実験所の周辺で生物採集を行う。

臨海実験所所員が、中・高校生及び教員を対象に沿岸生物に関する専門教育を行い、生物相定 点調査の基盤を作る。また、小中学生と保護者には、より平易な教育を行い、生物調査に携わ るメンバーの裾野を広げる。

(2)生物相の定点観測:中・高校生、教員が主体となって相模湾、東京湾沿岸の一定の場所 で定期的に生物相の定点観測・採集を行う。

(3)臨海実験所実習船を利用した沿岸海域の調査:臨海実験所実習船に中・高校生及び教員 が乗船し、海底生物をドレッジで採集し、普段は目にすることができない生物への理解を深め る。上記の事業において、三崎臨海実験所所員と中高校生・教員が連携することにより、少人 数の研究者ではカバーできない広い領域の生物相の変遷を、長期にわたって調査し、生物相を 指標に環境の変化をモニターすることができる。

(4)木造和船による海と船に親しむ活動:2005 年度日本財団助成事業により建造した木造和 船の操船技術講習を通じて、船と海に親しむ機会をもうける。

(5)生物データベースの構築:採集で得られた生物をデジタルカメラで撮影するとともに、

(4)

2

液浸標本として保存する。同定した生物種から抽出したDNAの配列を決定し、配列情報をデ ータベースに登録する。採集した生物の写真、標本、DNA 及び DNA の配列情報をセットで 保管する。この事業により、種の同定に用いることができるDNA配列データベースが構築さ れる。

(6)生物写真データ集の公開:生物相調査で撮影した生物の写真と記録したデータ、及び DNA 配列情報をホームページ上で公開する。また、冊子体の生物写真集を製作する。将来的 には、生物写真データ集を出版する。

1-3.調査研究体制

以上の目的と目標をもとに、本調査研究は東京大学臨海実験所の構成員、本事業に賛同 する教育機関、協力者により遂行された。

構成員

赤坂甲治 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・所長・教授 吉田 学 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・講師 佐藤寅夫 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・助教 黒川大輔 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・特任助教

伊勢優史 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・産学官連携推進研究員 関本 実 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・技術専門職員

関藤 守 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・技術専門職員 杉井那津子 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・技術職員 福本実穂子 東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所・教務補佐員

協力

三浦市教育委員会

神奈川県立三浦臨海高校:鈴木恒一教諭 神奈川県立逗子高校:野村浩一郎教諭

日本動物分類学会:並河 洋氏、駒井智幸氏、小松浩典氏、藤田敏彦氏、芳賀拓真氏

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3

第2章 生物相の定点観測

2-1.概略

2007 年 4 月 1 日~2008 年 3 月の期間、三浦市内および逗子市内の高校の生徒と教員 が主体となり、各学校付近の相模湾沿岸の一定の場所で、定期的に定点観測・採集を実 施した。また、東京大学臨海実験所においても、隣接する油壺湾内で同様の定点観測を 行った。中学校・高校による定点観測で採集された生物の種類は、臨海実験所教員が同 定(生物の分類上の所属や種名を決定すること)の手法を生徒らに教授し、同定した。

具体的には以下の調査研究を行った。

研究調査の内容

(1)時 期:2007 年 4 月 1 日~2008 年 3 月/各観測地点について毎月 1 回実施

(2)方 法:2005 年度、2006 年度に設置した付着板の観測を継続するとともに、

新たな付着板を増設し、その変化を観測した。

① 30cm 四方の板を海に沈め、一定期間後に引き上げて付着した生 物の種類と数を記録した。

② 岸壁からプランクトンネットを下ろし、採集される生物の種類と 数を記録した。

③ 複数の地点の①と②のデータを比較することにより、環境と生物 相との関係を考察した。

④ 目視による生物(磯の生物や魚類)の生息調査と採集を行った。

(3) 観測者と観測地点(図 1):

東京大学臨海実験所/油壺湾イカダ、油壺湾奥 県立三浦臨海高校 /長井(荒井漁港桟橋)

県立逗子高校観測 /葉山マリーナ港内

(6)

4

1.油壺湾筏, 2.油壺湾奥, 7.長井(荒井漁港桟橋), 8.葉山 マリーナ港内

図 1.定点観測地点

地図:電子国土(平成17年、国土地理院)より出典

(7)

5 2-2.定点観測の実施、結果と考察

2-2-1.東京大学臨海実験所

2007 年度付着板調査報告書

東京大学理学系研究科附属臨海実験所

1.調査内容

2008 年 2 月 22 日、昨年及び一昨年に油壷湾口に近いイカダと、油壷湾内にあ る験潮所近くの桟橋それぞれに設置した付着板を調査した。

目視により、付着板についている生物を同定し、チェックシートに記入した。

さらに、付着板の様子を写真に撮り、記録した。

2.まとめ

・ 今回の調査で、ヤマトウミウシ、マメボヤといった、普段なかなか観察でき ない動物が観察できた。

・ カキ類は、湾内の付着板でしか観察することができなかったが、日の当たる 側に多くのカキが付着していた。

・ イカダの付着板は、一度動物がついたあと、その上からイタボヤが一面を覆 っていたので同定が難しかった。

・ 2005 年度、2006 年度、今年度の結果を比較すると、付着する生物種にほと んど変化は見られなかった。

・ 一年以上たつと、付着する動物はほとんど変わらないことが分かった。

この 3 年間、付着した生物に変化がなかった。これは、今回調査を行った 2 地点において、水温、水質などの環境の変化がほとんどなかったことが考えら れる。

しかし、より正確なデータを得るために、溶存酸素量、pH、総窒素などの水 質を調査したり、指標生物を調べたりするのも一つの手だろう。この 3 年間で、

湾内の付着板には、ムラサキイガイ、シロスジフジツボなどが観察できたこと から、この付近の海をもっときれいにしていかなければならないことを感じる。

また、水温に関しても、水温データ、気温データもいっしょに記録すること

により、長期的に調査を進める際に有効である。

(8)

生物相の定点観測チェックシート -生物付着板編- 採集した生物をチェックし、種名が分かったものについては右欄に記入して下さい。 学校名・記入者名( 東京大学臨海実験所 ) 付着板設置場所 ( 油壷湾イカダ2005年設置 ) 付着板引き上げ日( 2008 年 2 月 22 日 ) ■ 藻類 ■ 珪藻類 ■ その他藻類 褐藻(フクロノリ、その他) 緑藻(タマミル、アオサ)。紅藻。石灰藻 ■ 海綿動物 ナミイソカイメン、ガラスカイメン □ 扁形ンケイ 動物ウブツ (ヒラムシ) □ 紐形動物(ヒモムシ) □ 線形動物(センチュウ) □ 軟体動物(貝類など) ■ 触手

ョクシ

カン 動物

ウブツ ■ フサコケムシ ■ チゴケムシ □ その他触手冠動物

□ 軟体動物 □ イガイ類 □ カキ類 □ その他軟体動物 ■ゴカイ類 カンザシゴカイの巣、ゴカイ ■ 節足動物 ■ フジツボ類 シロスジフジツボ、アカフジツボ ■ ヨコエビ類 □ ワレカラ類 ■ その他節足動物 コシオリエビ、ヨツハモガニ、 イソクズガニ □ 棘皮ョクヒ 動物ウブツ □ ウミシダ類 □ その他棘皮動物 ■ ホヤ類 ■ シロボヤ □ エボヤ ■ ベニボヤ □ その他ホヤ(単体)ドロボヤ、マメボヤ ■イタボヤ類 4種類 □ その他

(9)

生物相の定点観測チェックシート -生物付着板編- 採集した生物をチェックし、種名が分かったものについては右欄に記入して下さい。 学校名・記入者名( 東京大学臨海実験所 ) 付着板設置場所 ( 油壷湾イカダ2006年設置 ) 付着板引き上げ日( 2008 年2 月 22 日 ) ■ 藻類 ■ 珪藻類 ■ その他藻類 褐藻(フクロノリ、その他)。緑藻(タマミル) 紅藻。石灰藻 □ 海綿動物 □ 扁形ンケイ 動物ウブツ (ヒラムシ) □ 紐形動物(ヒモムシ) □ 線形動物(センチュウ) ■ 軟体動物(貝類など) レイシ ■ 触手

ョクシ

カン 動物

ウブツ ■ フサコケムシ ■ チゴケムシ ■ その他触手冠動物

□ 軟体動物 □ イガイ類 □ カキ類 □ その他軟体動物 ■ゴカイ類 カンザシゴカイの仲間。ゴカイの仲間 ■ 節足動物 ■ フジツボ類 ■ ヨコエビ類 □ ワレカラ類 ■ その他節足動物 コシオリエビ。イソクズガニ □ 棘皮ョクヒ 動物ウブツ □ ウミシダ類 □ その他棘皮動物 ■ ホヤ類 ■ シロボヤ □ エボヤ ■ ベニボヤ ■ その他ホヤ(単体)マメボヤ ■ イタボヤ類 4種類 □ その他

(10)

生物相の定点観測チェックシート -生物付着板編- 採集した生物をチェックし、種名が分かったものについては右欄に記入して下さい。 学校名・記入者名( 東京大学臨海実験所 ) 付着板設置場所 ( 油壷湾奥2005年設置 ) 付着板引き上げ日( 2008 年2 月 22 日 ) ■ 藻類 ■ 珪藻類 ■ その他藻類 フクロノリ、アオサ、褐藻 ■ 海綿動物 ナミイソカイメン、その他のカイメン □ 扁形ンケイ 動物ウブツ (ヒラムシ) □ 紐形動物(ヒモムシ) □ 線形動物(センチュウ) ■ 軟体動物(貝類など)ナミマガシワ ■ 触手

ョクシ

カン 動物

ウブツ □ フサコケムシ ■ チゴケムシ ■ その他触手冠動物コケムシの1種

■ 軟体動物 □ イガイ類 ■ カキ類 マガキ(殻) □ その他軟体動物 ■ゴカイ類 カンザシゴカイの巣 ■ 節足動物 ■ フジツボ類 シロスジフジツボ(殻) ■ ヨコエビ類 □ ワレカラ類 ■ その他節足動物 ヒライソガニ、ヤドカリの1種 □ 棘皮ョクヒ 動物ウブツ □ ウミシダ類 □ その他棘皮動物 ■ ホヤ類 ■ シロボヤ □ エボヤ □ ベニボヤ ■ その他ホヤ(単体)ドロボヤの1種 □イタボヤ類 □ その他

(11)

生物相の定点観測チェックシート -生物付着板編- 採集した生物をチェックし、種名が分かったものについては右欄に記入して下さい。 学校名・記入者名( 東京大学臨海実験所 ) 付着板設置場所 ( 油壷湾奥2006年設置 ) 付着板引き上げ日( 2008 年2 月 22 日 ) ■ 藻類 ■ 珪藻類 ■ その他藻類 アオサ、フクロノリ、褐藻 ■ 海綿動物 ナミイソカイメン、ガラスカイメン、カイメンの1種 □ 扁形ンケイ 動物ウブツ (ヒラムシ) □ 紐形動物(ヒモムシ) □ 線形動物(センチュウ) ■ 軟体動物(貝類など) ヤマトウミウシ ■ 触手

ョクシ

カン 動物

ウブツ □ フサコケムシ ■ チゴケムシ □ その他触手冠動物

■ 軟体動物 □ イガイ類 ■ カキ類 □ その他軟体動物 ■ゴカイ類 ウロコムシ、カンザシゴカイの巣 ■ 節足動物 ■ フジツボ類 殻(風化して同定不可能) □ ヨコエビ類 □ ワレカラ類 ■ その他節足動物 ヒライソガニ □ 棘皮ョクヒ 動物ウブツ □ ウミシダ類 □ その他棘皮動物 ■ ホヤ類 ■ シロボヤ □ エボヤ □ ベニボヤ ■ その他ホヤ(単体)ドロボヤの1種 ■イタボヤ類 ■ その他 タテジマイソギンチャク

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13

2−2−2.県立三浦臨海高校

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2-2-3.県立逗子高校

定点観測付着板の記録からわかったこと

神奈川県立逗子高等学校 教諭 野村 浩一郎

付着した生物はゴカイ、チゴケムシ、群体ボヤ、カイメン、ベニボヤ、シロボヤ、ヤツデ ヒトデなどが主なものだった。1年目にみられたカキの付着はみられなかった。ウミシダが 始めてみられた。

2年目以後の板には大型の海草アラメ?の付着がみられた。

水深が一定の板(下と表記したもの)には多くの動物が付着したが、水深が潮の満ち引き により変化する板(上と表記したもの)には付着した動物は少なかった。

感想

海には様々な条件が日々変化している(潮の満ち引き、水流、波、水温、塩分濃度など)

ためどの条件が影響しているのか特定することが難しかった。

また、生物付着版の限られた場所に様々な生物が付着し、場所を取り合っていることがわ かった。わずかな条件の変化が生物間の競争に影響を与え付着している生物の種類が変化 していると考えられる。

参加した生徒の状況 参加した生徒は熱心に活動していた。

付着板の付着状況からはっきりものがいえるようなデータをとることはできなかったが、

様々な生物が付着し、すぐ近くに入れた板でも付着する生物に違いが見られることから環 境と生物の関係についていろいろ考えることができた。また、本来の目的からは外れるか もしれないが、動物の分類について多くのことを学ぶことができた。

今後に向けて

今後同じような観測を行うのであれば、

① 付着版の材質を自然の岩に近いものにする。プラスチック板は生物が付着しにくいので 実際の磯に近い条件のものの方がよいと思われる。

② 条件の違いにより生物の種類が変わることを調べることを目的とするならば、異なる深 さに付着板を設置し比較することも良いと思う。

(34)

31

生物相定点観測チェックシート 生物付着板編 学校名 神奈川県立逗子高等学校

付着板設置場所 葉山マリーナ港内(2005・6年6月設置)

付託板引き上げ日 6月17日

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

藻類

珪藻○ カジメかアラメ その他藻類

海綿動物 ○上の板にケツボカイメン?などがみられた。

扁形動物

紐形動物

線形動物

触手冠動物 フサコケムシ

チゴケムシ ○ その他触手冠動物

軟体動物 イガイ類 カキ類

その他軟体動物

ゴカイ類 ○

節足動物

フジツボ類

ヨコエビ類 ○ヨコエビsp ワレカラ類

その他節足動物

(35)

32 棘皮動物

ウミシダ類

その他棘皮動物 ○ヤツデヒトデ

ホヤ類

シロボヤ ○ エボヤ

ベニボヤ ○ その他ホヤ(単体)

イタボヤ類 ○ その他

所見 以前の付着版をその場で観察した。

新しい付着版を設置した。

(36)

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生物相定点観測チェックシート 生物付着板編 学校名 神奈川県立逗子高等学校

付着板設置場所 葉山マリーナ港内(2005・6・7年6月設置)

付託板引き上げ日 7月23日

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

藻類 珪藻

その他藻類 ○カジメかアラメ

海綿動物 ○上の板にケツボカイメン?などがみられた。

扁形動物

紐形動物

線形動物

触手冠動物 フサコケムシ

チゴケムシ ○ その他触手冠動物

軟体動物 イガイ類 カキ類

その他軟体動物

ゴカイ類 ○

節足動物

フジツボ類 ヨコエビ類 ワレカラ類

その他節足動物 ○ウミグモ 群体ボヤ(ムラサキキクボヤ)に付着していた

○ヨコスジヤドカリ

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34 棘皮動物

ウミシダ類 ○3種みられた その他棘皮動物

ホヤ類

シロボヤ ○ エボヤ

ベニボヤ ○ その他ホヤ(単体)

イタボヤ類 ○ その他

所見 昨年の板には多数の生物がぎっしり付着した状態 今年の板の付着は少ない。

(38)

35

生物相定点観測チェックシート 生物付着板編 学校名 神奈川県立逗子高等学校

付着板設置場所 葉山マリーナ港内(2005・6・7年6月設置)

付託板引き上げ日 08年3月20日

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

藻類 珪藻

その他藻類 ○カジメかアラメ

海綿動物 ○上の板にケツボカイメン?などがみられた。

扁形動物

紐形動物

線形動物

触手冠動物 フサコケムシ

チゴケムシ ○ その他触手冠動物

軟体動物 イガイ類 カキ類

その他軟体動物

ゴカイ類 ○

節足動物

フジツボ類 ヨコエビ類 ワレカラ類 その他節足動物

棘皮動物

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36 ウミシダ類

その他棘皮動物

ホヤ類

シロボヤ ○ エボヤ

ベニボヤ ○ その他ホヤ(単体)

イタボヤ類 ○

その他

所見 昨年の板には多数の生物がぎっしり付着した状態 今年の板の付着は依然として少ない。

今日で終わりなのですべての付着版を引き上げ撤収した。

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(41)
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(43)
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41

第3章 自然観察会

3-1.取り組みと実施

「第1回自然観察会」

(1)開催時期:2007 年 6 月 16 日(土) 9:30~16:00

(2)内 容:前半/東京大学臨海実験所周辺の磯において、干潮時にたも網、磯 がね、スコップなどを使い、潮だまりや潮間帯の生物全般を観察・

採集した。

後半/採集生物の形態観察、系統的な説明会、スケッチを行った。

説明会後、希望者には木造和船「みさき」の乗船体験を行った。

(3)場 所:東京大学臨海実験所/記念館大実習室、油壺湾の磯および干潟

(4)講師およびスタッフ:臨海実験所教職員 6 名、東京大学大学院生 2 名

(5)参 加 者:東京都および神奈川県の教員、小学生、保護者、一般参加者ら/合 計 15 名

(6)プログラム:

9:30 東京大学臨海実験所正門前、集合

9:45-10:15 受付、ガイダンスと諸注意(水族館 2 階講義室)

10:15-12:00 干潮時に磯、干潟の動物の観察と採集(油壺マリンパーク下磯)

12:00-12:50 昼食・休憩(記念館大実習室)

12:50-13:30 採集した動物の説明会、観察とスケッチ(水族館 2 階講義室)

13:30-15:00 希望者を対象に木造和船「みさき」の乗船体験(油壺湾内)

16:00 終了

(46)

42

「第2回自然観察会」

開催時期:2007 月 15 日(日) 9:30~14:30

台風 4 号の接近により、やむなく中止。参加申込者数 47 名。

「第3回自然観察会」

(1)開催時期:2007 年 8 月 2 日(木) 11:00~16:00

(2)内 容:前半/東京大学臨海実験所周辺の磯において、潮だまりや潮間帯の 生物全般を観察・採集した。参加者を班分けして磯での”観察”を 中心に行った。

後半/採集生物の形態観察、系統的な説明会、スケッチを行った。

強風と高波のため、木造和船「みさき」の乗船体験は中止した。

(3)場 所:東京大学臨海実験所/記念館大実習室、油壺湾の磯および干潟

(4)講師およびスタッフ:臨海実験所教職員 9 名、日本動物分類学会会員 3 名、東 京大学大学院生 2 名

(5)参 加 者:私立帝京中学校理科部生徒と教員、埼玉県鳩ヶ谷市教育研究会、東 京都教育生物研究会および都立高校教員と生徒、神奈川県内外の小 中学校生徒と保護者、一般参加者、日本動物分類学会会員ら/合計 37 名

(6)プログラム:

11:00 東京大学臨海実験所正門前集合

11:15-11:45 受付、ガイダンス・磯採集の諸注意(水族館 2 階講義室)

11:45-13:15 干潮時に磯、干潟の動物全般の観察と採集(油壺マリンパーク下磯)

13:15-14:00 昼食・休憩(水族館 2 階講義室)

14:00-15:30 採集した動物の説明会・観察・スケッチ(水族館 2 階講義室)

15:30 終了

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43

表 1.採集生物一覧

第 1 回自然観察会:58種

門 和 名 属 名 種 名

海綿動物門 タマカイメン Tethya japonica

クロイソカイメン Halichondria okadai

ムラサキカイメン? Haliclona permolis

カイメン sp.

刺胞動物門 シロガヤ Aglaophenia whiteleggei

イソハナビ Acabaria japonica

イソバナ Melithaea flabellifera

ウメボシイソギンチャク Actinia equina

ミナミウメボシイソギン

チャク Anemonia erythraea

タテジマイソギンチャク Haliplanella lineata

扁形動物門 カリオヒラムシ Callioplana marginata

紐形動物門 ヒモムシ sp.

軟体動物門 ヒザラガイ Liolophura japonica

ケムシヒザラガイ Cryptoplax japonica

トコブシ Sulculus aquatilis

サラサウミウシ Chromodoris tinctoria

ブドウガイ Haloa japonica

セトミドリガイ Elysia setoensis

ウミフクロウ Pleurobranchaea japonica

シロウミウシ Chromodoris orientalis

アオウミウシ Hypselodoris festiva

クモガタウミウシ Platydoris speciosa

オトメウミウシ Dermatobranchus otome ムカデミノウミウシ Pteraeolidia ianthina

イソアワモチ Peronia verruculata

(48)

44

カリガネエガイ Barbatia virescens

ウグイスガイ Pteria(Austropteria) brevialata

イガイ Mytilus coruscus

トマヤガイ Cardita leana

マダコ Octopus vulgaris

環形動物門 クマノアシツキ Acrocirrus validus

ミズヒキゴカイ Cirriformia tentaculata

節足動物門 カイメンフジツボ sp.

イソヘラムシ Cleantiella isopus

イソスジエビ Palaemon pacificus

イソヨコバサミ Clibanarius bimaculatus

ヤマトホンヤドカリ Pagurus japonicus

イボトゲガニ Hapalogaster dentata

イソクズガニ Tiarinia cornigera

スベスベマンジュウガニ Atergatis floridus

オウギガニ Leptodius exaratus

ヒライソガニ Gaetice depressus

棘皮動物門 ニッポンウミシダ Comanthus japonica

ウミシダ sp.

モミジガイ Astropecten scoparius

アカヒトデ Certonardoa semiregularis

ヤツデヒトデ Coscinasterias acutispina ニホンクモヒトデ Ophioplocus japonicus

バフンウニ Hemicentrotus pulcherrimus

ムラサキウニ Anthocidaris crassispina

マナマコ Apostichopus japonicus

テツイロナマコ Holothuria moebi

脊索動物門 イタボヤ Botrylloides violaceus

ベニボヤ Herdmania momus

(49)

45

カタクチイワシ Engraulis japonica

ナベカ Omobranchus elegans

ギンポ?

アゴハゼ Chaenogobious annularis

第 3 回自然観察会:12種

門 和 名 属 名 種 名

軟体動物門 ヒザラガイ Liolophura japonica トコブシ Sulculus aquatilis バテイラ Omphalius pfeifferi コシダカサザエ Marmarostoma stenogyrum マガキガイ Conomurex luhuanus オニアサリ Notochione jedoensis 環形動物門 ケヤリ Sabellastarte japonica 節足動物門 ウミクワガタ Gnathia sp.

イボトゲガニ Hapalogaster dentata オウギガニ Leptodius exaratus ヒライソガニ Gaetice depressus 脊索動物門 イタボヤの仲間

(50)

46 3-2.アンケートの結果

実施した当日、臨海実験所で作成したアンケートを参加者に記入していただいた。回 答の集計は下記の通りである。

第 1 回自然観察会(アンケート回収率 86%: 参加者数 15 人、回答数 13 人)

【Q1】 今回の自然観察会に参加して、海と海にすむ生物に興味を持ちましたか?

回答 人数 %

1.非常に興味を持った 12 92

2.やや興味を持った 1 8

3.興味を持てなかった 0 0

【Q2】 海での活動は面白かったですか?

回答 人数 % 1.面白かった 13 100

2.やや面白かった 0 0

3.どちらかといえば面白くなかった 0 0

4.面白くなかった 0 0

【Q3】 自然観察会の内容は自分なりに理解できましたか?

回答 人数 %

1.理解できた 5 38

2.やや理解できた 8 62

3.どちらかといえば理解できなかった 0 0

4.理解できなかった 0 0

【Q4】 今後もこのような自然観察会があったら参加したいと思いますか?

回答 人数 %

1.参加したい 11 85

2.どちらかといえば参加したい 2 15

3.どちらかといえば参加したくない 0 0

4.参加したくない 0 0

【 期待することや要望 】

○ 観察会の進行がスムーズでとても良かったです。特に、採集した生き物を進化的に 詳しく説明していただいたことが、今まで体験したことのない楽しい時間でした。

○ 海での活動の時間がもう少しあったら・・・とは思いました。潮の関係があるので、仕

(51)

47 方ないですが。

○ 海での活動の時間を長くしてほしい。もうちょっと船に乗りたい。

○ 海での時間があっという間に過ぎ、もう30分から1時間ほしかった。

○ いろいろな年齢や立場の方が自由に参加できるのは素晴らしいです。説明者が話を している時等は、きちんと聞くよう指導していただけると助かります。

○ また参加できる機会がありましたら、宜しくお願いします。

【 感 想 】

○ 親しみやすく、かつ専門的な内容で素晴らしかったです。スタッフの皆様に大変感 謝いたします。和船もとてもいい体験でした。

○ 今まで知らなかったいろいろな生き物を観察できて面白かった。いるとは思わなか ったような生物も知ることができ、うれしかったです。今日はありがとうございま した。

○ 初めてだったので何を探せばよいのか良くわからなかったが、慣れた人たちの採集 物を見てすごいと思った。分類の説明と、サンプルが回ってくるのに時差があり、

名前などはよく分からなかったけれど、色々な生き物を見られておもしろかった。

どうもありがとうございました。

○ お天気が良く、スタッフの方々も親切で、とても楽しい一日でした。ありがとうご ざいました。

○ 晴天であった事、人数が適当でいつでも質問させていただけたことがとても良かっ たです。

○ 家族そろってとても楽しい時間が過ごせました。子どもが磯の生きもの観察が大好 きで、良く磯へ足を運び、本で調べてみたりしていますが、今日はより多くのこと を教えてもらうことが出来ました。また、木造和船にも乗せていただき、貴重な経 験になりました。どうもありがとうございました。スタッフの先生方も親切で良か ったです。

○ 短い時間でしたが、とても楽しかったと思います。自力では見つけられないような 生物も見られて良かったです。今度は大学生向けの公開臨海実習に参加したいと思 います。

○ 本日は大変有意義な会に参加させていただき、ありがとうございました。採集した 生物の分類から丁寧に教えて頂き、わかりやすかったです。わずかな時間でしたが、

かなりの種類の生物を採取することができ、相模湾の種の多様さに驚きました。

○ とても良い企画で、身内(甥)が近いところに住んでいれば誘いたかった。また参 加させて頂き、よく生物を知りたいと思う。ありがとうございました。

○ 伊勢様、関藤様の新しい体制でご指導いただき、スムーズにプログラムが進行して 分かりやすかったです。

○ 荒井浜の様子の変化に気がつきました。逗子では宅地開発や崖崩れ防止工事など地

(52)

48

形を変える工事の土砂が海に流れて、海流の関係でかなり離れた場所に影響するこ とがありました。荒井浜と岩礁区域に起きる変化をしばらくの間注目したほうがい いと思いました。

第 3 回自然観察会(アンケート回収率 52%: 参加者数 42 人、回答数 22 人)

【Q1】 今回の自然観察会に参加して、海と海にすむ生物に興味を持ちましたか?

回答 人数 %

1.非常に興味を持った 16 73

2.やや興味を持った 5 23

3.興味を持てなかった 0 0

4.無回答 1 5

【Q2】 海での活動は面白かったですか?

回答 人数 %

1.面白かった 19 86

2.やや面白かった 3 14

3.どちらかといえば面白くなかった 0 0

4.面白くなかった 0 0

【Q3】 自然観察会の内容は自分なりに理解できましたか?

回答 人数 %

1.理解できた 15 68

2.やや理解できた 7 32

3.どちらかといえば理解できなかった 0 0

4.理解できなかった 0 0

【Q4】 今後もこのような自然観察会があったら参加したいと思いますか?

回答 人数 %

1.参加したい 14 64

2.どちらかといえば参加したい 8 36

3.どちらかといえば参加したくない 0 0

4.参加したくない 0 0

【 期待することや要望 】

○ 人数が少し多すぎたように思いましたので、20 名くらいが良いのではないでしょう

(53)

49 か。

○ もう少し対象をこまかく分けたほうがよい。

○ 海辺の観察時間がもう少し長いといいと思います。

○ 海での時間が短く感じました。

○ 採集時間を長く取ると、もう少し慣れる感じがでてきました。

○ もう少し回数を増やしていただければうれしいです。

○ ウェブサイトでこの存在を知りました。海洋研でポスターを掲示しても良いのでは ないでしょうか。

○ 集合場所は蚊のいない場所(建物内)にして欲しい。観察の会場にも蚊取り線香が 欲しかった。

○ 絵を描くには一寸暗いので、手元に灯りがほしかった。

○ 説明の際、採れなかったものについて標本などが見られたら、もっとイメージがつ きやすいと思いました。

○ 大まかでよいので、海草や貝についても教えてほしい。干潟も見てみたかった。

○ また磯で生き物をとりたい。

○ 魚つりなど。

○ 機会があれば和船に乗りたいです。

○ 今後も続けて下さい。

【 感 想 】

○ とても詳しい解説、そして、生き物の観察ができてとても有意義でした。

○ 並河さん、駒井さん、伊勢さんなど研究者の説明がおもしろかった。

○ 海に住む生物やその生物などの説明が聞けてよかったです。

○ 磯の生き物を取って、先生にその名前を聞けて、とても面白かった。

○ 自分では見つけられない生き物がいっぱい見られ、知ることができて楽しかったで す。

○ 海の生物がよく分かった。

○ ウミウシの中に貝が入っているというのを実際に見ることができ、紫色の液体で身 を守るということもよくわかりました。やはり実際に見ると勉強になります。

○ 興味深い生体構造(特にホヤ)について、もっと知ってみたいと思いました。機会 があれば、また参加させていただきたいと思います。

○ また来年参加したいと思います。お忙しい中、本当にありがとうございました。

○ いろいろな磯の生物を知ってよかったです。

○ ウニにさわれて良かったです。

○ たのしかった。ケヤリがおもしろい形だった。

○ 楽しく学習させていただき、ありがとうございました。

○ 非常に楽しかったです。

(54)

50

○ ひさしぶりの自然で楽しかった。

○ 波があらくて、ウミウシがあまり見られなかったのが残念だった。

○ 海の生物を見られてよかった。今回は天候が悪かったので、あんまり生物が取れな かった。

○ もっといろんなものがいると思っていたら、あんまりいなかったから少しつまらな かったです。

○ 大勢で探して色々な生物が見られて良かったと思います。ただ、対象年齢を小学校 高学年以上にしたほうが良いのではないでしょうか。それ未満の子どもには高度過 ぎる解説であることですし、じっと聞く事も出来ないようですから。

○ 和船に乗ることができず残念です。次回を楽しみにしています。

3-3.まとめ

3回の自然観察会の内、1 回は台風で中止となったにもかかわらず、2回で52名も の参加があったことは、自然観察会のニーズの高さを示している。アンケートからも、

海辺のさまざまな生物が参加者を魅了したことは明らかである。日本財団の助成で購入 したビジュアルプレゼンターを用いて、スクリーンに映し出したため、受講生が大勢で あっても、すべてがリアルタイムで動物を見ながら解説を受けることができた。今年度 は、当臨海実験所所員に加え、日本動物分類学会のボランティアの協力を得ることがで きた。指導者の数が増えたことにより、磯の現場(フィールド)で実際に棲息している 動物を見ながら系統分類と環境・生態の講義ができたことも意義深い。参加者のみなら ず指導者も含めて活動の輪が広がったことは特筆すべきであろう。次年度は、さらにシ ニアコースとジュニアコースに分け、子供から教員までの幅広いニーズに応える予定で ある。

自然観察会で採集され同定された動物は一回あたり70種近くになり、生物データベ ースとゲノムバンクの構築に大きく貢献した。多数の市民が参加する活動が威力を発揮 したといえる。3年間にわたる磯の観察会で実際に参加者が採集した動物は200種を 超えた。これらの動物を写真集としてまとめ、冊子「三崎の磯の動物」を作成すること ができた。写真集は今後の自然観察会に大いに役立つと期待される。

木造和船体験では、日本の伝統的船に親しんだ。操船講習により自在に操れるように なると、参加者は海との一体感を覚えている様子がうかがえた。

当臨海実験所教員および日本動物分類学会会員による進化系統学的に裏付けられた 分類の講義により、参加者に、多様な生物を生み出した海と生命を育む環境に対する高 い意識を持たせることができたと考えている。

(55)

51

第4章 実習船を利用した沿岸海域の調査

4-1.取り組みと実施

「第1回実習船『臨海丸』の乗船体験と海底生物の調査」

(1)開催時期:2007 年 8 月 7 日(火) 9:30~14:30

(2)内 容:小・中学生、教員および保護者を対象として、実習船「臨海丸」に 乗船して油壺湾周辺の地形を観察するとともに、海洋に生息する生 物の採集調査(プランクトンネットおよびドレッジ)を行った。採 集した生物は臨海実験所に持ち帰り、参加者は講義を受けるととも に、生物の生態を観察した。

(3)場 所:東京大学臨海実験所/記念館大実習室および油壺周辺海域

(4)講師およびスタッフ:臨海実験所教職員 8 名、日本動物分類学会会員 3 名

(5)参 加 者:東京都教育生物研究会および都立高校教員と生徒、神奈川県内外の 小中学校生徒と保護者、一般参加者、日本動物分類学会会員ら/合 計 28 名

(6)プログラム:

9:30 東京大学臨海実験所正門前、集合

9:45-10:15 受付、ガイダンスと諸注意(記念館大実習室)

10:15-12:30 「臨海丸」乗船、海底生物の採集(油壺湾~小網代湾、往復 2 回)

待機者は実習室にて動物の観察 12:30-13:30 昼食・休憩(記念館大実習室)

13:30-14:30 採集した動物の説明会・観察・スケッチ(記念館大実習室)

14:30 終了

(56)

52

「第2回実習船『臨海丸』の乗船体験と海底の生物調査」

(1)開催時期:2007 年 8 月 24 日(金) 9:30~14:30

(2)内 容:小・中学生、教員および保護者を対象として、実習船「臨海丸」に 乗船して油壺湾周辺の地形を観察するとともに、海洋に生息する生 物の採集調査(プランクトンネットおよびドレッジ)を行った。採 集した生物は臨海実験所に持ち帰り、参加者は講義を受けるととも に、生物の生態を観察した。

(3)場 所:東京大学臨海実験所/記念館大実習室および油壺周辺海域

(4)講師およびスタッフ:臨海実験所教職員 8 名、日本動物分類学会会員および実 習補助 8 名

(5)参 加 者:東京都教育生物研究会および都立高校教員と生徒、神奈川県内外の 小中学校生徒と保護者、一般参加者、日本動物分類学会会員ら/合 計 26 名

(6)プログラム:

9:30 東京大学臨海実験所正門前、集合

9:45-10:15 受付、ガイダンスと諸注意(記念館大実習室)

10:15-12:30 「臨海丸」乗船、海底生物の採集(油壺湾~小網代湾、往復 2 回)

待機者は実習室にて動物の観察 12:30-13:30 昼食・休憩(記念館大実習室)

13:30-14:30 採集した動物の説明会・観察・スケッチ(記念館大実習室)

14:30 終了

(57)

53

表 2.採集生物一覧

第1回実習船『臨海丸』の乗船体験と海底生物の調査:19種

門 和 名 属 名 種 名

刺胞動物門 ウミサボテン Cavernularia obesa

ウミエラ Leioptilus fimbriatus イソギンチャクの一種

(ヤドカリに寄生)

触手冠(触手)動物門 ミドリシャミセンガイ Lingula unguis

軟体動物門 ツメタガイ Neverita didyma

カシパンヤドリニナ Nipponomysella subtruncata

ヤツシロガイ Tonna luteostoma

トリガイ Fulvia mutica

マツヤマワスレ Callista chinensis

ミゾガイ Siliqua pulchella

環形動物門 ウロコムシの一種

節足動物門 ウミグモの一種

ヤドカリの一種

ロッカクコブシ Nursia elegans japonica イッカククモガニ Pyromaia tuberculata

刺胞動物門 モミジガイ Asteropecten scoparius

クシノハクモヒトデ Ophiura kinbergi クモヒトデ Ophiactidae sp.

クモヒトデ Amphiuridae sp.

第2回実習船『臨海丸』の乗船体験と海底生物の調査:16種

門 和 名 属 名 種 名

軟体動物門 サザナミガイ Lyonsia ventricosa

トリガイ Fulvia mutica

(58)

54

マツヤマワスレ Callista chinensis ネリガイ Pandora(Pandorella) otukai

カニモリガイ Proclava kochi

紐形動物門 ヒモムシ sp.

節足動物門 アカエビ Metapenaeopsis barbata

アケウス属の一種 Achaeus sp.

ゴイシガニ(子) Kraussia integra フジツボ sp.

棘皮動物門 ヨツアナカシパン Peronella japonica

オカメブンブク Echinocardium cordatum

刺胞動物門 ヒドロムシ類の一種

環形動物門 ゴカイの一種

節足動物門 オオメミジンコ Polyphemus pediculus

毛顎動物門 ヤムシの一種

(59)

55 4-2.アンケートの結果

実施した当日、臨海実験所で作成したアンケートを参加者に記入していただいた。回 答の集計は下記の通りである。

第1回実習船「臨海丸」の乗船体験と海底生物の調査

(アンケート回収率 89%: 参加者数 28 人、回答数 25 人)

【Q1】 今回参加して、海と海にすむ生物に興味を持ちましたか?

回答 人数 %

1.非常に興味を持った 19 76

2.やや興味を持った 6 24

3.興味を持てなかった 0 0

【Q2】 海と船に親しむことができましたか?

回答 人数 %

1.親しむことができた 20 80

2.やや親しむことができた 4 16

3.どちらかといえば親しめなかった 1 4

4.親しめなかった 0 0

【Q3】 プログラムの内容は難しかったですか?

回答 人数 %

1.難しかった 0 0

2.やや難しかった 7 28

3.どちらかといえばやさしかった 12 48

4.やさしかった 3 12

5.その他-ちょうどよかった 2 8

やさしくしてくれた 1 4

【Q4】 今後もこのような自然観察会があったら参加したいと思いますか?

回答 人数 %

1.参加したい 18 72

2.どちらかといえば参加したい 7 28

3.どちらかといえば参加したくない 0 0

4.参加したくない 0 0

【 期待することや要望 】

(60)

56

○ 今年は博物館の方もいらして、たくさん解説をしていただけましたが、赤坂先生の お話をもう少しお聞きしたかったです。

○ 海底生物だけでなく、魚類や海藻などもとりあつかってくださるようなチャンスを 作っていただければと思います。

○ 観察だけでなく、実験的なものがあったらよいなと思います。

○ 1便と2便の間で待っている時に、質問形式ではなく、もう少し何か説明をしてい ただけたらと思った。

○ ドレッジで採集できた生き物と磯で採集できるものを比較する説明にすると、子供 達が分かりやすいかと思います。

○ おおまかな分類表を用意して頂き、説明を受けながら採集したものを記入したりす ると、より参加した証が残ると思う。

○ もう少し説明の時間を多くとってほしかった。

○ もう少し説明を系統だててほしかった。採集した生物の分類がてきとうで分かりに くかった。種類(キョク皮、軟体など)ごとにパックを分けてほしかった。

○ メリベの研究(メリベやウミウシ)。

○ 魚をつかまえたい。

○ 今後は海の中も見てみたい。

○ もうすこしわかりやすい話がいいです。

○ この様なチャンスもっと増やしてほしい。

○ 今後も続けて欲しい。

○ 特にない。

○ 十分です。

【 感 想 】

○ 何度参加しても新しい生き物と出会え、とても楽しめました。船までの時間に貴重 な話を聞くことができ、大変勉強になりました。ありがとうございました!!

○ 3 年目(5 回目)の参加です。知識が増えると、楽しみも倍加しますね。今後ともよ ろしくお願いします。海の危険な(?)生き物カードを作って、子どもたちと楽し く学習しています。今回も、たくさんのヒントを得ることができました。ありがと うございます。

○ 今日はとっても楽しかったです。私は何回も参加していますが、いつもいろいろ勉 強になります。毎回新しい生き物に出会えることが楽しみです。今後ともよろしく お願いします!!

○ 前回とはまた違った生物もみつかり、興味深いものがありました。イソギンチャク をもつヤドカリやツメタガイなどおもしろく印象に残りそうです。

○ 船がとてもゆれたので、ビックリしました。無理をして2便出していただいたこと を感謝します。

(61)

57

○ 初めてこのような船に乗った。波が高くて上下の動きが大きく、とても楽しかった。

○ 海の底をすくっただけで、たくさんの生き物が出てきておどろきました。船に乗る のも、波を受けて船がゆれるのがおもしろかったです。今日は良い体験をさせても らいました。

○ 8 年ぶりの乗船だったので、とてもおもしろかったです。採掘の仕方がイメージと 違い、簡単な方法でできるんだなぁと驚きました。いろいろな生物を知ることがで きて楽しかったです。相模湾は生物の宝庫なんですね。

○ 多少ゆれが強かったが、海も深く、また、風景も良く、湾の感じを見ることが出来、

大変良かった。

○ 船に乗ることがとても楽しかった。気持ち良かったです。

○ 波がやや荒くて、実習が制限されたのが残念でした。採集位置がほぼ同じ地点なの に、深さがずい分とちがっており、この海の特徴がよくわかりました。

○ 乗船時間が短かった・・・波の関係で止むを得ないと思うが残念でした。

○ 船は楽しかったです。でも、自分でプランクトンを取る事が出来なかったのが嫌で した。

○ 強風高浪で、短時間の採集だったのは残念でした。

○ 最初はここちよかったが、あとになって少し船酔いした。いろんな種類が取れるか なと期待したが、海藻が多かった。

○ 船が意外にゆれたが、酔わなかったので快適だった。生物の分類が少しごちゃごち ゃでわかりにくかった。

○ 説明会の時、もう少し体系的な話があると、もっと理解が深まると思う。

○ 今まで見たことのない生き物を実際見ることができ、勉強になりました。また、海 の中でもいろいろな役割があって、成り立っていることもわかりました。

○ ていねいに対応してくださり、楽しく学ぶことができました。このような企画を行 ってくださり、感謝いたします。ありがとうございました。

○ とても良い経験になりました。いろんな生物を見られてよかったです。専門的な説 明も聞けてよかったです。

○ とても楽しんで活動できた。これからも、このような機会をたくさん作ってほしい と思う。

○ 生物とは縁がない生活をしているので、海の生物はとてもめずらしく、おもしろか ったです。

○ たのしかった。ウミサボテンがおもしろかった。

○ ふねにのったり、魚とふれあったり、きちょうな体験ができてうれしかったです。

○ いろいろなどうぶつがいておもしろかった。

○ 船にのったのが楽しかった。

○ はじめてふねにのれて、たのしかった。

(62)

58

第 2 回実習船「臨海丸」の乗船体験と海底生物の調査

(アンケート回収率 92%: 参加者数 26 人、回答数 24 人)

【Q1】 今回参加して、海と海にすむ生物に興味を持ちましたか?

回答 人数 %

1.非常に興味を持った 18 75

2.やや興味を持った 5 21

3.興味を持てなかった 1 4

0

【Q2】 海と船に親しむことができましたか?

回答 人数 %

1.親しむことができた 15 63

2.やや親しむことができた 7 29

3.どちらかといえば親しめなかった 2 8

4.親しめなかった 0 0

【Q3】 プログラムの内容は難しかったですか?

回答 人数 %

1.難しかった 1 4

2.やや難しかった 8 33

3.どちらかといえばやさしかった 9 38

4.やさしかった 3 13

5.その他-楽しかった 1 4

6.無回答 1 4

【Q4】 今後もこのような自然観察会があったら参加したいと思いますか?

回答 人数 %

1.参加したい 16 67

2.どちらかといえば参加したい 5 21

3.どちらかといえば参加したくない 3 13

4.参加したくない 0 0

【 期待することや要望 】

○ ドレッジでもっと多くの生物をみてみたいです。こうした機会が増えるとよいです ね。より深くかかわりたいです。

○ 分類の全体像をつかめていないので、表などを頂けると助かります。

(63)

59

○ 透過型顕微鏡も加え、固定した材料でさらに拡大してみてはいかがでしょうか。

○ ドレッジの深度がもう少しとれる時期(漁業との競合がない時期)の体験を期待し たいです。

○ 新種の発見に期待している。

○ 乗船時間は楽しかったが、何もすることがなく、少したいくつだった。

○ 話が伺える時間が少ないように感じたので、そういった時間を長くしてほしい。

○ 時間が短く感じた。宿泊してもっとのんびりと体験してみたい。

○ もっとゆっくりして時間をもっと長くしてほしい。

○ 季節毎に、このような実習イベントを開いてもらえると、とても嬉しいです。磯の 観察会を行って頂きたいです(開催していたらすみません・・・)。

○ 磯での採集に参加したいと思います。

○ 岩場や磯でのさい集をしたいと思います。

○ 説明が時々わかりにくいこともあったので、より簡単な言葉で説明して頂けたら、

うれしいです。

○ 親子で参加出来るプログラムを沢山つくって下さい。

【 感 想 】

○ 普段はなかなか見ることの出来ない生物に直接さわることが出来たので、細かな所 まで観察出来て楽しかったです。プラス、説明をしてくださったので、様々な事を 知ることが出来ました。

○ ドレッジを見られてよかった。磯では見られない、いろいろな生き物を見ることが できとても楽しかったです。先生のお話もとても興味深く、見すごしてしまいそう な生き物もお話を聞いたらとてもユニークで、やっぱり海の生き物はフシギです。

○ 長時間乗船すると、それだけでも疲れるかもしれないが、もっと乗船して生物を採 集してみたかった。乗船したことはもちろん滅多にない経験だったのでよかったが、

それよりも、様々な生物を間近にみて、教えていただいたことがよかった。

○ 見たことのない生物をたくさん見ることができて楽しかったです。海綿が抗ガン剤 などの研究に用いられていると聞いて、びっくりしました。今まで知らなかったこ とも多くあり、勉強になりました。ありがとうございました。

○ 普段あまり見る事の出来ない、生きているブンブクやカシパンが見られて良かった です。海の生物に興味があったので、とても有意義な時間を過ごせました。ありが とうございます。

○ とても興味深く楽しめました。分類の話も、もっと聞いてみたいです。やはり実際 に海で採集したものの前で聞く話はリアルで、ただ講義を受けるのとは全く違った 面白さがありました。

○ 予想以上に沖に出て、船がゆれたので驚いた。魚ではなく、プランクトンを網でと ったことが、珍しくておもしろかった。風が気持ちよかった。

(64)

60

○ 気持ちよく船に乗れ、楽しめた。また、多様な生物を実際に見ることができ、さら に、専門の方々の説明も聞くことができて勉強になった。中高生の参加が少ないの が残念。

○ 風もおだやかで、たっぷり乗船体験を楽しませて頂きました。ありがとうございま した。

○ 実地で専門の先生方のお話を拝聴できて、楽しかったです。

○ 天気がよく気持ちよかったが、少し気分が悪くなりそうな時もあり、楽しめない部 分もあり、残念だった。先生のお話は楽しく聞かせていただきました。ありがとう ございました。

○ 少し船によってしまい、半分しか楽しめなかったが、体験ができたことはよかった。

ありがとうございました。

○ プランクトンネットでたくさんのプランクトンを取ることができました。とても楽 しい経験ができて良かったです。その他にも色々な海の生き物にさわることができ てよかったです。

○ 知らない生物をしることが面白く感じました。

○ ほかの物もとってみたかった。あみがおもったよりおもくなかった。いがいと風が あった。

○ 波があって船がゆれた。プランクトンのあみを引くのが重かった。

○ とてもきれいな風景が見られました。

○ 大変良かった。

○ うみのべん強ができたから、うれしかった。

○ とてもいろいろなものがとれたから楽しかった。

4-3.まとめ

実習船「臨海丸」を利用した2回の沿岸海域の調査体験では、昨年より多い54名も の参加者があり、船の定員を超えたため、両日とも2回に分けて船を出すほどであった。

ドレッジによる海底の生物調査では、身近な磯や干潟では見られない生物が採集され、

参加者にとって極めて貴重な体験であったと考えられる。また、プランクトンの幾何学 的な美しさは、参加者を魅了していた。顕微鏡観察に加え、日本財団助成で購入したビ ジュアルプレゼンターは微小な生物;特にプランクトンの解説に威力を発揮した。今年 度は、臨海職員に加え、日本動物分類学会からのボランティアが指導を担当したことも あり、幅広い専門分野をカバーすることができた。今後も、船を使った沿岸海域の調査 体験を続けてゆきたいと考えている。

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