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予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み : 小学校3年生社会科「わたしたちのまちと市」の実践を通して

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(1)Title. 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を 引き出す実践の試み : 小学校3年生社会科「わたしたちのまちと市」の 実践を通して. Author(s). 樋渡, 剛志. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 11: 21-32. Issue Date. 2021-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11669. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第11号. 特集論文. 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により 主体的な態度を引き出す実践の試み ─ 小学校3年生社会科「わたしたちのまちと市」の実践を通して ─ 樋 渡 剛 志*. 1.はじめに 新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、4月から勤務校が休校になった。小学3年生にとっては 初めての社会科の学習が始まる。この状況下で筆者は、どのようにしたら子どもの学びを止めずに、 かつ社会科における問題解決的な学習1を行えるのか、どのようにしたら受け身になりがちなオンラ イン学習で学びに向かう子どもの主体的な態度を引き出せるのか、という課題に直面した。 そこで、このような状況下でも問題解決的な学習を成立させるために、①動画コンテンツを活用し 主体的に予習できる場の設定、②会議ツールアプリ(Zoom® )を活用し、予習したことを基に問題解 決的な学習をするオンライン授業の構成、という2つの連動する手立てを考え、実践を試みた。. 2.実践の概要─動画を核にしたオンライン授業 休校下では全員が同じ体験をすることは困難だ。そこで、単元の活動の中心に、教員の居住地域と 子どものそれとの比較を据えた。そうすることで、どの子も同じ土台(比較対象)で話し合うことが できる。比較という手立てによって相違点や類似点に目を付けていく。 「似ているなあ。 」 「ちょっと 違うんだよなあ。 」というところから「自分の地域はどうなのだろう」という問題意識を引き出し、 自分から追究していくことができるのではないかと考えた。 2-1.本単元の目標と指導計画 単元名:小学校第3学年「わたしたちのまちと市」2(全8時間) 目 標: ⑴ 自分の住んでいる地域の様子と、教員の住んでいる地域の様子を比べる活動を通して、社会的 な条件に合わせてまちづくりが行われていることを理解する。自分の住んでいる地域を調べ、白 地図にまとめることができる。 ⑵ 教員の住んでいる地域のお店の場所を考える活動を通して、交通量や人の量などの社会的条件 に着目して、店の場所がどのように考え作られているかを表現する。 ⑶ 自分の住んでいる地域の様子と、教員の住んでいる地域の様子を比べる活動を通して、自分か ら相違点や類似点を見付け、その理由について考えようとする。 動 画: 「ひわてぃの社会授業 これでばっちり!小学3年生『社会科』 」と題して「4時間」分を作 ───────────────────── *. 北海道教育大学附属札幌小学校教諭(北海道教育大学教職大学院2014年3月修了生). 21.

(3) 樋 渡 剛 志. 成しYouTubeのサイト3で公開した。動画の構成は次の通りである(詳しくは後述) 。 動画1時間目(6分7秒) 「まちの様子を読み取る」 動画2時間目(8分18秒) 「地図作り三か条その1─方位を覚える─」 動画3時間目(7分41秒) 「地図作り三か条その2・3─建物を探す・土地の様子に目を向ける─」 動画4時間目(3分56秒) 「 〈おひっこし大作戦〉─店の分布と社会的な条件を関連付ける課題─」 指導計画: Zoom®システムを利用した双方向オンライン授業において、作成した動画(前述)の再生( (再) 視聴)・補完(1~3時間目) 、自己課題取り組み(4~7時間目) 、および動画(4時間目)で問題 意識を引き出し、双方向オンライン授業において自己課題解決仕上げ(8時間目)で構成した。 1時間目…動画1時間目(まちの様子を読み取る)再生および双方向オンライン授業(探したもの や人の交流と自分の家の周りと同じものや人、違うものや人をノートに記述) 2時間目…動画2時間目(地図作り三か条その一─方位を覚える─)再生および双方向オンライン 授業(自宅で方位確認とその方位にあるものを保護者と確認) 3時間目…動画3時間目(地図作り三か条その二・三─建物を探す・土地の様子に目を向ける─) 再生および双方向オンライン授業(どの方法で地図を作れそうか確認、動画で作成した 土地の様子の違いによる地図で、どれが一番自分の地域に当てはまるかを交流) 4時間目~7時間目…自分の家の周りの地図作り(自己課題として各自で取り組む) 8時間目…動画4時間目( 〈おひっこし大作戦〉─店の分布と社会的な条件を関連付けるための課 題提示)再生と双方向オンライン授業(課題〈おひっこし大作戦〉における店舗所在地 の社会的条件に気付く) 2-2 動画作成上の工夫 1)動画を止めて、学習道具を準備する指示・考える時間の 確保 作成した全ての動画で、普段の授業と同じ道具を用意すべ く「用意してね」というタイトルで、教科書、ノート、鉛筆、 ペンを手元に準備するよう、図1を作成した。また、動画を 視聴しながら自分自身のテンポで学び進められるように、考 えをノートに書き留めてほしい時には動画を止めるよう指示 する場面を意図的に入れるように、音声で解説をした。リア. 図1 準備を促すシート. ルタイムで子どもの様子を確認することが困難なため、教科 書のページも明示し、どの子も学習に向かいやすい配慮した。 2)ご家族の力を借りる場の設定 小学3年生にとっては初めての社会科の学習なので、学習内容も学び方そのものも子どもたちは知 らない。この3年生では、見たり聞いたりした自分自身が体験したことを基(事実)に、自分の考え を作っていくことが大切にされている。そこで、お家の人にインタビューしたり、一緒に活動したり する場を、たとえば「家族と話しをして地図にしよう!」とその機会を意図的に作るようにした。 3)どの子も「あれ?」 「えっ?」と思うような極端な手立て 子どもが意欲的に学習に向かうために、 「ひわてぃーは、30個見付けたよ!見付けられるかな」 など、 あえて極端に大げさな働きかけをして、探究意欲を喚起するよう試みた。 22.

(4) 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み. 2-3 双方向オンライン授業での工夫 1)子どもの心をつなぐことを第一に 今年の3年生は、入学以来、初めてクラス変えをした学年だが、新しい仲間と対面したのはわずか 6日間で、その後1週間は動画の配信も双方向オンライン授業も行われなかった。そこで、子どもた ち同士が会話できたり楽しんだりできることを心掛けた。 2)動画での学習を補う どのご家庭も双方向オンライン授業ができるように学校からタブレット端末等を貸し出したが、子 ども一人では動画視聴ができないとの声もあった。そこで、双方向オンライン授業では、授業の冒頭 で動画の復習や動画での学習をもとに問いを作る時間を設けた。 3)グループで会話をする機会を意図的に仕組む 双方向オンライン授業では、同時に複数名が会話をすることができない。また、1クラス35名が一 度に画面に表示されるため、発言している人を探すのも一苦労で、細かい表情を読み取ることも難し い。そこで、ブレークアウトセッション機能を用いて少人数のグループで会話の機会を設定し、相手 の表現を受け取りやすくできるようにした。 2-4 動画配信方法と保護者への通知 休校期間中は次のように準備・配信した。まず、プレゼンテーションソフトで作成したものを動画 にして事前学習用とし、オンライン上にアップロードした。次に、本校HP上にオンライン時間割を 掲載し、動画(事前学習用)をアップしたサイトのURLを掲載し、 双方向オンライン授業までに視聴・ 学習しておくことを宿題とした。 子どもによるアクセス数の実際は不明だが、本校の3年生の人数が69名であることを考えると、視 聴率は高いと推察される。 なお、本校では、情報通信機器の貸し出しを行った(前述) 。どの子もオンラインで学習できるよ うにしたため、子どもの学びを止めないためには、この方法が適切だと考えたことによる。. 3 実践の実際 以下、オンライン授業の8時間を軸に、ウェブ配信した(予習用の)動画の内容・自宅学習時の様 子およびオンライン授業の実際を報告していく。 3-1 単元1時間目「まちの様子を読み取る─動画で追究意欲を高める極端な手立てとともに」 1)動画の内容と子どもの様子 オンライン配信の動画(1時間目)は、 教科書のイラストを読み取る活動を構成した。動画では「ど んなものがあるかな? どんな人がいるかな?」と問いかけて、ノートに記述させた。 動画のねらい・工夫: 通常の授業であれば「もの」と「人」を読み取る指示をして、各自の活動にうつり、机間指導中に 「もう○個も建物を見付けたのか!」などと声をかけて価値付けるなどし、他の子どもの追究意欲を 掻き立てることができるが、動画配信での学習なのでそれができない。 そこで、極端な手立てを打つことで、子どもの挑戦意欲を掻き立てることにした。たとえば、活動 に入る前に図2を提示しながら、 「ひわてぃーは30個発見できたけど、みんなはいくつ見付けられる 23.

(5) 樋 渡 剛 志. かな?」と音声で働きかけた。 子どもの実際(自宅学習) : 「 『ひわてぃーの30個を超えてやる!』と言って、楽しみ ながら探していました。」と、保護者から子どもの様子をご 連絡いただいた。 意 義: 通常の学習では、徐々に子どもの追究意欲を積み上げてい くことが多くあるが、オンデマンドではリアルタイムでのや り取りができない分、活動を始める段階で子どもの活動意欲. 図2 追究意欲を高める手立て. を引き出し高めるような関わりをつくることが重要であると 言えそうだ。 2)双方向オンライン授業の様子 仲間と共に学ぶ楽しさを感じるとともに、体験を通しても学ぶ楽しさを感じ取ってほしいと願って 単元を構成した。 動画での学習を家庭や子ども任せにするのではなく、双方向オンライン授業で子どもの学びを一緒 に確認したり、思うように進められなかったりした子どもと一緒に取組んだ。 この時間は、まず、見付けた「ものと人」を発表していった。 「同じのを見付けた人?」と問うと、 多くの子の手が挙がった。見付けられなかった子にとっては、友達の発表から新たな発見をしたこと になるだろう。終盤では、 「自分の家の周りと似ていること、違うことはあるかな。 」と子どもたちに 問うと、ある子が、 「教科書の絵のように、うちの近くにあるお店は、マンションが近くにあるよ。」 と発言した。「似たようなことを見付けた人がいるかどうか。 」と問いかけると、数名手が挙がった。 その子たちに「みんな同じ家に住んでいるの?」と問うと「違うよ。区も違うよ。 」等の発言が続いた。 「住んでいる地域が全然違うのに、似ているっていうこと?」と聞くと、 「きっと、人が多い方がい いんだよ。」「人が多い方がお店を使ってくれるからね。 」などと、発言が続いた。 前半では、自分の発表が学級みんなに役立つことや学級のみんなで学ぶと楽しいということを感じ られたであろう。後半では、住んでいる地域が違っていても類似点があることに目を向けていった。 この気付きは、社会的条件によってまちづくりを捉えるきっかけになると考えている。図3の子ども は、 「違い」を問われたときにはすぐには発言ができ なかったが、友達の発言を聞いていく中で、教科書と 自分の家の周りとの違いを明確にし、振り返りを記述 している際に「ちがい」について書くことができた。 このように、仲間と共に学ぶことの価値を実感できた はずだ。自分一人では見付けられなかったことや分か らなかったことが、友だちの発言から、気付いたり分 かったりすることがある。 コロナ禍においても、このような協働的な学びを工 夫次第では行うことができる可能性があるのではない かと思う。. 24. 図3 振り返り.

(6) 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み. 3-2 単元2時間目「地図作り三か条その一:方位を覚える─動画で追究意欲を高める隠す手立て と保護者と共に学べる手立て」 1)動画の内容と子どもの様子 オンライン配信の動画(2時間目)では、 「地図の作り 3か条」 (図4)を考えることにある。特に2時間目は、 方位について学ぶ場とした。お家の中で、方位の目印にな るものを探したり、お家の方にインタビューしたりする時 間とした。 動画のねらい・工夫: キーワードを隠して提示する手立てを講じた。動画はそ のままでは自動で流れて正解が表示されるので、 「考えた. 図4 地図作り3か条. い人は動画を止めてノートに考えを書いてみましょう。 」 と呼びかけた。 このことがより有効にはたらいたのは、保護者の方と一 緒にできる活動を仕組んだ場面だ(図5) 。動画を配信し たのは5月12日なので、まだまだ「緊急事態宣言」の最中 で、外出することが厭われる時期だった。そこで、お家の 中の方位を調べる活動を構成した。地図作り3か条の「方 位を覚えるべし」と「建物を探すべし」を家にいながら、 模擬的に活動できる仕組みにもしていた。どの方位に、何 があるのかを調べ、ノートにまとめるという活動を体験し. 図5 保護者と取り組む活動. たことになる。動画の中では、スマートフォンのコンパス 機能を使い、実際に教員の家の中の方位を確かめる動画も作成した。保護者の方の協力を得て、コン パスを活用して家の中の方位を確かめた子どももいたようだ。この体験が経験となり、地図作りをす る上で欠かせない技能となっていくと考えた。 子どもの実際: 動画配信後の双方向オンライン授業で子どもたちに尋ねると、多くの子が動画を止めて保護者の方 にインタビューをしに行ったことが分かった。このような状況下 では、保護者のみなさんと一緒に子どもが学べる場を構成するこ とは有効だと言えそうだ。 意 義: 通常の学習であれば、方位磁針を活用して方位を調べたり、学 校の地図を作る活動を通して地図の作り方を学んだりすることが できる。このような状況では、一斉に同じ活動をすることが難し いため、模擬的に体験し、休校が明けた後の活動に生かせるよう に考え方を変えていく必要があると考え、このような活動に仕組 みを変えた。 2)双方向オンライン授業の様子「他者の考えに触れる」 各自で調べたことを基に発表する(図6)時間を設けた。動画 を視聴できなかった・活動できなかった等の子どももいるため、. 図6 家の方位調べ. 25.

(7) 樋 渡 剛 志. 全体の場で確認する必要がある。近くに保護者がいる場合は、調査する時間を作ったり、保護者がい ない場合は宿題にしたりするなど、学びを止めないための工夫が必要である。 グループで数分、家の方位を発表し合う場を設けた。すると、南側に窓が多いことや、北側にキッ チンや玄関が多いことなど共通点が多いことに気付いていった。子どもたちは、比べることで、同じ ところや違うところが浮き彫りになっていくことを実感していったようだ。 比較するという考え方の価値を実感していったことが分かる。単に、知識が技能を得るだけではな く、このような学び方そのものを身に付けていくことが、資質・能力を培っていくうえで必要なので はないかと考える。比べて考えるという考え方は、社会科の学習だけではなく、他教科・領域でも発 揮されてほしい力だからである。一方向的に教えることが多くなるオンライン授業でも、授業者がね らいをもって授業を構成することで、子どもの学びの質がぐんと高まることだろう。 3-3 単元3時間目「地図作り三か条その二・三:建物を探す・土地の様子に目を向ける─動画コ ンテンツで地図の作り方を教える」 1)動画の内容と子どものようす オンライン配信の動画(3時間目)は、地図作りそ のものをしたことがないので、地図の作り方を教える 動画を作成した(図7)。実際に歩きながら地図を作 る方法や、動画を撮影しそれを再生しながら作成する 方法、Web上の地図コンテンツを活用して色をぬっ て地図を完成する方法などを紹介した。また、駅の周 りとそうではない所や、太い道路と細い道路など、土 地の様子に着目した地図を紹介した。 動画のねらい・工夫:. 図7 地図の作り方. 本校の特色として、札幌市全域が通学区域となって いるため、全員が同じ白地図で地域の地図を作ることはできない。そこで、子ども一人一人が住んで いる地域の地図作りから共通性を見付けることを、教員の作成した地図を全員共通の土台にしてでき ないかと考え、活動を構成した。 実際に買い物などで外出する際に地図作りができる子や、外出などができない子など一人一人の状 況が異なるため、どの子もできるような方法を提示し、選択して取り組めるようにした。 子どもの実際(自宅学習) : 図8にあるように、記憶のある自分の家の周りの地 図を作った子どもが多くいた。 意 義: 子どもたちには、実際に教員が作成した方法を詳し く紹介した。国土地理院の基盤地図情報2.5万分の1 の白地図を活用し、地図に書き込んでいった方法であ る。どこに何があるのかを視覚的に捉えられるように、 一軒家、マンション、買い物をするお店、食べるお店、 公共施設とその他のお店の大きく5つに分類して色分 けをした。また、地図を作った後に、気が付いたこと 26. 図8 子どもの作成地図.

(8) 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み. をメモするようにした。これらは、社会的条件に目を 向けやすくするための手立てである。 2)双方オンライン授業「多様な読み取り方に触れ、 自分の見方を拡げる」 双方向オンライン授業では、動画で紹介した教員作 成の地図を読み取る活動をした(図9)。この地図の みが共通土台であり、共通に議論できるものだ。子ど もたちは、太い道路の近くにお店があること、学校の 近くにマンションが多いこと、一軒家は一軒家で固 まっていることなどを読み取っていった。. 図9 地図を読み取る活動. 「どんなところに何があるかな?」と問いかけて ノートに記述させて(図10)から授業を始めた。通常 であれば、子どもがつぶやいた言葉や表情などを取り 上げて授業を構成していくが、同時に多数の子どもの 声を取り上げることができない。そこで、今回は、挙 手した子どもを指名して一問一答のような形で進めた。 例えば「マンションがかたまっているよ。 」という 発言に教師が、 「どの辺のことを言っているの。○○ さんの言っていること分かる人いるかな。 」と子ども たちに聞き返し、さらに子どもたちが「地図の左下の 学校の近く辺りだよ。 」 「つなげて、 太い道路の近く。 」. 図10 子どものノート. 「そうそう、お店も近くに多くあるかな。 」などと、 互いに指名し合い、意見をつなげていった。 一方で「お店も、太い道路の近くに多いよね。 」という発言もあった。この発言には「そうそう。」 というつぶやきや「え。そんなことも言えるの。 」と言うつぶやき、じっくり地図を見直す様子など が見られた。双方向オンライン授業では、子どもの雰囲気、例えば全員が共感的なのか、分かってい ない子どももいるのか等を見取ることは難しい。どのような意見を取り上げ、考えを深めるかを教師 がより意図的に行う必要があるのではないかと考える。 今回は、道路の太さや一軒家とマンションの多いところなど、社会的な条件に目を向けている発言 を意図的に取り上げ、授業を構成した。 3-4 単元4~7時間目「住んでいる地域の様子を捉える─お家の方と一緒に地図を作る活動」 「よく行くお店までの地図を作ろう」と問いかけて地図作りの課題を与えた。お店を中心とした地 図作りをすることで、道路や駅、交通などの社会的条件や土地の高低などの地理的条件、人の多さな ど地域の様子を捉えやすいと考えた。 全員が地図作りをすることはできなかったが、 多くの子が活動に取り組んでいた(図11) 。中には、 模造紙にまとめてくる子もいた。楽しみながら、学習に向かえていたことが伺える。 図11の地図は、実際には、一軒家やマンション、駅、そしてお店を色分けして作成されている。図9 に比べ、より具体的に地図を作ることができるようになっている。ご家庭のご協力によるところも大き いが、色分けの仕方などから、少しは動画と双方向オンライン授業が寄与していることが推測できる。 27.

(9) 樋 渡 剛 志. このような活動が、教科書のイラストや教員の作成 した地図と比べ、類似点や相違点を見付けていくきっ かけになった。 3-5 単元8時間目「店の分布と社会的な条件を関 連付ける─動画で問いを生む仕掛けにより」 1)動画の内容と子どものようす オンライン配信の動画(4時間目)は、今までの動 画とは違い「問い」を生むことに重点を置いて作成し た。内容は、教員の作成した地図のお店を全て、教員 の家の近くに引っ越しさせる( 「おひっこし大作戦」 ) ということの是非を問うという課題で、店舗所在地の 社会的条件に目を向けて考える姿を引き出すことをね らった。 子どもたちには双方向オンライン授業までに、この 動画を視聴し、ノートにこの課題に対する自分の考え を書いておく、というところまでを宿題にした。問い. 図11 子どもが作成した実際の地図. に対して自分の考えをもった状態で双方向オンライン 授業を行い、解決していく姿を生むことをねらいとした。 この動画配信は、大きな挑戦だった。これまでの3本の動画と、数十回の双方向オンライン授業を 行ってきたが、教えることが多くなってしまうことが課題だと感じていたためである。双方向オンラ イン授業の中でも、問いを生み解決していくことは可能かもしれないが、やはり、リアルタイムでテ ンポよく子どもの声を取り上げたり、表情を読み取って指名したりすることは難しい。 動画のねらい・工夫: 今回は、下記のような手立てを打って問いを生むようにした。 (図12) 教員の地域のお店を、 自宅の近くに引っ越しさせる地図を作成したが、 これに子どもたちがこの「作 戦」に大反対すると想定してのことだ。 また、教員の家の地域の情報が少ないため、道路状況の動画を撮影し、作成したプレゼンテーショ ンに取り入れた(図13) 。 どちらも15秒程度の動画を撮影し提示した。家の前の動画には一台の車も通らなかった一方で、店. 図12 どの子も問いをもつ極端な手立て. 28.

(10) 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み. 図13 道路状況を撮影した動画. の周りは車が引っ切り無しに往来している様子が分かる。 車通りや人通りが明らかに違う様子を見て、 子どもたちは絶対にお店を引っ越しさせてはいけないと考えると想定したからだ。 子どもの実際(自宅学習) : 動画を見終わった段階で、自分の考えをノートに書く指示をして動画を終えた。 一人の子どもの考えを紹介する。 「ひわたり先生の家の周りにだけ、お店があったら他の人がお店に行くのに遠くてお店に行くと きにたいへんだから先生の家の周りだけ、お店があるのはちょっとだめ。 」 この段階では、他の人が困るという漠然 とした捉えであることが分かる。双方向オ ンライン授業を通して、人通りや車通り、 道路の太さや細さなどの社会的条件に目を 向けていけるように学習を展開していこう と考えた。 意 義: 双方向オンライン授業をした際に「お 引っ越し作戦どう?」と、子どもたちに問 うと全員が画面上にバツ印を出した。この ことから、動画から問題意識をもち、それ を考えようとする子どもの姿を引き出せた ことが分かった。 2)双方向オンライン授業 「問題を解決 する」 解決場面から話し合いを始めることが理 想だが、動画を視聴していない子どももい ることを想定して、「お引っ越し大作戦」 が良いかどうかを判断する場を再度設けて から授業を始めている。 双方向オンライン授業の詳細は、樋渡 (2020)を転載する(右資料) 。 なお、右資料では、地図作りの時数を数. 資料 8時間目の授業詳細. 29.

(11) 樋 渡 剛 志. えていないため、「5時間扱い」として掲載している ことをお断りしておく。 双方向オンライン授業中は、子どもの意見をプレゼ ンテーションの画面に打ち込んで、板書の代わりとし た(図14)。 双方向オンライン授業でのある子の発言を紹介する。 「うちの近くは、JR駅の近くにお店があるよ。だっ てね、JR駅の近くにあると、人がたくさん来るから だと思うんだよね。だから、 それと一緒で、 ひわてぃー の家の近くのお店も、大きい道路の近くにあって、車. 図14 双方向オンライン授業の板書. がたくさん通るから、 人もたくさん来るんだと思う。 」 この子の発言には、多くの子どもが「なるほど。 」 や「うちも似ているところがある。 」などと、共感し たり納得したりする様子が見られた。 授業後の振り返りにも、板書を見ながら友だちの意 見で自分の意見が深まったり、変化したりしたことを 記述する子も増えた(図15) 。 「□ちゃん~」は、双方 向オンライン授業でのある子どもの発言のことである。. 図15 双方向オンライン授業の振り返り. 全てを通常の授業と同じように行うことは難しい面 もあるが、通常の学習と大きく変わらない学びを行うこともできたのではないかと考える。. 4 双方向オンライン授業後の対面授業の概要─「お店探検」にオンラインを活用して 臨時休校が明けてから、 「お店で働く人」の学習が始まった。お店探検を通して、お店で働く人に 着目して、安全を守ったり、売り上げを落とさないようにニーズにこたえたりする工夫を捉えていく 学習である。例年通り、弊校の近所にあるスーパーにお店探検ができるかどうか伺ったところ、コロ ナ禍により店内の見学は困難となった。そこで、会議ツールアプリ「Zoom® 」を活用し、教員一名が スマートフォン片手に店内を見学させていただくことを店舗に快諾していただいた。子どもたちは配 付した店内地図に、どこで何が売られていたのか「見学」を通して書き込んだ(図16) 。他学級の担. 図16 「店内見学」と教室で「見学」する子どもたち. 30.

(12) 予習用の動画配信と双方向オンライン授業の両軸により主体的な態度を引き出す実践の試み. 任と連携を図り、スマートフォンをもっている教員が、どちらを向いているのか、どちらの方向に進 むのかを確認しながら、全員が同じ画面を見ながら、模擬的にお店を見学することができた。通常の 見学に比べて網羅的になりがちだが、時間の許す限り、子どもたちの見たいことを取り上げてそこを アップで写したり、聞きたいことをインタビューしたりした。そうすることで、自分の追究にあった 見学をすることもできた。また、見学が教員一名だったため、多くの子どもが見学に行く時よりも長 い時間じっくり見学することもできた。 通常時の見学のように、自分から調べに行ったり、買い物をしている方にインタビューに行ったり することはできないが、それと同等の活動を行うことができたのではないかと考える。どの子にも一 定の活動を保証することができるが、自分から追究していくことができないという限界も分かってき た。今後は、その限界を超えていくために何ができるのかを考えながら、オンラインで行えるよさや 活用の仕方を追究していきたい。 11月には、玉ねぎ農家の方にご協力いただき、Zoom® を活用してインタビュー活動をする予定だ。 オンラインの活用で時間・空間を一気に縮めることが可能だ。 実際に体験することにはかなわないが、 疑似的に追体験できる。また、 実際にはできないことも体験できる。現在、GoogleMapでは、 原爆ドー ムの中を「見る」ことができ、実際には入ることのできない建物の内部に「入る」ことができる。 ICTの活用で、できないことを可能にできる。今後も、子どもの学びを豊かにするためにICTを上手 に活用していきたいと考えている。. 5.成果と課題 新型コロナウイルスの影響で、当たり前だった日常が一変した。しかし、嘆いていても何も変わら ない。子どものために何ができるか、何が一番良いかを考え、全力で走り続けてきた。動画の配信や 双方向オンライン授業やICTを活用していくことは、子どもの学びを豊かにするためには必要なもの だと、今回のコロナ禍を経験し改めて強く感じる。 5-1 成 果 教材の工夫や提示の工夫、教師の問いかけや発問などで、普段の授業と変わらず子どもの意欲を引 き出せるなど、一定の成果が見られた。また、動画や双方向オンライン授業で、興味をもったことを 自分から調べたりまとめたりする主体的な姿も見られた。 5-2 課 題 動画の配信や双方向オンライン授業が今後の学校教育の全てを担うわけではないだろう。知識を得 るという面や得た知識を自分で活用できるという面では、優れていると言えそうだ。しかし、教室で の授業が全てオンライン授業にとって代われるのだとしたら、教員という存在は必要ではなくなる。 毎回同じ授業を一方的に伝授する授業は、オンライン授業に淘汰されていくのではないだろうか。 実業家である堀江(2020)は、 「動画学習を奨めています。スマホで、無料で、いつでも好きな時 に必要な教科を学べる。」(p.796)、「このような環境下にあって必要なものは、一にも二にも実行力 につきる。」(p.818)と述べている。必要な知識を得ることは、学校でなくても簡単にできてしまう ことと同時に、その得た知識を自分で活用していく実行力もまた必要であることも示唆されている。 オンラインだけでは、実行することができないことであろう。 31.

(13) 樋 渡 剛 志. また、ミネルバ大学は、全ての授業をオンラインで行い、様々なツールを使いコミュニケーション を図れるようにもしているようだ4。小学生の子どもたちにそこまで求めるのは難しい。だからこそ、 私たちはこれからも教室での学びの価値を考えていく必要がある。オンラインであっても、他者との コミュニケーションが必要である。教室での学びの方が、コミュニケーションを図ることは簡単に、 そして濃密にできる。好きな時に、必要な学びを、自分からできるというオンライン授業のよさを取 り入れつつ、教育そのものの見方を変え、学校教育をアップデートしていく必要性を感じている。 では、オンライン授業に淘汰されない授業とは何であろうか。双方向オンライン授業は、教室で行 う授業に比べ、子どものつぶやきや表情、やり取りなどがタイムラグなしで全てを拾えるわけではな い。学習の中で子ども同士がつながっていくような学びには適していない面もあることが、実践を通 して分かってきた。リアルタイムで子ども同士がつながり、学びを深めていく授業こそが、双方向オ ンライン授業に淘汰されない授業ではないか。 石井(2020)は「できているつもり、 わかっているつもりをゆさぶること、 これは表情の機微やちょっ としたしぐさをキャッチしながら進める方が効果的で、遠隔では難しいでしょう。 」 (p.14)と述べて いる。私たちの感じたオンラインでの授業の問題点は、これからの学校教育を考えていく上で欠かせ ない視点なのではないか。 現在、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まる気配はない。北海道の警戒ステージも再び上がっ てきた。しかし、嘆いていても仕方がない。せっかくできている教室での学びをどう豊かにしていく のか。オンラインを活用しつつも、オンライン授業に淘汰されない授業とはなんなのか、これから私 たちは考え続けていく必要があるのではないかと思う。これから、ますます、先行きの見えない社会 に突入していくが、 子どもがこれから生きていくうえで必要な資質・能力を身に付けていくためにも、 私たちも常に変わり続けていかなければならないと強く思うのである。 [参考・引用文献] ・石井英真(2020) 『未来の学校 ポスト・コロナの公教育のリデザイン』日本標準 ・市川博(2015) 『子どもの姿で探る問題解決学習の学力と授業─実感的なわかり方と基礎・基本─』学文社 ・藤井千春(2010) 『子どもが蘇る問題解決学習の授業原理』明治図書 ・堀江貴文(2020) 『将来の夢なんか、今叶えろ。』実務教育出版(電子書籍版) ・樋渡剛志(2020) 「双方向オンライン授業における実践 社会科3年 わたしたちのまちと市」北海道教育大学附 属札幌小学校(2020) 『双方向オンライン授業実践集』(p.30)https://drive.Google.com/file/d/12wU1xiCvBenMg POv55Xljx4B9qg0NUc9/view(*2020年10月31日筆者確認). [註] 1 筆者はさしあたり、 「問題解決的な学習」を、子どもの切実な問題意識に支えられた追究によって、解決に向け 他者と協働的に考えを深めていく学びの過程、 ととらえている。藤井(2010)、市川(2015)などを参考にしている。 2 使用している教科書は、大石学・小林宏己監修(2020)『小学社会3』教育出版、である。 3 https://www.youtube.com/channel/UCTX9U6gC_ioniE6XFIggILg/videos 各時間は、順に、5月9日、5月 12日、5月14日、5月24日に公開している。 4 たとえば、世界一受けたい授業(https://www.ntv.co.jp/sekaju/articles/428btz3rsapji7zbnl7.html)(*2020年10 月31日筆者確認). 32.

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C :はい。榎本先生、てるちゃんって実践神学を教えていたんだけど、授

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小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場