明るさの継時比較における時間錯誤について
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 2巻 第2号 i Journalof Hokkaido Univers ty ofEducat ionI C)Vo i l t on(Sec .42 ‐2 , No. 平成 4年2月 Feb l l l a ly,1992. 明るさの継時比較 にお ける時間錯誤 について. 久. 世. 問. 淳. 子. 題. 筆者は, これまで視覚一聴覚 間の相互作用研究を行っ てきたが, その相互作用は明る さの継時比 較を通して検討されている. 継時比較とは,「休止時間を間 にはさんでつ ぎつぎに1個ずつ呈示され る 2個, または数個の刺激にお いて そのある特性を比較判断すること」(誠心書房の心理学辞典に ,. よる) である. 明るさの継時比較であれば, 2つの明るさがある時間間隔 ( ISI ) をはさんで呈示さ れ, その2つの明るさを比較することになる. このような継時比較では 同一の刺激を2回呈 示し , ても, 2つの刺激の明るさが 「同じ」 と判断されるとは限らない 実際の刺激値と判断された値と .. の 「偶 然 で はな い 差」 は, 恒 常 誤 差 (cons tanterror )と し て 研 究 さ れ て い る (柿 崎, 1974). 恒常誤 差 と して は, 空 間 錯 誤 (space error)と 時 間 錯 誤 (time error: 以 下 TE と す る) が 知 ら れ て い る. が, 筆者の研究では, 刺激の空間的位 置は同じであったため 空間錯誤よりも TE が問題とさ れ , , TE を含まない条件で, 実験することが求められてきた . TE は古くから知られている恒常誤差で, 1 800年代に Fec r u l rが挙錘実験で見い出している(伊 e 藤, 1969) と いう. TE に は, 正 の 時 間 錯 誤 (pos i ivet imeerror: 以 下 PTE と す る) と 負 の 時 間 t 錯 誤 (negat ivet imee r ror:以下 NTE とする) があり 第1刺激を第2刺激より過大評価する 場. , 合をPTE , 過小評価する場合を NTE と呼んでいる. このような TE は, 重さだ けでなく, 明る さ, 音 の 強 度, 線 分 の 長 さ,.円 の 大 き さ な どに も 見 ら れ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る .. 一般 に, TE はISIによっ て変化するといわれ その変化の様子はp‐関数として知られている , . l 192 ) が行っ た, クリ ック音を用いた音の強さの継時比 3 er( p-関数を求めたものとしては, Kbh 較実験が有名である. Kbh l e rの結果によれば, ISIが3秒以 下と短い場合にはPTE が見ら れるが, ISI を長く していくと 少なくとも1 2秒までは, 次第に NTE が 増 大 して い く. こ の p-関 数 は, 用 , いられる刺激の種類,持続時間,強度,繰り返 し回数によっ て異なることが知られて いる 瀬谷( 19 69 ) . は, K6hl er の いう よ う な 変 化 を 示 す の は音 強 度, 光 の 明 る さ な ど の よ う なintens ive な も の で あ る と し, 線 分 の 長 さ, 円 の 大 き さ, 空 間 距 離 と い っ た extens ive な も の で は, どの ISI で も NTE が 生. じやすいことを指摘している. したがっ て, 明るさの継時比較の場合であれば Kbh l rの p‐関数に e , 近いものが得られることになるが, 感覚間相互作用 研究の基礎研究として 実際に明るさの継時比 , 較の場合に どのような p‐関数が得ら れるか調べておく必要があろう . さらに, Nee ( 丑 l 19 34 )は, この p-関数が実験を繰り返す ことによっ て変化することを指摘し am ( ている. 彼は, 観察を繰り返すことによっ て, 短いISIで見られる PTE が負の方向に変化し 長い , ・ ISIで見られる NTE が正の方向へと変化すること を見い出している 感覚間相互作用 の研究で明 . るさの継時比較を用 いる場合, 1セ ッ ショ ンで実験が終了する ことは考えられな い もし この , . Ne edham の指摘が正しいとすれば, 実験が始まっ た当初の TE と終了する時点 の TE では異なる 141.
(3) . 久 世 淳 子. ことになる. 感覚間相互作用が微量であることから考えて, 実際の実験でのセ ッ ショ ン数 (繰り返 し回数) によって TE がどのように変化するか調べる必要がある. 従来の研究では,p‐関数として検討されてきた TE と1SIの関係であるが,全ての被験者が同じ傾 向 を 示 して いる の で あ ろ う か. 大 屋 ら ( 1987,1988,1989,1990日よ, ブ ッ ク レ ッ ト 法 を 用 い て エ ビ ン. グハウス錯視の検討を行っ ている. これら一連の研究では, 実験方法としては比較的ラフなブック レッ トを用いて, 付加円弧の条件をさまざまに変化させ, 多数回, 多人数のデータ収集が行われて いる. 多人数データの分析においては, 無視することのできない個人差 (一般 に, 付加円の大きさ を小さいものから大きいものへ変化させると, 過大視から過小視へと変化するといわれるが, 付加 0の条件では約半数の被験者で過小視への移行が見られなかっ た) が存在することが指摘 円弧が90 されている. このような個人の錯視量による傾向の違いが,TE 研究においても見られることはない のであろうか. もしあるとすれば, 傾向の違う データを平均して全体の傾向を調べ, なぜ TE が生 じるか検討するよりも, ある程度被験者の傾向の種類を分類し, その上でなぜ TE が生じるかとい ったことを検討する必要があろう. そこで, 本研究では, 感覚間相互作用の基礎研究として, ①明るさの継時比較においてどのよう な p 関数が得られるか, ②繰り返 しによっ て TE が どのよう に変化するか, さらに TE 研究と し て, ③被験者の傾向に違いが見られるかどうかを中心に検討する.. 方 被験者 装置. 法. 心理学専攻生13名 (男子8名, 女子5名). TKK タ キス トス コ ー プ. 刺激 2 2×24皿の透明ガラス板に黒のカ ッティ ングシートを貼り, 標準刺激(SS)と比較刺激(CS) と して, 3 × 3c m(視角:2っ の正方形を切り取り, タキストスコープで透過光呈示する. これら. の刺激の明るさは ND フィ ルターで調節し, 輝度を5‐0 ,6‐5 ,8 ‐ocd/〆の3種類に変化させる.SS の輝度は, 常に6. 5cd/ 1dで, CS には3種類の輝度がラ ンダムに呈示される. 刺激 はSS , CS とも0 .4秒間呈示さ れる. SSと CSのISIは, 1, 2, 4, 8秒の4種類 であ る. 刺激の呈示時間が0.4秒と短いため, 被験者が刺激を中心視しやすいように, 刺激の中心から 上下左右それぞれ7cm(視角:47)離れた位置に目印となる 5cd/可) ,光点(直径1皿以下, 輝度6‐ が持続呈示されている. 手続き 被験者は1 5分間暗順応した後, さらにSSの明るさに5分間順応し,SS に比べて CSの方 が, 「明る,い」 か 「暗い. か, あるいは「同じ」 かを判断するように教示される. 総判断回数は3 (輝 ISI 度)×4 ( )×15(繰り返 し) の1 8 0回である. これらを3セ ッ ショ ンに分けて実験を行っ たた め, 各 被 験 者 は 1 セ ッ シ ョ ン に つ き 6 0回判断することになる. 3種類の輝度条件と4種類のISI条. 件はランダムに呈示され, 30回終わったところで約1 0分間の休憩を挿入した.. 結果と考察 1.. p‐関 数. これまでの研究では, 指標としてD%を用いることが多かったが, 今回は感覚間相互作用研究で 用 いて きた PSE を用いる PSE を求めるには CSが3種類と少ないが, より一般的な指標として用 . い ら れる PSE を選択することにした. 142.
(4) . 明るさの継時比較における時間錯誤について. 1 3名の平均値と標準偏差を示したものが図1である.この図では,標準刺激の明るさ6‐5cd/可を 基準として, それより PSE が大きくなる場合が PTE , 小さくなる場合が NTE となる‐ この結果か l ら,ISIが長 く な る に つ れ て PTE か ら NTE へ と 変 化 し て い る こ と が わ か る.前 述 の Kるh er の 結 果 と比 べる と,TE が 0 に な るI SIに若干の違いが見られる。Kbh l e r では TE が見られなくなるISIが. 3秒以下の短い時間であるのに対し, 今回の結果では4秒を少し越えたところとなっ ている. この ような TE が消失するISIの違いは,使用した刺激の種類や条件の違いと考えられる.グラフの傾向 としては右下がりであり, p-関数としてはよく似た傾向を示しているといえる. また, 感覚間相互作用研究の予備実験という観点から見ると, このような実験条件では, TE が0 に なるI SIを選択するのが適当であろう. したがっ て, これ以後の感覚間相互作用実験では,ISIを. 4秒に設定することとしたい.. . . 2.. 繰り返し. . 今 回の 実 験 は, 3 セ ッ シ ョ ン に 分 か れ て い た. 1 日 1 セ ッ シ ョ ン 行 う の で, 3 回 の 繰 り 返 し 実 験 を行 っ た と 考 え る こ と が で き る. し か し, 1 セ ッ シ ョ ン に つ き 各 CS の 繰 り 返 し が 5 回 と 少 な い た. め, ここでは被験者 ごとの PSE を求めず, 1 3名の結果を1まとめにして扱うことにする. 3回の結果を示したものが図2である. ISIが4秒までは, 3回とも比較的よく似た結果 である が, 8秒では, 繰り返すほ ど NTE が正の方向へ変化 している. Nee証l am の結果と比較し -てみる と,長いISIで NTE が正の方へ変化するという点では同じであるが, 短いISIでは負の方向への変 ( 丑 lam の 実 験 で は, 50 回 の 判 断 か ら な る セ ッ シ ョ ン を 10 回 繰 り 返 し て お り, 化 は見 ら れ な い. Nee. 60回の判断からなるセッ ショ ンを3回繰り返 しただけの今回の実験は繰り返し数が少なく, そのた めに変化が見られないとも考えられるが,8秒では正方向へ変化しており,このような変化はISIが 長 い ほ ど起 こ り や す い と い える.. また, このような繰り返しによる変化を考慮するなら ば, 感覚間相互作用の課題として用いる場 Iは4秒とすべきであろう. 合のISIは4秒以下であろう. 1の結果と合わせて考えると, IS ( ′mう cd 5 8 .. /m2) にd o. n S i e s s o n2. 0. 0 5鑑嘘o n3. 25. の . 25. 2. 4. 5 5 .. 8. 6ec ) .. 携 6 5 . . C S ) ec .. 5 5 .. 図l p‐関数と標準偏差. 図2. 繰り返 しによる p‐関数の変化 143.
(5) . 久 世 淳 子. 3. 被験者の傾向 今回の実験では, 典型的な p‐関数が見られているが, 個々の被験者の結果 (表 1) を見ると 被 , 験者による傾向の違いが認 められる. そこで, 同じような傾向を示す被験者を集めて 分類する , . ISIが2秒までは NTE を示した被験者はほとん どいなかった (のべ2 6回の判断中1回) ため, 4 秒と8秒の時点での TE を基準に分類し た (ウ オード法によるクラスター 分析を用いた) ところ , 被験者1, 2, 4, 1 0 2 3 (第2群) とい , 11(第1群) と, 被験者3, 5, 6, 7, 8, 9, 1 ,1 う2つの群に分 けられた. 群 ごとの PSEの平均を求めたも のが図3 である 第1群は PTE から . NTE への変化が4秒以前で生じているが, 第2群では NTE への変化が見られない 2元配置の分 . 散分析を行ったところ, ISIの効果(F( )=1 3 51 4 67 2 005 )とクラスターの効果(F( 1 )=9 51 160 . , ,P<‐ ‐ , , P<.00 )に有意差が見ら 5 れた. 交互作用は見い出されないことから(F;2 N 1 S 6 ) 2つの群では 5 ‐ , , p-関数の傾向(右下がり)がよく似ているといえる. 2つの群の差は, NTE への移行が生じている か否かで, 第1群はIS14秒の時点 で NTE を示すという Kbh l e rの p一関数と同じ傾向を持つ被験. 表1. 各被験者の PSE 値 (単位:cd/m2 ). 被験者 、s ー. 1秒. 2秒. 4秒. 8秒. 1. 7・179. 6・789. 5・968. 6 ・063. 2. 7.500. 7.433. 5.708. 5.燃ヲ 6. 3. 9.089. 7.235. 6.864. 5.517. 4. 6.720. 6‐ 895. 5.672. 4‐957. 5. 7 .848. 8.079. 6.888. 6 .570. 6. 8.119. 7.348. 7.633. 6.332. 7. 7.578. 7.031. 6.494. 6 .750. 8. 7.968. 7.727. 6.916. 6.368. ( ) cd/m2. 9. 7.413. 7.421. 7.α撹. 6 .588. 10. 7.217. 6.843. 6.395. 4.585. 11. 9.556. 8.225. 6.411. 5.087. 12. 6・582. 6・354. 6・797. 8・593. 13. 7 .587. 7.315. 6.957. 5.685. Z5. の 65. 1. 2. ?.720. 7.284′ 6.595. ( secJ 8. 5 5 .. 図3 平均 ●. 4. 群 ごとの p‐関数. 6.076. 者群であり, 第2群は被験者5, 9, 11に代表されるような NTE を示さない被験者群 である . このように8秒までで NTE を示さない被験者 については, さらにISIを長くする ことによ っ て NTE を示すよう .になるとも考えられるが, 被験者12のよう にISIが長くなるにしたがっ て PTE が大きくなる被験者もおり,NTE を示さない被験者 のいる可能性を否定することはでき ない 被験 . 144.
(6) . 明るさの継時比較における時間錯誤について. 者の傾向という点からいえば,このような NTE を示さない被験者は,その他の継時比較を行っ ても NTE を示 さ な いの か どう か 検 討 す る 必 要 が あ ろ う. そ の 際, i ive な も の の 継 時 比 較 と exten‐ ntens. i s veなものの継時比較を組み合わせるような計画を立てれば, TE の生じる原因を追求する手がか りともなろう. 今回の実験では, 被験者によっ て傾向が異なることが示唆されたが, この結果から TE の生じる 原 因 につ い て 検 討 す る と, い わ ゆ る「セ ッ ト」, あ る い は 順 応 水 準 の 問 題 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る こ. l とになろう. Kじh rの 痕跡濃度水準低下説 (TE が生じるのは第1刺激の痕跡の濃度水準が時間に e ともなっ て低下する) やその修正である Lauenstein の 同 化 説 に 対 す る 反 証 は い く つ か 上 が っ て い るが, このように NTE を示さない被験者の存在もその1つとなる. とはいえ, この2つの群は大屋 ら( 19 ) の過小視を示さない被験者群と示す被験者群と対応するとも考えられる. 彼らは, 過小 89 視と過大視を付加円弧に対する同化と対比への選択という観点から考えており, 「同化」, あるいは 「対比. in(1933) の 考 え 方 を す べ て 否 定 す る こ と も で er や Lauenste 」 を そ の 考 え の 根 底 に 持 つ Kbhi. きない. このような 「同化」 と 「対比」 をそれぞれの被験者がどのように使い分けるかという観点 から考えるならば,TE という1つの現象だけでなく,錯視も含めたさまざまな現象を通じた検討が 必要となるであろう.. 文. 献. 伊藤法瑞 196 8 時間錯誤についての一考察 名古屋大学文学部20周年記念論集, 1 3 5‐14 6 柿崎祐一 197 4 2章 古典的研究の展開 知覚判断 (培風館) 8‐27 ‐ ‐Ze K6h l i ivvergl i i f er t edesSukzes s e chsundde 1 ehl er . 1923 Zur Theor ,VV . F切に左〆.βのsじれ, 4,115一175 . Kreezer G 1 9 8 T h l i l l 3 l ft h f d l ingt imeer t eneuroogca eve o e acor sun ery rors 7 2 g ’ ‘ノ , . ‐ A7 . P卸物〆‐ . ,51 ,18‐43 Lauens in te i io l i i i i feh l z zur e ner Phys t og s chen Theor e des Verg l e ch und der Ze er zα‐ , 0. 1933 Ansat , F切にZ Fo力にZ z . ‐ ,17 ,130‐177 Nee imeer (mam,J ionofcont ion inuedexper imentat Z t rorasafunc z o/ yc ‐ G‐ 1934 Thet . Amgr . ‐ 凡・ ,46 ,558 -567 .. 大屋和夫・後藤悼男・甲村和三・寺本一美・丸山規明・久世淳子 1 987 ブックレット法による幾何学的錯視の研究 ( 1 )-エビングハウス錯視における付加円弧図形の大きさと中心角の影響- 日本心理学会第51回大会発表論文集 . 大屋和夫・後藤悼男・甲村和三・寺本一美・丸山規明・久世淳子・高橋晋也 19 88 ブックレット法による幾何学的 錯視の研究{ 2 )-エビングハウス錯視における個人差の検討- 日本心理学会第5 2回大会発表論文集. 大屋和夫・後藤悼男・甲村和三・寺本一美・丸山規明・久世淳子・高橋晋也 19 89 ブックレット法による幾何学的 錯視の研究( 3 )-エビングハウス錯視における個人差の問題続報- 日本心理学会第53回大会発表論文集‐ 大屋和夫・後藤悼男・甲村和三・寺本一美・丸山規明・久世淳子・高橋晋也 19 90 ブックレット法による幾何学的 錯視の研究( )-エ ビングハウス錯視付加円弧図形の方向の影響- 日本心理学会第54回大会発表論文集‐ 4 瀬谷正敏 19 6 9 知覚の時間的制約 和田他編 感覚知覚心理学ハンドブック (誠心書房)15 8‐ 1 65 .. 〈付記〉 本研究は修士論文の一部をまとめ直したものである.. (助手. 岩見沢分校). 145.
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