音楽科における「音楽文化についての理解」に関する考察
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(2) 釧路論集 −北海道教育大学釧路校研究紀要−第46号(平成26年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.46(2014):153-158. 音楽科における「音楽文化についての理解」に関する考察 小 野 亮 祐 北海道教育大学釧路校音楽教育教室. Study of “the understanding of musical culture” on Music Education in Elementary and secondary School. Ryosuke ONO Department of Musiceducation, Hokkaido University of Education KUSHIRO Campus. 本稿の目的は、現行指導要領の中・高等学校の教科目標に新たに規定された「音楽文化の理解」について、指導要領で の取り扱い、実践研究での取り扱い、教員養成課程用文献における取り扱いの検討を通じて、その現状を検討することに ある。 検討の結果、中・高等学校については、従前から行われている指導内容を「音楽文化の理解」の文言のもとで一つの音 楽科の軸として規定したものであった。つまり、この「音楽文化の理解」という軸から、従前各領域で別々に行われてき たことを有機的に関連付けた指導の可能性があるのである。 ところが、現在「音楽文化の理解」という軸での実践研究はほとんど行われておらず、教員養成課程用文献のなかで、 触れられることがあるが、すべての文献で取り扱われているわけでもなかった。 なかんずく、教科目標に掲げられていない小学校においても「音楽文化の理解」について大きな役割を果たすことが示 唆されている。特に音楽の時間数の少ない小中の協力的な接続・連携を視野に入れた時に、さらに「音楽文化の理解」自 体を実践的な面から考察を深める必要があると考える。. れないが、この「音楽文化への理解」がどのように取り組. はじめに. まれようとしているのかを、ささやかながら本論で考察し. 現行指導要領が告示されて小・中学校はほぼ5年、高等. てみたい。. 学校は3年ほど経った。また実施されてからも、小学校で は4年目、中学校では3年目、高等学校では2年目を迎え. 1,指導要領における「音楽文化の理解」. ている。まだ改訂指導要領への対応は議論の絶えないとい. 1)改善の方針・改定の趣旨・目標. うところかもしれない。今回の音楽科の改訂はマイナー. この文言が明確に現れるのは、中学校の教科目標と高等. チェンジも含めると多岐にわたっているが、目玉はなんと. 学校芸術科音楽の各科目の目標においてである。正しく. いっても「共通事項」の新設だったであろう。これに対し. は、両校種とも「音楽文化の理解を深め(る)」という、. ては、かつて批判の対象となった基礎領域の再興か?とも. フレーズで現れるⅰ。2008年の中教審答申において小・中・. 言われ物議をかもした。. 高等学校段階すべてにいたる改善の基本方針が述べられて. 一方で、本稿で取り扱う「音楽文化への理解」が中学校、. いる。4つ挙げられた改善の基本方針のなかで 「音楽文化」. 高等学校(芸術科音楽)の教科の目標に加わったことも大. に触れているのは4つ目である。そこで述べられているの. きなことであろう。「教科の目標」という教科の根幹に関. は、概ね以下のように考えて良いだろうⅱ。. わる部分であるから、本来これも大きな改訂というべきで. 1,我が国の音楽文化への愛着と他国の音楽文化への. あろう。しかし、詳しくは後述するが、「共通事項」のよ. 尊重。. うに内容の構造を大きく変更するものではなく、また従来. 2,自国の音楽郷土の伝統音楽に対する理解。. 実施されていることであったり、またその枠内で十分に対. 3,国際社会の中での日本人の自覚の育成。. 応出来うるもののように説明され、またそう解釈されたこ. これらの観点から我が国の郷土の伝統音楽の指導を一層. とにより、そう大きな変化とは捉えられていないように思. 充実させることがうたわれている。. われる。. 次に具体的な改善として5つ挙げられた中で、2つの部. まだ、現行指導要領の消化は道半ばというところかもし. 分で「音楽文化」に触れている。概ね以下の2つにまとめ. − 153 −.
(3) 小 野 亮 祐 られるⅲ。. 目標として新設された「芸術文化の理解を深める」につい. ・我が国の伝統文化の学習を充実する観点から、和楽器. ての解説ではⅴ、芸術文化を人間精神の有形無形の相対と. と我が国の伝統的な歌唱指導への重視、くわえて、我. 規定し、理解を深め愛着をもち、我が国並びに諸外国の芸. が国の音楽文化に親しみと愛着を持つ観点から、我が. 術文化を尊重する態度の育成を重視している。理解からさ. 国の自然や四季、文化、日本語の持つ美しさを味わう. らに尊重に踏み込んでいる点は中学校ⅵでも同様である。. 事のできる歌曲を更に取り上げること。. また各科目の目標では、 「音楽I」において若干解説が加. ・学習全体を通じて、音楽文化の多様性を理解する力の. えられているⅶ。そこでは、端的に「高等学校では、中学. 育成を図ること、音環境への関心、音や音楽が生活で. 校音楽科の学習の上に立ち、文化的・歴史的背景などの広. 果たす役割を考えることで、音楽と社会の関わりを実. い視野で音楽に目を向けて、音楽分解の理解を深めていく. 感させること。. ことを目指している」と述べている。また続けて「国際化. 以上のことから、中教審答申では、「音楽文化」の理解. が進んだ現代社会においては、我が国の伝統や文化の中に. のもとで、. 自分自身の拠り所を見出すとともに、異なる文化などに対 しても敬意を払い、世界の人々と共存することが求められ. 1)自国の文化の尊重と理解. ている」とも述べ、ようやく中教審答申での提言「国際社. 2)自他共に存在する音楽文化の多様性. 会の中での日本人の自覚の育成」に直接関わる文言が出て. 3)音楽(音)と社会との関わり. くる。より高度な目標が出てくるものの、具体的なものと しては、我が国の音楽、楽曲の背景といったものの学習に. への指導強化を提言していることがわかる。. 収斂されるものといえよう。. 以上を受けて、中学校の指導要領の改訂の要点ではⅳ、. それでは、教科目標に「音楽文化」についての追加がな. 目標の改善として「音楽文化の理解を深め」ることを教科. かった小学校の教科目標や改訂の要点ではどうだろうか。. 目標に規定したことを挙げている。そこではさらに具体的. 指導要領解説における改定の要点には、特に「音楽文化」. に、. といった文言を用いた項目はない。しかし、改定の要点に あるⅷ歌唱共通教材の充実や、鑑賞教材における我が国の. 1)曲種に応じた発声や和楽器での表現活動. 音楽の充実の2項目については、 中・高等学校における「音. 2)音楽の背景となる歴史・文化と関連付けての鑑賞活. 楽文化の理解」の範疇に含まれるものである。つまり、小. 動. 学校は「我が国の音楽」指導の充実という点で「音楽文化. 3)音によるコミュニケーション活動. の理解」の改訂、重点化の役割を果たしていると行って良 いだろう。. を挙げている。これらは概ね、中教審答申で挙げた3つの 項目に対応するものと考えて良いだろう。. 2)内容. また続く内容の改善の箇所でも、中教審の提言と、目標. では内容の面ではどのように反映されているのであろう. の改善を受けた項目が並んでいるが、とりわけ上記の3つ. か。順に検討を加えてゆきたい。中学校の指導要領の文言. の目標改善の具体例を以下のように挙げている。. 上でこれまで検討してきた部分と重なっているのは、表現. 歌唱共通教材の提示では「我が国のよき音楽文化を世代. 領域における(4)教材選択の観点と、鑑賞領域における. を超えて受け継がれるようにする」と観点的な説明がなさ. (1)内容イ、 ウおよび、 (2)教材選択の観点であると言っ. れているし、我が国の伝統的な歌唱の充実、和楽器を取り. て良いだろう。. 扱う主旨の明確化、また、その他として表現、鑑賞の活動. 表現領域においては、内容面の文言に特に「音楽文化の. を通じた「自己のイメージや思いの伝達、他者の意図への. 理解」に直接関わらせるような特徴は見られない。以下は. 共感」というコミュニケーションの具体例を挙げたり、 「音. 第1学年の表現領域の歌唱についての内容である。. 環境への関心」、「音、音楽が生活に果たす役割」を掲げて. (1)歌唱. いる。これらの例が新しい目標の具体例として挙がってい. ア 歌詞の内容や曲想を感じ取り、表現を工夫して歌. るものの、和楽器については前回の指導要領改訂から必修 とされているし、コミュニケーションについてもグループ. うこと。 イ 曲種に応じた発声により、言葉の特性を活かして. 活動のような場面で行われてきたであろう。歌唱共通教材 についても紆余曲折はあってもかねてから長く続いている. 歌うこと。 ウ 声部の役割や全体の響きを感じ取り、表現を工夫. ものである。鑑賞における音楽の背景学習は程度の差こそ. しながら合わせて演奏すること。. あれなされてきている。つまり、これまですでになされて きた「音楽文化の理解」という活動を改めて明示したとい. どのような楽曲であっても該当するような音楽的な内容. う性格があることは否めないであろう。. 定義がなされていることがわかる。しかし、教材の観点を. 次に高等学校を見てみよう。まず、上位目標の芸術科の. 示した(4)では(第1学年)以下のように「音楽文化の. − 154 −.
(4) 音楽科における「音楽文化についての理解」に関する考察 理解」にかかわることが記されている。. ウ 様々な表現形態による歌唱の特徴を生かし,表現. (4)教材選択の観点. エ 音楽を形づくっている要素を知覚し,それらの働. を工夫して歌うこと。 きを感受して歌うこと。. ア 我が国及び諸外国の様々な音楽のうち、指導の狙 いに適切で、生徒にとって平易で親しみのもてる ものであること。. 4つ示された中でアとウでは、中学校よりもさらに直接. イ 教材選択の観点 . 的に「音楽文化の理解」にかかわる楽曲の背景と、多様性. 我が国で長く親しまれている歌曲のうち、我が. (様々な)に触れている。つまり、中学校よりも表現領域. 国の自然や四季の美しさを感じ取れるもの又は. において「音楽文化の理解」を進めてゆくことが示されて. 我が国の文化や日本語の持つ美しさを味わえる. いるといって良いだろう。器楽ⅹⅱについてもアとウでほぼ. もの。. 同様の表現が見られ、歌唱分野と同じコンセプトであるこ. 民謡、長唄などの我が国の伝統的な歌唱のう. とが伺える。以下、音楽Iの器楽分野の内容からである。. ち、地域や学校、生徒の実態を考慮して、伝統 的な声の特徴を感じ取れるもの。. ア 曲想を楽曲の背景とかかわらせて感じ取り,イ メージをもって演奏すること。. アにおいて、いわゆる音楽文化の多様性を指導することが. ウ 様々な表現形態による器楽の特徴を生かし,表現. ねらわれ、イにおいて特に我が国の音楽文化への重点化が. を工夫して演奏すること。. 示されていることは一目瞭然である。 こうして、 教材によっ て表現領域では「音楽文化への理解」が担保されていると. また、音楽Ⅰの鑑賞領域の内容は以下のとおりである。. 言って良いだろう。その左証に、解説の部分では、内容の 例として 我が国の音楽を例示したり、多様な音楽の取り. ア 声や楽器の音色の特徴と表現上の効果とのかかわ. Ⅸ. 扱いを例示している 。. りを感じ取って鑑賞すること。. 鑑賞領域においては、すでに内容において「音楽文化の. イ 音楽を形づくっている要素を知覚し,それらの働 きを感受して鑑賞すること。. 理解」にかかわる文言が出てきている。第1学年の鑑賞領 域の内容イとウは以下のとおりであるⅩ。. ウ 楽曲の文化的・歴史的背景や,作曲者及び演奏者. イ 音楽の特徴をその背景となる文化・歴史や他の芸. エ 我が国や郷土の伝統音楽の種類とそれぞれの特徴. による表現の特徴を理解して鑑賞すること。 を理解して鑑賞すること。. 術と関連付けて、鑑賞すること。 ウ 我が国の郷土の伝統音楽及びアジア地域の諸民族 の音楽の特徴から音楽の多様性を感じ取り、鑑賞. ウにおいて楽曲の背景が示されていることは、中学校と. すること。. 同じであるが、エにおいては独立して我が国や郷土の伝統 音楽のことのみが記されているのは中学校とは異なってい. 「音楽文化の理解」を構成するなかの、多様性、我が国. る。「音楽文化の理解」のうち、 「我が国の音楽」への重点. の音楽、音楽の背景が示されている。さらに、第2, 3学. 化が特に強調されている部分と言って良いだろう。それで. 年ではウのなかの「アジア地域」の限定が外れ、 「諸外国」. は、「多様性」についてはどうなのだろうか。これについ. となっている。また、 (2) の教材選択の観点と範囲では「…. ては、解説において「 『世界の諸民族の音楽の種類と特徴』. 我が国及び諸外国の様々な音楽のうち、指導の狙いに適切. については、鑑賞の学習を通じて、我が国や諸外国の様々. なものを取り扱う。」としている。ここでも、 「我が国の音. な音楽を教材として取り上げるなかで取り扱うこととし. 楽・郷土の音楽」が強調された上で、諸外国の音楽を取り. た」と述べ、特に指導要領の文言として明示はしないが、. 扱い、音楽の多様性を指導されることが示唆されている。. 多様な音楽の理解を目指すことは前提としていることが明. また、解説には「我が国の音楽文化を尊重する態度」を養. らかである。このことは、「内容の取り扱い」で教材選択. うとあり、理解から一歩進んで「態度」の点にまで踏み込. の観点を示した(7)ⅹⅲにおいて、 「我が国や郷土の伝統音. んでいる。. 楽を含む我が国及び諸外国の様々な音楽から幅広く扱うよ. 高等学校を検討してみよう。音楽Ⅰの表現領域のうち歌. うにする」という部分で担保されていることがわかる。. 唱の指導内容は以下のとおりであるⅹⅰ。. また、同じ「内容の取り扱い」のうち(8)ⅹⅳでは「音 や音楽と生活や社会とのかかわりを考えさせ,音環境への. ア 曲想を歌詞の内容や楽曲の背景とかかわらせて感. 化の理解」のうち「音環境」と「音楽と社会の関わり」に. じ取り,イメージをもって歌うこと。 イ 曲種に応じた発声の特徴を生かし,表現を工夫し て歌うこと。. 関心を高めるよう配慮するものとする。」とあり、 「音楽文 ついてもここで、明示されている。 次に小学校段階の内容について検討をしてみよう。小学. − 155 −.
(5) 小 野 亮 祐 校段階で指導要領上の文言として明示されているのは表現. ていたことが表現においても活かされるように、また音楽. 領域の中で歌唱共通教材の提示と、 鑑賞領域において(2). 文化の尊重という態度にまで踏み込んだものといえる。. の教材選択の領域と観点を示した部分に限られる。後者に. また、楽曲の多様性、楽曲の背景など、それぞれが表現・. ついては以下のとおり(第5・6学年)である。. 鑑賞領域それぞれの領分で分かたれていたものが、今回「音 楽文化の理解」のもとでひとつの軸となったことから、当. (2)ア 和楽器の音楽を含めた我が国の音楽や諸外国. 然この一つの軸の中で関連付けられ系統的に指導がなされ. の音楽など文化とのかかわりを感じ取りやす. るべきであろう。このことは、音楽科で言われ続けた領域. い音楽,人々に長く親しまれている音楽な. 間の横断的指導の大きな柱となりうる。. ど,いろいろな種類の楽曲。 2,「音楽文化の理解」についての現状 「我が国の音楽」をトップにして強調した上で、様々な. 1)「音楽の理解」についての実践研究状況. 種類の音楽を指導することを通して、多様性への理解へと. 従来バラバラに行われてきた指導内容を一つに束ねる音. つなげることが示されていると言って良いだろう。また、. 楽科の大きな軸となった「音楽文化の理解」であるが、そ. 「文化との関わり」という文言からは、「楽曲の背景」の. れ自体について考察がどの程度行われてるのか現状の検討. 指導も示唆されており、少なくともそのことが明確になる. をしてみたい。Ci Niiにおいて検索語として「音楽文化」、. 中学校以上のための準備を行うことが示されているともい. 「理解」と入力し検索すると全部で19件の論文などがヒッ. えよう。他学年においては第5・6学年に比べると限定が. トする。そのうち、教員養成に関わるものとして挙げられ. ⅹⅴ. つくものの、ほぼ主旨は同じだと思われる 。. るのは6つにすぎない(2014年6月16日現在。表1) 。. また、 「指導計画の作成と内容の取り扱い」ⅹⅵ において. しかも、現行指導要領が公示されてからのものは、1件. は、歌唱の教材について以下のように補足がなされて、我. のみである。「歌唱共通教材」や「我が国の音楽」といっ. が国の音楽への重点化が強調されている。. た更に別の検索語を入力すればさらにヒット数も多いかと 思われるが、それだけ新しい音楽科の目標に加えられた 「音. (3)イ 歌唱教材については,共通教材のほか,長い. 楽文化の理解」ということについては検討がなされていな. 間親しまれてきた唱歌,それぞれの地方に伝. い、ないしはそのような形で注目がされていないといえよ. 承されているわらべうたや民謡など日本のう. う。このことから推測されることは、従前どおり、「我が. たを含めて取り上げるようにすること。. 国の音楽」は邦楽器の取り扱いや鑑賞の時間で行うといっ たように、領域にまとまった形で完結することが多いのか. 以上、指導要領および同解説における「音楽文化の理. もしれない。. 解」について検討をしてきた。冒頭に述べたように、教科 目標において明確に「音楽文化の理解」が掲げられている. 2)教員養成における「音楽文化の理解」の取り扱い. のは中・高等学校のみである。しかしながら小学校段階に. ここで、教員養成において「音楽文化の理解」がいかに. 掲げられていないからといって小学校でそれが無視されて. 取り扱われているかを、教員養成課程用の文献から探って. 良いわけではなく、暗示されていることは明らかである。. みたい。幾つかこの類の文献が出ているが、まず中・高等. 3校種すべて同様に言えることは、我が国の音楽への傾斜. 学校用として、 『最新中等科音楽教育法[改訂版] 』音楽之. である。これは従前から言われてきていることであり特に. 友社(2011)と『2012年改訂版中学校・高等学校教職課程. 目新しいことはではないが、「音楽文化の理解」のもとに. 音楽科教育法』教育芸術社(2012)を概観してみたい。『最. 位置づけられたことは新しいことである。段階的に見てゆ. 新中等科音楽教育法[改訂版]』では、目標や指導内容な. くと小学校段階では、我が国の音楽への理解を中心に多様. ど指導要領の解説に係る部分では、これまで本論で見てき. な音楽を知る段階といえよう。中学校段階では、これらを. たものと同様の解説がなされている他、第3部の今日的課. 多様な音楽の価値観として相対的に見てゆく段階とし、高. 題として「1,多様な音楽文化」という項目を掲げて「音. 等学校段階においては更に深く中学校段階の鑑賞で行われ. 楽文化の理解」に関することが取り上げられている。この. 表 ᅗ㻝䠖䛂㡢ᴦᩥ䛃䚸䛂⌮ゎ䛃䛷᳨⣴䛥䜜䛯ㄽᩥ➼ ᤵᴗ䛻䛚䛡䜛㡢ᴦᩥ䛾⌮ゎ䛸䛭䛾ఏ㐩㻙㻙ኴ㰘䞉䛚ᄳᏊᐇ㊶䛾᳨ 㻝 ᑠᓥ㻌ᚊᏊ ウ䜢㏻䛧䛶㻌㻔㡢ᴦᩍ⫱䛸ᩥ㻨≉㞟㻪㻕 㻞 㝆▮㻌⨾ᘺᏊ 㡢ᴦᩥ䛾⌮ゎ䞉ఏ㐩䛸㡢ᴦᩍ⫱㻌㻔㡢ᴦᩍ⫱䛸ᩥ㻨≉㞟㻪㻕 㡢ᴦ⛉ᩍ⫱䛻䛚䛡䜛䛂㒓ᅵ䛾Ẹㅴ䛃䛾ᩍᮦ䛸䛧䛶䛾᭷⏝ᛶ㻌㻦㻌⛅⏣Ẹㅴ 㻟 బᕝ㻌㤾 䜢⣲ᮦ䛸䛧䛯ᤵᴗᐇ㊶䛻䜘䜛⏕ᚐ䛾ኚᐜ䜢ᡭ䛜䛛䜚䛻 㻠 ᆏᮏ㻌┤⨾ 䛥䜎䛦䜎䛺㡢ᴦ䛻ᑐ䛩䜛⌮ゎ䜢῝䜑䜛㡢ᴦ⛉䛾ᣦᑟ ಖ⫱ኈ㣴ᡂ䛻䛚䛡䜛␗ᩥ⌮ゎ䛾ヨ䜏㻌ᵝᘧ䛾␗䛺䜛㡢ᴦᩥ䜢 㻡 㜰⏣㻌㡰Ꮚ 䛻㻌䛭䛾㻝㻌䝨䝹䝅䜰㡢ᴦ⌮ゎ 㡢ᴦᩥ䛾⌮ゎ䜢῝䜑䜛ᤵᴗ䛵䛟䜚䛾᥈✲㻌㻦㻌㻝ᖺ㡢ᴦ䛂᪥ᮏ䛾Ẹㅴ䜢 㻢 ᑠ㔝㻌䛧䛾䜆 ḷ䛳䛶㻘⫈䛔䛶䜟䛚䛖䛃䛾ᤵᴗศᯒ䜢㏻䛧䛶. − 156 −. 㡢ᴦᩍ⫱Ꮫ㻌㻞㻠㻔㻝㻕㻘㻌㼜㻞㻝㻙㻞㻤㻘㻌㻝㻥㻥㻠 㡢ᴦᩍ⫱Ꮫ㻌㻞㻠㻔㻝㻕㻘㻌㼜㻞㻥㻙㻟㻢㻘㻌㻝㻥㻥㻠 ᪥ᮏᩍ⛉ᩍ⫱Ꮫㄅ㻌㻟㻜㻔㻟㻕㻘㻌㻟㻝㻙㻟㻥㻘㻌㻞㻜㻜㻣 㡢ᴦᩥᩍ⫱Ꮫ◊✲⣖せ㻌㻔㻞㻜㻕㻘㻌㻝㻠㻟㻙㻝㻡㻜㻘㻌㻞㻜㻜㻤 ᒱ㜧⪷ᚨᏛᅬᏛ▷ᮇᏛ㒊⣖せ㻌㻠㻝㻘㻌㻣㻡㻙㻤㻡㻘㻌㻞㻜㻜㻥 బ㈡Ꮫᩍ⫱ᐇ㊶◊✲㻌㻔㻟㻜㻕㻘㻌㻞㻢㻣㻙㻞㻣㻤㻘㻌㻞㻜㻝㻟.
(6) 音楽科における「音楽文化についての理解」に関する考察 部分では、①日本の伝統音楽、 ②諸外国(諸民族)の音楽、. 背景とともに理解させることにあった。加えて生活と音楽. ③ポピュラー音楽の3つについて取り扱われている。「多. の関わり、音によるコミュニケーションなどが取り扱われ. 様な音楽文化」という一点で括られてはいるものの、その. ている。. 内実は「音楽文化の理解」における我が国の音楽、音楽の. しかし、それが単なる「日本音楽への重点化」 、「ポピュ. 多様性、生活と音楽の関わりの3点についてまとめて取り. ラー音楽の取り扱い」と単純に指導内容の「足し算」となっ. 扱われて指導をするものとなっている。『2012年改訂版中. ては本来目指していたところは異なってしまうだろう。. 学校・高等学校教職課程音楽科教育法』においては、前者. 「音楽文化の理解」という指導の次元と価値観を持って、. 同様に指導要領の解説部分においては説明があるものの、. 各音楽文化を相対化し理解を深め尊重してゆく態度へと収. 「音楽文化の理解」に関わって独立して取り扱った項目は. 斂されゆくことが望ましい。しかし、それを単なる知識の. 見られない。だが、「第7章 総合的な学習の時間と音楽. 習得としてしまっては、音楽科で行う活動としては欠けて. ⅹⅶ. 科の関わり」 の中で「音楽文化の理解」が、また「第8. いる。必ず鳴り響く音楽との関わりの中で行われてゆくべ. 章 教科の授業以外の音楽活動」の中で「我が国や郷土の. きである。小学校で様々な音楽と知り合い、中学校で鑑賞. 伝統音楽」が取り扱われている。. を中心に相対的に理解を深め、高等学校段階で鑑賞と表現. 小学校については、『最新初等科音楽教育法[改訂版] 』. の中でも結実させる、そのような流れを見た時に、教科目. 音楽之友社(2011)と『2011年改訂版小学校教員養成課程. 標で「音楽文化の理解」がうたわれていない小学校段階の. 音楽科教育法』教育芸術社(2011)を見てみたい。『最新. 役割は大きいはずである。というのも、小学校段階で多く. 初等科音楽教育法[改訂版]』においては、目立った形で. の音楽文化に触れさせておくことは、中学校の少ない時間. 取り扱われているのは、 「第3部 今日的課題」のなかで、. 数で高度な相対的理解を進める大きな助けとなるはずだか. 「1,多様な音楽文化」と題して取り上げた部分である。. らである。場合によってはこのような小中の見通しを持っ. ポピュラー音楽についての項目はないものの、同出版社の. て、明確な役割分担をすることも視野に入れる必要もある. 「中・高等学校版」と同じ編集方針をとっていることが伺. だろう。そのためには、さらに「音楽文化の理解」という. える。また、仔細に見ると「第1章 音楽科の目標」のな. 音楽科の価値観をそれぞれに明確に持ち、深めることが課. かで、 「第8次中学校学習指導要領では、 音楽科の目標に 『音. 題になってくると思われる。. 楽文化の理解を深め』という文言が加わった」ことを指摘 している。またそれに続いて「これを受けて、今後、小学 校でも、文化理解の基礎を培うという視点が要求されるよ. ⅰ . うになるだろう」と、上級校種との接続をにらんだ指摘が なされている. 文部科学省(2008)『中学校指導要領解説音楽編』p.7、 同(2009) 『高等学校学習指導要領解説芸術編』pp.11。. ⅹⅷ. また、芸術科の目標には「芸術文化の理解を深め」と. 。『2011年改訂版小学校教員養成課程音楽. ある。. 科教育法』においては、特に項目を立てて「音楽文化の理 解」についての何らかの言及をしていない。ただ、鑑賞の. ⅱ . 文部科学省(2008)『中学校指導要領解説音楽編』p.3. 指導内容を解説した部分では、「文化理解の意義」と題し. ⅲ . 同上p.4. て、文化理解としての鑑賞の授業のトレンドについて触れ. ⅳ . 同上p.5. ている 。. ⅴ . 同(2009)『高等学校学習指導要領解説芸術編』p.8. 中・高等学校版の指導要領の解説部分で「音楽文化の理. ⅵ . 文部科学省(2008)『中学校指導要領解説音楽編』p.8. 解」が触れられることは当然であるが、具体的に何が取り. ⅶ . 同上p.12. 上げられるかは各文献の編集方針による。教科目標に示さ. ⅷ . 文部科学省(2008)『中学校指導要領解説音楽編』p.5∼. ⅸ . 例えば第1学年(1)のウの解説では以下のようにあ. ⅹⅸ. れていない小学校においても上級校種との接続を見通した り、独立して取り扱われる部分があったことについては、. 6. 小学校教員養成課程においてもこの動向を無視できない状. り、端的に示されている。 「従前は『合唱する』として. 況にあることをわずかながらも示しているものと思われ. いたが今回の改訂で『合わせて歌う』とした。(中略). る。. この事項における歌唱教材は、西洋音楽的な合唱のみ ならず、我が国や郷土の伝統音楽を含む多様な曲種を 取り扱うことが考えられる」. まとめ. ⅹ . 理解」は、最終的には国際化社会を念頭に置いた音楽文化. 文部科学省(2008)『中学校指導要領解説音楽編』p.35 ∼38. 中・高等学校の教科目標に新たに加わった「音楽文化の ⅹⅰ. への尊重という態度に向い、その内実は概ね、我が国の音. 同(2009)『高等学校学習指導要領解説芸術編』p.12∼ 14. 楽への重点化、音楽の多様性への着目であった。その具体. ⅹⅱ. 同上p.14∼17. 的な方策として、和楽器、伝統的歌唱、歌唱共通教材の重. ⅹⅲ. 同上p.25∼26. 点的な取り扱い、他民族の音楽の取り扱いとそれら音楽を. ⅹⅳ. 同上p.26. − 157 −.
(7) 小 野 亮 祐 ⅹⅴ. 第1・2学年「ア 我が国及び諸外国のわらべうたや遊 びうた,行進曲や踊りの音楽など身体反応の快さを感 じ取りやすい音楽,日常の生活に関連して情景を思い 浮かべやすい楽曲」. . 第3・4学年「ア 和楽器の音楽を含めた我が国の音 楽,郷土の音楽,諸外国に伝わる民謡など生活とのか かわりを感じ取りやすい音楽,劇の音楽,人々に長く 親しまれている音楽など,いろいろな種類の楽曲」. ⅹⅵ. 文部科学省(2008)『小学校指導要領解説音楽編』p.72. ⅹⅶ. 石澤眞紀夫編著(2012) 『2012年改訂版中学校・高等学. ⅹⅷ. 初等科音楽教育研究会(2011) 『最新初等科音楽教育法. ⅹⅸ. 有本真紀ほか編著(2011) 『2011年改訂版小学校教員養. 校教職課程音楽科教育法』教育芸術社p.125 [改訂版]』音楽之友社p.10 成課程音楽科教育法』p.45. − 158 −.
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