小学校及び中学校特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題 : 函館市内の特別支援学級担任への調査を通して
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.62,No.1. 平成お年8月 August,2011. 小学校及び中学校特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題. 一画館市内の特別支援学級担任への調査を通して−. 細 谷 一 博 北海道教育大学函館枚障害児臨床教室. TheCurrentSituationandProblemsofExchangeActivitiesand CollaborativeLearninginSpecialNeedsClassatElementary. andJuniorHighSchool :CasesofelementaryandjuniorhighschooIsinHakodateCity. HOSOYA Kazuhiro. DepartmentofSpecialEducation,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究は,北海道函館市内の小学校及び中学校特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題を明 らかにし,交流及び共同学習を推進するための基礎的資料を得ることを目的とした。その結果,交流及び共 同学習の現状として,全ての小学校及び中学校特別支援学級が交流及び共同学習を実施しており,その目的 は,集団生活における社会性が最も多く掲げられていた。さらに,配慮事項として介助員の付き添いが最も 多く行われているが,交流先で個別の支援や課題を設定することは難しいことが明らかとなった。また,交 流及び共同学習の成果と課題では,担任が考えている目標と同様の成果が得られていたが,実施上の課題と して,教師の付き添いや通常学級の児童や教師の理解についての課題が指摘された。今後はこれらの課題を 解決していくための体制整備が求められる。. Ⅰ はじめに. 科学省,2009)にも,交流及び共同学習の名称が 用いられるようになった。交流及び共同学習の目. 我が国における交流教育は,2004年の障害者基. 的は,「相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を. 本法の一部改正に伴い,交流及び共同学習と名称. 育むことを目的とする交流の側面と,教科等のね. が変更され,小学校学習指導要領(文部科学省,. らいの達成を目的とする共同学習の側面があると. 2008)や中学校学習指導要領(文部科学省,2008),. 考えられている。交流及び共同学習とは,このよ. 特別支援学校′ト学部・中学部学習指導要領(文部. うに両方の側面が一体としてあることをより明確. 107.
(3) 細 谷 一 博. に表したものである(全国特別支援教育推進連盟,. 担任が無理なく支援方法を学べる機会を増やして. 2007)」と述べられている。. いくことが重要であると報告している。. 今回の改定に伴い,交流及び共同学習は全ての. 以上のように,小学校及び中学校特別支援学級. 学校において取り組むべき活動に位置付けられ,. で行われている交流及び共同学習の現状を把握す. 特に特別支援学校小学部・中学部学習指導要領. ることは,交流及び共同学習を推進する上で基礎. (文部科学省,2009)においては「計画的・組織. 的な資料となる。さらに,これまで北海道函館市. 的に行う」と明記されたことから,特別支援教育. 内の小学校及び中学校特別支援学級における交流. における交流及び共同学習の重要性を窺うことが. 及び共同学習に関する実態調査は行われていな. できる。. い。実際の教育現場で特別支援学級に在籍してい. さらに,北海道の特別支援教育の在り方につい. る児童生徒がどの様な交流内容で学習を行ってい. て(第2次報告)(特別支援教育在り方検討委員会,. るのか,また特別支援学級担任がどの様な悩みや. 2007)においても,「本道の特別支援学校におけ. 課題を抱えているのかについては明らかにされて. る教育の在り方」と「本道における小・中学校等. いないことから,今後の取り組みに向けて有効な. に在籍している障害のある児童生徒等への個別的. 情報になりうる。. かつ弾力的な指導の在り方」の2か所に交流及び 共同学習の推進が明記され,後者には,交流及び. 共同学習をより一層推進するためには,通常の学 級と特別支援学級の双方の週時程表を見直しなが. 2.目 的 本研究は,北海道函館市内の小学校及び中学校. ら,全ての教科・領域において,交流の接点を見. 特別支援学級の交流及び共同学習の実施状況を把. 出すことが大切であると具体的に記載されてい. 握するとともに,特別支援学級担任が抱える交流. る。. 及び共同学習の問題点を明らかにすることを目的. 以上のことから今後,北海道内においても各教. とする。. 育現場でこれまで以上に交流及び共同学習の充実 に向けた取り組みを進めていく必要がある。 これまでの交流教育を含めた交流及び共同学習. の実態調査をみると,最近では国立特別支援教育 総合研究所(2006)があげられる。この調査では. 3.方 法 1)対 象. 北海道函館市教育委員会が,平成22年5月に公. 交流学習の状況や課題等について,都道府県及び. 開した学級編成表をもとに,特別支援学級(知的. 政令指定都市教育委員会からの推薦を受けた全国. 障害,情緒障害)が設置されている小学校及び中. の盲・聾・養護学校と特殊学級を対象に調査を行. 学校を抽出した。その結果,小学校では35校,中. い,特殊学級における交流及び共同学習について,. 学校では15校に特別支援学級(知的障害,情緒障. 障害種ごとに実施状況,目的・ねらい,成果,課. 害)が設置されており,それぞれの学級担任(小. 題の4項目について報告している。さらに,山本・. 学校知的障害特別支援学級28名,小学校情緒障害. 佐藤(2008)は,特別支援学級担任と通常学級担. 特別支援学級28名,中学校知的障害特別支援学級. 任の双方を対象に,交流及び共同学習の現状調査. 16名,中学校情緒障害特別支援学級9名)を対象. を行った。その結果,交流及び共同学習の目的・. とした。. ねらいについて,特別支援学級側と通常学級側で 共有できることが示唆された。また,特別支援学. 級担任が積極的に通常学級に関わり,モデルとな るような支援方法等を提示することで,通常学級. 108. 2)調査方法. 北海道函館市内の小学校知的障害特別支援学級 と′ト学校情緒障害特別支援学級,中学校知的障害.
(4) 小学校及び中学枚特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題. 特別支援学級と中学校情緒障害特別支援学級の担. 5人以下の学級が37学級(78.7%),6人以上の学. 任を対象に郵送による質問紙調査を行った。調査. 級が7学級(14.9%)と多くの学級が5人以下で構. 期間は2010年7月上旬から約1カ月とし,函館市. 成されていた。さらに,在籍児童1名が12学級. 教育委員会のポストを通して配布し,調査用紙に. (25.5%),2名が9学級(19.1%)あり,両方を合. 返信用の封筒を同封して郵送により回収を行っ. わせると21学級(44.7%)と少人数で構成されてい. た。なお,本稿では小学校知的障害特別支援学級. る学級が半数近く存在していた。また,回答者の. を「/ト知的学級」,小学校情緒障害特別支援学級. 教職年数をみると3年目以下の教員が3名. を「小情緒学級」,中学校知的障害特別支援学級. (6.4%),4∼10年日未満が4名(8.5%),10年以. を「中知的学級」,中学校情緒障害特別支援学級. 上が40名(85.1%)と教職経験が長い教員が多くみ. を「中情緒学級」と示す。. られた。さらに,特別支援学級担任の経験年数で. も,1年目が6名(12.8%),2∼5年目が13名 3)調査内容. 調査項目は国立特別支援教育総合研究所(2006). を参考に全部で13項目(回答者の属性4項目,交 流及び共同学習の内容9項目)とした。具体的な. (27.7%),6∼9年目が4名(8.5%),10年以上 が24名(51.1%)と特別支援学級の経験も長い教員 が半数以上を占めていた。. 中学校特別支援学級においては,在籍生徒数が. 質問項目は,回答者の属性(質問1:担当学級種,. 5人以下の学級が13学級(72.2%),6人以上が3. 質問2:特別支援学級の在籍児童生徒数,質問3. 学級(16.7%)であり,殆どの学級が5人以下の少. :回答者の教職年数,質問4:特別支援学級の担. 人数で構成されていた。また,回答者の教職年数. 任年数),交流及び共同学習の内容(質問5:交. では,3年目以下が1名(6.2%),4∼10年目未. 流及び共同学習の目標,質問6:在籍児童生徒が. 満が2名(12.5%),10年目以上が12名(75%)と7. 行っている交流形態,質問7:交流形態の具体的. 割以上の教員が10年以上の経験をもつ者で構成さ. な内容,質問8:交流及び共同学習の実施におけ. れており,特別支援学級担任の経験年数では,1. る配慮事項,質問9:通常学級教師との情報交換. 年目4名(25%),2∼5年目5名(31.3%),6∼. の頻度,質問10:交流及び共同学習の成果,質問. 9年日3名(18.8%),10年日以上4名(25%)で. 11:交流及び共同学習の課題,質問1Z:その他,. あった。. 質問13:調査結果の開示)についてである。 2)交流及び共同学習に関する項目 (1)交流及び共同学習の目標. 4.結 果 本研究では小知的学級28名,小情緒学級28名,. 小学校特別支援学級担任と中学校特別支援学級 担任が掲げる交流及び共同学習の目標について,. 中知的学級16名,中情緒学級9名の計81名を対象. 上位3項目について回答を求めた結果をFig.1に. に調査用紙を配布した。/ト知的学級は20名. 示す。/ト学校特別支援学級担任は「集団生活にお. (71.4%),小情緒学級は26名(92.9%),中知的学. ける社会性(78.7%)」「人間関係の形成(59.6%)」. 級10名(62.5%),中情緒学級8名(88.9%)から回. 「特別支援学級の児童生徒の理解(36.2%)」であっ. 答が得られ,全体の回収率は66名(81.5%)であっ. た。これに対して中学校特別支援学級担任では「集. た。また,不完全な回答用紙については無効回答. 団生活における社会性(75%)」「人間関係の形成. とはせず,項目毎に有効回答とした。. (56.3%)」「保護者や本人のニーズに応える (50%)」と両者ともに集団生活における社会性や. 1)回答者の属性 ′ト学校特別支援学級においては,在籍児童数が. 人間関係の形成という項目では両者とも半数以上 を占めたが,中学校になると保護者や本人のニー. 109.
(5) 細 谷 一 博 叫学校特別支援学級. その他■6■ lz5・○. _打.丁 ■鮎=榊責1■■. t■■やヰ人¢二「メに慮よも. その他∃㍑ Ⅷ. 特別支脈削琳i。‡3 職責1■■の11生暮のt■=二竺山 人■■■¢■■. □小情緒学級 ■小知的学級. 別. 学力面での向上扁6・き. 学ぶ力の育成 適応能力 集団生活における社会性 瑠. 同じ学校の−■∴1苦・0 0. 20. 40. 60. 80. 牒. 100. 20. 0. 40. 68. 80. Fig.1特別支援学級担任が掲げる交流及び 共同学習の臼標 ズが半数以上を−㌧める結果となった。 (2)交流及び共同学習の実施形態. 現在実施している交流及び共同学習の実施形態 について,小学校特別支援学級においては,日常. 交流(80.9%),行事交流(97.9%),教科交流 (95.7%)といずれの交流も高い割合で実施してい. た。また,中学校特別支援学級では,行事交流. Fig.2−1/ト学枚特別支援学級における日常. 交流の実施内容. その他 ㌶. 傷活■L鮎 軸■. 口中情緒学級 ■中知的学級. 叫. 下校且■■■■■■弧。. 洞 ̄ ̄ ̄m㌦ ■岬■ 州 檜▲. “ M.O. 仙 剛. tの■. 暮襖m l. (93.8%)と教科交流(87.5%)については,高い割. 0. ヱ0. ユ1ユ. 40. Fig.2−2 中学校特別支援学級における口常㈲. 合で実施されているが,口常交流(68.8%)におい. 交流の実施内容. ては,他の交流形態に比べて低い実施率となって いた。また,中学校特別支援学級において交流及. び共同学習を実施していない学級が1学級存在し. が上位の3活動を占めていた。日常交流において. た。実施していない理由として「交流及び共同学. は,障害種に関係なく,休み時間や給食,清掃,. 習を目標の1つにしているが,気持ち(情緒)の. 朝の会などが取り組みやすい内容となっていた。. 安定にまで至っておらず実施していない」との記. また,中知的学級においては,「休み時間(50%),. 載があった。. 部活動(50%)」で最も多く,「朝の会,給食,帰. (3)交流及び共同学習の実施内容. りの会,学級活動(40%)」であった。さらに,中. 各学級に在籍する児童生徒が実際に行っている. 情緒学級においては,「登校,朝の会,給食,休. 交流及び共同学習の具体的な活動内容と学年別の. み時間(33.3%)」「帰りの会,清掃,学級活動,. 参加人数について回答を求めた。なお,本稿では. 部活動(16.7%)」と日常交流の内容が分散してい. 学年毎の参加人数を算出するのではなく,特別支. た。. 援学級に在籍する児童生徒の交流参加内容として. ② 行事交流における具体的な実施内容. 算出した。. 小知的学級においては,「学校行事(90%)」「児. ① 日常交流における具体的な実施内容. 童会行事(80%)」「クラブ活動(60%)」であり,. 小学校特別支援学級における日常交流の実施内. 小情緒学級においては,「学校行事(100%」「児童. 容をFig.2−1,中学校特別支援学級における日常. 会行事(88.5%)」「クラブ活動(73.1%)」「その他. 交流の実施内容をFig.2−2に示す。小知的学級に. (7.7%)」であった。その他の内容として「特別. おいては,「休み時問(80%)」「給食(75%)」「朝. 支援学級主体の学年交流」が記述されていた。中. の会(65%)」,小情緒学級においては「給食. 知的学級においては,「学校行事,生徒会行事と. (73.1%)」「休み時問(65.4%)」「清掃(53.8%)」. もに100%」であり,中情緒学級においては「学. 110. 100. (瑚. (%).
(6) 小学校及び中学枚特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題. 校行事,生徒会行事ともに83.3%」であった。行. 音楽や保健体育,技術家庭といった芸能教科にお. 事交流においては,小学校,中学校ともに障害別. ける交流及び共同学習の実施が,学級種別に関係. に関係なく,高い実施率であることが分かった。. なく高い割合を示していた。. ③ 教科交流における具体的な実施内容. (4)交流及び共同学習の実施における配慮事項. 小学校特別支援学級における教科交流の実施内. 交流及び共同学習の配慮事項をFig.4に示す。. 容をFig.3−1,中学校特別支援学級における教科. その結果,特別支援学級担任又は介助員の付き添. 交流の実施内容をFig.3−2に示す。/ト知的学級で. いが小学校特別支援学級(76.6%),中学校特別支. 多く行われている教科として「体育,音楽(80%)」. 援学級(86.7%)と最も多い配慮事項としてあげら. れており,また小学校特別支援学級では「交流先. 「図工(60%)」「総合,外国語(40%)」であったが, 小情緒学級では「体育(88.5%)」「音楽(73.1%)」. で個別の支援(51.1%)」が次に多かったが,中学. 校特別支援学級では,交流先で個別の支援. 「生活,図工,特別活動(42.3%)」であった。ま た,中学校特別支援学級においては,中知的学級. (26.7%)と低い結果であった。「交流先で個別の. で「音楽,保健体育,技術家庭(60%)」「美術,. 課題」は,小学校特別支援学級(4.3%)では見ら. 道徳,総合(50%)」であり,中情緒学級で「音楽. れたが,中学校特別支援学級では行われていない. (66.7%)」「美術,保健体育,技術家庭,特別活. ことが明らかとなった。その他として小学校特別. 動(50%)」であった。. 支援学級では「児童の実態について交流学級担任 に説明している。付き添いができない日には放課. 以上のことから,小学校特別支援学級において. 後に様子を聞く」「交流級と相談をしながら他の. は,体育や音楽,中学校特別支援学級においては. 児童と同様に行っている。学習についてはできる 動 活 別. 限り特別支援学級の教員が入るようにしている」. 42.9. +lつ■q. 鉱 道. 特. 精 国. 外. 合 総. ⊥「鮎 +. □小情緒学級 ■小知的学級. 00,0 lつ可1. 3M. 面を設定している。無理はさせないようにしてい. 育 体 +11E▲. 350. る」と記載されていた。また,中学校特別支援学. 虐 ‡ ■■■■■■■■■■■■■■■■■. 「. ▲)1. 6M. 工 図 業 書. 5. +lつRq. 着 生. 】50. 級においては「主担任の教員と情報交換をしなが. 423. ら,必要に応じてT・Tで入っていたり,本人の. 385. 利 敵 理 算. 1.  ̄「け7+m. 自立を促すために1人で行動させて,途中,見に. ■■■10月 ■m. 金 持 社 国. 20. O. 「授業の目標や学習内容を事前に確認し,交流場. 40. 60. 80. 100. 行ったりと教科の単元や学習内容,活動,本人の. (瑚. Fig.3−1/ト学枚特別支援学級における教科. 体調などによって変わる」「教科交流では特別支. 交流の実施内容. 援学級の教員が付き添っていない。放課後や長期 休業中に特別支援学級の教員が補習を行ってい. 別. 動 活. る」との記載があった。. 合 億 総 遭 語 虐 国 ま. 外 術 健 技 保. 口中情緒学級 ■中知的学級. その他. 育 術 体 美. 特になし 交流先で個別の課題. 糞 科 音 理. lilllm i ;。、。. 交流先で個別の支援. 学 会 数 社. l−1lm. 介助長の付き添い. 油0. 話 国. 0. 20. 4D. 60. 88. 1()0 (%). Fig.3−2 巾学校特別支援学級における教科 交流の実施内容. O. 20. 40. 60. 8D 100. F弓g.4 交流及び共同学習の実施における配(%】 慮事項. 111.
(7) 細 谷 一 博. いる成果として「集団生活における社会性」や「人. (5)通常学級担任との情報交換の頻度. 間関係の形成」「異なる環境下での適応能力」等. 交流及び共同学習に関する情報交換の頻度を Fig.5に示す。/ト学校特別支援学級では「必要に. があげられる。. 応じて実施」が59.6%,中学校特別支援学級で. (7)交流及び共同学習の課題. 特別支援学級教師が抱えている交流及び共同学. 73.3%と高い割合で実施していた。次に「毎日実 施」が小学校特別支援学級で31.9%,中学校特別. 習の課題をFig.7に示す。/ト学校特別支援学級教. 支援学級で33.3%であった。/ト学校特別支援学級. 師は,「特別支援学級担任の付き添い(60%)」「特. においては,週1回実施している学級が21.3%. 別支援学級に残る児童生徒の問題(44.4%)」「通. あったが,中学校特別支援学級ではみられなかっ. 常学級の児童生徒の理解(42.2%)」が上位を占め. た。. ていた。また,中学校特別支援学級教師は「その 他(40%)」「通常学級の受け入れ態勢,通常学級 の児童生徒の理解(33.3%)」であった。中学校特. 未実施. 別支援学級のその他にあげられていた課題として. 必要に応じて実施. 「/ト学校との連携,保護者の認識」「具体的な交. 学期1回実施 月1回実施. 流計画等の作成が難しい」「生徒の実態と交流内. 遇1国夫施. 容が必ずしも合わないが,学級集団として交流を. 毎日実施. させている場合がある」「特に困ることはない」. O. 20. 40. 60. 80100. と記載されていた。. Fig.5 通常学級担任との情報交換の頻度(叫 (6)交流及び共同学習の成果. その他_. 小学校及び中学校特別支援学級の双方の教員が. J. 40・0叫学校特別支援学級. ■小学校特別支援学級. 特別支援学級の全員が実施できない iま㌣ 特別支援学級担任の付き添い. 成果としてあげているものをFig.6に示す。/ト学. l267 60.0. 安全確保・緊急時の対応 ■■ヱ○,○ O、0. 校特別支援学級では,「集団生活における社会性. 特別支援学級lこ残る児i生徒の間糧. (74.5%)」,次に「人間関係の形成(48.9%)」,「異.  ̄「m 仙. 通常学級の児童生徒の理解. なる環境下での適応能力(4Z.6%)」であった。中. 座jm. ii妻7. 通常学級教師の理解. iiiiト. 学校特別支援学級においては「集団生活における. 通常学級の受け入れ態勢. 社会性(73.3%)」,次に「同じ学級の一員,異な. 0204060. 80. 100 (瑚. Fig.7 交流及び共同学習の課題. る環境下での適応能力,人間関係の形成,保護者 や本人のニーズに応答(46.7%)」であった。/ト学 校及び中学校を通して比較的高い割合で共通して. (8)交流及び共同学習に対する意見や感想. 交流及び共同学習に関する意見や感想を自由記 その他i.…・7. 口中学校特別支援学級 36.246・7 ■小学校特別支援学級. 保護者や本人のニーズに応答 特別支援学級の理解 0.0 l2.1 特別支援学級児童の理解. 意見が得られた。得られた意見をカテゴリー別に 分類し整理を行った結果,「交流及び共同学習に. 皿㌦.。. 人間関係の形成 学力面での向上. 述で回答を求めた結果,25名の教員から39項目の. 9.烏4 7.64. 対する感想(11件)」「通常学級児童及び教師の理. 0.0. ■4.ユ iii指.4. 解に関する内容(8件)」「交流及び共同学習にお. 学ぶ力の育成. 異なる環境下での適応能力. 46.7. 5.47 3.I:7. 同じ学級の一員 0. に対する課題(17件)」の4つに分類することがで. 46.7 34.0. 20. 40. 60. 80. きた。具体的な記述内容として,交流及び共同学. 100. Fig.6 交流及び共同学習の成果. 112. ける児童生徒の様子(3件)」「交流及び共同学習. 42.6. 集団生活における社会性. (叫. 習に対する感想では「交流及び共同学習では,個.
(8) 小学校及び中学枚特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題. 別の学習だけでは付けられない力が付けられると. 思います,社会に出ていろんな人がいる事を小さ. 1)交流及び共同学習の現状. 交流及び共同学習の目標について,小学校及び. い頃から学んでいくことが必要(大事)だと思う,. 中学校特別支援学級では「集団生活における社会. 共に学ぶことでたくさんの成果があると感じてい. 性」が最も多く掲げられており,次に「人間関係. ます」等が記載されていた。また,交流及び共同. の形成」であった。これに対して「学ぶ力の育成」. 学習における児童生徒の様子では,「児童は交流. 「学力面での向上」を目標に掲げているのは低い. をすることに大変意欲的かつ交流そのものをとて. といえる。交流及び共同学習は,豊かな人間性を. も楽しみにしている様子が見られる,“横のモデ. 育むことを目的とする交流の側面と,教科等のね. ルになる子をみてまねる’’それが些細なことでも. らいの達成を目的とする共同学習の側面がある. 積み重なり,定着していると日々思います」等が. (特別支援学校学習指導要領解説,2009)と述べ. 記載されていた。さらに,交流及び共同学習に対. られており,これらの結果は交流の側面に焦点を. する課題では,「人的不足によって交流学習が十. 当てた目標と捉える辛ができる。交流及び共同学. 分に実施できないことがある,児童数の増加によ. 習が交流の側面と共同学習の側面を一体的に捉え. り交流に行くことに対して課題が増えてきてい. ていく必要があることから,今後は共同学習の側. る,お客様的存在にならないようにしていきたい,. 面に焦点を当てた目標設定について検討していく. 教員数・支援員数が十分でないと効果的な実施は. 必要がある。. できない,1人では参加できない児童が多いため,. 次に交流及び共同学習の実施状況について,小. 付き添いができない時は不参加となってしまう」. 学校特別支援学級で日常交流80.9%,行事交流. 等が記載されており,その中でも,6件が交流及. 97.9%,教科交流95.7%であり,中学校特別支援. び共同学習の実施に伴う付き添いの問題であっ. 学級では行事交流93.8%,教科交流87.5%,日常. た。最後に通常学級児童及び教師の理解に関する. 交流68.8%といずれの交流形態も高い実施率であ. 内容では,「通常学級の教師の配慮によって,学. るといえる。また,具体的な交流内容として,小. 級の児童の変容(受容・理解)が大きく変わる,. 知的学級の日常交流では「休み時間,給食,朝の. 通常学級の担任の考え(学級経営の仕方)で交流. 会」,小情緒学級では「給食,休み時間,清掃」. 及び共同学習はかなり違ってくると感じている,. での実施率が高いのに対して,中知的学級の日常. 通常学級担任の理解によって,参加の仕方が変. 交流では「部活動,休み時間」,中情緒学級では「登. わってくる,我が校は生徒同士の理解や教師側の. 校,朝の会,給食,休み時間」での実施率が高い. 協力体制や理解がとても良いので現在の方法を維. といえる。日常生活を一緒にする交流は,最も基. 持できているが,教師側に1人でも理解が得られ. 礎的な交流である。子ども同士が触れ合う機会が. なければ,難しいと思われる」等の記載がみられ. 多いし,子どもの自主的な活動が多いので,親密. た。. さや相互理解が深まりやすい(精神薄弱教育実践 講座刊行会,1994)。この意味でも本調査結果で. 5.考 察 本研究は,北海道函館市内の小学校特別支援学. 多く行われていた休み時間や給食などの日常交流 は,交流及び共同学習のねらいにある「子どもの 経験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊か. 級と中学校特別支援学級の交流及び共同学習の実. な人間性を育むこと」に直接的につながっていく. 施状況を把握するとともに,特別支援学級担任が. 取り組みと考えられる。次に,行事交流では,小. 抱える交流及び共同学習の問題点を明らかにする. 学校及び中学校特別支援学級において,いずれの. 事を目的とした。. 交流も高い割合で実施されていることから,特別 支援学級の児童生徒が比較的参加しやすい交流形. 113.
(9) 細 谷 一 博. 態といえる。さらに,教科交流について小学校特. 別支援学級では,体育や図画工作,音楽,中学校. 2)交流及び共同学習の成果と課題. 交流及び共同学習の成果として,集団生活にお. 特別支援学級においても音楽や保健体育,技術家. ける社会性や人間関係の形成,保護者や本人の. 庭などの芸能教科に集中しており,本地域におい. ニーズ,異なる環境下での適応能力があげられて. ても交流活動を展開しやすい教科であることが明. いた。これらの成果は,交流及び共同学習の目標. らかとなった。しかし注目すべき点は,小学校及. (Fig.1)とほぼ同様の傾向が見られ,特別支援. び中学校特別支援学級における外国語における交. 学級担任が考えている目標に沿った成果があるこ. 流が比較的高い結果であった。/ト学校学習指導要. とが明らかとなった。しかしながら,交流及び共. 領(文部科学省,2008)においても,新しく小学. 同学習は交流の側面と共同学習の側面がある(全. 校で外国語を実施することが定められ,小学生に. 国特別支援教育推進連盟,2007)とされているが,. とっては全員が初めての学習内容であることか. 本結果で得られた成果の多くは,社会性や人間関. ら,学習のスタートが同じである外国語における. 係の形成が中心となっており,交流及び共同学習. 教科交流は,特別支援学級在籍児童における1つ. における交流の側面と捉える辛ができる。今後は. の交流教科として期待できると考えられる。. 交流及び共同学習の共同学習の側面に焦点を当て. 交流及び共同学習の実施における配慮事項につ. た交流及び共同学習の在り方について検討が必要. いて,小学校及び中学校特別支援学級ともに「介. である。また,注目すべき点は,交流及び共同学. 助員の付き添い」が最も多く行われていた。しか. 習の目標と成果に「保護者や本人のニーズに応え. しながら,小学校特別支援学級で個別の支援が半. る」が比較的高い割合であげられている。交流及. 数以上で実施されているが,中学校での交流先で. び共同学習の実施においては,子ども自身の意見. 個別の支援や小・中学校での個別の課題は低い結. を交流の形態や継続の可否を判断する材料として. 果であった。このことから,特別支援学級の児童. 利用していくことが,子どもが主体的に交流教育. 生徒が通常学級での学習を行う際に個別に支援を. に参加できる方法を探る手段の1つである(細. 行うことや課題を出すことは難しい現状であっ. 谷・大庭,2001b)と指摘されており,本結果で. た。また,配慮事項は特になしと回答している学. 得られた本人のニーズに応える成果は,交流及び. 校も数校存在した。しかしながら,その他の記載. 共同学習を継続していく上で重要なことである。. にみられるように,参加している児童生徒への直. その一方で,特殊学級の児童は交流に行くことを. 接的な配慮ではなく,教師間の情報交換や情報提. 必ずしも喜んでいない。中学校においてその傾向. 供などが行われている例もある。実際にFig.5に. が強い(関戸・岡島,2000)との指摘もあること. 見られるように,通常学級担任との情報交換の頻. から,本人のニーズを交流活動に反映させる場合. 度では,回答者全員が何らかの形で情報交換を. は,その手続きも含めで慎重に行う必要がある。. 行っていることが明らかとなった。なかでも,必. さらに,交流及び共同学習の課題として,小学. 要に応じて実施が小・中学校ともに高い割合で実. 校特別支援学級では教師の付き添いが最も多く課. 施されており,毎日実施している学校も小・中と. 題としてあげられていた。交流及び共同学習に対. もに3割以上であった。本調査では,具体的な情. する意見や感想にも人的不足や付き添いの課題が. 報交換の内容については把握していないが,日々. 記述されており,特に小学校特別支援学級の交流. の子どもの姿や授業の目的や内容,それらに応じ. 及び共同学習の最も大きな課題となっていること. た手立てなど,関係する教師間で,教師同士が連. が明らかとなった。今後,交流及び共同学習がま. 絡を密にとることが不可欠である(宮脇・阿部,. すます推進されることから,たとえば学校支援ボ. 2009)。. ランティア(文部科学省,2007)の役割として位 置付けるなど,交流及び共同学習を推進するため. 114.
(10) 小学校及び中学枚特別支援学級における交流及び共同学習の現状と課題. の体制整備が求められる。 また,通常学級児童の理解についても,小学校. 特別支援学級において4割を超える教師が課題と 回答しており,さらに,通常学級の受け入れ態勢. の課題も指摘されていることから,特別支援学級 の児童生徒が交流を行う先の学級体制に課題意識 をもっていると考えられる。交流及び共同学習を 行う際には,両者に焦点を当てた実施が必要であ り(細谷・大庭,2001a),意義のある交流教育の 実施には,担任同士の十分な連携,指導方法等の. 研修の充実,学校全体における支援体制の整備や. 7)文部科学省初等中等教育局特別支援教育課(2007) 特別支援教育関係ボランティア活用事例集. 8)文部科学省(2008)小学校学習指導要領. 9)文部科学省(2008)中学校学習指導要領. 10)文部科学省(2009)特別支援学校小学部・中学部学 習指導要領. 11)文部科学省(2009)特別支援学校学習指導要領解説. 12)関戸英紀・岡島育雄(2000)小・中学校における交. 流教育の現状と課題一横浜市立小・中学校特殊学級担 任への意識調査を適して−.横浜国立大学教育人間科 学部教育実践研究指導センター紀要,16,67−80. 13)特別支援教育在り方検討委員会(2007)北海道の特 別支援教育の在り方について(第2次報告). 14)山本亜紀子・佐藤慎二(2008)特別支援学級に埼関. 人的配置等の環境整備が必要である(吉田・佐久. する児童・生徒の交流及び共同学習に関する調査時. 間,2008)。しかしながら,交流及び共同学習に. 別支援学級担任と通常学級担任を対象として−.植草. 対する意見や感想に交流及び共同学習に参加して. 学園短期大学紀要,9,63−75.. いる児童生徒の楽しんでいる様子も記載されてい. 15)吉田恵美子・佐久間(2008)小学校における交流教. 育に関する研究一教員及び保護者へのアンケート調査. ることから,特別支援学級に在籍する児童生徒に. を通して−.宇都宮大学教育学部教育実践総合センター. とって,交流及び共同学習はその目標にもある人. 紀要,31,325−332.. 間関係の育成や社会性といった特別支援学級では 経験することのできない貴重な学習の機会が存在. 16)全国特別支援教育推進連盟(2007)よりよい理解の ために 交流及び共同学習事例集.ジアース教育新社.. する。交流及び共同学習を教育活動として深めて いくためには,その活動に参加する者同士の相互 理解の促進が不可欠である(久保山,2007)。. 付 記 本研究における調査は,北海道教育大学学長裁 量経費により補助を受けた。. 引用文献 1)細谷一博・大庭重治(2001a)交流教育の変遷と今日. (函館校准教授). における実践的課題一時殊学級と通常の学級を中心に −.上越教育大学障害児教育実践センター紀要,7, 9−16.. 2)細谷一博・大庭塵治(2001b)小学校特殊学級に在籍 する児童を対象とした教科交流(体育)の実施形態に 関する試論.特殊教育学研究,38(4),21−28. 3)国立特別支援教育総合研究所(2006)「交流及び共同 学習」に関する調査研究. 4)久保山茂樹(2007)交流及び共同学習の現状と課題 ∼平成17年度 交流及び共同学習に関する調査研究の. 結果から∼.特別支援教育,25,10−15. 5)囲澤賢治(1994)精神薄弱教育実践講座CROIRE: 交流教育.㈱ニチブン. 6)宮脇恭子・阿部美穂子(2009)交流及び共同学習の. 実践における教師の工夫−T市小学校教師へのアン ケート調査から−.とやま特別支援教育学年報,3, 31−39.. 115.
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