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「小学校外国語活動における協働学習を通じた『コミュニケーション能力の素地』の育成」

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(1)平成22年度 学位論文.        小学校外国語活動における 協働学習を通じた「コミュニケーション能力の素地」の育成. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科     教科・領域教育学専攻 言語系コース. MO9139D 四 方 智 子.

(2) 謝辞.  本研究の推進および論文の執筆にあたり,多くの方々にご指導,ご協力いただ きましたことを心より感謝申し上げます。.  主任指導教員並びに指導教員であります兵庫教育大学准教授今井裕之先生には, 2年間にわたり温かくご指導,ご助言いただきました。研究とは何か,研究者とし ての視点とはどのようなものかということから,研究の進め方,論文としてのまと. め方まで丁寧にご指導いただき,未熟な私の研究を導いてくださいました。実践 者としての立場でしか授業をとらえることができなかった私に,研究することの 楽しさを教えてくださったこと,そして,理論との結びつきの中で実践していく. ことの大切さにも気づかせてくださったことを深く感謝しています。いつもくじ けそうになる私を励ましてくださり,悩む私の背中を押してくださった先生のご 配慮とご指導があったからこそ,この論文を完成させることができました。心から お礼申し上げます。.  言語系英語コースの先生方におかれましても,2年間を通して,様々な場面に おいて,適切なご指導,ご助言を賜りましたことを深く感謝申し上げます。.  そして,私の研究を支えてくださり,本研究実践にあたりまして,多大なご理 解とご協力をいただきました兵庫教育大学附属小学校の諸先生方,子どもたちに,. 深く感謝いたします。これまでの実践を改めて見つめ直し,小学校における外国語. 活動の展望を見出す機会を与えてくださいました。本当にありがとうございまし た。.  また,大学院における貴重な研究の機会を与えてくださいました兵庫教育大学,. 兵庫教育大学附属小学校,京都市教育委員会に深く感謝の意を表します。.  同じ今井ゼミ生として励まし合い,学び合った仲間である紅麗さん,伊藤祐子 さん,沖田真理子さん,竹内恵理子さん,Bemie Tapasさん,檜垣倫子さんには,. 研究を深める貴重なご意見を賜り,多くの刺激をいただきました。本当にありが とうございました。また,共に学んだ大学院生のみなさんと,現職校種や年代・ 国籍を超えて研究や教育について語り合ったことも,視野を広げ,研究を進める.

(3) ”11. ことにつながったと,深く感謝しております。みなさんのおかげで私の大学院生 活はとても有意義なものになりました。.  多くの方々のおかげで,本論文を作成することができました。2年間にわたる 大学院生活で得た多くの学びを,教育実践の現場に還元できるように,研鐙を積 んでまいります。本当にありがとうございました。.                               2011年1月                               四方 智子.

(4) iii. 要旨.  2008(平成20)年3.月に改訂された学習指導要領によると,外国語活動の目標 は,「外国語活動を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコ. ミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表 現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。」と示されてい る。つまり,「コミュニケーション能力の素地」を育成するために,様々な活動を. 通して,子どもが体験的にその素地を体得することをねらいとしている。したが って,スキルを身につけさせることを直接のねらいとするものではなく,小学校 段階にふさわしい外国語でのコミュニケーション活動を行うことが,中学校の学 習指導要領で目標としている4技能の向上を図りながら「コミュニケーション能 力の基礎」を育成することにもつながると考えられている。しかし,母語による. コミュニケーションとは異なり,自分の言いたい内容が英語ではどのように表現 されるのか,という母語と英語との置き換え,つまり言葉をコミュニケーション. のための記号としてとらえる面が多く,子どもたちが口をつぐんでしまう場面が 見られる。.  そこで,外国語活動の目標である「コミュニケv一一一一・ション能力の素地」を育成す. るために,他者との相互作用を軸とした英語使用につながる協働学習を授業の中 に組み込むことを考えた。.  まず,先行研究から外国語活動におけるコミュニケーション能力についての理 論的考察を行った。スキルの向上を第一義的要素とするのではなく,日本語によ るやりとりでは経験できないコミュニケーションの楽しさ,大切さを,様々な体 験を通して実感させることが外国語活動の主目的であり,他者とのかかわりの中 で,言葉をわかりたいと思うことや言葉を使いたいと思うこと,そのような経験 を通して,互いに気もちが通じ合えたときの喜びを感じることができるような授 業づくりを行うことが,小学校外国語活動における積極的なコミュニケーション への態度を生み出す要素になることが明らかとなった。. 次に,協働学習における学びとその方法についての理論的考察を行った。協働学.

(5) iV. 習の利点は,自身の理解が深化すること,利用可能な知識が増えること,自 己の思考のモニタリングができること,グループ意識が高まることであり, 協働する主体同士の対等を前提としたかかわりのプロセスが発展し,やがては共 有の創造を生み出すことにつながることが定義された。.  以上のことから,協働学習の利点をいかした学習環境をつくることが,外国語 活動を通して「コミュニケーション能力の素地」を養うための手立てとして適し ているのではないかと考え,協働学習の意義を検討していくこととした。具体的 には,学習経験の差がある3年生と5年生の異学年間における協働学習を行い, その中で見出された学び合う子どもの姿を社会文化的アプローチの視点から理論 的に分析することを目的とした。.  まず,単元全体における子どもの学びの様子を概観することを目的として,単. 元全体における3年生,5年生それぞれの活動の後に子どもが書いた振り返りカ ードの数値を分析し,考察した。数値は2種類あり,1つ目は,3段階による項目 別の振り返りの平均値,2つ目は,自由記述欄に書かれた友だちへの言及数であ る。その結果から,3年生も,5年生も,協働学習時に積極性や他者意識に伸びが. 見られ,英語を通して,友だちとかかわろうとしたり,友だちのことを理解しよ うとしたりしている様子が明らかとなった。次に,振り返りカードから示された. 数値の具体を明らかにすることを目的として,実際の授業に焦点を当て,授業に おける子どもの発話記録や,同僚教師による事後検討会の談話記録,振り返りカ ードへの自由記述め内容の分析をし,考察した。その結果から,5つの要素が浮 かんできた。1つ目は,コミュニケーションへの積極的な態度である。振り返り カードから,友だちと一緒に積極的に活動することの楽しさに触れている様子が みとれ,友だちと協働することが,自分に役立っことであるということを経験す ることによって,友だちと学び合うことが大切であるということを感じていると. とらえることができた。2つ目は友だちの姿から学ぶ互恵的な関係である。3年生. が5年生に憧れを抱いたり目指す姿を具体的に理解したりしている様子,5年生 が3年生の英語をしっかりと聞こうと表情などにも注意を払おうとする様子など が振り返りカードや発話記録からみとれ,友だちからの学びをもとにして,自分.

(6) V. 自身の学びを見つめ直していると捉えることができた。3つ目は援助を求めるこ とができる雰囲気や関係である。発話記録や,授業観察者である同僚教師の言葉 から,3年生が自分のカを発揮しているところに,5年生が援助しながらコミュニ. ケーションを図り,そのことによって5年生もカを発揮している姿がみとれ,相 手を意識したコミュニケv・一ションが活性化されていると捉えることができた。4. つ目は対話のつながりである。発話記録から,宛名性をもった発話の重なりが起 こっている姿がみとれ,活動の中で,英語によるやりとりが連続し,対話につな. がりが見られることが明らかとなった。5つ目は,創造性の表出である。振り返 りカードや発話記録,同僚教師の言葉から,自分なりの新たな方法で表現してみ たいという姿がみとれ,対等で互恵的な関係を築く中で,創造性の高まりが見ら れることが明らかとなった。.  これらのことから,3年生,5年生各々が,他者との関係性に促されて,活動の 中で積極的に英語を使ってコミュニケーションを図っていることがデータから明 らかになった。.  以上のことから,外国語活動における「コミュニケーション能力の素地」の育 成を目指した協働学習の意義について考察した。.

(7) vi. 目次. 謝辞........._........。_._....9......._.ρ.....。.._........_._...._..........._....._..       .i. 要旨______.______._____._.______.._._       _.__hi 目次______._____._.______.______.______.      ..vi 図の一覧._.___..._._____..._____..___.___.______  ..____而 はじめに.______.______....._____.____..__の_..___..     .1. 第1章 研究の背景  1.1 小学校外国語活動導入の背景...............,................       ..3.  1.2 小学校外国語活動の現状と課題.._........,........          ..4  1.3 本研究の背景....._....._............._......。.........._._ ....   ..5. 第2章 先行研究  2.1 小学校外国語活動におけるコミュニケV一・一・Lション能力..       ..7  2.2協働学習における学び................_._..........._..      ..10  2.3協働学習の方法..........._._._...._._........_.....   ._  ..14.  2.4 先行研究からの示唆......_...._..._.._.........         ..16. 第3章 研究の目的と方法  3.1研究目的.._.............._..._._........_................      ..17.  3.2 研究方法........._......._................._の...._.         ..17.   3,2.1研究対象._......._._....._.._.....の......_  ....  .._  ..17.   3,2.2 授業内容.._____.__..____._____._.,__.__.    __18   3.2.3データと分析方法.._.,....._.__一e...............      ..19. 第4章 結果と分析  4.1振り返りカードの数値の分析__.____._.   _.   ..22.   4.1.14つの項目による振り返り.._             __22   4。1.2 自由記述;欄に見る友だちへの言及数.........         ..24  4.2授業実践の分析_.._..._._.._一_.._._._.…・__…・…….…… 一25.   4.2.1コミュニケーションへの積極的な態度._.        ,.25.

(8)                                   vii.   4.2.2 友だちの姿から学ぶ互恵的な関係..___         ...26.   4,2.3援助を求めることのできる雰囲気や関係..        ._28   4.2.4 対話のつながり..._...........               ..31.   4.2.5創造性の表出______....             .__33 第5章 研究のまとめと今後の課題....._......。.....          _36. おわりに_____._.9.._______              _40 参考文献_.._._.._._._.___.._...._一_.__一{_..._  .__.__41. 付録_._t.____._.._..             ....   .. _43.

(9) viii.            図の一覧. 図図図図図図図図図. コミュニケーション能力の発達過程 松川・大城(2008)...,,..7 協働学習の概要.............................・...... ・..,・.18. 協働学習時のグループ構成..............................t一.19. 高田の4原則に基づく振り返りカードの4項目..,......    20. 振り返りカード__.__._...___.___._.20 3年生:振り返りカードの4項目...........................23 5年生:振り返りカードの4項目...,。...,............ ....23 3年生:友だちへの言及数....,...................... ....24 5年生:友だちへの言及数............................. ...24.

(10) 1. はじめに.  2008(平成20)年3.月に学習指導要領が改訂され,2011(平成23)年度より, 小学校における外国語活動が必修化となる。外国語活動の目標は,「外国語活動を. 通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーション を図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませ ながら,コミュニケーション能力の素地を養う。」と示された。.  「コミュニケーション能力の素地」を育成するために,小学校では,コミュニ ケーション活動など,様々な活動を通して,子どもが体験的にその素地を体得す ることをねらいとしている。したがって,パターン・プラクティス(表現習得のた めに繰り返し行う口頭練習)やダイアローグ(対話)の暗唱など,音声や基本的な表. 現の習得に偏重して指導したり,文法等のスキルを身につけさせたりすることを 直接のねらいとするものではなく,小学校段階にふさわしい外国語でのコミュニ ケーション活動を行うことが,中学校の学習指導要領で目標としている4技能の 向上を図りながら「コミュニケーション能力の基礎」を育成することにもつなが ると考えられている。.  母語によるコミュニケーションの場合,社会生活上,不自由を感じないですむ 程度には言葉の使用に通じているため,意識的な努力は少なくてすむ。これに対 し英語の場合は,自分の言いたい内容が英語ではどのように表現されるのか,と いう母語と英語との置き換え,つまり言葉をコミュニケーションのための記号と してとらえる面が多く,子どもたちが口をつぐんでしまう場面が見られる。そこ. で,外国語活動におけるコミュニケーションを,話し手から聞き手へ正確に伝え ることを目標としたものとしてとらえるのではなく,対話者同士の間でつくり上 げていくものとしてとらえることが大切であると考える。.  そこで,外国語活動の目標である「コミュニケーション能力の素地」を育成す るために,他者との相互作用を軸とした英語使用につながる協働学習を授業の中 に組み込むことを考えた。具体的には,学習経験に差がある小学校3年生と5年生 の交流を活動の中心とする。そして,一人の力では達成することが難しい課題を,.

(11) 2. ペアやグループでカを合わせて成し遂げる協働の場をつくる。そうすることによ って,どのような表現で伝えればいいか迷った場合は,周りの友だちに質問した り,友だちの表現を取り入れたりするなど,他者との相互作用を軸とした英語使. 用につなげることができると考える。子どもたちは,自分の知らないことを知っ たり,互いに思いを通じ合わせようと努力したりしながら,言葉で伝え合うこと の難しさや楽しさ,大切さに気づいていく。そうすることで,「コミュニケーショ. ン能力の素地を養う」ために必要な他者意識が高まっていくと考える。また,異 学年と活動を共有することによって,外国語活動への動機が高まり,母語による やりとりでは経験できないコミュニケーションの楽しさ,大切さを実感すること にもつながっていくと考えた。.  これらのことから,協働学習の利点をいかした学習環境をつくることが,外国 語活動を通して「コミュニケーション能力の素地を養う」ための手立てとして適 しているのではないかと考え,外国語活動における協働学習の授業の分析研究を 行うこととした。.

(12) 3.  第1章 研究の背景. 1.1 小学校外国語活動導入の背景.  公立小学校における英語教育の導入に関しては,英語教育関係者の間では,古 くから議論されていた。しかし,文部省(現文部科学省)が小学校の英語教育の. 導入について公式な場で言及を始めたのは,1990年代に入ってからである。1992 (平成4)年度に,文部省によって,小学校英語教育に関する研究開発学校が指. 定され,様々な研究開発校で実践が先駆的に行われてきた。1998(平成10)年改 訂の小学校学習指導要領では,総合的な学習の時間において,各学校の判断によ り,国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等が実施可能となり,いわ. ゆる英語活動が広く行われることとなった。2005(平成17)年度の文部科学省に よる小学校英語活動実施状況調査によると,英語活動を行った公立小学校数は, 総合的な学習の時間以外の活動を含めると,93.6%に至ることが明らかとなり,. 2007(平成19)年度の調査では,97.1%にまで上昇した。しかし,この数字は,. 何らかの形で英語活動が行われたという事実を示したものであり,実施内容や授 業時間数に関しては,学校裁量に任されている部分が大きかった。.  2008(平成20)年L月,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会にお いて,小学校における英語活動については,現在でも多くの小学校で総合的な学 習の時間等において取り組まれているが,各学校における取り組みには相当のば らつきがある(文部科学省,2008)ことが指摘された。そこで,教育の機会均等 の確保と,中学校との円滑な接続の観点から,「幼稚園,小学校,中学校,高等学. 校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」の中で,第5学年 及び第6学年を対象に,外国語活動の必修化が報告された。そして同年3,月に,. 小学校学習指導要領が告示され,これにより外国語活動が第5学年で35時間,第 6学年で35時間の年間授業時間数に定められた。.

(13) 4. 1.2 小学校外国語活動の現状と課題.  前節で示した通り,平成10年改訂の学習指導要領において,小学校における英 語活動は,総合的な学習の時間において各学校の判断により,「国際理解に関する. 学習の一環としての外国語会話等」という位置づけで実施されている。その際, 「学校の実態に応じ,子どもが外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ. 親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにする こと」と示されている。それを受けて,今回の学習指導要領による外国語活動で は,目標を「外国語活動を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積 極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基 本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。」とし ている。.  一方,文部科学省指定の研究開発学校や構造改革特別区域研究開発学校におい て,教科としての英語を実施している学校が増えつつある。これらの学校からは,. 小学校段階で英語教育を実施することによって,英語に対する意欲・関心が高ま ったことや,スキル面で一定の成果があったとの報告がされている。.  しかし,上記のような状況は,良い傾向とは言い難い。つまり,市町村により 導入の形態が異なったり,近隣の学校間に差が生じたりしている場合には,子ど もや保護者に不安感を抱かせることになり,続く中学校での英語教育にも弊害を もたらすことになるからである。.  小学校外国語活動は,広い意味でのコミュニケーション能力の素地を養うため の教育の一環として位置づけるものである。したがって,会話表現,文法等のス キルを身につけさせることを直接のねらいとするものではなく,この段階にふさ わしいコミュニケーション活動を行うことが,中学校・高等学校の学習指導要領 で目標としているところのコミュニケーション能力の向上にもつながるものと考 える。小学校への外国語活動導入が,子どもにとってコミュニケーション面での 効果を上げることができるようにすることが求められる。.

(14) 5. 1.3 本研究の背景.  筆者は,2008(平成20年)年度から兵庫県内のA小学校の教員として,外国 語活動の実践を行っている。.  A小学校は,2004(平成14)年度から外国語活動をスタートさせた。第1学年 から第6学年まで,週1回,ALTとHRTとのティV一一一・ムティーチングでの授業を. 行ってきた。スタート当初は,歌やゲームを通して,英語を話したり聞いたりす ることを楽しむ活動を中心としていたが,フォニックスの導入とともに,英語を. 読んだり書いたりするといった活動を行うようになった。その意図は,歌やゲー ムなどの活動を続けるだけでは,高学年になるにしたがって英語活動に対する情 意面の低下が見られるとの見解に基づく。そこで英語を「聞く」「話す」活動に加 え,「読む」「書く」活動を組み込んだ単元の開発を行い,技能や知識・理解を伴. った有用感や成就感を味わうことで形成される態度こそ,子どもが将来に渡って 英語によるコミュニケーションの力を伸ばしていく上で基礎になると考えたので ある。.  その結果,英語を読んだり書いたりすることに興味・関心をもって英語活動に 取り組む様子が見られるようになったが,英語によるコミュニケーションを苦手 とし,英語活動に対する意欲が見られない子どもが,実践を重ねるにつれて増え てくるようになった。.  母語によるコミュニケーションと異なり,英語は通じにくいからこそ,言葉が 使用される場面や相手の表情に敏感になる。つまり,母語の世界では気づきにく い,「言葉は使われている場面と強く結び付いていること」を,教室の中で,様々. な場面を教師が演出しながら活動させ,その体験から気づかせていくことが大切 である。この英語活動における体験とは,教室で設定された言語環境・言語使用 の場に,直接学習者が参加するということである。そのためには,友だちや教師 に向けて,意図的に何かを伝えようという言語環境・言語使用の場の設定が重要 となる。そして,友だちと教師が,場や時間を共有して,楽しい活動をつくり上 げていくことが大切であると考える。.  そこで,子どもが友だちや教師とかかわり合いながら学ぶ協働学習の利点を生.

(15) 6. かすことが小学校外国語活動の目標である「コミュニケーション能力の素地」の 育成につながるのではないかと考えた。.  これらのことから,本研究では,筆者の「コミュニケーション能力の素地を 養う」授業実践において,互恵的な学びを促すグループ活動を導入し,その学び 合いの姿を,社会文化的アプローチの視点から理論的に分析することを目的とす る。また,その中で見出された学び合う子どもの姿を分析することで,協働学習 の意義を明らかにしたいと考える。.

(16) 7. 第2章 先行研究. 2.1小学校外国語活動におけるコミュニケーション能力  Savignon(1983)は, Canale and Swain(1980), Canale(1983)によって提唱. されたコミュニケーション能力(communicative competence)の4つの下位能. 力について,その関係性と発達過程を議論している。Canaleらの提議した. 4つの下位能力とは,言語を場の状況に合わせて使用する「社会言語的能 力(Sociolinguistic competence)」,不足する言語能力を補いながらコミュニケーシ ョンを維持する「方略的能力(Strategic competence)」,単独発話を越えて,文章. や対話を構成することができる「談話的能力(discourse competence)」,語. 彙,形態素,統語,音韻など言語の仕組みを理解し使用することができる 「文法知識・能力(grammatical competence)」である。.  松川・大城(2008)は,Savignon(1983)のコミュニケーション能力理論 を日本の外国語教育にあてはめ,コミュニケー一一一ション能力の発達過程をモ デル化した(図1)。. 文法的能力   談話的能力  方略的能力. 社会言語的能力. 高等学校段階. 中学校段階. L. コミュニケーション能力の. @  発達段階. 小学校段階 li⋮. 図1 コミュニケーション能力の発達過程. 松川・大城(2008)p.48.

(17) 8. このモデルによれば,小学校から高等学校段階までのどの段階においても,. 方略的能力は等しく必要とされる能力として位置づけられている。この点 について,松川・大城は以下のように述べている。.  外国語を初めて学ぶ児童は当然のことながら文法や語彙の知識が非常 に少ないものです。少ない状況でコミュニケーションを優先させると, (中略)表現方法を工夫したり,物まねをしたり,擬声語・擬音語を使. うなど,非言語的な手段にも頼ることになります。実は,ジェスチャー なども含む「言語の切り替え」,「言い換え」,「造語」などは,コミュニ. ケーション能力を構成する重要な能力の1つなのです。(p.46). このように松川・大城(2008)は,個々の学習者がもつコミュニケーション. 能力伸長には,小学校段階では,非言語的なコミュニケーションを通した 方略的能力を重視することの意義を強調している。新学習指導要領(文部 科学省,2008a)においてもジェスチャー等の言語によらないコミュニケー ション手段の役割を理解させることが求められ,その同解説(文部科学省,. 2008b)においても,基本的な表現の練習,習得への偏重を避けることが記 され,「『聞くことができること』や『話すことができること』などのスキ. ル向上のみを目標とした指導が行われたりすることは,本来の外国語活動 の目標とは合致しない」と言語技能を目標とすることが否定的に言明され るなど,言語の運用技能習得を前提としない非言語的手段を用いたコミュ ニケーション体験が外国語活動の中心になることが鮮明にされている。.  以上の議論から,コミュニケーション能力の素地とは,言語技能習得を 前提としない,方略的能力や社会言語的能力を中心としたコミュニケーシ ョン体験の積み重ねであると解釈することができる。新学習指導要領およ び解説の作成協力者でもある松川・大城らのこのような理論的解釈に基づ. きっつも,2つの問題点を挙げることにより,外国語活動における「コミ ュニケーション能力の素地」の考察をさらに進めてみたい。.

(18) 9.  第一の問題点は,方略的能力を重視することの意義と実現性である。実 際のコミュニケーションの場において,話し手が,ジェスチャーなどの言 語によらない手段を使って意思伝達をしょうとする場合,その言語行動の 有用性は限定的である。コミュニケーションを言語の使用と切り離すこと は難しいと考えられ,非言語的コミュニケーション手段の有用性,意義は 認められるものの,方略的能力をシラバスの中心においた授業実践を構想 することの意義と実現性には問題があるだろう。『英語ノート』の構成が方. 略的能力中心になっていないことからも,図1に示されたような教育実践 は現実的ではないと考えられる。.  第二の問題点は,このモデルが,コミュニケーションを学習者個人の技 能と能力の総和として描いている点である。善永(大平)(2005)が,青木 ほか(1998)の言葉を引用して,「コミュニケーションの成否は,対話の参. 加者それぞれの言語能力の和としてではなく,理解しあおうとする双方の 努力の関数としてとらえられるべきである」(p.67)と述べているように, コミュニケーションが複数の発話者(話し言葉であれ,書きことばであれ,. 非言語手段によるものであれ)の相互行為であり,相互性(関数)により 生まれる足し算:では予測できない解をとらえるモデルにはなっていない。. そのため,コミュニケーション体験を通して得られる 「能力」をとらえる 理論モデルとしては適切かもしれないが,話者の相互行為を成立させる「素 地」を説明する理論は別に立てる必要がある。.  竹内(2009)は,青木の言う「双方の努力の関数」を,コミュニケーシ ョンしょうとする「姿勢」という表現を用いて,以下のように述べている。.  コミュニケーションは,その語源(他人と共有する)が示すように,. 話し手と聞き手の双方で成り立つものである。理解ができない原因を片 方にのみ転嫁するのは間違いであり,理解ができなければ,双方が助け 合って問題を解決しようとするのが当然なのである。(p.77).

(19) 10. コミュニケーションしょうとする姿勢とは,他人はそもそも理解できない ものであり,それでもなお共有しようとする意図を持って「問題を解決」. しょうとすることである。青木,竹内の議論は,コミュニケーション能力 を,特定の個人に属するものとしてとらえるのではなく,対話の参加者に よる協働を通じての「問題の解決」へと向かおうとする姿勢としてとらえ ている。つまり,コミュニケーション能力の素地とは,双方がそもそも理 解できないという問題を解決しようと協働すること姿勢(努力の関数)で あると解釈できる。松川・大城(2008)の「コミュニケーション能力」を 基礎にしたモデルは,このようなコミュニケーションの相互行為性,双方 の無理解を前提とした予測できない解へと向かおうとする問題解決として の営みをとらえられない問題を抱えている。.  学習指導要領においても,各学年の指導に当たり,「友達とのかかわりを. 大切にした体験的なコミュニケーション活動を行うようにすること」を配 慮する点として挙げている。スキルの向上を第一義的要素とするのではなく, 日本語によるやりとりでは経験できないコミュニケーションの楽しさ,大切さを,. 様々な体験を通して実感させることが外国語活動の主目的である。他者とのかか わりの中で,言葉をわかりたいと思うことや言葉を使いたいと思うこと,そのよ うな経験を通して,互いに気もちが通じ合えたときの喜びを感じることができる. ような授業づくりを行うことが,小学校外国語活動における積極的なコミュニケ. ーションへの態度を生み出す要素になると考える。そのためには,外国語活動. の授業づくりにおいて,適切なコミュニケーションの場の設定が必要とな る。適切なコミュニケーションの場とは,他者との共生,協働を促す場を つくることである。. 2.2 協働学習における学び.  子ども同士が,自分一人では解決できない高度な課題を友だちと力を合 わせることによって達成する。協働による達成経験を重ねることで,自尊 感情が育ち,さらに自分たちで見つけた課題に挑戦していくようになる。.

(20) 11. このように複数の学習者がかかわり合いながら学ぶことは,協働学習 (collaborative learning)と呼ばれる。.  協働学習は人種的偏見や学力格差を克服する方法として,米国などから世界に 広がった。日本の小学校では戦前の「生活綴り方運動」や戦後の無着成恭による 「山びこ学校」の実践,斎藤喜博の「島小学校」における実践,塩田芳久によって. 生み出された「バズ学習」,板倉聖宣による「仮説実験」など,学習集団づくり の伝統がある。また,近年では,佐藤i(1995)らが提唱する「学びの共同体」 づくり (「学び」は,モノ(対象世界)との出会いと対話による「活動(action)」,他 者との出会いと対話による「協同(coltaboration)」,自分自身との出会いと対話による 「反省(reflection)」が三位一体となって遂行される「意味と人の関係の編み直し (retexturing relations)」の永続的な過程として定義されている。)をすすめる学校は,. 2009年において小学校で約2000校に達している。(江利川,2010).  このように日本の学校教育における協働学習実践には,枚挙にいとまが ないが,外国語教育の実践においては,その取り組みは他教科に比べて低 調であった。「学びの共同体」の提唱者である佐藤(2009)も,外国語教育. における協働学習の広がりやその可能性について,以下のような悲観的な 見解を示している。. この30年来,毎週のように学校をまわって,現場の先生たちと一緒に 研究授業をしてまいりましたが,近年になればなるほど,英語の授業を 改革することが,いかに困難かを痛切に感じています。なぜ難しいかと いうという理由ははっきりしています。英語の授業に内容(コンテンツ) がないからです。.  この十個年間で,他の教科では教科書が変わり,教室のあり方が変わ り,学習の様式も質も変わったにもかかわらず,英語の授業はほとんど かわってはいません。(pp.240−241). 佐藤の指摘は,彼が想定するスキルの習得を中心とした外国語教育実践下.

(21) 12. においては,的確に当てはまるであろう。しかしながら,外国語教育実践 は小学校から大学まで多様な方法で指導が行われており,特に小学校の外 国語活動が言語知識や技能の習得よりもコミュニケーション体験を先行さ せたことを考慮すると,この指摘が外国語活動に必ずしも当てはまるもの ではないとも言える。このことを議論するために,協働学習理論について,. 学習理論としての骨子,協働性を教室環境に取り込む意義や方法などにつ いて整理してみたい。  佐藤(2006)は,子どもが既にわかっていることを与えても学びは起こらないと し,以下のように述べている。.  学びを中心とする教室とは,通常の一斉授業よりも高く設定された内容とレ. ベルと教室で最もわからない子どもの問いのレベルとの問の大きなギャップ を,教師と子どもたちとが協働で埋めていく実践に他ならない。(p.38). 言い換えると,現在の子どものレベルには,少し難しいと思える課題を与え,解 決できるように,教師や友だちが互いに導いていくことで学びが起こるのである。. そこで,教師は,学びを起こすために,その子どもが次に伸びていく領域で働き かけることが重要である。その,次に伸びていく領域が,Vygotsky(1934)が提唱 した「発達の最近接領域」である。.  この概念において,Vygotskyは,子どもの発達を二つの水準によってとらえて いる。. ひとつは「現在の発達水準」とよばれるもので,すでに「成熟した精神機能」. をあらわし,具体的には,自主的な課題解決の水準である。もうひとつは,「明. 日の発達水準」とよばれるものであり,「現在生成しつつある過程,成熟した. ばかりの過程」を意味し,具体的には大人の助けや友だちの協力によって可能 となる課題解決の水準である。(Vygotsky,1934b, p.1).

(22) 13. 以上のように,vygotskyは子どもの中に,こうした二つの水準の食い違いを見出 し,それを「発達の最近接領域」(Zone of Proximal Development)と規定した。こ. の領域の規定について,さらにVygotskyは以下のように述べている。.  自主的に解決される問題によって規定される子どもの現在の発達水準と,お. となに指導されたり自分よりも知的な仲間と協働したりして子どもが解く問 題によって規定される可能性発達水準とのあいだのへだたりのこと                       (Vygotsky,1934b, pp.63−64). つまり,子どもが一人で解答する問題によって決定される「現在の発達水準」と,. 他人との協働の中で問題を解く場合に到達する水準,つまり「明日の発達水準」 との差異が,子どもの「発達の最近接領域」を決定するとvygotskyは主張した。. これは,一人では到達できないレベルでも,グループで助け合ってそれを可能に するという点で,協働学習の基盤ともなっている考え方と言うことができる。つ まり,子どもは,協働学習の中では,自分一人で学習する時よりも多くのことを 学ぶことができるのである。周囲の友だちと考え方ややり方を共有し,教師や知 的な友だちを模倣することで,できないこともできるようになる。つまり,子ど もは,自分一人でもできることから,自分一人ではできないことへ,模倣を通し て移行するのである(柴田,2008)。.  Vygotskyは,このような学びの過程を通し,子どもは自分が一人ではまだでき ないこと,しかし,教師の指導や友だちの協力のもとではできることを学んでい くことを主張した。そして,「子ども時代の教育は,発達を先回りし,自分の後ろ に発達を支える教育のみが正しい」(Vygotsky,1934a, p.302)という教育の主導:性. を提起し,次のように述べた。.  教授の本質的特徴は,教授がく発達の最近接領域〉をつくり出すという事実 にある。すなわち,いまは子どもにとってまわりの人たちとの相互関係,友だ ちとの協同のなかでのみ可能であるが,発達の内面的過程が進むにつれて,の.

(23) 14. ちには子ども自身の内面的財産となる一連の内面的発達過程を子どもに生ぜ しめ,呼び起こし,運動させるという事実にある。(Vygotsky,1934b, pp.22−23).  以上のように,発達の:最近接領域の理論は,子どもたちの協働的活動の必要性,. 子どもの発達における教師の先導的役割の必要性を説く理論である。. 2.3 協働学習の方法.  学習者個人では達成できない高度なレベルの課題を,大人の助けや友達との協 力によって,協働的に達成することで,「明日の発達水準」を「現在の発達水準」. としていく過程をどのように具現化するのか。学校教育における全ての教育実践 は,大人である教師の助けや,一定の友達との協力を前提としていると言っても 過言ではないことを考えると,学習者たちが高度なレベルの課題に協働的に向か おうとする場づくりや,教師や学習者相互の関わり合いの方法について議論して おく必要がある。Van Lier(2009)は,協働的な学びの場の条件は,予測のできな. い新奇な瞬間に学習者がそれまで経験しなかった行動を試みる場でなくてはなら ないと指摘している。この指摘は,ともすれば,教師が高いレベルの課題だけで なく解決過程をも示し,望ましい答えに導こうとする過剰な支援の問題を明らか にする。またVan Lierは,学習活動における調整,支配,管理(contro1)を,教 師側が学習者に明け渡すこと(handover),学習者側が教師や他の学習者から奪取す ること(takeover)を目指すことも協働学習の条件としている。これらの条件を,教. 師の視点から言い換えると,教室の協働的な活動において,教師が予想していな かったような学習者の行動や,その際の学習者の誤り(あくまで教師の基準で観 ての誤り),それを契機にさらに予測できなかった学習行動が起こることが肝心で. あり,そのような新奇で予測できない場面において,教師の指示を離れて,学習 者自身が学びの主導権を取ろうとする様子が観察される教室こそが,協働学習の 方法が機能している場であると言えるだろう。教師はその中で,「教える」「説明 する」「質問する」などの教師が伝統的に求められてきた役割を学習者たちに明け 渡す(handover)ことが求められる。.

(24) 15.  以上のような協働学習の教育実践の場において起こる利点として,秋田 (2000)は次の4点をあげている。第一に説明や質問を行うことにより自身. の理解が深化する点,第二に集団になることによって利用可能な知識が増 える点,第三に相手の反応等の社会的手がかりによって自己の思考のモニ タリングができる点,第四にやりとりをすることで参加への動機が高めら れ,活動を共有することでグループ意識が高まる点である。.  協働学習の理論と方法を外国語教育にいち早く取り入れた池田と舘岡 (2007)は,協働の5つの基本原則として,「対等」「対話」「創造」「プロセス」「互恵. 性」を挙げている。具体的には,まず,協働するための前提条件として,学習者 が互いの存在を尊重するために,互いの違いを認め合い,受け入れる必要がある。. 次に,対話によって協働の主体同士が理解し合い,互いに自分がいきていくため の安全・安心な場を確保し,さらには,他者との関係性の中で自己実現を展開し ていく。そして,他者との対話を積み重ねていく中で,互いの社会提起関係性を 構築し,両者にとっての新たな創造を生み出していく。つまり,創造とは,対等 を前提として対話を手段とする協働の営みの成果と言える。さらに,協働するこ とによって,一人で行っていた思考に,他者の視点が加わることで,対話のプロ セスが発展し,やがては共有の創造を生み出すことになる。最後に,互恵性とは,. 協働する主体同士のかかわりのプロセスやその成果が,互いにとって意義あるも のになることを意味している。  佐藤(2006),Van:Lier(2009),秋田(2000),池田と館岡(2007)が指摘する協. 働学習の原則や学習活動の特徴には多くの共通点がある。個人の能力をこえる高 いレベルの課題を達成するための協働のプロセスにおいて,対話がその中心的役 割を果たし,対話を通して創造的でnovel and unpredictableな活動に学習者たちが. 向かい合う。その過程で伝統的に教師が果たしていた役割を学習者同士が果たし 合う(takeover)ようになり,互いの思考や理解を深めながら,対等で互恵的な関 係を築くことが,協働学習の方法であり特徴であると言えるだろう。.

(25) 16. 2.4 先行研究からの示唆.  上記で概説した先行研究から,外国語活動の授業づくりにおいて,適切な. コミュニケーションの場の設定が必要となることが明らかとなった。適切 なコミュニケーションの場とは,他者との共生,協働を促す場をつくるこ とである。そのような活動の場において,子どもたちは,自分の思いをもち,そ れを確かなものとすることで,その思いをもとに他者とつながり合い,新たな自 分をつくるのではないかと考える。  以上のことから,適切なコミュニケ・一一・Lションの場を生み出す授業に焦点を当て,. 協働学習の利点をいかした学習環境をつくることが,外国語活動を通して「コミ. ュニケーション能力の素地を養う」ための手立てとして適しているのではないか と考え,外国語活動における協働学習の授業の分析研究を行うこととした。.

(26) 17.   第3章 研究の目的と方法. 3.1研究目的  本研究の目的は,小学校外国語活動の目標である「コミュニケーション能. 力の素地」の育成を目指した授業実践において,互恵的な学びを促すグル ープ活動を導入し,その学び合いの姿を,社会文化的アプローチの視点か. ら理論的に分析することである。学習経験の差がある5年生と3年生の異 学年間における協働学習を行い,その中で見出された学び合う子どもの姿 を分析することで,協働学習の意義を明らかにしたいと考える。. 3.2研究方法 3.2.1研究対象.  筆者の勤務校であるA小学校は,兵庫県内の小学校で,学校の規模はひ. と学年3クラスずつの中規模校である。勤務校の特徴の1つに,異学年齢 集団での活動(縦割り活動)の充実があげられる。異学年との交流行事や. ペア学年(1年生と6年生,2年生と4年生,5年生と6年生)での遠足な どが年間を通して盛んに行われている。また,行事の際の交流だけではな く,総合的な学習の時間においても,共に活動するカリキュラムがあり, 縦割り活動が学校文化として根づいている。.  平成14年度より外国語活動を開始し,1年生から6年生まで,週1回, 年間35時間,学級担任とALTによるティームティーチングで授業を実施 してきた。カリキュラム,学習指導案および教材は,校内の英語研究部員. の教員とALTが主体となって作成しており,『英語ノート』は,必要に応 じて使用している。.  本研究の対象は,2010年4月から6月にかけて, 3年生1クラス(34 名)と5年生1クラス(33名)の協働学習の場を設定し,筆者とALTによ って実践した外国語活動の授業である。.

(27) 18. 3.2.2 授業内容.  3年と5年はそれぞれ別の単元をつくり,その中で2回,協働学習の場を設定 した。.  3年生の単元名は,「自己紹介をしよう」 である。子どもの生活にかかわる身. 近なもの(色果物食べ物 動物スポーツ 教科)の英語表現に慣れ親しんだ 後,「Ilike OO.」の表現で,自分のお気に入りを友だちに紹介する活動に取り組. んだ。全4回(週1回40分または45分授業)活動を実施後,5年生との協働学 習を行った。.  5年生の単元名は,「友だちコレクション」である。「What OO doyoulike?」. の表現に慣れ親しんだ後,5年生同士で友だちの好きなものを聞き合う活動に取. り組んだ。全3回(週1回40分または45分授業)実施後,3年生との協働学習 を行った。(協働学習の概要は図2を,指導案は付録を参照). 叢橿蓬 聯難 難覇箋i 自評  籍3暁…. 図2 協働学習の概要. ’協働学習の具体的な活動内容は,以下の2つである。. ①「What OO doyoulike?」の表現を使って,5年生が3年生の好きなもの   (色 果物 食べ物 動物 スポーツ 教科)をインタビューし,3年生   が「Ilike△△.」の表現で答える。(聞き取った内容を「友だちコレクショ   ン」と名づける). ②「友だちコレクション」を使って,クイズ大会を行う。. 協働学習時のグループ編成については,3年と5年の学級担任が決めたグルー.

(28) 19. プおよびペアをそのまま活用することとした。これは,子どもが安心して活動に. 向かえる環境づくりをねらったからである。具体的には,まず,1グループ10人. ∼12人の男女混合グループを,6グループつくった。次に,各グループ内で,3. 年忌と5年生が1対1または1対2のペアになるように編成した。(図3を参照).   ㊤3年生  ㊤5年生 グループB   グループC. ◎一⑳. @…鰹}. ②…「⑱.. @一劔 ⑫一働. @…⑳ ・@∼…爾 B一価⑳. ⑨ ②. A ⑲. 旧. 1㊤一働 li@_州⑱F ◎一働 i⑫一⑳. 鱒 i㈱ ㈱ 鱒 騰 ㈹ ⑧一一⑧. ⑧一爾 ⑨…働. @一⑱ ②一働. ㈱、◎…蹴⑧. 獲鱒@/  唾1. 「の一⑳ i⑨一一⑳. 、②⋮⋮⑱萎. ㈱  ⑫. グループD   グループE  グループF. 図3 協働学習時のグループ構成. 3.2.3データと分析方法  本研究において授業分析のために使用するデータは,以下の3つである。.  1回目は,振り返りカードへの記述内容である。授業後,子どもが自己評価を し,カードに書き込む時間を取ることで,活動の振り返り(自己評価)ができる ようにした。授業後,振り返りをさせることによって,子どもの自律的な学びを. 促すことを意図した。この振り返りカードは,4つの項目から学びを自己評価す るものと,自由記述するものとに分けている。高田(1976)は,「よい授業とは, 子ども生徒がよい授業と言ってくれるものに限る」(p.25)と述べ,子どもの求め. る授業の4原則をかかげている。教師にとって,子どもの振り返りは,子どもの みとり,授業改善などにもつながるツールになる。したがって,その4原則を外 国語活動におきかえ,振り返りの自己評価の観点とした。3=「よくできた」,2 =「どちらかというとできた」,1=「あまりできなかった」の3段階で自己評価 を行わせた。(図4,5を参照). 1. ⋮. グループA.

(29) 20. 高 田 の 4原 則 精一杯運動させてくれる授業   [. 振り返りカードにおける自己評価の4観点 1>積極的に活動できましたカ㌔. 技やカを伸ばしてくれる授業 II>騨醗兎汁錨腰劇うにな                E. 友人と仲よくさせてくれる授業 1⇒難認蹴ところを見つけることが. 新一をさせてくれた授業I. h>諜灘獅し甜膿錦. 図4 高田の4原則に基づく振り返りカードの4項目.   英語活動 振‘1返Slf1一ド     「EEちコし〃ションをつく弓う」                 月  日  名前. ①積極的に活動t3ましたか。          3−2−7 ②聞けるようになったり話せるようtcなつre 9Jした己こ儲ありますか。  3−2−1. ③3の時間t.「あっ,釜うか!J「わかつtt !Cうすれ1♂いいんだ」  3−2−7   こいう。こ力禧あ‘璽ましたか?. ④Eld5の61いこO弓奄見つttるCこがtiましたか?     3−2−7 ※上の1∼4の中t特rCPtんげつたの信.何番石すカ1。. 特に棚っ謝OaSte・.              図5 振り返りカード. 4項目への自己評価については,項目ごとに数値を集計し,その平均値による.

(30) 21. 分析を行った。自由記述については,KJ法で分析した。.  2つ目は,授業における子どもの発話記録である。教室に3台のビデオを設置 し,映像・音声記録を採取した。その中から,3年生と5年生の対話を書き起こ し,個々の発話を単独ではなく,各発話間の関係を分析・解釈することで,教室 内のディスコースの意味づけを行った。.  3っ目は,同僚教師による事後検討会の談話記録である。授業日の放課後に, 授業の事後検討会を行った。その会には,同僚7名(授業者含む)が参加した。 司会者は立てず,各教員が意見や感想を自由に述べていく形式で行ったものをボ イスレコーダーで録音し,談話記録とした。授業者である筆者が気づかない子ど ものやりとりを発見し,授業を多角的に分析することとした。.

(31) 22. 第4章 結果と分析.  まず,本章では,単元全体における子どもの学びの様子を概観することを目的. として,単元全体における3年生,5年生それぞれの活動の後に子どもが書いた 振り返りカードの数値を分析し,考察する。数値は2種類あり,1つ目は,3段階 による項目別の振り返りの平均値,2つ目は,自由記述欄に書かれた友だちへの 言及数である。.  次に,それらの数値の具体を明らかにすることを目的として,授業における子 どもの発話記録や,同僚教師による事後検討会の談話記録,振り返りカードへの 自由記述の内容の分析結果を考察する。. 4.1振り返りカードの数値の分析 4.1.1 4つの項目による振り返り.  3年生の外国語活動は,歌やゲーム,教師からの英語の質問に答えるといった ことが活動の中心であり,友だちと英語でやりとりするという経験はほとんどな かった。したがって,活動時における子ども同士の結びつきは弱く,教師のもと に1人ひとりが結びついている状態であった。.  そこで,本単元においては,教師とのかかわりを大切にしっっも,友だちとと もに学んでいくように意識づけを行っていった。そうすることで,活動が進むに つれ,友だちとのかかわり合いが徐々にみられるようになった。そして,協働学. 習時には,4つの項目すべてにおいて上昇が見られた。これは,今までに経験の ない異学年との会話活動であることが理由である,とよみとることもできる。し かし,単元開始当初に最も自己評価の低かった「友だちのいいところを見つける ことができましたか?」という項目への自己評価が高くなっていることから,協 働学習において,他者意識が今まで以上に芽生え,友だちと共に学びを深めてい る様子が分かる。(図6を参照).

(32) 曜. 23.          3         2、9         2.$         2.↑       ・一.         1:l. lli{i鼎1  導 ぐ[iヨ囲. 7幽贅. 2.r9..  288L… 臨 馬 w. 2.82. @a.8廊. しナ       へ          の                 ダ. 1灘2 ド聞く」 「器す」がく?9・          ‘.            2、1掌               2.3L                 232 c 61. i   た. @  6 き. 1濃雛蒙㌶凱でll訂. ⋮i. 綱覆没的1こ活凱た  }・嘘ゼ38 2、凛‘2糾. 2.7. 2.袋1.         3年忌:振り返りカードにおける4項目の自己評価   図6.  5年生の場合も,3年生と同様に,協働学習時に上昇が見られる。特に,「積極 的に活動した」子どもの増加が見られることから,協働学習において,下学年の 子どもに積極的にかかわりながら活動している様子が分かる。(グラフ2を参照) ksi・’g.          2.?}.          1受          t]g,.   墓l l:1..  灘.          g’一li.          1.9          1「8.・齢. 奪薪し㍉魂寛演あサー    』9ろ. Ll.:s,一. 藷 そ61.            』ウ磁. 1澱糊ミjr器崩ができた. 踊選. 1葉. 購穫極的ミ聴漏した..   。4b「.  蓬. 麗麦ぬちのしvとし..ろを毘つes』.            コ.43      た.   図7. 2,8響. 5年生:振り返りカードにおける4項目の自己評価.

(33) 24. 以上のように,3年生も,5年生も,協働学習時に積極性や他者意識に伸びが見 られ,英語を通して,友だちとかかわろうとしたり,友だちのことを理解しよう としたりしている様子が,教室のイメージとして浮かびあがる。. 4.1.2 自由記述欄に見る友だちへの言及数.  振り返りカードの自由記述欄には,その時間の活動でわかったこと,気づいた. こと,思ったことなどを記入するように促した。3年も5年生も,活動が進むに つれて,その振り返りカードの自由記述欄に,他者への言及が増えていった。さ. ﹁’. らに,協働学習時には,その言及の増加が見られた。(図8,9を参照) 1. 鞍霞分のこと 懇友だちのこと. 穿自分のこと 魏友だちのこと.      困睡国難糠. 1曝1 露溜 第1時第2時…第3時. 第1時第2時. 図8 3年生:友だちへの言及数. 図9 5年生:友だちへの言及数. 協働学習前は,「英語が聞けるようになってうれしかった。」「日本語の色の言い 方と,英語の色の言い方の同じところや違うところがわかった。」など,自分がで. きるようになったことやわかったことなどへの記述が多く見られたが,協働学習 を通して,友だちとのかかわりが増えるにつれて,振り返りカードにも,友だち に関する言及が増えていることが確認できる。.  以上のように,外国語活動における異学年交流によって,協働1生の高まりが見 られたことが数値として表れている。そこで,この数値が示す具体を,授業にお.

(34) 25. ける子どもの発話記録や,同僚教師による事後検討会の談話記録振り返りカー ドへの自由記述の内容から明らかにしていく。. 4.2 授業実践の分析.  実際の授業に焦点を当て,その中の子どもの姿を「協働」という視点から見出 し,理論的に分析を行った結果,以下の5つの要素が浮かんできた。 4.2.1コミュニケーションへの積極的な態度.  子どもは,協働学習前,異学年との協働学習への期待感と同時に不安感もいだ いていたが,1回目の協働学習後には,英語でのコミュニケーションの楽しさを 一人ひとりが経験している姿が表出していた。この時点での振り返りカ・一一一ドの記. 述には,以下のようなものが見られた。. 「最初はちんぷんかんぶんだったけど,私のペアのなおこちゃんとやってとっ ても楽しかったです。また一緒に英語をやりたいです。」.                       (3年生:協働学習1回目) 「ペアの子のスポーツとかのすきなことがすごくよくわかりました。自分と同 じところもあっておもしろかったです。」    (5年生:協働学習1回目). このように,英語を使って異学年の友だちと活動する楽しさを感じている姿が見 られる。そして,協働学習2回目には,積極性が増し,コミュニケーションとし ての双方のやりとりを楽しんでいることが,以下の記述からわかる。. 「いっぱいいっぱい話せた。5年生とやると,とてもやさしく教えてくれるし 英語がいっぱい話せるからとってもおもしろい。」(3年生:協働学習2回目) 「5年生とお話をして,助けあって,いっぱい英語が言えたこと,とても楽しかったで. す。」                   (3年生:協働学習2回目) 「ペアの子と,前よりも楽しく話しあうことができました。ペアの子と一緒に,積極的に. クイズの問題に答えられたのでおもしろかったです。」.

(35) 26. (5年生:協働学習2回目).  以上のように,積極性が増すことによって,友だちと一緒に活動する楽しさに 触れながら,一緒に活動することのよさを実感していると考えることができる。. つまり,友だちと協働することが,自分に役立っことであるという経験をするこ とによって,友だちと学び合うことの大切さを感じているのである。これは,秋 田(2006)が述べた協働学習の利点である,「グルー一一・Eプ意識が高まること」にもつ. ながると解釈できる。. 4.2.2友だちの姿から学ぶ互恵的な関係  友だちと協働することのよさを経験することは,友だちのよいところを発見す ることができる姿につながる。そのことが以下の記述からわかる。.  「5年生のいいところをたくさん見つけることができました。英語が上手で,か.   っこよかったです。話を聞いてくれて,ここはこうすればいいって教えてく   れました。」                (3年生:協働学習1回目)  「5年生がわかりやすく話してくれたから,今まで習っていない英語も話せるよ   うになりました。私も5年生みたい話せるようになりたいです。」.                         (3年生:協働学習1回目) このように,3年生が5年生のよさに気づくことで,「あんな風に話せたらいいな」 と憧れを抱いたり「あんな風に話せばいいのか。」と,目指す姿を具体的に理解し. たりしている姿がわかる。そして,5年生に対する憧れや目指す姿の理解から,5 年生の姿への模倣が見られた。. 「ペアで話して,話す時5年生のまねをして,くふうできるようになったから よかったです。」. 「5年生の英語をきいて,まねしてみたら, うになりました。」.    (3年生:協働学習1回目) 自分が言えなかったこと言えるよ    (3年生:協働学習2回目).

(36) 27.  Vygotsky(1934)は,模倣を,人間の発達を実現していく重要な活動と位置づけ. ている。最近接発達領域論でも,模倣によって,最近接発達領域として与えられ た大人からの教示,ヒント,そして友だちとの協働作業が,子どもの中に学習と 発達となって実現していくと述べている。(佐藤,1999) 1人ではできないことが,. 5年生のやり方を見て学び,模倣することでできるようになるという経験をする ことによって,協働することでできるようになるという事実が意識される。そし て,次の課題にも協働の中で挑戦していこうとする姿勢が生まれていくと考える。.  また,協働学習の中で,5年生も3年生のよさに気づいていた。. 「わたしがした質問に,なやんで答えてくれた。いっしょうけんめい話してく れてうれしかったから,わたしもがんばって英語を話せた。」.                       (5年生:協働学習1回目) 「れいちゃんは,何でも一生懸命きこうとして,びっくりしました。だから, わたしも,いつもよりゅっくり言ったり,反応をしたりしました。」.                       (5年生:協働学習2回目) 「ゆうこちゃんのいいところは,私の目を見てきいてくれる,アイコンタクト. ができているところです。そして,私の話に,反応してくれるから嬉しくな りました。」                (5年生:協働学習2回目). 5年生が3年生の英語をしっかりと聞こうとしたり,表情などにも注意を払おう としたりする中で,3年生のよいところに気づいている姿がみとれる。.  以上のように,3年生,5年生共に,他者の立場や思いを取り入れ,それを自分 のものとして考えていこうとしていることがわかる。これらの姿は,友だちから の学びをもとにして,自分自身の学びを見つめ直している姿と言うことができる。. そしてこれらの姿は,秋田(2006)が述べた,協働学習の利点である,「自己の思. 考のモニタリング」ととらえられる。つまり,互いに相手が求めているものに応 じて提供し合うという相互の受容的関係のつながりによって,互恵的な関係が生 じていると言える。.

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