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描画検査における「切断」について : 統合型HTP 法による検討

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描画検査における「切断」について : 統合型HTP

法による検討

著者

田畑 光司

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 人間学部篇

14

ページ

149-154

発行年

2014-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00000268/

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「paper-chopped drawings」(Wenck, 1977)あ るいは「extension」(Burns, 1987)ともいわ れる。いずれにしても統一的な表現はまだな い。切断という言葉は、全体があるはずなの に断ち切れているという、収納枠の立場を感 じさせる。extension(延長)やはみだしと いう言葉では、収納枠に収まらない側の立場 を感じさせ、切断が否定的なニュアンスであ るのに、肯定的なニュアンスを持ってしまう。 表現の違いは、解釈の違いに影響するかもし れない。図1に切断の例を引用した。 Ⅰ はじめに  描画検査とは、被験者に「樹木」、「家族」、「最 も不快なもの」などの課題を与え、それにつ いて絵を描かせるものである(高橋, 1974)。  このときに、課題であるアイテムの大きさや 場所によって、一部が紙端で切断されたよう に描画されることがある。これは「はみだし」 (井手ら, 1991)、「枠切れ現象」(皆藤, 1994)、 「切断」(三沢, 1995)などと呼ばれている。 英 語 で は「paper chopping」(Buck, 1992)、 キーワード : 統合型HTP法、切断、描画検査 Key words :

─ 統合型 HTP 法による検討 ─

Paper Chopping on Drawing Test

by Synthetic House-Tree-Person Method

田 畑 光 司

TABATA, Koji

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一方、そのような心的機制との関連は示され なかったという報告もある(森田ら, 1991、 木村ら, 2010)。切断を描画検査の分析項目と してはとりあげない成書もある(例えば Handler, et al, 2014)。  アイテム全体を描写することが暗黙のメッ セージである描画検査において、なぜ切断が 生じるのだろうか。そして分析項目として評 価しない成書があることはどうしてなのだろ うか。つまり、描画検査の「切断」に心的機 制の反映があることを仮定しても、いまだに 統一的といえる解釈もなく、知見の集積も十 分とはいえないことがわかる。  今回、統合型HTP法に見られる切断につい て検討する理由はここにある。統合型HTP法 は3つのアイテムを一枚の用紙に描写するた め、一つのアイテムを一枚の用紙に描写する バウムテストやHTP法などよりは切断が生じ やすいといわれ(三沢, 1995)、データを収集 しやすいと考えた。  統合型HTP法において、切断はどのくらい の頻度で見られるのだろう、アイテムごとに 違いがあるのだろうか、さらには統合性と関 係あるのだろうか、これらの点について検討 することとした。 (説明:Wenckは、用紙の上下左右という位 置ごとに異なる解釈があることを紹介してい る。)  検査によって切断の多いものとそうでない ものがあるともいわれ、切断が生じた用紙の 位置やアイテム内容などに関して様々な解釈 仮説が提案されている。例えば、未解決な問 題や葛藤が残されている可能性が切断にはあ ると解釈できること、描画検査の中でも統合 型HTP法は切断が生じやすいといわれている (三沢, 1995)。Buck(1992)やLeibowitz(1999) は、切断が紙面の上や下といった位置で生じ た場合、それぞれ違った解釈があることを報 告している。空間配置に関するGrünwaltの理 論(秀島ら, 2006)と関連して、切断の配置 (Burns, et al., 1987) や ア イ テ ム と の 関 係 (Moschini, 2005)に注目して解釈を試みるも のもある。  さらに非行少年や精神障害者の描画に見ら れるはみだしが、固有の精神病理と関連する という報告もある(一谷彊ら, 1984、栗岩ら, 2002、井手ら, 1991)。表1に先行研究をまと めた。  切断に注目した解釈理論と研究報告がある 表1 切断研究のまとめ 発表 検査 対象者 分析法 結果 須賀 (1987) 統合型HTP法 分裂病者46名、正常者64名 描画面の辺による切断 分裂病35名、正常53名に切断 綾瀬ら (2010) 統合型HTP法 大学生93名 画面からのはみだし 80名のうち家21名、木24名、人4名にはみだし 青山ら (2006) 統合型HTP法 学生352名MEISからアイデンティティ確立群56名、同拡散群51名 はみだし 確立群は家8、木18、人4名、拡散群は家11、木21、人4名 平川ら (1997) 統合型HTP法 非行少年104名 はみだし 家、木、人の3つがはみだしているのが非行少年群の特徴 三沢 (2009) 統合型HTP法 小学生238名 はみだし 1年は家7、木3.5、人3.5、6年では29.3、25.7、10(%) 栗岩ら (2002) HTP法 不登校中学生19名 切断 不登校児には男女ともに切断が多い

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Ⅱ 目的  統合型HTP法における「切断」に注目し、 その実態について検討し心的機制について考 察することを目的とした。 Ⅲ 方法 1.対象  S県内私立大学の保育士専攻大学生 518 名(男子 117名、女子 401名)であった。 2.実施時期  2006年4月~2013年3月の間であった。 3.手続き  統合型HTP法は授業時間を利用して実施し た。一般的な心理検査の説明の後、本法の実 施を依頼した。A4の白紙を配布し、「この紙に、 「家」と「木」と「人」を入れてなんでも自 由に絵を描いてください。」と教示した。描 画法検査を体験することがねらいであって強 制ではないこと、どうしても描きにくい場合 には無理をしないでよいことも伝えた。終了 後、本法について解説をした。 4.結果の整理方法 1)統合性  アイテムの統合性は、先行研究にならって  a)統合的であるもの、b)媒介による統合 であるもの、c)羅列的なもの、という基準 に従って視察で分類した(田畑, 2011)。 2)アイテムの切断  それぞれのアイテムごとに、切断「あり」「な し」を視察で分類した。切断「あり」ではそ の部位(「家」であれば壁、屋根など)や特 徴などを記録し、出現者数を数えた。 Ⅳ 結果と考察 1)切断の出現率  518名について切断「あり」は132名(25.5%) であった。性別では男性の19.0%、女性の 27.4%が「あり」であった。男女の出現者数 の差について検定した結果、有意差は示され なかった(P=0.0675)。切断の出現率には 性差はなかったといえる。 2)アイテムと切断  切断「あり」であった132名について、「家」、 「木」、「人」の各アイテムに対する切断は、順 に35名(26.5%)、112名(84.8%)、0名(0%) であった。家よりは、木を切断して描画する ものが多かったといえる。性別では、女性(110 名)では、家が23.6%、木が86.4%であった。 男性(22名)では家が40.9%、木が77.3%で あった。家にも木にも、性別による有意差は 示されなかった(p=0.0938、p=0.2776)。切 断出現に性差はなく、家よりも木が比較的多 く切断される傾向があったといえる。  三沢(2009)は統合型HTP法における「は みだし」について、小学生1年では「家」7%、 「木」3.5%、「人」3.5%であり、6年生では順 に29.3%、25.7%、10%であったことを報告 している。本研究の結果は、人以外のアイテ ムにおける切断出現率は6年生よりも大きな 値であった。被験者が大学生である場合、人 以外は切断が多く生じることが示された。人 を切断したものはいなかった。これは、切断 に反映される心的機制の発達差というよりは、 切断を利用して描画する技術差の違いではな いだろうか。家や木を切断することで紙面に 立体感をもたせることができるからである。

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であった。女性では17.9%、53.3%、28.8% であった。統合性のbとcの出現率に有意差 があった(p=0.0162、p=0.0018)。統合性 のうちaであったものの出現には男女差がな かったが、女性はbが多くcが少なかったと いえる。統合性が高いということは現実検討 力の高さを示している。羅列はその逆であり、 男性よりも女性に羅列が多かったことは、課 題を吟味するような作業もなく描写してし まったためであると考えられる。 4)統合性と切断  図3は、切断「あり」「なし」と統合性の 関係を示したものである。切断「なし」386 名について統合性を性別に比較する。男性(94 名)はaが13名(13.8%)、bが37名(39.4%)、 cが44名(46.8%)であった。女性(292名) は a が42名(14.4 %)、 b が152名(52 %)、 cが98名(33.6%)であった。bとcの性別 出現率に有意差があった(p=0.323、p= 0.0205)。女性のb、cに有意差があったこ とは、切断「なし」で描画した女性は、男性 よりも統合性の高いものを描いたものが多 かったことを示している。  切断「あり」132名については、男性はa が6名(27.3%)、bが8名(36.4%)、cが 人の切断が大学生では見られなかったことは、 人を使った立体感よりも、人に対する関心の 発達差が反映されたものだろう。  木は樹冠や幹の一部が描写されなくても木 であることは認識できる。森林、並木などを 描写するときのように、多数の樹木から構成 されているものは、一本の樹木全体を描写す る必要もない。家も同様である。街並みでは 家屋が連続するので、一軒全体を描写する必 要もないことがある。それゆえ木や家の切断 は描画場面では不自然さや違和感は強くはな い。しかし、人では切断があると描画の違和 感や不自然さは強くなる。人は全身像を持っ て描写されるのが自然であるから、なぜ全体 を描画しなかったのか、心的な関与が家や木 よりも強く作用したことを予想させるだろう。 小学生に見られた人の切断が大学生では見ら れなかったことは、小学生と大学生の対人認 知の差を反映しているのだろう。 3)統合性  図2は統合性について性別比較を示したも のである。518名のうち統合性がa(統合的) であったものは90名(17.3%)、b(媒介に よる統合)は261名(50.4%)、c(羅列)は 167名(32.3%)であった。性別では、男性 がa、b、cの順に15.3%、40.7%、44.1% 図2 統合性と性別 図3 切断と統合性

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で示された割合よりも多く出現していること が示された。切断には何らかの心的機制が作 用していると思われるが、同時に描画の統合 性を高める作用もあることが分った。三沢 (1995)が指摘するように、深読みしないで 切断されている課題は何か、に注目すること も重要であろう。切断に関する解釈を機械的 に当てはめることは危険であり、全体的に評 価する重要性が改めて認識された。投影法検 査において、クックブック的な解釈は原理上 なじめないものがあるだろう。今回は切断が 生じやすいという理由から、統合型HTP法に 注目した。バウムテスト、家族画など他の描 画検査における切断についても今後検討をし てゆく必要がある。 Ⅴ まとめ  518名の統合型HTP法に見られた「切断」 を分析した。出現率は25.5%であり、性差は 見られなかった。アイテム別に見ると、「木」 の切断が多く「人」では切断はなかった。  統合性と切断の関係については、切断「あ り」描画は切断「なし」よりも統合性の高い ものが多くあり、切断が統合性を高めるため に意図的に使われていたことを示唆している。 先行研究の多くは、切断にはネガティブな心 的機制が反映されていることを指摘している。 大学生が被験者であった本研究の結果は、描 画の統合性を高めるために切断をポジティブ に利用している被験者がいたことが示唆され た。 8名(36.4%)であり、女性はaが28名(25.5%)、 bが63名(57.3%)、cが19名(17.3%)であっ た。cの出現率に有意差があった(p=0.0407)。 女性のcに有意差があったことは、切断「あ り」で描画した女性は、男性よりも羅列少な かったことを示している。  次に、切断「あり」、「なし」の差と統合性 を比較する。図3を見ると、切断「あり」は、 「なし」と比較して、aの増加とcの減少を 男性も女性も示した。切断することで描画の 統合性を高める効果があったように見える。 女性におけるaの出現率(p=0.0091)、cの 出現率(p=0.0013)に有意差があった。つ まり、切断のある描画は統合性が高いものが 多く、羅列は少なかったといえる。男性では a、b、cの出現率に切断による有意差は示 されなかった。標本数が少ないことが影響し ていたためと思われる。  切断の心的機制については、精神病理との 関連性から解釈する報告が多い。統合型HTP 法については表1にまとめたが、樹木画検査 では、井手ら(1991)は、精神科患者では健 常者の2倍多いことを、一谷ら(1984)も非 行少年は有意差をもってはみだしをする位置 があり、現実吟味の弱さの反映であると報告 している。加曾利ら(2010)は神経症傾向の 低い群でははみだしの出現頻度が多いという。 風景構成法を使った皆藤(1994)は、山や木 の切断はYG検査の不安定不適応消極型と関 連があるという。切断の空間配置については、 樹木画や家族画などに関わらず、上下左右に 反映される心的機制があることが報告されて いる(Levy, 1959)。  切断を描画表現の一つとして被験者が利用 することが考えられないだろうか。大学生を 被験者とした本研究の結果、切断は先行研究

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発達的な検討 創価大学大学院紀要, 32, 309-332.

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