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日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について : 顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ

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Academic year: 2021

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(1)国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. (研究ノート). 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について: 顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 小 澤 信 夫 キーワード 顧客の声 ご要望・苦情分析 顧客クレーム対応 感動の顧客満足 企業の社会的責任. (序 論):顧客満足が企業の栄枯盛衰を決する 21世紀は、まさに真の生活者の時代である。1960年代は、高度経済成長のもと、マス・プロダク ション(大量生産)、マス・セール(大量販売)、マス・コンサンプション(大量消費)のシステム が構築されたが、1970年代入って、商品の品質・クオリティが追及され、さらに1980年代では消 費者第一主義や女性の社会進出が声高に叫ばれるようになった。そして、1990年代に入り、企業の 社会的責任が厳しく問われるようになり、企業の文化活動(メセナ)や社会貢献(フィランソロピ ー)活動への取り組みが活発となってきた。企業は、地域社会の市民権を得るために、環境問題や 消費者問題についても積極的に取り組んでいくこととなった。 1995年代から生活者の時代だと叫ばれるようになり、 『生活大国日本』を掲げて、会社人間から 社会人間へと転換の必要性が論じられ、まさに消費者である生活者に暖かい眼差しが行政や企業並 びに各種の諸団体から寄せられるようになった。 2010年代になり人、モノ、金、情報が世界規模で飛び交うグローバル経済が進展する中において、 「顧客第一主義=customer is first」の考え方が益々重要となり、何処の地域や国等でも通じるグロー バル・スタンダード(世界規模の標準的)な物の見方や考え方が必要になり、顧客視点の経営へと 繋がっていった。 高度情報化社会が到来し、より複雑化する経済社会において、高品質化が求められるソフト化・ サービス化社会では、「顧客志向」、「顧客第一主義」、「お客様は王様」等々の理念を経営の屋台骨に しなければ、この厳しいサバイバル競争(生き残り)には、打ち勝つことが出来ないと考える。 今、流通産業では、熾烈な競争(cut throat competition)が繰り返されている最中にあり、 『生き 残り戦略』として「顧客満足の追求」、「顧客感動」、「顧客満足の保証」等々が、求められているので ある。21世紀の舞台に雄姿を輝かすには、お客様の声を大切にし、お客様の声に耳を傾け、お客様 に喜んでいただける商品とサービスを提供し、地域社会に愛され、親しまれるショッピングセンタ ーやお店づくりをしていくことが極めて重要である。地域社会の市民権を得て、地域の生活者の「出 会い」「発見」「ふれあい」の場としての役割を果たし、お客様の満足を限りなく追及していく中に おざわ のぶお:淑徳大学 国際コミュニケーション学部 兼任講師. — 137 —. 1.

(2) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 永続的発展が約束されるのである。 顧客の声・ご要望・クレーム等々をくまなくすくい上げ、その声なき声を分析し、一人ひとりの 顧客に応えていき、究極の顧客満足度を達成して始めて、変化に対応できる企業として、生き残れ るのである。そこには、必ず非凡なサービスが生まれ、 「お客様がすべて」 「すべては、お客様のた めに」(for the customer)の思想が息吹き、企業風土が醸成されていくのである。 本調査・分析を通して、顧客のクレームは、宝物であり、顧客の改善提案書と捉えて、その一つ 一つに応えていく愚直な姿勢が究極の顧客満足度の向上に通じ、企業体質の改革にまで繋がる事を 提言するものである。 Ⅰ−1.顧客満足(Customer Satisfaction=CS)とは何か 顧客満足(Customer Satisfaction)は、通常、CSと呼ばれる。 今日に於いて顧客満足という言葉の定義が曖昧であり、人により使い方が異なっているように感 じる。ここでまず「顧客満足」という言葉について整理する。 1980年代、アメリカのマーケティング研究者を中心に顧客満足という考え方が芽生えてきた。自 動車業界ではJPパワー・アンド・アソシエイツが顧客満足度指標(customer satisfaction index) を社会に発表し、脚光を浴びた。従来は生産者主導であった商品の品質・性能等を、消費者・顧客 の要望や嗜好を中心に据えた方が良いのではないかという考えが背景にあった。現代企業や組織が 生き残っていくためには、アフター・サービス活動の一環として、顧客満足の向上が重要な課題と なっている。顧客にどのように評価されているのかを、常に調査、分析する必要が生じ、顧客満足 が1つの戦略目標として認識されるようになってきた。つまり、顧客満足は、現代の競争企業との 差異をもたらす戦略であり、競争上の優位性を生み出す有効な武器なのだ。 1990年代に入って、日本でも顧客志向が喧伝され、積極的に活用されるようになった。例えば、 自動車ディーラー、家電製品のメーカー、航空会社、旅行会社、ホテル、サービス業などの企業で、 「お客様相談室」や「CS推進室」などが設置され、部門を横断した形で取り組まれるようになった。 顧客に満足を提供するためには、顧客や取引先の欲求や、自社製品・サービスの満足・不満の原因 を正確に把握した上で、企業全体の組織をあげて顧客満足度の向上に取り組むことが必要である。 そのためには、社員一人ひとりの業務遂行の満足度向上や、関連のパートナー会社などの満足度追 求も必要不可欠である。 「顧客満足」は「顧客を」なのか「顧客が」なのか。「顧客を満足させる」という言葉通りの意味 でなく、「顧客が満足するための企業活動」という、一歩進んだ意味と捉える。すなわち、企業の経 営活動そのものに顧客が満足・納得している状況だ。さらに顧客主導型経営を定義づけるなら、そ れは会社の真の資産は、満足した顧客とモラールの高い従業員だと認識している経営と考える経営 姿勢だ。 つまり「顧客満足」とは、顧客の価値観で、顧客の目線の高さで提供された商品・サービスにつ 2. いて顧客が自分自身の基準によって納得の得られるクオリティと価値を見いだせることである。そ のために企業は、商品・サービスを使用している既存顧客のニーズやウオンツの調査を行い、そこ に焦点を絞り、改善や新規商品・サービスの開発などに注力すべきである。こうした改善・開発を 行うのは個人単位ではなく、企業全体で取り組み、経営活動方針の柱に据える等、「顧客満足」活動 が企業における重要な経営戦略そのものであるという考え方が重要である。. — 138 —.

(3) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. (顧客満足度の公式) 顧客満足は、事前に期待していた商品・サービス・設備等々より、実際に経験した商品・サービス・ 設備等々の方が素晴らしかったときに、発生する。下記の式で表わされる。 ※顧客満足度=実際に提供される商品サービス (内容・場所・時間・価格). (-). 事前期待度 (今までの体験や想像から得た情報). Ⅰ−2.顧客満足の必要性 では、「顧客満足」は何故、必要なのだろうか。 企業にとって重要なことは、既存顧客を維持しつつ、新規顧客を獲得して、他社よりも優位に立 つということにある。顧客に対し、満足が得られる商品・サービスを提供し続けることにより、企 業と顧客との間に強い信頼関係が生まれ、そうすると顧客は「商品の買替」、「商品の追加購入」、 「商品を他へ紹介」、「新規商品開発への協力」という行動に出る。顧客のこうした行動は、企業にと っても大きな財産であると言える。 逆に、顧客の満足度が下がってしまうと、これら企業としての財産を得ることができなくなり、 当然ながら顧客との信頼関係を失う事態になり、これによって企業イメージも低下というマイナス の要素が増えることになる。更にインターネットが普及している今日の環境に於いては、企業にと ってプラスとなる情報もマイナスとなる情報も、瞬く間に広く流布してしまうことになる。従って、 商品・サービスを他社よりも優れたものにし、企業の発展成長のためには、「顧客満足」は必要不可 欠なのである。 顧客は、製品・商品を購入したり、サービスを利用する際に製品・商品やサービスに対して、事 前の期待を持ち、実際にそれらを購入し、消費・使用したり、サービスを利用した結果、これらの 評価を行う。事前評価と実際評価の差が顧客満足度を決定するのである。 つまり事前期待が満たされ、実際評価が高ければその製品・商品やサービスの繰り返し購入、利 用が行われ固定客化、ロイアル・カスタマーに繋がる。逆であれば、不満足、失望が大きくなり離 反してしまう結果となる。 Ⅱ−1.顧客満足度経営の本質 顧客満足度の向上への追求は、現代企業経営の基盤であり、「顧客の満足感を充たす」という視点 から、全ての企業経営活動を見直し、経営基盤を整備し、全社員の考え方や行動、業務のあり方と 進め方を革新し創造していくこと、すなわち、顧客の信頼性、支持性、満足性を向上させることで ある。 このような「顧客の満足を組織的に創り続ける経営(Customer Satisfaction Management =CS 経営)」が求められているのである。顧客満足度経営は、単に精神的、観念的ではなく、まず顧客満 足を第一主義とし、自社の製品・商品やサービスに対する顧客満足、不満、苦情、要望などに関す る調査を継続的に行い、定性的かつ定量的に顧客の満足度を測定するシステムを構築し、その結果 を指標化し、客観的に分析・評価し、経営者・管理者が率先して、顧客の没不満と不満の除去を図 り、経営業務や経営方針の立案・改善・改革を連続的に遂行していく経営活動である。 CSの原点は、常に商品のクオリティ、サービスの機能、相対的価格の3つの要素が、個々の顧 客満足にいかに適合し、また、その満足度をいかに持続し続けるかにある。 CS経営の本質は、顧客の満足を組織的に創り続けること、すなわち、現代企業経営の目的が顧. — 139 —. 3.

(4) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 客満足の充足にあるのであって、そのためには経営理念と経営組織や体制、さらに経営行動を革新 していかなければならないのである。したがってCS経営の導入に際しては、単に理念的課題とし て精神的・心理的に適合することのみではなく、これをシステムとして導入し、さらに経営戦略と して展開し、顧客との人間的コミュニケーションの円滑化を推進する施策等が重要である。 Ⅱ−2.顧客の満足と喜びを保障する 今、社会や顧客が求めているのは、満足を越えた満足なのだ。普通の一般的なサービスは当然で あり、ありきたりの事では、満足されない。驚きや感動を与える顧客満足が求められているのであ る。顧客に心から喜びや感動を抱いていただくには、従業員が「お客様のために」という犠牲的精 神を持ち、顧客に対処するところから始まる。その前提として、従業員が仕事や職場環境に満足し ている状況でなければならないのは言うまでもない。 (お客様のご満足). customer satisfaction. (お客様の感動と喜び). customer delight. (お客様満足と喜びを保証) customer delight. ↑↑ (従業員の満足) employee satisfaction 働き甲斐・生き甲斐・モラール・アップ. Ⅱ−3.顧客満足度の保証(customer guarantee)の実践 究極の顧客満足度は感動と喜びを保障することである。そのためには、次の顧客満足三つの動機 を満たさなければならないと考える。 顧客満足三つの動機. 生理的動機 生命維持. . 知覚的動機 生活行動. . 社会的動機 文化的価値. これを具体的に咀嚼すれば、以下のように理論化できる。 顧客満足三つの動機を充足させ、お客様をアッと言わせる5ツの基本は、 4. ① 信頼性(安心・安全) ② テキパキと商品の返品交換をする迅速性 ③ 感動・喜びを抱かせる 親切な態度 ④ 常に顧客の立場で問題解決をする共感性 ⑤ 身だしなみ、整理整頓、わかりやすい 振る舞い等の具体化・具象性である。 その具体的事例について述べる。 顧客がお買い求めになった商品が気に入らなければ、喜んで返品、交換に応じる。理不尽なご要 求にも、真摯な姿勢で受容し対応する。そのお客を思う姿勢が顧客の心を揺さぶるのだ。 (1) 賞味期限切れの商品を見つけた顧客には、期限内の商品を無料で提供する。. — 140 —.

(5) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. (2) チェック・アウトに3人以上のお客様が並び、即新しいレジが開かない場合、4人目のお客 様からサービス券などを渡す。 (3) 商品の場所を尋ねられたら、そこまで案内するのは当たり前で、案内する最中に商品の特徴 や関連商品の説明をさりげなくする。 (4) 子供に肌着のサイズが合うかどうか迷っているお母さんに、「どうぞ、開いて見て、着てく ださい、合わなければ、そのままにしておいてください」と優しく声をかけられた店員さん の顔が忘れられません。お客様は、「そこまで、配慮してもらっては申し訳ない」と、お買 い求めになるのだ。 Ⅲ−1.首都圏に展開する某大手スーパーマーケットの顧客満足による企業再生の実態 築城3年、落城3日としばしば言われる。信用を築くには、大変な年月を要するが、信用を失う のは、アッと言う間である。首都圏に展開する流通産業の改革、すなわち顧客の真の声を聴き、如 何に企業に取り入れて企業再生に結びつけたか等について、その調査内容を述べる。その企業は、 支店が約250店舗超もあり、なかなかお客様からの正しい情報が本部に上がってこなかった。人間 の常として、自分のところで起こったクレームや要望、ましてや従業員の批判等々については、包 み隠してしまうものである。しかし、企業にとって一番の財産は、顧客の真の声・クレーム等であ り、それを愚直に聴き、顧客の立場で対応していくことにある。そこで、企業風土を変革し、風通 しのよい職場環境にして、顧客からのクレーム・不満・ご要望等、何でも本部に上がるようにする ため、「店長への直行便」箱(株式会社マルエツ)を各店に新設し顧客の声を吸い上げるようにした のだ。「悪い情報ほど宝物だ」を合言葉にして。そして、一つのお店で起こったクレームや従業員の 中傷誹謗は、個店、個人を責めるのではなく、全店の共通する改善課題として捉え、全社で取り組 むことにした。そして、お客様の声の受信は、「お客様は常に正しい」を理念に置き、即対応又は、 3日以内に何らかのご返事をする等、顧客とのコミュニケーションをスピーディに図ることを定め、 ルール化をした。そうすると、今まで一週間に30件しかなかったお客様の声が12倍に増えて350件 に達し、年間で16,000件の顧客の声が本部に届くようになったのである。顧客とのツーウェイ・コ ミュニケーションが形成されて、このお店は何か言えば応えてくれるという評判がたち、益々お客 様の声が増えて行き、繁盛店として地域一番店になって行った。「お客様にノーと言わない姿勢」が 心を捉えたのだ。 そのとき同時に組織改正をして、顧客担当部門を、組織から独立し、トップに対して具申できる、 そして各営業部門をアシストする組織機能とした。企業経営活動は、「顧客満足を追及することであ る」。これを推進するためにも、顧客担当部門は、企業経営の基軸となり、経営組織に顧客の真の声 を届け、経営に客観的な立場で警鐘を鳴らしていき、風通しのよい企業風土を醸成していき、「社会 の常識は、会社の非常識だ」、「会社の常識は、社会の非常識だ」-にならないようにするためにも、 顧客の声を重視する事が大切である。 5 Ⅲ−2.消費者が申し出るクレーム等の相談件数 国民生活センターによせられる消費者からの相談件数は、直近の年間平均では、90万件にも上っ ている。2004年には102万件を記録している。(2012年発行の独立行政法人国民生活センターの PIO-NETにみる2011年度の消費生活相談全国データー)これは、顕在化した件数であり、その数倍 の顧客相談・クレームが発生し、潜在しているのが現実だ。図1の通り、高齢者をめぐる取引や安 全・品質並びに接客等のクレーム相談が増大している。. — 141 —.

(6) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 国民生活センターの生活相談(2011年). 図1. 消費生活相談の年度別総件数の推移(1984~2011 年度). 件数 (万件) 200. 192.0. 180 160. 151.0. 140. 130.4. 120. 111.3. 100 80 60 40 20 0. 105.1. 87.4. 4.9. 8.9. 13.3. 15.2. 15.2. 16.6. 16.5. 17.1. 19.1. 21.8. 23.4. 40.1. 35.1. 27.4. 41.5. 46.7. 54.7. 95.1. 90.2. 89.7. 87.9. 65.6. 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011. 年度. 相 談 内 容. 1.「取引」に関する相談. 計. 契約・解約・販売方法 高齢者の相談割合増加 2.「安全・品質」に関する相談 2011年度過去最高の132,821件. 販 売 形 式 店舗購入 訪問販売 通信販売 マルチ取引. 3.アフターサービスや接客態度. クレーム処理の相談. 電話勧誘販売 ネガティブ・オプション その他無店舗. 286,578 100.0 96,417 100.0 267,582 100.0 10,155 100.0 69,383 100.0 2,109 100.0 347 100.0. 安 全 ・ 衛 生. 品 質 ・ 機 能 ・ 役 務 品 質. 法 務 ・ 基 準. 価 格 ・ 料 金. 19,771 6.9 911 0.9 6,060 2.3 229 2.3 230 0.3 10 0.5 1,333 3.9. 74,412 26.0 6,138 6.4 23,887 8.9 815 8.0 1,655 2.4 15 0.7 496 15.1. 14,883 5.2 2,792 2.9 5,286 2.0 461 4.5 1,614 2.3 18 0.9 2,192 5.6. 上段:件数 下段:構成比(%) 69,803 783 12,037 24.4 0.3 4.2 20,349 79 1,820 21.1 0.1 1.9 40,633 249 28,796 15.2 0.1 10.8 1,378 6 155 13.6 0.1 1.5 7,353 26 2,379 10.6 0.0 3.4 143 1 38 6.8 0.0 1.8 25 85 506 24.8 0.3 5.7. 計 量 ・ 量 目. 表 示 ・ 広 告. 販 売 方 法. 44,736 15.6 69,876 72.5 183,958 68.7 8,178 80.5 60,624 87.4 1,857 88.1 3,703 41.9. 契 約 ・ 解 除. 200,402 69.9 73,058 75.8 213,942 80.0 1,308 72.0 39,480 56.9 1,289 61.1 6,205 70.2. 接 客 対 応. 68,265 23.8 10,682 11.1 22,139 8.3 448 4.4 4,653 6.7 55 2.6 1,332 15.1. 包 装 ・ 容 器. 施 設 ・ 設 備. 534 0.2 30 0.0 170 0.1 0 0.0 21 0.0 2 0.1 8 0.0. 1,017 0.4 115 0.1 88 0.0 1 0.0 31 0.0 0 0.0 40 0.5. ①「取引」に関する相談 契約・解約・販売方法 高齢者の相談割合の増加 ②「安全・品質」に関する相談 2011年度過去最高の132,821件 ③ アフターサービスや接客態度 ④ クレーム処理の相談 Ⅲ−3. 首都圏に展開する大手スーパーマーケットに於ける顧客の声(クレーム・ご要望)の増加 とその改革の実態 図2,3,4,5は、お客様の声を真摯に聴き、それを具体的に実践・改善した結果、全ての顧 客サービス等の経営指標を改善した一例である。 図2により、大手スーパーマーケットの顧客の声について、2002年と2011年を比較し分析する と、その改善度合いが明確に分かる。顧客の支持率が如何に向上しているかが一目で分かる。 顧客のご要望が62%から65%に増加し、クレームが33%から28%に減少している。 顧客からお褒めの言葉を頂くことは、ごく稀だが、お褒めも5%から7%に増加している。 6. 顧客の声(ご要望・クレーム・アドバイス・お褒め)等々が増加することは、大変素晴らしいこ とである。顧客は、「その店は、要望を申し出れば、応えてくれる」と期待しているから、クレーム 等を申し付けるのだ。「何を言っても、感じない、対応しない」と思われているお店には、顧客は何 も言わないものだ。お客様の声が何も届かなくなったとき、その企業・お店は、衰退の一途を辿る のである。 顧客クレームの原因別構成比で分析すると、 異物混入23%、異臭味覚13.4%、接客不良9.8%の構成になっており、商品管理のきめ細かな徹. — 142 —.

(7) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. 底や接遇教育の必要性が浮かび上がってきている。 安心・安全・清潔等々をベースにした店舗オペレーションと顧客に満足を与える接客が望まれてい る事が読み取れる。. 大手スーパーマーケット顧客の声. 図2. 顧客の声 種類別構成比(2011年). 2002年 2004年 2007年 2011年. ご要望62% ご要望63% ご要望60% ご要望65%. クレーム33% クレーム31% クレーム32% クレーム28%. お褒め5% お褒め6% お褒め8% お褒め7%. 生地不良 売価ミス. 要因別構成比(2011年). その他(16.1%). 異物混入(23%). 日付切れ 食アタリ(5.8%) 容器包装(6.7%). 機 能 性 能 ( 8 . 2 % ). 異臭味覚(13.4%) 変 質 ( 1 2 . 0 % ). 接 客 ( 9 . 8 % ). 図3により、大手スーパーマーケットの顧客の声を分析する 1年間に顧客から届いたクレーム・ご要望等の声は、15,997件に上っている。前年比109%の伸 びを示している。内訳を見ると、ご要望9,629件(119%) 、お褒め1,146件(114%)となっており、 この企業への信頼性や期待度の高さに驚かされる。顧客が「この会社・お店は、顧客の声に応えて くれる」と思うから、顧客の声が増加しているのだ。 そして、品質管理、異物混入、食あたり、売価ミス等々のクレームが減少してきており、売場管 理、商品管理、鮮度管理等々、きめ細かなマネジメントが奏功している事が判明できる。一方、接 客不良や商品の表示間違い等々については、前年比116%、121%と増加しており、改善、改良の余 地が多々あることに気づく。 7. お客様の声の要因別で分析すると 「このような商品を品揃えして欲しい」、「店頭に座れる椅子等を置いてほしい」等々の具体的なご 要望は、店長直行便やフリーダイヤルを通して、直接肉声で伝えられる場合が多い。「お褒めの声」 も直接、速く、そのお店の当該者に届くように、店長直行便をご利用される顧客が大半を占める。 「接客不良」等の申し入れについては、二つの側面に分かれている。感情的になり、どうしても挙げ た拳をどこかに下ろしたいと思われる購買者は、フリーダイヤル・電話で納得するまで、直接クレ ームを申し付ける。. — 143 —.

(8) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. もう一つは、インターネットで問題点だけでなく、改善点等アドバイスを添えて、申し入れられる。 このような状況は、顧客とのツーウェイ・コミュニケーションが出来上がって始めて可能なのだ。. 大手スーパーマーケット顧客の声 件数. 前年比. 店長 直行便. 㻣㻘㻜㻝㻡 クレーム 㻝㻘㻤㻥㻜 メモ フリー 㻞㻢㻡 ダイヤル インター 㻠㻡㻥 ネット 合計 㻥㻘㻢㻞㻥. 㻥㻢㻑. 㻝㻘㻜㻣㻡 㻞㻝 㻟 㻠㻣 㻝㻘㻝㻠㻢. 㻝㻝㻝㻑. 㻠㻤㻡 㻢㻜㻢 㻤㻣 㻡㻣㻢 㻝㻘㻣㻡㻠. 㻤㻤㻑. 㻝㻡㻥 㻤㻟㻢 㻝㻝 㻝㻣㻥 㻝㻘㻝㻤㻡. 㻣㻥㻑. 㻝㻡 㻡㻥㻡 㻢 㻝㻥 㻢㻟㻡. 㻢㻤㻑. 㻡㻠㻞㻑 㻙 㻝㻜㻣㻑 㻝㻝㻥㻑. 食中り. 㻞㻝㻜㻑 㻙 㻝㻢㻞㻑 㻝㻝㻠㻑. 売価ミス. 㻝㻞㻣㻑 㻙 㻝㻝㻥㻑 㻝㻝㻢㻑. 賞味期限切れ. 㻢㻠㻑 㻙 㻝㻜㻞㻑 㻣㻜㻑. 㻣㻣㻑 㻙 㻤㻟㻑 㻣㻤㻑. 表 示. その他. 合 計. 件数. 前年比. 件数. 前年比. 件数. 前年比. 件数. 前年比. 件数. 前年比. 件数. 前年比. 㻝 クレーム 㻝㻥㻟 メモ フリー 㻟 ダイヤル インター 㻤 ネット 合計 㻞㻜㻡. 㻝㻜㻜㻑. 㻥 㻡㻡 㻟 㻡㻠 㻝㻞㻝. 㻝㻞㻥㻑. 㻞 㻣㻝 㻠 㻞㻞 㻥㻥. 㻟㻟㻑. 㻜 㻞㻥㻡 㻣 㻞㻤 㻟㻟㻜. 㻙. 㻠㻥 㻠㻥㻜 㻡㻠 㻟㻜㻜 㻤㻥㻟. 㻠㻥㻑. 㻤㻘㻤㻝㻜 㻡㻘㻜㻡㻞 㻠㻠㻟 㻝㻘㻢㻥㻞 㻝㻡㻘㻥㻥㻣. 㻥㻢㻑. 店長 直行便. 㻣㻡㻑 㻙 㻣㻟㻑 㻣㻢㻑. 㻝㻜㻞㻑 㻙 㻤㻞㻑 㻥㻡㻑. 㻢㻤㻑 㻙 㻣㻢㻑 㻣㻝㻑. 㻝㻝㻢㻑 㻙 㻞㻜㻜㻑 㻝㻞㻝㻑. 㻝㻞㻠㻑 㻙 㻥㻠㻑 㻝㻜㻥㻑. お客様の声 要因別構成比 店長への直行便 売価ミス 㻜㻚㻝㻑 食中り 異物混入 㻜㻚㻜㻑 㻜㻚㻞㻑 品質・鮮度 㻝㻚㻤㻑. 賞味期限 切れ 㻜㻚㻜㻑. 㻙 㻝㻜㻣㻑 㻝㻜㻥㻑. 㻝㻘㻟㻢㻜 㻠㻤㻠 㻤㻟㻜 㻡㻜㻠 㻣㻝㻞 㻣㻠㻤 㻤㻝㻥 㻝㻘㻜㻢㻢 㻝㻜㻥 㻢㻡㻢 㻝㻘㻝㻟㻞 㻟㻤㻥 㻢㻡㻞 【受付件数上位店舗】. 㻝㻣㻜㻚㻜㻑 㻝㻡㻥㻚㻣㻑 㻝㻝㻡㻚㻥㻑 㻝㻜㻤㻚㻚㻞㻑 㻝㻜㻢㻚㻥㻑 㻝㻜㻡㻚㻞㻑 㻝㻜㻠㻚㻡㻑 㻥㻥㻚㻢㻑 㻤㻟㻚㻤㻑 㻣㻣㻚㻞㻑 㻢㻥㻚㻝㻑 㻢㻡㻚㻝㻑 㻢㻟㻚㻞㻑. 㻜㻥件数. 前年比. 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻡. エリア 練馬高松 鹿 島 田 真 中 汐留シオサイト 池 袋 東門前. 㻟㻝㻟 㻞㻥㻞 㻞㻡㻡 㻞㻟㻤 㻝㻥㻟 㻝㻥㻟. 㻝㻢㻟㻚㻥㻑 㻝㻟㻥㻚㻣㻑 㻝㻥㻣㻚㻣㻑 㻝㻝㻥㻜㻜㻚㻜㻑 㻟㻡㻣㻚㻠㻑 㻟㻝㻢㻚㻠㻑. クレームメモ. 表示 㻜㻚㻜㻑 その他 㻜㻚㻢㻑. 賞味期 限切れ 㻝㻚㻠㻑. 表示 その他 㻡㻚㻤㻑 㻥㻚㻣㻑. 要望・問 合せ 㻟㻣㻑. 食中り 㻟㻚㻤㻑 要望・問合 せ 㻣㻥㻚㻢㻑. 異物混 入 㻝㻝㻚㻤㻑 品質・鮮 度 㻝㻢㻚㻡㻑. 件. 㻥㻝㻢㻝 㻤㻤㻝㻜. お褒め 㻜㻚㻠㻑 接客 㻝㻞㻚㻜㻑. 賞味期限 切れ 㻝㻑 売価ミス 㻟㻑 食中り 㻜㻑 異物混入 㻝㻑. 表示 㻞㻑 その他 㻝㻤㻑. 㻜㻤年度 㻜㻥年度 㻡㻜㻡㻞 㻟㻣㻣㻟 㻝㻡㻣㻤 㻝㻢㻥㻞 㻜. 㻠㻠㻟. クレームメモ 受付ルート内訳 㻡㻡㻜㻜 㻡㻜㻜㻜 㻠㻡㻜㻜 㻠㻜㻜㻜 㻟㻡㻜㻜 㻟㻜㻜㻜 㻞㻡㻜㻜 㻞㻜㻜㻜 㻝㻡㻜㻜 㻝㻜㻜㻜 㻡㻜㻜 㻜. 㻠㻠㻟. フリー ダイヤル 本社. 㻝㻜㻣㻤. 㻞㻤㻝㻥. 㻞㻢㻥㻡. 㻞㻞㻟㻟. 㻜㻤年度. 㻜㻥年度. 店. フリーダイヤル. インターネット. 売価ミス 㻝㻚㻝㻑. 接客 㻡㻚㻡㻑. お褒め 㻝㻞㻚㻞㻑. 㻝㻞㻣㻑. 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣 㻤 㻥 㻝㻜 㻝㻝 㻝㻞 㻝㻟. ル. 前年比. ト. 件数. イ ヤ. 前年比. ー ダ. 件数. 㻝㻜㻜㻜㻜 㻥㻜㻜㻜 㻤㻜㻜㻜 㻣㻜㻜㻜 㻢㻜㻜㻜 㻡㻜㻜㻜 㻠㻜㻜㻜 㻟㻜㻜㻜 㻞㻜㻜㻜 㻝㻜㻜㻜 㻜. リ. 前年比. 前年比. フ. 件数. 件数. モ. 前年比. ルート別受付件数. エリア 西東京 フーデックスプレス 東東京 北千葉 西埼玉 東埼玉 北神奈川 北埼玉 ポロロッカ 南千葉 南東京 西神奈川 東神奈川. ー ネ ッ. 件数. 店長への直行便受付 【エリア統括部別】. タ. 異 物. ー ム メ. 品 質. イ ン. 接 客. レ. お褒め. 要望・問合せ. ク. 要因別受付件数. 店 長 直 行 便. 図3. 要望・問 合せ 㻞㻣㻑. お褒め 㻟㻑. 品質・鮮 度 㻝㻝㻑. 接客 㻟㻠㻑. 売価ミス 㻝㻑. 賞味期限 切れ 表示 㻞㻑 㻝㻑. 食中り 㻝㻑 異物混入 㻝㻑. その他 㻝㻞㻑. 品質・鮮 度 㻞㻑 接客 㻞㻜㻑 お褒め 㻝㻑. 要望・問 合せ 㻡㻥㻑. 図4により、大手スーパーマーケットの顧客の声と接客不良を分析する 直近の2011年度の大手スーパーマーケット、マルエツの顧客の声ルートを分析すると次の通りにな っている。 ・店長への直行便 8,810件 ・クレームメモ. 5,052件. ・インターネット 1,692件 ・フリーダイヤル 443件 年度計 15,997件となった。 月別に見ていくと、クレームメモが少しずつ増加しているが、苦情が増えただけという事ではな く、「このお店は、顧客の声に応えてくれる」から、顧客はクレームを申し出るという事実に着目し なければならない。そして、現場ではクレームを隠さず、オープンにして本社や関係部署へ報告し、 対応している。組織間の信頼関係が構築され、会社の風土がクレーム発生しても、個人の責任だけ 8. を責めずに、組織全体の問題として対応し、即改善に結び付けているところが注目点である。 しかるに年年歳歳、顧客の声が増え続けているのである。 一方で情報化社会の進展が著しく、インターネットやホームページへの書き込みによる 顧客の声が急速に増えつつある。ネットによるクレーム等々については、素姓を名乗らない場合、 顧客の顔が見えないため、安直な判断ではなく、内容やその声の意図するところを読み込んで、慎 重な判断をする事が求められる。. — 144 —.

(9) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. 大手スーパーマーケット顧客の声. 図4. 店長への直行便 クレームメモ インターネット フリーダイヤル 2009年度合計. 大手スーパーマーケット顧客の声. 㻌 㻥㻜㻜. 㻤㻠㻟. 㻤㻜㻤. 㻤㻜㻤. 㻤㻜㻜. 8,810件 5,052件 1,692件 443件 15,997件. 㻣㻤㻝. 㻤㻝㻟. 㻤㻜㻞 㻣㻞㻜. 店長への直行便. 㻣㻜㻜. 月別推移. 㻤㻞㻟. 㻣㻝㻤 㻢㻞㻝 㻢㻟㻤. 㻡㻜㻜. 㻠㻥㻥. 㻠㻜㻜. 㻝㻜㻜. 㻞㻡㻣 㻝㻠㻝. 㻝㻠㻜. 㻝㻢㻥. 㻝㻡㻣. 㻝㻠㻢. 㻣㻢. 㻜 3月. 4月. 5月. 6月. 㻝㻞㻤. インターネット. 㻡㻝㻥. 㻞㻥㻢. 㻞㻤㻜 㻝㻡㻟. 㻡㻠㻡. 㻟㻡㻢. 㻟㻡㻡 㻞㻣㻥 㻝㻟㻢. 㻡㻠㻝. クレ ーム メ モ. 㻟㻢㻣. 㻟㻜㻜 㻞㻜㻜. 㻢㻟㻥. 㻡㻡㻠. 㻢㻜㻜. 7月. 8月. 9月. 㻝㻢㻤 㻤㻢. 10月. 㻣㻡. 㻝㻝㻤. 㻝㻝㻢 㻤㻡. 11月. 12月. 㻝㻞㻜 㻢㻝. 㻢㻜. フリーダ イヤル. 1月. 2月. 図5により、接客クレームの内容を分析する 顧客が感情的になり、それが難クレームへと発展していくケースで、一番多いのが接客不良の原 因によるものである。首都圏に250店舗強を展開するスーパーマーケットでは、一年間に1,754件の 接客のクレームが届いています。これは、顕在化したクレームであり、実態はその三倍位の潜在化 したクレームが存在していると推定できる。 販売員の上から目線の態度や無視した行動等から顧客は感情的になり怒り出してしまう。 顧客の前を平気で挨拶もせず通り過ぎてゆき、顧客と接触した時、睨みつける販売員等々が顧客 のせっかくの楽しい買い物を不愉快なものにし、クレームへと発展させているのだ。 1,754件の接客クレームの内容を分析するとレジ・チェック・アウトでは、接客や商品の取り扱い、 そして顧客を平等に扱わなかったという苦情が多い。 サービスカウンターでは、適宜・適切・タイムリーなサービスがされていない。顧客の不や負に 応えていない点である。進物包装や顧客の問い合わせ等々において、全くその要望を満たしていな い点である。商品券の販売や進物包装等々のサービスの種類・機能が表示されているが、満足に運 9. 用されていないのが実態である。 営業部門については、全く顧客を無視して、陳列や商品の補充をしているといった声が多い。サー ビスの語源・基本である「相手の立場に立ち、顧客に尽くす」という考え方を浸透させる必要がある。 「 c u s t o m e r ʼ s f i r s t 」= 消費者第一主義 「 c u s t o m e r i s k i n g 」= 消費者は王様であるーこの理念を徹底する事が大切だ。販売員は、自 分なりに「殺し文句」を持って欲しい。 勤め帰りの主婦が閉店時に来店され、もうダメかなと思っていたとき、ドアを開けてくれて、「ゆ. — 145 —.

(10) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. っくりお買い物してください」と言われたときの感激は忘れられない。そして「止めてあったエス カレーターを再び動かしたくれた時」は、胸が熱くなったと。歯医者に急いで行ったとき、「本日の 診断は終了いたしました」の看板を掛けていた看護婦が、「間に合ってよかったですね」と言って、 看板をはずされた時、人は感動するものだ。. 図5. 接客クレーム(1,754件)の内訳 接客クレーム(1,754件)の受付先. その他 14.8%. 営業部門 23.3% レジ 59.7%. サービスカウンター 2%. 不満を持つ顧客のうちクレームを申し込まれるのは4%。 残り96%の方は、黙って二度と来店されない。 クレーム1件あれば同様の不満をお持ちになられる顧客が26人。 不満を持った顧客は、9~10人に話す。. Ⅳ−1.苦情・クレーム対応について クレームは、会社を崩壊させる威力をもっており、クレームを看過し、軽く見たため、重大なク レームに発展し、信用失墜を起こして、倒産した会社がしばしば散見される。クレームは、会社を 潰す威力と同時に対応の仕方如何で、顧客創造の大きなチャンスでもあるのだ。ハーバード・ウイ リアム・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich)の唱えた「ハインリヒの法則=1:29:300の 法則」がある。一つの重大な事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害があり、300件もの危 うく大惨事になる事故・災害が発生している。「ヒヤリハット」とも言われるが、初期対応の重要性、 初期対応がすべてを決めると示唆しており、小さな火の時に消しておく事が成否を決めるという事 10. 実を理解しておかなければならない。顧客の不満足⇒クレーム処理⇒ロイアル・カスタマーに転換 していく対応姿勢が極めて重要である。 不満を持つ顧客のうち、苦情を言ってこられるのは4%に過ぎない。残りの96%は、ただ黙って、 怒って二度と来ないだけである。苦情が一件あれば、同様の不満を持っている人は、平均26人いる。 不満のある人は、それを9~ 10人に話す。 まさにこのような現実を現場で痛感するケースを体感し、理論化に注力しました。一つの店舗で発 生した商品不良や接客の不味さは、他店舗でも同様に起きており、それが25 ~ 26人にも達してい. — 146 —.

(11) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. る恐ろしさである。不満を抱いた顧客は、友人・隣人に話すことになる。小さなクレームが信用を毀 損し、顧客を喪失し、企業を崩壊させてしまうという事実を深く心に留めておかなければならない。 『グッドマン理論』と呼ばれる顧客消費動向に関する法則と『ライクヘルドの法則』で顧客変化の 普遍性とその重要性を確認する。 Ⅳ−2.『グッドマン理論』 1975年にアメリカのジョン・グッドマン(John Goodman)が実施した調査をもとに、理論化し たものである。以下大きく3点が述べられている。 「クレーム処理のもたらす企業利益に関して」 ・ 商品やサービスを買って満足している顧客は60%、残り40%は何らかの不満がある ・ 不満を持った顧客が企業に対し、クレームを行う割合は40% ・ クレームを行い、その解決に満足した顧客の再購入決定率は、2グループに分かれる ・ クレームに対し、タイミングよく迅速に解決されたと感じている場合の再購入率は、単に解 決に満足した場合よりもさらに高い ・ 不満を持っていてもクレームを行わない顧客の再購入率は10% ・ クレームを行い、そのクレームへの対応にも不満を持った顧客の再購入率は0% 「口コミの波及効果について」 ・ クレーム対応に不満を抱いた顧客の批判的な口コミの影響は、満足した顧客の好意的な口コ ミの影響と比較しても、2倍近くも強く販売の足を引っ張る 「顧客に対する情報提供と企業の利益に関して」 ・ クレームを企業に対して申し立てるならばどのようにしたら良いかなど、顧客啓発用のパンフレ ットを読んだ人を対象に調査を行ったところ、その企業に対する消費者の信頼が高まり、好意的 な口コミの波及効果が期待される。また、商品の購入意欲が高まり、市場の拡大に貢献する。 この『グッドマン理論』からは、商品に対し不満を持った顧客に対し、迅速に対応し、満足を与 えることにより、商品の再購入率を82%に回復させることが可能であることがわかる。対応に於い ては、早さが求められる為、クレームを実際に受け止める顧客対応セクションによって実行できる 顧客満足活動であると言える。 また、この理論からは、迅速な対応を行うことにより、悪性の口コミも緩和されることが期待で き、顧客対応セクションでの対応により、企業や施設にとっての大きな損失を回避して、利益を向 上させることが出来ると考える。 図6. 購 入. 苦情・クレーム. 商品・サービス. 満足 60% よい評判は 1人→5人. 対応速度. 再購入率. 満足. 迅速. 82%. 遅い. 50%. 言う 40%. 悪い評判は 1人→10 人. 不満 40%. 企業の顧客対応. 不満 言わない 60%. 0% 10%. — 147 —. 11.

(12) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 究極の顧客満足を達成するために. 図6. CS(顧客満足)向上のための基本的な考え方. 顧客との関係性という視点から. 信頼関係の構築. 意見・要望等 きめ細かな 情報収集. 信頼関係 →. フレンドリーな関係. 満足へ転換 ▼ 固定客化. 不満・苦情の 円滑な処理. 忠誠心理解 →. 絆. ES(従業員満足)向上のための基本的な考え方. 働きやすく意欲の高 い職場環境の整備に よるESの向上. ESの高い従業員によ る接客スキルの向上 ▼ CSの向上. 顧客満足・ 顧客感動へと つながる. ご意見対応におけるCS向上には、施設全体で取り組む事が重要。. Ⅳ−3.『ライクヘルド(Frederick, F, Reichheld)の法則』 マーケティング法則であり、2つの法則を示している。 1つ目は、「1対5の法則」と呼ばれるもので、新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を獲得す るコストに比べ、5倍かかるという法則である。 2つ目は、「5対25の法則」と呼ばれるもので、既存顧客を現在より5%維持できるよう改善す れば、利益は最低でも25%以上改善されるという法則である。 この『ライクヘルドの法則』からは、既存顧客維持に注力することで利益が向上でき、そのため のコストは新規顧客獲得よりも安価であるということが言える。すなわち、既存顧客の維持は、費 用対効果が高いと言える。 商業施設に対して苦情・クレームを行うのは、サービスを提供している既存顧客であり、顧客に 対応するセクションは、既存顧客維持に重要な役割を担うものであるということを認識しなければ ならない。 12. 図7. 新規顧客獲得. 利益. 既存顧客維持. 利益. コスト. (ライクヘルドの1対5の法則). — 148 —.

(13) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. Ⅴ−1. グローバル化・情報化社会が進化する中、流通産業(スーパーマーケット)の店頭等、売場 の消費者行動変化を俯瞰し、新たに理論構築する 消費者行動を規定する諸要因について、C.Gウォルターズ(C.Glen.Walters)は、① 必需性 (needs)② 動機(motives)③ パーソナリティ(personality)④ 意識性(awareness)等であり、 消費者が購買決定にあたっての環境決定要因としては、大別して① 家族要因(family influences) ② 社会的要因(social influences)③ 企業要因(business influences)④ 文化要因(cultural influences) ⑤ 経済的要因(economic influences)の5ツを挙げている。基本的購買決定要因から、消費者行動 の環境モデルを下図のように捉える事ができる。消費者行動は、個人がある財貨の不足を感知して はじめて開始される。つまり商品なり財貨の不足(product dificiency) 、 これが一つの刺激(stimulus) となって行動される。 図8 ――――――――――――― フィードバック ――――――――――――― 経験 情報. ⇒ ニーズ、動機 パーソナリティ. ⇒. ~かどうか なにを どこで いつ いかに. 結 果. ⇒. 満足 あるいは 不満足. ⇒. 記憶. 購買決定. 基本の決定要因. 環境的影響要因. 家族 社会的 文化的 企業 所得. (消費者行動のモデル) (出所 : C.Glenn,ibid.,p.19). Ⅴ−2.消費者購買行動の変化 消費者の購買形態を分析するとモノに対するこだわりはなく、安ければ安いほど良いと考える「低 価格(Low price)探索消費」と、よいモノや自分のお気に入りには、お金を出す「マイ・バリュー (my value)消費」等に分類できる。 そして、ただ、便利だから購入するという利便性に安心・安全が付加される「アメニティ消費」 やモノにも低価格にもこだわる「バリュー発掘消費」の形態が見られる。従来の4P(product=製 品、price=価格、place=販売チャネル、promotion=広告宣伝)に、利便性や安心・安全等が購買 行動の要因として付加されてきている。 少子高齢化社会に突入した現在、顧客に新しい利便性を提供する事が必要である。 「御用聞き、配達」、「富山の薬売り」の如く、生活者に来ていただくだけでなく、企業が生活者に近 づく、マーケット・インの発想が必要である。消費行動の分析を図表化すると次のようになる。タ テの軸を「価格感度」の軸とし、何はともあれ「高くても良いと考えている人」は、上側に、とに かく「安いのが良いと考える人」は、下側に描く。 ヨコの軸は「こだわり」の軸とする。自分のお気に入りに「こだわる人」は、右側に、「こだわり のない人」は、左側に位置する。情報化社会の中、インターネット利用が常態化しており、多くの 情報をリアル・タイムに収集できるため、value発掘消費が益々活発化してくると予測する。. — 149 —. 13.

(14) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. 高くても良い. 図9. ↑ . (A M E N I T Y 消費). (M Y V A L U E 消費). 購入するとき、利便性重視、快 適生活、安心・安全に視点 即席性食品 DVD デジカメ. 自分が気に入って、付加価値に は、対価を払う 趣味用品、おしゃれ洋品、 嗜好品物. (L O W P R I C E 探索消費). (V A L U E 発掘消費). 商品にこだわりなく、安ければ 買う 外食、消耗品、 100円ショップ. 多くの情報を収集し、お買い得 品、お気に入りを安価で買う 特売品、売出し商品 海外旅行、携帯電話. ↓ 安さ重視 (※Ⅹ軸は、実利的消費からバリュー探索消費の流れ). Ⅴ−3.コトラーの戦略的マーケティングに対して、現場の検証結果から私見を述べる マーケティング分野の世界的権威、J,マッカーシー(J,McCarthy)は、1960年代にマーケティン グ・ミックスで、4つのP(プロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=流通、プロモーショ ン=販売促進)を提唱した。 (1)製品 product=品質、デザイン、サイズ. ⇒ 顧客にとっての価値=customer value. (2)価格 price=表示価格、値引き、支払期限 ⇒ 顧客の負担=cost to the customer (3)販促 promotion=セールスプロモーション ⇒ 顧客とのコミュニケション=communication (4)流通チャネル place=仕分け、在庫、配送 ⇒ 顧客の入手便利性=convenience この四つに既に包含されているが、そこから取り出して、顧客の声=customer voice、世論= public opinionについて、強化することを提唱する。多くの人々が特定の商品やサービスに寄せる関 心は、その時代の雰囲気や流れに左右されるからだ。総ての顧客を維持していく戦略をアメリカの スーパーマーケット、スチュー・レオナルドの施策から分析する。大変、顧客から支持され、利益 率の高いスーパーマーケットである。そこでは、従業員に二つのルールを徹底している。 規則1. 顧客はいつも正しい 規則2. もし顧客が間違っているならば、規則1に戻ること-顧客はいつも正しいとうたってい るではないか。 失った顧客は、その店にとって5万ドルの損失になる。平均的な顧客は、一週間当たり100ドル 14. 相当の食料品を購入する。その買い物は、年に50週、およそ10年にわたって行われるからだ。次の ような試算からである。100ドル×50×10=5万ドル 日本の消費者の平均は、2500円/客単価× 3回(週)×50×10=375万円 そしてフィリップ・コトラー氏は、「日本では、モノを作る場合の顧客の立場での視線が欠けてい ると言わざるを得ない」-と忠告している。米国などでは、CMO(チーフ・マーケティング・オフ ィサー=最高マーケティング責任者)という役職を置いているが、日本には殆ど存在しない。最高 経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)などは日本にも定着したが、CMOを据える会社はごく. — 150 —.

(15) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. 一部に過ぎない。日本の会社は、顧客創造やマーケティングは、営業部門が受け持つと考えている からだ。ここに大きな間違いが発生するのだ。組織セクショナリズムに陥り、不都合な調査結果や 顧客の声が組織防衛のため、消されてしまうのだ。組織の牽制機能が働いていないのだ。筆者が現 場で実際に実行し、マーケティング担当、顧客サービス担当を独立させて、経営トップに直接意見 具申できる位置づけにしたところ、業績が回復した事例がある。どうしても、営業を担当するライ ンは、自分の部署のクレームや要望を隠してしまい、本当に顧客の真実の声が経営トップに届いて いないケースが多々あるという事実だ。企業は市場と顧客と深く関わり、どのような商品を作り、 顧客の声を如何に収集し応えていくかに注力し、顧客の声と新商品等のポートフォリオを最適化す る事が求められる。 営業部門だけでなく、顧客の声を吸い上げる部門の顧客視点の施策を打ち出さなければ、マーケ ットから見放されてしまうのだ。経営トップは、顧客の声からイノベーションが始まることを深く 認識すべきである。マーケティング、顧客サービス機能が、企業が目指すべき重要な役割を担って いることを経営者は、認識しなければならない。 Ⅴ−4.20対80の法則 利益貢献の高い上位20%の顧客によって、全体の利益の80%がもたらされるというものである。 利益貢献度の低い、下から30%の顧客によって、企業の潜在的利益が半減させられているという考 え方もある。言い方を変えると殆どの企業は、何らかの割合の不当顧客に金を払っているのである。 企業は利益を損なおそうとした顧客にどう対処したらよいのだろう。 「放り出せ、競争企業の利益を吸い取らせるために、そうした顧客を手放しなさい」「すべての顧 客を維持する価値があるだろうか」、答えは「ノー」だ。遅かれ早かれ、利益に貢献する顧客に転換 できない顧客は維持する価値がなくなる。 このような考え方がマーケティング担当者に横行しているが、筆者はこれに賛同しない。反論し、 対案を述べることとする。逆に利益を損なう顧客をファンにして、利益をもたらす顧客に変えるの が究極の顧客対応なのだ。 「我々はどうしたら利益の出ない顧客を有益な存在に変える事が出来るか、自問自答すべきだ」 。 「どんな顧客でも、とても予期しない対応や心の琴線に触れるような親切な応対をされると、感動 する」。「プロのクレーマーをお店のファンにする」-これが究極のサービスだ。 あの有名な高級百貨店、ノードストロームの顧客への姿勢は「すべてはお客様のために」「お客様 がすべて」-をキーワードにサービスを徹底している。ある日、二人のクレーマーがやってきて、 返品の申し入れをした。返品商品は、当該百貨店では、扱っていない商品であったが、接客した若 い女子販売員は、気持ちよく「わかりました、◎◎ドルを返金します」と言って、笑顔で対応した のだ。女子販売員は、二人のクレーマーに対して、何とかしてあげたいと考えたのだ。そして、重 たい商品を二人で持ち上げようとしたので、販売員は「そのままで、結構ですよ」と優しく、声を かけた。二人のクレーマーは、ビックリして、「え、こんなに親切にしてくれるの?」と思い、クレ ーマーは「あのお店には、迷惑をかけるな」と吹聴し、それがクレーマー仲間に口コミで伝わり、 ノードストロームには、クレームを持ち込まなくなったのだ。 ノードストロームの哲学に「貴女がお客様にしてあげたいと思ったら、貴女の責任でやってくだ さい」-とあるのだ。 筆者も同様の経験をした。千葉県のお店で朝市を開催した時、この朝市は月末に一回、定時定点 でおこなっていた。ある日、早朝の大変混雑した店頭での出来事だ。. — 151 —. 15.

(16) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. そのお店では、クレーマーというレッテルをはられて、販売員から嫌がられている中年の野球帽 を被ったお客様が朝市に来られた。いつもその中年の男性客が来たときは、何らかのクレームをつ けたり、女子販売員に言いがかりをつけて、泣かせてしまう場面も多々あった。当日、筆者が店頭 できゅうりやトマト等を販売していると、大きな声で、店頭にいる若い従業員に「ジャコテンはど こや?」と怒鳴っていたので、筆者が対応し、「すみません、ジャコテンは生鮮商品ですから、店内 の鮮魚売場に陳列していますので、そちらでお買い求めください」とお応えした。「朝市は、店頭販 売ではないのか」と捨て台詞を残して、店内に入っていかれた。店内は、売り出し中で大変な混雑 をしており、筆者は、お客様の事が心配になり、裏口から鮮魚売場に行き、そのお客様を待ってい ました。すると赤い帽子を被ったお客様が見えたので、「ジャコテン何個お買い求めですか?」と声 をかけると、ビックリされて、「四つくれ」と言われ、「あんた何でここにいるんや」と話しかけて きました。「いや、お会いできてよかった」と返答した。 そして、もとの店頭の売場に戻り、販売していると、先ほどのクレーマーが私の肩に手を置き、 「あんたも大変だな」と一言を残し帰られました。お客様の心に響いたのか、その後、固定客、お得 意さんになられ、お店を大変贔屓にしてもらうようになったのだ。 どんなお客様にも相手の立場に立って、気持ちを察して、こちらが身を捨てて対応すると、必ず 相手に響くものだと強く感じた次第だ。 だから「企業の利益にならない顧客こそ、真摯に対応し、誠意を示して、相手の立場にたって接 すれば、必ず有益な固定客に転換出来る」のだ。これを心に刻んで対応したいものだ。 Ⅴ−5.コトラーの市場占拠・勝つための創造的マーケティング 世の中には三種類の企業がある。一つは自ら新たなことを起こす企業、もう一つはその成り行き を見守る企業、そして最後は何が起こったか当惑する企業である。 (Kotler on marketing: How to create, win, and dominate market the free press NY.1999) 最後は何が起こったか当惑する企業である。「変化するか、さもなければ死ぬだけだ」。ヒューレ ッド・パッカード社のリチャード・ラブ(Richard Love)は「変化のスピードは、極めて急激であ り、変化できるかどうかが、いまや競争優位となった。 必ず成功するマーケティング活動の決まり文句に次のようなものがある。 ① 高品質で勝負せよ ② 良いサービスで成功せよ-顧客の要望をつかんだスピード、気配り、知識、問題解決能力など、 個々の特性をつかんで対応することだ。その人、その時、その状況によって対応の仕方は、変 わってくる。ただ良いサービスを主張するだけでは不十分なのだ。 ③ 低価格で成功せよ-世界最大の家具小売チェーンであるイケア、世界最大のGMS、総合スー パーであるウォルマート、そして米国で最も効率の良い航空会社の一つであるサウスウエスト 航空がそうである。顧客は価格だけでなく、その価値を考えて購入しているのだ。品質・サー 16. ビス・利便性を提示しなければならない。 ④ 高い市場シェアで成功せよ ⑤ マス・カスタマイゼーション 多くの買い手は、売り手企業に対して、特別利便の製品やサービスの提供を期待している。ホテ ルの宿泊の中には、一日数時間だけ部屋を利用したいと思っている人がいる。このようなニーズに 応えていく事が重要だ。 ⑥ 絶え間ない製品改良で成功せよ. — 152 —.

(17) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. ⑦ 製品の革新で成功せよ ⑧ 高成長市場に参入して成功せよ ⑨ 顧客の期待を上回ることで成功せよ 「成功している企業は絶えず顧客の期待を上回るものを提供している」のである。 顧客の期待に見合うことは、顧客を満足させるに過ぎない。しかし顧客の期待を超えるならば、 顧客を大喜びさせることが出来る。売り手に対して好感を抱いている顧客は、その企業の顧客であ り続ける確立がはるかに高いのである。問題は一度期待以上のことをしてもらうと、顧客の期待は 一層高まることである。より高い期待を上回る仕事をするのは、容易なことではないし、費用もか かる。今日では顧客の多くが高い品質、付加的サービス、利便性、カスタマイゼーション、返品、 保証制度等を最も安い値段で得られることを望んでいる。 ピーターF. ドラッカーは「マーケティングの目的は、販売を不要にすることだ」と述べている。 手垢のついたニーズを見つけ出し、その問題解決を用意することである。「マーケティングを非常に 上手く展開する事が出来れば、その新製品は大勢の顧客に好かれ、評判は口コミで広がり、販売は 殆どいらなくなる」。 Ⅵ−1.「顧客満足」の課題 顧客満足を達成するには、それを担う顧客対応セクションの役割は重要である。 常に客観的な立場で各組織に顧客視点で警鐘を鳴らしたり、顧客の声をダイレクトに且つダイナ ミックに各組織に浸透させて、顧客主導の経営政策を貫いていき、企業成長の基軸を構築しなけれ ばならないのである。 (1)顧客対応部門を中心とした継続的な活動維持の必要性 様々な商業施設やサービスが存在する現在において、其々の顧客ニーズも多種多様なものになり、 ひとつのサービスにとらわれず、広い視野での対応が要求されてきている。また、顧客はひとつの サービスに慣れてしまうと、それが当たり前のサービスとして捉える。本来、副次的なものであっ たサービスが、あって当たり前のサービスに変化してしまうのである。言い換えれば、顧客満足は 劣化するのである。 顧客のニーズというものは、このように上がっていく一方である為、企業としては、常により良 いサービスを維持し、さらに品質向上をさせていかなければならない。しかしながら、「顧客満足」 の活動自体は、営業や開発などとは違い、直接的な生産性のない活動に見えるが、これこそ全従業 員が取り組むべき必須の経営課題であるのだ。 Ⅵ−2.顧客対応部門の人材育成の必要性 顧客満足は、主に長期的な顧客満足活動のほか、苦情・クレーム対応のような短期的な顧客満足 活動が必要になる場合も存在する。企業・店舗の様々なサービスに対してマイナス・イメージをも って問合せ等をしてきている顧客に対し、満足度を向上させるにはどうしても対応の迅速さが求め られるため、状況判断力等について高度な能力・資質が求められる。 顧客は、ニーズを持って問合せをしている為、ニーズを超えた対応が顧客感動を生み、満足度ア ップへ繋がり、アッと驚くようなサービス提供を受けた時に顧客は強い満足度を抱き、感動するの である。それには、顧客ニーズの的確な把握、つまり鋭い感性と懐の深い受容力が要求されるのだ。 さらに様々な顧客に相応しいサービス提供が必要になるため、専門性を備えた顧客対応部門が必要 となってくる。. — 153 —. 17.

(18) 日本の流通産業に於ける感動の顧客満足度について:顧客の声による顧客感動CSの測定アプローチ. Ⅵ−3.意識教育、啓蒙の必要性 顧客対応部門は、顧客と直接接する機会が多い為、接客は勿論、電話やメールでのコミュニケー ション能力の高さも要求される。これは単に完璧な敬語や言い回しというモノではない。本当に必 要なものは、顧客の立場に立って考えるということである。すなわち『顧客の代弁者』でなければ ならない。お店では顧客満足という商品を売るセールスマンであり、顧客に対しては、「尽くしてあ げて、相手に何も求めない」姿勢、ラテン語のセルバス(servus)=奴隷・戦利品を心に留めて応 対することだ。顧客は何故、そのような問合せをしてきたかを考えて行動することで、顧客側には、 共に問題解決に取り組んでいるという意思が伝わるのだ。 (結論) 納得できる顧客満足を達成するため、企業の顧客対応部門では、顧客情報をデータベース化し、 検索・分析を行い、結果を関係組織に伝達し、改善依頼して、その結果を監査するシステムの構築 を企業は進めているようであるが、まだまだその取り組みの最中にある。ハード・システム面の改 善は、勿論必要であるが、その前にやるべき事が山積しているのが現場の実態である。しかし、顧 客の企業を見る目、評価する基準が高度化した「生活者の時代」に於いて、企業が継続して顧客に 支持され続けるためには、顧客視点の企業活動ができるか否かが生死を決すると言っても過言では ない。今までと同じように顧客対応部門が、苦情対応だけをやっているようでは、到底、顧客満足 度を向上することは出来ないし、その企業の将来性はない。図6にあるように、顧客対応部門に寄 せられた顧客の声を如何に活用して企業の経営活動に活かし、顧客視点での経営姿勢で改革・改善 を進める中で、究極の顧客満足を達成できるのであり、企業の成長・発展が約束されるのだ。その ために、企業は、顧客の声に耳を傾け「声なき声」を掬い上げて、情報分析し、問題発見し、改善・ 改革課題を設定し、スピーディーに対応して行かなければならないのだ。そして企業の中での顧客 対応の窓口の価値を高めていくことが企業成長のためにも大切である。そして、顧客対応・サービ ス部門が発言力を持ち、経営体制の基軸になったとき、企業の永続的繁栄が約束されるのである。 顧客対応部門は、商品、サービスに対する不満や疑問、企業活動に対する評価や期待についての変 化をキャッチするセンサーとしての機能に加え、顧客の意識や社会の変化に対応して、常に顧客視 点での企業活動ができるよう経営トップや関連部署に働きかけをする機能となるまで、組織強化と 質の高度化を図らなければならない。そして、顧客対応部門の役割は、企業経営における重要な組 織使命を担っているということをトップ・マネジメントは、理解しなければならない。そのような 意味で顧客対応の窓口は、既に述べてきた「顧客が満足する」という職務遂行責任と社内に顧客の 声を伝えるという組織責任があり、それが結果的に企業の社会的存在価値を高めることになるのだ。 単なるクレーム対応という範囲を超えて、如何に “顧客を意識するか” という意味に於いて、その 機能を発揮して、顧客と企業との間に立ち、両者に対して付加価値も創出する起爆剤を秘めている のだ。 18. 改めてピーター・F・ドラッカーの言葉である、 「企業は顧客の創造である」を噛みしめなければ ならない。すなわち、「事業とは何か、それは、顧客を創造することである」を心に刻むことだ。 企業が顧客の立場から事業を眺めることによって、初めて顧客が何を考えているかがわかり、顧客 創造とは何かが理解できるのだ。「顧客がすべて」、 「すべては、顧客のために」を提唱したベッツ イ・A. サンダース(元ノードストローム百貨店副社長)の顧客に対する哲学を今こそ、企業組織に 植えつける時だと考える。. — 154 —.

(19) 国際経営・文化研究 Vol.18 No.2 March 2014. 【参考文献】 (1) Anthony Flynn &Emily Flynn Vencat.(2012) 「Custom Nation Why Customization is the Future of Business and how to profit from it.(BenBella BooKs.Inc) ( 2 ) 杉本徹雄(2012)「新消費者理解のための心理学」 (福村出版) ( 3 ) 中本博皓(1934)「現代の消費経済と消費者行動」 (税務経理協会) ( 4 ) 塩崎潤一他(2005)「第三の消費スタイル」(野村総合研究所) ( 5 ) Philip Kotler(2000)木村達也訳、「コトラーの戦略的マーケティング」 (ダイヤモンド社) ( 6 ) ダイヤモンド・ハーバードビジネス編集部編(1998) 「顧客サービスの競争優位戦略」 (ダイ ヤモンド社) ( 7 ) 新井勝利(2005)「ポスト顧客満足の教科書」 (アスカ) ( 8 ) 佐藤知恭(1994)「顧客満足ってなあに?」(日本経済新聞社) ( 9 ) 戸田覚(2000)「究極のサービスが見たい」(ダイヤモンド社) (10) 小澤信夫(2009)「お店のクレーム解決力」(ダイヤモンド社) (11) 株式会社マルエツ顧客サービス室(1998)「店長への直行便レポート」−消費者志向優良企業 として認定され通産大臣賞を同社は受賞する。 (12) 小澤信夫(2007)「リーダーのための実践的マネジメント心得集(ストアジャパン社) 【引用・参考文献】 独立行政法人国民生活センター「PIO-NETにみる2011年度の消費生活相談全国データー」 PIO-NET=Practical Living Information On Line Network System) 図1 独立行政法人国民生活センター PIO-NET、2011年度消費生活センター生活相全国データー 図2 株式会社マルエツ 顧客の声調査資料から作成 図3 株式会社マルエツの顧客実態調査から分析し作成 図4 株式会社マルエツ お客様サービス室出典 図5 株式会社マルエツ お客様サービス室出典 図6 三井不動産商業マネジメント株式会社 お客様サポート室出典 (受理 平成26年1月16日). 19. — 155 —.

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参照

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今回、新たな制度ができることをきっかけに、ステークホルダー別に寄せられている声を分析

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