白鴎大学論集第22巻第1号
論文
改正減価償却制度の研究
藤浪英也
Thestudyofareviseddepreciationmethod
FUJINAMIHidenari
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
目次
はじめに 減価償却に関わる税制改正の内容 減価償却に対する会計上の規定と税法の逆基準性 税制改正がもたらす経営環境への影響 まとめ第1章はじめに
平成19年度税制改正において、安倍内閣のめざす「経済成長なくして日 本の未来なし」の下、「国際的なイコールフッティングを確保するため減 価償却制度の抜本的な見直し(大正7年の制度創設以来の大改革。約40年 ぶりの大改正。)」、がおこなわれた。これらの税制改正により、r企業の国 際競争力・経済の成長力がより一層強化され、我が国経済が活性化す る。」(1)ものと期待されている。 減価償却は会計学においても重要な論点の一つであるが、この論文では 今回の改正の内容を吟味した上で、,会計トライアングルにおける「税法」 の逆基準性を検証し、今回の税制改正が企業の経営環境にどのように変化 をもたらすかを、論証しようと試みるものである。 また、新減価償却制度における定率法による減価償却額の計算について EXCEL(2)を用い、取得価額と耐用年数を入力するだけで償却額の計算が 行われるシートを作成した。第2章減価償却に関わる税制改正の内容
減価償却制度の抜本的見直しとして法人税、所得税その他の関連諸税に またがる、減価償却制度について、国際的なイコールフッティングを確保 し、イノベーションの加速化により、企業の国際競争力・我が国経済の成 長力を強化するため、減価償却に関し下記の項目が改正された。 1.償却可能限度額及び残存価額の廃止 平成19年4月1日以降取得する減価償却資産から償却可能限度額及び残 存価額を廃止し、耐用年数経過時点に備忘価額(1円)まで償却できるこ ととなった。また、これに伴い所要の整備がおこなわれた。なお、すでに 償却が進み残存価額が5%となっている資産については、以後5年間で均改正減価償却制度の研究 等償却できることとなった。 2.新定額法における償却限度額の計算方法 今回改正された項目のうち定額法の償却限度額はその償却額が毎年一定 となるように当該資産の取得価額にその資産の耐用年数に応じた耐用年数 省令で定められている定額法の償却率を乗じて計算した金額となる。しか し、今回の改正で残存価額がなくなったが、備忘価額(1円)を残すこと となる。 計算式を示せば下記のようになる。
定額法の償却限度額
=取得価額×耐用年数省令による償却率
取得価額100,000,000円 耐用年数5年定額法償却率0.2 1年目∼4年目の償却限度額 100,000,000円×0.2ニ20,000,000円 5年目の償却限度額 100,000,000円×0.2−1円=19,999,999円 となる。 ちなみに旧定額法の場合定額法の償却限度額
=(取得価額一残存価額)×耐用年数省令による償却率
ここに残存価額は取得価額の10%とされていたので耐用年数5年定額法償却率0.2の場合
1年目∼5年目の償却限度額 (100,000,000円一10,000,000)×0.2=18,000,000円 となる。旧定額法における償却限度額の総額は取得価額の90%であるが、残存価額の95%まで償却することが認められていたので、税法上損金に算 入される減価償却費の総額は95,000,000円となる。この未償却残額は売却 または廃棄等されない限り、損金に算入されることはない。 これに対して、新定額法は1円の備忘価額まで償却することになるので、 税法上損金に算入される減価償却費の総額は99,999,999円となる。 3.定率法を採用する場合の償却率の改正 改正前の定率法における償却率は、耐用年数経過時において残存価額が 10%になるよう計算された率を用いていたが、今回の改正で、定額法の償 却率を2.5倍した数値を用いることとなった。 なお、平成19年3月31日以前に取得した既存の減価償却資産については、 税務上改正前の償却方法をそのまま継続適用するとともに、償却可能限度 額まで償却した事業年度の翌事業年度以後5年間で備忘価額まで均等償却 ができることとされた。 4.新定率法における償却限度額の計算方法 今回改正された新定率法による計算方法は、その償却費が毎年一定の割 合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた定率法の償却率を期首未 償却残額に乗じて計算した額(「調整前償却額」)であるが、この調整前償 却額が当該資産の取得価額に耐用年数省令で定められた保証率を乗じた金 額(r償却保証額」)に満たないときは、当該期首未償却残額(r改定取得 価額」)に耐用年数に応じたr改定償却率」を乗じて計算した金額を償却 限度額としその後毎年同額となるように償却するものである。ただし、耐 用年数経過時点においては備忘価額(1円)までを償却限度額とする。 計算式を示せば下記のとおりである。
定率法の償却限度額(「調整前償却額」)
=期首未償却残額×定率法の償却率
改正減価償却制度の研究
ただし「調整前償却額」<「償却保証額」「償却保証額」=取得価額×償却保証率
の場合は「改定取得価額」×「改定償却率」となる。 ,下記の図表1はこの定率法による償却限度額の計算をEXCELで示した もので、適応対象はSheet2の耐用年数表を限界とする。なお、Sheet2 の耐用年数を伸長すれば無限に適応する。図表1EXCELによる定率法計算シート
取得価額200αooaoO
0.25000
●88,960
0.334
改定前1償却累欝額1,733,031266,969
89,給7
(注)一円未満の端数は切り捨てた ..__聾謹1図表2
償却率、改定償却率及び保証率のテーブル A B C D E三 F G 糾 1 Sheet223
減価償却資産の償却率、改定憐却率及び保証率の表 4 、194
1日以詫冨 ’19 331日諺 1 5 耐用 定額法 定率法 耐用 旧定額} 旧定率法 6 証瓢 7 2 0.5 1 1 0 2 0.5 0,684 8 3 0,334 0,833 1 0.02789 3 0,333 0,536 9 4 0.25 0,625 1 0.05274 4 0.25 0,438 105
0.2 0.5 1 0.062495
0.2 0,369 ” 6 0,167 0,417 0.5 0.05776 6 0,166 0,319 127
0,143 0,357 0.5 0.05496 7 0,142 0.28 13 8 O,125 0,313 0,334 0.051“ 8 0,125 0.25 14 9 0,112 0,278 0,334 0.0473嘆 9 0.判1 0,226 15 10 0.1 0.25 0,334 0.04448 10 0.1 0,206 16 ” 0.09オ 0,227 0.25 0.04123 ” 0.09 0,189 17 曜2 0,084 0,208 0.25 O.0387 12 0,083 0,175 18 13 O,077 0,192 0.2 0.03633 13 0,076 0,162 董9 14 0,072 0.嘩79 0.2 0.03389 14 0,071 0,152 20 15 0,067 0.葉67 0.2 0.03217 15 0,066 0,142 21 {6 0,063 0,156 0,167 0.03063 16 0,062 0,134 22 17 0,059 0,147 0,167 0.02905 17 0,058 0,127 23 18 0,056 0,139 0,143 0.02757 18 0,055 0.12 24 19 0,053 0,132 0,143 0.02616 19 0,052 0,114 25 20 0.05 0,125 0,143 0.025葉7 20 0.05 0,109 26 2嘩 0,048 0,119 0,125 0.02408 2コ 0,048 0,104 27 22 0,046 0.“4 0,125 0.02296 22 0,046 0,099 28 23 0,044 0,109 0.“2 0.02226 23 0,044 0,095 29 24 0,042 0,104 0,112 0.02157 24 0,042 0,092 30 25 0.04 0.1 0,112 0.02058 25 0.04 0,088 31 26 0,039 0,096 0.1 0.01989 26 0,039 0,085 32 27 0,038 0,093 0.{ 0.0荏902 27 0,037 0,082 33 28 0,036 0,089 0、09で 0.01866 28 0,036 0,0フ9 34 29 0,035 0,086 0,091 0.01803 29 0,035 0,076 35 30 0,034 0,083 0,084 0.01766 30 0,034 0,074 36 3葉 0,033 0,081 0,084 0.0葉688 31 0,033 0,072 3了 32 0,032 0,0フ8 0,084 0.01655 32 0,032 0,069 38 33 0,031 0,076 0,077 0.01585 33 0,031 0,067 39 34 O.03 0,074 0,077 0.01532 34 0.03 0,066 40 35 0,029 0,071 0,072 0.01532 35 0,029 0,064 41 36 0,028 0,069 0,072 0.01494 36 0,028 0,062 42 37 0,028 0,068 0,072 0.01425 37 0,027 0.06 43 38 0,027 0,066 0,067 0.01393 38 0,02フ 0,059 44 39 0,026 0,064 0,067 0.0137 39 0,026 0,057 45 40 0,025 0,063 0,067 0.01306 40 0,025 0,056 46 4葉 0,025 0,061 0,063 0.01306 41 0,025 0,055 47 42 0,024 0.06 0,063 0.01261 42 0,024 0,053 48 43 0,024 0,058 0,059 0.0重248 43 0,024 0,052 49 44 0,023 0,05フ 0,059 0.0121 44 0,023 0,051 50 45 0,023 0,056 0,059 0.01175 45 0,023 0.05 51 46 0,022 0,054 0,056 0.01175 46 0,022 0,049 52 47 0,022 0,053 0,056 0.01153 47 0,022 0,048 53 48 0,021 0,052 0,053 0.0”26 48 0,021 0,047 54 49 0,021 0,051 0,053 0.01102 49 0,021 0,046 55 50 0.02 0.05 0,053 0.01072 50 0.02 0,045 国税庁「法人の減価償却制度改正のQ&A」平成19年4月より一部改変(3)改正減価償却制度の研究 事例
取得価額1億円
耐用年数10年
図表3新定率法償却額の計算とグラフ
AB
CDEFG
12345678910”惚1314 10α00α000ノα00
正前却当3間の
年懊却率0.2068,104,330
儂却額BA−B
120,600,0004,400,000
216,356,4002,393メ300
312,986,982茸,075,518
410,311,663235,212
取得価額 耐用隼数 償却率 保証率 償却保証額 改定儂却率 調整前帳簿価額 改定前償却額0.25000
0.04448
4,448,000
α334
改定萬償却累計器86,6引,61113,348,389
4,458,361
(注〉一円未満の端数は切り捨てた 15裕17181920加2 価 率法却調価
改定却額 改定価額 却A 223餌252 62728293 0313233343536373
8394 0如4243鱗4546卿4849 100鼎00£00 25000000 75000000 認4 0 7蔦0臨000 25000000二 7製00鯉00 1猛750000 5鱗蟻000 0 5島2鯉0 i8750£00 5銚250000 1戴500 42187500』
0 42187500 14∴062歪00 ヱ187500 10546875 34澱0625 0 316匁625 10546澄75 31640625 ↓ 上 79導0156 23730469 0 23730469 訟910156 2隻730丑69麗617
17797852』
0 1了797852 593261フ 1234567890ーク﹃乖→葦﹂
17轟7鍛852 磁鯉63 1鰯484389 0 1急34集389 畿449詮63 葉3348£89 0 000 4滋58む36斗88難8
445鰻6硅 0 0 OOO 445836硅ム
443L667 4458鐘6」 0 0 000 4滋31666 1 4設3鰻66 0 0 000 0 1 0 0 0 000 0 1 0 30,000,000 25,000,000 20,000,000 15,000,000 10,000,000 5,000,0000
・嘩11諄達ーマウもウら →一減価燈却・,12345678910
第3章減価償却に対する会計上の規定と税法の逆基準性
1.減価償却費の計算要素と税法の逆基準性 有形固定資産の減価償却費は、固定資産の取得原価を耐用期間の各事業 年度に配分するためのものであるから減価償却費を計算するには、 ①基礎となる価額(取得原価) ②費用配分する減価総額計算のための残存価額③償却計算方法
を決定しなければならない。これらを減価償却の計算要素と呼んでいる。 しかし、これらの計算要素のうち耐用年数及び残存価額については、税法 の規定によっているのが現状である。この章ではr企業会計原則」、r企業 会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」および税法を通して、 会計トライアングルにおける税法の逆基準性を検証する。 2.企業会計原則等減価償却に関する規定 減価償却費を計算するための三要素は「企業会計原則」および「企業会 計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書(以下「連続意見書」と いう)第三『有形固定資産の減価償却について』」において、規定されて いる。 ①企業会計原則の規定 まず、企業会計原則における減価償却に関する規定についてみると、貸 借対照表原則五において「資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配 分の原則によって、各事業年度に配分しなければならない。有形固定資産 は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の 方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し(略)なければならな い。」とされている。 さらに同Dにおいてr有形固定資産はその取得原価から減価償却累計額 を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。有形固定資産の取得原価改正減価償却制度の研究 には、原則として引取費用等の付随費用を含める。(略)償却済の有形固 定資産は除却されるまで残存価額又は備忘価額で記載する。」とある。 また、減価償却の計算方法については同注解20において下記のように列 挙されている。 「イ定額法 固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法
ロ定率法
固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償 却費を計上する方法ハ生産高比例法
固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産または用益の提供の 度合に比例した減価償却費を計上する方法二取替法
同種の資産が集まって一つの全体を構成し、老朽品の部分的取替を繰 り返すことにより全体が維持されるような固定資産については、部分的 取替に要する費用を収益的支出として処理する方法を採用することがで きる。」とされている。 ②連続意見書の規定 連続意見書第三「有形固定資産の減価償却について」において、減価償 却の意義について以下のように解説されている。『減価償却は、費用配分 の原則に基づいて有形固定資産の取得原価をその耐用期間における各事業 年度に配分することである。』。そして『減価償却の最も重要な目的は、適 正な費用配分を行なうことによって、毎期の損益計算を正確ならしめるこ とである。このためには、減価償却は所定の減価償却方法に従い、計画的、 規則的に実施されねばならない。利益におよばす影響を顧慮して減価償却 費を任意に増減することは、右に述べた正規の減価償却に反するとともに、 損益計算をゆがめるものであり、是認し得ない』と記述されている。ア.取得原価と残存価額 取得原価と残存価額についてはr四固定資産の取得原価と残存価額」 において、『減価償却は、原則として、固定資産の取得原価を耐用期間の 各事業年度に配分することであるから、取得原価の決定は、減価償却にとっ て重要な意味を有する。固定資産の取得にはさまざまの場合があり、それ ぞれに応じて取得原価の計算も異なる。 1購入固定資産を購入によって取得した場合には、購入代金に買入 手数料、運送費、荷役費、据付費、試運転費等の付随費用を加えて取得原 価とする。但し、正当な理由がある場合には、付随費用の一部又は全部を 加算しない額をもって取得原価とすることができる。 購入に際して値引又は割戻を受けたときには、これを購入代金から控除 する。』購入以外にも自家建設、現物出資、交換及び贈与による取得につ いて記述があるが、ここでは省略する。 イ.耐用年数 耐用年数についてはr八耐用年数の決定」においてr固定資産の耐用 年数は、物質的減価と機能的減価の双方を考慮して決定されねばならない。 物質的減価は技術的に比較的正確に予測されうるが、機能的減価は偶然性 を帯び、これを的確に予測することがはなはだ困難である。このために、 従来、耐用年数は主として物質的減価を基礎として決定され、機能的減価 はあまり考慮されないのが実情であった。しかしながら、今日のように技 術革新がめざましい勢いで進行しつつある時代においては、機能的減価を 軽視することは許されない。したがって、今後における耐用年数の決定に 際しては、機能的減価の重要[生を認め、過去の統計資料を基礎とし、これ に将来の趨勢を加味してできるだけ合理的に機能的減価の発生を予測する ことが要求される。耐用年数が決定されたのちに、その耐用年数の前提条 件となっている事項が著しく変化した場合には、これに応じて当該耐用年 数を変更しなければならない。耐用年数の変更は、将来に影響するばかり でなく、原則として前期損益修正を必要ならしめる。』とし、続く「同
改正減価償却制度の研究 九一般的耐用年数と個別的耐用年数」において『固定資産の耐用年数には、 一般的耐用年数と企業別の個別的耐用年数とがある。一般的耐用年数は、 耐用年数を左右すべき諸条件を社会的平均的に考慮して決定されたもので、 固定資産の種類が同じであれば、個々の資産の置かれた特殊的条件にかか わりなく全国的に画一的に定められた耐用年数である。これに対して、個 別的耐用年数は、各企業が自己の固定資産につきその特殊的条件を考慮し て自主的に決定したものである。元来、固定資産はそれが同種のものであっ ても、操業度の大小、技術水準、修繕維持の程度、経営立地条件の相違等 によってその耐用年数も異なるべきものである。現在、わが国では税法の 立場から定められた一般的耐用年数のみが行なわれているが、上述の理由 により、企業を単位とする個別的耐用年数の制度を確立し、わが国の減価 償却制度を合理化する必要がある。』とある。ここにも記述されていると おり、『現在、わが国では税法の立場から定められた一般的耐用年数のみ が行なわれている。』とされ、個々の企業の特殊性を考慮し、それぞれの 企業において最も適切な方法で有形固定資産の期間配分を行うべきだとの 立場から、詳細な規定はあえて設けず、その結果、実務的には課税の公平 の見地から詳細な規定を持つ税法基準(減価償却資産の耐用年数に関する 省令。「耐用年数省令」。)によることとなる。 3.日本公認会計士協会「監査・保証実務委員会報告第81号」 日本公認会計士協会は平成19年4月25日に「減価償却に関する当面の監 査上の取扱い」として下記の委員会報告を行った。 r我が国の企業会計においては、従来から、法人税法に基づく確定決算 主義の考え方の下で、課税所得の計算に関する法令等に準拠した会計処理、 いわゆる「税法基準」による会計処理が、会計実務慣行として採用されて きた経緯がある。』 このような会計実務に対応して、「減価償却に関する会計処理及び監査 上の取扱い」(最終改正昭和59年3月27日)を公表し、正規の減価償却及
び臨時償却について、また法人税法に規定する普通償却限度額を会計上正 規の減価償却費として処理する場合及び租税特別措置法に規定する特別償 却に関してその監査上の取扱いを明らかにした。(略)従来の会計実務に おいて認められてきた減価償却方法については今後も容認できるとの立場 を堅持しつつ、今回の税制改正に関する当面の監査上の取扱いを示した。 この委員会報告でも述べられているように税法の規定が会計実務を決定す る逆基準性がみとめられる。さらに「減価償却の考え方」として、下記の ような記述がある。 (1)正規の減価償却 減価償却は固定資産の適正な原価配分を行うことによりζ揖益計算を適 正ならしめることを主たる目的とするものであることから、合理的に決定 された一定の方式に従い、毎期計画的、規則的に実施されなければならな い。 これは、企業会計上正規の減価償却といわれるものであり、会社法に規 定する相当の償却に一致するものと考えられる。 正規の減価償却は、一般に公正妥当と認められる減価償却の基準に基づ き、自主的に行われるべきものである。 期間を費用配分基準として減価償却を行う場合、原則として、固定資産 の取得原価から、残存価額を控除した額を耐用期間の各事業年度に配分す ることから、取得原価、耐用年数及び残存価額の決定は、減価償却にとっ て重要な意味を有する。 ①耐用年数については、「耐用年数は、当該資産について経済的に使用 可能と予測される年数であり、各企業が自己の固定資産につきその特殊的 条件を考慮して自主的に決定するべきものである。」と述べている。 ②残存価額については「残存価額は、固定資産の耐用年数到来時におい て予想される当該資産の売却価格又は利用価格から解体、撤去、処分等の 費用を控除した金額であり、耐用年数と同様に、各企業が当該資産の特殊 的条件を考慮して合理的に見積り牽行うべきものである。」と述べており、
改正減価償却制度の研究 個々の企業の特殊性を尊重している。 また、これにともない「正規の減価償却に係る監査上の取扱い」として 『耐用年数及び残存価額に関しては、本来であれば各企業が独自の状況を 考慮して自主的に決定すべきものである。したがって、資産を取得する際 には、原則として適切な耐用年数及び残存価額を見積もり、当該見積りに 従って毎期規則的に減価償却を実施することが必要である。しかし、多く の企業が法人税法に定められた耐用年数を用いており、また同様に残存価 額の設定についても、多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状 である。このような事情に鑑み、法人税法に規定する普通償却限度額(耐 用年数の短縮による場合及び通常の使用時問を超えて使用する場合の増加 償却額を含む。)を正規の減価償却費として処理する場合においては、企 業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のな い限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。なお、租 税特別措置法に規定する特別償却(一時償却及び割増償却)については、 一般に正規の減価償却に該当しないものと考えられる。ただし、割増償却 については、正規の減価償却費として処理することが不合理でない限り、 当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。』と述べており、 ここでも税法基準による処理を正規の減価償却として取り扱うこととされ ている。 このように、会計実務においては税法基準が減価償却計算におけるスタ ンダードとなっている。すなわち今回の税制改正がもたらす企業の経営環 境への影響を無視することはできないのである。
第4章税制改正がもたらす経営環境への影響
今回の改正による経営環境への影響はどのようなものなのだろうか?税 制改正により、r企業の国際競争力・経済の成長力がより一層強化され、 我が国経済が活性化する。」と経済産業省のホームページでも謳っている が、ここでは税制改正によるキャッシュフローを中心として検討してみた い。 今回の税制改正で定率法の計算方法が改正され、企業の各事業年度の所 得の計算上、損金の額に算入される減価償却資産の償却限度額が大幅に変 わったことは特筆すべきである。減価償却費は既に取得した資産に対して 費用配分の法則により費用計上するものであるから自己金融機能を持つこ とになる。すなわち、支出と費用計上時期が異なる場合を生じるのである。 その結果、取得事業年度後の事業年度においては費用配分された減価償却 費のみを計上することとなり現金支出は伴わない。この費用配分された減 価償却費に実効税率をかけた部分の金額が企業内に留保されることとなり、 これが自己金融効果と呼ばれるものである。 ここで減価償却費のシュミレーションを行う。事例は固定資産の取得価 額を1億円とし、耐用年数を①20年、②15年、③10年、④5年としそれ ぞれの新定率法による税法上の減価償却費の償却限度額を算定し、さらに 旧定率法との比較を行った。改正減価償却制度の研究
図表4取得価額1億円耐用年数20年の場合
AB
CDEFG
12345678910”12131 4 取得価額 耐用年数 憤却率 保証率 償却保証額 改定横却率 調整前帳簿価額 改定前償却額 2000年ア0400α000改正前償却当初3葎聞の差
0.12500
0.025葉7
2,517,000
0.143
改定前横却累計額82.375,98817,624,012
2,520,233
(注)一円未満の端数は切り捨てた 償却率O.1093,742,609償却額8A−B
I1(},900、0001,600}000 29,711,9001,225,600 38,653,303917,009 47,710,093663,930 15 帳簿価額 定率法償却額 醐整前簿価 改定償却額8 改定帳簿価額 償却額A678901234567890123456111122222222223333333
12345678901234
11−11
100000000 12500000 875GOOOO 0 87500000 12500000 ’鉱500鴻000 10£37鐵 7656鞭00 0鯉500
10載500 76562500篭
95フ0遡 66囎幻88 0 66992誌88 急5及312 66992188 8374£23 58618165 0 5鞭8165 8374023 58618165 7£27叙0 51290895 0 5鯉895 7晶鉱270 5上2904895 6差醤361理9534
0 鰹79搬4 64払361 44879534∴
5609941漏 39£6鞭93 0 3鱒9距93 56臨94」 392695934
4908鯉9 34£60894 0 34360箆94 4魍699 3土360‘894 4295“1ム
30065783 0 3囎65器3 磁臨“1 鮎065よ783 3758222=
26£0匝61 o 鯉07561 急7盤222 羅307誌561 磁288445 2301鉱16 0 23019116」
3鐡445 23019116 = 28フ7389嘔口禦L727
0 20141鵡7 島87ゐ389 201417274
25”715」
1762晶012 o 、碑4012 25拶フ15 17624012 0 0 2520233 15103779 2520233 醒Q678QVO過ー 111112ウ輪 O 0 0 2む520鐵 1鍾83546 &5組233 0 0 0 2520鐡 1蝶313 2529233 0 0 0 姦520233 7543£80 2鐵233 0 0 0 叙520繕 5022847 急5嬢233 o 0 0 2む520鐡 2502甜4 醐鰻鋤 233 0 0 0 裂502層3 1 2融613 0 0 0 0 1 0 耐用年数が20年の場合の償却率は、新定率法が0.125、旧定率法が0.109 である。これによる取得当初3年間の減価償却費は新定率法が、旧定率法 がとなり、その差額は3,742,609円となった。これは、より早い段階にお いて減価償却費が計上されることとなり自己金融効果がより多くなること を意味する。図表5取得価額1億円耐用年数15年の場合
AB
CDEFG
哩23456789掲判絵綿掻 取得価額 耐用年数 償却率 保証率 償却保証額 改定償却率 改定前償却額 10α00α0001500
改正前償却額当初3年間の蓬額
年償却率0.青425,361,917
償却額BA−B
114,200,0002,500,000
212,183,6001,727,500
310,453,5291,134,417
48,969,128683,631
5フ,695,5丁2345,236
66,602,フ4995,扮4
0.16700
α03217
3,217,000
0.2
改定前償却累計{83,913,926 調整前帳簿価額16,086,0743,217,214
(注)一円未満の端数は切》捨てた 15 帳簿価額 定率法償却額 調整前価 改定償却額 改定帳簿価 償却額A6789012345678901234567
1111222222222233333333
12345678910”12嘩31415161718192021 100遡£00 重6。塑£00 83300000 0 83300000 16ヱ0猛000 83遡,000 1391」巳00 69388900 0 盤388900 13£1L100 69£88£00 11距鉱£46 57£009540
凱80 11587,946 57層00£54 9£臨Z59 48414雛95 0 鶴葉48 9鍾競59 48』148ユ95 8£皿Z48 40,10照47 0 匁107 804黛748 40、107詮47 6£鉱£43 33感0麺04 0 3藷409熈4 6£97943 33遡設04 5距灘8フ 27£3縣1フ 0 凱83蝕17 5亙79演8727鯉17
4鰻2旦 23凄18雛88 0 2鳥18籔 4&4鴻29 23」182丘883羅75
等9311£13 0 1息3判磁3 3&7葉475 19£」1£13 3。樂£39 160860744
0
脇08隻074 3.22ゑ939 16鐵£740
0 3217214 脇86幽0 3盆島214 0 0 0 3鋤214 9651鱒 321ユ214 0 0 0 3Z1皿14 島43ゑ432 3盆1』盗140
0 0 3盆17214 3217218 3盆172140
00
3必7214 4 3盆1』し2140
0 03
13
00
0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 α000
1
0 0 0 0ば)0 0 1 0 0 0 α00 0 1 0改正減価償却制度の研究
図表6取得価額1億円耐用年数10年の場合
AB
CDEFG
123456789紛“⑫13麟 取得価額 耐用年数 償却率 保証率 償却保証額 改定償麺串 綱整前犠簿緬額 改定前償却額 10α0磁,0001000
改正前償麹額当初3年間の差
年償却率0、2067.869,”8
償却額BA−B
I2(},600」0004,400,000
216,356沸002.393,600
312.986.9821.075,518
45,456.1715,090㌧704
0.25000
0.04448
4,448.000
α334
改定前償却累計額86,651,61113,348β89
4、458.361
(注)一円未満の端数は切》捨てた 15678901234567890
価 法 却額B 額 A 111−22222222223123456
.製oooo_鯉製
フ5£ o .聾_鰹蟹
75000000 18750000 156250000 ■覇聾0
56250000 18750000 56250000 14062500 42187500 0 42187500 14062500 .謝§7500_運響
3雄幽
0.幽鍾
髄』響
31640625 7910156 123 730469 ■輯■o
23730469 7910葦56 23,730,469 5,932,617 17,797,852 0 17797,852 59326董7 フ’890ーワ細34FD11111ー
.増7852_調毯
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13348389 0 一〇 ““■ 4458361 8890028 4458361 0 0 0 4458361 4431667 4458361 0 0 0 4轟幽信 1_謝響
鞠■O
耀躰■0
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0 騨鞘1
0 o 0 o 0 1 o 0 0 0 0 手 0 o 0 0 o 1 o o 0 0 0 1 0 耐用年数が10年の場合の償却率は、新定率法が0.25、旧定率法が0.206 である。これによる取得当初3年間の減価償却費は新定率法が57,812,500 円、旧定率法が49,943,382円となり、その差額は7,869,118円となった。こ れは、耐用年数がより短いものに有利であることを示している。図表7取得価額1億円耐用年数5年の場合
AB
CDEFG
マ23456フ89狛0”稔紹槻 取得価額 耐用媒数 償却率 保証率 償却保証額 改定償却率 鯛整前帳簿価額 改定前償却額500年
’0η00α0卯改正前償却額当初3年間の差
0.50000
0,06249
6,249,000
改定前償却累計額93,750,0006,250,000
6,250,000
(注)一円未満の端数は切り捨てた 償却率O、.369i2,623,959償却額BA−B
136,900,000寸3,100,000 223,283,9001,フ16,了00 314,692,141−2,192,141 74,8フ6,041 15 帳簿額 定率法償却額 調整前簿 改定償額B改定鞍簿額償額A
678901234567890嘩234561ーーー222222222233333331−111111↓ー122
1234567890−2345678901 董臨000囎0 識999£00 臨000鐵 050鯉0
皿00黛000 50000000 25000000 組000000 0 25躍00 25000000 2隻00戦0 1縫鯉00 1距00000 0 12躍00 ユ急500000 .1急500聾0 62鯉00 館臨000 0 6蝕鯉0 論25鮎000 6250000 軸o 0 6249999 躍 1 論24急999 軸0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 ■0 掴■嶺0
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嚇棒0
掌●軸軸口0
章o ■1 0 0 o 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 o 0 1 0 0 0 o 0 1 0 耐用年数5年の場合には、定率法の償却率は0.50となり取得価額の50% が減価償却費として損金に算入することができる。法人に対する実効税率 は40.86%であるから、減価償却費5000万円の計上により約2000万円納付 額が減少することとなる。 また、旧定率法と減価償却限度額の比較をしてみると図表7にもあるよ うに取得当初の3年間において約1263万円の増額となった。当然これは将 来において逆転されるところではあるが、取得当初の資金繰りが苦しいと きに法人税をはじめとする諸税の納付額が減少することは企業にとって喜 ばしいことである。改正減価償却制度の研究