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大学生への環境教育における自然体験活動の意義: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

大学生への環境教育における自然体験活動の意義

Author(s)

松本, 晶子; 釜本, 健司; 早石, 周平

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(11): 43-52

Issue Date

2009-01-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6261

(2)

沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009

大学生への環境教育における自然体験活動の意義

要 約 環境教育の必要性が叫ばれているものの,大学生を対象 とした環境教育の成果 につ いては研究報告 としてまとめ られる ことは少なかった.本研究は,大学生にとって 自 然体験実習が環境教育 として どのような価値 をもつかを明 らかにす る ことを目的 とし た. 自然体験活動 に参加 した大学生 ・社会人,同じ体験活動の過去の参加者,人文系 の大学生対 してアンケー ト調査 をお こない,環境意識の程度 と環境意識の経時的な変 化について調べた.環境教育 を受けた際の問題点をたずねた ところ, 自然体験活動参 加者 も人文系の大学生 も,実習がなかった ことを問題視す る回答が最 も多かった.行 動面では, 自然体験活動参加学生の直後の回答は 「関連あるニ ュース に注意 を払 う」 が多かった. この傾向は, 1年 を経過 して も継続 して見 られた.精神面での変化 につ いては, 自然体験活動参加直後は 「我慢強 くなった」,「やればできるという自信がつ いた」 というポジティブに自分 を評価する回答が多か った ものの, 1年以上が経過す るとその意識は薄れて しまっていた. これ らの結果 をもとに,環境意識 を高めるうえ で,大学の教育実践のなかで 自然体験実習 をどのように位置づけ,取 り入れてい くの か という点 について検討 した. キーワー ド :環境教育, 自然体験活動,環境意識,大学生 I.間男の所在 現在,地球規模で様々な環境問題が生 じてお り,それ らに緊急 に対処 しなければな らないと いう認識が高まっている.地球環境問題 を思想的な観点か らとらえる立場 には, 「デ ィープエ コロジー (DeepEcology)」 という考 え方がある.デ ィープエコロジーは, ノル ウェーの哲学 者 A ・ネスによって提唱 された考 え方で, 「環境問題は現在の社会 システム と文明が生み出 し たのであるか ら,現在の社会 システム と文明を変革するためには, まず現代社会 に住む私たち ひとりひとりが世界観や価値観 について意識変革 を行なわなければな らない」 として.環境問 題の解決を人間の精神的 ・内面的要因に求めるものである (Naess1973). この立場に立つ と, 人間の内面の変容を迫る手段 として,環境教育 を重視することになる.

なお, ここでいう環境教育 (EnvironmentalEducation)は,1988年 に出された 『環境教 育懇談会最終報告』 に示 されたよ うに, 「人間 と環境 のかかわ りについて理解 と認識 を深め, 責任ある行動が とれるよう国民の学習を推進す ること」 と定義 される. この環境教育 という用 語は,1948年の国際 自然保護連合 (IUCN) の設立総会で初めて使われた といわれて いる. 近年の世界的な取 り組み としては,第

5

7

回国連総会決議 において

,2

0

0

5

1

1

日か ら始 まる 10年を 「国連持続可能な開発のための教育の10年 (教育の10年)」 とした宣言が典型 としてあ

(3)

沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009

げ られる.なお

,

「持続可能な開発のための教育 (EducationforSustainableDevelopment)」 とは.環境問題だけでな く,様々な課題を総合的にとらえ,環境 ・経済 ・社会のバランスが取 れた 「持続可能な社会」 をめざす教育を意味する. 日本における環境教育は,公害や 自然環境破壊が社会において問題化されてきた

1

9

6

0

年代後 半か ら取 り組まれた 「公害学習

,

「自然保護教育」 にそのルーツを求めることができる.その 動きも含め,初等 ・中等学校における環境教育の中心は

,

「理科」 というよ り,む しろ 「社会 科」にあったと考えることもできるだろう.例えば

,1

9

6

8

年には学習指導要領 (社会科編)に 「公害」 の用語が初めて出され,小学校 ・中学校 ・高等学校-貢 した公害教育が展開されるよ うになった (佐島

,2

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0

1). さ らに

,1

9

7

8

年版高等学校学習指導要領では, このとき新たに 「社会科」の必修科 目として設置された 「現代社会」の内容 (1)現代社会の基本的問題の中に, 「人類 と環境」 という項 目が含 まれた (文部省

,1

9

7

8

)

. これ らのことは

,

「制度化 されたカリ キュラム」の中で,環境を社会問題 として捉える視点が示されるようになったことを意味する. 環境教育の研究は

,1

9

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0

年代後半以降,数多 くなされてきた.授業プランの開発など実践を 志向 した形の研究においても

,1

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0

年代には優れた成果が発表 されるようになっているl). 自 然体故 に焦点をあてた研究にしぼ ってみても,多 くの研究がなされてお り,それ らの研究のほ とんどは, 自然体験が子 どもたちの自然事象に対する関心を高めた と報告 している.その典型 は,以下のような評価である. 環境学習の目標の中の

,

「楽 しむ

「感動を得る」については生徒の自己評価や感想を読ん でいても蕉きゃ発見.あるいは新たに抱いた想いなどが伝わって くる.また,全体的に意 欲的な様子で学習できていた.野外での体験学習や実敦実習を中心に進めた ことがよかっ たのか と考え られる. (文部省

,1

9

9

9:9

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-

9

6

)

こうした研究 レベルの動きと,社会における環境問題対処への重要度の高まりに支えられ 現在の初等 ・中等学校における環境教育は

,

「自然環境の保護」

,

「地球環境,資源 ・エネルギー 問題」 という単調なスローガ ンのもとで行なわれている (細矢 ・森

,2

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1) という問題は見 ら れるものの,現在では 「理科」

,

「社会科」. 「家庭科」など様々な教科 ・領域で取 り組まれてき ている. さらに

,2

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月の教育改革関連三法案改正の一環 として学校教育法が改められた際には, 第

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粂第

2

号 として 「学校内外における自然体験活動を促進 し,生命及び 自然を尊重する精神 並びに環境の保全に寄与する態度 を養 うこと」が義務教育諸学校の教育 目的として明記される ようになった. これは,義務教育における自然体験活動をこれまで以上に重視する方向性を示 したものと考え られる. このような実質的態度 を含む教育 目的を法定 してよいか どうかについ ては,厳 しく問われな くてはな らないが,環境教育において自然体験を広範に取 り入れる素地 は整え られたと見てよいであろう. 一方,大学ではどうであろうか.環境に対する豊かな感受性や見識をもつ市民や, 自然体験 活動の指導者の養成を目標 として,様々な講義やセ ミナーを開催 した りしている大学 もあるだ ろう. しか し,大学で展開されている教育内容 として見ると,教員が専門として教育 ・研究す る分野が多岐にわたっていることか ら,教養科 目として,実習 レベルにまで及ぶ環境教育を多 くの学生に課すのは難 しいという現状がみうけられる. しかも,それが 自然体験を取 り入れた ものとなると,時間,費用,そ して興味 といった様々な要因か ら対象者はかな り限定される. そ うした事情か らか, これまで.大学生を対象 とした環境教育の成果については,研究報告 と してまとめ られることは少なかった. こうした問題意識に基づき,本研究は,大学生にとって自然体敦実習が環境教育 としてどの

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松本 ・釜本 ・早石 :大学生への環境教育における自然体故活動の意義 よ うな価値 をもつかを明 らか にす る ことを目的 とす る.そ こで, 自然体験活動 に参加 した大学 生 ・社会人の,活動の前後 の環境意識 をアンケー ト調査 した. また, 同 じ体験活動 の過去 の参 加者 に対 して もアンケー ト調査 をお こない,環境意識の経時的な変化 につ いて も調べた. これ らの結果 をもとに.環境教育 のなかで 自然体裁実習 をどのよ うに位置づけ,取 り入れて い くの か という点 について検討する.

Ⅱ.

7ンケ- ト調査の方法 本研究 において利用 した 自然体験 は,鹿児 島県屋久 島でお こなわれ た野 生のヤ クシマザル

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)

の生態調査である_屋久 島は大隅半島の南南西約60km の海上 に位置 し,1993年 に島の面積 の約21%にあたる107.47km2がユネス コの世界 自然迭産 に登録 されて い る.屋久島はニホンザルの分布 の南限にあた り,ニホ ンザルの亜種である固有 のヤ クシマザル が生息 している. このヤクシマザル の生態調査 は,ヤ クシマザルの個体数 と分布 を明 らか にす ることを目的 とし,1989年よ り毎年,北海道か ら沖縄 までの大学生や社会人のボ ランテ ィア調 査員を募 って夏季に10日間の調査 を行 って いる ものである2). 本研究 にお ける調査 は, 異な る3つの対 象群 に対 してお こな った. 対 象群 につ いての情報 (対象者,被験者数,性 ・年齢構成,調査期間. ア ンケー ト調査 の方法) は次 の とお りである. (1)2007年の自然体験活動への参加者 調査人数 :31名 (男性14名,女性 17名) 平均年齢 :21.8±3.2歳 調査期間 :2007年 8月 調査場所 :鹿児島県屋久 島 質問項 目 :紙面 によるアンケー ト 調査前27項 目,調査後 16項 目 (2)2006年以前の 自然体験活動への参加者 調査人数 :30名 (男性18名,女性12名) 平均年齢 :27.3±4.2歳 調査期間 :2007年 9-10月 質問項 目 :webによるア ンケ- ト 35項 目 (3)対照群の人文系の大学生 調査 人数 :58名 (男性37名,女性21名) 平均年齢 :19.1±1.3歳 調査期間 :2008年5月 調査場所 :沖縄大学 質問項 目 :紙面 によるア ンケー ト 20項 目 なお,結果 の分析での,質問項 目の中の選択肢 間の大小比較 には, カイ二乗検定 を用 いた.

(5)

沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 Ⅲ.結果 1.学習者側か らみた環境教育の問題点 自然体験活動 に参加 した学 生 と人文 系の大学生は, それぞれ70.5% (43/61),60.3% (35/58)が これ までに環境教育を受けた ことがある, との認識を示 し,両者の環境教育学習 を受けた程度 には有意な違いは認め られなかった (x2=1.36). 環境教育 を受けた と答えた回答者 に,環境教育 を受けた際の問題点 をたずねた ところ, 自 然体験活動参加者 と人文系の大学生 どち らも,実習がなかった ことを問題視する答えが最 も 多かった (図

1

).

図 1 受けた環境教育の問題点 また

,

「体験的活動は環境教育 ・環境学習 に必要か ?」 という質問に対 して,ほぼ全員の 回答者が 「必要である」 と回答 した (自然体験活動参加者98.3%,57/58,一般の大学生100 %,61/61).その理由としては, 自然体験活動に参加 した学生,人文系大学生のどち らも, 「勉強だけでは十分に理解できないか ら」 という答えが多かった (図2). 賞同 体境的活動が環境教育 .環境学習に必要な理由は何でしょう (複数回答可) 自然体験活動参加学生と 07年の自然体験活動参加学生 人文系大学生の比較 の調査前後の比較 勉強だけでは十分に理解できないから自分にできることがあるこ 25 39 l50 10 l27 とを実感できるから 25 仲間と一 に取り むーと l 31 6 で、 自分の興味以上のよ い成果が上がると思つ その他 58 ≡13

0

10 20 30 40 50 60 0 10 20 30

E)tIIjE●加舌(61名) II沖捕大学学生(57名) I)tI暮前 ■yl暮牡 図2 環境教育 において体験活動が必要な理由

(6)

松本・釜本・早石 :大学生への環境教育における自然体験活動の意義 さらに,2007年度 自然体験活動参加学生31名に対 し,同じ質問を調査前 ・調査直後 に行 っ たところ,活動参加直後 には 「仲間 と一緒 に取 り組む ことで, 自分の興味以上のよい成果が 上がる」 と感 じた参加者が増加 した. 2.被験者の環境意識 について 本研究 における自然体験活動は,希望者が 自主的に参加す るものであった

.

「質問 あな た自身は,環境に対する意識が高いと思いますか. (一つ選択)」 に対 して,人文系の大学生 では37.9% (22/58)しか 「高い」 と答えなかったのに対 し, 自然体験活動への参加学生で は68.9% (42/61)が 「高 い」 と答えた. 自然体験活動への参加者 には,人文系の大学生よ り, 自分の環境意識が高いという自覚が認め られた (x2=11.4,p(0.01). 3.環境教育としての野外調査の効果 「質問 調査参加前後で,あなたは変わった という自覚があ りますか. (一つ選択)」 に対 し, 自然体験活動参加学生の78.7% (48/61)が変わった と答えた

.

「変わっていない」 と答 えたのは3,3% (2/61) にすぎなかった. さらに,上記の質問に 「変わった」 と答えた48名に対 して, どのような行動面 ・精神面の 変化が将来お こるだろうかをたずねた.行動面の変化 としては, 自然体験活動参加学生の直 後の回答は 「関連あるニ ュースに注意 を払 う」 が最 も多 く, 「いろいろな活動 に積極的 に参 加する

,

「関連する授業 をとる」が次 に続 いた.一方, 自然体験活動か ら1年以上が経過 し た過去 の参加者 に対 して同 じ質問をした ところ

,

「関連あるニ ュース に注意 を払 う」

,

「いろ いろな活動に積極的に参加する」の順で回答が多 く, 自然体験活動参加直後 と同 じ回答傾向 が見 られた (図

3)

.

精神面での変化 について問 うと, 自然体験活動参加直後は 「我慢強 くなった」

,

「やればで きるという自信がついた」の順 に回答が多かったが,過去の自然体験活動への参加学生にた ずねると

,

「精神面の変化な し」 (8/21) とする回答が最 も多かった. 図3 自然体験活動参加直後 と1年以上が経過 した参加者 における,行動面 と精神面での変化 また, 自然体験活動参加学生31名に対する 「質問 あなたは, これか ら別 の体験型の調査や

(7)

沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 ボランティアに参加 しようと思いますか. (一つ選択)」 に対 し

,9

6

.

8% (

3

0

/

3

1)は参加直後 に 「思 う」 と答えた

.

「思わない」 と答えたものはいなかった.そ して

,

「質問 ヤクザル調査 へ参加 した ことが,別の体験型調査への参加 したい気持ちに影響を及ぼ していると思いますか. (一つ選択)」 という質問に対 して

,6

4

.

5% (

2

0

/

3

1)が 「影響がある」

,3

.

2% (

1

/

3

1)が 「影 響がない」 と答えた. 自然体験活動か ら1年以上が経過 した参加者

3

0

名のうち,その後,別の体験型調査へ参加 し た ことがあるのは

1

3

名だった. これ らの人に対 し

,

「ヤクザル調査へ参加 したことが,別の体 験型調査への参加に影響を及ぼ したと思いますか (一つ選択)」 とたずねた ところ, このうち の8名が 「影響がある」 と答え, 「影響がない」 としたのは2名にとどまった. Ⅳ.考察 と今後の研究課題 本研究で行なったアンケー ト調査か ら明 らかになった,環境教育 としての自然体験の意義の 一つは,自然体験が環境について新 しく情報を得るきっかけとなっていることである. これは, 「関連するニ ュースに注意を払 う

,

「関連する授業 を選択する」 という回答がある程度み られ た ことか らわかる.二つ目には, 自然体験活動の経験は,別の自然体験活動に参加する誘因に もな り得ることがあげ られる. これは,参加直後 に 「いろいろな活動に積極的に参加する」で あろうと多 くの学生が考えていることや,参加後1年以上が経過 した者に活動に参加 した者が 一定数見 られた ことか ら示される.三つ目には,我慢強 くなった,やれると自信がついたなど, ポジティブな変容が高い割合で現れた, という体験を伴 う学習のもた らす精神面での意義が挙 げ られる. 次に,環境教育としての自然体験の位置づけを検討 してみよう.アンケー ト調査の結果か ら, まず,大学以前の教育で多くの学生が何 らかの環境教育を受けた経験をもつことが明らかになっ た.多 くの学生が環境教育を受けていたのは

,1

9

9

8

年か ら

1

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9

年の学習指導要領改訂によって 新たに小学校 ・中学校 ・高等学校に設けられた 「総合的な学習の時間」をはじめとする様々な 機会に,環境教育にふれていたためであろう. というのも

,

「環境」は

,

「総合的な学習の時間」 で取 り組むべき 「横断的 ・総合的課題」の一つに示されているか らである (文部省

,1

9

9

8

)

.

ただ,それ らを受けてきた学生の視点か らは,既存の環境教育の問題点 として実習の不足が 示された.その背景には,子 ども期の自然体験の不足や,学校週五 日制に伴 う授業時間の減少 による本格的な体験 を伴 う教育の継続的実施の困難化 をあげることができるかもしれない.そ れ と同時に

,

「関連するニ ュースに注意を払 う」

,

「関連する授業を選択する」 という回答が多 かったことか らは,実習に座学の補充を期待 しているともいえるだろう.体験 した ことが らが 示す事柄は何なのか ?自然科学のシステムの中にどのように位置づけられるのか ?といったフィー ドバ ックの必要性が示されている. 本研究の結果は, 自然体験活動に自主的に参加 した学生は環境意識が高いという自覚があっ たのに対 し,人文系の学生では環境意識が低いと答えた学生が多いことを示 した. したがって, 前述の意義は, もともと環境意識が高い人への教育活動の結果 として導き出されたことに注意 する必要がある.そのことに留意 したうえで,いかに人文系の学生の環境意識を高めるかとい う課題について考えてみよう. 自然体験活動参加者が感 じた体験後の行動面の変化 に,その解決の方向性が兄いだせるかも しれない. 自然体験活動に参加 した学生には,行動面 ・意識面で自分が変わったという自覚が 見 られた. とりわけ, 自然体験 に参加 した直後は

,

「関連あるニュースに注意を払 う」

,

「いろ いろな活動に積極的に参加する」だろうと多 くの学生が考えていた. この傾向は,参加後1年

(8)

松本 ・釜本 ・早石 :大学生への環境教育における自然体Jl活動の意義 以 上が経過 した後 に もそれ らを実行 す る者 が見 られ た とい う点 で, あ る程 度 持続 的 な変容 で あ る と考 え られ る. 近 年, 人文 系 の大 学 の な か には, 「放射能」,「DNA鑑 定」, 「太 陽電 池」 な ど, よ り現代社会 の トピ ックに近 いテー マ を設定 した科学実験 教 育 の取 り組 み を始 めた と ころ が 出て きてお り, そ の取 り組 み に成 果 が あが って きて いる. 人文 系 の学 生 に 自然体 験 へ の参加 を促 す には.最初 は,環境 や社会 に関連 の あ るニ ュー ス に注意 を払 うよ う働 きか ける ことを過 じて, 自然 への関心 を喚起 す る ことが取 り組 みやす い方策 で あ るにちが いな い. また,精 神 面 で の変 容 と して.参加後1年 以 上 が経 過 した者 で は 「精 神 面 の変化 な し」 とす る者 が少 な くな か った ことは, 自然体験 の機 会 を定期 的 に設定す る ことの必 要 を示 唆 して いる. なお, 人文 系 の学 生がなぜ 環境意 識 が低 い と認識 して いるのか とい う問題 は,今後 の検 討課 題 といえ るだ ろ

う.

注 1)公害教育をテーマとしたこの時期における優れた授業構成プランの例 としては,森分孝治 ・太鼓矢晋 ほか 1975「社会科学的概念学習の授業構成 (I) 『公害』の教授書試案-J F広島大学教育学部学部附 属学校共同研究体制紀要j第4号, 15-24などがある. 2)ヤクシマザルの調査の歴史や調査の内容は http://www.realintegrity.net/∼yakn zaru/ayumi .htm を参 照 EE E岸 本研究をおこなうにあたって,アンケー トに回答 していただいた沖縄大学学生 とヤクシマザル調査参加 者の皆さん.および,アンケー トの実施を許可いただいた龍谷大学 好庸晃一氏 と京都大学 半谷吾郎氏 に感謝したい.アンケー トの実施と分析に際しては,沖縄大学学生 伊藤憤哉さん,仲里歩さんにご協力 をいただいたことにお礼申し上げたい, なお,本研究は,2007年度沖縄大学地域研究所研究班および2007年度サ ン トリー文化財団研究助成の 成果の一部である. 引用文献 細矢治夫 ・森智子 2001「文部省は F環境』 をどう教えさせたいのか」 日本学術会議教科教育研究連絡委 員会編 『新 しい 「学びの様式」 と教科の役割J,東洋館出版社,175-185. 環境庁企画調整局企画調整課編 1988『みんなで築 くよ りよい環境を求めて-環境教育懇談会報告-』, 大蔵省印刷局. 文部省 1978r高等学校学習指導要嶺J,大蔵省印刷嵐 文部省 1998

r

中学校学習指導要領J,大蔵省印刷嵐 文部省 1999r特色ある教育活動の展開のための実践事例集- 「総合的な学習の時間」の学習活動の展開 (中学校 ・高等学校偏)JI,大 日本図書.

NaesSA.1973TheShallow andtheDeep,b ngRan geEcologyMovement.ASummary.Inquiry 16:95-100.

佐島群巳 2001「環境教育の歴史」 日本学術会議教科教育研究連絡委員会編 r新 しい 「学びの様式」 と教 科の役割J.東洋館出版社,155-166.

(9)

沖縄大学人文学部紀要 第 11号 2009 付表1 被 験 者 群 ご との ア ンケ ー ト賞 間項 目. ● は, お こな った ア ンケ ー ト項 目. 紫間カテゴリー 質 問 項 目 回 答 調査調査節 点定後 沖香調負 大学坐 拷a着 過去の調査負 ヤクザル調査 これまでにヤクザル粥童に参加 した回数を教えて ください. lつ選択

●●

参加 した年 (西暦) をすべて教えてください. (2回以上の人)

最初の調査のとき.あなたのご身分は何でしたか lつ選択

最初の調査のとき.どのようにしてヤクザル調査のことを知 りましたか. 1つ選択

●●

最初の調査に参加 したきっかけは何ですか. (複数可)

ヤクザル調査に期待することは何ですか. (複数可)

あなたはヤクザル調査に参加 して,満足されましたか. 1つ選択

●●

Q l で 「大変満足 した」「だいたい満足 した」 を選択 した人にお聞 (複数可)

さします, どのような点で満足 した と思いますか. Q l で 「やや不満が残った」「とても不満が残った」 を選択 した人 (複数可)

にお聞きします. どのような点が不満足で したか, 来年以降のヤクザル調査に期待することはありますか. (複数可)

ヤクザル訊査の統括者として参加 した回数を教えて ください. 1つ選択

2を回答 した方のみ)参加 した年 (西暦)を教えて ください.

調査地には国立公Eilの特別保護地区があ ります, このような ところ

に人は入 らない方が良いと思いますか. 環境問題に閑す あなたは.住んでいる自治体のごみの分別のルールを守っていますか. (複数可)

琉球列島は,種子島か ら奄美大島.沖縄島,宮古,石垣島,西表島

を経て波照間島.与那国島か らなっています.琉球列島の生物は. 列島形成な どの地史に関係 し,海洋 によって限 られ隔推 された鳥浜 環境 と亜黙帯 .海洋性気候 という環境条件の影事を受けるため,疏 球列島の生物には固有の種が多いことを知っていますか. 大きな面鎌 をもつ九州や本州 と比べて,島供 という面棟の限 られた

場所での開発は,個々の生物や生態系へどの程度の影響 を与えると 思いますか. El本の野生動植物全体の10%以上が絶滅の危機に瀬しているといわれて

います.あなたは野生生物の絶滅について,どのように感じますか. あなたの住んでいる近 くの山や川な どの自然環境が,マンションや 1つ選択

道路な どの大規模開発 によって壊 されようとした ら どのように感 る認識や行動 じますか. 環境問題や 自然保襟 に取 り組むには, どういう人が参加するべきだ (複数可)

と思いますか. 屋久島はすでに世界辻産に登録 されています.平成15年に,奄美以 1つ選択

南の諸島も世界 自然辻産の候補地に選定されましたが.登録 には至 りませんで した. あなたは,環境 を保護する上で.世界辻産に登録 されることは必要だ と思いますか. Q13 で 「非常に必要」「やや必要jと答えた方におうかがいします. (複数可)

必要だと判断した理由は何で しょう. Q13 で 「ほとんど必要でない」「まった く必要でないJ と答えた方 (複数可)

におうかがいします.必要ではないと判断 した理由は何で しょう. あなたの環境開襟に対する行動についておうかがいします. 1つ選択

環境教育につい て これまで.学校等 において環境教育 .環境学習 を受けた ことがあ り 1つ選択

ますか. Q17 で 「ある」 を選択 した人にお うかがいします.環境教育 .界 (複数可)

境学習を受けた際の問題点は何だったで しょう.

(10)

松本 ・釜本 ・早石 :大学生への環境教育における自然体験活動の意義 体J*的活動は窮境教育 .環境学習に必要だ と思いますか, 1つ選択

あなた 自身は.窮境 に対す る意識が高いと思 いますか. 1つ選択

Q2した人 におたずね します,体験的活動が環境教育 .環境学習 に必0 で r必要だ と思 う」「テーマによっては必要だ と思 う」 を選択 (複数可)

要な理 由は何で しょう. あなたが環境 につ いて, 日頃考 えている ことな どあ りま した らご自 自由回答

由に記入 して ください. これまでに学校などで環境教育 を指導 した ことがあ りますか. 1つ選択

環境教育の目的をどのように捉えていますか. 1つ選択

1または2と回答 された方 のみ)環境教育 を実践す るうえで.次 に 1つ選択

挙げる方法は重要 と考えていますか. a.決着 b.シミュレー シ ョン 1つ選択

C.ロールプ レイ 1つ選択

d.央地調査 1つ選択

e.上記以外に重要な教育方法があると考える場合は.ご記入ください. 自由回答

1または 2と回答 された方 のみ)環境教育において体験的活動 を伴 1つ選択

うことが必要な理由として最 も重要 と考えるものは何ですか. これ まで.学校等 において環境教育 .環境学習 を受 けた ことがあ り lつ選択

ますか. 「ある」 を選択 した人にうかが います.環境教育 .環境学習 を受 け (複数 可)

た際の開襟点は何だったで しょう. ヤクザル調査の 定点調査員への f旨導について ヤクザル調査 の定点調査員 に対 し, この調査 を通 して最 も習得 して 1つ選択

もらいたいと考 えるものは何ですか. ヤクザル調査 の定点調査員の指導 にお いて,体験的活動 を取 り入れ 1つ選択

ることは重要ですか. ヤ クザル調査 の定点網査 貝への指導 にお いて.次 に挙げ る教育方法 1つ選択

は重要ですか, a.講義 b. シミュレー ション 1つ選択

C.ロールプ レイ 1つ選択

d.実地調査 1つ選択

C.上記以外に重要な教育方法があると考える場合は.ご記入ください. 1つ選択

ヤ クザル調査 の定点調査員への指導 に際 し,特 に留意 していること 自由回答

について自由にご記入 ください. あなた御自身の 行動や経験 あなたは. これか ら別の体験型の調査や ボ ランテ ィアに参加 しよ う

と思いますか. ヤクザル調査へ参加 した ことが,別 の体験型調査への参加 したい,

参加 した くない気持ちに影響 を及ぼ していると思 いますか. ヤクザル調査 に参加 した前後で. あなたは 自分が変わ つた という自 1つ選択

●●

覚があ りますか. Q13 で 「非常 にある」,「少 しはある」 を選択 した人におたずね一し (複数可)

●●

ます.行動面で.以前 と変わると思 いますか. Q13 で r非常 にある」,「少 しはある」 を選択 した人におたずね し (複数 可)

●●

ます.精神面で.以前 と変わつた と思 いますか. あなたは体験型の別の調査やボランティアに参加 したことがあ りますか. 1つ選択

ある, を選択 した人におたずね します.それは,ヤ クザル調査 の前 (複数可)

ですか.後ですか. どのような調査かよければ教えて ください. 自由回答

2.後, 3. 前,級, を選択 した人 におたずね します.ヤ クザル調 1つ選択

査 に参加 した ことが.別 の体鼓型調査へ参加する ことに影響 を及ぼ していると思 いますか. ヤクザル調査はあなたに どのよ うな体験だったで しょうか. 自由に 自由回答

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(11)

Significance of Nature-Based Experiential Activities in

Environmental Education to the Undergraduate Student

Akiko MATSUMOTO

Takeshi KAMAMOTO

Shuhei HAYAISHI

Although the necessity of environmental education has been demanded, there are few reports about the results of environmental education to under-graduate students. A purpose of this study was to clarify the value of nature-based experiential activities in environmental education to undergraduate students. We performed questionary surveys on the undergraduate and gradu· ate students who participated in on experiential activity in Yakushima Island (A), past participants of the activity (B), and undergraduate students of hu· manities majors (C). We investigated the level of environmental awareness and their changes over time. To the question 'What was a biggest problem when you took part in environmental education?', most of the respordents in both (A) and (B) chose the answer, 'There was no experiential activity', from among several choices. To the questions about their behavior, theimmediate comment of most (A) after the experiential activity was 'Pay attention to the related news'. Also (B) showed the same result. This tendency was continued more over one year. On the other hand, to the questions about mental aspects, (A) evaluated themselves positively immediately after the experiential activo ity: 'Was a patient person' or 'Built self·worth'. The awareness, however, was reduced after one year. We discussed how to bring nature·based experiential activity into environmental education.

Keyword: Environmental Education, Nature-Based Activities, Environmental Awareness, the Under Graduate Student

図 2 環境教育 において体験活動が必要な理由

参照

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