た.帰宅した晩,呼吸状態悪化し再入院.その 2日後永眠. 【 察】 今回患者の最期の望みであった旅行を実現で きた. 患者の思い, 家族の思いを受け止め, 目標を決める 事で患者を取り巻く周囲の気持ちが一つになった. A 氏 の言葉から, 私達は残された時間は家族と過ごすかけが えのない時間であり最期の瞬間まで自 らしく生きる力 となったと感じた. 不安定な状態のなか旅行に踏み切っ た A 氏は, 人生を全うし, 悔いのない死を迎える事がで きた. そして家族も満足できた. 残された時間をどう過 ごしたか, また家族の思いはどうかを把握し関わってい く事は, 終末期患者やその家族にとって大切である事を 学んだ.患者一人一人にそれぞれ「その人らしい最期」が ある事を改めて認識する事ができた.
セッション4>
座長:原 敬(利根中央病院) 1.本当に望ましい環境とは ―当院入院中の患者・家 族からみえたもの― 西沢 綾華 (医療法人鶴谷会 鶴谷病院 4F病棟) 【はじめに】 在宅移行を提案する際に難色を示すケース は多く, そのなかで患者・家族との関わりから本当に望 ましい療養環境のあり方について気付きを得たため報告 する. 【事例紹介・経過】 70歳代女性, 乳がん, 肺・脳 転移, 主介護者は夫, 娘が 2人いるが患者本人とは血縁 関係なし. ADL 全介助, 在宅療養歴あり, デュロテップ パッチ にて疼痛コントロール良好で状態は安定. 在宅 療養を勧めたが良い返事は無く, 患者は 病院から追い 出されてしまう と観念をもち不安を表出するように なった. 娘は協力的であったが患者と夫は在宅拒否の意 向は変わらず両者の調整は困難であったため, 目標を外 出に変 し実現したのちに永眠した. 【まとめ】 今回 は①主介護者が高齢である夫, ②患者と娘が血縁関係に ないことがポイントであった. 24時間医療体制がある環 境から離れることで患者・家族は「いつ急変するか」「負 担をかけてしまう」などの不安要素が増える. 患者―家 族背景を把握し, 社会資源等の知識を持ち合わせながら 生活する人の視点で問題点の抽出・解決策の検討や調整 (他職種との連携) が行えなければ目標達成には り着 けないと感じた. 追い出される という言葉は今回のみ ならず退院を提案するときによく聞かれる. 在院日数の 短縮化が進むなかで患者・家族にとっては不安があるた めにこういった えを持ちやすいのではないかと思う. 当院での明らかなデータはまだ出てはいないが, 今後の 課題としたい. しかし今回の経験から, たとえ在宅移行 ができなかったとしても・在宅をゴールとしなくても小 さな目標を立てクリアしていく, いかに意味ある日々を 患者-家族で共有して過ごせるかが大切であり, 医療者 はその環境を提供できるかが大切なのではないかと学ぶ ことができた. 2.退院時期を逃さないためにこの症例から学び得たも の 渡辺 麻紀,高橋 美穂,中里まゆみ 吉沢 美華,萩原由美子,藤田智恵子 (伊勢崎市民病院 9階B病棟) 【はじめに】 肺癌と診断された 80代の A 氏を受け持っ た. A 氏は家に帰りたいと言っており, 治療による体力 低下があったが徐々に回復したため, 看護師は退院出来 る事を目標とした. しかし, A 氏は自 で生活が出来る 事を退院の目標とし, 家に帰るタイミングを逃し亡く なった. 患者・家族と連携を図り同じ目標で終末期を迎 える事の大切さを学んだので報告する. 【患者紹介】 患者 : A 氏, 80代 診断名 : 肺癌・大腸癌 家族構成 : 妻と 2人暮らし, 子供は別暮らし 【倫理的配慮】 妻に 研究の趣旨を説明し同意を得る. 【経 過】 肺癌で化 学療法を行ったが副作用が強く途中で治療中止となる. A 氏は病名の告知は受けていたが, 家族の希望で予後の 告知はされていなかった.「家に帰りたいがこの状態では 妻に迷惑をかける.」と話があった. 家族に状況を説明し たが妻と息子は「私達に退院したいと言わない.」と言っ た. 家族に自宅に帰るのは今しかないと話し関わりを 持った. しかし A 氏は退院する事なく 2泊 3日の外泊を し, 4日後に永眠した. 【 察】 この症例は家族に迷 惑をかけたくない思いと予後について告知されていない ため, 時間的に余裕があるという思いにより, 家に帰り たいという気持ちを表出しないまま退院の時期を逃して しまった事例である. 私達は A 氏が家に帰りたい情報を 持っており家族に伝えていったが A 氏の思いは伝わら なかった.終末期ケアは,患者・家族・医療スタッフが一 つとなり今患者にとって最期の望みに対応していく事が 大切である事をこの症例を通しわかった. 【おわりに】 終末期の患者・家族の気持ちを受け入れ, お互いが気持 ちを かり合える様なかけ橋となれることが大切であ る. 3. 家で死にたい」という終末期患者と,受け入れに不 安を感じる家族の間でどう関わったか 黒岩 隼,笹本 肇, 井 加奈 萩原 洋子,荻原 才子(原町赤十字病院) 【事例紹介】 患者 : A 氏, 60代, 女性. 病名 : 胃癌, 腹膜 播種,多発肝転移,多発骨転移.家族構成 : 長男,次男と 3 67人暮らし. 長女と姉は看護師だが, 遠方に住んでいる. 【経 過】 1年前に腹膜播種を伴う胃癌と診断され, 化 学療法を行っていたが病状は進行していた. 平成 20年 X 月, 胸痛にて入院. 第 3胸椎に大きな転移あり, 脊髄損 傷の危険があるため, 体動はベッドアップ 30°と寝返り に制限された. モルヒネ持続皮下注で痛みは改善. 可能 なら化学療法を続けたいとの希望で 1回行ったが, 突然 A 氏は泣きながら「家に帰りたい. ずっとそう思ってい たけど,言い出せなかった」と訴えた.家族の同意を得て, 在宅療養の具体的プランを提示し, 準備を始めた. しか し, 化学療法による高度の副作用が出現してしまい, 中 断となった. 一度は前向きに えていた家族も, 主介護 者が男兄弟であること, 昼間は A 氏が一人になってしま い心配だ, と消極的になり, A 氏の容態が回復した後も, 態度を決めかねたまま 1か月以上が経過した. その間 A 氏は,穏やかだがはっきりと「帰りたい」と話していたが, ついに, 面会に来た姉の前で「うちに帰ってそこで死に たい! どうして連れて帰ってくれないの?」と怒りを露 わに訴えた. すかさず家族に, A 氏がどんな状態でも家 に帰れる準備はできている事を説明した結果, 在宅療養 への決心が付き, 翌日病院の救急車で退院となった. 10 日後, 家族に看取られながら自宅で永眠された. 【 察】 看護師は A 氏に,すぐにでも自宅に帰って,残りの 人生を家族とともに過ごしてほしいと思った. しかし, 家族の不安の大きさを えると, 焦って自宅に帰しても すぐに再入院になり, A 氏の希望を叶えることはできな いだろうと えた. そのため, 必要な準備を行いつつも 家族に無理強いはせず, 板挟みになりながらも, 家族の 決心がつくのをじっと待ったことで, A 氏の希望を叶え ることができたのではないかと えられる. 4.家族の意思を尊重し“在宅での看取り”が可能となっ た一事例 武井 浩之,設楽 理枝,増野 貴司 柳井 紀道 ( 立藤岡 合病院 西2階病棟) 岩井 隆子,黒澤磨由美,千木良直子 古池きよみ (同 緩和ケアチーム) 【はじめに】 老年期のがん患者の場合, がんになったこ とをきっかけに心身の機能低下を招きやすいという特徴 から, 家族は介護による時間的, 身体的制約が大きい. ま た, 症状の変化への対応の不安もあり生活面に大きな影 響を受ける. しかし, 適切な介入を行い在宅へ移行し, 家 族が協力して患者の闘病を支えられよい看取りができれ ば家族の満足度は高い. 今回チームで関わることで, 早 期に在宅へ移行することができ看取りが可能となった一 事例を経験した. 【事 例】 A 氏,95歳女性.大腸がん. 同年 X 月まで 1人暮らし.高血圧で近医受診,黄疸,腹水 貯留あったが, 高齢のため精密検査は行わず経過観察. 恥骨骨折のため整形外科入院. 胸腹水貯留, 血, 肝 変 の治療のため内科転科. 退院前日大量下血. 食事摂取可 能まで回復, 家族の希望で在宅へ退院. 自宅ではほぼ寝 たきり, 娘が介護. 1ヵ月後全身衰弱と腹痛強く, 救急車 で来院入院. 【経 過】 高齢であり, 侵襲的検査は行わ ず疼痛コントロールで経過をみる方針で塩酸モルヒネを 用. 患者, 家族が自宅に退院したいと強く希望. 家族に は末期肝 変, 大腸がんで治療しなければ生存は困難と 説明, それでも自宅で介護したいと希望. デュロテップ パッチに変 し, 往診医, 在宅看護を依頼, 全身状態不良 であったが自宅退院となった. 【 察】 病状悪化し ても在宅療養を継続できるように, ソーシャルワーカー から診療所の医師に連絡を行い, 訪問看護師が病室訪問 を行い, 家族と支援の確認を行った. こうした準備によ り, A 氏は退院の翌日に住み慣れた家で最期を迎えるこ とができた.娘は「よくしていただいて.面倒をみたから 悔いはないです.」と述べられ, 娘にとって人生の満足と なる療養となった. 老年期の患者と家族は様々な 康問 題や生活上の困難さが伴う. それらについてケアチーム に属するそれぞれが自 の専門 野から情報収集や提案 を行い, 合的に捉え援助していく必要がある. 5.在宅療養を患者・家族が選択することができた一症 例の報告 神宮 彩子,古関 雅美,柳澤千鶴子 高橋 和宏,吉永 輝夫,神田 大輔 山口亜樹子,平山 功,吉田 長英 河合 弘進,細内 康男,深澤 一昭 仁科 砂織,関根奈光子,望月 裕子 (群馬県済生会前橋病院 かんわケアチーム) 【はじめに】 がん終末期患者の多くは在宅での生活を希 望するが, 終末期患者を介護するという家族の不安は大 きく, 在宅への選択が困難な場合が多いと感じている. このような不安を明確にし, 支援したことで患者・家族 が自ら「在宅」を選択することができた一症例を報告す る. 【症 例】 70歳, 男性. 膵臓がん, 肺転移, 糖尿病. 化学療法を中断, 症状マネージメント中. 秘にて入院 となった. 秘の解消後, 全身衰弱, 環境の変化による見 当障害が生じ, 日中も傾眠であった. Ⅰ : 家族が強く入 院を希望していた時期 本人は力なく「帰りたい」と話 し, 妻, 娘は毎日面会して差し入れなどできることを 行っていたが「食べてくれない.日に日にやせていく.退 院なんて無理.」と話された. Ⅱ : 外泊後在宅に対する不 安が明確になってきた時期 状態も落ち着き, 外泊を提 案した. 帰院後の本人の表情もよく退院希望がより強く 68 第 19 回群馬緩和医療研究会