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継続的なコラージュ制作による心理的変化の検討-対人恐怖心性に着目して-

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Academic year: 2021

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- 83 - 継続的なコラージュ制作による心理的変化の検討 一対人恐怖心性に着目して一 人 間 教 育 専 攻 臨床心理士養成コース 大 嶋 あ ゆ 美 1.問題と目的 筆者には対人恐怖の傾向があり,対入場面 で、困った経験がある事から,筆者と似たよう な傾向がある人に面接を行う場合少しでも負 担が減る方法はなし、かと考えた。そうして調 べたところ,服部(1999)の『対人恐怖症者 の表現特徴(コラージュ療法

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という論文を 見つけた。そこには継続的にコラージュを制 作する事で改善がみられた事例が複数載せら れていた。また,コラージュ制作の効果につ いて,増田・小山 (2006) は["~心理的退行』 『カタルシス効果~ ~癒しの体験~ ~達成感』 『自己についての気づき』の5つの変化を見 出したJと述べており,石口・島谷 (2010) は「継続制作により,作品に表現される自己と 制作に取り組む自分自身が変化してくる可能 性が示唆され」ると報告している。そこで本研 究では,コラージュがクライエントとの関係 を築く一助となるだけでなく,対人恐怖にも 心理的影響を与えるのではなし、かと考え,検 討することを目的とする。さらに,継続制作 によってコラージュの表現特徴がどのように 変化したかについても検討したい。ただし, 対人恐怖症者を対象に研究を行う事は現実的 に難しい為,今回は対人恐怖心性が高い人を 対象に研究を行う。対人恐怖心性とは, ["一般 の青年にみられる対人恐怖の心理的傾向」の ことである(鎌倉, 2012)。 指導教員 今 回 雄 三

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方法 対象者:A大学に在籍する大学院生 16名へ, 質問紙への回答及びコラージュ制作を依頼し た。 方法:全ての調査を個別で, 1人 5囲の調査 を行った。初回は質問紙(対人恐怖心性尺度) の回答,コラージュの制作,その後振り返り シートの記入とインタビ、ューを行った。次回 からはコラージュ制作と振り返りシートの記 入,インタビューの順で調査を3回行った。 5回目にはコラージュ制作,振り返りシート の記入,インタビューの後 5回分のコラージ ュ作品を眺めながら振り返りを行った。そし て最後に質問紙の回答を求めた。コラージュ の素材には今村・加藤・二村・今枝 (2014) が作成した統一素材を使用した。 分析方法:全対象者について,対人恐怖心性 尺度を用いた質問紙とコラージュ・スコアリ ングカテゴリーによる分析を行った。その後, 変化の流れが特徴的な協力者を抽出し,コラ ージュ・スコアリングカテゴリーや振り返り シート,インタビューを基に分析を行った。 3.結果と考察 最初に α係数を算出し,内的整合性をみた ところ,質問紙,スコアリングシステム共に 信頼性が得られた。その後,コラージュの制 作前後で対人恐怖心性に変化がみられるのか について対象者全体に対応のある t検定を行

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- 84 - なった結果,有意な差はみられず,コラージ ュの制作前後で対人恐怖心性に変化はないと いう事が明らかとなった。 次に,対人恐怖心性の得点が高い者を高群 (以下高群),低い者を低群(以下低群)とし, 男女や高群低群で表現特徴に差はみられるの かを検言すする為にコラージュ・スコアリング カテゴリーを用いて各表現の出現率を算出し フィッシャーの直接法を行なった。その結果, 高群は低群より[存在]や[食物]の値が有 意に高いということが明らかとなった。この ことから,高群は一般的な人間関係に対して 興味や関心を示し,口唇依存的な傾向・エネ ルギーが高い傾向にあるといえるだろう。ま た,各表現の出現率を平均値として算出し,

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検定を行なったところ,男性が女性より【葛 藤}の値が高い結果となった。これは,男性 の方が自己の欲求とその対処が桔抗している 葛藤状態に陥る場面が多いことを表している。 変化の流れが特徴的な協力者として,対人 恐怖心性の得点にあまり変化がみられなかっ た者4名(高→高2名,低→低2名),変化が みられた者 3名(高→低 2名,低→高 1名) を抽出して分析した。 高→高:基本特徴が一貫しており,作品の印 象に大きな変化がない。また, [重ね貼り]の 表現が多いこと、その表現が継続しているこ とは,対人恐怖心性が高く,また対人恐怖心 性に変化がないことと一致する。 低→低:両者で作品の印象や制作態度は対照 的であるが、様式カテゴリーは 5回の制作を 通して一貫していた。様式カテゴリーは事態 への対処の仕方を表しており、「他者の目を気 にしない、自分は自分」という自我の強さを 表しているのではないだろうか。 高→低:対人恐怖心性の得点が変化したよう に、制作毎の作品の表現の変化も大きかった。 しかし、 2人の作品の変化の流れは異なって いるように思われるため、おそらく変化した 要因も同じではないと思われる。 低→高:変化した要因としては 2つ考えられ る。 1つは元々の対人恐怖心性の高さを防衛 して質問紙に表さないようにしていたという 事,もう 1つは2回目の制作で自身の受入れ られない内面が出てしまい,そのことが対人 恐怖心性に影響をもたらしたという事である。

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総合考察 統計やスコアリングシステムについては前 述の通りである。 協力者のまとめとして,本研究では服部 (1999)や山上 (2014)の解釈を基にして分 析した。その結果、必ずしも対人恐怖む性と [重ね貼り]の表現が一致するわけではないと いうことが分かった。また,憧ね貼り]の表 現は、みられる人は毎回みられ,みられない 人は毎回みられない等制作者個人で一貫して いる表現で、あった。そのため,対人恐怖心性 の指標としてみることはできないが,制作者 の表現特徴として解釈することはできると考 えられる。 今後の課題としては,筆者との関係性がコ ラージュ制作に影響をもたらしたという関係 性の問題と,実証的な結果を出すためには長 期にわたる研究が必要であるとし、う期間の問 題が挙げられる。 本研究を行った事によってコラージュ制作 の変化の流れと共に,対人恐怖心性の高低で の表現特徴,更に筆者の特徴まで知る事がで きた。本研究で得られた経験を基に鍛錬を積 み,実際の臨床現場で活かしていきたい。

参照

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