代謝流量の線形解析
3
0
0
全文
(2) Theorem 1 (Hubicka and Syslo [4]). るあらゆる経路の集合をベクトルとみなしたとき グ ラ の、基底となる経路集合の生成を目標としている。 フの辺 e を含む最短サイクル C は、グラフ中のサ 実際、解糖系とペントース燐酸系の基底となる経 イクルが張る空間の基底集合に含まれる。逆に、 路集合を求めているが、文献 [8] に見られるアル ど の基底集合も e を含む最短サイクルを含む。 ゴ リズムではこの目標は達せられていない。 この定理より、グラフのサイクルがなす基底集合 は、各辺を通るように最短経路アルゴリズムを用 いて決定できる [3]。こうして求まる基底の次元 1.3 流量バランス解析 は jE j 0 jV j である。実際は、代謝経路をグラフ 以上の二つを含むような、より大きな枠組みが流 に変換する際の制約がかかるため、自由度が更に 量バランス解析である。ここでは、反応における 低くなる。この自由度が 0 以上の際に役立つのが 質量保存則を以下の形で記述する。 線形計画法による流量のバランス解析である。自 由度がない場合、つまり制約過多の場合は、最小 T 1 = 0; 二乗法などによるエラー最適化の手法を用いねば ならない。 は反応式における係数を並べた行列で、各行が 反応式、列が物質に対応する。 は各反応式の流 量を示す実数のベクトルである。これを満たす 代謝物の量 は無数にあるが、ここで以下の制約を満たす最適 定量モデ リングの分野では 、酵素反応を化学反 な を線形計画法で求めている。 応の平衡状態として解析してきた。しかし メタボ ci vi を最小化. 条件 T 1 = 0 のもとで ローム解析で代謝物の量が測定されることを考え ると、化学反応モデルと上記の流量モデルとを橋 ここでベクトル は生物が最適な成長をするため 渡しする理論が必要になる。この橋渡しとして以 のベクトルで、外部から与えられる。また、各反 下の対応を仮定しよう。 応の流量には限界値を定めてある。 (代謝物の増減) 0! (流量の増減) i v i
(3) i この対応は、代謝物の増減情報に従ってグラフの 各辺を \増加" 、\減少", \不変" の三色に塗り分 この解空間を特定の 2 軸で切断したものを phenoける。ここで代謝物の増減をコントロールする手 type phase plane と呼ぶ。流量バランス解析は、 ベクトル というオラクルを用いて流量を計算し 段は、外部物質の増減に限定しておく。. S v. S. v. v. S v. v 2. P. c. c. c. ているため、計算結果の確らしさは に依存する。. 1.4 考察 いずれの解析も、定常状態における内部物質の流 量保存(電子回路におけるキルヒホッフ則)を中 心に経路を決定する。こうして求まる流量は代謝 物の量とは独立なため、古くから微分方程式系で 扱われてきた化学平衡のモデルを考慮していない ことになる。代謝流量をより正確にモデルするに は、更なる情報が必要になる。. 参考:流量の基底 代謝経路をグラフとして捉えられる場合、流量保 存則にもとづく解析は簡単におこなえる。簡単の ためグラフが 2 連結であると仮定し 、以下の定理 を使う。. 2.1 水門モデル 一般に、代謝は化学反応の平衡状態がつながった ものという見方をされている。Metabolic Control Analysis (MCA) はこの仮定に基づき、全体の平 衡状態における各酵素反応の寄与率を解析的に求 める手段を提供している。しかし 、酵素反応では アロステリック効果や拮抗阻害など様々なメカニ ズムが働いており、それらを一律に平衡反応とし て取り扱うのは難しい。 全ての代謝物は細胞内にまんべんなく存在して はいない。例えばバクテリアの基礎代謝には基本 12 物質が存在し 、これらの量変化が代謝の大ま かな調節を司っている [6]。この状態を表現する ために紹介するのが水門 (watergate) モデルであ る。基本 12 物質のすぐ 下流にある酵素反応がい わば水門の役割をしており、この酵素反応以下次 の水門までは自然に流れる代謝とみなす。. −28− 2.
(4) G6P FBP G6P B5P B5P R5P, X5P S7P, G3P E4P, X5P G3P. $ $ ! $ $ $ $ $ !. G6P. FBP. F6P. 2 G3P CO2, B5P. E4P. X5P R5P. R5P. S7P, G3P. G3P. Pyr. E4P, F6P F6P, G3P. Figure 2: Fig.1. のダ イアグラム. Pyr. 解糖系とペントース燐酸経路の酵素反応 かの判断であり、今後の代謝物測定の結果が待た れている。 G6P 1 1 1 glucose 6-phosphate FBP 1 1 1 fructose 1,6-bisphosphate G3P 1 1 1 glyceraldehyde 3-phosphate B5P 1 1 1 ribulose 5-phosphate [1] J. Edwards, R. Ibarra, and B. Palsson. In silR5P 1 1 1 ribose 5-phosphate ico predictions of escherichia coli metabolic caX5P 1 1 1 xylulose 5-phosphate pabilities are consistent with experimental data. S7P 1 1 1 sedoheptulose 7-phosphate Nature Biotechnology, 19:125{130, 2001. E4P 1 1 1 erythrose 4-phoshate [2] D. Harel and R. E. Tarjan. Fast algorithms for Pyr 1 1 1 pyruvate
(5) nding nearest common ancestor. Computer and. Figure 1:. References. System Science. , 13:338{355, 1984.. [3] J. Horton. A Polynomial-time Algorithm to Find. 2.2 具体例. the Shortest Cycle Basis of a Graph.. Comput. SIAM J. , 16(2):358{366, 1987.. ここでは解糖系とペントース燐酸経路を組み合わ せた代謝系を例に、上記の仮説に基づく解析を示 す。考慮する経路は以下のようになる。 水門モデルでは、基本物質以外の代謝物は考慮 しない。そのため、Fig.1 内の基本物質以外のも のを背景で述べた手法を用いて消去すると、Fig.2 のダ イアグラムが得られる。(実際は、代謝物の 量を測定して大きく変動するものを基本物質とみ なす。) ある遺伝子欠損株において E4P が蓄積してい た場合、E4P の下流にある酵素反応が阻害されて いると考える。阻害されている反応のうち最も上 流にある酵素反応が欠損遺伝子の候補として考え られる。. [4] E. Hubicka and M. Syslo. Minimal Bases of Cy-. Recent Advances in Graph Theory, Proc of the symp in Prague Jun 1974 cles of a Graph.. (. In M. Fiedler, editor,. ), pages 283{293. Academia. Praha, 1975. [5] M. L. Mavrovouniotis. itatively. Feasible. L. Hunter, editor,. Bio. Identi
(6) cation of Qual-. Metabolic. Pathways.. In. Arti
(7) cial Intelligence and Mol. , chapter 9. AAAI/MIT Press, 1993.. [6] A. Moat and J. Foster.. Microbial physiology. .. Wiley-Liss, New York, 1995.. Mathematical Biomathematics. [7] J. Murray and S. Levin, editors.. Biology. , volume 19 of. . Springer,. 1993. [8] S. Schuster, D. A. Fell, and T. Dandekar.. 2.3 考察. A. general de
(8) nition of metabolic pathways useful for systematic organization and analysis of com-. 代謝の流量を決定すると 、その流れは培地の栄 養物質から水、二酸化炭素等への DAG とみなす ことができる。このうち物質量が大きく変化する 物質の最上流を見つけるアルゴ リズムは nearest common ancestor として計算可能である [2] 。問 題は、どの程度の変化があれば基本物質とみなす. plex metabolic networks.. Nature Biotechnology. ,. 18:326{332, 2000. [9] G. Stephanopoulos, A. A.A., and N. J.. −29− 3. Engineering. . Academic Press, 1998.. Metabolic.
(9)
関連したドキュメント
そのような発話を整合的に理解し、受け入れようとするなら、そこに何ら
音節の外側に解放されることがない】)。ところがこ
そこで本解説では,X線CT画像から患者別に骨の有限 要素モデルを作成することが可能な,画像処理と力学解析 の統合ソフトウェアである
3He の超流動は非 s 波 (P 波ー 3 重項)である。この非等方ペアリングを理解する
名の下に、アプリオリとアポステリオリの対を分析性と綜合性の対に解消しようとする論理実証主義の
振動流中および一様 流中に没水 した小口径の直立 円柱周辺の3次 元流体場 に関する数値解析 を行った.円 柱高 さの違いに よる流況および底面せん断力
実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる
2 E-LOCA を仮定した場合でも,ECCS 系による注水流量では足りないほどの原子炉冷却材の流出が考