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携帯ソリューションの事業化を狙った研究開発とその展開

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Academic year: 2021

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携帯電話ユーザは、2003年度末には7,550万人に達する と予想されており、人口普及率という観点からみると約60% にも達することになる(1) 。通話以外の携帯電話の主たる利用目 的は、コンテンツの閲覧・ダウンロードやメールの送受信であ る。また、現状の携帯ビジネスの主要プレーヤは、携帯キャリ アやコンテンツプロバイダである。一方、携帯電話が第2.5世 代 か ら 第 3 世 代 へ と 進 化 す る こ と に よ り 、 通 信 速 度 が 384Kbpsから2Mbpsまで高速化され、通信の料金体系もパ ケット従量制から定額制の導入が始まっている。このように通 信速度・料金体系の携帯インフラが進化するなかで、携帯電話 のアプリケーション自体も現状のコンテンツ・エンターテイメ ント系に留まらず、eビジネス、CRMなどのビジネス分野で の携帯によるサービス提供の需要が高まると考えられる。その 中でも特に、モバイルコマース市場が大きな割合を占めると予 想される。モバイルコマース向けの情報機器という観点から携 帯電話を評価した場合、現状では、パソコンに比べて表示画面 が小さい、パフォーマンスの制限によりテキスト情報を主体に 表示、入力に利用できるキーが限られているため複雑な操作が しにくいなど、ユーザとのインタフェースが貧弱であることは 否めない。しかし、最近では、画面の解像度の向上やカメラが 標準的に装備されるなど、特に携帯電話で画像を扱うことがで きる方向に機器のスペックが進化している。このような携帯電 話の機器としての進化の方向性と、以下に述べる携帯電話の利 用特性(2)(3) を考慮すると、より直感的なユーザインタフェー スを実現することが重要であることがわかる。パソコンに比べ て携帯電話は、日常生活で頻繁に発生する何気ない時間を埋め る目的で主に利用されているという特徴がある。今まではその 内容が、コンテンツ閲覧、メール、ゲームなどであった。しか し今後は、商品購入にも、もっと頻繁に利用されると考えられ る。但し、最初からあらゆる種類の商品が購入の対象となるわ けではなく、あまり高価でない、定常的に消費される、日常生 活を営むうえで必須となるような商品を購入することが、利用

1. はじめに

堀 雅和

金垣 善隆

磯野 勝宣

橋本 隆之

Masakazu Hori

Yoshitaka Kanagaki

Katsunori Isono

Takayuki Hashimoto

通話以外の携帯電話の主たる利用目的は、コンテンツの閲覧やメールの送受信である。その結果、携帯ビジネ

スの主要プレーヤは、携帯キャリアやコンテンツホルダである。しかし今後は、ビジネス用途が増加し、その中

でもモバイルコマースの占める割合が大きいものになると予想している。また、最近のカメラ付き携帯電話の急

速な普及状況から判断すると、ビジネスでの利用局面を想定しつつ画像データを携帯電話の利用形態に応じた方

法で処理できるようにすることが、技術的に重要なアプローチの一つであると考えている。

本稿では、以上のような問題意識のもとに実施中の研究開発テーマの内容と、その方向性について紹介する。

最終ゴールは、携帯電話向けサイトを構築するためのフレームワークと、その主要コンポーネントを提供するこ

とを目標としており、豊富な画像処理機能を提供することで技術的に差別化することを狙いとしている。

概要

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40周年記念

第2号

I N T E C T E C H N I C A L J O U R N A L

2003

目的の中心になると考えられる。パソコンによる購入は、例え ば、複数の製品を比較・検討し、その違いを深く吟味して購入 する必要がある高価な商品の購入に有効である。しかし、例え ば、街中で残り少ない化粧品のことを思い出して購入する場合、 場所や時間限定の特売品を購入する場合、あるいは、必要な時 にパソコンの前にいることができないにも関わらずリアルタイ ムオークションに参加したい場合などは、欲しいと思ったらい つでも利用できる携帯電話が、最適な情報機器といえる。 本稿では、以上のような問題意識のもとに実施中の研究開発 テーマの内容とその方向性について紹介する。最終的には、携 帯電話向けサイトを構築するためのフレームワークと、その主 要コンポーネントを提供することを目標としており、豊富な画 像処理機能を提供することで技術的に差別化することを狙いと している。本稿の構成は、第2章で研究開発テーマの概要につ いて述べたあと、第3章で差別化ポイントである画像処理技術 の概要について述べる。 我々が想定している携帯電話インターネットシステムの概要 を、図1に示す。携帯電話ユーザの利用形態は大きな広がりを 見せ、商品購入(モバイルコマース)、広告・プロモーション 情報の提供、地図情報の提供、ウェブカメラによる遠隔地情報 の提供等、現状ではあまり利用されていないサービスが提供お よび利用されるようになると考えている。その結果、ネットワ ーク上でもっと頻繁に画像データのやり取りが行われるように なる。その画像データは、単にカメラで撮影されたままの画像 だけでなく、機器の特性にあわせて変換されたデータや、複数 の画像データを用いて合成されたデータなど、さまざまに加工 されたデータが受け渡しされるようになる。 図2に、画像処理技術をコア技術としたサーバシステムのソ フトウェア構成を示す。アプリケーション層、制御層、データ 管理層の3層で構成されている。本研究開発では、制御層のフ レームワークと、そのフレームワークを構成する主要なコンポ ーネントを提供することを狙いとしている。その主たる目的は、 さまざまなサービスインタフェースを少ないコストで提供でき るようにすることにある。制御層の主な機能は、以下のとおり である。 (1)画像処理機能 ・画像データ管理・配信機能 画像データの管理、検索、配信など ・基本画像処理 画像フォーマット変換、画像幾何変換、画質補正、 画像合成、画像解析/認識など ・顔画像合成機能 顔の特徴点抽出、表情変化/年齢変化合成、ヘアスタ イル/メイクアップ合成など ・高解像度画像処理機能 ズーム画像処理、パノラマ画像処理、立体画像処理、 3次元CG処理など

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2. 技術開発の概要

アプリケーション サーバ 想定されるターゲット ・ ECサイト(アパレル,日用品等) ・ 広告・プロモーションサイト ・ 地図情報提供サイト ・ コミュニティサイト ・ CRM実施サイト ・ ウェブカメラ利用サイト ・ 商品購入(モバイルコマース) ・ 広告・プロモーション  情報提供 ・ 地図(GIS) ・ 遠隔地の状況把握 PC&携帯向けサイト 画像処理 サーバ DB サーバ インターネット 携帯利用者A キャリアゲートウェイ ウェブカメラ 監視 観覧 携帯利用者B PC利用者 図1 携帯電話インターネットシステムの概要

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ユーザアカウントを管理する機能である。ユーザ登録 やログイン時の認証などに用いられる。各ユーザには、 画像データを蓄積管理するための領域が割り当てられる。 (3)パーソナライズ管理機能 ユーザの嗜好を表したプロファイル情報とアクセス履 歴を用いて、処理要求があったユーザに提供するサービ スを、そのユーザ向けに個別(パーソナル)化する機能 である。 (4)課金管理機能 ユーザのアクセス履歴を用いて課金する機能を提供する。 (5)PC-Webシステムとのアクセスインタフェース機能 既存のパソコン向けWebサイトに、携帯電話向けインタ フェースを提供できるようにする機能である。携帯電話の 表示画面に適するように、データを間引くなどの処理をする。 本機能は、画像データの管理、検索、配信を扱う機能である。 (1)画像データ管理機能 基本画像処理機能によって得られる画像の特徴やユー 十分に汲み取った上で徐々に検索候補の範囲を絞り込み、 より効率の良い検索を実現する(図3参照、特許出願2件)。 また、携帯電話では画面サイズの制限により、提示画像 数が限定される、入力手段が限られるといった問題があ る。これらの問題に対応し、携帯電話でも操作が簡単な 画像検索インタフェースを提供する。 (3)画像データ配信機能 配信先の携帯電話の機種を自動判別し、その機種に適 した画像データに基本画像処理機能を用いて変換した後、 配信する。 モバイルコマースを含む電子商取引においては、いかに効率 良く所望の商品を検索できるかが大きな課題である。そのため、 上記機能のうち特に画像検索機能は、欲しい商品を簡単に見つ けられるようにすることにより、購買行動を促進することを目 指している。 本機能は、携帯キャリアおよび携帯電話の機種の違いに対応 した形式に画像を変換する機能であり、基本的な画像処理の機 能で構成されている。 (1)画像フォーマット変換機能 JPEG、PNGなどの画像フォーマットに変換する。 (2)画像幾何変換機能

3.2 基本画像処理機能

3. 画像処理機能

3.1 画像データ管理・配信機能

商品情報 提示・検索 サービス 地図情報 提示・検索 既 存 の P C -W e b シ ス テ ム アバター 生成 ウェブ カメラ制御 課 金 管 理 ユ ー ザ 管 理 パ ー ソ ナ ラ イ ズ 管 理 地 図 デ ー タ 管 理 ・ 配 信 バ ー コ ー ド デ ー タ 管 理 ・ 配 信 顔画像 合成 基本画像処理 画像データ管理・配信 高解像度 画像処理 ア ク セ ス I / F プ ラ グ ア プ リ ケ ー シ ョ ン 層 制 御 層 デ ー タ 管 理 層 サーバシステム 携帯電話 機種情報 ユーザ情報 プロファイル情報 画像データ 図2 サーバシステムのソフトウェア構成 強いて言えばこんな感じかなぁ… 評価(見て、選ぶ) インタラクション 類似度の高い画像を提示 えぇと、これが似てるかな… そうそう、こんな感じ、こんな感じ! これ!これ!! 初期検索 2回目検索 M-1回目検索 M回目検索 評価(見て、選ぶ) インタラクション 類似度の高い画像を提示 図3 対話型画像検索インタフェース

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画像のサイズ変換、拡大・縮小、回転・並進などの処理 を施す。 (3)画質補正機能 画像のコントラスト変換やノイズ除去などを行う。 (4)画像合成 スタンプ/フレーム合成など、複数枚の画像を合成する。 (5)画像解析/認識機能 画像の特徴抽出などの機能を提供する。 本機能は、人間の顔の特徴を考慮した画像合成機能であり、 多様な種類の顔画像を合成することができる。 (1)特徴点抽出機能 顔のパーツを認識し、特徴点を抽出する。携帯電話で 撮影された画像は、撮影条件がさまざまであり、かつ、 画像サイズも小さいため、認識が難しいという問題があ る。そのため、安定して特徴点を抽出できるように本機 能を実現する。 (2)表情変化/年齢変化合成機能 表情や年齢が異なる画像を合成する機能である(4)(5) 顔変化の統計情報を利用して顔変形することで、1枚の 顔画像から表情や年齢を変化させた顔画像を合成するこ とができる(特許出願1件)。例えば、年齢変化させた画 像をモーフィングすることでカップルの子供予想などが できる。エンタテイメントやアミューズメントなどの分 野に応用できる。 (3)ヘアスタイル/メイクアップ合成機能 いろいろなヘアスタイルの合成や、メイクアップをシ ミュレーションする機能である。理容・美容業界などの 分野に応用することができる。 顔画像合成機能は、携帯からアップロードされた画像に対し て加工を施し、それを配信するといったサービスのコアとなる 機能である。図4に顔画像合成例を示す。 本機能は、ズーム画像、パノラマ画像、立体画像、3次元 CGなど比較的高解像度かつ大容量のデータを扱う機能であ る。解像度が高い画像を効率的に配信し、携帯電話の小さな画 面上で効果的に表現するための機能を提供する。 (1)ズーム画像処理機能 拡大しても画像を綺麗に表示できる拡大表示機能であ る。拡大率に応じて表示する画像の解像度を変更するこ とにより、本機能を実現する。商品の精巧なデザインや オークションで商品のキズを確認するなどの目的に利用 することができる(図5参照)。 (2)パノラマ画像処理機能 ホテルの室内や自動車の内装などの空間を、360度回 転表示できる機能である。ホテルの予約時に部屋を確認 するなどの利用が考えられる(図6参照)。

40周年記念

第2号

I N T E C T E C H N I C A L J O U R N A L

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3.4 高解像度画像処理機能

3.3 顔画像合成機能

送信 配信 顔画像合成サーバ 表情変化 年齢変化 ヘアスタイル合成 子供予想 図4 顔画像合成機能

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図5 ズーム画像表示画面

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(4)3次元CG処理機能 3次元CGデータを用いて、任意方向から商品を見た画 像を表示できるだけでなく、商品をアニメーションとし ても表示できる機能である。例えば、商品の機能をアニ メーションで説明するといた利用方法がある(図8参照)。 モバイルコマースにおいて商品をPRする場合、上記機能を 用いて任意の方向から見た商品を高解像度で表示することによ り、ユーザの購買意欲を向上させる効果が期待できる。 本機能は、線分の集まりで図形を表現するベクター形式の地 図データを総合的に扱う機能である。大量な地図データや地図 に関連付けて管理される属性データを効率的に配信し、携帯電 話の小さな画面上でスムーズに地図を閲覧するための機能を提 供する(図9参照)。 (1)地図データ管理機能 ベクター形式の地図データを、登録できる機能である。 (3)地図属性データ管理機能 地図上にマッピングする属性データを管理する機能で ある。 (4)地図データ配信機能 地図データをベクター形式のまま圧縮して携帯電話に 配信する機能である。データがベクター形式のため、地 図のスムーズな拡大・縮小、移動が可能である。また、 リアルタイムで地図上に属性データを合成したり、地図 をアニメーション表示したりできる。 今後、地図データは、利用頻度の増加が予想される。特に有 効なアプリケーションは、店舗の場所案内やナビゲーション、 行政や自治体での地域管理、一般企業の営業活動やマーケティ ング等に用いることである。 本機能は、点の集まりで図形を表現するラスター形式の1次 元あるいは2次元のバーコードデータを管理・配信する機能で ある。ユーザ認証が完了したら、本機能を用いてバーコードデ ータを配信し、携帯電話の画面に表示される(図10参照)。 (1)バーコード管理機能 キーとバーコードデータを関連付けて管理する機能で ある。 (2)バーコード配信機能 指定されたキーを用いてバーコードデータを検索し、

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図8 3次元CG画像表示画面

Exit Help

図9 地図データ表示画面

3.5 地図データ管理・配信機能

3.6 バーコードデータ管理・配信機能

Exit Help Exit Help Exit Help

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携帯電話に配信する機能である。配信するデータの圧縮 や、暗号化する機能も実現する。 携帯電話でバーコードは既に利用されているが、今後、更に その範囲は広がると予想される。店舗等で個人を識別する目的 だけでなく、ポイントカードやクーポンなど、マーケティング にも広く利用できる。また、これらを用いた新しいビジネスモ デルの可能性も期待できる。 本稿では、現在推進中の研究開発テーマである携帯電話向け サイトを構築するためのフレームワークと、その主要コンポー ネントの概要について紹介した。今後は、現在開発中のフレー ムワークを用いてシステムを開発し、実際のユーザに適用して いくことを目指している。また、その過程で、携帯電話応用シ ステムに要求されるその他の技術要件を明らかにし、その要件 を満たすシステムを市場に提供していきたいと考えている。 参考文献 (1)社団法人電気通信事業者協会ホームページ (http://www.tca.or.jp/). (2)株式会社サーバード:モバイルビジネス戦略.NTT出版, (2002). (3)三和総合研究所:次世代携帯ビジネス「勝ち組」の法則. 廣済堂,(2001). (4)磯野勝宣,尾田政臣,向田茂,赤松茂,“eBuilder:任意 表情生成システムの開発−1枚の顔写真からの任意表情静 止画像/動画像の生成−,”ヒューマンインタフェース学 会論文誌,Vol.3,No.4,pp.1-10,(2001). (5)磯野勝宣,橋本隆之,堀雅和,“統計情報を用いた多様な 顔画像の生成∼年齢変化についての一検討∼,”情報処理 学会研究報告,2003-CVIM-139,pp.101-106,(2003).

40周年記念

第2号

I N T E C T E C H N I C A L J O U R N A L

2003

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Exit Help 図10 バーコードデータ表示画面

4. おわりに

堀 雅和

Masakazu Hori ・インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフ ォマティクス株式会社 技術部アドバンスト・リ サーチグループ 主任研究員 ・ヒューマンインタフェース・エージェント技術 関連システムの企画・研究開発に従事 ・博士(情報科学)、富山県立大学客員助教授、 IEEE、ACM、情報処理学会各会員

金垣 善隆

Yoshitaka Kanagaki ・インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフ ォマティクス株式会社 事業開発部 主任 ・携帯とPCのグラフィック関連アプリケーショ ン企画、国内・海外事業企画・開発に従事

磯野 勝宣

Katsunori Isono ・インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフ ォマティクス株式会社 技術部アドバンスト・リ サーチグループ ・顔画像処理、感性情報処理に関する研究開発に 従事 ・電子情報通信学会、ヒューマンインタフェース 学会各会員.博士(工学)

橋本 隆之

Takayuki Hashimoto ・インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフ ォマティクス株式会社 技術部アドバンスト・リ サーチグループ ・携帯アプリケーション、画像処理に関する研究 開発に従事

参照

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