Title
複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の合成構造
への適用に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
藤元, 安宏
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第051号
Issue Date
2006-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/3000
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委員 藤 元 安 宏(宮崎県) 博 士(工学) 乙第 51 号 平成18 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の合成構造への適用に関 する研究
(Study on applications offiber reinforced cementitious composites
withmultiplefinecrackstocompositesstructures) 市 裕 田 内 授 教 哲昭 敬 恵 博 郷本良 六 森奈 授授授 教教教 ) ) 査 査 主 副 ( (
論文内容の要旨
この論文は,複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(ECC)を鋼などとの合成 構造として用いるため,実験的な検討を行うとともに,設計方法を提案した.ECCは,引 張力を受けると擬似的なひずみ硬化挙動を示し,微細なひび割れが複数生じ,大きな引張 ひずみを示すとともに,引張力を安定して受け持つことのできる新しい材料である. この論文では,ECCを主に鋼板や鋼管の被覆材として用いた鋼-ECC複合構造物を対象と して,その可能性について検討するとともに,鋼とECCとの一体性を確保するうえで重要と なるズレ止めの設計方法や耐荷力の計算方法を提案した. (1)鋼板/ECC合成部材 ECCは,鋼板との付着性状がよく,鋼板の被覆補強材として鋼繊維モルタルより優れて いることを実験により示すとともに,鋼板とECCとの合成部材の優位性を指摘した. (2)鋼管/ECC合成部材 鋼管の被覆材にECCを用いた部材では,被覆材にモルタルや鋼繊維補強モルタルを用い た部材に比べ,曲げ耐力は3割増加し,最大荷重時の変位も倍以上大きくなった.ECCは, 引張力を安定して分担するとともに銅材の破壊域の局所化を遅らせることを明らかにした. 鋼管にリブを加工することにより,鋼管とECCとの付着が良くなり一体化するため,曲 げ耐力は2割程度増加し,終局時におけるひび割れ分散性も良くなった. ECCと鋼管との付着を良好にする方法として,銅管の外側に鉄筋を溶接する方法を提案 した.この用法によりECCと鋼管が一体化した棒部材では,普通コンクリートや鋼繊維補 強モルタルと鋼管とを組み合せた場合に比べ,除荷曲線の傾きが緩やかとなり,除荷後の 残留変位も小さくなった.ECCと鋼管との複合部材では,ひび割れ幅は0.15mm以下の微細なものとなった.供試体の断面形状を円形から正方形に変えることにより,耐力も初期
勾配も大幅に向上した.ECCの中に鋼管を配置した壁状構造物の有用性を指摘した. (3)鉄筋/ECC合成部材 アルカリ骨材反応によるひび割れが生じた重力式コンクリート擁壁を対象として,修景 を目的にECCの吹付けにより表面の補修を実施した.ECCの表面は良好な仕上がりとな-141-り,施工後3ケ月の時点では目視によるひび割れが生じなかった.
要素部材の直接引張試験による性能評価では,引張変形能が小さいECC吹付けモルタル
に補強筋を組み合せることにより,部材としての引張変形能が大きくなった. (4)pc/ECC合成部材 各種繊維補強セメント系複合材料を緩衝材に用いることにより,衝撃作用を受ける場合 にコンクリート片の飛散を防止する効果が認められ,衝撃耐力が増加した. (5)設計と適用の可能性 ECC合成部材の設計方法として,特にズレ止めの設計方法に焦点を当てて検討した.斜 張橋,合成アーチ橋,吊橋の床板へのECCの適用の可能性について,ECCがもつ①大変 形回復能力,②エネルギー吸収能九 ③衝撃力吸収能力,④高耐久性等の材料特性に注目 して検討した.論文審査結果の要旨
この論文は,複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(ECC)を鋼などとの合成 構造として用いるため,実験的な検討を行うとともに,設計方法を提案したものである. ECCは,引張力を受けると擬似的なひずみ硬化挙動を示し,微細なひび割れが複数生じ, 大きな引張ひずみを示すとともに,引張力を安定して受け持っことのできる新しい材料で ある. この論文では,ECCを主に銅板や鋼管の被覆材として用いた鋼-ECC複合構造物を対象 として,その可能性について検討するとともに,鋼とECCとの一体性を確保するうえで重 要となるズレ止めの設計方法や耐荷力の計算方法を提案しており,この論文の有用性は大 きい・この論文は,以下に詳しく示すように研究結果を含んでいる.したがって,審査の 結果,この論文を学位論文に値するものと判定した. (1)鋼板/ECC合成部材 ECCは,鋼板との付着性状がよく,鋼板の被覆補強材として鋼繊維モルタルより優れて いることを実験により示し,鋼板とECCとの合成部材の優位性を指摘している. (2)銅管/ECC合成部材 鋼管の被覆材にECCを用いた部材では,被覆材にモルタルや鋼繊維補強モルタルを用い た部材に比べ,曲げ耐力は3割程度増加し,最大荷重時の変位も倍以上大きくなることを 報告している.ECCは,引張力を安定して分担するとともに鋼材の被壊域の局所化を遅ら せるとの重要な知見を得ている. 鋼管にリブを加工することにより,鋼管とECCとの付着が良くなり一体化するため,曲 げ耐力は2割程度増加し,終局時におけるひび割れ分散性も良くなることを報告している. ECCと鋼管との良好な付着を得るための方法として,鋼管の外側に鉄筋を溶接する方法 を提案している.このことは,この論文の特徴の一つである.この用法によりECCと鋼管 が一体化した部材では,普通コンクリートや鋼繊維補強モルタルを鋼管と組み合せた場合 に比べ,除荷曲線の傾きが緩やかとなり,除荷後の残留変位も小さくなることを報告して いる.ECCと鋼管との複合部材では,ひび割れ幅は0.15mm以下の微細なものとなり,美 観や耐久性の観点から優れていることを報告している. 供試体の断面形状を円形から正方形に変えることにより,耐力も初期勾配も大幅に向上 することを報告している.この部材を連続させた構造,すなわちECCの中に銅管を配置し た壁状構造の有用性を指摘している. (3)鉄筋/ECC合成部材ー142-アルカリ骨材反応によるひび割れが生じた重力式コンクリート擁壁を対象として,修景 を目的にECCの吹付けにより表面の補修を実施している.ECCの表面は良好な仕上がり となり,施工後3ケ月の時点では目視によるひび割れが生じていないことを報告している. 要素部材の直接引張試験による性能評価では,引張変形能が′J、さいECC吹付けモルタル に補強筋を組み合せることにより,部材としての引張変形能が大きくなることを明らかに している. (4)pc/ECC合成部材 ECCをプレストレストコンクリート(PC)部材上面に緩衝材として用いることにより, 衝撃作用を受ける場合にコンクリート片の飛散を防止する効果が認められ,PC部材の衝撃 耐力が増加することを報告している. (5)設計と適用の可能性 鋼とECC との一体性を確保するうえで重要となるズレ止めの設計方法や耐荷力の計算 方法を提案している.斜張橋,合成アーチ橋,吊橋の床板へのECCの適用の可能性につい て,ECCがもつ①大変形回復能力,②エネルギー吸収能力,③衝撃力吸収能力,④高耐久 性等の材料特性に注目して検討している.