Title
濃縮乳の低温保持による増粘機構に関する研究( 内容と審査
の要旨(Summary) )
Author(s)
塩川, 雅史
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第596号
Issue Date
2013-03-13
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/47979
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 塩 川 雅 史 (神奈川県) 博士(農学) 農博甲第596号 平成25年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学 濃縮乳の低温保持による増粘機構に関する研究 主査 岐阜大学 准教授 矢 部 富 雄 副査 岐阜大学 教 授 金 丸 義 敬 副査 静岡大学 教 授 森 誠 副査 鹿児島大学 名誉教授 青 木 孝 良 論 文 の 内 容 の 要 旨 脱脂濃縮乳は,新鮮な風味の維持と輸送の効率化に適した原料乳製品である。保存 中に乳糖の結晶化や粘度の上昇などの品質的な問題が起きることが知られているもの の,現在のところ根本的な解決法は知られていない。本研究では,脱脂浪縮乳が冷蔵 保存中に増粘する現象の解明を通して,カゼインミセルの構造と特性に関する実用的 な知見を見出すことを目的とし,小規模試験機レベルで調製した脱脂浪縮乳や人工カ ゼインミセル(ACM)濃縮液を用いて,乳糖やカルシウム,カゼインミセル間の相互 作用などが増粘に及ぼす影響について検討し,以下の成果を得た。 (1)脱脂濃縮乳を用いて,冷蔵条件下で粘度と乳糖結晶化率を経時的に測定するこ とにより,乳糖の結晶化に伴う可溶性乳糖の減少は,カゼインミセルの分散安定化作 用に影響し,脱脂濃縮乳の増粘を促進する一つの要因となることを明らかにした。ま た,レーザー回折散乱法で脱脂澱縮乳中のカゼインミセルの粒子径分布を測定するこ とにより,増粘に伴うカゼインミセルの凝集は,可逆的かつ弱い相互作用によること を明らかにした。 (2)脱脂乳の予傭加熱が脱脂濃縮乳の増粘を促進することを明らかにした上で,そ の増粘速度は,加熱温度が一定の場合,加熱度の指標として用いたホエイタンパク質 (WPNI)と対応することを示し,ホエイタンパク質の変性がカゼインミセル間の相互 作用に影響すること,また,それが増粘を促進する要因の一つである可能性を示唆し ていることを明らかにした。一方,同じWPNIの値でも,プレートで100℃以上の予 備加熱を行った脱脂濃縮乳は,75℃や85℃のバッチによる予備加熱に比べて増粘がよ り促進されたことから,ホエイタンパク質の変性のみではなく,カゼインミセルの変 化や,カゼインミセルと変性ホエイタンパク質の相互作用が,脱脂池縮乳の冷蔵中の
-42-増粘速度に複合的に膨御している可能性も明らかにした。 (3)ACM溶液による脱脂濃縮乳のモデル実験を行い,カゼインミセルが濃縮乳の増 粘に関与する直接的な因子であること,そして濃縮乳中の可溶性乳糖がカゼインミセ ルの分散性を安定化し,増粘を抑制することを明らかにした。また,増粘を発現する カゼインミセル間の相互作用は,粒子径分布の測定結果から,酸やレンネットによる 牛乳の凝固に比べて,可逆的かつ弱い結合であることが示唆されたが,増粘がさらに 進んで強固なゲルを形成すると,カゼインミセル間の相互作用は不可逆的な凝集へと 変化し,やがて乳成分の凝集,沈殿につながると予想した。このことから,脱脂濃縮 乳の増粘は,カゼインミセルの不可逆な凝集に至る変化の初期段階であると指摘した。 以上,本研究は,製造技術と品質管理手法を科学的知見に基づいて構築するための 基礎的で重要な側面を指摘することに成功している。 審 査 結 果 の 要 旨 脱脂淡縮乳は,新鮮な風味の維持と輸送の効率化に適した原料乳製品であるが,保 存中に乳糖の結晶化や粘度の上昇などの品質的な問題が起きることが知られている。 現在,製造業看では,脱脂淡縮乳の固形分を35%以下に抑え,乳糖の自発的結晶化 速度や増粘速度が比較的′j、さい条件下で流通させる方法で対処しているものの,根本 的な解決には至っていない。 本論文で,申請者は,脱脂濃縮乳が冷蔵保存中に増粘する現象の解明を通して,カ ゼインミセルの構造と特性に関する実用的な知見を見出すことを目的とし,小規模試 験機レベルで調製した脱脂濃縮乳や人工カゼインミセル(ACM)濃縮液を用いて, 乳糖やカルシウム,カゼインミセル間の相互作用などが,増粘に及ぼす影響について 検討し,次のように考察した。 まず,脱脂濃縮乳を用いて,冷蔵条件下で粘度と乳糖結晶化率を経時的に測定する ことにより,乳糖の結晶化に伴う可溶性乳糖の減少は,カゼインミセルの分散安定化 作用に影響し,脱脂浪縮乳の増粘を促進する一つの要因となることを明らかにした。 また,レーザー回折散乱法で脱脂濃縮乳中のカゼインミセルの粒子径分布を測定する ことにより,増粘に伴うカゼインミセルの凝集は,可逆的かつ弱い相互作用によるこ とを明らかにした。 次に,脱脂乳の予備加熱が脱脂沸縮乳の増粘を促進することを明らかにした上で, その増粘速度は,加熱温度が一定の場合,加熱度の指標として用いたWPNI(ホエ イタンパク憶窒素価)と対応することを示し,ホエイタンパク質の変性がカゼインミ セル間の相互作用に影響すること,また,それが増粘を促進する要因の一つである可 能性を示唆していることを明らかにした。一方,同じWPNIの値でも,プレートで
100℃以上の予備加熱を行った脱脂浪縮乳は,75℃や85℃の予備加熱に比べて増粘
がより促進されたことから,ホエイタンパク質の変性のみではなく,カゼインミセルの変化や,カゼインミセルと変性ホエイタンパク質の相互作用が,脱脂淡縮乳の冷蔵
中の瀾■粘速度に複合的に形響している可能性も明らかにした。畢後に,ACM溶熟こよる脱脂淡縮乳のモデル実験を行い,カゼインミセノレが淡縮
乳の細粘に関与する直接的な因子であること,そして浪縮乳中の可溶性乳糖がカゼイ-43-ンミセルの分散性を安定化し,増粘を抑制することを明らかにした。また,糟粕を発 現するカゼインミセル間の相互作用は,粒子径分布の測定結果から,酸やレンネット による牛乳の凝固に比べて,可逆的かつ弱い結合であることが示唆されたが,増粘が さらに進んで強固なゲルを形成すると,カゼインミセル間の相互作用は不可逆的な凝 塊へと変化し,やがて乳成分の凝亜,沈殿につながると予想し,脱脂漉縮乳の増粘は, カゼインミセルの不可逆な凝錐に至る変化の,初期段階であると指摘した。 以上,本研究は,小規模試験機レベルで調製した脱脂淡縮乳やACM漉縮液を用い て,乳糖やカルシウム,カゼインミセル間の相互作用などが,増粘に及ぼす彫響につ いて考察し,可溶性乳糖の減少が脱脂濃縮乳の哨粘を促進する一つの要因であるこ と,また,ホエイタンパク質の変性がカゼインミセル間の相互作用に膨響し,増粘を 促進する要因の一つである可能性を示唆していること,さらに,カゼインミセルが浪 縮乳の哨粘に閲与する直接的な因子であることを示し,製造技術と品質管理手法を科 学的知見に基づいて構築するための基礎的で盛要な側面を指摘していることから,審 査委員会は全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合腱学研究科の学位論文として十 分価値あるものと認めた。 以上の結果は,以下の論文にまとめられ,学位論文の基礎となる公表論文となって いる。 ● EfftctoflactosecrystallizationonthechangeintheviscosltyOfconcentratedskimmilk atlowtemperature・Milchwissensch`所,2012,MasasIfiShiokawa,YoshihiroKanamaru, TomioYabe,andTakayoshiAoki,67(4),351-354・ ●IncreaseintheviscosltyOfconcentratedarti丘cialcaseinmice11esolutionduringstorageat lowtemperature.MilkStience(日本酪脳科学会),2012,MasashiShiokawa,Yoshihiro Kanamaru,TomioYabe,andTakayoshiAoki,61(3),199-204・