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生体医工学 49(1):69-75, 2011 研究 生体アドミタンス計測による運動耐容能の評価法の検討 松本理隆 * 井田舞美 * 花田智 * 関根正樹 * 田村俊世 * Evaluating Exercise Capacity using Admittance Plethysmography M

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生体アドミタンス計測による運動耐容能の評価法の検討

松本 理隆

*

・井田 舞美

*

・花 田

*

・関根 正樹

*

・田村 俊世

*

Evaluating Exercise Capacity using Admittance Plethysmography

Masataka M

ATSUMOTO

,

*

Maimi I

DA

,

*

Satoru H

ANADA

,

*

Masaki S

EKINE

,

*

Toshiyo T

AMURA*

Abstract We quantified exercise capacity using admittance plethysmography. We simultaneously measured

the tissue blood volume change in the legs using admittance plethysmography and near-infrared spectroscopy (NIRS) during graded exercise on a bicycle ergometer and compared both signals. We also compared the normalized tissue blood volume change according to the maximum blood volume change (NTM) with the total workload during graded exercises, and studied whether NTM is a useful index for evaluating exercise capacity. Furthermore, we compared the maximum tissue blood volume change with a bioelectrical impedance (BI) index ofskeletal muscle volume, and investigated whether it is possible to estimate the maximum tissue blood volume change using the BI index. We found that both admittance plethysmography and NIRS showed that tissue blood volume increased during exercise and that NTM correlated significantly with total workload (p < 0. 01) . Moreover, the maximum tissue blood volume change correlated significantly with the BI index (p < 0.01) .Our results suggest that admittance plethysmography may be useful in the quantitative evaluation of exercise capacity.

Keywords :admittance plethysmography, near-infrared spectroscopy, exercise capacity.

1. は じ め に 運動によって骨格筋の組織血流量が増加する特性(運動 性高血流)に関する研究は,これまで数多く行われてお り,それらの研究の多くでは,静脈圧迫法やクリアランス 法による組織血流計測が用いられているO1-4Q.Elsner ら は若年健常成人を対象に,4 週間のフィジカルトレーニン グを行う前後で,トレッドミル運動に伴う下腿部の組織血 流量の変化を計測する実験を行い,同じ運動強度に対する 組織血流量の変化はトレーニング後,トレーニング前に比 べて少なくなることを明らかにしたO1Q.この研究は運動 耐容能(exercise capacity)が運動時の組織血流量に反映 されることを示したものであるといえる.しかし,静脈圧 迫法では組織の容積変化を計測する装置の他に,静脈圧迫 のためのカフ加圧装置を必要とするため装置が大掛かりで あり,クリアランス法では組織への指示薬の注入を必要と するなど,組織血流計測は簡便な計測法とはいえない.そ のため,組織血流計測を用いた運動耐容能の評価は,一般 的に運動耐容能の評価指標として用いられる最大酸素摂取 量(VO2max)や最高酸素摂取量(peak VO2)など心肺機

能を評価するものとは異なり,直接骨格筋への酸素供給を 評価する有用な運動耐容能の評価法と考えられるが,これ をリハビリテーションやスポーツ科学の分野に応用した研 究は少ない. 一方,組織血液量計測は組織の容積変化だけを計測する ものであり,計測法には生体の電気特性を利用した計測法 や,光学特性を利用した計測法などが考案されているO5, 6Q.中でも生体アドミタンス計測装置は比較的安価に作製 でき,その計測においては組織血液量変化が非侵襲的,経 時的に計測可能で,さらに筋量の指標となる Bioelectrical impedance index(以下,BI インデックス)も算出でき, 定量的評価も可能であるO7Q.山形らは自転車エルゴメー タ運動中の大腿部の生体インピーダンス計測を行い,大腿 部の生体インピーダンスが運動中に減少することを示した O6Q.これは運動時の組織血流量の増加に伴い組織血液量 が増加し,生体インピーダンスを減少させたと推測され る.しかし,運動時は発汗の影響による体内水分量の変化 生体医工学シンポジウム 2010 発表(2010 年 9 月,札幌) 2010 年 7 月 30 日受付,2010 年 10 月 4 日改訂,2010 年 11 月 1 日再改訂,2010 年 11 月 26 日再々改訂

Received July 30, 2010; revised October 4, 2010, November 1, 2010, November 26, 2010.

*千葉大学大学院工学研究科

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など組織血液量変化以外にも生体アドミタンスを変化させ る要因が存在するため,生体アドミタンス計測の組織血液 量計測としての正当性はまだ示されていない.そこで我々 は,若年健常成人を対象に自転車エルゴメータを用いた多 段階運動負荷試験を実施し,生体アドミタンス計測と近赤 外分光法による総ヘモグロビン濃度変化計測の同時計測を 行い計測原理の異なる二つの計測方法による組織血液量変 化の計測結果を比較し,生体アドミタンス計測の組織血液 量計測としての正当性を検証した. 次に,生体アドミタンス計測を運動耐容能の評価に利用 することが可能であるか検証するため,安静時から多段階 運動負荷試験終了時までの組織血液量変化(以下,最大組 織血液量変化)を計測し,同じ運動負荷強度における各被 験者の組織血液量変化を最大組織血液量変化で正規化した 正規化組織血液量変化と多段階運動負荷試験終了までに行 うことができた仕事量(以下,総仕事量)を比較した. また,運動中の組織血液量の増加は主に筋血流量の増加 によって生じると推測されるため,組織血液量変化は計測 範囲に含まれる筋量と関連があると考えられる.そこで, 最大組織血液量変化と筋量の指標となる BI インデックス を生体アドミタンスの計測結果から算出し,両者の比較を 行った.最大組織血液量変化と BI インデックスが強い相 関を示せば,BI インデックスから最大組織血液量変化を 推定し,それを用いて正規化組織血液量変化を算出するこ とが可能である.この方法で算出した正規化組織血液量変 化と多段階運動負荷試験での総仕事量を比較し,BI イン デックスを用いて間接的に算出した正規化組織血液量変化 が運動耐容能の評価に有用であるか検討した. 2. 2・1 組織血液量と BI インデックス

並列導体モデル(parallel conductor model)は,組織 血液量変化と生体アドミタンスを対応させる体肢の電気的 モデルとして,組織血流量計測や心拍出量計測において広 く利用されているO8, 9Q.この並列導体モデルを仮定する と,組織血流量の増加による組織血液量の変化に伴う生体 アドミタンスの変化 DY は,生体アドミタンスを Y,変化 前の生体アドミタンスを Y0とすると,以下の式で表され るO9Q. DY/Y,Y0 ( 1 ) この生体アドミタンス変化から,組織血液量変化 DV を求 める式は,血液の比抵抗を r,電圧電極間距離を L とする と, DV/rL2DY ( 2 ) となるO9Q. 一方,筋量の指標となる BI インデックスは,運動前の 安静時の生体インピーダンスを Zseg,生体アドミタンスを Ysegとすると, BI inde2/ZL2 seg/L 2Y seg ( 3 ) と表される.この BI インデックスが筋量の指標として有 用であることは,Miyatani らによって示されているO10Q. 2・2 実験方法 若年健常成人の年齢 22.4 ± 1.1 歳(Mean ± SD)の男 性 10 名を対象に,自転車エルゴメータを用いて多段階運 動負荷試験を実施し,運動に伴う組織血液量の変化を生体 アドミタンス計測と総ヘモグロビン濃度変化計測の二つの 方法で同時計測した.運動負荷は 20 W から開始し,30 秒 ごとに 10 W ずつ負荷を増加させた.また,運動中のペダ リング回転数はメトロノームに合わせて 50 rpm で一定に するよう指示を出した. 生体アドミタンス計測は,電圧クランプ法を用いたアド ミタンス計を,Yamakoshi らの回路を参考に作製し使用 したO7Q.電圧クランプ法は,電圧電極間の電圧を一定に 保つように生体に印加する電流を制御することで,電圧電 極間の生体アドミタンスを計測するものである.生体に印 加 す る 交 流 電 流 の 周 波 数 は 50 kHz,固 定 電 圧 は 25 mVrms とした.アドミタンスの測定範囲は 10 mS〜50 mS で あ る.計 測 デ ー タ は AD 変 換 器(NI USB-6211, National Instruments)によってサンプリング周波数 256 Hz で AD 変換し,パーソナルコンピュータに記録した. 電極は右大腿部に装着し,四電極法によって計測した.電 極の装着位置を図 1 に示す.まず,大腿骨大転子部の直 下に電流電極 P1 を装着し,そこから膝関節までの距離 Lrefを測定した.次に電流電極 P1 と膝関節間に,電流電 極 P1 および膝関節からそれぞれ 0.2 Lref離れた位置に電圧 電極 P2,P3 を装着した.最後に膝関節から末梢側に 0.2 Lref離れた位置に電流電極 P4 を装着した.各被験者の電 圧電極間の距離 L は 18.8 ± 0.5 cm(Mean ± SD)であっ た. 総ヘモグロビン濃度変化計測は近赤外分光法を用いた非 侵襲酸素モニタ(HEO-200,Omron)を使用した.この 装置は異なる 2 波長(760 nm,及び 840 nm)の光源を生 図 1 電極装着位置 Fig. 1 Four-electrode set-up.

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体に照射し,この 2 つの近赤外光の吸光度の違いから,酸 素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化 を計測する.この計測法は Lambert-Beer の法則を応用 し,物質濃度が特定波長の光の吸光度と直線関係にあるこ とを利用したものであるO6Q.送受光間距離 30 mm のプ ローブを右外側広筋(膝蓋骨上縁より 10 cm〜12 cm 近位 の大腿外側面)に装着し,サンプリング周波数 5 Hz で計 測を行った.また,安全性に配慮し,自転車エルゴメータ (Ergometer 232CXL,Combi)に付属している脈拍セン サを耳朶に装着し,運動中に脈拍数が最大脈拍数(220, (年齢数))に達することのないよう,被験者の安全を管理 して実験を行った. 実験のプロトコルは,3 分間の安静後,多段階運動負荷 試験を実施し,運動終了後 3 分間安静とした.なお,運動 開始前の安静時には被験者の右足の膝関節が約 90 度,大 腿部が地面に平行になるように高さを調節した台をエルゴ メータの横に用意し,運動前の安静時にはその台に右足を のせて静止した状態を保つよう指示した.運動の中止基準 は回転数(50 rpm)の維持が困難になった時,被験者が 疲労困憊を訴えた時,あるいは心拍数が最大心拍数に達し た時とした.なお,本研究は千葉大学大学院工学研究科倫 理委員会の承認を得た後,被験者に内容と実験のリスクに 関して十分な説明を行い,被験者から書面にて同意を得て 実施した. 2・3 評価方法 運動中,筋組織の収縮に伴い生体アドミタンスは大きく 変動するO11Q.この影響を除去するため,計測したデータ にカットオフ周波数 0.1 Hz の 1 次ローパスフィルタを適 用した.ローパスフィルタ適用後のデータから,最大運動 負荷に対する運動負荷率(% WRmax)が 20%,40%, 60%,80%,100%に達した各時点においてその直前 1 分 間の生体アドミタンスの平均値を各被験者ごとに算出し, それぞれ運動開始直後 1 分間の生体アドミタンスの平均値 との差分から各運動負荷率の運動負荷に伴う組織血液量変 化を算出した.最大組織血液量変化は運動負荷率 100%の 運動負荷に伴う組織血液量変化とした.血液の抵抗率は本 実験では計測を行うことができなかったため,すべての被 験者の血液の比抵抗を 140 `cm としたO12Q.また,運動 開始直前 1 分間の安静時の生体アドミタンスの平均値から BI インデックスを算出した. 生体アドミタンスの計測結果と総ヘモグロビン濃度変化 の計測結果の比較では,計測データを 1 Hz のサンプリン グ周波数にダウンサンプリングし,各被験者ごとに運動中 の両者の計測データの相関係数を算出し,ピアソンの積率 相関係数の有意検定を行った.また,最大組織血液量変化 と BI インデックスの比較では,両者の相関係数を算出し ピアソンの積率相関係数の有意性検定を行った. 運動耐容能の評価の指標として,正規化組織血液量変化

(the normalized tissue blood volume change according to the maximum tissue blood volume change:NTM)を, 次のように定義する. NTM/DVDV max/ DY DYmax ( 4 ) DV は組織血液量変化,DVmaxは最大組織血液量変化,DY は生体アドミタンス変化,そして DYmaxは最大生体アド ミタンス変化である.被験者の中で最も早く試験を中止し た被験者の運動終了時間を基準として,運動開始直後 1 分 間の生体アドミタンスの平均値と,最も早く試験を中止し た被験者の運動終了時間の直前 1 分間の生体アドミタンス の平均値を各被験者の計測結果から算出し(算出区間 1), 同じ運動負荷強度におけるすべての被験者の組織血液量変 化を算出した.その組織血液量変化を実験で計測した各被 験者の最大組織血液量変化を用いて正規化し,それぞれの NTM を直接求めた(以下,この方法を直接法とする). そして,各被験者の NTM と多段階運動負荷試験での総仕 事量の比較を,ピアソンの積率相関係数の有意性検定に よって行い,同じ運動負荷強度における各被験者の NTM と運動耐容能の関係を検討した.また,最大組織血液量変 化と BI インデックスが有意な相関を示した場合,両者の 関係式を最小二乗法を用いて表し,その算出式を用いて BI インデックスから最大組織血液量変化を推定し,直接 法と同じ算出区間 1 における各被験者の NTB を算出した (以下,この方法を間接法とする).その結果を多段階運動 負荷試験での総仕事量と比較し,両者の比較をピアソンの 積率相関係数の有意性検定によって行った.さらに,正規 化前と正規化後を比較するため,同じ算出区間 1 における 正規化を行う前の組織血液量変化と実験での総仕事量の 相関係数を算出した.データは全て平均値±標準偏差 (Mean ± SD)で示した. 3. 自転車エルゴメータの多段階運動負荷試験中の生体アド ミタンス計測結果の典型例を図 2,総ヘモグロビン濃度変 化計測結果および脱酸素化ヘモグロビン濃度変化計測結果 の典型例を図 3 に示す.運動を終了した時点での各被験 者の自転車エルゴメータの負荷量は 208 ± 17.5 W であっ た.運動中は筋収縮による組織の変形によって,激しく生 体アドミタンスと総ヘモグロビン濃度が変化しているが, 全体の傾向としては生体アドミタンス計測および総ヘモグ ロビン濃度変化計測の両者で,運動負荷中に緩やかな組織 血液量の増加がみられた.また,脱酸素化ヘモグロビン濃 度は運動負荷中顕著に上昇し,血中酸素濃度の低下が確認 された.運動負荷に伴う組織血液量変化を図 4 に示す. 運動負荷が増加するにつれて,組織血液量変化の増加がみ られたが,標準偏差が示すように被験者によって変化の大 きさにばらつきがみられた.

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最大運動負荷に伴う生体アドミタンス計測による組織血 液量変化は 90.0 ± 25.9 mL,総ヘモグロビン濃度変化の計 測結果は 68.8 ± 22.8 mM であった.運動中の各被験者の 生体アドミタンス計測による組織血液量変化の計測結果と 近赤外分光法による総ヘモグロビン濃度変化の計測結果の 相関係数は 0.92 ± 0.04 で,すべての被験者で有意な相関 (p < 0.01)を示した. 各被験者の BI インデックスと最大運動負荷時の組織血 液量変化の比較を図 5 に示す.両者の相関係数は 0.83(p < 0.01)となり,正の強い相関を示した. 直説法を用いて算出した各被験者の正規化組織血液量変 化と多段階運動負荷試験での総仕事量の比較および,間接 法を用いて算出した各被験者の正規化組織血液量変化と多 段階運動負荷試験での総仕事量の比較を図 6 に示す.正 規化組織血液量変化の算出に用いた多段階運動負荷試験を 最も早く中止した被験者の運動終了時間は運動開始後 7 分 38 秒であった.直接法を用いた正規化組織血液量変化と 総仕事量の相関係数は ,0.84(p < 0.01)となり,有意な 相関を示した.しかし,間接法によって算出した正規化組 織血液量変化と総仕事量との相関係数は ,0.58 となり一 定の傾向は示唆されたが,有意な負の相関は示さなかっ た.正規化を行う前の組織血液量変化と総仕事量の相関係 数は 0.10 で,ほとんど相関を示さなかった. 4. 生体アドミタンス計測は簡便な計測法であるため,今 後,運動耐容能の評価法として広く利用されることが期待 される.そこで,本実験では生体アドミタンス計測による 図 2 生体アドミタンス計測結果典型例(被験者 1) ( a ) ローパスフィルタ 10 Hz 適用 ( b ) ローパスフィルタ 0.1 Hz 適用

Fig. 2 Typical admittance plethysmography recording ( a ) cutoff frequency of the low-pass filter: 10 Hz ( b ) cutoff frequency of the low-pass filter: 0.1 Hz

図 3 NIRS 計測結果典型例(被験者 1) ( a ) 総ヘモグロビン濃度変化 ( b ) 脱酸素化ヘモグロビン濃度変化 Fig. 3 Typical NIRS recording

( a ) total hemoglobin ( b ) deoxyhemoglobin

図 4 多段階運動負荷試験施行中の組織血液量変化 Fig. 4 Tissue blood volume change during graded exercises.

Values are presented as mean ± SD (n = 10).

r = 0.83 p < 0.01 y = 17.8x - 90.5

図 5 最大組織血液量変化と BI インデックス Fig. 5 Relationship between maximum tissue blood volume

change and BI index. (a)

(a)

(b) (b)

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運動耐容能の定量的評価の有用性について検討した.自転 車エルゴメータによる多段階運動負荷試験施行中に,大腿 部の生体アドミタンス計測と総ヘモグロビン濃度変化計測 の同時計測を行った結果,運動による大腿部の組織血液量 の増加が,生体アドミタンス計測と総ヘモグロビン濃度変 化計測の両者で確認された.運動中は血中酸素濃度の低下 や乳酸などの血管拡張性物質の蓄積による代謝性血管拡張 が生じるO13, 14Q.また,交感神経活動の亢進によって心 拍出量が増加すると共に,皮膚,腎臓,腹腔領域,そして 非活動筋組織の血管抵抗が増加するO15Q.これらの影響に より運動中の筋組織の組織血流量が増加すると共に,血管 が拡張され組織血液量が増加し,生体アドミタンスや総ヘ モグロビン濃度が増加したと考えられる. 生体アドミタンス計測は電圧電極間の大腿部全体が計測 対象であるのに対して,近赤外分光法による総ヘモグロビ ン濃度変化計測は右外側広筋の皮膚近傍の筋層が計測対象 であり,両者の計測範囲は異なる.しかし,運動中の各被 験者の生体アドミタンス計測による組織血液量変化の計測 結果と近赤外分光法による総ヘモグロビン濃度変化の計測 結果は有意な相関を示した.筋組織によって運動中に必要 な酸素量は異なるが,運動負荷の増加に伴い必要な酸素量 が増加するという点では一致する.そのため,両者の計測 結果は相対的に同様な組織血液量の変化を示し,強い相関 を示したと考えられる. 図 3 に示した被験者 1 の近赤外分光法による総ヘモグロ ビン濃度変化と脱酸素化ヘモグロビン濃度変化の計測結果 を比較すると,脱酸素化ヘモグロビン濃度変化は 9 分時に 定常状態になったのに対して,総ヘモグロビン濃度変化は 12 分時に定常状態となった.このように脱酸素化ヘモグ ロビン濃度変化が総ヘモグロビン濃度変化より早く定常状 態になる傾向は他の被験者でも多く見られた.これは骨格 筋への酸素供給は脱酸素化ヘモグロビン濃度変化が定常状 態になる前と同様に増加していたのに対して,骨格筋での 酸素利用は脱酸素化ヘモグロビン濃度変化が定常状態に なった以降,大きな変化は生じなかったことを示唆する結 果である.もちろん,酸素消費量は組織血液量の変化だけ でなく血流速度も考慮する必要があるが,脱酸素化ヘモグ ロビン濃度変化が定常状態になる前後で血流速度が大きく 変化したとは考えにくい.このことから,運動終了前の数 分間は運動負荷の増加に伴い,代謝速度の遅い有酸素系代 謝であるミトコンドリアにおける酸化的リン酸化では不十 分な ATP を,代謝速度の速い無酸素系代謝のクレアチン リン酸系や解糖系からの ATP 供給を増加させることで補 い,運動を持続したことが推測される. 最大組織血液量変化は筋量の指標となる BI インデック スと強い相関を示した.生体アドミタンス計測は皮膚血流 など筋血流以外の組織血液量の変化も含まれているが,運 動時においては筋血流量の増加が大きく組織血液量変化へ の影響も大きいため,最大組織血液量変化と筋量が強い相 関を示したと考えられる.図 2 の各被験者の最大組織血液 量変化や図 4 の組織血液量変化の標準偏差が示すように各 被験者の組織血液量変化の大きさに顕著な違いがみられた が,これに関しても計測範囲内の筋量の違いの影響が大き いと考えられる.しかし,運動性高血流による組織血流量 の変化は,筋組織の性質や筋収縮の方法によって異なるこ とが先行研究で示されているO16Q.そのため,運動の種類 や計測部位に関しては,さらなる検討が必要である. 同じ運動負荷強度における各被験者の正規化組織血液量 変化の比較では,直接法によって算出した正規化組織血液 量変化は実験での総仕事量と有意な相関を示したことか ら,直接法による正規化組織血液量変化は運動耐容能の評 価に有用であると考えられる.一方,BI インデックスか ら最大組織血液量変化を推定する間接法によって算出した 正規化組織血液量変化と実験での総仕事量との比較では, 一定の傾向は示唆されたが統計学的に有意な相関は示さな r = -0.84 p < 0.01 y = -0.009x + 1.32 r = -0.58 y = -0.009x + 1.34 図 6 総仕事量と正規化組織血液量変化 ( a )直接法により正規化組織血液量変化を算出 ( b )間接法により正規化組織血液量変化を算出 Fig. 6 Relationship between maximum workload and

normal-ized tissue blood volume change according to the maximum tissue blood volume change.

( a )NTM was normalized using the measured max-imum tissue blood volume change.

( b )NTM was normalized using the maximum tissue blood volume change estimated from the BI index. (a)

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かった.これは統計的手法によって BI インデックスから 最大組織血液量変化を推定するには被験者数が不十分であ り,今後被験者を増やし最大組織血液量変化の推定に用い る算出式の精度を高めることで間接法も運動耐容能の評価 指標として有用な手法となりえると考える.また,正規化 を行う前の組織血液量変化と総仕事量は相関を示さなかっ たことから,BI インデックスを用いた組織血液量変化の 正規化は生体アドミタンス計測を用いて運動耐容能を評価 する上で有用な解析方法であると考えられる. これまで,生体アドミタンス計測を用いて運動による血 行動態の変化を計測した研究は少ない.一方,近赤外分光 法を利用して血行動態の評価を行った研究は数多く行われ ているO6, 17, 18Q.しかし,照射した光の反射光を用いた 計測法はプローブの装着位置や脂肪層の厚さによって光の 透過範囲に含まれる筋組織の割合が不明確であるため,組 織血液量変化の定量的な評価を行うことは難しい.脂肪層 の影響を超音波画像診断装置を用いて脂肪層の厚さを計測 し,信号の補正を行うことで定量性を改善することが可能 となっているが,これは簡便な計測方法とはいえないO6, 19Q.一方,電気特性を用いる生体アドミタンス計測では 電流が装着する電圧電極間の生体組織のほぼ全体を通過す るため,計測対象が光を用いる計測と比較して明確であ る.また,本実験で正規化組織血液量変化を推定する際に 用いた BI インデックスの計測は,組織血液量計測と同じ 生体アドミタンス計測によって行うことができるため,簡 便性の面でも優れているといえる.しかし,血液の静脈貯 留の影響,組織の変形による信号の変動,発汗や体温上昇 の影響など,まだまだ検討すべき課題は多い.今後はそれ らの検討を進め,組織血液量変化と運動耐容能の関係につ いて検討していきたい. 5. お わ り に 本研究では,組織血液量計測の計測法である生体アドミ タンス計測と近赤外分光法による総ヘモグロビン濃度変化 計測の同時計測によって,生体アドミタンス計測による組 織血液量計測の正当性を検討するとともに,生体アドミタ ンス計測を用いた運動耐容能の定量的評価の有用性を検討 した.組織血液量変化の計測結果は両者とも同様な組織血 液量の増加を示した.また,同じ運動負荷強度における各 被験者の正規化組織血液量変化と多段階運動負荷試験での 総仕事量の比較によって,直接法によって算出した正規化 組織血液量変化が運動耐容能の評価に有用であることが示 唆された.また,最大組織血液量変化は,BI インデック スと強い相関を示したことから,BI インデックスから最 大組織血液量変化を推定する間接法も運動耐容能の評価指 標として利用可能であることが示唆された. 今後はさらに研究を進め,定量的な運動耐容能の評価法 を確立し,リハビリテーション科学やスポーツ科学の発展 に貢献したい.

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Morimoto T, Sakamoto K, Eda K, Ishiyama M, Saito T, Aihara H, Arai E, Toyama M, Shintomi Y, Yamaguchi I: Assessing muscle vasodilation using near-infrared spec-troscopy in cardiac patients. Circ J. 69: 802-814, 2005. 19. 庭山雅嗣, 志賀利一, 林凌, 工藤信樹, 高橋誠, 山本克之: 近 赤外光を用いた筋組織酸素計測における脂肪層の影響とそ の補正. 医用電子と生体工学. 36(1): 41-48, 1998. 松本 理隆(マツモト マサタカ) 2010 年千葉大学工学部メディカルシステ ム工学科卒業.同年,同大学大学院工学研究 科人工システム科学専攻メディカルシステム コース修士課程入学,現在に至る.生体アド ミタンス計測など運動時の生体計測に関する 研究に従事. 井田 舞美(イダ マイミ) 2009 年千葉大学工学部メディカルシステ ム工学科卒業.同年,同大学大学院工学研究 科人工システム科学専攻メディカルシステム コース修士課程入学,現在に至る.生体イン ピーダンス計測などの生体計測に関する研究 に従事. 花田 智(ハナダ サトル) 2002 年川崎医療福祉大学医療技術学部リ ハビリテーション学科理学療法専攻卒業.以 下,理学療法士として総合病院などでの勤務 を経て,2008 年より藤元中央病院に勤務し 現在に至る.2009 年千葉大学大学院工学研 究科博士課程入学.心臓リハビリテーション における運動療法の研究に従事. 日本理学療法士協会,日本心臓リハビリテーション学会,日 本運動生理学会,日本臨床生理学会所属. 関根 正樹(セキネ マサキ) 2001 年東京電機大学大学院理工学研究科 応用システム工学専攻博士課程修了.同年国 立療養所中部病院長寿医療研究センター研究 員.同年ダートマス大学工学部研究員.2003 年国立長寿医療センター研究所室員.2004 年千葉大学工学部助手.2007 年同大学院工 学研究科助教,現在に至る.生体信号計測ならびに解析に関す る研究に従事. 日本生体医工学会,計測自動制御学会,ライフサポート学 会,IEEE 各会員. 田村 俊世(タムラ トシヨ) 1973 年慶應義塾大学工学研究科修士課程 修了.1980 年東京医科歯科大学大学院研究 科修了.2004 年 4 月千葉大学工学部メディ カルシステム工学科教授,2007 年 4 月千葉 大学大学院工学研究科人工システム科学専攻 メディカルシステムコースに改組,現在に至 る.主な研究テーマは生体計測,生体信号処理,福祉工学,高 齢者支援工学など. 日本生体医工学会(会長),日本生活支援工学会,ライフサ ポート学会(会長)計測自動制御学会,米国電気学会などの会 員.

図 3 NIRS 計測結果典型例(被験者 1)

参照

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カバー惹句

奥付の記載が西暦の場合にも、一貫性を考えて、 []付きで元号を付した。また、奥付等の数

奥付の記載が西暦の場合にも、一貫性を考えて、 []付きで元号を付した。また、奥付等の数

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