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自著紹介『虚飾の行政 : 生活環境主義批判』

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Academic year: 2021

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7  私が大学に入学したころは、学問は何のためにあるの か、といった議論がまだよくなされていました。こうした議 論は、戦争兵器として原子爆弾が作り出されたことについ ての、科学者の責任の有無という問題の延長線に生まれ たものです。その議論の中で、私がいちばん納得したの は、近代になって自然科学は長足の進歩を遂げたが、はた して社会科学にそれに見合う発展があったのだろうか、自 然科学の成果を有効に使い、人類の福祉に役立てるため には、もっと社会科学を発展させなければならない、とい う意見でした。私は、今でもこの考えは正しいと思ってい ます。そして、だから福島第一原発で起きた事故(3.11)に ついて、今や社会学者になった私は、社会科学者の一人と して、自分に責任が全くないとは言えないと思っていま す。  本書は、滋賀県行政の問題点を指摘した書です。情報 を隠したまま大学に圧力をかけ、学問を弾圧しようとした 行政組織の問題、そうした行政組織を十分にコントロール できないばかりか、進むべき政策指針を二転三転させた 知事の失敗について、呵責ない批判を展開しました。ただ し、ここで行ったのは学問的な批判です。すなわち、個人 なり組織なりの欠点を指摘するだけではなく、何故、首長 は過ちを犯し、行政組織は住民から信頼をえられないの かという点について、嘉田由紀子知事の思想的バックボー ンである生活環境主義の欠点、滋賀県という行政組織が 持っている文化の問題まで、さかのぼって分析し記述しま した。ここには、個別事例にとどまらない普遍的な問題が あります。  社会学の全体性は、学説、理論、実証、実践で構成され ます。私が社会学を学び始めた昔とは違って、専門分化が 激しい現代社会では、それぞれの領域の専門家が多くな りました。しかし、本書にはこの4つがすべて含まれていま す。だから、本書の読者は、社会学がもっている幅広さを 具体的事例に即して見通していただけると思います。  ある方が「この本の出版は、少し早過ぎたね」とおっ しゃいました。  この書が出たのが昨年9月。その後の12月に行われた衆 議院議員選挙で、嘉田由紀子氏は日本未来の党を結党し て国政に挑戦したのですが、あえなく惨敗。党が分裂した ばかりでなく、県議会から知事と政党代表の兼務を批判 されて、党の代表を降りる羽目になりました。出版が早過 ぎたと言うのは、数か月遅れたら、もっと世間の注目を集 めただろうという意味で言われたのだと思います。  私は、本書で次のように書きました。「嘉田知事は自ら 主唱する生活環境主義の実践に失敗したということであ る。これは、彼女のリーダーとしての資質あるいは能力の 問題もあろうが、それだけでなく、その思想が内包してい る問題に根本の原因があるとみるべきだろう」。「一言で 言ってしまえば、滋賀県そして嘉田知事には『誠実さ』が 足りなかった」。  本書を読んで、その後現実に起きたことを見た人は、あ あやっぱり、と思ったはずです。

『虚飾の行政:生活環境主義批判』

教育学部教授

 早 川 洋 行

自著紹介

嘉田県政への社会学的批判

目次  第1章 嘉田知事の迷走 第2章 隠された証言 第3章 諮問機関 第4章 学問弾圧 第5章 世間文化と行政文化 第6章 環境ガバナンス 第7章 社会学的実践

参照

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