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経済学論纂 ( 中央大学 ) 第 60 巻第 1 号 (2019 年 7 月 ) 297 論 論 ( ) 年 中 ( ) 年 経済 論 ) ) 経済学 論 ( ( )) 経済学

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(1)

1 .は じ め に

 本稿の目的は,日本における農業の展開と,その背後にある農村集落の在り方について分析す ることである.  日本の食の在り方は,基本的に農業をめぐる環境に規定されており,食料自給率の低下,農業 就業者の高齢化,農地面積の縮減に加えて農村活力の低下など,多くの問題が提起されている. 現在,日本では,平成11(1999)年の『食料・農業・農村基本法』に基づき,中長期的に取り組む べき政府の施策方針として『新たな食料・農業・農村計画』が定められている.日本の農業の進 むべき道程は,昭和36(1961)年に制定された『旧農業基本法』で定められたが,この間,上に掲 げたような農業に関連して生じた多くの困難に対して,必ずしも有効な施策を打つことはできな かった.これに対して,『食料・農業・農村基本法』では,農村振興が農業の持続的発展に必要な 振興基盤であると位置づけ,農業のもつ多面的機能の拡充,食料の安定供給の確保を通じて,国 民経済の健全な発展が目標とされた.まさに,持続可能な農業発展のためには,「農村振興」と 「農業発展」との有機的な連携が必要であることが確認された.  本稿では,以上の点を考慮して,とくに「農村」あるいは「農村集落」の在り方と農業発展の 関係を理論的に検討する.筆者らの研究グループは,別の機会で,「農村集落の基盤醸成」と「農 業の展開」の間の関係として,「農村集落の凝集性あるいはコミュニティ力が高いほど,地域農業 の発展が顕著である」という仮説の整合性を,実証的な観点から検討した1).本稿では,これに関 1 .は じ め に 2 .農村集落の理論的検討:コモンプールアプローチ 3 .地域の持続可能な発展と農村集落 4 .まとめと政策的含意

金   承  華

* 

薮 田 雅 弘

**

農村集落と地域資源の最適管理

理論的検討

1 ) 日本応用経済学会での報告論文(高尾・金・薮田(2018))ならびに,国際公共経済学会での報告予定

(2)

する理論的な分析視座を纏めておく.ここでは,農村集落におけるコミュニティ,ないしコミュ ニティ力を把握するための理論立てとして,薮田(2004)などで展開した「コモンプールアプロー チ」を援用する.まず,地域における農業など一次産業の生産資源を,地域で生活し生産活動を 担う住民にとってのコモンプール資源と考える.実際,利用主体である住民にとって地域資源は 「非排除性」をもつ共有資源であり,その利用に関しては「競合性」という特性を有する「コモン プール資源」である.農業を行う場合に重要となる「水資源」を例にとれば,地域の人々(農民) にとって「誰もが利用することができる」が「誰かの利用が他者の利用を妨げる」可能性をもつ 資源である.その意味で,Ostrom が主張したように,地域住民(農民)による資源の適切な利用 ルールが必要であり,そのもとで適正な管理が必要となる.農村集落の管理システムの背後にあ るコミュニティの在り方(これを「コミュニティ力」と呼ぶ)とそのアウトカムの関係を理論的に 考察する.  本稿の構成は以下のようである. 2 章では,農村集落の理論的検討として,前述の「コモンプー ルアプローチ」に沿って,とくに,地域資源の持続可能性に関してモデル分析を行う.つぎに 3 章では,地域資源の持続的利用に関して考察を加え,農業と農村集落の現況との関係を論じる. 最後に 4 章において,本稿の梗概と政策的インプリケーションを与え,残された課題を論じる.

2 .農村集落の理論的検討:コモンプールアプローチ

2.1 地域資源管理とコモンプールアプローチ  へき地や災害時での人々の暮らしに限らず,日常生活を送るに当たっては,他者との何らかの 互助や協働なしには生活することができない実態がある.本稿が分析の対象にしている「農業集 落」や「集落機能」は,まさに日常的な人々の協力関係や協働を具現化したものである.その経 済理論的な考え方の基礎を示したのは Ostrom の第三の道,あるいは宇沢・茂木(1994)をはじめ とする社会共通資本の考え方である.ここでは,Ostrom(1990), Ostrom et al.(1994)をベース に展開された「コモンプールアプローチ」について説明する.  本稿の分析に関する理論的視点は次の 2 つである.  第 1 に,地域の共同資源については,その資源利用について非排除性ならびに競合性があるこ とから,最適な利用が困難であること,それ故に効率的な利用を行おうとすると,資源利用に関 わるステークホルダーによる地域資源の効率的管理に向けた管理範囲と管理ルールの形成ならび に管理ルール遂行に向けた制度,組織が必要であることを示す必要があることである.これらは, 地域の効率的な資源管理に関するコモンプールアプローチとして周知の理論であり,すでに言及 論文(高尾・金(2019))を参照.

(3)

したように,Ostrom らの議論に基礎づけられている.いうまでもなく,コモンプールアプローチ は,とくに地域コミュニティの必要性と有効性に関する理論的な基礎を与える.加えて,第 2 の 観点は,具体的な地域コミュニティの活動と管理の有効性に関する仮説である.ここでは,農村 集落が協働的に利用する地域資源の持続可能な管理運営に注意を集中して考察する. 2.2 短 期 均 衡  ある農業集落があり,地域資源(これを,コモンプール資源と呼ぶ)を活用して農業などの生産 活動を行っていると考える.地域の就業者数は n とする.一般に,農業,林業,水産業などは, コモンプール 資源 R に関連する(コモンプールを利用する)産業である.この生産 y は Cobb-Douglas 型の関数をもつと考え,y = nαRβ, 1> α >0,1> β > 0 と仮定する . すると,地域の利潤 Π は,    (1) Π=py−wn−rR,   となる.ここで,R はコモンプール資源の投入量,r はレンタルコスト,w は農業就業者の賃金 である.ここで,就業者に関しては,労働の限界生産力が実質賃金に等しいと仮定する.つまり,      が成り立つ.  ここで,(1)式のコモンプール資源に関する効率性条件(利潤最大化条件)は,    (2)  となる.(2)を満たす資源投入量を R=Rとする.他方,収穫逓減のもとで生産最大化(利潤ゼ ロ)条件を満たす資源投入量を R=RCとすれば,    (3)  が成り立つ.このとき,RC>Rが成り立つと仮定する2).これは,コモンプール資源の過剰利用 の典型例(コモンプールの外部性)を示している.つまり,地域資源の最適な利用水準を超えて, 地域資源が過剰に利用されてしまうケースがあり,外部性を避けるためには,地域コミュニティ は R の使用を制御する必要がある. α= wnpyβn(Rα *β-1= ∂y ∂R rp (1-α)n(Rα Cβ-1 = rp 2 ) (2)と(3)において,RC>Rが成り立つための条件は,Exp{log(  )/(1−β)}=  < 1 が成り   立つことである.これは,αに比してβが相対的に大きいこと(つまり生産に関して,労働よりも地域 資源がより重要であることを意味している.たとえばβ=0.9のとき,α=0.09とすれば,RC=2.87R** なる. α 1-β RRC

(4)

 ここでは,資源が過剰に利用されるケースを考え,短期的なコモンプール資源管理の有効性を 示す θ 指標を導入する.管理された地域資源の利用水準 Rmを,    (4)  とする.(4)において,地域コミュニティによる制御がない場合は,θ= 0 であり,R=RCとなる. 他方,適切なコントロール(θ= 1 )が行われるときには,R=R*が実現され,コモンプール資源 が効率的に利用されていると考える.つまり,(4)式について    となり,地域コミュニティ は,θを適切に管理することで実際の地域資源の利用水準を削減させることができる.このこと から,θを地域コミュニティ力と呼ぶ.  なお,これに関連して,コモンプール資源に関連する生産財(あるいはサービス)に対する需要 関数 d を,    (5) d=d(p,E)=μpγEδ, γ, δ, μ >0, dp<0, dE> 0 と仮定する.ここで,E はコモンプール資源(コモンプール資源の投入量(利用量)R は,資源 E が生み出す「幸」である)であり,短期的に一定であると仮定する.また,需要の価格弾力性を 表すγは,特産品や地域特性に強く依存する財,サービスの場合は小さな値をとるであろうし, そうでない場合は,より大きくなるであろう(農産物の場合は,一部の嗜好性の高い作物を除いて, 必需度が高いことによって価格弾力性は小さく,また,観光サービスの場合は,世界遺産に登録される ような他に類をみない「顕著な普遍的価値」をもつ資源の場合には,価格弾力性γは十分小さいと考え られる).  以上の条件のもとで,短期の市場均衡は(5)と(8)のバランスによって達成される.その際の短 期の均衡価格は    (6)  となる.ここで,    (7)  である.(7)において C はθの単調な減少関数であり,地域の資源管理に関する有効性を表す指標 であると考えることができる.このとき供給関数 y は,    (8)  +(1-θ)RC RmθR* +

( )

p × r θβ1/(1-β)(1-θ) 1/(1-β) nα/(1-β) =Rm(θ, p, r) <0 ∂Rm ∂θ p Eδ(1-α-β)μ(1-α-β) γ(1-α-β)+(α+β)>0 rβ C(θ)-β/(1-β) =

( )

wa α

1/A A= C=θβ1-β1 +(1-θ)C(θ)C ’<0,C(1)β1-β1 < C(θ∈(0,1))C(0)=1 y 1/(1-α-β) pα+β β C(θ)β/(1-β) =

( )

1r

( )

αw α

(5)

と書くことができる.

 ここで,地域コミュニティの社会厚生関数(Social Welfare Function)について考える.地域の コモンプール資源を利用する産業は,(1)式での利潤 Π を受け取るが,地域社会の総収入 W は,

Π に労働賃金 wn と資源のレント rR を合計したもの,すなわち,

   (9) W=Π+wn+rR=py

になる.したがって,(6)と(8)式を(9)式に代入し整理して対数線形の形で整理すると,実証可能 なモデルは,

   (10) AlogW=β(1−β)(γ−1)logC(θ)+β(1−γ)logr+α(1−γ)log   +δlogE+log μ の形で表せる.重要なことは,(10)が,「(所得で示された)地域の厚生水準が,幾つかの経済変数 に加えて,地域資源量 E や地域コミュニティ力 θ に依存している」ことを示している点である3) (10)において,      が成り立つ.このことから,地域コミュニティ 力の向上,地域コモンプール資源の量の増大,ならびに,地域生産物に対する需要の増大は,地 域の厚生水準を高めることがわかる4) 2.3 持続可能性と農村コミュニティ  前節では,E はコモンプール資源(コモンプール資源の投入量(利用量)R は,資源 E が生み出す 「幸」であり,地域は毎期生み出される「幸」を利用して生産を行う)であり,短期的に一定であると 仮定した.本節では,地域資源の利用とストックとしての資源量との関係を単純に,    (11) ΔE=H(E)−R と仮定して動学モデルを考える.ここで,Δは変化量をあらわし,H(E)は地域資源の再生関数を 意味する.  ここで,農村コミュニティが一定の資源管理θを行っている状況を考える.いうまでもなく,

( )

wα >0, ∂logW ∂θ ∂logW∂μ >0,∂logW∂Ε >0

3 ) コモンプールアプローチの理論については,薮田(2004),Imaizumi et al.(2004)ならびに Yabuta (2008)を参照. 4 ) ここでの短期モデルは,実証可能なモデルとしての定式化を行っている.ここで,重要な点は,地域 資源のストックはそれが大きいほど地域の厚生にとってプラスに作用するが,他方で,地域資源の利用 が進めば,地域資源ストックに対しては負の影響を与えるので,結果的に,地域の厚生水準にマイナス の影響を与えることが期待される.こうして,地域資源の利用と地域資源量との間にトレードオフの関 係が生じうる.このことからも,地域資源利用についての持続可能性が求められる.

(6)

農業は本源的な地域の生産資源である土地を用いて,水などの地域資源を利用して生産活動を行 う産業である.一般的に,資源経済学は,漁業などを対象に,その再生関数の形状に着目し,環 境容量や最小生存可能量と呼ばれる要素によって決定される資源管理問題を分析する5).農業の場 合,H(E)は,土地や水の有効な配分や利用,農業関連技術の利用をめぐる人々の協力や協働など に依存するであろうし,他方,R は,生産に向けた地域資源利用に関する管理問題によって影響 を受けるであろう.この結果,農村コミュニティが有する地域資源のストック量が変化すると考 えられる.  まず,対象の農村コミュニティでは,地域資源の利用に関して,一定の管理運営が行われてい ると考える.また,議論の単純化のために,生産物価格や地域資源利用のレンタルコストは一定 と仮定し,(4)を Rm=Rm(θ)と書く.(11)について,地域資源のストックが持続可能になるた めには,均衡の E について    (つまり,H´(E)< 0 )であることが必要である.以上の点 を考慮すれば,地域資源の持続可能な利用について,地域の資源量と地域資源の利用水準の関係 を図 1 のように描くことができる.いうまでもなく,地域資源の利用が,地域資源のストック水 準と非線形な関係をもつ場合,持続可能な均衡と安定性は様々になるが,ここでは,地域の持続 可能性が実現される条件に着目する.  図 1 は,均衡の存在を仮定した上で,代表的な二つのケースを示している.(a)は,H´(E) < 0 のケースを示しており,Rmが一定で線型のケースを,他方,(b)は H´(E)> 0 のケースを示 している6)(a)は持続可能均衡 ESが安定となるケースを,他方,(b)は,持続可能均衡 ESが不 安定となるケースを描いている.重要な点は,持続可能性が維持されるためには,地域資源の再 生能力の状況に応じて,資源利用(したがって,資源管理)の在り方を変える必要があるという点 である.例えば,図 1 の(b)(H´(E)> 0 )のケースでは,(4),(6),(8)式が示すように,E の変 化が生産物価格 p に及ぼす影響の程度に応じて,地域資源の利用量 Rmに影響し,持続可能均衡の 安定性に影響することになる.以上のことから,持続可能な地域資源管理については,「地域コ ミュニティの住民は,地域資源の再生の在り方を熟知したうえで,地域資源利用の適切な管理の 在り方を決定することが重要である」ことを意味している. <0 dΔE dE 5 ) 例えば,Conrad(2002)『資源経済学』(岡,中田訳)岩波書店を参照. 6 ) 漁業資源のケースなどで想定されるロジスティック関数などの場合と異なり,農業の場合,地域資源 量が大きいほど,その再生能力もより大きくなると考えうる.したがって,H´(E)> 0 は想定可能であ る.

(7)

3 .地域の持続可能な発展と農村集落

 いうまでもなく,地域資源には様々な財・資源が含まれる.その持続可能な保全と利用につい ては,Yabuta(2011),薮田(2015)において,コモンプールアプローチをベースに分析を行った. 最近では,地域に存在する自然や農村の文化的な風景を活かして地域の観光資源として活用しよ うとする動きも多く見受けられる.農業など一次産業発展を支える地域資源のイメージを超えて, 地域資源も多様化し複層化している.しかし,地域資源が,その利用に関しては,非排除的(誰で も利用が可能)ではあるが,競合的(誰かの利用が他の誰かの利用を妨げる)であるためにコモン プール資源としての性質をもつことには変わりがない.このため,地域の開発によって過剰に利 用される傾向があり,結果として,地域開発が地域資源を疲弊させ,却って地域発展が阻害され る場合すらある.したがって,適切な水準での地域資源の利用が必要であり,そのためには, Ostrom, et al.(1994), Ostrom(1990)が示したように,地域のステークホルダーらによる主体的 な資源管理が必要となる.つまり,農業や林業ならびに漁業などで代表される地域資源を適切に 管理運営するためには,誰が利用できるのか(境界ルール),どの程度利用できるのか(配分ルー ル)といったルールの他に,規則を逸脱した場合の措置(ペナルティ)の制定に関するガバナンス の構築が必要になる.このような地域コミュニティを主体とする資源管理の在り方は,市場の失 敗に対峙する仕組みや政府の規制などに付加されるべき第三の道であるといえる7).問題は,これ

7 ) この点については,Ostrom(2012)の第 3 章(The future of the commons: beyond market failure and government regulations)を参照.

図 1  地域資源ストックの持続可能性 出所)筆者作成 (a) H´(E)<0 のケース (b) H´(E)>0 のケース H,R H,R H(E) H(ERm Rm O ES E O ES E

(8)

らの地域資源の管理運営の適切性をどのように把握すればよいか,という点である.  農業を例にとろう.農業生産物は,需要に対応する適切な生産と地域資源の利用が必要である. 多くの場合,その利用は地域コミュニティ(農村集落)の人々の協力,協働作業によって実現され る.例を挙げれば,広島県東広島市小田地区(稲作)の13集落の連携による中山間地域における集 落営農方針を中心とした広域連携の事例や,秋田県湯沢市の山田五ケ村地域農地・水・環境保全 管理組織による多面的機能支払い活動の広域化(水路の泥上げなど),あるいは,山口県周防大島 町の「島くらす(民間を主導とした若年層の移住を応援する会)」による田園回帰の動きと都市住民 を巻き込んだ取り組みなどがある8).また,近年では,地域によって, 6 次産業化による連携やグ リーン・ツーリズムによる連携,農泊による連携も増加する傾向にある.  先に示した平成27(2015)年 3 月の『新たな食料・農業・農村計画』では,「農業の構造改革や 新たな需要の取り込み等を通じて農業や食品産業の成長産業化を促進するための産業政策と,構 造改革を後押ししつつ農業・農村の有する 多面的機能の維持・発揮を促進するための地域政策を 車の両輪として進める」(新たな基本計画, 2 頁)としている9).とくに,第 3 章の「農村の振興に 関する施策」では,魅力ある農村づくりを進めていくために,都市と農村の交流,農村での雇用 の確保を通じた農村所得の向上,「地域コミュニティ機能の発揮等による農地等の地域資源の維 持・継承や住みやすい生活環境の実現」を図ることが重要であることが述べられている(同51頁参 照).  一方,本稿に関連する「農業集落調査」は,昭和30(1955)年から,農林業センサスの一環とし て実施されている調査(平成17(2005)年以降,農山村地域調査と名称変更)である10).本稿が対 象としている地域コミュニティによる地域資源の管理状況をみるために,ここでは,平成27(2015) 年の農山村地域調査(2015年農林業センサス第 7 巻「農山村地域報告書」第 2 部),ならびに長期累 計形式のデータを中心に例示する.  表 1 は,調査項目の一部を示している.年によって質問項目が異なるが,アンケート形式での 調査結果がまとめられている.農村集落の活動状況について,どのような議題で,また,どのよ 8 ) これらの事例については,農水省「中山間地域における集落営農法人を中心とした広域連携」資料 HP (http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/bukai/h27_5/pdf/sankou2_3_10.pdf  2019/02/20アクセ ス)を参照. 9 ) 農水省の HP(http://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/pdf/1_27keikaku.pdf 2019/2/20アクセス) 参照. 10) 農業集落調査における農業集落の定義は,調査が始まった昭和30(1955)年当初は「農家が農業上相 互に最も密接に共同しあっている農家集団」(農業集落標本調査(31,295 集落対象))であったが,昭和 35(1960)年には全数調査(152,431 集落)となり,平成12(2000)年には,「一般に部落と呼ばれてい るもので,もともと自然発生的な地域社会であって,家と家とが地縁的,血縁的に結びつき,各種の集 団や社会関係を形作ってきた農村内における基礎的多単位地域」(対象集落 135,163)と定義されている.

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うな頻度で話し合いが行われたかが集計されている.表 2 は,農業集落の状況を表している.全 国では,農業集落数は,平成 2(1990)年の14万から平成27(2015)年の約13.8万と微減傾向にある. 平均的には170 200戸程度の集落規模があるものの,そのうち農家が占める割合(農家率)は,約 16%から 8 %へと半減している.他方,表 3 は,農村集落において,どのような議題で話し合い が行われたかの推移を表したものである.いずれも,水の管理に関する話し合いが最も多く議題 となっており,共有財産の管理問題,近年では,環境,集落行事や福祉関連など広範な議論が行 われている.  また,図 2 は,農村集落に於いて, 1 年間に何度寄り合いが開催されたかを示している.寄り 合いが開催された農業集落数は,全国でほぼ13万程度と一定であるが,回数は,1990年代が年 1 表 1  農山村地域調査の項目(一部) 3  農業集落内での活動状況  ( 1 ) 集落機能のある農業集落数  ( 2 ) 実行組合のある農業集落数  ( 3 ) 過去 1 年間に開催された寄り合いの回数別農業集落数   ア 実数   イ 構成比  ( 4 ) 寄り合いの議題別農業集落数 4  地域資源の保全  ( 1 ) 農地  ( 2 ) 森林  ( 3 ) ため池・湖沼  ( 4 ) 河川・水路  ( 5 ) 農業用用排水路  ( 6 ) 都市住民,NPO・学校・企業と連携して保全している農業集落数 5  活性化のための活動状況  ( 1 ) 伝統的な祭り・文化・芸能の保存  ( 2 ) 各種イベントの開催  ( 3 ) 高齢者などへの福祉活動  ( 4 ) 環境美化・自然環境の保全  ( 5 ) グリーン・ツーリズムの取組  ( 6 )  6 次産業化への取組  ( 7 ) 定住を推進する取組  ( 8 ) 再生可能エネルギーの取組  ( 9 ) 都市住民との交流を行っている農業集落数  (10) NPO・学校・企業と連携して活動している農業集落数 出所) 2015年農林業センサス報告書第 7 巻(農水省 HP https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?pag e=1&layout=datalist&toukei=00500209&tstat=000001032920&cycle=7&year=20150&month=0&tc lass1=000001077437&tclass2=000001077396&tclass3=000001085316 2019/ 2 /20アクセス)による.

(10)

回程度の開催であったものが,2010年には,13回以上(つまり,月 1 回以上)と開催頻度が上がっ ていることがわかる.2015年に統計の取り方が変更されているが,この増加傾向は続くと思われ る. 表 2  農業集落数の推移集落数農業 1 農業集落当 たり平均戸数 等(戸) 農家数 (戸) 非農家数 (戸) 農家構成比 (%) 非農家構成比 (%) 1990 140,122 172.1 27.0 145.1 15.7 84.3 2000 135,163 213.2 22.8 190.4 10.7 89.3 2010 139,176 198.0 18.0 180.0 8.9 91.1 2015 138,256 200.7 15.1 185.6 7.5 92.5 出所)農林業センサス(累計統計)により筆者作成 表 3  農業集落の寄り合いの議題別農業集落数の経年変化 1990年 寄り合いを 開催した農 業集落 寄り合いの議題(複数回答) 土地基盤整 備等の補助 事 業 の 計 画・実施 水田農業確 立対策の対 応・推進 農道・農業 用用排水路 の維持・管 理 集落有の農 業用機械・ 施設の利用 運営 請負農作業 等のあっせ ん・調整 その他 135,699 14,731 27,813 62,299 3,669 1,471 61,961 2000年 寄り合いを 開催した農 業集落 寄り合いの議題(複数回答) 土地基盤整 備等の補助 事 業 の 計 画・実施 水田転作の 推進 農道・農業 用用排水路 の維持・管 理 農業集落共 有財産の利 用・運営・ 管理 生活関連施 設 等 の 整 備・改善 祭り・運動 会等の集落 行 事 の 計 画・推進 環境美化・ 自然環境の 保全 農業集落内 の福祉・厚 生 133,028 24,320 86,120 97,616 43,864 96,186 116,926 98,501 61,613 2010年 寄り合いを 開催した農 業集落 寄り合いの議題(複数回答) 寄り合いを 開 催 し な かった農業 集落 農業生産に 係る事項 農道・農業 用 用 排 水 路・ため池 の管理 集落共有財 産・共用施 設の管理 環境美化・ 自然環境の 保全 農業集落行 事(祭り・ イ ベ ン ト 等 ) の 計 画・推進 農業集落内 の福祉・厚 生 128,754 82,062 91,903 81,066 99,499 106,715 63,881 10,422 2015年 寄り合いを 開催した農 業集落 寄り合いの議題(複数回答) 寄り合いを 開 催 し な かった農業 集落 農業生産に 係る事項 農道・農業 用 用 排 水 路・ため池 の管理 集落共有財 産・共用施 設の管理 環境美化・ 自然環境の 保全 農業集落行 事(祭り・ イ ベ ン ト 等 ) の 計 画・推進 農業集落内 の福祉・厚 生 再生可能エ ネルギーへ の取組 129,856 82,890 103,557 89,054 116,457 117,158 85,256 5,646 8,400 出所) 農林業センサス累年統計―地域編―により筆者作成

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4 .まとめと政策的含意

 本稿では,農村地域の地域資源がコモンプールであるとの認識から,地域の人々による適切か つ有効な資源管理が要請されることを論じた.理論的には,単純な定式において,パラメータに 関する幾多の条件のもとで,様々な帰結が生じることを示した.さらに,コモンプールアプロー チに依拠しながら,持続可能性の観点から地域資源の管理運営の在り方を示した.得られた結論 は,いささか自明ではあるが,持続可能な地域資源管理については,「地域コミュニティの住民 が,地域資源の再生の在り方を熟知すること」に加えて,「地域資源利用の適切な管理の在り方を 決定すること」が重要であるという点である.地域コミュニティの住民が,地域資源の再生を含 めた知見を正しく見極めたうえで,地域資源が生み出す「幸」の利用を適切に行うことが,地域 の持続可能性にとって重要であるといえる.具体的に,日本の農村コミュニティ(農業集落)が果 たすべき役割については,すでに多くの事例が示すように認知されており,そのマクロデータに よる理解についても,農林業センサスにおける農村コミュニティ(集落)の活動状況によって,あ る程度把握可能なように思われる.つまり,コモンプールアプローチに依拠して,地域コミュニ ティ(あるいは農業集落)が適切に機能することによって,地域資源が持続的に維持される形で管 理されることが期待される.農林業センサスに「農業集落」内の協力や協働の結果によって,よ 図 2  農業集落の寄り合いの開催回数別農業集落数 出所)表 3 に同じ.筆者作成 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 1~2回 3~4 5~6 7~9 10~12 13回 以上 1990(135,699) 2000(133,028) 2010(128,754)

(12)

り望ましいアウトカムが実現されたか否かといった調査内容が含まれる形が望ましい.あるいは, 各集落の住民に対するアンケート調査などで補完することが必要になるであろう.本稿は,もっ ぱらこの問題を理解するために,簡単な理論的な枠組みを軸に議論を行ったが,別稿では,地域 の「農村コミュニティ(集落)」活動の凝縮性が,地域社会のアウトカムとしての所得や雇用,あ るいは,地域社会の持続可能性にプラスに作用するか否かを実証的に分析する予定である. 付記  本研究については,文科省の科学研究費補助金(2017 2019年度基盤研究(C)17k02127)を受けて いる.なお,筆者の二人はともに長谷川聰哲教授から教育,研究上の恩恵を受けた.先生の古稀を祝 するに当たり,論文掲載の機会を与えられたことに,記して感謝申し上げます. 参 考 文 献 宇沢弘文・茂木愛一郎(1994)『社会的共通資本―コモンズと都市』東京大学出版会. 高尾美鈴・金承華・薮田雅弘(2018) 「日本におけるグリーン・ツーリズムの展開と地域コミュニティ: 2015年農林業センサスデータに基づく実証研究」2018年度日本応用経済学会秋季大会報告論文. 高尾美鈴・金承華(2019)「日本におけるグリーン・ツーリズムについての経済分析―理論と実証」国際 公共経済学会第 7 回春季大会報告論文. 薮田雅弘(2004)『コモンプールの公共政策』新評論. 薮田雅弘(2015)「エコツーリズムと環境保全」亀山康子・森晶寿編著『環境政策の新地平第 1 巻,グロー バル社会は持続可能か』第 6 章所収,岩波書店,119 140頁 .

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(* 関東学園大学専任講師 博士(経済学))

図 1  地域資源ストックの持続可能性

参照

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